説明

分注装置用孔開け具

【課題】 各ウェルの開口部を覆う蒸発防止フイルムにローコストで孔開けする。
【解決手段】 分注ヘッド87のノズル40には、各ウェルから溶液を吸引するピペットチップが交換自在に取り付けられる。このノズル40を利用して孔開けピン20を取り付ける。孔開けピン20は、アダプタ65と尖頭部66とで構成されている。アダプタ65は、ピペットチップの先端を切り欠いて作っており、ノズル40の先端68に圧入されるキャップ67が後端に設けられている。尖頭部66は、アダプタ65の先端69の開口に挿入されるネジ止め部80と、アダプタ65の先端69に当接するフランジ70、及び、フイルムを破るピン75とで構成され、キャップ67側の内部から挿入されるボルト94をネジ止め部80に設けたネジ穴102に螺合することでアダプタ65に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の吸引を行うピペットチップが取り付けられる分注ヘッドを備えた分注装置に用いられる孔開け具に関し、更に詳しくは、ウェルプレートの各ウェルに収容した液体を吸引する前に、各ウェルの開口部を被うフイルムを破くための孔開け具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、タンパク質やDNAなどの生化学物質の相互作用を調べたり、薬品のスクリーニングを行う場合において、試料の反応を測定する測定装置として、全反射減衰を利用した測定装置が知られている。
【0003】
全反射減衰を利用した測定装置は、透明な誘電体上に形成された薄膜の一方の面であるセンサ面上において試料の反応を生じさせ、前記センサ面の裏面の光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させ、その反射光の減衰状況を検出することにより前記反応を測定する。こうした全反射減衰を利用した測定装置の1つに、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を利用した測定装置(以下、SPR測定装置という)がある。表面プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の粗密波である。
【0004】
SPR測定装置は、透明な誘電体上に形成された薄膜として金属膜を使用し、この金属膜の一方の面をセンサ面として、このセンサ面にSPRを発生させ、そこで生じる物質の反応状況をSPRを検出することにより測定する。
【0005】
金属膜のセンサ面の裏面から、全反射条件を満足するように(臨界角以上の入射角で)光を照射すると、その光入射面において全反射が起こるが、入射光のうちわずかな光は反射せずに金属膜内を通過して、センサ面に染み出す。この染み出した光波がエバネッセント波と呼ばれる。このエバネッセント波と表面プラズモンの振動数が一致して共鳴すると(SPRが発生すると)、反射光の強度が大きく減衰する。SPR測定装置は、前記光入射面で反射する反射光の減衰を捉えることにより、その裏側のセンサ面で発生するSPRを検出する。
【0006】
SPRを発生させるための光の入射角(共鳴角)は、エバネッセント波および表面プラズモンが伝播する媒質の屈折率に依存する。言い換えると、媒質の屈折率が変化すれば、SPRを発生させる共鳴角が変化する。センサ面と接する物質は、エバネッセント波および表面プラズモンを伝播させる媒質となるので、例えば、センサ面において、2種類の分子間の結合や解離などの化学反応が生じると、それが媒質の屈折率の変化として顕れて、共鳴角が変化する。SPR測定装置は、この共鳴角の変化を捉えることにより分子間の相互作用を測定する。
【0007】
生化学分野の実験や研究においては、タンパク質、DNA、薬品などが、リガンドやアナライトとして使用される。例えば、薬品のスクリーニングを行う場合には、リガンドとして、タンパク質などの生体物質を使用し、このセンサ面にアナライトとなる複数種類の薬品を接触させて、それらの相互作用を調べる。
【0008】
下記特許文献1に記載のSPR測定装置は、金属膜に光を入射させるための光学系として、Kretschmann配置を採用している。Kretschmann配置では、例えば、透明な誘電体であるガラス基板上に金属膜が形成されたセンサを用い、前記金属膜の光入射面と対向するように前記ガラス基板とプリズムとが接合される。プリズムは、前記光入射面に向けて全反射条件を満足するように照射された光を集光する。センサ面には、リガンドが固定されるとともに、センサ面と対向する位置には、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液を流す流路が配置される。この流路にアナライト溶液を送液して、アナライトとリガンドとを接触させ、そのときの反射光の減衰を検出することによりそれらの相互作用が測定される。
【0009】
測定を行う際には、まず、流路へバッファが注入されてセンサ面へ送液される。この状態で信号測定が開始される。この後、アナライト溶液が注入される。流路内にあるバッファは、注入されたアナライト溶液によって押し出されて排出口から排出される。そして、所定時間アナライト溶液を流路内に滞留させた後、再度バッファを注入し、信号測定を終了させる。これにより信号のベースラインの検出から、アナライトとリガンドの結合反応から脱離に至るまでの信号検出を行うことができる。
【0010】
センサ面へのアナライト溶液の送液方法としては、ピペットチップを用いて供給している。ピペットチップは、比較的、流路の注入口への着脱が容易であり、着脱を繰り返して多数のセンサへのアクセスを行うという場合に適している。
【0011】
ところで、測定用バッファやアナライト溶液の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、ph値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませている。このDMSOは、測定時の信号レベルに大きく影響する。測定用バッファは基準レベルの検出に用いられるので、アナライトの溶媒中にDMSOが含まれる場合には、そのDMSO濃度と同程度のDMSO濃度を持つ測定用バッファを使用する。
【0012】
このようなアナライト溶液は、長期間(例えば、1年)保管されることも多い。そうした場合には、経時変化によって、初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との間に濃度差が生じてしまう場合がある。厳密な測定を行う必要がある場合には、こうした濃度差をアナライト溶液を注入したときの測定時の参照信号の信号レベルから推定し、測定データに対して補正(DMSO濃度補正)が行われる。
【0013】
補正量は、測定時の信号レベルから推定するため、正確ではない。また、補正量の数値が大きくなると、誤差も多く含まれることになる。そこで、このような補正を行わなくても済むように、アナライト溶液を保存するウェルプレートの各ウェルの開口部を蒸発防止フイルムで覆ったタイタープレートが用いられている。
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、各ウェルの開口部を蒸発防止フイルムで塞ぐと、測定時に蒸発防止フイルムを取る作業が必要になり面倒である。そこで、蒸発防止フイルムを被せたまま使用することが望まれている。この場合、アナライト溶液を吸引する前に、蒸発防止フイルムを破る孔開け具が必要になる。このような孔開け具としては、各ウェルの開口部が微細であるため、孔開け具をロボットハンドやXYZ座標型ロボットなどの移動機構で精度良く移動してウェルの開口部を覆うフイルムに孔を開ける高価な装置が必要なってしまう。
【0015】
また、各ウェルの開口部に挿入するときにピペットチップの先端で蒸発防止フイルムを破るように構成することも考えられる。しかしながら、ピペットチップはノズルの先端に交換自在に取り付けているため、取り付け強度が弱い。このため、蒸発防止フイルムに当接したときに、ピペットチップがノズルに対して曲がってしまい、ウェルへの挿入が正確に行えないおそれがある。
