説明

凹凸層形成用コーティング組成物および反射板の製造方法

【課題】 液晶表示装置などに用いられる反射板の形成に有用な凹凸層形成用コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】 第1樹脂および第2樹脂を含む凹凸層形成用コーティング組成物であって、この第1樹脂および第2樹脂は、互いに反応する官能基を有する樹脂であり、この第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが2dyne/cm以上であり、この凹凸層形成用コーティング組成物は、塗装された後に表面にランダムな凹凸を有する樹脂層を形成する、凹凸層形成用コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などに用いられる凹凸樹脂層の形成に用いることができる凹凸層形成用コーティング組成物、並びにこれを用いて形成される反射板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型液晶表示装置は、反射板で外光を反射して表示を行う装置である。これは、バックライトなどの光源を備えた透過型液晶表示装置と比べて消費電力が小さく、そのためいわゆるモバイルなどの電池駆動携帯用機器などに利用されている。
【0003】
反射型液晶表示装置に用いられる反射板としては、反射率が高いアルミニウムや銀等の金属薄膜が用いられる。通常の製造方法により製造されるこれらの金属薄膜は、一般に鏡面光沢を有する平坦な表面を有する。ところが、平坦な表面上に光が入射すると、入射光に対して所定角度の領域でのみ強い反射光が得られることとなり、それ以外では反射光がほとんど得られなくなる。このような平坦な表面の金属薄膜を反射板に使用すると、液晶表示の視野角が狭くなってしまうという不具合が生じる。
【0004】
この視野角の低下を防ぐ方法として、反射面に微細な凹凸を形成する方法が挙げられる。反射面が凹凸を有することによって反射光が散乱することとなり、視野角を上げることができるからである。反射面に微細な凹凸を形成する方法としては、主として2種類の方法が挙げられる。第1の方法として、反射面を構成する基材自身の表面に、薬品によりエッチングあるいは研磨等によって凹凸を形成する方法がある。しかしながら、このようにして反射面に凹凸を形成すると、凹凸部の形状の再現性が悪く、微細な光散乱性能の制御が困難になるという問題があった。
【0005】
第2の方法として、感光性樹脂を用い、これをフォトリソグラフィなどの方法でエッチングして表面に凹凸を形成し、この上に反射層を形成する方法がある。しかしながら、このような方法によれば、多数の工程が必要となり製造工程が複雑になるという問題があった。また、規則正しいパターンを形成すると、モアレ現象により良好な反射特性が得られないという問題があった。
【0006】
特開2000−267086号公報(特許文献1)では、このような問題を解決することができる方法として、互いに相分離しやすい複数の種類の樹脂を混合した混合樹脂溶液を用い、これを塗布して乾燥することにより樹脂を相分離させ混合樹脂層の表面に凹凸形状を形成し、光散乱層とする方法が提案されている。この方法では、混合溶液中の少なくとも1種類以上の樹脂と選択被着性を有する面の上に、混合樹脂層が塗布される。具体的には、混合樹脂層として、フッ素基を導入したエポキシ系樹脂とアクリル樹脂とを混合した樹脂が用いられ、選択被着性を有する下地層として、フッ素基を導入したエポキシ系樹脂からなる樹脂層が形成され、この上に混合樹脂層が塗布されている。
【0007】
しかしこのような方法を用いる場合は、下地層として選択被着性を有する層を形成する必要があり、製造工程が複雑であるという問題がある。さらには、フッ素基を導入した樹脂を用いているので、反射層として用いる金属薄膜との密着性が悪く、金属薄膜が剥離しやすいという問題があった。
【0008】
特開2001−305316号公報(特許文献2)では、以下の方法が提案されている。すなわち、第2の樹脂材料として第1の樹脂材料よりも混合溶液中の溶剤に溶解しにくい材料を選択しておくと、プリベークにより溶剤が乾燥して相分離する際、第2の樹脂材料が先に凝集して、液滴になる。このようにして、プリベーク後には、第1の樹脂材料からなる第1樹脂部中に第2の樹脂材料からなる第2樹脂部が分散、保持された樹脂層を形成する。このとき、第2樹脂部の形状が樹脂層表面に現れ、樹脂層の表面に微細な凹凸を形成することができる。これを光散乱層とする方法が提案されている。
【0009】
しかし樹脂の溶剤溶解性の違いを利用した相分離による凹凸形成では、溶剤の揮発速度にその形状が大きく影響を受け、揮発速度を上げると相分離による分散体が小さくなり、凹凸形状が形成されない。すなわち、揮発速度が速い場合は、相分離が意図するようには進まず、その結果、より広い面積をとる界面を形成することができず、粒子化や相分離に基づく凹凸形状形成を達成することができない。こうした理由から加温や減圧等による溶剤の短時間での揮散は行えず、製造工程として短時間化できない。また溶剤の樹脂に対する選択幅も狭く、選択できる樹脂の特性幅も狭くなり、材料設計としておよび配合設計としての選択幅の狭さから管理幅や制御できる凹凸形状の制御幅も狭くなると言える。更に樹脂の溶剤に対する溶解性の差を利用していることから、存在する少なくとも1種の樹脂は適応している溶剤が貧溶媒(溶解性が悪い溶媒)となり、混合液化経時での安定性が悪く、できる塗膜の均一性もこれに伴いムラ等不均一となるという問題が有った。
【0010】
特開2004−69753号公報(特許文献3)には、同種の骨格構造を有し、かつ互いに反応する異なる官能基を有する第1の樹脂及び第2の樹脂と、架橋樹脂粒子とを混合して含み、塗布・乾燥後に第1の樹脂と第2の樹脂が相分離することを特徴とする反射型もしくは半透過型液晶表示装置用塗料組成物が記載されている。この方法によっても凹凸を有する表面を形成することができるが、しかし、相当量の架橋樹脂粒子を含む塗料の調製およびそれの塗布などには凝集を防ぐなどの注意が必要とされる。そのため、樹脂微粒子などを含まない塗料組成物の塗装によって凹凸層を設けることができれば、より簡便である。また、このような塗料組成物は、架橋粒子が含まれることにより、得られる凹凸層表面の凹凸の度合いを示す角度分布が大きい方にシフトする傾向がある。このような角度分布が大きい方にシフトした凹凸層を液晶表示装置の反射板に用いる場合は、最適な光学特性を得ることができず、液晶表示の光学特性が劣るおそれがある。
【0011】
【特許文献1】特開2000−267086号公報
【特許文献2】特開2001−305316号公報
【特許文献3】特開2004−69753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記従来技術の問題点解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、液晶表示装置などに用いられる凹凸層の形成に有用な凹凸層形成用コーティング組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
第1樹脂および第2樹脂を含む凹凸層形成用コーティング組成物であって、
該第1樹脂および第2樹脂は、互いに反応する官能基を有する樹脂であり、
該第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが2dyne/cm以上であり、
該凹凸層形成用コーティング組成物は、塗装された後に表面にランダムな凹凸を有する樹脂層を形成する、凹凸層形成用コーティング組成物、
を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0014】
この凹凸層形成用コーティング組成物の1態様として、上記第1樹脂が、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂およびポリウレタン樹脂からなる郡から選択される1種以上を骨格として含み、かつ水酸基を有する樹脂(a−1)であって、第2樹脂がメラミン樹脂(b−1)である、凹凸層形成用コーティング組成物が挙げられる。
【0015】
この凹凸層形成用コーティング組成物の他の1態様として、上記第1樹脂がカルボキシル基含有アクリル樹脂(a−2)であって、第2樹脂がエポキシ樹脂(b−2)である、凹凸層形成用コーティング組成物が挙げられる。
【0016】
