説明

制御システムおよびそれを備えた鞍乗り型車両

【課題】適切なタイミングでエンジンの出力調整を行うことができる低コストの制御システムおよびそれを備えた鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】シフトカム7bは、複数のカム溝d1〜d3を有する。カム溝カム溝d1〜d3にシフトフォークc1〜c3が連結される。運転者によりシフトペダル11が操作されることにより、シフトフォークc1〜c3がシフトカム7bの軸方向に移動する。それにより、変速機5のシフトチェンジが行われる。シフトフォークc1〜c3の移動は、カム溝d1〜d3により、シフトカム7bの回転角度が所定角度に達するまで禁止される。シフトカム7bの回転角度は、シフトカム回転角センサSE4により検出される。シフトカム7bの回転角度が所定角度になったことを示す値がシフトカム回転角センサSE4により検出された場合に、ECU50によりエンジンの出力調整が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力調整を行う制御システムおよびそれを備えた鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
マニュアルトランスミッションを備えた車両においてギアシフトを行う場合、通常、運転者は、まずクラッチを切断する。これにより、エンジンのクランクシャフトからトランスミッションのメインシャフトへの動力の伝達が停止され、ギアの切り離しが容易になる。この状態で、運転者はシフト操作を行い、ギアポジションを変更する。最後に、運転者は、クラッチを接続し、クランクシャフトからメインシャフトへ動力を伝達させる。これにより、ギアシフトが完了する。
【0003】
ところで、レース等においては、迅速なギアシフトが求められる。そのため、運転者は、クラッチ操作を行わずにギアシフト(以下、クラッチレスシフトと称する)を行う場合がある。この場合、クランクシャフトからメインシャフトへ動力が伝達されている状態でギアシフトが行われるので、ギアの切り離しが困難である。そのため、運転者は、ギアの切り離しを容易に行うことができるように、エンジンの出力を調整しなければならない。
【0004】
このようなエンジンの出力の調整は、熟練度の低い運転者にとっては困難な作業である。したがって、熟練度の低い運転者がクラッチレスシフトを行った場合、円滑にギアシフトを行えない場合がある。
【0005】
そこで、従来より、クラッチレスシフトにおいてエンジンの出力を制御する装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載の車両の変速装置においては、運転者のシフト操作を荷重センサの出力に基づいて検出し、エンジンの出力を一時的に変化させている。それにより、円滑なシフト操作を可能にしている。
【0007】
しかしながら、荷重センサを構成するためにはロードセル等の高価な部品が必要となる。そのため、特許文献1の車両の変速装置を車両に設けた場合、車両の製品コストが増加する。
【0008】
そこで、荷重センサよりも安価な加速度センサにより運転者のシフト操作を検出する装置が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2記載の車両の変速装置においては、運転者のシフト操作を加速度センサの出力に基づいて検出し、エンジンの出力を一時的に変化させている。それにより、円滑なシフト操作を可能にしている。
【特許文献1】特開平3−290030号公報
【特許文献2】特開平4−12140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、加速度センサの検出値は、路面の勾配、凹凸および車両の加速度等の影響を受けやすい。そのため、特許文献2の車両の変速装置では、運転者のシフト操作を正確に検出することは困難である。したがって、適切なタイミングでエンジンの出力調整を行うことができない。
【0011】
本発明の目的は、適切なタイミングでエンジンの出力調整を行うことができる低コストの制御システムおよびそれを備えた鞍乗り型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)第1の発明に係る制御システムは、鞍乗り型車両のエンジンを制御する制御システムであって、エンジンにより発生されるトルクを複数のギアの異なる係合状態により複数の変速比で駆動輪に伝達する変速機と、エンジンの出力調整を行う調整部と、運転者の操作に応じて第1の角度ずつ回転するシフトカムと、シフトカムと複数のギアのいずれかとを連結し、シフトカムが第1の角度回転する際に係合状態のギアの一方を他方から離間させるように移動可能に設けられる複数の連結部材と、シフトカムの回転角度を検出する検出部とを備え、シフトカムは、運転者の操作に応じたシフトカムの一回の回転動作においてシフトカムの回転角度が第1の角度よりも小さい第2の角度に達するまで複数の連結部材が移動せず、シフトカムの回転角度が第2の角度に達したときにいずれかの連結部材が移動を開始するように複数の連結部材の移動を規制する規制部を有し、調整部は、検出部により検出されるシフトカムの回転角度が一回の回転動作において第2の角度以上変化した場合にエンジンの出力調整を開始するものである。
【0013】
この制御システムによれば、エンジンにより発生されるトルクが変速機によって複数の変速比で駆動輪に伝達される。変速機の複数の変速比は、複数のギアの異なる組み合わせによりそれぞれ設定される。変速機の複数のギアとシフトカムとを連結するように複数の連結部材が設けられる。複数の連結部材は、シフトカムが第1の角度回転する際に係合状態のギアの一方を他方から離間させるように移動する。
【0014】
また、シフトカムは規制部を有する。規制部は、運転者の操作に応じたシフトカムの一回の回転動作においてシフトカムの回転角度が第1の角度よりも小さい第2の角度に達するまで複数の連結部材が移動せず、シフトカムの回転角度が第2の角度に達したときにいずれかの連結部材が移動を開始するように複数の連結部材の移動を規制する。
【0015】
このような構成において、検出部により検出されるシフトカムの回転角度が第2の角度以上変化した場合に、調整部によりエンジンの出力調整が開始される。この場合、運転者の操作による連結部材の移動と調整部によるエンジンの出力調整とがほぼ同時に開始される。すなわち、係合状態のギアの係合力の低下と、それらのギアの一方のギアの移動とがほぼ同時に行われる。それにより、運転者は、係合状態の一方のギアを他方のギアから容易に離間させることができる。
【0016】
このように、この制御システムによれば、規制部により規制される連結部材の不動範囲に基づいて、エンジンの出力調整を行うべきタイミングを適切に設定することができる。この場合、運転者のシフト操作を検出するために荷重センサまたは加速度センサ等を設ける必要がないので、鞍乗り型車両の低コスト化が可能となる。
【0017】
(2)調整部は、検出部により検出されるシフトカムの回転角度が一回の回転動作において第2の角度以上変化した場合に、エンジンと変速機との間で伝達されているトルクが第1の値以上である場合にはエンジンの出力調整を開始し、エンジンと変速機との間で伝達されているトルクが第1の値よりも小さい場合にはエンジンの出力調整を行わなくてもよい。
【0018】
この場合、エンジンと変速機との間で伝達されているトルクが第1の値以上である状態において運転者がシフト操作を行った場合に、エンジンの出力が調整される。それにより、係合状態のギアの係合力が低下する。したがって、エンジンと変速機との間で伝達されているトルクが大きい場合すなわち係合状態のギアの係合力が大きい場合でも、運転者は、それらのギアを容易に離間させることが可能となる。その結果、迅速なクラッチレスシフトが可能になる。
【0019】
また、エンジンと変速機との間で伝達されているトルクが第1の値より小さい場合には、エンジンの出力調整は行われない。ここで、エンジンと変速機との間で伝達されているトルクが第1の値より小さい場合には、係合状態のギアの係合力は小さい。したがって、エンジンの出力調整が行われなくても、運転者はクラッチレスシフトを容易に行うことができる。この場合、エンジンの出力調整によるショックが車両に発生しないので、車両の走行フィーリングが向上する。
【0020】
(3)規制部は、シフトカムの外周部に形成される複数の溝部であってもよい。この場合、シフトカムを大型化させることなく、容易かつ低コストで規制部を設けることができる。また、連結部材の正確な動作が可能になる。
【0021】
(4)第2の角度は、第1の角度の8%以上あってもよい。この場合、シフトカムが十分に回転されてからエンジンの出力調整が開始される。したがって、運転者の意図に反してエンジンの出力調整が開始されることを防止することができる。それにより、鞍乗り型車両の走行フィーリングを十分に向上させることができる。
【0022】
(5)第2の角度は、第1の角度の25%以下であってもよい。この場合、エンジンの出力調整が開始されるまでの時間を短くすることができるので、迅速なクラッチレスシフトが可能になる。
【0023】
(6)シフトカムにシフトカムの回転方向およびその逆方向のトルクを与えるトルク付与部をさらに備え、一回の回転動作においてトルク付与部からシフトカムに与えられる逆方向のトルクは、シフトカムの回転角度が第2の角度より小さい第3の角度に達したときに最大となってもよい。
【0024】
この場合、トルク付与部からシフトカムに与えられるシフトカムの回転方向と逆方向のトルクは、エンジンの出力調整が開始される直前から減少される。この場合、エンジンの出力調整が開始されたときに、シフトカムを容易に回転させることができる。それにより、より迅速なクラッチレスシフトが可能になる。
【0025】
(7)第2の発明に係る鞍乗り型車両は、駆動輪と、エンジンと、エンジンにより発生されるトルクを駆動輪に伝達する伝達機構と、第1の発明に係る制御システムとを備えたものである。
【0026】
この鞍乗り型車両においては、エンジンにより発生されたトルクが伝達機構により駆動輪に伝達される。それにより、鞍乗り型車両が走行する。
【0027】
また、この鞍乗り型車両には、第1の発明に係る制御システムが設けられている。したがって、検出部により検出されるシフトカムの回転角度が第2の角度以上変化した場合に、調整部によりエンジンの出力調整が開始される。この場合、運転者の操作による連結部材の移動と調整部によるエンジンの出力調整とがほぼ同時に開始される。すなわち、係合状態のギアの係合力の低下と、それらのギアの一方のギアの移動とがほぼ同時に行われる。それにより、運転者は、係合状態の一方のギアを他方のギアから容易に離間させることができる。
【0028】
このように、規制部により規制される連結部材の不動範囲に基づいて、エンジンの出力調整を行うべきタイミングが適切に設定される。この場合、運転者のシフト操作を検出するために荷重センサまたは加速度センサ等を設ける必要がないので、鞍乗り型車両の低コスト化が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、検出部により検出されるシフトカムの回転角度が第2の角度以上変化した場合に、調整部によりエンジンの出力調整が開始される。この場合、運転者の操作による連結部材の移動と調整部によるエンジンの出力調整とがほぼ同時に開始される。すなわち、係合状態のギアの係合力の低下と、それらのギアの一方のギアの移動とがほぼ同時に行われる。それにより、運転者は、係合状態の一方のギアを他方のギアから容易に離間させることができる。