【0016】
本発明は、各ウェルの開口部を覆うフイルムを破るための孔開け具をローコストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の孔開け具では、分注装置の分注ヘッドに着脱自在に取り付けられる前記ピペットチップと同様に分注ヘッドのノズルの先端に着脱自在に取り付け可能な取り付け部を後端に有するアダプタと、このアダプタの前端に固定され前記フイルムを突き破る尖頭部とを備えたものである。アダプタとしては、筒状をしており、前記ノズルの先端を前記取り付け部の後端から圧入して嵌合させることにより前記分注ヘッドに固定されるようにするのが望ましい。また、アダプタとしては、ピペットチップの先端を切断加工した加工部品にするのが好適である。
【0018】
尖頭部の後端部には、アダプタの前端の開口に挿入して、ネジ止めによって前記尖頭部を前記アダプタに固定するネジ止め部を設けるのがよい。ネジ止め部としては、内周面に雌ねじが形成され、アダプタの後端の開口から挿入されるボルトと螺合するナット部材にするのが簡便であるので望ましい。
【0019】
分注ヘッドは、ピペットチップを取り付けたときにはピペットチップの先端がウェルの開口部に挿入する分の移動量で、また、孔開け具を取り付けたときには尖頭部が開口部を覆うフイルムを破く分の移動量でそれぞれ移動が制御される。そこで、孔開け具としても、後端から前端までの長さを予め決める必要がある。よって、ピペットチップを加工して作った孔開け具でも後端から先端までの長さが一定になるように長さの管理をする必要がある。そこで、尖頭部にフランジ部を形成し、そのフランジ部にアダプタの前端を当接させてネジ止め部のアダプタへの挿入量を規制するようにしてもよい。
【0020】
アダプタとしては、尖頭部をボルトやネジで固定することができる形状に先端を加工すればよい。また、ピペットチップの先端を切断した形状をそのまま用いるのがローコストであるため好適である。アダプタは、ピペットチップを用いているため、筒状内壁の後端から前端に向けて先細になっている。そこで、後端の筒内部にからボルトを挿入し、ボルトをネジ止め部にネジ止めすると、ボルトの頭部がアダプタの内壁に圧接される。これにより尖頭部をアダプタに固定することができる。
【0021】
尖頭部の先端形状としては、フイルムを上方から突き刺して破ることができる、例えば針、槍、及び鉾形状などにするのが望ましい。ところで、針形状では、フイルムに微細な孔を開けるだけ先細のピペットチップの先端が挿入できないおそれがある。そこで、尖頭部の外周面に、軸方向に沿って少なくも1本の稜線を有する多形の断面形状にするのが、ピペットチップの先端を挿入することができる大きさにフイルムを破くことができるから望ましい。さらに、尖頭部の先端形状を角すい形状で形成するのが好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、分注装置の分注ヘッドに着脱自在に取り付けられるピペットチップと同様に分注ヘッドのノズルの先端に着脱自在に取り付け可能な取り付け部を後端に有するアダプタと、このアダプタの前端に固定されフイルムを突き破る尖頭部とを備えたから、従来の分注装置に取り付けて使用できる。このため、ローコストで作れ、かつフイルムを確実に破くことができる。また、ピペットチップに尖頭部を固定して作るようにした発明では、さらにローコストで達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示すように、SPRを利用した測定方法は、大きく分けて、固定工程と、測定処工程(データ読み取り工程)と、データ解析工程との3つの工程からなる。SPR測定装置は、固定工程を行う固定機10と、測定工程を行う測定機11と、測定機11によって得られたデータを解析するデータ解析機91(図4参照)からなる。
【0024】
測定は、SPRセンサであるセンサユニット12を用いて行われる。センサユニット12は、SPRが発生するセンサ面13aとなる金属膜13と、このセンサ面13aの裏面の光入射面13bと接合されるプリズム14と、前記センサ面13aと対向して配置され、リガンドやアナライトが送液される流路16とを備えている。
【0025】
金属膜13としては、例えば、金が使用され、その膜厚は、例えば、500オングストロームである。この膜厚は、金属膜の素材、照射される光の発光波長などに応じて適宜選択される。プリズム14は、光入射面13bに向けて、全反射条件を満たすように照射された光を集光する。流路16は、略U字形に屈曲された送液管であり、液体を注入する注入口16aと、それを排出する排出口16bとを持っている。流路16の管径は、例えば、約1mm程度であり、注入口16aと排出口16bの間隔は、例えば、約10mm程度である。
【0026】
また、流路16の底部は、開放されており、この開放部位はセンサ面13aによって覆われて密閉される。これら流路16とセンサ面13aによってセンサセル17が構成される。後述するように、センサユニット12は、こうしたセンサセル17を複数個備えている(図2参照)。
【0027】
固定工程は、センサ面13aにリガンドを固定する工程である。固定工程は、センサユニット12を固定機10にセットして行われる。固定機10には、1対のピペットチップ19a,19bからなるピペット対19が設けられている。ピペット対19は、各ピペットチップ19a,19bが、注入口16aと排出口16bのそれぞれに挿入される。各ピペットチップ19a,19bは、それぞれが流路16への液体の注入と、流路16からの吸い出しを行う機能を備えており、一方が注入動作を行っているときには、他方が吸い出し動作を行うというように、互いに連動する。このピペット対19を用いて、注入口16aから、リガンドを溶媒に溶かしたリガンド溶液21が注入される。
【0028】
センサ面13aのほぼ中央部には、リガンドと結合するリンカー膜22が形成されている。このリンカー膜22は、センサユニット12の製造段階において予め形成される。リンカー膜22は、リガンドを固定するための固定基となるので、固定するリガンドの種類に応じて適宜選択される。
【0029】
リガンド溶液21を注入するリガンド固定化処理を行う前に、前処理として、まず、リンカー膜22に対して、固定用バッファ液を送液してリンカー膜22を湿らせた後、リンカー膜22へリガンドが結合しやすくするためにリンカー膜22の活性化処理が施される。例えば、アミンカップリング法では、リンカー膜22としてカルボキシメチルデキストランが使用され、リガンド内のアミノ基をこのデキストランに直接共有結合させる。この場合の活性化液としては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)との混合液が使用される。この活性化処理の後、固定用バッファによって流路16が洗浄される。
【0030】
固定用バッファやリガンド溶液21の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、ph値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、リガンドとして生体物質を使用する場合には、phを中性付近に調整した生理的食塩水が使用される場合が多い。しかし、上記アミンカップリング法では、リンカー膜22は、カルボキシメチルデキストランにより負(マイナス)に帯電するので、このリンカー膜22と結合しやすいようにタンパク質を陽(プラス)に帯電させるため、生理的とはいえない高濃度のリン酸塩を含む緩衝作用の強いリン酸緩衝溶液(PBS:phosphatic−buffered,saline)などが使用される場合もある。
【0031】
