説明

内燃機関の吸気制御装置

【課題】フューエルカット時の潤滑油の消費量を低減しつつも、フューエルカットの実行中に燃焼室に対して供給されるガス量が要求されるものから大きく乖離することを抑制することのできる内燃機関の吸気制御装置を提供する。
【解決手段】この内燃機関の吸気制御装置は、外部から吸気通路に取り込まれて燃焼室に供給される新気の流量についてこれを調整するスロットルバルブと、機関本体から吸気通路に供給されるブローバイガスを含むPCVガスの流量についてこれを調整する電動のPCVバルブとを備え、フューエルカットが開始されることに基づいて、PCVバルブを閉弁方向に操作するとともにスロットルバルブを開弁方向に操作する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼室に供給される新気の流量を調整する吸気制御バルブと、吸気通路に供給されるブローバイガスを含むPCVガスの流量を調整する電動のPCVバルブとを備える内燃機関の吸気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転中には、燃焼室からシリンダ内壁とピストンリングとの間を介してクランクケースにいわゆるブローバイガスが漏出している。ブローバイガスには、炭化水素や窒素酸化物等の成分が含まれている。そして、このブローバイガスを含むガス(以下、「PCVガス」)をクランクケースから吸気管のスロットルバルブ下流へと戻し、再度燃焼させてこれらの成分の排出を低減させるためのブローバイガス還元装置が知られている。PCVガスは、ブローバイガス還元装置によってクランクケースと吸気管を連通するPCV通路を介して吸気管に戻される。PCV通路には、PCVガスの流量を調節するPCVバルブが設けられている。
【0003】
従来、PCVバルブは、吸気通路とクランクケース内との圧力差によって開閉する機械式のものが採用されてきたが、近年では圧力差に依存せずブローバイガスの流量を制御可能とすべくバルブ開度制御を行える電動のPCVバルブを備えたPCV装置が考案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−179112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フューエルカットからの復帰後においては、燃焼室に供給されるガス量が急激に増大することに起因してエンジンの振動が生じることもある。そこでこうした振動の発生を抑制するために、フューエルカットの実行中に燃焼室に対して所定量のガスを供給することが検討されている。
【0006】
ここで、上記電動のPCVバルブを備えるエンジンに対して、こうした所定量のガスを供給する制御を適用した場合には次のようなことが問題となる。すなわち、PCVバルブを開弁してPCVガスを吸気通路に供給している状態においてフューエルカットが開始されたとき、フューエルカットの実行中も同PCVガスの供給は継続されるため、燃焼室に供給されるガス量を上記所定量とすべくスロットルバルブはPCVガスの供給がなされていないときよりも閉弁側の開度に設定されることになる。そしてこれにより、フューエルカット実行中のスロットルバルブの開度が比較的小さいものに設定された場合には、燃焼室内が大きな負圧に維持される。燃焼室内の負圧が大きいと、燃焼室外においてピストン周辺の潤滑油が燃焼室内に吸い込まれるいわゆるオイル上がりが発生してしまう。燃焼室とクランクケースとの圧力差、すなわち燃焼室内の負圧が大きくなるほどオイル上がりによって燃焼室に流出する潤滑油量は大きくなってしまう。すなわち、フューエルカット実行中においては、このようなオイル上がりが促進されるようになる。
【0007】
そこで、こうしたオイル上がりへの対策を施すべくPCVバルブの操作を行うことが考えられるものの、上述のようにフューエルカットの実行中においては燃焼室に供給するガス量についての要求もあるため、オイル上がりへの対策にともない燃焼室へのガスの供給量が同要求から過度に乖離することは実用性の面において好ましいものとは言い難い。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フューエルカット時の潤滑油の消費量を低減しつつも、フューエルカットの実行中に燃焼室に対して供給されるガス量が要求されるものから大きく乖離することを抑制することのできる内燃機関の吸気制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、外部から吸気通路に取り込まれて燃焼室に供給される新気の流量についてこれを調整する吸気制御バルブと、機関本体から吸気通路に供給されるブローバイガスを含むPCVガスの流量についてこれを調整する電動のPCVバルブとを備える内燃機関の吸気制御装置において、フューエルカットが開始されることに基づいて、前記PCVバルブを閉弁方向に操作するとともに前記吸気制御バルブを開弁方向に操作する制御手段を備えることを要旨としている。