【0030】
このように、規制部により規制される連結部材の不動範囲に基づいて、エンジンの出力調整を行うべきタイミングが適切に設定される。この場合、運転者のシフト操作を検出するために荷重センサまたは加速度センサ等を設ける必要がないので、鞍乗り型車両の低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態に係る制御システムおよびそれを備える鞍乗り型車両について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、鞍乗り型車両の一例として自動二輪車について説明する。
【0032】
(1)自動二輪車の概略構成
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車を示す概略側面図である。
【0033】
図1の自動二輪車100においては、本体フレーム101の前端にヘッドパイプ102が設けられる。ヘッドパイプ102にフロントフォーク103が左右方向に揺動可能に設けられる。フロントフォーク103の下端に前輪104が回転可能に支持される。ヘッドパイプ102の上端にはハンドル105が設けられる。
【0034】
ハンドル105には、アクセルグリップ106およびアクセル開度センサSE1が設けられる。アクセル開度センサSE1は、運転者によるアクセルグリップ106の操作量(以下、アクセル開度と称する)を検出する。
【0035】
本体フレーム101の中央部には、エンジン107が設けられる。エンジン107には、吸気管79および排気管118が取り付けられる。エンジン107の下部には、クランクケース109が取り付けられる。クランクケース109内には、クランク角センサSE2が設けられる。クランク角センサSE2は、エンジン107の後述するクランク2(図2および図10参照)の回転角度を検出する。
【0036】
また、吸気管79内には、スロットルセンサSE3が設けられる。スロットルセンサSE3は、後述する電子制御式スロットルバルブ(ETV)82(図10参照)の開度を検出する。
【0037】
本体フレーム101の下部には、クランクケース109に連結されるミッションケース110が設けられる。ミッションケース110内には、シフトカム回転角センサSE4、ドライブ軸回転速度センサSE5、後述する変速機5(図2参照)および後述するシフト機構7(図2参照)が設けられる。
【0038】
シフトカム回転角センサSE4は、後述するシフトカム7b(図2参照)の回転角度を検出する。ドライブ軸回転速度センサSE5は、後述するドライブ軸5b(図2参照)の回転速度を検出する。変速機5およびシフト機構7の詳細は後述する。
【0039】
ミッションケース110の側部には、シフトペダル11が設けられる。エンジン107の上部には燃料タンク112が設けられ、燃料タンク112の後方にはシート113が設けられる。シート113の下部には、ECU50(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)が設けられる。
【0040】
ECU50は、I/F(インターフェース)501、CPU(中央演算処理装置)502、ROM(リードオンリメモリ)503およびRAM(ランダムアクセスメモリ)504を含む。上記のセンサSE1〜SE5の検出値は、I/F501を介してCPU502に与えられる。CPU502は、後述するように、各センサSE1〜SE5の検出値に基づいてエンジン107の動作を制御する。ROM503は、CPU502の制御プログラム等を記憶する。RAM504は、種々のデータを記憶するとともにCPU502の作業領域として機能する。
【0041】
エンジン107の後方に延びるように、本体フレーム101にリアアーム114が接続される。リアアーム114は、後輪115および後輪ドリブンスプロケット116を回転可能に保持する。後輪ドリブンスプロケット116には、チェーン117が取り付けられる。
【0042】
エンジン107の排気ポートには、排気管118の一端側が取り付けられる。排気管118の他端側には、マフラー119が取り付けられる。
【0043】
(2)変速機構
(2−1)概略構成
図2は、図1のミッションケース110内に設けられる変速機およびシフト機構の構成を説明するための図である。
【0044】
図2に示すように、変速機5は、メイン軸5aおよびドライブ軸5bを備える。メイン軸5aには複数の変速ギア5cが装着されており、ドライブ軸5bには複数の変速ギア5dおよび後輪ドライブスプロケット5eが装着されている。後輪ドライブスプロケット5eには、図1のチェーン117が取り付けられる。
【0045】
図1のエンジン107により発生されるトルク(駆動力)は図2のクランク2を介してクラッチ3に伝達される。クラッチ3に伝達されたトルクは、変速機5のメイン軸5aに伝達される。メイン軸5aに伝達されたトルクは、変速ギア5c,5dを介してドライブ軸5bに伝達される。ドライブ軸5bに伝達されたトルクは、後輪ドライブスプロケット5e、チェーン117(図1)および後輪ドリブンスプロケット116(図1)を介して後輪115(図1)に伝達される。それにより、後輪115が回転する。
【0046】
図3は、メイン軸5aに伝達されたトルクがドライブ軸5bに伝達される構成を示す概略模式図である。
【0047】
なお、図3(a),(b)においては、複数の変速ギア5cのうちの変速ギア5c1および変速ギア5c2が示され、複数の変速ギア5dのうちの変速ギア5d1および変速ギア5d2が示されている。
【0048】
変速ギア5c1は、セレーション構造によりメイン軸5aに装着されている。すなわち、変速ギア5c1は、メイン軸5aの軸方向においては移動自在であるが、メイン軸5aの回転方向においてはメイン軸5aに固定されている。そのため、変速ギア5c1は、メイン軸5aが回転することにより回転する。変速ギア5c2は、メイン軸5aの軸方向における移動が禁止された状態でメイン軸5aに回転自在に装着されている。
【0049】
変速ギア5d1は、ドライブ軸5bの軸方向における移動が禁止された状態でドライブ軸5bに回転自在に装着されている。図3(a)に示すように、変速ギア5c1と変速ギア5d1とが噛み合っている場合には、メイン軸5aが回転することにより変速ギア5d1が回転する。
【0050】
変速ギア5d2は、セレーション構造によりドライブ軸5bに装着されている。すなわち、変速ギア5d2は、ドライブ軸5bの軸方向においては移動自在であるが、ドライブ軸5bの回転方向においてはドライブ軸5bに固定されている。そのため、ドライブ軸5bは、変速ギア5d2が回転することにより回転する。
【0051】
図3(a)に示すように、変速ギア5d2が変速ギア5d1から離間している場合には、変速ギア5d1は、ドライブ軸5bの回転方向においてドライブ軸5bに固定されていない。この場合、メイン軸5aが回転することにより、変速ギア5d1が回転するが、ドライブ軸5bは回転しない。このように、メイン軸5aからドライブ軸5bにトルク(駆動力)が伝達されない状態をギアがニュートラルポジションにあると呼ぶ。
【0052】
図3(b)に示すように、変速ギア5d2が変速ギア5d1に近接するように軸方向に移動することにより、変速ギア5d2の側面に設けられた凸状のドグ5fが、変速ギア5d1の側面に設けられた凹状のドグ穴(図示せず)に係合する。それにより、変速ギア5d1と変速ギア5d2とが固定される。この場合、メイン軸5aが回転することにより、変速ギア5d1とともに変速ギア5d2が回転する。それにより、ドライブ軸5bが回転する。
【0053】
なお、図3(a)の状態から、変速ギア5c1を変速ギア5c2に近接させ、変速ギア5c1と変速ギア5c2とを固定した場合には、変速ギア5c2は変速ギア5c1とともに回転する。この場合、変速ギア5d2は、変速ギア5c2の回転に基づいて回転する。それにより、ドライブ軸5bが回転する。以下、変速ギア5c1,5d2のように、メイン軸5aまたはドライブ軸5b上を軸方向に移動する変速ギアをスライドギアと称する。また、変速ギア5c2,5d1のように、メイン軸5aまたはドライブ軸5bの軸方向における移動が禁止された変速ギアをフィックスギアと称する。
【0054】
このように、変速機5においては、スライドギアを移動させ、スライドギアとフィックスギアとの組み合わせを変更することにより、メイン軸5aからドライブ軸5bへのトルク(駆動力)の伝達経路を変更することができる。それにより、ドライブ軸5bの回転速度を変更することができる。なお、スライドギアは、後述のシフト機構7(図2)により移動される。
【0055】
図2に示すように、シフト機構7は、シフトアーム7a、シフトカム7b、第1〜第3のシフトフォークc1〜c3およびストッパープレート200を備える。シフトアーム7aの一端側は、回転軸15の一端部に固定され、他端側はシフトカム7bの一端に連結されている。シフトカム7bには、第1〜第3のカム溝d1〜d3が形成されている。各シフトフォークc1〜c3は、摺動ピンe1〜e3により第1〜第3のカム溝d1〜d3にそれぞれ連結される。シフトカム7bの他端には、シフトカム回転角センサSE4が設けられている。ストッパープレート200は、シフトカム7bに固定されている。
【0056】
回転軸15の他端部には、シフトペダル11が固定されている。回転軸15は、運転者がシフトペダル11を回転させることにより回転する。回転軸15が回転することにより、シフトアーム7aが一端側を中心として回転する。それにより、シフトカム7bが回転する。
【0057】
シフトカム7bが回転することにより、各シフトフォークc1〜c3に連結される摺動ピンが各カム溝d1〜d3内を移動する。それにより、各シフトフォークc1〜c3が移動し、スライドギアが移動される。その結果、変速機5の変速比が変更される。
【0058】
(2−2)シフト機構
以下、シフト機構7について図面を用いて詳細に説明する。
【0059】
図4は、シフト機構7(図2)の第1〜第3のカム溝d1〜d3(図2)の展開図である。図4の(a)は、第1のカム溝d1を示し、(b)は、第2のカム溝d2を示し、(c)は、第3のカム溝d3を示す。また、各カム溝d1〜d3内に示される“○”は、摺動ピンe1〜e3の各ギアポジションにおける位置を示す。
【0060】
なお、以下の説明においては、図4において一点鎖線L0上に位置するカム溝を中立溝L0と称し、一点鎖線L1上に位置するカム溝を第1係合溝L1と称し、一点鎖線L2上に位置するカム溝を第2係合溝L2と称する。
【0061】
本実施の形態においては、摺動ピンe1〜e3が中立溝L0から第1係合溝L1または第2係合溝L2に移動することにより、シフトフォークc1〜c3が移動する。それにより、変速ギア5c,5d(図3)のいずれかのスライドギアといずれかのフィックスギアとが係合される。
【0062】