こうした活性化処理及び洗浄が行われた後、センサセル17へリガンド溶液21が注入されてリガンド固定化処理が行われる。リガンド溶液21が流路16へ注入されると、溶液中で拡散しているリガンド21aが徐々にリンカー膜22へ近づいて、結合する。こうしてセンサ面13aにリガンド21aが固定される。固定化には、通常、約1時間数程度かかり、この間、センサユニット12は、温度を含む環境条件が所定の条件に設定された状態で、保管される。なお、固定化が進行している間、流路16内のリガンド溶液21を静置しておいてもよいが、流路16内のリガンド溶液21を攪拌して流動させることが好ましい。こうすることで、リガンドとリンカー膜22との結合が促進され、リガンドの固定量を増加させることができる。
【0032】
センサ面13aへのリガンド21aの固定化が完了すると、前記流路16からリガンド溶液21が排出される。リガンド溶液21は、ピペットチップ19bによって吸い出されて排出される。固定化が完了したセンサ面13aは、流路16へ洗浄液が注入されて洗浄処理が行われる。この洗浄後、必要に応じて、ブロッキング液を流路16へ注入して、リンカー膜22のうち、リガンドが結合しなかった反応基を失活させるブロッキング処理が行われる。ブロッキング液としては、例えば、エタノールアミン−ヒドロクロライドが使用される。このブロッキング処理の後、再び流路16が洗浄される。この後、後述するように、流路16には、乾燥防止液が注入される。これにより、センサユニット12は、センサ面13aの乾燥が防止された状態で、測定までの間保管される。
【0033】
測定工程は、センサユニット12を測定機11にセットして行われる。測定機11には、ピペットチップ26が設けられており、このピペットチップ26を用いて、注入口16aから流路16への各種の液が吐出されて流路16への注入が行われる。
【0034】
測定(データ読み取り)工程では、まず、流路16へ測定用バッファが注入される。この後、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液27が所定量注入される。流路16内の測定用バッファは、アナライト溶液27によって押し出されて排出される。アナライト溶液27を流路16内で所定時間滞留させ、この後、再び測定用バッファが注入される。排出口16bから排出された排液(使用済みのアナライト溶液及び測定用バッファ)は、吸引管30によって吸引されて回収される。なお、最初に測定用バッファを注入する前に、いったん流路16の洗浄を行ってもよい。
【0035】
データの読み取りは、基準となる信号レベルを検出するために、最初に測定用バッファを注入した直後から開始され、アナライト溶液27の注入後、再び測定用バッファが注入されるまでの間行われる。これにより、基準レベル(ベースライン)の検出、アナライトとリガンドの反応状況(結合状況)、測定用バッファ注入による結合したアナライトとリガンドの脱離までのSPR信号を測定することができる。
【0036】
測定用バッファや、アナライト溶液27の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、ph値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませてもよい。このDMSOは、信号レベルに大きく影響する。上述したとおり測定用バッファは基準レベルの検出に用いられるので、アナライトの溶媒中にDMSOが含まれる場合には、そのDMSO濃度と同程度のDMSO濃度を持つ測定用バッファを使用することが好ましい。
【0037】
なお、アナライト溶液27は、長期間(例えば、1年)保管されることも多く、そうした場合には、経時変化によって、初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との間に濃度差が生じてしまう場合がある。そこで、アナライト溶液27を各ウェル88aに保存するウェルプレート88には、各ウェル88aの開口部を蒸発防止フイルム15で塞いでいる(図2参照)。なお、さらに厳密な測定を行う場合には、初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との差をアナライト溶液27を注入したときの参照信号の信号レベルから推定し、測定データに対して補正(DMSO濃度補正)を行っても良い。
【0038】
ここで、参照信号(ref信号)とは、センサ面上に設けられリガンドが固定されない参照領域に対応するSPR信号であり、リガンドが固定されアナライトとの反応を生じる測定領域の測定信号(act信号)と比較参照される信号である。測定に際しては、前記測定信号と参照信号の2つの信号が検出され、データ解析に際しては、例えば、それら2つのSPR信号の差分を取り、これを測定データとして解析がなされる。こうすることで、例えば、複数のセンサセル間の個体差や、液体の温度変化など、外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比の良好な信号が得られるようにしている。
【0039】
DMSO濃度補正のための補正データは、アナライト溶液27を注入する前に、DMSO濃度が異なる複数種類の測定用バッファをセンサセル17に注入して、このときのDMSO濃度変化に応じた、ref信号のレベルとact信号のレベルのそれぞれの変化量を調べることにより求められる。
【0040】
測定部31は、照明器32と検出器33からなる。上述したとおり、リガンドとアナライトの反応状況は、共鳴角(光入射面に対して照射された光の入射角)の変化として顕れるので、照明器32は、全反射条件を満足する様々な入射角の光を光入射面13bに対して照射する。照明器32は、例えば、光源34と、集光レンズ、拡散板、偏光板を含む光学系36とからなり、配置位置および設置角度は、照明光の入射角が、上記全反射条件を満足するように調整される。
【0041】
光源34としては、例えば、LED(Light Emitting Diode),LD(Laser Diode),SLD(Super Luminescent Diode)などの発光素子が使用される。こうした発光素子を1個使用し、この単一光源から1つのセンサセルに向けて光が照射される。なお、複数のセンサセルを同時に測定するような場合には、各センサセルに対して発光素子が1つずつ割り当てられるように、発光素子が複数個並べられて使用される。拡散板は、光源34からの光を拡散して、発光面内の光量ムラを抑える。偏光板は、照射光のうち、SPRを生じさせるp偏光のみを通過させる。なお、LDを使用する場合など、光源が発する光線自体の偏光の向きが揃っている場合には、偏光板は不要である。また、偏光が揃っている光源を使用した場合でも、拡散板を通過することにより、偏光の向きが不揃いになってしまう場合には、偏光板を使用して偏光の向きが揃えられる。こうして拡散および偏光された光は、集光レンズによって集光されてプリズム14に照射される。これにより、光強度にバラツキがなく様々な入射角を持つ光線を光入射面13bに入射させることができる。
【0042】
検出器33は、光入射面13bで反射する光を受光して、その光強度を検出する。光入射面13bには、様々な角度で光線が入射するので、光入射面13bでは、それらの光線が、それぞれの入射角に応じて様々な反射角で反射する。アナライトとリガンドの反応状況に応じて共鳴角が変化すると、光強度が減衰する反射角も変化する。検出器33は、例えば、CCDエリアセンサが使用され、この反射角の変化を、受光面内における反射光の減衰位置の推移として捉える。検出器33は、こうして得た、反応状況を表す測定データを、データ解析機91に出力する。データ解析工程では、測定機11で得た測定データを解析して、アナライトの特性を分析する。
【0043】
なお、測定部31の構成が明確になるように、便宜的に、図上、光入射面13bへの入射光線およびそこで反射する反射光線の向きが、流路16内の液体の流れ方向と平行になるように、照明器32および検出器33を配置した形態で示しているが、本実施形態では、入射光線および反射光線の向きが、前記流れ方向と直交する方向に照射されるように、照明器32および検出器33が配置される(図5参照)。もちろん、測定部31をこの図1に示しているように配置して測定してもよい。
