説明

制御装置

【課題】一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在するプラントを制御する場合でも、制御の分解能および制御精度を向上させることができる制御装置を提供する。
【解決手段】燃料供給装置10の燃料圧Pfを制御する制御装置1は、ECU2を備える。ECU2は、目標燃料圧Pf_cmdを設定し、燃料圧Pfを目標燃料圧Pf_cmdに収束させるように制御するための第1制御入力Rsldを、式(1)〜(6)により算出し、第1制御入力Rsldを式(11)〜(31)で変調することにより、第2制御入力Udsmを算出し、フューエルカット運転中または減圧制御中であるか否かに応じて、第1制御入力Rsldおよび第2制御入力Udsmの一方を制御入力Upfとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒステリシスおよび不感帯などの非線形特性を備えたプラントの制御量を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置として、本出願人は、特許文献1に記載されたものをすでに提案している。この制御装置は、制御入力をプラントとしての電磁駆動式の可変カム位相機構に入力することによって、制御量としてのカム位相を制御するものであり、2自由度スライディングモードコントローラおよびDSMコントローラを備えている。この2自由度スライディングモードコントローラでは、目標値フィルタ型2自由度スライディングモード制御アルゴリズムにより、カム位相を目標値に収束させるためのSLD制御入力が算出される。
【0003】
また、DSMコントローラでは、可変カム位相機構への制御入力が、算出されたSLD制御入力を、ΔΣ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムによって変調することにより、所定値を中心として所定振幅で頻繁に反転を繰り返すように算出される。その結果、非線形特性を備えた可変カム位相機構を介して、カム位相を制御する場合においても、頻繁に反転を繰り返す制御入力により、非線形特性を補償しながら、カム位相を目標値に収束させるように制御することができる。それにより、カム位相をきめ細かく制御することができ、カム位相制御の分解能および制御精度をいずれも高レベルに維持することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−63003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の制御装置を、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在するプラントに適用した場合、非線形特性を示す制御領域では、制御量が目標値に対して大幅に乖離する状態が発生するので、SLD制御入力が、非線形特性をほとんど示さない制御領域と比べて変化幅の大きい値として算出される。そのため、非線形特性を補償するには、制御入力の振幅を、そのような変化幅の大きいSLD制御入力をカバーできるような大きな値に設定する必要がある。しかし、そのようにした場合、制御入力に対する制御量の感度が低下する条件下、特に周波数的感度より詳しくは高周波遮断性が低下する条件下では、非線形特性をほとんど示さない制御領域において、制御入力の大きな振幅が制御量にノイズ的に反映されてしまうことで、制御の分解能および制御精度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在するプラントを制御する場合でも、制御の分解能および制御精度を向上させることができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、制御入力Upfによりプラント4の制御量(燃料圧Pf)を制御する制御装置1であって、制御量を検出する制御量検出手段(燃料圧センサ20)と、制御量の目標となる目標値(目標燃料圧Pf_cmd)を設定する目標値設定手段(ECU2、目標燃料圧算出部30)と、検出された制御量を設定された目標値に収束させるように制御するための第1制御入力Rsldを、所定の制御アルゴリズム[式(1)〜(6)]により算出する第1制御入力算出手段(ECU2、2自由度応答指定型コントローラ40)と、算出された第1制御入力Rsldを所定の変調アルゴリズムを適用したアルゴリズム[式(11)〜(31)]で変調することにより、第2制御入力Udsmを算出する第2制御入力算出手段(ECU2、DSMコントローラ60)と、プラント4の状態に応じて、第1制御入力Rsldおよび第2制御入力Udsmの一方を制御入力Upfとして選択する制御入力選択手段(ECU2、制御入力選択部80、ステップ36〜38)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この制御装置によれば、制御量を目標値に収束させるように制御するための第1制御入力が、所定の制御アルゴリズムにより算出され、この第1制御入力を所定の変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムで変調することにより、第2制御入力が算出され、さらに、プラントの状態に応じて、第1制御入力および第2制御入力の一方が制御入力として選択される。したがって、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在するプラントの場合、プラントが非線形特性を示す制御領域にある状態では、第2制御入力を制御入力として選択することにより、プラントの強い非線形特性を補償しながら、制御量を目標値に収束させることができる。その結果、非線形特性を示す制御領域において第1制御入力を制御入力として選択した場合と比べて、制御量をよりきめ細かく制御することができ、制御の分解能および制御精度をいずれも向上させることができる。
【0009】