また、摺動ピンe1〜e3が第1係合溝L1または第2係合溝L2から中立溝L0に移動することにより、シフトフォークc1〜c3が移動する。それにより、変速ギア5c,5dのいずれかのスライドギアとフィックスギアとの係合が解除される。
【0063】
本実施の形態においては、変速機5(図2)は、ニュートラルポジション(N)および1〜6速のギアポジションを有する。運転者がシフトペダル11(図1)を操作してシフトカム7b(図2)を回転させることにより、図4に示すように、各カム溝d1〜d3内において摺動ピンe1〜e3がニュートラル(N)、1速、2速、3速、4速、5速および6速の位置に移動する。それにより、変速機5のギアポジションがニュートラル(N)、1速、2速、3速、4速、5速および6速のいずれかに設定される。
【0064】
詳細には、全ての摺動ピンe1〜e3が中立溝L0上に位置する場合には、変速機5のギアポジションがニュートラルポジションに設定される。また、摺動ピンe3(図4(c))が第2係合溝L2に移動することにより、変速機5のギアポジションが1速に設定され、摺動ピンe1(図4(a))が第1係合溝L1上に移動することにより変速機5のギアポジションが2速に設定される。
【0065】
また、摺動ピンe3が第1係合溝L1上に移動することにより変速機5のギアポジションが3速に設定され、摺動ピンe1が第2係合溝L2上に移動することにより変速機5のギアポジションが4速に設定される。
【0066】
同様に、摺動ピンe2(図4(b))が第2係合溝L2上に移動することにより変速機5のギアポジションが5速に設定され、摺動ピンe2が第1係合溝L1上に移動することにより変速機5のギアポジションが6速に設定される。
【0067】
なお、本実施の形態においては、シフトカム7b(図2)がニュートラル(N)の位置から一方向に30°回転することにより摺動ピンe1〜e3が1速の位置に移動する。また、シフトカム7bが1速の位置から他方向に60°回転することにより摺動ピンe1〜e3が2速の位置に移動する。以降同様に、シフトカム7bが他方向に60°回転するごとに、摺動ピンe1〜e3が3速、4速、5速および6速の位置に順に移動する。
【0068】
シフトカム7bの回転角度は、ストッパープレート200(図2)により規制される。以下、図面を用いてストッパープレート200について説明する。
【0069】
図5は、シフト機構7(図2)をストッパープレート200側から見た図である。
【0070】
図5に示すように、ストッパープレート200は、外周面に7つの凹部201〜207を有する。ストッパープレート200の外周面には、ローラ250が当接される。ローラ250は、略L字状の位置決めアーム251の一端に回転可能に取り付けられる。
【0071】
位置決めアーム251の略中心部に支持部材252が設けられる。位置決めアーム251は、支持部材252によりミッションケース110(図1)に回転可能に取り付けられる。位置決めアーム251の他端には、バネ253の一端が取り付けられる。バネ253の他端は、支持ピン254に取り付けられる。
【0072】
位置決めアーム251の他端部は、バネ253により支持ピン254側に付勢される。そのため、運転者によりシフトカム7bにトルクが与えられていない場合には、ローラ250が凹部201〜207のいずれかにおいてストッパープレート200に当接する。それにより、シフトカム7bの位置が保持される。
【0073】
なお、本実施の形態においては、ローラ250が凹部201内に位置する場合には、変速機5(図2)が1速に設定され、凹部202内に位置する場合には、変速機5がニュートラルポジションに設定され、凹部203内に位置するには、変速機5が2速に設定される。同様に、凹部204、凹部205、凹部206および凹部207は、3速、4速、5速および6速のギアポジションにそれぞれ対応する。
【0074】
以下、変速機5(図2)のギアポジションが3速から4速にシフトアップされる場合を例に挙げて、ストッパープレート200、ローラ250および摺動ピンe1〜e3(以下、ストッパープレート200等と略記する)の関係について説明する。
【0075】
図6は、変速機5のギアポジションが3速から4速にシフトアップされる際のストッパープレート200等の関係を示した図である。なお、図6において、(a)は、変速機5のギアポジションが3速に設定されているときのストッパープレート200等の関係を示し、(b)は、3速の状態からシフトカム7bが時計回りに10°回転したときのストッパープレート200等の関係を示し、(c)は、20°回転したときのストッパープレート200等の関係を示す。
【0076】
同様に、図6において、(d)は、3速の状態からシフトカム7bが30°回転したときのストッパープレート200等の関係を示し、(e)は、40°回転したときのストッパープレート200等の関係を示し、(f)は、50°回転したときのストッパープレート200等の関係を示す。また、(g)、は3速の状態からシフトカム7bが60°回転したとき、すなわち変速機5のギアポジションが4速に設定されているときのストッパープレート200等の関係を示す。
【0077】
また、図7は、変速機5のギアポジションが3速から4速にシフトアップされる際にローラ250(図6)からストッパープレート200(図6)に与えられるトルクを示す図である。なお、図7において、縦軸はトルクを示し、横軸はシフトカム7bの回転角度を示す。図7の0°は、変速機5のギアポジションが3速に設定されている状態であり、60°は変速機5のギアポジションが4速に設定されている状態である。図7においては、ストッパープレート200に与えられる反時計回りの方向のトルクが正の値として示されている。
【0078】
運転者によりシフトアップ操作が行われることにより、図6(a)に示すように、シフトカム7bが時計回りに回転する。それにより、摺動ピンe1〜e3がカム溝d1〜d3内を4速の位置へ向かって移動する。
【0079】
また、ストッパープレート200が時計回りに回転することにより、ローラ250とストッパープレート200との接触点が凹部205側へ向かって移動する。それにより、図7に示すように、ローラ250からストッパープレート200に反時計回りの方向のトルクが与えられる。
【0080】
図6(b),(c)に示すように、シフトカム7bの回転角度が約10°を超えることにより、摺動ピンe3が中立溝L0(図4(c))側へ移動する。これにより、シフトフォークc3(図2)により、3速のギアポジションを構成するスライドギアがフィックスギアから離間する方向に移動される。なお、このスライドギアは、シフトカム7bの回転角度が約20°(図6(c))になったときに、フィックスギアから完全に離間する位置に移動される。
【0081】
また、図7に示すように、ローラ250からストッパープレート200に与えられる反時計回りの方向のトルクは、シフトカム7bの回転角度が約10°になるときに最大となり、その後徐々に減少する。詳細には、ストッパープレート200に与えられる反時計回りのトルクは、後述するCPU502(図10)によるエンジン107の出力制御が開始される直前に最大になる。
【0082】
図6(d)に示すように、シフトカム7bの回転角度が30°になることにより、摺動ピンe3が中立溝L0(図4(c))上に移動する。これにより、シフトフォークc3が停止され、スライドギアがフィックスギアから離間した位置で保持される。
【0083】
また、ローラ250とストッパープレート200との接触点は、凹部204と凹部205との中間点に移動する。それにより、図7に示すように、ローラ250からストッパープレート200に与えられるトルクの値が略0になる。
【0084】
図6(d),(e)に示すように、シフトカム7bの回転角度が30°を超えることにより、摺動ピンe1が第2係合溝L2(図4(a))側に向かって移動する。これにより、シフトフォークc1(図2)により、4速のギアポジションを構成するスライドギアがフィックスギア側に移動される。なお、このスライドギアは、シフトカム7bの回転角度が約40°(図6(e))になったときに、フィックスギアに接触する位置に移動される。
【0085】
また、ローラ250とストッパープレート200との接触点が凹部205内へ移動する。それにより、図7に示すように、ローラ250からストッパープレート200に時計回りの方向のトルクが与えられる。その結果、シフトカム7b(図2)の時計回りの方向への回転動作が補助される。
【0086】
図6(f)に示すように、シフトカム7bが50°回転することにより、摺動ピンe1が第2係合溝L2(図4(a))上に移動する。これにより、シフトフォークc1が停止され、スライドギアがフィックスギアに接触する位置で保持される。
【0087】
また、図7に示すように、ローラ250からストッパープレート200に与えられる時計回りの方向のトルクは、シフトカム7bが約50°回転したときに最大になる。
【0088】
その後、図6(g)に示すように、シフトカム7bが60°回転することにより、ローラ250とストッパープレート200との接触点が凹部205の中心点に移動する。それにより、図7に示すように、ローラ250からストッパープレート200に与えられるトルクは略0になり、シフトカム7bの回転動作が規制される。以上により、変速機5およびシフト機構7における3速から4速へのシフトアップ動作が終了する。なお、ローラ250からストッパープレート200に与えられるトルクの効果については後述する。
【0089】
ここで、上述したように、3速から4速へのシフトアップ動作においては、シフトカム7bの回転角度が約10°になったときに、シフトフォークc3の移動が開始される。同様に、他のギアポジションにおける変速動作においても、シフトカム7bの回転角度が約10°になったときに、シフトフォークc1〜c3のいずれかの移動が開始される。
【0090】
このように、本実施の形態においては、シフトカム7bの回転角度が約10°になったときにシフトフォークc1〜c3のいずれかの移動が開始されるようにカム溝d1〜d3が形成されている。以下、図面を用いてカム溝d1〜d3の形状について説明する。
【0091】
図8は、本実施の形態に係るシフトカム7bのカム溝d1〜d3と一般的なシフトカムのカム溝との違いを説明するための図である。なお、図8(a)は、本実施の形態に係るシフトカム7bのカム溝d3の3速の位置を示し、図8(b)は、一般的なシフトカムのカム溝d31の3速の位置を示している。
【0092】
図8に示すように、本実施の形態に係るカム溝d3は、第1係合溝L1の直線部分の長さD1が、一般的なカム溝d31の第1係合溝L1の直線部分の長さD2に比べて十分に長い。
【0093】
詳細には、シフトカム7b(図2)の3速のギアポジションからの回転角度が10°になったときに、摺動ピンe3のカム溝d3の幅方向への移動距離D3がカム溝d3のクリアランス分のみになるように、第1係合溝L1の直線部分の長さD1が設定されている。そのため、シフトカム7bの回転角度が10°を超えるまでは、シフトフォークc3(図2)は移動されず、スライドギアの移動が開始されない。
【0094】
一方、一般的なシフトカムのカム溝d31では、第1係合溝L1の直線部分の長さD2が短い。この場合、図8(b)に示すように、シフトカムの回転角度が10°になったときに、摺動ピンe3の移動距離が長さD4分大きくなる。そのため、シフトカムの回転角度が10°を超える前に、シフトフォークc3の移動が開始される。