【0044】
図3は、センサユニット12の分解斜視図である。センサユニット12は、流路16が形成される流路部材41と、上面に金属膜13が形成されたプリズム14と、流路部材41を、その底面をプリズム14の上面と接合させた状態で、保持する保持部材42と、保持部材42の上方に配置される蓋部材43とからなる。
【0045】
流路部材41には、例えば、3つの流路16が形成されている。流路部材41は、長尺状をしており、3つの流路16は、その長手方向に沿って配列されている。この流路16は、その底面に接合される金属膜13とともにセンサセル17(図1参照)を構成する。そのため、流路部材41は、金属膜13との密着性を高めるために、弾性部材、例えば、ゴムや、PDMS(ポリジメチルシロキサン)で形成されている。これにより、流路部材41の底面をプリズム14の上面に圧接すると、流路部材41が弾性変形して金属膜13との接合面の隙間が埋められて、各流路16の開放された底部がプリズム14の上面によって水密に覆われる。なお、本例では、流路16の数が3つの例で説明したが、もちろん、流路16の数は、3つに限らず、1つまたは2つであってもよいし、4つ以上でもよい。
【0046】
プリズム14には、その上面に、蒸着によって金属膜13が形成される。この金属膜13は、流路部材41に形成された複数の流路16と対向するように短冊状に形成される。さらに、この金属膜13の上面(センサ面13a)には、各流路16に対応する部位に、リンカー膜22が形成される。また、プリズム14の長手方向の両側面には、保持部材42の係合部42aと係合する係合爪14aが設けられている。これらの係合により、流路部材41が保持部材42とプリズム14とによって挟み込まれ、その底面とプリズム14の上面とが圧接した状態で保持される。こうして、流路部材41、金属膜13およびプリズム14が一体化される。
【0047】
また、プリズム14の短辺方向の両端部には、突部14bが設けられている。この突部14bは、複数のセンサユニット12をホルダに収容する際に、ホルダ内の所定の収納位置に位置決めするためのものである。
【0048】
保持部材42の上部には、各流路16の注入口16aに対応する位置に、ピペットチップの先端が進入する受け入れ口42bが形成されている。受け入れ口42bは、ピペットチップから吐出される液体が各注入口16aへ導かれるように、漏斗形状をしている。また、各流路16の排出口16bに対応する位置には、流路16を通過して排出口16bから排出された排液を滞留させることが可能な液溜部42dが形成されている。液溜部42dは、排出口16bから排液を一時的に滞留させることでそれがセンサユニット12の周辺に飛散してしまうことを防止する。この液溜部42dには、固定時には、ピペットチップ19bが挿入され、測定時には吸引管30が挿入される。この液溜部42dへ排出された液体は、これらによって吸引されて回収される。
【0049】
なお、固定工程において、液溜部42dにリガンド溶液を滞留させ、これを流路16へ逆流させることにより再度センサ面13aに送液してもよい。こうすると、流路16内のリガンド溶液の流動性が高まり固定効率を向上させることができる。
【0050】
保持部材42が流路部材41を挟み込んでプリズム14と係合すると、受け入れ口42bの下面は、注入口16aと接合して流路16の注入口16aと接続され、他方、液溜部42dは、排出口16bと接合して排出口16bと接続される。
【0051】
また、各受け入れ口42bと各液溜部42dの両脇には、円筒形のボス42cが設けられている。これらのボス42cは、蓋部材43に形成された穴43aと嵌合して、蓋部材43を位置決めするためのものである。蓋部材43は、受け入れ口42b及びボス42cに対応する位置に穴が空けられた両面テープ44によって、保持部材42の上面に貼り付けられる。
【0052】
蓋部材43は、流路16に通じる受け入れ口42b及び液溜部42dを覆うことで、流路16内の液体の蒸発を防止する。蓋部材43は、弾性部材、例えば、ゴムやプラスチックで形成されており、受け入れ口42bと液溜部42dに対応する位置に、十字形のスリット43bが形成されている。蓋部材43は、流路16内の液体の蒸発を防止するためのものであるから、受け入れ口42b及び液溜部42dを覆う必要があるが、完全に覆ってしまっては、ピペットチップや吸引管を挿入することができない。そこで、スリット43bを形成することで、ピペットチップや吸引管の挿入を可能とするとともに、ピペットチップや吸引管を挿入していない状態では、受け入れ口42b及び液溜部42dが塞がれるようにしている。スリット43bは、ピペットチップや吸引管が押し込まれると、スリット43bの周辺が弾性変形して、スリット43bの口が大きく開いて、ピペットチップや吸引管を受け入れる。そして、ピペットチップや吸引管を抜くと、弾性力によってスリット43bが初期状態に復帰して、受け入れ口42b及び液溜部42dを塞ぐ。
【0053】
図4に示すように、固定機10は、筐体のベースとなる筐体ベース50上に、複数のセンサユニット12を載置する載置スペース51が確保されている。センサユニット12は、この載置スペース51で載置された状態で固定工程のすべての処理が施される。したがって、この載置スペース51は、センサユニット12に対して固定工程を実行する固定ステージとなる。
【0054】
センサユニット12は、ホルダ52に収納された状態で固定機10にセットされる。ホルダ52は、センサユニット12を複数個(例えば、8個)収納できるようになっている。ホルダ52には、センサユニット12の突部14bと嵌合して、センサユニット12を位置決めする嵌合部が設けられている。また、ホルダ52の底部は、センサユニット12の両端部を支持する支持部を除いて、開口になっている。後述するように、測定工程において、センサユニット12をホルダ52から取り出す場合には、この開口から押し上げ部材81(図5参照)が挿入されてセンサユニット12が押し上げられる。
【0055】
載置スペース51には、ホルダ52を、例えば、10個並べて配置することができるようになっており、その数に応じた台座53が設けられている。各台座53上には、ホルダ52を位置決めする位置決め用のボスが設けられている。
【0056】
固定機10には、ヘッド本体にピペット対19を3組連装したピペットヘッド54が設けられている。このピペットヘッド54が、載置スペース51に配列されたセンサユニット12にアクセスして、液体の注入や排出を行う。ピペットヘッド54には、ピペットチップを2個一組としたピペット対19が3組設けられているので、1つのセンサユニット12に含まれる3つのセンサセル17に対して同時に液体を注入(及び排出)することができる。固定機10には、図示しないコントローラが設けられており、このコントローラによって、各ピペット対19の吸い込みや吐き出しの動作に関して、そのタイミング、吸い込み量および吐き出し量などが、ピペットヘッド54ごとにそれぞれ制御される。
【0057】
筐体ベース50には、このピペットヘッド54をX、Y、Zの3方向に移動させるヘッド移動機構56が設けられている。ヘッド移動機構56は、例えば、搬送ベルト、プーリ、キャリッジ、モータなどから構成される周知の移動機構であり、ピペットヘッド54を上下させる昇降機構と、この昇降機構ごとピペットヘッド54をY方向へ移動自在に保持するガイドレール58を含むY方向移動機構と、前記ガイドレール58を両端で保持し、ガイドレール58毎、ピペットヘッド54をX方向へ移動させるX方向移動機構とからなる。ヘッド移動機構56は、コントローラによって制御されており、コントローラは、このヘッド移動機構56を駆動して、ピペットヘッド54の上下左右の位置を制御する。
【0058】