一方、プラントが非線形特性をほとんど示さない制御領域にある状態では、変調されていない第1制御入力を制御入力として選択することにより、制御入力に対する制御量の感度が低下する条件下において、非線形特性を示す制御領域での非線形特性を補償できるような振幅の第2制御入力を選択した場合に発生する、制御入力の振幅が制御量にノイズ的に反映される状態を回避しながら、制御量を目標値に収束させることができる。その結果、非線形特性をほとんど示さない制御領域において第2制御入力を制御入力として選択した場合と比べて、制御量をよりきめ細かく制御することができ、制御の分解能および制御精度を向上させることができる。以上のように、プラントが一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域、および非線形特性をほとんど示さない制御領域のいずれにおいても、制御の分解能および制御精度を向上させることができる(なお、本明細書における、「第1制御入力の算出」および「第2制御入力の算出」などの「算出」は、プログラムにより演算することに限らず、ハードウエアによりそれらを表す電気信号を生成することを含む)。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の制御装置1において、第2制御入力算出手段は、第2制御入力Udsmの振幅の中心となる中心値Ucentを、第1制御入力Rsldに応じて設定する中心値設定手段(ECU2、中心値算出部61)と、第2制御入力Udsmの振幅2・DUDを、第1制御入力Rsldが示し得る最大値と最小値との幅よりも小さい値に設定する振幅設定手段(ECU2、振幅設定値算出部63)と、を有することを特徴とする。
【0011】
前述したように、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在するプラントの場合、非線形特性を示す制御領域では、制御量が目標値に対して大きく乖離する状態が発生するので、第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅がかなり大きくなる。そのため、第2制御入力の振幅を、非線形特性を示す制御領域で第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅をカバーできるような大きな値に設定すると、そのような第2制御入力の大きな振幅が制御量にノイズ的に反映されてしまうことで、制御の分解能が低下し、制御精度が低下する可能性がある。これに対して、この制御装置によれば、第2制御入力の振幅の中心となる中心値が、第1制御入力に応じて設定されるので、第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅が大きい場合でも、第2制御入力の振幅をその制御タイミングでの第1制御入力をカバーできるような、第1制御入力の幅全体をカバーするときよりも小さい値に設定するだけで、第1制御入力が備える制御量の目標値への収束能力を確保しながら、プラントの強い非線形特性を補償することができる。このように、第2制御入力の振幅を、第1制御入力の幅全体をカバーする場合よりも小さい値に設定しながら、プラントの強い非線形特性を適切に補償できることにより、制御の分解能および制御精度をさらに向上させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の制御装置1において、所定の制御アルゴリズムは、所定の目標値フィルタアルゴリズム[式(1)]と、所定の応答指定型制御アルゴリズム[式(2)〜(6)]とを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムを適用したアルゴリズムであることを特徴とする。
【0013】
この制御装置によれば、所定の目標値フィルタアルゴリズムと、所定の応答指定型制御アルゴリズムとを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムを適用したアルゴリズムにより、第1制御入力が算出されるので、この第1制御入力を用いることで、目標値フィルタアルゴリズムにより、制御量の目標値への収束速度を適切な値に設定できるとともに、これとは別個に、所定の応答指定型制御アルゴリズムにより、制御量の目標値への収束挙動を適切なものに設定することができる。すなわち、第1制御入力の算出において、制御量の目標値への収束挙動と、制御量と目標値との偏差の値0への収束速度とを互いに独立した状態でかつ適切なものに設定できるので、そのように算出された第1制御入力を用いることにより、一般的なフィードバック制御アルゴリズムを用いて第1制御入力を算出した場合と比べて、制御量の目標値への収束挙動と、制御量と目標値との偏差の値0への収束速度とを向上させることができる。その結果、制御精度をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の制御装置1において、所定の変調アルゴリズムは、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
この制御装置によれば、第1制御入力を、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかを適用したアルゴリズムで変調することにより、第2制御入力が算出される。この場合、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムはいずれも、これらの変調アルゴリズムに入力される値が値0に近づくほど、これらの変調アルゴリズムにより算出された値の反転周波数がより高くなるという特性を備えている。一方、第1制御入力は、制御量を目標値に収束させるように制御するための値であるので、制御量が目標値に近づくほど、変化しなくなる。