上記第1樹脂の重量平均分子量が500〜500000であり、上記第2樹脂の重量平均分子量が200〜500000であるのが好ましい。
【0017】
本発明はさらに、
基材に上記凹凸層形成用コーティング組成物を塗装する塗装工程、
得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、および
乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、
を包含する、凹凸樹脂層の形成方法も提供する。
【0018】
上記乾燥工程は減圧乾燥によって行われるのが好ましい。
【0019】
上記硬化工程は熱硬化によって行われるのが好ましい。
【0020】
また本発明は、上記記載の凹凸樹脂層の形成方法により得られる、凹凸樹脂層も提供する。
【0021】
さらに本発明は、上記記載の凹凸樹脂層の形成方法により形成された凹凸樹脂層の凹凸表面上に反射層を設ける工程を包含する、反射板の製造方法も提供する。
【0022】
さらに本発明は、基材に上記記載の凹凸層形成用コーティング組成物を塗装する塗装工程であって、この基材は反射層を有する基材であり、凹凸層形成用コーティング組成物はこの反射層の上に塗装される塗装工程、
得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、および
乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、
を包含する、反射板の製造方法も提供する。
【0023】
上記乾燥工程は減圧乾燥によって行われるのが好ましい。
【0024】
また上記硬化工程は熱硬化によって行われるのが好ましい。
【0025】
本発明はさらに、上記記載の反射板の製造方法により得られる反射板、そしてこの反射板を備える液晶表示装置も提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のコーティング組成物を用いることにより、表面に凹凸を有した樹脂層を容易に形成することができる。これを用いて液晶表示装置の反射板を容易に製造することができる。本発明の反射板を用いることにより、広い視野角で明るい表示を得ることができ、簡単な工程で効率良く、製造上の品質が安定した反射板を製造することができる。この凹凸層は自然発生的に凹凸配置が決まるため、不規則な凹凸形状を形成することができる。そのため、本発明のコーティング組成物を用いて作成された反射板は、凹凸配置の規則性に起因するモアレが発生しないという特長を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
凹凸層形成用コーティング組成物
本発明の凹凸層形成用コーティング組成物は、基材上に塗装することにより得られる塗膜を乾燥させることによって、表面に凹凸形状を有する樹脂層が形成される組成物である。この凹凸層形成用コーティング組成物には、第1樹脂および第2樹脂の2種類の樹脂が少なくとも含まれる。これらの第1樹脂および第2樹脂は、コーティング組成物を塗装した後に、それぞれの表面張力の差に基づいて第1樹脂および第2樹脂が局在化すると考えられる。
【0028】
本発明においては、第1樹脂および第2樹脂は、互いに反応する官能基を有する樹脂を使用する。第1樹脂が有する官能基と第2樹脂が有する官能基とが反応することによって、樹脂層が硬化する。このような官能基の組合せとしては、例えば、水酸基とメラミン樹脂のイミノ基、メチロール基、アルコキシド基との組合せ、水酸基と(ブロック)イソシアネート基との組合せ、水酸基と酸(無水物)基との組合せ、水酸基とシラノール基との組合せ、エポキシ基とカルボキシル基との組合せ、エポキシ基とアミノ基との組合せ、エポキシ基と水酸基との組合せ、エポキシ基とシラノール基との組合せ、オキサゾリン基とカルボキシル基との組合せ、活性メチレン基とアクリロイル基との組合せ等の、異なる官能基の組み合わせが挙げられる。なおここにいう「互いに反応する官能基」とは、第1樹脂および第2樹脂のみを混合しただけでは反応は進行しないかまたは反応速度が遅いが、触媒等を併せて混合することにより互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒としては、例えば光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。
【0029】
本発明で使用される第1樹脂および第2樹脂は、第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが2dyne/cm以上である樹脂を使用する。この△γは3dyne/cmであるのが好ましく、4dyne/cmであるのがより好ましい。△γの上限は30dyne/cmであるのが好ましく、20dyne/cmであるのがより好ましい。△γが2dyne/cmより小さい場合は、表面張力の差に基づいて形成される十分な凹凸形状が得られない。また、△γが30dyne/cmを超える場合は、溶液状態での均一な状態が保てなくなり、安定性が低下する恐れがある。なお、均一な状態が保たれていない溶液(例えば分離した溶液など)を塗布する場合は、得られる樹脂層は二層構造となり、凹凸層を得ることができない。第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが上記範囲である樹脂を使用することによって、基材にコーティング組成物を塗装した後に、表面張力の差に基づいて第1樹脂および第2樹脂が局在化して、表面にランダムな凹凸を有する樹脂層が得られることとなる。
【0030】
表面張力とは、異なる相の界面の面積を最小にしようとする力である。本発明で用いられる第1樹脂および第2樹脂は、水などの液体と比べると粘度が非常に高い。そのため、リング法(吊環法)などによって樹脂の表面張力をそのまま測定するのは非常に困難である。そこで本発明においては、第1樹脂および第2樹脂の表面張力は、特定の溶媒の表面張力を測定し、次いでその溶媒に樹脂固形分40重量%の濃度で樹脂を溶解させた溶液を調製して表面張力を測定し、得られた測定値から溶媒の表面張力値を減じた値を算出することにより、第1樹脂の表面張力および第2樹脂の表面張力の差△γを測定している。このような方法において、表面張力の測定は、例えばビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターなどを使用して測定することができる。
【0031】
理論に拘束されるものではないが、本発明において用いられる第1樹脂および第2樹脂は、乾燥工程においてそれぞれの表面張力が異なることに起因して局在化が生じる。そして硬化工程においては、それぞれの樹脂の表面張力が異なるため凝集力も異なることとなり、これにより表面に凹凸を有する樹脂層が形成されることとなると考えられる。本発明のコーティング組成物は、このように使用する樹脂の表面張力に基づいて凹凸が形成されるため、本発明の凹凸樹脂層の表面形状は、作為的に形成された凹凸と異なり特別な規則性を有せず、ランダムな凹凸形状となる。このため、規則性を有する凹凸において生じ得る、光の干渉作用によるモアレ発生などの不都合が生じないという利点がある。
【0032】
なお、本発明においては、上記のとおり、第1樹脂と第2樹脂とは互いに反応する。そのため、本発明により得られる凹凸樹脂層においては、これらの第1樹脂および第2樹脂は成分的に完全な分離状態にあるわけではなく、それぞれの樹脂構成成分の存在量が偏った不均一な状態にあることとなる。
【0033】
本発明の凹凸層形成用コーティング組成物のある具体的な実施態様として、第1樹脂として、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂およびポリウレタン樹脂からなる郡から選択される1種以上を骨格として含み、かつ水酸基を有する樹脂(a−1)を使用することができ、そして第2樹脂としてメラミン樹脂(b−1)を使用することができる。この場合、第1樹脂(a−1)が有する水酸基と、第2樹脂(b−1)が有するイミノ基、メチロール基および/またはアルコキシド基と、が反応して架橋が形成され、硬化する。
【0034】