【0095】
なお、他の第1係合溝L1(図4)および第2係合溝L2(図4)においても、図8(a)と同様に直線部分の長さが長く設定されている。したがって、任意のギアポジションにおける変速動作において、シフトカム7bの回転角度が10°になったときに、シフトフォークc1〜c3のいずれかの移動が開始される。シフトカム7bの効果については後述する。
【0096】
(3)エンジン出力と変速ギアとの関係
一般に、変速機5のギアを切り替える場合(以下、ギアシフトと称する)には、運転者は、図示しないクラッチレバーを操作して、クラッチ3(図2)を切断する。これにより、クランク2(図2)とメイン軸5aとの間におけるトルクの伝達が停止される。運転者は、この状態でシフトペダル11を操作する(以下、シフト操作と称する)。それにより、円滑なギアシフトを行うことが可能となる。以下、その理由を図面を用いて説明する。
【0097】
上述したように、複数の変速ギア5c,5dのスライドギアには凸状のドグが形成され、複数の変速ギア5c,5dのフィックスギアにはドグが係合される凹状のドグ穴が形成される。
【0098】
図9は、スライドギアのドグとフィックスギアのドグ穴との関係を示す図である。なお、図9においては、スライドギアおよびフィックスギアのドグおよびドグ穴が形成されている部分の断面図が模式的に示されている。また、スライドギアおよびフィックスギアの図9に示す部分は、矢印で示す方向に移動(回転)しているものとする。
【0099】
図9(a)は、クランク2(図2)からメイン軸5a(図2)にトルクが与えられている場合を示し、図9(b)は、メイン軸5aからクランク2にトルクが与えられている場合を示す。以下、クランク2からメイン軸5aにトルクが与えられている場合(図9(a)の状態)をエンジン107の駆動状態と称し、その逆の場合(図9(b)の状態)をエンジン107の被駆動状態と称する。例えば、自動二輪車100が加速している場合にエンジン107が駆動状態となり、自動二輪車100が減速している場合にエンジン107が被駆動状態となる。すなわち、エンジン107の被駆動状態は、エンジンブレーキがかかっている状態である。
【0100】
図9に示すように、フィックスギア51には、底面に向かって幅広となる断面台形のドグ穴52が形成されている。また、スライドギア53には、先端部に向かって幅広となる断面逆台形のドグ54が形成されている。
【0101】
エンジン107の駆動状態においては、図9(a)に示すように、ドグ54の移動方向における前方側の側面がドグ穴52の移動方向における前方側の側面に当接する。これにより、スライドギア53のトルクがドグ54を介してフィックスギア51に伝達される。この場合、ドグ穴52とドグ54との接触面において大きな圧力(係合力)が発生する。したがって、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることは困難である。
【0102】
ここで、運転者がクラッチ3(図2)を切断した場合、クランク2(図2)からメイン軸5a(図2)へのトルクの伝達が停止される。この場合、メイン軸5aは惰性で回転する。それにより、図9(c)に示すように、ドグ穴52とドグ54との係合が解除される。その結果、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることが可能となり、ギアシフトを円滑に行うことができる。
【0103】
また、エンジン107の被駆動状態においては、図9(b)に示すように、ドグ54の移動方向における後方側の側面がドグ穴52の移動方向における後方側の側面に当接する。これにより、フィックスギア51のトルクがドグ54を介してスライドギア53に伝達される。上述したように、エンジン107の被駆動状態においてはエンジンブレーキがかかっているので、フィックスギア51の回転は、スライドギア53によって規制される。この場合、ドグ穴52とドグ54との接触面において大きな圧力(係合力)が発生する。したがって、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることは困難である。
【0104】
ここで、運転者がクラッチ3(図2)を切断した場合、クランク2(図2)とメイン軸5a(図2)との間のトルクの伝達が停止される。この場合、エンジンブレーキが解除され、メイン軸5aは惰性で回転する。それにより、図4(c)に示すように、ドグ穴52とドグ54との係合が解除される。その結果、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることが可能となり、ギアシフトを円滑に行うことができる。
【0105】
(4)エンジンの出力制御
本実施の形態においては、ECU50(図10)のCPU502は、上記のセンサSE1〜SE5の検出値に基づいてエンジン107の出力を調整する。それにより、クラッチ3(図2)を切断することなく、フィックスギア51およびスライドギア53を図9(c)に示す状態にすることができる。その結果、運転者は、クラッチ3を切断することなく円滑にギアシフトを行うことができる。すなわち、クラッチレスシフトを円滑に行うことができる。以下、詳細に説明する。
【0106】
(4−1)エンジンと各部との関係
図10は、エンジン107およびエンジン107の出力制御に関連する各部の概略構成を示す図である。
【0107】
図10に示すように、エンジン107はシリンダ71を有し、シリンダ71内には、ピストン72が上下動可能に設けられる。また、シリンダ71内の上部には燃焼室73が形成される。燃焼室73は吸気ポート74および排気ポート75を介してエンジン107の外部に連通する。
【0108】
吸気ポート74の下流側の開口端74aに吸気弁76が開閉自在に設けられ、排気ポート75の上流側の開口端75aに排気弁77が開閉自在に設けられる。吸気弁76および排気弁77は、通常のカム機構により駆動される。燃焼室73の上部には、燃焼室73内で火花点火を行うための点火プラグ78が設けられる。
【0109】
エンジン107には、吸気ポート74と連通するように吸気管79が取り付けられ、排気ポート75と連通するように排気管118が取り付けられる。吸気管79には、シリンダ71内に燃料を供給するためのインジェクタ108が設けられる。また、吸気管79内には、電子制御式スロットルバルブ(ETV)82が設けられる。
【0110】
エンジン107の作動時には、空気が吸気管79を通して吸気ポート74から燃焼室73内に吸入されるとともに、インジェクタ108により燃焼室73内に燃料が供給される。それにより、燃焼室73内で混合気が生成され、点火プラグ78により混合気に火花点火が行われる。燃焼室73内において混合気の燃焼により生じた既燃ガスは、排気ポート75から排気管118を通して排出される。
【0111】
ECU50には、アクセル開度センサSE1、クランク角センサSE2、スロットルセンサSE3、シフトカム回転角センサSE4およびドライブ軸回転速度センサSE5の検出値が与えられる。
【0112】
(4−2)CPUの制御動作
(a)概略
本実施の形態においては、ECU50(図10)のCPU502は、通常時には、アクセル開度センサSE1の検出値に基づいてETV82のスロットル開度を調整する。それにより、エンジン107の出力がアクセル開度に応じた値に調整される。なお、アクセル開度とスロットル開度(エンジン出力)との関係は、図10のROM503またはRAM504に記憶されている。
【0113】
また、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値に基づいて運転者のシフト操作を検知する。そして、CPU502は、運転者のシフト操作を検知したときに、クランク角センサSE2およびスロットルセンサSE3の検出値に基づいて、エンジン107が駆動状態、被駆動状態および後述する境界状態(駆動状態と被駆動状態との間の状態)のうちどの状態であるかを判別する。この判別結果に基づいて、CPU502は、エンジン107の出力を調整する。それにより、フィックスギア51(図9)とスライドギア53(図9)との係合力が低下され、運転者は容易にクラッチレスシフト(ギアシフト)を行うことができる。さらに、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値に基づいてギアシフトが完了したか否かを判別し、ギアシフトが完了した場合には、エンジン107の出力調整を終了する。
【0114】
例えば、エンジン107が駆動状態である場合に運転者によりシフトアップ操作またはシフトダウン操作が行われたときには、CPU502によりエンジン107の出力が一時的に低下される。詳細には、CPU502は、エンジン107の出力を、そのときのアクセル開度に基づいて決定されるエンジン107の出力よりも一時的に低下させる。それにより、フィックスギア51とスライドギア53との係合力が低下さる。
【0115】
また、エンジン107が被駆動状態である場合に運転者によりシフトダウン操作が行われた場合には、CPU502によりエンジン107の出力が一時的に増加される。詳細には、CPU502は、エンジン107の出力を、そのときのアクセル開度に基づいて決定されるエンジン107の出力よりも一時的に増加させる。それにより、フィックスギア51とスライドギア53との係合力が低下さる。なお、境界状態である場合には、CPU502によるエンジン107の出力調整は行われない。
【0116】
なお、CPU502は、例えば、点火プラグ78(図5)による混合気への火花点火を停止すること、点火時期を遅角させること、またはETV82(図5)のスロットル開度を小さくすることにより、エンジン107の出力を低下させる。また、CPU502は、例えば、ETV82のスロットル開度を大きくすることによりエンジン107の出力を増加させる。
【0117】
以下、図面を用いてCPU502の制御動作を詳細に説明する。
【0118】
(b)駆動状態、境界状態および被駆動状態の判別方法
まず、エンジン107の状態(駆動状態、境界状態および被駆動状態)の判別方法について説明する。本実施の形態においては、CPU502は、無負荷時のエンジン107(図10)の回転速度とETV82(図10)のスロットル開度との関係を示すデータ(以下、駆動状態判別データと称する)に基づいて、エンジン107が駆動状態、境界状態および被駆動状態のうちどの状態であるかを判別する。
【0119】
図11は、ECU50のROM503(またはRAM504)に記憶される駆動状態判別データの一例を示す図である。図11において、縦軸はエンジン107の回転速度を示し、横軸はETV82のスロットル開度を示す。
【0120】
図11において、点線aは、変速ギア5c,5d(図2)がニュートラルポジションである場合のエンジン107の回転速度とスロットル開度との関係を示している。図11に示すように、変速ギア5c,5dがニュートラルポジションである場合、エンジン107の回転速度とスロットル開度との関係はヒステリシスループを形成する。なお、点線aに示す関係は、例えば、実験またはコンピュータを用いたシミュレーション等により導出することができる。
【0121】