したがって、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかを適用したアルゴリズムにおいて、第1制御入力が変化しなくなると、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかに入力される値が値0に近づくように設定することにより、制御量が目標値に近づくほど、第2制御入力をその反転周波数がより高くなるように算出することができる。その結果、反転周波数が一定のPWMまたはディザを用いることで、第2制御入力を算出する場合と比べて、制御量の目標値への収束性を高めることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の制御装置1において、プラント4が受ける外乱を補償するための外乱推定値c1を、制御量(燃料圧Pf)および第1制御入力Rsldに基づき、所定の推定アルゴリズム[式(8)〜(10)]により算出する外乱推定値算出手段(ECU2、適応外乱オブザーバ50)をさらに備え、第1制御入力算出手段は、算出された外乱推定値c1に基づき、所定の制御アルゴリズムにより、第1制御入力Rsldを算出することを特徴とする。
【0017】
請求項1に係る制御装置において、第1制御入力の算出アルゴリズムとして、外乱補償のために制御量と目標値との偏差の積分値を用いる制御アルゴリズムを用いた場合、プラントが外乱を受けた際、積分値による外乱補償作用により、制御量と目標値との偏差が振動的な揺り返し挙動を示したり、一時的に過大な状態になったりするおそれがある。これに対して、この制御装置によれば、プラントが受ける外乱を補償するための外乱推定値が、制御量および第1制御入力に基づき、所定の推定アルゴリズムにより算出され、第1制御入力が、外乱推定値に基づき、所定の制御アルゴリズムにより算出されるので、プラントが外乱を受けた際、上記制御量と目標値との偏差の積分値を用いる場合と異なり、制御量と目標値との偏差が振動的な揺り返し挙動を示したり、一時的に過大な状態になったりするのを回避しながら、外乱の影響を補償でき、それにより、制御量を目標値に迅速に収束させることができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、流体圧(燃料圧Pf)が昇圧側流路(燃料供給路12)および減圧側流路(燃料戻し路14)の開閉により増減する流体回路系(燃料供給装置10)において、流体圧を制御する制御装置1であって、昇圧側流路および減圧側流路を開閉する弁(スプール弁機構15b)と、弁を駆動するアクチュエータ(電磁アクチュエータ15a)と、流体圧を検出する流体圧検出手段(燃料圧センサ20)と、流体圧の目標となる目標値(目標燃料圧Pf_cmd)を設定する目標値設定手段(ECU2、目標燃料圧算出部30)と、検出された流体圧を設定された目標値に収束させるように制御するための第1制御入力Rsldを、所定の制御アルゴリズム[式(1)〜(6)]により算出する第1制御入力算出手段(ECU2、2自由度応答指定型コントローラ40)と、算出された第1制御入力Rsldを所定の変調アルゴリズムを適用したアルゴリズム[式(11)〜(31)]で変調することにより、第2制御入力Udsmを算出する第2制御入力算出手段(ECU2、DSMコントローラ60)と、流体回路系の状態に応じて、第1制御入力Rsldおよび第2制御入力Udsmの一方を制御入力Upfとして選択する制御入力選択手段(ECU2、制御入力選択部80、ステップ36〜38)と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この制御装置によれば、流体圧を目標値に収束させるように制御するための第1制御入力が、所定の制御アルゴリズムにより算出され、この第1制御入力を所定の変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムで変調することにより、第2制御入力が算出され、さらに、流体回路系の状態に応じて、第1制御入力および第2制御入力の一方が制御入力として選択される。一方、流体圧が昇圧側流路および減圧側流路の開閉により増減する流体回路系において、昇圧側流路および減圧側流路を開閉する弁をアクチュエータで駆動することにより流体圧を制御した場合、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが発生することがある。したがって、流体回路系がそのような非線形特性を示す制御領域にある状態では、第2制御入力を制御入力として選択することにより、強い非線形特性を補償しながら、流体圧を目標値に収束させることができる。その結果、非線形特性を示す制御領域において第1制御入力を制御入力として選択した場合と比べて、流体圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。
【0020】
一方、流体回路系が非線形特性をほとんど示さない制御領域にある状態では、変調されていない第1制御入力を制御入力として選択することにより、非線形特性を示す制御領域での非線形特性を補償できるような振幅の第2制御入力を選択した場合に発生する、制御入力の振幅が流体圧にノイズ的に反映される状態を回避しながら、流体圧を目標値に収束させることができる。その結果、非線形特性をほとんど示さない制御領域において第2制御入力を制御入力として選択した場合と比べて、流体圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。以上のように、流体回路系が一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域、および非線形特性を示さない制御領域のいずれにおいても、流体圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の制御装置1において、第2制御入力算出手段は、第2制御入力Udsmの振幅の中心となる中心値Ucentを、第1制御入力Rsldに応じて設定する中心値設定手段(ECU2、中心値算出部61)と、第2制御入力Udsmの振幅2・DUDを、第1制御入力Rsldが示し得る最大値と最小値との幅よりも小さい値に設定する振幅設定手段(ECU2、振幅設定値算出部63)と、を有することを特徴とする。