第1樹脂として用いることができる樹脂(a−1)として、(メタ)アクリル樹脂、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂など;オレフィン樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体など;ポリエーテル樹脂、これは分子鎖中にエーテル結合を含む樹脂であり、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど;ポリエステル樹脂、これは分子鎖中にエステル結合を含む樹脂であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレートなど;ポリウレタン樹脂、これは分子鎖中にウレタン結合を含む樹脂である;などが挙げられる。さらにこれらの樹脂の共重合物も使用することができる。そして本発明においては、これらの樹脂であって、かつ水酸基を有する樹脂を使用する。第1樹脂(a−1)の水酸基価(OH価)は、好ましくは10〜400であることが好ましい。樹脂(a−1)のOH価が10未満の場合は硬化が不十分となり、成膜性(樹脂層形成能力)の低下、得られる樹脂層の耐薬品性の低下が生じるおそれがある。一方、OH価が400を超える場合は、架橋密度が高くなりすぎることによる、得られる樹脂層の可撓性の低下、機械的強度の低下が生じるおそれがある。
【0035】
上記樹脂(a−1)のうち、(メタ)アクリル樹脂またはオレフィン樹脂であって水酸基を有する樹脂が、本発明において特に好ましく使用される。これらの樹脂は、第2樹脂としてメラミン樹脂(b−1)を用いる組み合わせにおいて、より良好な凹凸表面を有する樹脂層を形成することができるからである。
【0036】
この態様において第2樹脂として用いることができるメラミン樹脂(b−1)は、一般に種々の表面張力値を有する樹脂がある。本発明においては、上記樹脂(a−1)の表面張力との差が2以上となるメラミン樹脂(b−1)を使用する。そして、メラミン樹脂(b−1)として、上記第1樹脂(a−1)の表面張力より低い表面張力を有する樹脂を使用するのがより好ましい。メラミン樹脂(b−1)は、一般に市販されているものを用いることができ、例えば日本サイテックインダストリーズ株式会社、大日本インキ株式会社、三井東圧株式会社などから購入することができる。
【0037】
本発明の凹凸層形成用コーティング組成物の他の具体的な実施態様として、第1樹脂として、カルボキシル基含有アクリル樹脂(a−2)を使用することができ、そして第2樹脂としてエポキシ樹脂(b−2)を使用することができる。この場合、第1樹脂(a−2)が有するカルボキシル基と、第2樹脂(b−2)が有するエポキシ基とが反応して架橋が形成され、硬化する。
【0038】
第1樹脂として用いることができる樹脂(a−2)として、アクリル樹脂、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、または(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂など、のアクリル樹脂であって、その骨格上にカルボキシル基を有する樹脂が挙げられる。第1樹脂(a−2)のこのカルボキシル基と、第2樹脂(b−2)が有するエポキシ基とが反応して架橋が形成され、硬化する。第1樹脂(a−2)の酸価は、20〜400であることが好ましく、50〜250であることがより好ましい。第1樹脂(a−2)の酸価が20未満の場合は、硬化が不十分となり、成膜性(樹脂層形成能力)の低下、得られる樹脂層の耐薬品性の低下が生じるおそれがある。一方、酸価が400を超える場合は、架橋密度が高くなりすぎることによる、得られる樹脂層の可撓性の低下、機械的強度の低下が生じるおそれがある。
【0039】
この態様において第2樹脂として用いることができるエポキシ樹脂(b−2)は、一般的に使用される任意のエポキシ樹脂を使用することができる。使用できるエポキシ樹脂(b−2)として、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ基含有ポリマーも、エポキシ樹脂(b−2)として使用することができる。本明細書において「エポキシ樹脂」とは、エポキシ基を有する樹脂をいい、その樹脂の骨格の構造は限定されない。
【0040】
エポキシ樹脂(b−2)として使用することができるエポキシ基含有ポリマーとして、例えば、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー30〜70質量%、水酸基を有するラジカル重合性モノマー10〜50質量%、およびその他のラジカル重合性モノマーを残量含むモノマー組成物を共重合して得ることができる共重合体が挙げられる。
【0041】
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4エポキシ シクロヘキサニルメチルメタクリレート等が挙げられる。水酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等、アクリル酸4ヒドロキシブチル、プラクセルFM−1(ダイセル社製)等が挙げられる。その他のラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n、i、およびt−ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n、i、およびt−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等)、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのモノマーを、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート等のラジカル重合開始剤の存在下で重合させることによって、エポキシ基含有ポリマーを得ることができる。
【0042】
これらのエポキシ樹脂(b−2)のうち、エポキシ樹脂(b−2)の表面張力と上記第1樹脂(a−2)の表面張力との差が2以上あるものを使用する。そして上記第1樹脂(a−2)の表面張力より低い表面張力を有するものを使用するのが好ましい。
【0043】
また第2樹脂として使用するエポキシ樹脂(b−2)は、エポキシ当量100〜5000のエポキシ樹脂を使用するのが好ましく、エポキシ当量160〜2000のエポキシ樹脂を使用するのがより好ましい。
【0044】
上記のいずれの態様においても、第1樹脂の重量平均分子量は、500〜500000、特に1000〜100000であることが好ましい。第1樹脂の重量平均分子量が500000を超えるとポリマー粘度が高くなり、作業性などが悪くなる恐れがある。一方、重量平均分子量が500未満の場合には、局在化が不十分となる恐れがある。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により求めることができる。
【0045】
また、第2樹脂の重量平均分子量は、200〜500000、特に400〜100000であることが好ましい。第2樹脂の重量平均分子量が500000を超えるとポリマー粘度が高くなり、作業性などが悪くなる恐れがある。一方、重量平均分子量が200未満の場合には、局在化が不十分となる恐れがある。この重量平均分子量もゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により求めることができる。
【0046】
本発明の凹凸層形成用コーティング組成物は、第1樹脂と第2樹脂とを溶媒中で混合することによって調製される。用いられる溶媒は特に限定されるものではなく、塗装の下地となる部分の材質や、バインダー樹脂及び塗装方法などを考慮して適宜選択される。溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;n−ブタン、n−へキサン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;i−プロパノール、i−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒のうちエステル系、エーテル系、アルコール系溶媒が好ましく、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、本発明のコーティング組成物は、水系のコーティング組成物であってもよい。従って水系の溶媒が用いられてもよい。
【0047】
第1樹脂と第2樹脂は、樹脂の固形分重量比(第1樹脂/第2樹脂)で表して10/90〜90/10の範囲で用いられるのが好ましく、70/30〜40/60の範囲で用いられるのがより好ましい。このような比率で用いることによって、良好な凹凸表面を有し、そして物理的強度などに優れた樹脂層を得ることができる。