本実施の形態においては、点線aに外接する2本の平行な直線の内側の帯状の領域(一点鎖線bと一点鎖線cとの間の領域)を境界領域Aと定義するとともに、一点鎖線bより下の領域を駆動領域Bと定義し、一点鎖線cより上の領域を被駆動領域Cと定義する。
【0122】
エンジン107の状態(駆動状態、境界状態および被駆動状態)を判別する際には、CPU502は、クランク角センサSE2の検出値に基づいてエンジン107の回転速度を算出する。そして、算出した回転速度とスロットルセンサSE3の検出値とに基づいて、エンジン107とスロットル開度との関係が上記3つの領域のうちのどの領域に含まれているかを判別する。それにより、エンジン107が駆動状態、境界状態および被駆動状態状態のうちのどの状態であるか判別する。
【0123】
例えば、エンジン107の回転速度が6000rpmでスロットル開度が12degである状態は駆動領域Bに含まれる。この場合、CPU502は、エンジン107が駆動状態であると判別する。
【0124】
また、例えば、エンジン107の回転速度が6000rpmでスロットル開度が2degである状態は被駆動領域Cに含まれる。この場合、CPU502は、エンジン107が被駆動状態であると判別する。
【0125】
また、例えば、エンジン107の回転速度が6000rpmでスロットル開度が6degである状態は境界領域Aに含まれる。この場合、CPU502は、エンジン107が境界状態であると判別する。
【0126】
なお、境界状態とは、クランク2(図2)からメイン軸5a(図2)に伝達されるトルクが所定値以下である場合、またはメイン軸5aからクランク2に伝達されるトルクが所定値以下である場合のエンジン107の状態を示す。すなわち、エンジン107が境界状態である場合には、クランク2とメイン軸5aとの間でトルクがほとんど伝達されていない。この場合、ドグ穴52(図9)とドグ54(図9)との接触面において大きな圧力(係合力)は発生しない。そのため、エンジン107の出力調整が行われなくても、運転者はシフトペダル11を操作することにより、クラッチ3(図2)を切断することなくスライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることができる。
【0127】
(c)エンジンの出力調整時期
次に、CPU502によるエンジン107の出力調整時期について図面を用いて説明する。
【0128】
図12は、エンジン107が駆動状態である場合に運転者がシフトアップ操作を行ったときのCPU502によるエンジン107の出力調整時期を説明するための図である。また、図13は、エンジン107が被駆動状態である場合に運転者がシフトダウン操作を行ったときのCPU502によるエンジン107の出力調整時期を説明するための図である。
【0129】
なお、図12(a)および図13(a)は、シフトカム回転角センサSE4の出力波形(検出値)を示している。図12(a)および図13(a)において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。また、図12(b)および図13(b)は、エンジン107の回転速度の変化を示している。図12(b)および図13(b)において、縦軸は回転速度を示し、横軸は時間を示す。
【0130】
まず、図12について説明する。エンジン107が駆動状態である場合には、図12(b)に示すように、エンジン107の回転速度は時間の経過とともに上昇する。図12の例においては、エンジン107の回転速度が上昇している期間の時点t1において運転者がシフトアップ操作を開始する。なお、図12(a)では、シフトアップ前の時点t1におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)を値a1とし、シフトアップ後の時点t6におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値を値a2とする。
【0131】
運転者がシフトペダル11(図1)の操作を開始した直後は、シフトペダル11とシフトカム7b(図2)とを連結する連結機構が有するたわみおよび遊び等のためにシフトカム7bは回転しない。したがって、図12(a)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は、時点t2までほぼ変化しない。
【0132】
図12(a)に示すように、運転者がさらにシフトペダル11を踏み込むことにより、連結機構のたわみ等がなくなり、シフトカム7b(図2)が回転する。それにより、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は徐々に低下し、シフトカム7bの回転角度が約10°に達する時点t3において値a1より量α小さい値bになる。
【0133】
本実施の形態においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が値a1から量α低下して値bになったときに、CPU502(図10)の制御によりエンジン107の出力が低下される。それにより、エンジン107の回転速度が低下し、フィックスギア51(図9)のドグ穴52(図9)とスライドギア53(図9)のドグ54(図9)との接触面における圧力(係合力)が低下する。その結果、フィックスギア51とスライドギア53とが、図9(a)で示した係合状態から図9(c)で説明した解除状態に変化する。
【0134】
ここで、上述したように、本実施の形態においては、シフトカム7bの任意のギアポジションからの回転角度が約10°になったときにシフトフォークc1〜c3の移動が開始される。すなわち、時点t3においてスライドギア53の移動が開始される。
【0135】
したがって、本実施の形態においては、CPU502によるエンジン107の出力低下制御と運転者のシフトペダル11(図1)の操作によるスライドギア53の移動とがほぼ同時に開始される。それにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。その結果、運転者はクラッチ3(図2)を切断することなくギアシフトを行うことができる。
【0136】
図12(a)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7b(図2)の回転角度が約20°に達する時点t4において値a1より量β小さい値cになる。この時点t4において、CPU502によるエンジン107の出力低下制御が終了され、エンジン107の出力が再び増加する。それにより、図12(b)に示すように、エンジン107の回転速度が再び上昇する。その結果、1段上のギアポジションを構成するフィックスギア51とスライドギア53とが係合され(図9(a)の係合状態)、変速機5におけるシフトアップ動作が完了する。
【0137】
ここで、上述したように、本実施の形態においては、シフトカム7bの回転角度が約20°になったときに、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に離間される。したがって、本実施の形態においては、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に離間された直後に、CPU502によるエンジン107の出力低下制御が終了される。
【0138】
この場合、任意のギアポジションを構成するフィックスギア51およびスライドギア53の係合解除から1段上のギアポジションを構成するフィックスギア51およびスライドギア53の係合までに要する時間を短縮することができる。その結果、迅速なクラッチレスシフトが可能になる。
【0139】
なお、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7bの回転角度が40°になったときに値a1より量γ小さい値dになる。本実施の形態においては、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が値a1から量γ低下することにより値dになったときにシフトアップ動作が完了したと判別する。
【0140】
次に、図13について説明する。エンジン107が被駆動状態である場合には、図13(b)に示すように、エンジン107の回転速度は時間の経過とともに低下する。図13の例においては、エンジン107の回転速度が低下している期間の時点t7において運転者がシフトダウン操作を開始する。なお、図13(a)では、シフトダウン前の時点t7におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)を値e1とし、シフトダウン後の時点t12におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値を値e2とする。
【0141】
運転者がシフトペダル11(図1)の操作を開始した直後は、シフトペダル11とシフトカム7b(図2)とを連結する連結機構が有するたわみおよび遊び等のためにシフトカム7bは回転しない。したがって、図13(a)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は、時点t8までほぼ変化しない。
【0142】
図13(a)に示すように、運転者がさらにシフトペダル11を踏み込むことにより、連結機構のたわみ等がなくなり、シフトカム7b(図2)が回転する。それにより、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は徐々に上昇し、シフトカム7bの回転角度が約10°に達する時点t9において値e1より量α大きい値fになる。
【0143】
本実施の形態においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が値e1から量α上昇して値fになったときに、CPU502(図10)の制御によりエンジン107の出力が増加される。それにより、エンジン107の回転速度が上昇し、フィックスギア51(図9)のドグ穴52(図9)とスライドギア53(図9)のドグ54(図9)との接触面における圧力(係合力)が低下する。その結果、フィックスギア51とスライドギア53とが、図9(b)で示した係合状態から図9(c)で説明した解除状態に変化する。
【0144】
ここで、上述したように、本実施の形態においては、シフトカム7bの任意のギアポジションからの回転角度が約10°になったときにシフトフォークc1〜c3の移動が開始される。すなわち、時点t9においてスライドギア53の移動が開始される。
【0145】
したがって、本実施の形態においては、CPU502によるエンジン107の出力増加制御と運転者のシフトペダル11(図1)の操作によるスライドギア53の移動とがほぼ同時に開始される。それにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。その結果、運転者はクラッチ3(図2)を切断することなくギアシフトを行うことができる。
【0146】
図13(a)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7b(図2)の回転角度が約20°に達する時点t10において値e1より量β大きい値gになる。この時点t10において、CPU502によるエンジン107の出力増加制御が終了され、エンジン107の出力が再び低下する。それにより、図13(b)に示すように、エンジン107の回転速度が再び低下する。その結果、1段下のギアポジションを構成するフィックスギア51とスライドギア53とが係合され(図9(b)の係合状態)、変速機5におけるシフトダウン動作が完了する。