【0022】
前述したように、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域とそうでない制御領域とが存在する流体回路系の流体圧を制御する場合、非線形特性を示す制御領域で第2制御入力を制御入力として選択し、第2制御入力の振幅を、非線形特性を示す制御領域で第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅をカバーできるような大きな値に設定すると、そのような第2制御入力の大きな振幅が流体圧にノイズ的に反映されてしまうことで、流体圧制御の分解能が低下し、制御精度が低下する可能性がある。これに対して、この制御装置によれば、第2制御入力の振幅の中心となる中心値が、第1制御入力に応じて設定されるので、第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅が大きい場合でも、第2制御入力の振幅を、その制御タイミングでの第1制御入力をカバーできるような、第1制御入力の幅全体をカバーするときよりも小さい値に設定するだけで、第1制御入力が備える流体圧の目標値への収束能力を確保しながら、流体回路系の非線形特性を補償することができる。このように、流体回路系が一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域において、第2制御入力の振幅をより小さい値に設定しながら、強い非線形特性を適切に補償できることにより、流体圧制御の分解能および制御精度をさらに向上させることができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項6または7に記載の制御装置1において、所定の制御アルゴリズムは、所定の目標値フィルタアルゴリズム[式(1)]と、所定の応答指定型制御アルゴリズム[式(2)〜(6)]とを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムを適用したアルゴリズムであることを特徴とする。
【0024】
この制御装置によれば、所定の目標値フィルタアルゴリズムと、所定の応答指定型制御アルゴリズムとを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムを適用したアルゴリズムにより、第1制御入力が算出されるので、この第1制御入力を用いることで、目標値フィルタアルゴリズムにより、流体圧の目標値への収束速度を適切な値に設定できるとともに、これとは別個に、所定の応答指定型制御アルゴリズムにより、流体圧の目標値への収束挙動を適切な状態に設定することができる。すなわち、第1制御入力の算出において、流体圧の目標値への収束挙動および収束速度を互いに独立した状態でかつ適切なものに設定できるので、そのように算出された第1制御入力を用いることにより、一般的なフィードバック制御アルゴリズムを用いて第1制御入力を算出した場合と比べて、流体圧の目標値への収束挙動および収束速度を向上させることができる。その結果、制御精度をさらに向上させることができる。
【0025】
請求項9に係る発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の制御装置1において、所定の変調アルゴリズムは、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかであることを特徴とする。
【0026】
この制御装置によれば、第1制御入力を、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかを適用したアルゴリズムで変調することにより、第2制御入力が算出される。この場合、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムはいずれも、これらの変調アルゴリズムに入力される値が値0に近づくほど、これらの変調アルゴリズムにより算出された値の反転周波数がより高くなるという特性を備えている。一方、第1制御入力は、流体圧を目標値に収束させるように制御するための値であるので、流体圧が目標値に近づくほど、変化しなくなる。したがって、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかを適用したアルゴリズムにおいて、第1制御入力が変化しなくなると、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかに入力される値が値0に近づくように設定することにより、流体圧が目標値に近づくほど、第2制御入力をその反転周波数がより高くなるように算出することができる。その結果、反転周波数が一定のPWMまたはディザを用いることで、第2制御入力を算出する場合と比べて、流体圧の目標値への収束性を高めることができる。
【0027】
請求項10に係る発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載の制御装置1において、流体回路系が受ける外乱を補償するための外乱推定値c1を、流体圧(燃料圧Pf)および第1制御入力Rsldに基づき、所定の推定アルゴリズム[式(8)〜(10)]により算出する外乱推定値算出手段(ECU2、適応外乱オブザーバ50)をさらに備え、第1制御入力算出手段は、算出された外乱推定値c1に基づき、所定の制御アルゴリズムにより、第1制御入力Rsldを算出することを特徴とする。
【0028】
請求項6に係る制御装置において、第1制御入力の算出アルゴリズムとして、外乱補償のために流体圧と目標値との偏差の積分値を用いる制御アルゴリズムを用いた場合、流体回路系が外乱を受けた際、積分値による外乱補償作用により、流体圧と目標値との偏差が振動的な揺り返し挙動を示したり、一時的に過大な状態になったりするおそれがある。これに対して、この制御装置によれば、流体回路系が受ける外乱を補償するための外乱推定値が、流体圧および第1制御入力に基づき、所定の推定アルゴリズムにより算出され、第1制御入力が、外乱推定値に基づき、所定の制御アルゴリズムにより算出されるので、流体回路系が外乱を受けた際、上記流体圧と目標値との偏差の積分値を用いる場合と異なり、流体圧と目標値との偏差が振動的な揺り返し挙動を示したり、一時的に過大な状態になったりするのを回避しながら、外乱の影響を補償でき、それにより、流体圧を目標値に迅速に収束させることができる。