【0048】
また、本発明のコーティング組成物中には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス類のようなレオロジーコントロール剤、アセチレンジオール類のような表面調整剤(レベリング剤)、カップリング剤、可塑剤、分散剤等が挙げられる。
【0049】
本発明のコーティング組成物は、必要に応じてさらに粒子成分を含んでもよい。このような粒子成分は、特開2000−241807号公報に記載される公知の方法で調製することができる。但し、本発明のコーティング組成物は、このような粒子を使用することなく表面に凹凸形状を設けることができるものであり、本質的には粒子成分の使用は必要としない。また、このような粒子成分を使用する場合であっても、その使用量は従来のものと比べてかなり少ない量である。例えば、コーティング組成物の固形分重量に対して10重量%を超える量で粒子成分が含まれる場合は、凝集物の生成など粒子成分が含まれることに由来する不利益が生じる恐れがある。
【0050】
本発明における、粒子成分を使用することなく凹凸樹脂層が得られることの利点として、製造装置の洗浄性が向上すること、粒子成分の凝集が発生しないため光学特性が向上すること、などが挙げられる。
【0051】
凹凸樹脂層
本発明の凹凸層形成用コーティング組成物を用いて、凹凸樹脂層を形成することができる。この凹凸樹脂層は、下記工程:
基材に上記凹凸層形成用コーティング組成物を塗装する塗装工程、
得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、および
乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、
を包含する方法によって形成される。
【0052】
凹凸層形成用コーティング組成物を基材に塗装する方法は、特に限定されるものではなく、使用するコーティング組成物や塗装工程の状況に応じて適宜選択される。例えばスピンコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、グラビアコーティング等の種々の塗装方法を採用することができる。
【0053】
こうして得られた塗膜を乾燥させることによって、第1樹脂および第2樹脂が局在化すると考えられる。得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程は、減圧乾燥によって行われるのが好ましい。減圧乾燥することにより、コーティング組成物中に含まれる溶媒を除去し、そして第1樹脂および第2樹脂を良好に局在化させることができるからである。そして第1樹脂および第2樹脂を良好に局在化させるためには、加熱を伴わずに減圧乾燥を行うのが好ましい。この乾燥段階で熱を加えると、第1樹脂および第2樹脂がレベリングし、局在化が良好になされない恐れがあるからである。
【0054】
乾燥工程によって第1樹脂および第2樹脂が局在化した塗膜を硬化させることによって、凹凸樹脂層が形成される。硬化方法としては、加熱することによって熱硬化させる方法、そして光照射によって硬化させる方法などが挙げられる。熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、さらに好ましくは120〜250℃である。加熱時間は加熱温度により変化するが、例えば、加熱温度が120〜250℃の場合は10〜180分程度が適当である。また光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm〜10J/cmであることが好ましく、50mJ/cm〜1J/cmであるのがより好ましい。ここで照射光される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。
【0055】
反射板
こうして得られた凹凸樹脂層を用いて、反射板を製造することができる。反射板を製造する1の方法として、得られた凹凸樹脂層の凹凸表面上に反射層を設ける方法が挙げられる。この方法では、反射層は、凹凸樹脂層の表面の凹凸形状を引き継ぐようにこの凹凸表面上に設けられる。
【0056】
反射層を設ける方法は、特に限定されるものではなく、要求される反射性能等を考慮して適宜選択されるものである。具体的には、アルミニウム、銀等の高反射性の金属を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって薄膜に形成する方法などが挙げられる。また、メタリック塗料などにおいて用いられる金属フレークなどの光輝性顔料を含有した塗料を塗装することにより金属薄膜を形成してもよい。
【0057】
反射層を設けるのに使用される金属フレークとしては、入手の容易さ及び化学的安定性などの面からアルミニウムフレークが最も好ましく用いられる。その他の金属フレークとしては、例えば金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等の金属フレークなどが挙げられる。また、マイカ粉などの燐片状の顔料の表面に金属薄膜を形成した顔料を用いてもよい。
【0058】
また金属フレークとしては、蒸着金属膜を粉砕して得られる金属フレークを用いてもよい。このような金属フレークは非常に厚みが薄く、面状に配向させることにより鏡面光沢に近い反射面を形成することができる。このような金属フレークとしては、例えば特開平2−8268号公報や国際公開WO93/23481号公報等に開示された製造方法により製造することができる。具体的には、OPP(配向ポリプロピレン)、CPP(結晶性ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックフィルムからなるベースフィルム上に金属蒸着を行い、得られた蒸着金属膜をベースフィルムから剥離し、これを粉砕することにより金属フレークとすることができる。このような金属フレークを配向させることにより、反射性能に優れた反射面を形成することができるので、高い反射率を有する反射層を製造することができる。
【0059】
反射板を製造する他の方法として、反射層を有する基材に本発明の凹凸層形成用コーティング組成物を塗装することによって反射板を製造する方法が挙げられる。基材に反射層を設ける方法として、上記の反射層を設ける方法を使用することができる。こうして得られた反射層を有する基材を用いて、反射層の上に凹凸樹脂層を上記と同様の方法で設けることによって、反射板を製造することができる。
【0060】
反射板の製造において、凹凸樹脂層及び反射層の厚みは、特に限定されるものではなく
、種々の要因を考慮して適宜設定することができる。凹凸樹脂層の厚みとして、例えば0.1〜100μmほどを例示することができ、反射層の厚みとして、例えば0.01〜10μmほどを例示することができる。
【0061】
また、本発明においては、反射層の厚みや、金属フレークの含有量等を調整することなどによって、反射板を半透過性反射板とすることもできる。このような半透過性の反射板を用いることによって、半透過反射型(透過反射兼用型)の液晶表示装置を製造することができる。
【0062】
必要に応じて、上記反射板の上にさらに無機薄膜を設けて、凹凸増加層としてもよい。このような無機薄膜としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(TiO)などの薄膜があげられる。ITOを凹凸増加層として設ける場合には、これを透明電極層として用いてもよい。凹凸増加層を形成することにより、その下地層である反射層の表面の凹凸を増加させることができる。
【0063】
凹凸増加層は、一般にスパタリングや蒸着等により形成される。形成の際にその下地層である反射層及び表面凹凸層が加熱される。このとき、表面凹凸層と反射層及び凹凸増加層との熱膨張率の差、つまり凹凸増加層が無機層(無機薄膜層)であるのに対して、表面凹凸層は樹脂層であり熱膨張率および熱収縮率がより高いことに由来して、反射層の表面の凹凸が増加するものと考えられる。
【0064】
また、凹凸増加層は蒸着等の方法により形成でき、その厚みは特に限定されるものではなく種々の要因を考慮して適宜設定することができる。厚みの一例として、0.01μm〜10μmの厚みを例示することができる。
【0065】