筐体ベース50上には、流路16へ注入する種々の液体(リガンド溶液、洗浄液、固定用バッファ,乾燥防止液,活性化液,ブロッキング液など)を保管する複数の液保管部61が設けられている。液保管部の数は、使用する液体の種類に応じて決定される。各液保管部61には、挿入口が6個並べて設けられている。この挿入口の数および配列ピッチは、ピペットヘッド54のピペットチップの数と配列ピッチに応じて決められる。ピペットヘッド54は、センサセル17へ液体を注入する場合には、各液保管部61へアクセスして、所望の液体を吸い込み、その後、載置スペース51へ移動して、センサユニット12へ注入する。
【0059】
また、筐体ベース50上には、新たなピペットチップ62を保管するピペットチップ保管部63が設けられている。ピペット対19を構成するピペットチップは、ピペットヘッド54の各ノズルの先端に交換可能に取り付けられており、液体と直接接触するので、異種の液体の混液が生じないように、使用する液体毎に新たなピペットチップ62と交換される。このうち、ピペットヘッド54には、ピペットチップのリリースを行うリリース駆動機構が設けられており、ピペットチップのリリースが自動的に行われるようになっている。ピペットチップを交換する際には、ピペットヘッド54を図示しない廃却部に移動して、ここで、使用済みのピペットチップをリリースし、その後、ピペットチップ保管部63にアクセスして未使用のピペットチップ62をピックアップする。
【0060】
また、符合64は、均一な開口部を有する複数のウェルがマトリックス状に配列されたウェルプレートであり、ピペットチップで吸い上げた液体を一時的に保管したり、複数種類の液体を混合して混合液を調整する際に用いられる。このウェルプレート64は、詳しくは後述するアナライト溶液を保存するウェルプレート88と同じ形態のものである。
【0061】
固定を開始する際には、固定機10の筐体はカバー(図示せず)によって覆われて、載置スペース51を含む固定機10の内部は、外部から遮蔽される。固定機10内の温度は、温度調節器(図示せず)によって調節が可能になっている。センサセル17にリガンドを注入後、センサ面13aへのリガンド21aの固定化が完了するまでの間、センサユニット12は、載置スペース51上で所定時間保管される。この保管中に、必要に応じて流路16内のリガンド溶液21が攪拌される。この間の固定化の進行度合いは、センサユニット12の環境条件(温度)によって左右される。そのため、温度調節器によって固定機10の内部温度が所定の温度に保たれる。設定される温度や静置時間などは、リガンド21aの種類などに応じて適宜決められる。
【0062】
固定が完了すると、センサセル17に対して、バッファ(洗浄液)が注入される。バッファは、センサセル17をリガンド溶液で満たしたままの状態で、バッファを吸い込んだピペットチップ19aをスリット43bへ挿入して、センサセル17へ注入される。バッファが注入口16aから流路へ吐き出されると、流路16に注入済みのリガンド溶液が排出口16bに向けて押し出されて、排出される。そして、ピペットチップ19aの注入動作に連動して吸い込み動作を行うピペットチップ19bによって、排出されるバッファが吸い込まれる。これにより、センサセル17内の液の置換(入れ替え)が行われる。
【0063】
そして、洗浄が終了した後、上記と同様の手順によって、センサセル17に対して、リガンド21aの乾燥を防止する乾燥防止液が注入されて、すでに注入済みのバッファと、新たに注入された乾燥防止液との置換が行われる。この置換が終了したセンサユニット12は、リガンド21aが固定されたセンサ面13aが乾燥防止液に浸された状態で、ホルダ52毎、測定機11へ受け渡される。これにより、測定が開始されるまでの間、リガンドが乾燥してしまうことはない。
【0064】
乾燥防止液としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、ph値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。この乾燥防止液は、リガンド21aの乾燥を防止するためのものであるから、センサ面13a上のリガンド21aを浸すだけの量を注入すれば足りるが、蒸発する分を考慮して、少し多めに、例えば、流路16を満たす程度の量を注入しておくとよい。
【0065】
図5に示すように、測定機11は、ホルダ搬送機構71、ピックアップ機構72、分注装置18、及び、測定ステージ74に配した測定機11等からなる。ホルダ搬送機構71は、搬送ベルト76と、この搬送ベルト76に取り付けられたキャリッジ77と、このキャリッジ77に取り付けられ、固定済みのセンサユニット12が複数収納されたホルダ52を載置するプレート78とからなる。ホルダ搬送機構71は、ホルダ52が載置されたプレート78をX方向へ移動させることにより、ホルダ52内の各センサユニット12を待機ステージへ運ぶ。待機ステージでは、ホルダ52内の各センサユニット12が、長手方向をホルダ搬送機構71がプレート78を移動させる方向(X方向)に対して直交する方向に沿わした姿勢でセットされている。
【0066】
ピックアップ機構72は、待機ステージに待機するセンサユニット12を上方にある挟持位置に向けて押し上げる押し上げ機構79と、この押し上げ機構79によって挟持位置に押し上げられたセンサユニット12を両脇から挟み込んで測定ステージ74に搬送する搬送機構89とからなる。押し上げ機構79は、押し上げ部材81と、押し上げ部材駆動機構83とからなる。押し上げ部材81は、押し上げ部材駆動機構83によって上下方向(Z方向)に昇降する。上述したとおり、ホルダ52の底部は開口になっており、また、プレート78も、その開口に対応する位置が中空になっている。押し上げ部材81は、プレート78を通過して、ホルダ52の開口へ進入して、下方からセンサユニット12の底面に向けて上昇し、センサユニット12を倒れないように保持し、待機ステージから挟持位置まで押し上げる。
【0067】
搬送機構89は、ハンドリングヘッド82、ハンドリングヘッド82を挟持位置と測定ステージ74との間で移動する移動機構とから構成されている。移動機構は、ナット84、ガイド棒85、ネジ軸86、モータ90、位置検出器、及び、制御部93などで構成されている。ハンドリングヘッド82は、ヘッド本体82aと把持機構92とを備えている。把持機構92は、ヘッド本体82aに設けられ、センサユニット12をハンドリングする。モータ90は、ネジ軸86を正逆回転する。ネジ軸86は、X方向に直交するY方向に沿って配されている。ナット84は、ネジ軸86の回転によりそのネジのリードに従ってネジ軸86の軸方向に移動される。このナット84には、ヘッド本体82aが固定されている。ヘッド本体82aの回転止めは、Y方向と平行に配した1対のガイド棒85で行っている。
【0068】
位置検出器は、図示していないが、ヘッド本体82aに設けた遮蔽板と、挟持位置及び測定ステージにそれぞれ設けた馬てい形の光電センサとからなる。各光電センサが遮蔽板を検出することで出力する信号は、制御部93に送られる。制御部93は、各光電センサから得られる各信号を監視してモータ90の駆動を制御するとともに、ホルダ搬送機構71、ピックアップ機構72、ヘッド移動機構73、及び、測定部31の動作が同期するように測定機11を統括的に制御する。
【0069】
モータ90の出力軸には、ロータリエンコーダが取り付けられており、制御部93は、ロータリエンコーダから得られるパルス信号に基づいて、ヘッド本体82aの移動位置を検知することができる。この細かな送り制御は、測定ステージにおいて光電センサで遮蔽板を検出した原点位置から、詳しくは後述する複数の測定位置にヘッド本体82aを精度良く送るときに使用される。なお、位置検出手段やロータリエンコーダを用いる代わりに、パルスモータを用い、このモータに送るパルス信号によりモータの回転角、回転方向、及び回転速度などを制御するようにしてもよい。
【0070】