【0029】
請求項11に係る発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の制御装置1において、流体回路系は内燃機関3に燃料を供給する燃料供給系(燃料供給装置10)であり、流体圧は燃料供給系における燃料圧Pfであり、制御入力選択手段は、燃料圧Pfを減少側に制御するときには、第2制御入力Udsmを制御入力Upfとして選択する(ステップ23,24,36,37)ことを特徴とする。
【0030】
燃料供給系では、燃料圧が目標値よりも高い状態にあることで、これを減少側に制御する場合、弁により減圧側流路を開放すると、高圧状態の燃料が急激に開放されることになるので、弁の開度を小さい値に設定したとしても、燃料圧が目標値に対して一時的に大きくアンダーシュートしやすい。すなわち、非線形特性が一時的に強くなってしまう。したがって、燃料圧を減少側に制御する際、制御入力として第1制御入力を選択すると、そのような強い非線形特性を補償できないことで、燃料圧制御の分解能および制御精度が低下してしまう。これに対して、この制御装置によれば、燃料圧を減少側に制御するときには、第2制御入力が制御入力として選択されるので、強い非線形特性を補償でき、大きなアンダーシュートが発生するのを回避できる。その結果、燃料圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。
【0031】
請求項12に係る発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の制御装置1において、流体回路系は内燃機関3に燃料を供給する燃料供給系(燃料供給装置10)であり、流体圧は燃料供給系における燃料圧Pfであり、制御入力選択手段は、燃料供給系から内燃機関3への燃料供給が停止されているときには、第2制御入力Udsmを制御入力Upfとして選択する(ステップ21,23,36,37)ことを特徴とする。
【0032】
前述したように、燃料供給系では、燃料圧を減少側に制御する際、一時的に強い非線形特性を示し、燃料圧が目標値に対して一時的に大きくアンダーシュートしやすい。そのため、燃料供給系から内燃機関への燃料供給が停止され、目標値がほぼ一定に設定されている状態で、制御入力として第1制御入力を選択すると、そのような強い非線形特性を補償できないことで、減圧制御時にアンダーシュートが発生し、それを回復するために、昇圧制御が続けて実行される。すなわち、昇圧制御と減圧制御が繰り返し実行され、燃料圧が目標値に収束しない状態となる。その結果、内燃機関への燃料の供給を再開したときに、燃料を適切な燃料圧で供給することができず、燃料の供給制御の精度が低下することで、空燃比制御の精度が低下するおそれがある。これに対して、この制御装置によれば、燃料供給系から内燃機関への燃料供給が停止されているときには、第2制御入力が制御入力として選択されるので、非線形特性を補償できることで、減圧制御時に大きなアンダーシュートが生じるのを回避でき、燃料圧を目標値に収束させることができる。その結果、内燃機関への燃料の供給を再開したときに、燃料を適切な燃料圧で供給することができ、空燃比制御の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る制御装置について説明する。図1は、本実施形態の制御装置1およびこれを適用した燃料供給装置10の概略構成を示している。同図に示すように、この制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、燃料圧制御などの制御処理を実行する。
【0034】
この燃料供給装置10は、直列4気筒タイプの内燃機関(以下「エンジン」という)3に適用されたものであり、エンジン運転中、4つの燃料噴射弁9に高圧の燃料(ガソリン)を供給する。燃料供給装置10は、燃料タンク11と、これに燃料供給路12および燃料戻し路14を介して接続されたデリバリパイプ13と、燃料供給路12および燃料戻し路14を開閉する電磁制御弁15などを備えている。なお、本実施形態では、燃料供給装置10が流体回路系および燃料供給系に相当し、燃料供給路12および燃料戻し路14がそれぞれ昇圧側流路および減圧側流路に相当する。
【0035】
この燃料供給路12には、低圧ポンプ16および高圧ポンプ17が設けられている。低圧ポンプ16は、ECU2により運転が制御される電動ポンプタイプのものであり、エンジン運転中、常に運転され、燃料タンク11内の燃料を所定圧(例えば0.5MPa)まで昇圧し、高圧ポンプ17側に吐出する。
【0036】
また、高圧ポンプ17は、図示しないクランクシャフトに連結された容積式のものであり、クランクシャフトの回転に伴って、低圧ポンプ16からの燃料をさらに昇圧し、デリバリパイプ13側に間欠的に吐出する。
【0037】
一方、デリバリパイプ13は、その内部空間が高圧ポンプ17からの燃料を高圧状態で蓄える燃料室13aになっている。このデリバリパイプ13には、前述した4つの燃料噴射弁9および燃料圧センサ20が取り付けられており、これらの燃料噴射弁9の開弁により、燃料室13a内の燃料が、エンジン3の燃焼室(図示せず)内に噴射される。
【0038】
また、燃料圧センサ20は、ECU2に接続されており、燃料室13a内の燃料圧Pfを検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。なお、本実施形態では、燃料圧センサ20が制御量検出手段および流体圧検出手段に相当し、燃料圧Pfが制御量および流体圧に相当する。
【0039】