こうして製造された反射板を用いて、液晶表示装置を製造することができる。本発明の液晶表示装置は、液晶層を介して入射した光を反射板で反射して画像を表示することができ、例えば、TN(ツインテッドネマチック)型、STN(スーパーツイステッドネマチック)型、GH(ゲストホスト)型ディスプレイや、強誘電性液晶ディスプレイなど従来から知られている液晶ディスプレイに適応することができる。また、駆動方式も得に限定されるものではなく、単純マトリクスやアクティブマトリクスなど従来から知られている駆動方式の液晶ディスプレイに適応することができる。
【0066】
図1は、本発明の液晶表示装置の一実施態様例の断面図である。本実施例においては、凹凸樹脂層2の上に反射層3が設けられることにより、反射板が構成されている。凹凸樹脂層2は、基板1の上に設けられている。基板1としては、液晶表示装置に用いることができる一般的な基板を用いることができ、例えばガラス基板やプラスチック基板などを用いることができる。プラスチック基板としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホン、環状非晶質ポリオレフィンなどのプラスチックフィルム等を用いることができる。凹凸樹脂層2は、本発明のコーティング組成物から形成されている。本発明のコーティング組成物を塗装・乾燥することにより、コーティング組成物中の第1樹脂および第2樹脂が局在化する。この局在化により、凹凸表面を有する凹凸樹脂層が形成される。
【0067】
凹凸樹脂層2の上には、反射層3が設けられている。反射層3は、凹凸樹脂層2の表面の凹凸形状を引き継ぐように形成されている。従って、反射層3の表面にも凹凸形状が形成されており、凹凸樹脂層2の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状を有している。この実施態様例においては、反射層3の上に凹凸増加層4が設けられている。
【0068】
凹凸増加層4の上には、カラーフィルター層5が設けられており、カラーフィルター層5の上には、平坦化層6が設けられている。平坦化層6は、透明性を有する塗膜などから形成することができる。
【0069】
平坦化層6に上には、ITOなどからなる透明駆動電極7が形成されている。他方の基板10も、基板1と同様あるいは異なる材質から形成されてものを用いることができ、基板10の内側には、ITOなどからなる透明駆動電極9が形成されている。透明駆動電極7と透明駆動電極9の間に、液晶層8が挟まれ、保持されている。
【0070】
液晶表示装置内に入射した光は、反射層3によって反射されるが、反射層3の表面は上述のように凹凸樹脂層2に基づく微細な凹凸形状を有しているので、様々な方向から入射した光が散乱して反射される。従って、視野角の広い、明るい画面を表示することができる。
【0071】
また凹凸増加層4としてITOを形成する場合、これを透明駆動電極として用いてもよい。
【0072】
図2は、本発明の液晶表示装置の他の実施態様例の断面図である。本実施例においては、反射層3の上に凹凸樹脂層11が設けられることにより反射板が構成されている。反射層3は、基板1の上に設けられている。反射層3の上に設けられる凹凸樹脂層11は、本発明のコーティング組成物から形成されている。本発明のコーティング組成物を塗装・乾燥した後、第1樹脂および第2樹脂が局在化することにより、この局在化により、凹凸表面を有する凹凸樹脂層が形成される。
【0073】
凹凸樹脂層11の上には、図1に示す実施例と同様に、カラーフィルター層5、平坦化層6、透明駆動電極7、液晶層8、透明駆動電極9、及び基板10が設けられている。
【0074】
液晶表示装置に入射した光は、反射層3の表面で反射されるが、反射光は凹凸樹脂層11を通る際、凹凸樹脂層11内で表面の凹凸形状によって散乱する。このため、様々な方向から入射した光が散乱して反射される。このため、視野角が広く、明るい画像を表示することができる。
【0075】
図1及び図2に示す液晶表示装置において、反射層3を半透過性の反射層とすることにより半透過反射型の液晶表示装置とすることができる。半透過反射型とする場合は、基板1の下側にバックライト等の光源が設けられた構成となる。
【0076】
なお、本発明の液晶表示装置は、図1及び図2に示す構造のものに限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表わす。
【0078】
合成例1 水酸基を有するアクリル樹脂溶液1の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を320.0gし込み、攪拌下で110℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)302.0g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)128.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)47.0g、メタアクリル酸(MAA)23.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.0gからなる、モノマーおよび開始剤溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分110℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びPFG12.0gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後110℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分55%、重量平均分子量60000の樹脂溶液1を得た。得られた樹脂は、水酸基価140、酸価30であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
【0079】
合成例2 水酸基を有するアクリル樹脂溶液2の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を429gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)173.0g、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)47.0g、アクリル酸(AA)23.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.0gからなる、モノマーおよび重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。
【0080】
滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びPFG12.0gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量14000の樹脂溶液2を得た。得られた樹脂は、水酸基価180、酸価40であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
【0081】
合成例3 エポキシ基含有アクリル樹脂溶液3の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を457.6gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)32.0g、スチレン(ST)72.0g、グリシジルメタクリレート(GMA)216.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.4gからなる、モノマーおよび重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。
【0082】
滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びPFG7.4gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量16600の樹脂溶液3を得た。得られた樹脂は、エポキシ当量211であり、これは本発明において第2樹脂として使用できる。
【0083】