測定機11は、照明器32と検出器33とで構成されている。照明器32及び検出器33は、センサユニット12へ照射される入射光線およびセンサ面13aで反射する反射光線の向きと、センサセル17の配列方向、すなわち、流路16の水平部分の流れ方向とが直交するように配置される。
【0071】
分注装置18は、詳しくは後述する孔開けピン(孔開け具)又はピペットチップ26を保持する分注ヘッド87と、分注ヘッド87を移動させるヘッド移動機構73とで構成されている。分注ヘッド87のアクセス可能な位置には、測定用バッファ吸引位置、アナライト溶液吸引位置、測定位置、及び、孔開けピン(孔開け具)交換位置、及び、ピペット交換位置が配されている。
【0072】
測定用バッファ吸引位置には、測定用バッファを収容するウェルプレートが配されている。また、アナライト溶液吸引位置には、アナライト溶液27を保管するウェルプレート88が配されている。各位置に配したウェルプレート88は、マトリックス状に設けた複数のウェルの各列をX・Y方向に合わせた向きでセットされている。各ウェルには、溶液が収納されている。例えばアナライト溶液吸引位置に配したウェルプレート88の各ウェルには、異なる種類のアナライト溶液27が収容され、上からウェル全体に蒸発防止フイルム15が被されている(図2参照)。このフイルム15としては、例えば、アルミ箔にビニルを積層したフイルムを用いるのが望ましい。
【0073】
測定位置にセンサユニット12が搬送されると、ヘッド移動機構73は、分注ヘッド87を測定用バッファ吸引位置又はアナライト溶液吸引位置と、測定位置にあるセンサユニット12とに運び、測定対象となるセンサセル17にアクセスして、液の注入及び排出を行う。
【0074】
孔開けピン交換位置には、孔開けピンが用意されている。分注ヘッド87には、液体の吸引及び吐出を行うノズルが設けられており、ノズルの先端にピペットチップ26又は孔開けピンが交換自在に取り付けられている。なお、測定位置には、そのピペットチップ26と対になる吸引管30が配されている。このピペットチップ26と吸引管30とで測定対象となる特定のセンサセル17に対して1つずつ液体の注入および排出を行う。
【0075】
分注装置18は、ピペットチップ26でアナライト溶液を吸引する前に、分注ヘッド87を孔開けピン交換位置にアクセスして、ノズルの先端に装着されているピペットチップ26を外して孔開けピンを装着し、装着した孔開けピンで蒸発防止フイルム15を突き破り、その後、再び、孔開けピン交換位置にアクセスしてピペットチップ26を装着し、突き破ったフイルム15の部位にピペットチップ26を挿入してアナライト溶液を吸引する。
【0076】
測定用バッファ吸引位置には、測定用バッファを収容するウェルプレートが、また、ピペット交換位置には、交換用ピペットチップを収容するピペットチップ保管部が設けられている。液の注入や排出を行った後には、ヘッド移動機構73が分注ヘッド87をピペット交換位置に移動してノズルに取り付けられたピペットチップ26を新たなものに交換する。この機構のうち、ピペットチップ26又は孔開けピンのリリースは、リリース駆動機構で行われる。リリース駆動機構は、ノズルからピペットチップ及び孔開けピンを自動的にリリースする。この機構は、固定機10で説明したものと同じ機構である。
【0077】
前述したとおり、センサユニット12は、複数のセンサセル17を持っている。このため、測定ステージ74では、原点位置から搬送機構89がセンサユニット12を、各センサセル17の配列ピッチでY方向に細かく送ることにより、各センサセル17が照明器32の光路上の測定位置に順次位置決めされる。
【0078】
測定の際には、分注ヘッド87が、ウェルプレート88にアクセスして、所望のアナライト溶液27を吸い込み、吸引したピペットチップ26を測定ステージ74へ移動して、測定位置にあるセンサセル17にアナライト溶液27を注入する。固定機10から送り出されたセンサユニット12は、測定機11に装着され測定が開始されるまでの間、各センサセル17内に乾燥防止液が収容されている。この乾燥防止液は、測定用バッファが注入されて測定が開始される際に、ピペットチップ26により注入された測定用バッファに押し出されてセンサセル17から排出され、吸引管30によって吸い込まれる。
【0079】
なお、乾燥防止液を流路16から排出する際には、測定用バッファの注入を複数回行うことが好ましい。というのは、測定用バッファを1回だけ注入しただけでは、流路16から乾燥防止液を完全に排出しきれず、乾燥防止液が残留している可能性が高い。測定用バッファの注入回数を増やせば、乾燥防止液を排出する効果が高まり、流路16内の乾燥防止液の残留量を減らすことができる。
【0080】
この測定時に、検出器33によって読み取られた測定データは、データ解析機91に送信される。データ解析機91は、この測定データに基づいてアナライトとリガンドの反応状況を分析する。
【0081】
分注装置18には、図6に示すように、分注ヘッド87、Z方向ガイド機構24、Z方向移動機構25、保持部28、X・Y方向移動機構29,59、吸引用ポンプ39、及び、制御部93で構成されている。前述したヘッド移動機構73は、Z方向ガイド機構24、Z方向移動機構25、及び、X・Y方向移動機構29,59で構成される。
【0082】
分注ヘッド87には、液体の吸引を行うノズル40が設けられており、ノズル40の先端には、ピペットチップ26が交換自在に取り付けられている。本実施形態では、このノズル40に孔開けピン(孔開け具)20がピペットチップ26と交換して装着される。
【0083】
Z方向ガイド機構24は、分注ヘッド87をZ方向(垂直方向)に移動自在にガイドするものであり、例えば分注ヘッド87に設けたスライダと、スライダが係合するガイドレールとで構成されている。このガイドレールはZ方向(垂直方向)に平行に配されて保持部28に固定されている。
【0084】
Z方向移動機構25は、例えばサーボモータ又はステッピィングモータなど与える制御パルスに応じて回転角を制御することができるモータ45、そのモータ45の駆動が伝達される送り軸46、及び、送り軸46に係合するキャリア台47とで構成されている。キャリア台47には、分注ヘッド87が固定されている。送り軸46は前述したガイドレールと平行に配されている。Z方向移動機構25は、モータ45を駆動することで、分注ヘッド87をZ方向ガイド機構24のガイド方向に移動して、各ウェルから溶液を吸引する吸引位置と、前記ウェルから退避する退避位置とにピペットチップ26を移動させる。また、孔開け時には、フイルム15を破く孔開け位置と前記退避位置とに孔開けピン20を移動させる。
【0085】
保持部28は、分注ヘッド87、Z方向ガイド機構24、及び、Z方向移動機構25を一体的に保持する。X・Y方向移動機構29,59は、保持部28をX及びY方向に同期して移動させる搬送機構であり、X及びY方向用モータを含む。なお、X方向移動機構29は、図面の煩雑化を防ぐために、簡略して記載している。
【0086】
吸引用ポンプ39は、分注ヘッド87に内臓されており、駆動されることでノズル40の内部を介してピペットチップ26の先端から溶液を一定量吸引する。制御部93は、図7に示すように、吸引用ポンプ39、リリース駆動機構38、及び、X・Y・Z用モータ45,55,57を、各ドライバ95〜99を介して個別に制御する。
【0087】
孔開けピン20は、図8及び図9に示すように、アダプタ65、及び、尖頭部66とで構成されている。アダプタ65は、尖頭部66が固定できるようにピペットチップ26の先端を切り欠く加工をして作られている。ピペットチップ26は、先細で筒状断面となっている。このアダプタ65には、ノズル40の先端に着脱自在に取り付けられるキャップ(取り付け部)67を後端に備えている。このキャップ67は、円柱形状のノズル40の先端68の外周に圧入されるものであり、ピペットチップ26と同じ形状となっている。
【0088】