さらに、電磁制御弁15は、電磁アクチュエータ15aとスプール弁機構15bを組み合わせたものであり、この電磁アクチュエータ15aは、ECU2に接続されている。電磁アクチュエータ15aは、ECU2からの後述する制御入力Upfにより制御されることによって、スプール弁機構15bの弁体15cを、図2(a)に示す昇圧位置と、図2(b)に示す保持位置と、図2(c)に示す減圧位置との間で駆動する。
【0040】
この場合、電磁制御弁15が昇圧位置に制御されているときには、弁体15cにより、燃料供給路12が開放されるとともに、燃料戻し路14が閉鎖され、それにより、燃料圧Pfが昇圧される。一方、電磁制御弁15が減圧位置に制御されているときには、弁体15cにより、燃料供給路12が閉鎖されるとともに、燃料戻し路14が開放され、それにより、燃料圧Pfが減圧される。また、電磁制御弁15が保持位置に制御されているときには、弁体15cにより、燃料供給路12および燃料戻し路14がいずれも閉鎖され、それにより、燃料圧Pfがその時点の値に保持される。
【0041】
以上の構成により、この燃料供給装置10では、ECU2により、電磁制御弁15の弁体15cの位置が制御されることによって、後述するように、燃料圧Pfが制御される。その場合、昇圧制御の際には、燃料室13a内が高圧状態にあることで、燃料圧Pfは目標燃料圧Pf_cmdに向かって比較的、安定した状態で変化する。すなわち、燃料圧Pfを高い分解能で制御することができる。
【0042】
一方、減圧制御の際には、電磁制御弁15による燃料戻し路14の開度が小さくなるように制御したとしても、電磁制御弁15よりも下流側の燃料戻し路14内の圧力が燃料室13a内の圧力よりも極めて低いという構造的な特性と、スプール弁機構15bの構造的な特性とに起因して、燃料戻し路14を開放した瞬間、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対して一時的に大きくアンダーシュートしてしまう。すなわち、燃料圧制御での非線形特性が一時的に極めて強い状態となり、燃料圧制御の分解能が低下してしまう。以上のように、この燃料供給装置10において燃料圧Pfを制御した場合、その構造的な特性に起因して、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と、非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在する状態となる。
【0043】
また、ECU2には、クランク角センサ21、アクセル開度センサ22およびイグニッション・スイッチ(以下「IG・SW」という)23が接続されている。このクランク角センサ21は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、エンジン3のクランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば10゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
【0044】
また、アクセル開度センサ22は、エンジン3が搭載された車両のアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、IG・SW23は、イグニッションキー(図示せず)操作によりON/OFFされるとともに、そのON/OFF状態を表す信号をECU2に出力する。
【0045】
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜22の検出信号およびIG・SW23の出力信号に応じ、電磁制御弁15を介して、燃料圧Pfを制御する。また、ECU2は、燃料噴射弁9を介して、燃料噴射制御を実行するとともに、点火プラグ(図示せず)を介して、点火時期制御を実行する。
【0046】
なお、本実施形態では、ECU2が、目標値設定手段、第1制御入力算出手段、第2制御入力算出手段、制御入力選択手段、中心値設定手段、振幅設定手段および外乱推定値算出手段に相当する。
【0047】
次に、図3を参照しながら、本実施形態の制御装置1について説明する。同図に示すように、この制御装置1は、制御入力Upfをプラント4に入力することにより、制御量としての燃料圧Pfを制御するものであり、このプラント4は、燃料供給装置10を含む系に相当する。
【0048】
同図に示すように、制御装置1は、目標燃料圧算出部30、2自由度応答指定型コントローラ40、適応外乱オブザーバ50、DSMコントローラ60、状態判定部70および制御入力選択部80を備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、目標燃料圧算出部30が目標値設定手段に相当し、2自由度応答指定型コントローラ40が第1制御入力算出手段に相当し、適応外乱オブザーバ50が外乱推定値算出手段に相当し、DSMコントローラ60が第2制御入力算出手段に相当し、制御入力選択部80が制御入力選択手段に相当する。
【0049】
まず、目標燃料圧算出部30では、後述するマップ検索などにより、目標燃料圧Pf_cmd(目標値)が算出される。
【0050】
また、2自由度応答指定型コントローラ40では、目標燃料圧Pf_cmdおよび燃料圧Pfなどに基づき、下式(1)〜(6)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、第1制御入力Rsldが算出される。
【0051】
【数1】

【0052】
これらの式(1)〜(6)において、記号(k)付きの各離散データは、後述する所定の制御周期ΔTに同期してサンプリングまたは算出されたデータであることを示しており、記号kは各離散データのサンプリングサイクルまたは算出サイクルの順番を表している。例えば、記号kは今回の制御タイミングでサンプリングまたは算出された値であることを、記号k−1は前回の制御タイミングでサンプリングまたは算出された値であることをそれぞれ示している。この点は、以下の離散データにおいても同様である。なお、以下の説明では、各離散データにおける記号(k)などを適宜、省略する。