【0010】
この発明によれば、フューエルカットの開始にともない吸気制御バルブの開弁操作がなされることにより、吸気通路の負圧は低下し、これにともない燃焼室の負圧も低下するため、燃焼室内に吸い込まれる潤滑油の量が減少するようになる。また、フューエルカットの開始にともないPCVバルブの閉弁操作もなされることにより、吸気通路に供給されるPCVガスの量が減量される。これにより、吸気制御バルブの開弁操作にともない燃焼室に供給される新気の量が増量される一方で、PCVバルブの閉弁操作にともない燃焼室に供給されるPCVガスの量は減量されるため、フューエルカットの実行中において燃焼室に供給されるガス量が要求されるものから大きく乖離することは抑制される。
【0011】
このように上記発明によれば、フューエルカット時の潤滑油の消費量を低減しつつも、フューエルカットの実行中に燃焼室に対して供給されるガス量が要求されるものから大きく乖離することを抑制することができるようになる。
【0012】
なお、PCVバルブの閉弁操作及び吸気制御バルブの開弁操作がなされる時期はフューエルカットの実行と同時に限られるものではない。要するに、フューエルカットが開始されたことに基づいて上記の各操作がなされる態様であれば、その時期としては適宜のものを設定することが許容される。
【0013】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置において、前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作として予め設定された所定の閉弁量だけ前記PCVバルブを閉弁側に操作し、前記吸気制御バルブの開弁操作として同所定の閉弁量に対応して予め設定された所定の開弁量だけ前記吸気制御バルブを開弁側に操作することを要旨としている。
【0014】
この発明では、PCVバルブを予め設定された所定の閉弁量だけ閉弁側に操作するようにしているため、閉弁量を大きくすることで新気量の増量分を大きなものとすることができる。従って、吸気制御バルブもこれに基づいて開度を大きくすることが可能であるため、吸気制御バルブの燃焼室の負圧をより緩和することができるようになる。
【0015】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置において、前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作として、前記フューエルカットの開始時点よりも閉弁側の所定開度まで閉弁側に操作し、前記吸気制御バルブの開弁操作として、前記吸気制御バルブをPCVバルブの閉弁量に基づいて開弁側に操作することを要旨としている。
【0016】
この発明では、PCVバルブをフューエルカットの開始時点よりも閉弁側に操作するようにしているため、PCVバルブの閉弁にともなって確実に新気量を増量することができるようになり、燃料室の負圧を緩和することが可能となる。
【0017】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気制御装置において、前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作によるPCVガスの減量分と、前記吸気制御バルブの開弁操作による新気の増量分とが互いに相殺する態様で前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を行うことを要旨としている。
【0018】
この発明では、PCVバルブの閉弁操作によるPCVガスの減量分と、吸気制御バルブの開弁操作による新気の増量分とが互いに相殺する態様となっているため、フューエルカット時の潤滑油の消費量を低減しつつも、フューエルカットの実行中に燃焼室に対して供給されるガス量が要求されるものから乖離することを好適に抑制することができるようになる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気制御装置において、前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を実行したときのフューエルカット中において燃焼室に供給されるガス量と、前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を実行しないときのフューエルカット中において燃焼室に供給されるガス量とを互いに同一のものにすべく、フューエルカットの開始に基づく前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を行うことを要旨としている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の内燃機関の吸気制御装置を具体化した一実施形態について、同装置を搭載した内燃機関