合成例4 カルボキシル基含有アクリル樹脂溶液4の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を433gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにスチレン(ST)155.9g、n−ブチルアクリレート(NBA)52.4g、アクリル酸91.7g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート9.0gからなる、モノマーおよび重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.5g及びPFG6.9gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量10000の樹脂溶液4を得た。得られた樹脂は、酸価238であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
【0084】
合成例5 水酸基を有するアクリル樹脂溶液5の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を433gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにn−ブチルメタクリル酸メチル(NBMA)201.9g、エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)54.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)41.8g、メタアクリル酸(MAA)2.3g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.0gからなる、モノマーおよび重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.5g及びPFG6.9gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌して更に反応を継続し、不揮発分40%、重量平均分子量14000の樹脂溶液5を得た。得られた樹脂は、水酸基価60、酸価5であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
【0085】
合成例6 樹脂粒子の合成
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管、冷却管及びデカンターを備えた反応容器に、ビスヒドロキシエチルタウリン213g、ネオペンチルグリコール208g、無水フタル酸296g、アゼライン酸376g及びキシレン30gを仕込み昇温した。反応により生成した水はキシレンと共沸させて除去した。環流開始より約3時間かけて反応液温210℃とし、カルボン酸相当の酸価が125mgKOH/gになるまで攪拌と脱水とを継続して反応させた。液温140℃まで冷却させた後、「カージュラーE10」(商品名:シェル社製のバーサティック酸グリシジルエステル)500gを30分で滴下し、その後2時間攪拌を継続して反応を終了した。酸価55mgKOH/g、水酸基価91mgKOH/g及び数平均分子量1250の両性イオン基含有ポリエステル樹脂を得た。
【0086】
この両性イオン基含有ポリエステル樹脂10g、脱イオン水140g、ジメチルエタノールアミン1g、スチレン50g及びエチレングリコールジメタクリレート50gをステンレス製ビーカー中で激しく攪拌することによりモノマー懸濁液を調整した。また、アゾビスシアノ吉草酸0.5g、脱イオン水40g及びジメチルエタノールアミン0.32gを混合することにより開始剤水溶液を調整した。
【0087】
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に、上記両イオン基含有ポリエステル樹脂5g、脱イオン水280g及びジメチルエタノールアミン0.5gを仕込み、80℃に昇温した。ここに、モノマー懸濁液251gと開始剤水溶液40.82gとを同時に60分かけて滴下し、さらに60分反応を継続した後、反応を終了した。
【0088】
以上のようにして得られた架橋樹脂粒子エマルジョンに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)を加え、減圧下共沸蒸留により水を除去し、媒体をPGMACに置換して、固形分含有量30.0%の架橋粒子PGMAC溶液を得た。
【0089】
実施例1
ブチル化メラミン樹脂A(第2樹脂、分子量1200)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)を加えて混合し、樹脂固形分33.8重量%の溶液とした。得られた溶液17.75部、合成例1の、水酸基を有するアクリル樹脂溶液1(第1樹脂)16.36部を、希釈溶媒であるPGMAC 65.68部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。
【0090】
反射板の形成
得られたコーティング組成物を用いて、反射板を形成した。まず、コーティング組成物を0.7mmの厚みのガラス基板の上に回転数1000rpm、30秒にてスピンコーター塗装し、減圧下(0.1torr)で5分間乾燥した後、クリーンオーブンにて235℃で60分間加熱してコーティング組成物を硬化させ、凹凸樹脂層を形成した。この樹脂層の厚みは、約2.5μmであった。
【0091】
次に、この塗膜上にスパッタリング法で膜厚0.1μmのアルミニウム薄膜からなる反射層を形成し、反射板を形成した。こうして得られた反射板のデジタル顕微鏡による凹凸表面拡大写真を、図3に示す。
【0092】
実施例2
ブチル化メラミン樹脂A(第2樹脂、分子量1200)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)を加えて混合し、樹脂固形分33.8重量%の溶液とした。得られた溶液17.75部、合成例2の、水酸基を有するアクリル樹脂溶液2(第1樹脂)22.50部を、希釈溶媒であるPGMAC 59.55部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0093】
実施例3
合成例3のエポキシ基含有アクリル樹脂溶液3(第2樹脂)22.50部、および合成例4のカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液4(第1樹脂)15.00部を、希釈溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)62.34部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0094】
実施例4
メチルブチル化メラミン樹脂B(第2樹脂、分子量900)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGAMC)を加えて混合し、樹脂固形分34.0重量%の溶液とした。得られた溶液17.65部、および合成例2の、水酸基を有するアクリル樹脂溶液2(第1樹脂)22.50部を、希釈溶媒であるPGMAC 59.65部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0095】
実施例5
メチルブチル化メラミン樹脂C(第2樹脂、分子量700)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)を加えて混合し、樹脂固形分34.0重量%の溶液とした。得られた溶液17.65部、および合成例2の、水酸基を有するアクリル樹脂溶液2(第1樹脂)22.50部を、希釈溶媒であるPGMAC 59.65部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0096】
比較例1
ブチル化メラミン樹脂A(第2樹脂に相当、分子量1200)に、PGAMCを加えて混合し、樹脂固形分33.8重量%の溶液とした。得られた溶液17.75部、合成例5の、水酸基を有するアクリル樹脂溶液5(第1樹脂に相当)22.50部を、希釈溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)59.55部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0097】
比較例2
合成例3のエポキシ基含有アクリル樹脂溶液3(第2樹脂)15.75部、および合成例4のカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液4(第1樹脂)6.75部、合成例6より得られた粒子成分A 20.00部を、希釈溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)57.34部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0098】