【0053】
この制御アルゴリズムでは、まず、式(1)に示す一次遅れタイプのローパスフィルタアルゴリズムにより、目標燃料圧のフィルタ値Pf_cmd_fが算出される。同式(1)において、Rは、目標値フィルタ設定パラメータであり、−1<R<0の関係が成立する値に設定される。
【0054】
次いで、式(2)〜(6)に示す応答指定型制御アルゴリズム(スライディングモード制御アルゴリズムまたはバックステッピング制御アルゴリズム)により、第1制御入力Rsldが算出される。すなわち、式(2)に示すように、第1制御入力Rsldは、等価入力Reqおよび到達則入力Rrchの和として算出される。この等価入力Reqは、式(3)により算出される。同式(3)において、a1,a2,b1,b2は、後述する制御対象モデルのモデルパラメータを示しており、これらは所定の一定値に設定されている。また、式(3)のc1は、外乱推定値であり、後述するように適応外乱オブザーバ50により算出される。さらに、式(3)のSは、切換関数設定パラメータであり、−1<R<S<0の関係が成立する値に設定されている。
【0055】
また、到達則入力Rrchは、式(4)により算出される。この式(4)において、Krchは、所定の到達則ゲインを表しており、σは、式(5)のように定義される切換関数である。同式(5)のEpfは、式(6)により算出される偏差である。
【0056】
以上の2自由度応答指定型コントローラ40の制御アルゴリズムによれば、目標値フィルタ型アルゴリズムにより、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度が設定されるとともに、スライディングモード制御アルゴリズムにより、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従挙動が設定されるので、追従速度と追従挙動を別個に設定できるとともに、これらの追従速度および追従挙動を、通常のフィードバック制御アルゴリズムを用いた場合よりも高いレベルに設定することができる。すなわち、第1制御入力Rsldは、燃料供給装置10が非線形特性をほとんど示さない制御領域では、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高レベル状態に維持できるという制御上の優れた特性を備えた値として算出される。
【0057】
なお、以上の式(1)〜(6)は以下のように導出される。すなわち、制御対象4を、第1制御入力Rsldを制御入力とし、燃料圧Pfを制御量とし、外乱推定値c1が外乱として加えられる系として定義するとともに、離散時間系モデルとしてモデル化すると、下式(7)が得られる。
【数2】

【0058】
この式(7)の外乱推定値c1を離散化した制御対象モデルに基づき、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに収束するように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御理論を用いると、前述した式(1)〜(6)が導出される。
【0059】
次に、前述した適応外乱オブザーバ50について説明する。この適応外乱オブザーバ50では、燃料圧Pfおよび第1制御入力Rsldに基づき、以下の式(8)〜(10)に示す外乱推定アルゴリズムにより、外乱推定値c1が算出される。
【0060】
【数3】

【0061】
この式(8)のPdovは、所定の同定ゲインであり、e_dovは、式(9)により算出される同定誤差である。同式(9)のPf_hatは、燃料圧の同定値であり、式(10)により算出される。
【0062】
また、状態判定部70では、F/C運転フラグF_FCおよび減圧制御フラグF_PDECの値が設定される。このF/C運転フラグF_FCは、フューエルカット運転(以下「F/C運転」という)、すなわち燃料噴射および混合気の点火をいずれも中止する運転の実行条件が成立しているか否かを表すものであり、具体的には、以下のF/C運転の実行条件(a),(b)がいずれも成立しているときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
(a)エンジン回転数NEが所定値以上であること。
(b)アクセル開度APが、アクセルペダルが踏まれていない値を示していること。
【0063】
一方、減圧制御フラグF_PDECは、燃料圧Pfを減少側に制御する減圧制御の実行条件が成立しているか否かを表すものであり、前述した偏差Epf(=Pf(k)−Pf_cmd_f(k−1))と所定の判定値EPF_TH(例えば0.05Mpa)との比較結果に基づいて設定される。具体的には、減圧制御フラグF_PDECは、Epf>EPF_THのときには「1」に、Epf≦EPF_THのときには「0」にそれぞれ設定される。なお、これらの2つのフラグF_FC,F_PDECの値は、後述するように、DSMコントローラ60での振幅設定値DUDの決定と、制御入力選択部80での制御入力Upfの選択に用いられる。また、減圧制御フラグF_PDECを設定する場合において、上記偏差Epfに代えて、燃料圧Pf(k)と目標燃料圧Pf_cmd(k)との偏差を、判定値EPF_THと比較するようにしてもよい。
【0064】
次に、DSMコントローラ60について説明する。このDSMコントローラ60は、第1制御入力Rsldを変調することにより第2制御入力Udsmを算出するものであり、図4に示すように、中心値算出部61、偏差成分値算出部62、振幅設定値算出部63、変調部64および加算器65を備えている。
【0065】
この中心値算出部61(中心値設定手段)では、第2制御入力Udsmの振幅の中心値Ucentが、下式(11)〜(15)に示すレートリミットを基本とした非線形アルゴリズムにより算出される。
【0066】
【数4】

【0067】