の構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の内燃機関について、その断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態において電子制御装置により実行される「フューエルカット時のPCVバルブの全閉制御処理」について、その処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態の「フューエルカット時のPCVバルブの全閉制御処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図4を参照して、本発明を吸気制御装置として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示されるように、内燃機関1は吸入空気と燃料との混合気を燃焼させ、この爆発エネルギーを取り出す機関本体であって内部に燃焼室17とクランクケース14とを備えるシリンダ10と、燃焼室17に吸入空気または混合気を供給する吸気装置30と、燃焼室17での燃焼後の排気を外部に送り出す排気装置50とから構成されている。さらに、クランクケース14と吸気装置30とを連通させて、クランクケース14内のブローバイガスを含むガス(以下、PCVガス)を吸気装置30へと還元するブローバイガス還元装置(以下、PCV装置40)が備えられている。なお、これら装置は、制御装置60によって統括的に制御されている。
【0022】
シリンダ10は、内部にシリンダボア16を備えるシリンダブロック11と、吸気装置30と排気装置50との接続部となるシリンダヘッド12と、シリンダヘッド12の上部を覆うシリンダカバー13とから構成されている。シリンダ10内部には燃焼室17での混合気の燃焼を通じて往復運動するピストン20と、このピストン20の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト28とが設けられている。シリンダヘッド12には、吸気装置30の一部である吸気管31と燃焼室17との接続部を開閉する吸気バルブ18と、排気管と燃焼室17との接続部を開閉する排気バルブ19とが設けられている。
【0023】
吸気装置30は、吸気取り込み口から導入した新気を燃焼室17へと送出する吸気管31と、取り込んだ吸気中の異物を取り除くエアクリーナ32と、アクセルペダル35の踏み込み量に応じて新気量を調量制御するスロットルバルブ33と、燃焼室17近傍に設けられて新気に燃料を供給・混合する燃料噴射弁34とから構成されている。排気装置50は、燃焼後の排気を排出する通路である排気管51を備えている。
【0024】
PCV装置40は、クランクケース14と吸気管31のスロットルバルブ33下流を連通させる第1連通路43と、吸気管31のスロットルバルブ33の上流とシリンダカバー13内部とを連通させる第2連通路41と、シリンダカバー13内部とクランクケース14内部とを連通させる中間連通路42とから構成されている。また、第1連通路43には電子制御装置61からの指令によって電動で開閉するPCVバルブ44が備えられている。このPCVバルブ44よって吸気管31に還元されるPCVガス量が制御されている。
【0025】
機関運転中、低負荷時には燃焼室17及び吸気管31のスロットルバルブ33下流の負圧が大きいため、吸気管31のスロットルバルブ33よりも上流から第2連通路41を介した新気がクランクケース14へと導入される。そして新気とブローバイガスとが混合してPCVガスが第1連通路43より吸気管31のスロットルバルブ33下流へと還元される。高負荷時には、クランクケース14内の圧力が高まるため、クランクケース14から第1連通路43を介して吸気管31のスロットルバルブ33下流へ、第2連通路41を介して吸気管31のスロットルバルブ33上流へPCVガスが導入されて、クランクケース14の換気が行われる。
【0026】
制御装置60は、機関運転状態等をモニタする各種センサ、すなわちアクセルポジションセンサ62、スロットルポジションセンサ63、エアフローメータ64、および回転速度センサ65を含む各種センサと、これらセンサの出力に基づいて各装置の動作を制御する電子制御装置61とにより構成されている。アクセルポジションセンサ62はアクセルペダル35の近傍に設けられてアクセルペダル35の踏み込みに応じた信号「アクセル開度AP」を出力する。スロットルポジションセンサ63は、スロットルバルブ33の近傍に設けられて、スロットルバルブ33の開度に応じた信号「スロットル開度SP」を出力する。エアフローメータ64は吸気管31のエアクリーナ32とスロットルバルブ33の間に設けられて吸気管31に取り込まれた空気量に応じた信号「空気量GA」を出力する。また回転速度センサは、クランクシャフト28の回転速度に応じた信号「機関回転速度NE」を出力する。また、燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量の指令値「燃料噴射量Q」は電子制御装置61によって機関回転速度NE及びアクセル開度APに基づいて決定されている。