尖頭部66は、アダプタ65の先端69よりも外周に突出するフランジ70と、フランジ70の一方に設けたピン75と、他方に設けたネジ止め部80とをノズル40への挿入方向に沿って一体化して形成されている。ピン75は、細くするどい槍形状、例えば外表面に少なくとも1本の稜線をもつ角すい形状で形成されている。ネジ止め部80は、フランジ70よりも小径の円柱形状をしており、後端にはネジ穴102が形成されている。ネジ穴102には、アダプタ65のキャップ67の内部から挿入されるボルト94が螺合される。
【0089】
ピペットチップ26は、溶液を吸引するために、内部が中空となっている。加工してアダプタ65を作るときには、ネジ止め部80が挿入することができる径の位置でピペットチップ26の先端69を切断する。切断した先端69にネジ止め部80を挿入すると、アダプタ65の先端がフランジ70に当接し、尖頭部66の突出量が位置決めされる。その後、ボルト94をキャップ67からアダプタ65の内部に挿入し、アダプタ65の内部からボルト94をネジ穴102に螺合すると、ボルト94の頭がアダプタ65の内壁(先細テーパ面)に引っ掛かり、尖頭部66の抜け止めが行われる。
【0090】
ノズル40には、リリース駆動機構38が設けられている。このリリース駆動機構38は、図10に示すように、ノズル40の一部にZ方向に移動自在な押出部100と、その押出部100をノズル40の軸方向に駆動する駆動部101とで構成されている。駆動部101は、前述した制御部93にドライバ96を介して制御されている。分注ヘッド87をリリース位置にアクセスした後に、制御部93が駆動部101を駆動させることで押出部100が初期位置から押出位置に向けて移動してアダプタ65のキャップ67をノズル40から押し出す。押し出された孔開けピン20は、リリース位置に設けたキャッチ部で取り付け姿勢の状態で保持される。なお、ピペットチップ26をリリースするときにも前述したと同じ手順で行われる。
【0091】
穴開けピン20をノズル40の先端に取り付けるときには、押出部100を初期位置に戻した状態で分注ヘッド87を下降させることで、キャッチ部で保持している穴開けピン20のキャップ67に、ノズル40の先端を圧入することで行える。なお、ピペットチップ26を取り付けるときも、前述したと同じ手順で行われる。
【0092】
以下、上記構成による作用について、図11に示すフローチャートに従って説明する。固定工程では、センサユニット12がホルダ52に収容された状態で、固定機10の載置スペース51に載置される。固定工程では、まず、各センサセル17に固定用バッファを注入して、センサ面13aを湿化させる。次に、活性化液を注入してセンサ面13aを活性化させる。洗浄後、センサセル17にリガンド溶液21を注入して、固定化を開始させる。この状態で、センサユニット12を載置スペース51上で所定時間保管される。この間に、リガンド溶液中のリガンド21aと、リンカー膜22との結合が行われて、固定化が進行する。
【0093】
所定時間経過して固定化が完了すると、洗浄後、ブロッキング処理が行われる。ブロッキング処理が終了すると、洗浄後、センサセル17へ乾燥防止液が注入される。センサユニット12は、センサ面13aが乾燥防止液に浸された状態で、測定機11へ送られる。
【0094】
複数のセンサユニット12は、ホルダ52に整列して収容された状態で、測定機11のプレート78にセットされる。そして、測定機11に測定開始指示が与えられると、ホルダ52がプレート78にセットされているか否かを確認する。セットされている場合にホルダ搬送機構71を作動してセンサユニット12を待機ステージにセットする。
【0095】
未測定のセンサユニット12が待機ステージにセットされると、押し上げ部材駆動機構83が作動して押し上げ部材81をいったん待機ステージに上昇させて停止する。その後、押し上げ部材駆動機構83は、再び押し上げ部材81をさらに上方にある挟持位置に向けて上昇させる。これにより、センサユニット12は、ハンドリングヘッド82の一対の爪の間に進入され、この一対の爪で挟持される。その後、センサユニット12は、ハンドリングヘッド82により挟持された状態で搬送機構89により測定ステージ74へ運ばれる。
【0096】
測定ステージ74へ運ばれたセンサユニット12は、モータ90の回転角の制御により、Y方向へ細かい精度で移動されて、複数のセンサセル17のうちの測定対象となるセンサセル17が測定位置にセットされる。この後、ヘッド移動機構73の駆動により分注ヘッド87を測定用バッファ吸引位置に移動して、ピペットチップ26で測定用バッファ吸引位置にアクセスして測定用バッファを吸引し、吸引完了後に、ヘッド移動機構73が分注ヘッド87を測定位置に移動して、センサセル17へ測定用バッファを注入する。このとき、吸引管30で乾燥防止液を排出する。測定用バッファが注入されると、測定部31が作動して、データ読み取りが開始される。測定用バッファを注入した後には、ピペットチップ26を交換する。
【0097】
その後、フイルム15への孔開けを行ってからアナライト溶液27を吸引してセンサセルに注入する。この一連の作業を詳しく説明する。まず、分注装置18は、分注ヘッド87を孔開けピン交換位置にアクセスして、ノズル40の先端に装着されているピペットチップ26を外して孔開けピン20を装着し、その状態でX・Y方向移動機構29,59の移動により孔開けピン20が、アナライト溶液吸引位置に配したウェルプレート88のうちの所定のアナライト溶液を収納したウェル88aの上方位置に到達するように、分注ヘッド87を移動し、その移動完了後に、Z方向移動機構25の移動により分注ヘッド87を孔開け位置に向けて下降させる。
【0098】
このときの下降量は、孔開けピン20が孔開け位置に移動する分の移動量となっている。この下降により、孔開けピン20は、図12に示すように、ウェル88aの開口部を覆う蒸発防止フイルム15を突き破る。この孔開け位置は、尖頭部66の先端がウェル88aに収納したアナライト溶液に接触しない位置となっている。
【0099】
その後、Z方向移動機構25の移動により分注ヘッド87を退避位置に移動し、その後、X・Y方向移動機構29,59の移動により再び分注ヘッド87を孔開けピン交換位置にアクセスして、孔開けピン20をピペットチップ26に交換する。これら交換は、リリース駆動機構38が駆動して押出部100を移動してノズル40の先端68からキャップ67を押し出してリリースし、リリース位置とは異なる位置でノズル40の先端68をキャップ67に押し付けて取り付ける。
【0100】
その後、X・Y方向移動機構29,59によりピペットチップ26が蒸発防止フイルム15を破いたウェル88aの上方位置に到達するように分注ヘッド87を移動する。その後、Z方向移動機構25より分注ヘッド87を吸引位置に移動させる。これにより、ピペットチップ26の先端が、図13に示すように、ウェル88aに収納したアナライト溶液27に浸かる。その後、吸引用ポンプ39を作動してピペットチップ26でアナライト溶液27を一定量だけ吸引する。
【0101】
アナライト溶液を吸引後には、ヘッド移動機構73が分注ヘッド87を退避位置に移動し、移動完了後に、今度は分注ヘッド87を測定位置に移動する。分注ヘッド87を測定位置に移動すると、センサセル17へアナライト溶液27を注入する。このとき、吸引管30で測定用バッファを排出する。
【0102】
アナライトがセンサ面13aと接触すると、アナライトとリガンドとの相互作用が生じる。所定時間経過した後、ピペットチップ26を交換後に再び測定用バッファが注入されてアナライト溶液27が排出される。この後、データ読み取りが終了する。こうして得られた測定データは、検出器33からデータ解析機91へ送られて、分析される。こうした測定工程が、複数のセンサセル17に対して順次実行される。
【0103】
なお、測定が完了したセンサユニット12は、再び挟持位置に戻され、ホルダ52に回収される。
【0104】
測定完了済みのセンサユニット12をホルダ52に再び収納した後には、ホルダ搬送機構71が作動し、プレート78を1ピッチ分だけ移動して、2番目のセンサユニット12を待機ステージに運ぶ。以下、前述した手順を繰り返すことでセンサユニット12を測定ステージに順次搬送して測定を行っていく。