【0147】
ここで、上述したように、本実施の形態においては、シフトカム7bの回転角度が約20°になったときに、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に離間される。したがって、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に離間された直後に、CPU502によるエンジン107の出力増加制御が終了される。
【0148】
この場合、任意のギアポジションを構成するフィックスギア51およびスライドギア53の係合解除から1段下のギアポジションを構成するフィックスギア51およびスライドギア53の係合までに要する時間を短縮することができる。その結果、迅速なクラッチレスシフトが可能になる。
【0149】
なお、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7bの回転角度が40°になったときに値e1より量γ大きい値hになる。本実施の形態においては、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が値e1から量γ上昇することにより値hになったときにシフトダウン動作が完了したと判別する。
【0150】
なお、シフトカム回転角センサSE4の検出値はギアポジションによって異なる。図14は、ギアポジションを1速と6速との間で変化させたときのシフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)の一例を示す図である。なお、図14において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。
【0151】
図14に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、ギアポジションが低速位置にある場合には高くなり、高速位置になるほど低くなる。本実施の形態においては、各ギアポジションに対応するシフトカム回転角センサSE4の値がROM503(図10)に記憶されている。CPU502(図10)は、ROM503に記憶されるシフトカム回転角センサSE4の各ギアポジションに対応する値に基づいて、エンジン107の出力制御を行う。
【0152】
(d)制御フロー
次に、CPU502の制御動作をフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0153】
なお、以下の説明においては、量α(図12および図13)を第1のしきい値と称し、量β(図12および図13)を第2のしきい値と称し、量γ(図12および図13)を第3のしきい値と称する。また、各ギアポジションにおけるシフト操作前のシフトカム回転角センサSE4の検出値(図12の値a1および図13の値e1)を基準値と称する。第1〜第3のしきい値、後述する第4および第5のしきい値ならびに各ギアポジションの基準値は、ROM503に予め記憶される。
【0154】
図15〜図17は、CPU502の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0155】
図15に示すように、CPU502は、まず、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値(図12の値a1または図13の値e1に相当)から第1のしきい値(図12および図13の量αに相当)以上変化しているか否かを判別する(ステップS1)。なお、シフトカム回転角センサSE4の検出値はノイズを含む場合があるので、ステップS1においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第1のしきい値以上変化している状態が所定時間以上継続しているか否かを判別してもよい。
【0156】
シフトカム回転角センサSE4の検出値が第1のしきい値以上変化している場合、CPU502は、エンジン107の回転速度が第4のしきい値(例えば、1500rpm)以上でかつ車体速度が第5のしきい値(例えば、15km/h)以上であるか否かを判別する(ステップS2)。なお、自動二輪車100の車体速度は、ドライブ軸回転速度センサSE5の検出値に基づいてCPU502により算出される。ステップS2の処理を設ける効果については後述する。
【0157】
エンジン107の回転速度が第4のしきい値以上でかつ車体速度が第5のしきい値以上である場合、CPU502は、運転者によりシフトアップ操作が行われたか否かを判別する(ステップS3)。なお、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から低下している場合にはシフトアップ操作が行われたと判別し、基準値から上昇している場合にはシフトダウン操作が行われたと判別する。
【0158】
運転者によりシフトアップ操作が行われた場合、図16に示すように、CPU502は、エンジン107が駆動状態であるか否かを判別する(ステップS4)。エンジン107が駆動状態である場合には、CPU502は、例えば、点火プラグ78による混合気の点火を停止することにより、エンジン107の出力を低下させる(ステップS5)。上述したように、このステップS5の処理においてエンジン107の出力が低下されることにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。
【0159】
次に、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値(図12の量βに相当)以上低下しているか否かを判別する(ステップS6)。なお、ステップS6においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上低下している状態が所定時間以上継続しているか否かを判別してもよい。
【0160】
シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上低下している場合、CPU502は、フィックスギア51(図9)とスライドギア53(図9)とが離間されたと判断し、ステップS5または後述するステップS11において開始したエンジン107の出力調整を終了する(ステップS7)。
【0161】
次に、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上(図12の量γに相当)低下しているか否かを判別する(ステップS8)。なお、ステップS8においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上低下している状態が所定時間以上継続しているか否かを判別してもよい。
【0162】
シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上低下している場合、図15に示すように、CPU502は、ギアシフトが完了したと判断して、通常の制御を行う(ステップS9)。ステップS9の通常の制御においては、CPU502は、アクセル開度センサSE1の検出値に基づいてETV82のスロットル開度を調整する。したがって、通常の制御においては、運転者のアクセルグリップ106の操作量に応じてエンジン107の出力が調整される。
【0163】
図16のステップS4においてエンジン107が駆動状態でない場合、CPU502は、エンジン107が境界状態であるか否かを判別する(ステップS10)。
【0164】
エンジン107が境界状態である場合、CPU502は、エンジン107の出力調整を行うことなくステップS8へ進む。なお、上述したように、境界状態においては、エンジン107の出力調整を行わなくても、運転者はスライドギア53(図9)をフィックスギア51(図9)から離間する方向に容易に移動させることができる。
【0165】
図16のステップS10において、エンジン107が境界状態ではない場合、すなわちエンジン107が被駆動状態である場合、CPU502は、例えば、ETV82(図10)のスロットル開度を大きくすることにより、エンジン107の出力を増加させる(ステップS11)。上述したように、このステップS11の処理においてエンジン107の出力が増加されることにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。その後、CPU502は、ステップS6に進む。
【0166】
ステップS6において、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上低下していない場合、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上低下するまで待機する。すなわち、フィックスギア51がスライドギア53から完全に離間されるまで、CPU502はエンジン107の出力調整を継続する。
【0167】
ステップS8において、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上低下していない場合、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上低下するまで待機する。
【0168】
図15のステップS3において、運転者によりシフトアップ操作が行われていない場合、すなわち運転者によりシフトダウン操作が行われた場合、図17に示すように、CPU502は、エンジン107が駆動状態であるか否かを判別する(ステップS12)。エンジン107が駆動状態である場合には、CPU502は、例えば、点火プラグ78による混合気の点火を停止することにより、エンジン107の出力を低下させる(ステップS13)。上述したように、このステップS13の処理においてエンジン107の出力が低下されることにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。
【0169】
次に、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値(図13の量βに相当)以上上昇しているか否かを判別する(ステップS14)。なお、ステップS14においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上上昇している状態が所定時間以上継続しているか否かを判別してもよい。
【0170】
シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上上昇している場合、CPU502は、フィックスギア51(図9)とスライドギア53(図9)との係合が解除されたと判断し、ステップS13または後述するステップS18において開始したエンジン107の出力調整を終了する(ステップS15)。
【0171】
次に、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上(図13の量γに相当)上昇しているか否かを判別する(ステップS16)。なお、ステップS16においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上上昇している状態が所定時間以上継続しているか否かを判別してもよい。