【0027】
図2(a)に示されるように、シリンダ10は内部に空間であるシリンダボア16を備え、シリンダボア16は、吸気管31から導入された混合気が燃焼するための燃焼室17と、クランクシャフト28が設けられるクランクケース14とが、ピストン20によって区画されている。燃焼室17で混合気が燃焼するとピストン20が往復運動し、クランクと接続されるクランクシャフトを回転させる。
【0028】
図2(b)に示されるように、ピストン20外周には周方向に連続した3つのピストン溝21,22,23が形成されている。このピストン溝21,22,23にそれぞれコンプレッションリング25,26と1つのオイルリング27とが嵌め合わされて、ピストン20とシリンダ10内壁との密封状態を保たせている。すなわち、これらリング25,26,27によって、燃焼室17からクランクケース14への燃焼後ガスの漏れ、すなわちブローバイガス量が小さなものとなるようにされている。
【0029】
さらにオイルリング27は、ピストン20とシリンダ10内壁との間に適量の潤滑油の油膜を形成する働きを担っている。潤滑油はクランクケース14下部に設けられたオイルパン15(図1参照)と接続される潤滑油吐き出し口15Aからピストン20へと吹きかけられる。吹きかけられた潤滑油は、ピストン20のクランクケース14側の面とピストン20外周とを連通する潤滑油孔24によってシリンダ10内壁とピストン20外周と間隙に導かれる。潤滑油孔24のピストン20外周の開口部はオイルリング27が嵌め合わされているピストン溝23部である。潤滑油孔24から出てきた潤滑油はピストン20外周とシリンダ10内壁との間に油膜を形成する。また、ピストン20外周とシリンダ10内壁との間の不要な潤滑油はオイルリング27によってかきだされ、クランクケース14の下部に設けられたオイルパン15へと落とされて回収される。そして、再びピストン20へと吹きかけられるべく循環することになる。
【0030】
ところで、スロットルバルブ33が閉側にあると燃焼室17に負圧が発生する。負圧が大きい、すなわちほぼ大気圧であるクランクケース14と比較して燃焼室17の圧力が低いと、ピストン20外周とシリンダ10内壁との間隙で油膜を形成する潤滑油がこの間隙を伝って燃焼室17へと上がってしまう、いわゆるオイル上がりが発生する(図2(b)矢印参照)。燃焼室17に上がった潤滑油は、燃焼室17にて燃焼されてしまうために、潤滑油の消費が大きくなる。
【0031】
スロットルバルブ33の開度「スロットル開度SP」と負圧の大きさとは相関しており、スロットル開度SPが小さいときには、スロットルバルブ33下流の吸気管31内及び燃焼室17内の負圧は大きなものとなる。例えばフューエルカット中にはスロットル開度SPが小さなものとなるため、負圧も大きくなっている。フューエルカット中には燃焼のための吸気は不要であるが、フューエルカット復帰時のショックを低減するために、少量の必要空気量GAFが設定されている。必要空気量GAFは、スロットルバルブ33を介して吸気管31に導入される新気量GANと、フューエルカット時においてPCVバルブ44を介して吸気管31に導入されるブローバイガス量GABの総和となっている。すなわち、「GAF=GAN+GAB」が成り立つように設定されている。
【0032】
そこで、負圧発生時であるフューエルカット時において、負圧を緩和するべく、「フューエルカット時のPCVバルブの全閉制御処理」を行う。図4を参照して「フューエルカット時のPCVバルブの全閉制御処理」について詳述する。なお、この処理は所定の演算処理ごとに繰り返し実行される。
【0033】
まずステップS1にて燃料噴射量Qを取得する。燃料噴射量Qは、機関回転速度NEとアクセル開度APによって決定されているため、これらから間接的に推定しても良いし、電子制御装置61の指令値である燃料噴射量指令値を取得しても良い。
【0034】
次に、ステップS2にて燃料噴射量Qが「0」であるか否かの判定がなされる。これは、フューエルカット中であるか否かの判定である。なお、この判定は燃料噴射量Qに基づいた判定に限定されるものではない。例えば、フューエルカット中には、フューエルカットの実行と対応するフューエルカット実行フラグが設定されるため、このフューエルカット実行フラグに基づいて判断するようにしても良い。
【0035】
そして、燃料噴射量Qが「0」である旨、すなわちフューエルカット中である旨判定された場合にはPCVバルブ44を閉側に駆動し、PCVバルブ44開度を「0」すなわち全閉とするべく全閉指令を「ON」にする。PCVバルブ44が既に全閉状態にある場合は、その時のPCVバルブ44開度を維持するようになる。これによって、フューエルカットが実行されている間は、PCVバルブ44が全閉状態に維持される。燃料噴射量Qが「0」でない、すなわちフューエルカット中ではない旨判定された場合は、本処理は一旦終了する。