【0105】
このように、アナライト溶液27を収納する各ウェル88aの開口部を蒸発防止フイルム15で覆ったウェルプレート88を用いることで、アナライト溶液の蒸発を防ぐことができる。このため、アナライト溶液のDMSO濃度を長期的に一定に保つことができ、スルートップを向上した測定処理でも正確な測定が行える。
【0106】
なお、上記実施形態では、アナライト溶液を収納するウェルプレートに蒸発防止フイルムを用いているが、本発明ではこれに限らず、測定用バッファ、乾燥防止液、リガンド溶液、及び、洗浄液などを収納するウェルプレートにも蒸発防止フイルムを用いても良い。この場合には、固定機にも本発明の構成である分注装置を用いればよい。
【0107】
また、上記各実施形態では、分注ヘッド87に1個のノズル40を設け、ピペットチップ26と孔開けピン20とを交換して使用するタイプとして説明しているが、本発明ではこれに限らず、分注ヘッド87にピペットチップ26と孔開けピン20とを並べて設けて、交換せずに孔開けと吸引との両方を行えるように構成してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、孔開けピンを設けた分注ヘッド87に1個のピペットチップ26を取り付け、測定位置でそのピペットチップ26と別に設けた吸引管30とを用いてセンサセル17に対して注入及び排出を行っているが、本発明ではこれに限らず、分注ヘッド87に注入及び排出を行う一対のピペットチップを設けた構成としてもよい。この場合、注入を行うピペットチップで溶液をウェルプレートから吸引すればよい。さらに、一対のピペットチップに限らず、多対のピペットチップを分注ヘッドに設けた構成であってもよい。
【0109】
さらに、上記各実施形態では、分注ヘッド87をZ方向、すなわち垂直方向に移動させているが、本発明ではこれに限らず、X・Y方向以外の一方向であれば、いずれの方向でもよい。また、Z方向ガイド機構24、Z方向移動機構25、及び、X・Y方向移動機構29,59などを構成する機構としては、前述したような機構以外に、周知の機構であればいずれの機構でも採用することができる。
【0110】
また、上記例では、測定ステージを有する測定機11と、固定ステージを有する固定機10とをそれぞれ別筐体に設けた例で説明しているが、測定ステージと固定ステージとが別々に設けられていれば、それぞれを同一筐体に設けて、分注装置を共通使用してもよい。さらに、測定機や固定機で用いる分注装置に限らず、液体の吸引と吐出とを行うノズルが設けられた分注ヘッドを備えた分注装置であれば、いずれにも本発明を採用することができる。
【0111】
なお、本実施形態では、センサ面上にSPRを発生させて、そのときの反射光の減衰を検出するSPRセンサを例に説明したが、SPRセンサに限らず、本発明を、全反射減衰を利用した測定に用いられる他のセンサに適用することができる。全反射減衰を利用するセンサとしては、SPRセンサの他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を通過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において弾性表面波(surface acoustic wave,SAW)が生じると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。弾性表面波が生じる入射角は、SPRの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の化学反応が測定される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】SPR測定方法の説明図である。
【図2】アナライト溶液を収納したウェルプレートを示す断面図である。
【図3】センサユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図4】固定機の概略を示す斜視図である。
【図5】測定機の概略を示す斜視図である。
【図6】分注装置を示す斜視図である。
【図7】分注装置の電気的概略を示すブロック図である。
【図8】孔開けピンを示す分解斜視図である。
【図9】孔開けピンをノズルに取り付けた状態を示す断面図である。
【図10】ノズルから孔開けピンを取り外した状態を示す断面図である。
【図11】SPR測定方法の手順を示すフローチャート図である。
【図12】孔開けピンで蒸発防止フイルムを破いた状態を示す説明図である。
【図13】ピペットチップを破いたフイルムを介してウェルに挿入した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0113】
11 測定機
12 センサユニット
18 分注装置
20 孔開けピン
26 ピペットチップ
38 リリース駆動機構
65 アダプタ
66 尖頭部
87 分注ヘッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を収容する複数のウェルの開口部がフイルムによって覆われたウェルプレートにアクセス可能な分注ヘッドを有し、この分注ヘッドのノズルの先端に着脱自在に取り付けられるピペットチップを前記開口部に挿入して前記液体を吸引する分注装置に用いられ、
前記液体の吸引を行う前に、前記フイルムを突き破って前記ピペットチップの先端を挿入する挿入孔を形成する孔開け具において、
前記ピペットチップと同様に前記ノズルの先端に着脱自在に取り付け可能な取り付け部を後端に有するアダプタと、このアダプタの前端に固定され前記フイルムを突き破る尖頭部とからなることを特徴とする孔開け具。
【請求項2】
前記アダプタは、筒状をしており、前記ノズルの先端を前記取り付け部の後端から圧入して嵌合させることにより前記分注ヘッドに固定されることを特徴とする請求項1記載の孔開け具。
【請求項3】
前記アダプタは、前記ピペットチップの先端を切断加工した加工部品であることを特徴とする請求項1又は2記載の孔開け具。
【請求項4】
前記尖頭部の後端部には、前記アダプタの前端の開口に挿入して、ネジ止めによって前記尖頭部を前記アダプタに固定するネジ止め部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3いずれか記載の孔開け具。
【請求項5】
前記ネジ止め部は、前記アダプタへの挿入方向の後端に雌ねじが形成され、前記アダプタの後端の開口から挿入されるボルトと螺合するナット部材であることを特徴とする請求項4記載の孔開け具。
【請求項6】
前記尖頭部には、前記アダプタの前端と当接して前記ネジ止め部の前記アダプタへの挿入量を規制するフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の孔開け具。
【請求項7】
前記アダプタは、筒状内壁の後端から前端に向けて先細になっており、前記ボルトの頭部を前記アダプタの内壁に圧接することにより前記尖頭部を固定することを特徴とする請求項6記載の孔開け具。
【請求項8】
前記尖頭部の先端外周面には、軸方向に沿って少なくも1本の稜線が形成されていることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の孔開け具。
【請求項9】
前記尖頭部の先端は、角すい形状であることを特徴とする請求項8記載の孔開け具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−3350(P2007−3350A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183960(P2005−183960)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】