【0172】
シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上上昇している場合、図15に示すように、CPU502は、ギアシフトが完了したと判断して、通常の制御を行う(ステップS9)。
【0173】
図17のステップS12においてエンジン107が駆動状態でない場合、CPU502は、エンジン107が境界状態であるか否かを判別する(ステップS17)。
【0174】
エンジン107が境界状態である場合、CPU502は、エンジン107の出力調整を行うことなくステップS16へ進む。なお、上述したように、境界状態においては、エンジン107の出力調整を行わなくても、運転者はスライドギア53(図9)をフィックスギア51(図9)から離間する方向に容易に移動させることができる。
【0175】
図17のステップS17において、エンジン107が境界状態ではない場合、すなわちエンジン107が被駆動状態である場合、CPU502は、例えば、ETV82のスロットル開度を大きくすることにより、エンジン107の出力を増加させる(ステップS18)。上述したように、このステップS18の処理においてエンジン107の出力が増加されることにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。その後、CPU502は、ステップS14に進む。
【0176】
ステップS14において、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上上昇していない場合、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第2のしきい値以上上昇するまで待機する。すなわち、フィックスギア51がスライドギア53から完全に離間されるまで、CPU502はエンジン107の出力調整を継続する。
【0177】
ステップS16において、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上上昇していない場合、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第3のしきい値以上上昇するまで待機する。
【0178】
図15のステップS1においてシフトカム回転角センサSE4の検出値が基準値から第1のしきい値以上変化していない場合、CPU502は、運転者によるシフト操作が開始されていないと判断し、ステップS9に進み、通常の制御を行う。
【0179】
また、ステップS2において、エンジン107の回転速度が第4のしきい値より小さいか、あるいは車体速度が第5のしきい値より小さい場合には、CPU502は、エンジン107の出力制御を行うことなくステップS9に進み、通常の制御を行う。なお、この場合、エンジン107の出力が調整されないので、低速走行時にエンジン107の出力が急激に変化することが防止される。それにより、自動二輪車100の走行フィーリングが向上する。
【0180】
また、この場合、フィックスギア51(図9)とスライドギア53(図9)とは図9(a)に示す係合状態を維持する。したがって、フィックスギア51とスライドギア53との係合の解除は困難であるので、ギアシフトが防止される。それにより、低速走行時に自動二輪車100の速度が急激に変化することが防止され、自動二輪車100の走行フィーリングが向上する。
【0181】
(5)効果
(a)カム溝および出力調整開始時期による効果
本実施の形態においては、カム溝d1〜d3の形状により、シフトカム7bの回転角度が10°になるまでシフトフォークc1〜c3およびスライドギア53の移動が禁止される。また、シフトカム7bの回転角度が10°になったことを示す値がシフトカム回転角センサSE4によって検出された場合に、CPU502によりエンジン107の出力調整が開始される。この場合、運転者の操作によるスライドギア53の移動とCPU502によるエンジン107の出力制御とがほぼ同時に開始される。それにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に容易に移動させることが可能となる。その結果、運転者はクラッチ3を切断することなく容易にギアシフトを行うことができる。
【0182】
このように、本実施の形態においては、カム溝d1〜d3の形状に基づいてエンジン107の出力制御を行うべきタイミングを適切に設定することができる。この場合、運転者のシフト操作を検出するために荷重センサまたは加速度センサ等を設ける必要がないので、自動二輪車100の製品コストを低減することができる。
【0183】
また、シフトカム回転角センサSE4は、荷重センサまたは加速度センサ等に比べて路面状況等に基づく外乱の影響を受けにくい。したがって、エンジン107の出力制御をより適切なタイミングで開始することができる。
【0184】
(b)ストッパープレートの形状による効果
本実施の形態においては、シフトアップ時(ストッパープレート200が時計回りに回転する場合)には、ローラ250(図5)からストッパープレート200(図5)に与えられる反時計回りのトルクは、CPU502によるエンジン107の出力制御が開始される直前に最大となる。同様に、シフトダウン時(ストッパープレート200が反時計回りに回転する場合)には、ローラ250からストッパープレート200に与えられる時計回りのトルクは、CPU502によるエンジン107の出力制御が開始される直前に最大になる。
【0185】
すなわち、ローラ250からシフトカム7bに与えられるシフトカム7bの回転方向と逆方向のトルクは、エンジン107の出力制御が開始される直前から減少される。この場合、CPU502の制御によりエンジン107の出力調整が開始されたときに、シフトカム7bを容易に回転させることができる。それにより、より迅速なクラッチレスシフトが可能になる。
【0186】
また、シフトカム7bの回転開始直後においては、シフトカム7bの回転方向と逆方向に与えられるトルクが大きくなるので、運転者の意思に反してシフトカム7bが回転されることを防止することができる。それにより、運転者の意思に反するシフト動作が行われることを防止することができる。
【0187】
なお、ローラ250からシフトカム7bに与えられるトルクが最大値となるタイミングは、ストッパープレート200の形状により任意に設定することができる。以下、図面を用いて説明する。
【0188】
図18は、本実施の形態に係るストッパープレート200と一般的なストッパープレート2001との違いを説明するための図である。
【0189】
なお、図18において、(a)は、本実施の形態に係るストッパープレート200を示し、(b)は、一般的なストッパープレート2001を示し、(c)は、ストッパープレート200,2001の一部拡大図である。なお、ストッパープレート2001は、外周面にストッパープレート200と同様に凹部2011〜2071を有する。
【0190】
図18(c)に示すように、本実施の形態に係るストッパープレート200の凹部204の周面は、一般的なストッパープレート2001の凹部2041の周面に比べて急峻に湾曲する。詳細には、凹部204の周面は中央部近傍において急峻に湾曲する。
【0191】
このように、本実施の形態に係るストッパープレート200においては、シフトカム7bの回転角度が約10°になったときにローラ250からストッパープレート200に与えられるトルクが最大値となるように、凹部201、203〜207の周面の中央部が急峻に湾曲されている。それにより、シフトカム7bに与えられるトルクが最大値となるタイミングが適切に設定されている。
【0192】
(c)他の効果
(c−1)本実施の形態においては、運転者がシフトアップ操作またはシフトダウン操作を行った際に、エンジン107が駆動状態である場合には、CPU502によりエンジン107の出力が低下される。また、運転者がシフトアップ操作またはシフトダウン操作を行った際にエンジン107が被駆動状態である場合には、CPU502によりエンジン107の出力が増加される。これらにより、フィックスギア51とスライドギア53との接触面に発生する圧力(係合力)が低減されるので、運転者は円滑にクラッチレスシフトを行うことができる。
【0193】
(c−2)また、運転者がシフトアップ操作またはシフトダウン操作を行った際に、エンジン107が境界状態である場合には、CPU502により通常の制御が行われる。すなわち、エンジン107(クランク2)と変速機5(メイン軸5a)との間で所定値以上のトルクが伝達されていない場合には、エンジン107の出力が調整されない。
【0194】
ここで、上述したように、エンジン107と変速機5との間で伝達されるトルクが小さい場合には、フィックスギア51とスライドギア53との接触面において大きな圧力(係合力)は発生しない。したがって、エンジン107の出力が調整されなくても、運転者はクラッチレスシフトを容易に行うことができる。この場合、エンジン107の出力調整によるショックの発生を防止することができるので、自動二輪車100の操作性が向上する。それにより、運転者は快適な自動二輪車100の走行を楽しむことができる。
【0195】
(c−3)また、境界状態が設けられることにより、被駆動状態において行われるべきエンジン107の出力調整が駆動状態において行われること、および駆動状態において行われるべきエンジン107の出力調整が被駆動状態において行われることを防止することができる。それにより、駆動状態と被駆動状態との境界近傍で、エンジン107が駆動状態であるか被駆動状態であるかを適切に判別することができない場合にも、エンジン107の出力調整が不適切に行われることを防止することができる。その結果、クラッチレスシフトを円滑に行うことが可能になるとともに、自動二輪車100の操作性が向上する。
【0196】
(c−4)また、自動二輪車100の低速走行時には、CPU502の制御によりギアシフトが困難な状態にされる。それにより、低速走行時に自動二輪車100の速度が急激に変化することが防止される。その結果、自動二輪車100の走行フィーリングが向上する。
【0197】
(c−5)なお、エンジン107の回転速度またはシフト操作後の経過時間等を基準にエンジン107の出力調整を終了させた場合には、適切な出力調整時間を確保することができない場合がある。それにより、クラッチレスシフトを円滑に行えない場合がある。
【0198】
これに対して、本実施の形態においては、シフトカム回転角センサSE4の検出値に基づいて、エンジン107の出力調整の終了が決定される。それにより、運転者によるシフトペダル11の操作量および操作速度にかかわらず、最適な時期にエンジン107の出力調整を終了させることができる。それにより、より迅速なクラッチレスシフトが可能となるとともに、エンジン107の出力を容易に安定させることができる。
【0199】
(c−6)また、本実施の形態においては、点火プラグ78による混合気の点火を停止することにより、エンジン107の出力が低下される。この場合、エンジン107の出力を迅速に低下させることができる。それにより、クラッチレスシフトを迅速に行うことが可能となる。
【0200】