【0036】
図4を参照して「フューエルカット時のPCVバルブの全閉制御処理」の実行態様の一例について説明する。
時刻t1にて燃料噴射量Qが「0」となると、これに伴ってスロットルバルブ33開度が開度小に向けて駆動する。さらにこのとき、PCVバルブ44に全閉指令が「ON」となるとともに、この指令に従ってPCVバルブ44が全閉する。ここで、点線にて示されるように従来技術であれば、スロットル開度SPはフューエルカット中にはスロットル開度SPBに設定されていた。一方、本実施形態においてはスロットル開度SPBよりも開度増分ΔAだけ大きいスロットル開度SPAに設定される。
【0037】
この開度増分ΔAは、PCVバルブ44の閉側駆動によって減少したブローバイガス量GABと同量の新気量を確保するための増分である。フューエルカット期間TX中は、PCVバルブ44は全閉状態で維持され、スロットルバルブ33開度は開度APAに維持されることになる。
【0038】
そして時刻t2にてフューエルカットが終了し、燃料噴射量Qが「0」ではなくなると、これに伴ってスロットルバルブ33は運転状況に応じて開側に駆動する。また、PCVバルブ44の全閉指令も「OFF」となり、PCVバルブ44も通常の開度調節を行うようになる。
【0039】
本実施形態の内燃機関の吸気制御装置によれば以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、フューエルカットが開始されることに基づいて、PCVバルブ44を閉弁方向に操作するとともにスロットルバルブ33を開弁方向に操作するようにしている。フューエルカットの開始にともないスロットルバルブ33の開弁操作がなされることにより、吸気管31の負圧は低下し、これにともない燃焼室17の負圧も低下するため、燃焼室17内に吸い込まれる潤滑油の量が減少するようになる。また、フューエルカットの開始にともないPCVバルブ44の閉弁操作もなされることにより、吸気管31に供給されるPCVガスの量が減量される。これにより、スロットルバルブ33の開弁操作にともない燃焼室17に供給される新気の量が増量される一方で、PCVバルブ44の閉弁操作にともない燃焼室17に供給されるPCVガスの量は減量されるため、フューエルカットの実行中において燃焼室17に供給されるガス量が要求されるものから大きく乖離することは抑制される。
【0040】
このように上記発明によれば、フューエルカット時の潤滑油の消費量を低減しつつも、フューエルカットの実行中に燃焼室17に対して供給されるガス量が要求されるものから大きく乖離することを抑制することができるようになる。
【0041】
なお、PCVバルブ44の閉弁操作及びスロットルバルブ33の開弁操作がなされる時期はフューエルカットの実行と同時に限られるものではない。要するに、フューエルカットが開始されたことに基づいて上記の各操作がなされる態様であれば、その時期としては適宜のものを設定することが許容される。
【0042】
(2)本実施形態では、PCVバルブ44の閉弁操作としてPCVバルブ44を全閉に操作し、スロットルバルブ33をPCVバルブ44の閉弁量に対応して予め設定された所定の開弁量だけ開弁側に操作するようにしている。閉弁量を全閉とすることで新気量の増量分を最大まで大きなものとすることができる。従って、スロットルバルブ33もこれに基づいて開度を大きくすることが可能であるため、スロットルバルブ33の燃焼室17の負圧をより緩和することができるようになる。
【0043】
(3)本実施形態では、PCVバルブ44の閉弁操作として、フューエルカットの開始時点よりも閉弁側の所定開度である全閉まで閉弁側に操作し、スロットルバルブ33の開弁操作として、スロットルバルブ33をPCVバルブ44の閉弁量に基づいて開弁側に操作するようにしている。
【0044】
PCVバルブ44をフューエルカットの開始時点よりも閉弁側に操作するようにしているため、PCVバルブ44の閉弁にともなって確実に新気量を増量することができるようになり、燃料室の負圧を緩和することが可能となる。
【0045】
(4)本実施形態では、PCVバルブ44の閉弁操作によるPCVガスの減量分と、スロットルバルブ33の開弁操作による新気の増量分とが互いに相殺する態様でPCVバルブ44の閉弁操作及びスロットルバルブ33の開弁操作を行うようにしている。すなわち、PCVバルブ44の閉弁操作及びスロットルバルブ33の開弁操作を実行したときの燃焼室17に供給されるガス量と、PCVバルブ44の閉弁操作及びスロットルバルブ33の開弁操作を実行しないときのフューエルカット中において燃焼室17に供給されるガス量とが互いに同一のものとなるようになっている。
【0046】
このため、フューエルカット時の潤滑油の消費量を低減しつつも、フューエルカットの実行中に燃焼室17に対して供給されるガス量が要求されるものから乖離することを好適に抑制することができるようになる。