比較例3
フッ素含有エポキシ樹脂(日本メクトロン社製エポキシ樹脂、商品名AFEP、第2樹脂に相当)に、PGMACを加えて混合し、樹脂固形分40重量%の溶液とした。得られた溶液25.13部、カルボキシル基含有アクリル樹脂溶液4(第1樹脂に相当)12.38部を、希釈溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)62.30部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0099】
比較例4
アクリル系ポジ型感光材料(第1樹脂に相当)を、PGMACで固形分40重量%に希釈した溶液を得た。また、スチレン系ポジ型感光材料(第2樹脂に相当)を、PGMACで固形分40重量%に希釈した溶液を得た。アクリル系ポジ型感光材料の溶液15.00部、およびスチレン系ポジ型感光材料の溶液22.50部を、希釈溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)62.30部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0100】
比較例5
メチル化メラミン樹脂D(分子量550)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)を加えて混合し、樹脂固形分34.0重量%の溶液とした。得られた溶液17.65部、および合成例2の、水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂に相当)22.50部を、希釈溶媒であるPGMAC 59.65部に加えて混合し、次いでSF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合して、凹凸層形成用コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様に反射板を形成した。
【0101】
以下の表1および表2は、第1樹脂、第2樹脂などの樹脂成分の固形分重量比を示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
評価等
こうして形成した反射板について以下の評価を行った。
【0105】
表面張力および△γの測定
上記合成例で調製した樹脂およびメラミン樹脂の表面張力、および第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γを求めた。
測定方法A
プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒中に、樹脂固形分40重量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。こうして得られた測定値を下記表の「測定値」の欄に示す。一方、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力を同条件で測定したところ29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力値を減じた数値を、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)とした。
測定方法B
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒中に、樹脂固形分40重量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。こうして得られた測定値を下記表の「測定値」の欄に示す。一方、同条件で溶媒の表面張力を測定したところ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒の表面張力は31.0dyne/cmであり、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力は29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒の表面張力値を減じ、次いでPGMAC溶媒の表面張力とPFG溶媒の表面張力との差(2.0dyne/cm)を減じることにより、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)を算出した。
測定方法C
ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒中に、樹脂固形分40重量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。こうして得られた測定値を下記表の「測定値」の欄に示す。一方、同条件で溶媒の表面張力を測定したところ、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒の表面張力は32.0dyne/cmであり、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力は29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒の表面張力値を減じ、次いでPGMAC溶媒の表面張力とPFG溶媒の表面張力との差(3.0dyne/cm)を減じることにより、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)を算出した。
【0106】
上記3種の測定方法を、測定対象としている樹脂の合成時に用いた溶媒と同一の溶媒を用いる測定方法により、表面張力を測定した。こうして得られた第1樹脂のγ(PFG)および第2樹脂のγ(PFG)の数値の差を求めることにより、第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γを求めた。こうして求めた各実施例および比較例における△γを、表3および表4に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
樹脂層の凹凸表面形状の評価
実施例および比較例において形成した反射板の凹凸樹脂層の凹凸表面について、目視観察およびレーザー顕微鏡観察を行い、凹凸表面形状を評価した。以下の基準で評価を行った。
【0110】
○ :目視観察において白濁が認められる。目視評価による塗布面の蛍光灯の映り込みも小さい。レーザー顕微鏡観察においてRa≧0.15μm。
○△:目視観察においてやや白濁が認められる。目視評価による塗布面の蛍光灯の映り込みも小さい。レーザー顕微鏡観察においてRa≧0.08μm。
△ :目視観察においてわずかに白濁が認められる。蛍光灯の映り込みが多少ある。レーザー顕微鏡観察においてRa≧0.05μm。
△×:目視観察においてほぼクリアーである。蛍光灯の映り込みが確認される。レーザー顕微鏡観察においてRa≧0.02μm。
× :目視観察においてクリアーである。鏡面状態であり、蛍光灯の映り込みが確認される。レーザー顕微鏡観察においてRa≦0.02μm。
【0111】
分光反射率
分光反射率は物体から反射する波長λの分光放射束Фrλと物体に入射する波長λの分光放射束Фiλとの比
【0112】
【数1】

【0113】
である。得られた反射板の分光反射率について、分光測色計(ミノルタ社製、CM−1000)を用いて反射率を測定した。この数値が高いほど、全面に凹凸形状が密に形成されているということができる。またこの数値が小さいほど、平坦な形状であるということができる。
【0114】
変角特性L*
変角光度計(村上色彩技術研究所製、Gonio−spectrophotometerGSP−2)により変角反射特性を測定した。表5および表6にD65−10°視野の光源を用い、入射角45°時の受光角30°でのL*値を示す。この数値が高いほど、全面に凹凸形状が密に形成されているといることができる。またこの数値が低い場合は平坦な形状であるということができる。
【0115】
密着性
密着性の評価は、JIS−K5400に準じて行った。得られた凹凸樹脂層の上に、カッターを用いて1mm幅で縦及び横方向に切れ目を形成することにより碁盤目を100個形成し、これを粘着テープで剥離し、100個の碁盤目のうち剥離しなかった碁盤目の数により、以下の基準で評価した。