(c−7)また、本実施の形態においては、ROM503(またはRAM504)に記憶される駆動状態判別データに基づいてエンジン107の状態(駆動状態、境界状態および被駆動状態)が判別される。この場合、トルクの伝達状態を検出するためのセンサを設ける必要が無いので、自動二輪車100の製品コストを低減することができる。
【0201】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態においては、変速機5が6段の変速比を有する場合について説明したが、変速機5が5段以下の変速比を有してもよく、7段以上の変速比を有してもよい。
【0202】
なお、シフトフォークc1〜c3の移動が阻止されるシフトカム7bの回転角度は、変速機5の変速比の数により異なる。また、エンジン107の出力制御開始時期は、シフトフォークc1〜c3の移動開始時期に応じて設定される。
【0203】
詳細には、シフトフォークc1〜c3の移動が阻止されるシフトカム7bの回転角度は、変速機5のギアポジションを1段階シフトチェンジするために必要なシフトカム7bの回転角度の約8%以上に設定することが好ましい。この場合、シフトカム7bが十分に回転されてからエンジン107の出力調整が開始される。したがって、運転者の意図に反してエンジン107の出力調整が開始されることを防止することができる。
【0204】
また、シフトフォークc1〜c3の移動が阻止されるシフトカム7bの回転角度は、変速機5のギアポジションを1段階シフトチェンジするために必要なシフトカム7bの回転角度の約25%以下に設定されることが好ましい。この場合、エンジン107の出力調整が開始されるまでの時間を短くすることができるので、迅速なクラッチレスシフトが可能になる。また、シフトカム7bの回転方向と逆方向のトルクがローラ250からシフトカム7bに与えられる時間を短くすることができる。それにより、運転者は、快適なシフト操作を行うことができる。
【0205】
したがって、上記実施の形態においては(変速機5が6段階の変速比を有する場合)、シフトフォークc1〜c3の移動が阻止されるシフトカム7bの回転角度は、約5°以上約15°以下に設定されることが好ましい。
【0206】
また、上記実施の形態においては、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に離間された直後(図12においては時点t4、図13においては時点t10)にエンジン107の出力調整が終了されているが、他の時点でエンジン107の出力調整を終了してもよい。例えば、スライドギア53とフィックスギア51とが接触する時点(図12においては時点t5、図13においては時点t11)付近でエンジン107の出力調整を終了してもよい。
【0207】
また、上記実施の形態においては、駆動状態判別データに基づいてエンジン107の状態(駆動状態、境界状態および被駆動状態)を判別しているが、他の方法でエンジン107の状態(駆動状態、境界状態および被駆動状態)を判別してもよい。
【0208】
例えば、ECU50のROM503(またはRAM504)にエンジン107の回転速度、ETV82のスロットル開度およびエンジン107により発生されるトルク(駆動力)の関係が示される3次元マップを記憶させてもよい。この場合、エンジン107の回転速度およびETV82のスロットル開度に基づいて3次元マップからエンジン107により発生されるトルクを導出することができる。そして、導出されたトルクが所定値以上の正の値である場合はエンジン107が駆動状態であると判別し、導出されたトルクの絶対値が所定値より小さい場合はエンジン107が境界状態であると判別し、導出されたトルクの絶対値が所定値以上となる負の値である場合はエンジン107が被駆動状態であると判別してもよい。
【0209】
また、エンジン107の出力の調整方法は、上記の例に限定されない。例えば、運転者により変速機5のシフトアップ操作が行われたときにエンジン107の出力が低下され、運転者により変速機5のシフトダウン操作が行われたときにエンジン107の出力が増加されてもよい。
【0210】
上記実施の形態においては、鞍乗り型車両の一例として自動二輪車100について説明したが、自動三輪車および自動四輪車等の他の鞍乗り型車両であってもよい。
【0211】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0212】
上記実施の形態においては、後輪115が駆動輪の例であり、CPU502が調整部の例であり、シフトフォークc1〜c3が連結部材の例であり、シフトカム回転角センサSE4が検出部の例であり、カム溝d1〜d3が規制部の例であり、ストッパープレート200およびローラ250がトルク付与部の例であり、後輪ドリブンスプロケット116およびチェーン117が伝達機構の例である。
【0213】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明は種々の車両の制御システムとして有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】自動二輪車を示す概略側面図である。
【図2】図1のミッションケース内に設けられる変速機およびシフト機構の構成を説明するための図である。
【図3】メイン軸に伝達されたトルクがドライブ軸に伝達される構成を示す概略模式図である。
【図4】シフト機構の第1〜第3のカム溝の展開図である。
【図5】シフト機構をストッパープレート側から見た図である。
【図6】変速機のギアポジションが3速から4速にシフトアップされる際のストッパープレート等の関係を示した図である。
【図7】変速機のギアポジションが3速から4速にシフトアップされる際にローラからストッパープレートに与えられるトルクを示す図である。
【図8】本実施の形態に係るシフトカムのカム溝と一般的なシフトカムのカム溝との違いを説明するための図である。
【図9】スライドギアのドグとフィックスギアのドグ穴との関係を示す図である。
【図10】エンジンおよびエンジンの出力制御に関連する各部の概略構成を示す図である。
【図11】ECUのROMに記憶される駆動状態判別データの一例を示す図である。
【図12】エンジンが駆動状態である場合に運転者がシフトアップ操作を行ったときのCPUによるエンジンの出力調整時期を説明するための図である。
【図13】エンジンが被駆動状態である場合に運転者がシフトダウン操作を行ったときのCPUによるエンジンの出力調整時期を説明するための図である。
【図14】ギアポジションを1速と6速との間で変化させたときのシフトカム回転角センサの検出値の一例を示す図である。
【図15】CPUの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】CPUの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図17】CPUの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図18】本実施の形態に係るストッパープレートと一般的なストッパープレートとの違いを説明するための図である。
【符号の説明】
【0216】
5 変速機
7 シフト機構
7b シフトカム
50 ECU
82 ETV
100 自動二輪車
104 前輪
106 アクセルグリップ
107 エンジン
111 変速操作機構
115 後輪
200 ストッパープレート
501 I/F
502 CPU
503 ROM
504 RAM
c1〜c3 シフトフォーク
d1〜d3 カム溝
SE1 アクセル開度センサ
SE2 クランク角センサ
SE3 スロットルセンサ
SE4 シフトカム回転角センサ
SE5 ドライブ軸回転速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両のエンジンを制御する制御システムであって、
前記エンジンにより発生されるトルクを複数のギアの異なる係合状態により複数の変速比で駆動輪に伝達する変速機と、
前記エンジンの出力調整を行う調整部と、
運転者の操作に応じて第1の角度ずつ回転するシフトカムと、
前記シフトカムと前記複数のギアのいずれかとを連結し、前記シフトカムが前記第1の角度回転する際に前記係合状態のギアの一方を他方から離間させるように移動可能に設けられる複数の連結部材と、
前記シフトカムの回転角度を検出する検出部とを備え、
前記シフトカムは、運転者の操作に応じた前記シフトカムの一回の回転動作において前記シフトカムの回転角度が前記第1の角度よりも小さい第2の角度に達するまで前記複数の連結部材が移動せず、前記シフトカムの回転角度が前記第2の角度に達したときにいずれかの前記連結部材が移動を開始するように前記複数の連結部材の移動を規制する規制部を有し、
前記調整部は、前記検出部により検出される前記シフトカムの回転角度が前記一回の回転動作において前記第2の角度以上変化した場合に前記エンジンの出力調整を開始することを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記調整部は、前記検出部により検出される前記シフトカムの回転角度が前記一回の回転動作において前記第2の角度以上変化した場合に、前記エンジンと前記変速機との間で伝達されているトルクが第1の値以上である場合には前記エンジンの出力調整を開始し、前記エンジンと前記変速機との間で伝達されているトルクが前記第1の値よりも小さい場合には前記エンジンの出力調整を行わないことを特徴とする請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記規制部は、前記シフトカムの外周部に形成される複数の溝部であることを特徴とする請求項1または2記載の制御システム。
【請求項4】
前記第2の角度は、前記第1の角度の8%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御システム。
【請求項5】
前記第2の角度は、前記第1の角度の25%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制御システム。
【請求項6】
前記シフトカムに前記シフトカムの回転方向およびその逆方向のトルクを与えるトルク付与部をさらに備え、
前記一回の回転動作において前記トルク付与部から前記シフトカムに与えられる前記逆方向のトルクは、前記シフトカムの回転角度が前記第2の角度より小さい前記第3の角度に達したときに最大となることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制御システム。
【請求項7】
駆動輪と、
エンジンと、
前記エンジンにより発生されるトルクを前記駆動輪に伝達する伝達機構と、
請求項1〜6のいずれかに記載の制御システムとを備えたことを特徴とする鞍乗り型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−221964(P2009−221964A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67631(P2008−67631)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】