【0047】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す態様をもって実施することもできる。
【0048】
・上記実施形態では「フューエルカット時のPCVバルブの全閉制御処理」において、PCVバルブ44に対して全閉指令を出すようにした。しかし、これは全閉指令とせずとも良い。
【0049】
・本発明は上記実施形態に限られるものではない。要するに、外部から吸気通路に取り込まれて燃焼室に供給される新気の流量についてこれを調整する吸気制御バルブと、機関本体から吸気通路に供給されるブローバイガスを含むPCVガスの流量についてこれを調整する電動のPCVバルブとを備える内燃機関の吸気制御装置であれば、いずれの内燃機関についても適用は可能である。この場合にも上記実施形態に準じた作用効果を奏することはできる。
【符号の説明】
【0050】
1…内燃機関、10…シリンダ、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…シリンダカバー、14…クランクケース、15…オイルパン、15A…潤滑油吐き出し口、16…シリンダボア、17…燃焼室、18…吸気バルブ、19…排気バルブ、20…ピストン、21,22,23…ピストン溝、24…潤滑油孔、25,26…コンプレッションリング、27…オイルリング、28…クランクシャフト、30…吸気装置、31…吸気管(吸気通路)、32…エアクリーナ、33…スロットルバルブ(吸気制御弁)、34…燃料噴射弁、35…アクセルペダル、40…PCV装置、41…第2連通路、42…中間連通路、43…第1連通路、44…PCVバルブ、50…排気装置、60…制御装置、61…電子制御装置、62…アクセルポジションセンサ、63…スロットルポジションセンサ、64…エアフローメータ、65…回転速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から吸気通路に取り込まれて燃焼室に供給される新気の流量についてこれを調整する吸気制御バルブと、機関本体から吸気通路に供給されるブローバイガスを含むPCVガスの流量についてこれを調整する電動のPCVバルブとを備える内燃機関の吸気制御装置において、
フューエルカットが開始されることに基づいて、前記PCVバルブを閉弁方向に操作するとともに前記吸気制御バルブを開弁方向に操作する制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置において、
前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作として予め設定された所定の閉弁量だけ前記PCVバルブを閉弁側に操作し、前記吸気制御バルブの開弁操作として同所定の閉弁量に対応して予め設定された所定の開弁量だけ前記吸気制御バルブを開弁側に操作する
ことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置において、
前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作として前記フューエルカットの開始時点よりも閉弁側の所定開度まで閉弁側に操作し、前記吸気制御バルブの開弁操作として前記吸気制御バルブをPCVバルブの閉弁量に基づいて開弁側に操作する
ことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気制御装置において、
前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作によるPCVガスの減量分と、前記吸気制御バルブの開弁操作による新気の増量分とが互いに相殺する態様で前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気制御装置において、
前記制御手段は、前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を実行したときのフューエルカット中において燃焼室に供給されるガス量と、前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を実行しないときのフューエルカット中において燃焼室に供給されるガス量とを互いに同一のものにすべく、フューエルカットの開始に基づく前記PCVバルブの閉弁操作及び前記吸気制御バルブの開弁操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−163895(P2010−163895A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4992(P2009−4992)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】