【0116】
○ :100個
○△:99〜75個
△ :74〜50個
△×:49個〜25個
× :24個以下
【0117】
なお、密着性については、初期密着性、耐熱試験後の密着性、耐薬品試験後の密着性、温水試験後の密着性を評価した。
初期密着性:各サンプルについて上記の密着性試験方法に従い測定したものである。
耐熱試験後の密着性:各サンプルを220℃で180分加熱した後の密着性である。
耐薬品試験後の密着性:各サンプルを5%KOH水溶液中50℃で60分間浸漬した後の密着性である。
温水試験後の密着性:各サンプルを70℃の温水中に60分間浸漬した後の密着性である。
【0118】
コーティング組成物の状態の評価
実施例1〜5、比較例1〜5のコーティング組成物について、状態を目視で観察し、評価した。コーティング組成物の状態が均一なものを○とし、分離が確認できるものを×とした。コーティング組成物が分離した状態とは、分離液界面が目視にて確認できる状態である。
【0119】
塗膜外観の評価
実施例1〜5、比較例1〜5のコーティング組成物を製造テストラインにて100枚ガラス基板上に塗装し乾燥後の状態を蛍光灯下目視判断した。不具合が無い場合を○、ムラ等均一性不良である場合、粒子の凝集物等による不具合が有る場合を×とした。
【0120】
これらの評価試験結果を、表5および表6に示す。
【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
表5および表6に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜5のコーティング組成物を用いた場合は、高い分光反射率およびL*値を有する反射板が得られている。この結果から、実施例1〜5のコーティング組成物を用いることにより、表面張力の差による凹凸形状が形成され、全面に大きな凹凸を有する表面形状が形成されたことが確認できる。
【0124】
これに対して比較例1では第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが小さいため、表面張力の差による凹凸形状が得られず低い分光反射率およびL*値となったことが確認できる。
【0125】
また評価結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜5のコーティング組成物を用いた場合には、粒子成分に由来するブツ等の外観不良はない。コーティング組成物に粒子成分が含まれないことは、洗浄などの操作が容易であり、生産性が良好であるという利点も有する。
【0126】
これに対して比較例2では粒子成分が多いため粒子成分由来の問題であるブツ等の外観不良が発生した。
【0127】
また評価結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜5のコーティング組成物は密着性不良を起こすフッ素基等が含まれていないため、密着性不良となることはない。一方、比較例3ではフッ素基による密着性不良の問題がある。
【0128】
更に評価結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜5のコーティング組成物は溶媒の溶解性が良好な材質を用いていることから、コーティング組成物調製後1時間後においても良好な状態である。一方、比較例4では1つの成分に対して溶媒が貧溶媒であるため、コーティング組成物調製後の安定性が悪かった。また比較例4は本実施例のような急激な溶媒揮散を伴う工程を塗膜作成条件として用いた場合、凹凸形状が形成されず、必要な光学特性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の凹凸層形成用コーティング組成物を用いることにより、表面に凹凸を有した樹脂層を容易に形成することができ、これを用いて液晶表示装置の反射板を容易に製造することができる。これらを液晶表示装置に用いることにより、視野角などが良好な液晶表示を製造することができる。この反射板は、特に、いわゆるモバイルと呼ばれる携帯情報末端機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の液晶表示装置の一実施態様例の断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の他の実施態様例の断面図である。
【図3】実施例1により得られた反射板の、デジタル顕微鏡による凹凸表面拡大写真である。
【符号の説明】
【0131】
1,10…基板、
2…凹凸樹脂層、
3…反射層、
4…凹凸増加層、
5…カラーフィルター層、
6…平坦化層、
7,9…透明駆動電極、
8…液晶層、
11…凹凸樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂および第2樹脂を含む凹凸層形成用コーティング組成物であって、
該第1樹脂および第2樹脂は、互いに反応する官能基を有する樹脂であり、
該第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差△γが2dyne/cm以上であり、
該凹凸層形成用コーティング組成物は、塗装された後に表面にランダムな凹凸を有する樹脂層を形成する、
凹凸層形成用コーティング組成物。
【請求項2】
前記第1樹脂が、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂およびポリウレタン樹脂からなる郡から選択される1種以上を骨格として含み、かつ水酸基を有する樹脂(a−1)であって、
第2樹脂がメラミン樹脂(b−1)である、請求項1記載の凹凸層形成用コーティング組成物。
【請求項3】
前記第1樹脂がカルボキシル基含有アクリル樹脂(a−2)であって、第2樹脂がエポキシ樹脂(b−2)である、請求項1記載の凹凸層形成用コーティング組成物。
【請求項4】
前記第1樹脂の重量平均分子量が500〜500000であり、前記第2樹脂の重量平均分子量が200〜500000である、請求項1〜3いずれかに記載の凹凸層形成用コーティング組成物。
【請求項5】
基材に請求項1〜4いずれかに記載の凹凸層形成用コーティング組成物を塗装する塗装工程、
得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、および
乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、
を包含する、凹凸樹脂層の形成方法。
【請求項6】
前記乾燥工程が減圧乾燥によって行われる、請求項5記載の凹凸樹脂層の形成方法。
【請求項7】
前記硬化工程が熱硬化によって行われる、請求項5または6記載の凹凸樹脂層の形成方法。
【請求項8】
請求項5〜7いずれかに記載の凹凸樹脂層の形成方法により得られる、凹凸樹脂層。
【請求項9】
請求項5〜7いずれかに記載の形成方法により形成された凹凸樹脂層の凹凸表面上に反射層を設ける工程を包含する、反射板の製造方法。
【請求項10】
基材に請求項1〜4いずれかに記載の凹凸層形成用コーティング組成物を塗装する塗装工程であって、該基材は反射層を有する基材であり、凹凸層形成用コーティング組成物は該反射層の上に塗装される塗装工程、
得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、および
乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、
を包含する、反射板の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥工程が減圧乾燥によって行われる、請求項10記載の反射板の製造方法。
【請求項12】
前記硬化工程が熱硬化によって行われる、請求項10または11記載の反射板の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12いずれかに記載の反射板の製造方法により得られる、反射板。
【請求項14】
請求項13記載の反射板を備える液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3647(P2006−3647A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180012(P2004−180012)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】