上記式(11)のDucentは、中心値Ucentの変化分であり、式(12)のように定義される偏差Eucに、式(13)〜(15)に示すように、−EPSを下限値とし、EPSを上限値とするリミット処理を施すことにより算出される。この値EPSは、正の所定値に設定される。また、式(14)のKeuは、所定の更新ゲインであり、0<Keu≪1が成立するような値に設定される。
【0068】
以上のように、中心値Ucentは、式(11)〜(15)のレートリミットアルゴリズムにより算出されるので、第1制御入力Rsldのマクロ的な変化に追従するような値として算出される。特に、式(14)に示すように、−EPS<Euc<EPSのときには、変化分Ducentは、偏差Eucに、0<Keu≪1が成立する更新ゲインKeuを乗算した値として算出されるので、中心値Ucentは、第1制御入力Rsldが急変したときでも、これに緩やかに追従する値として算出される。
【0069】
一方、前述した偏差成分値算出部62では、小偏差成分値ULおよび大偏差成分値UHが、第1制御入力Rsldおよび中心値Ucentに基づき、下式(16)〜(22)により算出される。
【0070】
【数5】

【0071】
以上の式(16),(17),(19),(21)に示すように、小偏差成分値ULは、第1制御入力と中心値との偏差Euに、DULを上限値とし、−DULを下限値とするリミット処理を施すことにより算出される。このしきい値DULは、正の所定値に設定される。このように、小偏差成分値ULは、第1制御入力Rsldの変動が小さく、中心値Ucentに対して、しきい値DULの絶対値を超えない範囲で変動しているときの成分に相当する値として算出される。
【0072】
また、式(18),(20),(22)に示すように、大偏差成分値UHは、第1制御入力Rsldと中心値Ucentとの偏差の絶対値が、しきい値DULの絶対値を上回っていないときには値0として算出され、上回ったときには、上回った分の値として算出される。すなわち、大偏差成分値UHは、第1制御入力Rsldの変動が小さい場合には、値0として算出されるとともに、目標燃料圧Pf_cmdの変動が大きいことで、第1制御入力Rsldの変動が大きい場合、すなわち制御の速応性が要求される場合には、そのような第1制御入力Rsldの値を第2制御入力Udsmに適切に反映させるための値として算出される
【0073】
さらに、振幅設定値算出部63(振幅設定手段)では、振幅設定値DUDが、前述した状態判定部70で設定された2つのフラグF_FC,F_PDECの値に基づき、下式(23)〜(25)により算出される。この振幅設定値DUDは、変調値ULdsmの振幅を決定するものであり、より具体的には、振幅設定値DUDの2倍の値2・DUDが、変調値ULdsmの振幅に相当する。
【0074】
【数6】

【0075】
ここで、上記式(23)〜(25)のDUDH,DUDL,DUDMはそれぞれ、所定のF/C運転用値、減圧制御用値および通常制御用値を表しており、これらの値はいずれも、しきい値DUL以上の値に設定される。これは、前述した第1制御入力Rsldが備える制御上の優れた特性を、変調値ULdsmすなわち第2制御入力Udsmにおいて確保するためである。すなわち、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高レベル状態に維持できるという特性を、第2制御入力Udsmにおいて確保するためである。
【0076】
また、2つの値DUDH,DUDLは、DUDH>DUDLが成立するように設定される。これは、F/C運転中は、非線形特性がより強まることで、燃料噴射再開後の燃料噴射制御を精度良く実行するために、燃料噴射運転中での減圧制御のときと比べて、より高い分解能で制御する必要があるので、変調値ULdsmの振幅をより大きな値に設定することで、燃料圧制御の分解能をより高めるためである。
【0077】
さらに、3つの値DUDH,DUDL,DUDMは、後述する理由により、変調値ULdsmの振幅2・DUDが第1制御入力Rsldが示し得る最大値と最小値との幅よりも小さくなるような値に設定されている。
【0078】
一方、変調部64では、小偏差成分値ULを、下式(26)〜(30)に示すΔΣ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムで変調することにより、変調値ULdsmが算出される。
【0079】
【数7】

【0080】
上記式(26)に示すように、偏差δdは、小偏差成分値ULの今回値と変調値ULdsmの前回値との偏差として算出される。また、式(27)において、σdは、偏差δdの積分値を表している。また、式(28)において、Fnl(σd)は、式(29),(30)のように定義される非線形関数である(なお、σd=0のときには、Fnl(σd)=0と定義してもよい)。以上の式(26)〜(30)を参照すると明らかなように、変調値ULdsmは、最小値−DUDと最大値DUDとの間で反転を繰り返す値として算出される。
【0081】
以上のように、変調部64では、変調値ULdsmが、小偏差成分値ULを、以上の式(26)〜(30)に示すアルゴリズムで変調することにより算出されるので、第1制御入力Rsldの変動が小さく、中心値Ucentとの間に小偏差成分値UL分の偏差しか生じていないときには、変調値ULdsmを、第1制御入力Rsldの前述した制御上の優れた特性、すなわち燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高いレベルで得ることができるという特性を確保しながら、燃料供給装置10の非線形特性を補償できる値として算出することができる。
【0082】
一方、加算器65では、下式(31)により第2制御入力Udsmが算出される。
【数8】

【0083】
以上のように、DSMコントローラ60では、第2制御入力Udsmは、変調値ULdsm、大偏差成分値UHおよび中心値Ucentの総和として算出される。この場合、中心値Ucentは、前述したように、第1制御入力Rsldのマクロ的な変化に追従するような値として算出され、変調値ULdsmは、前述したように、第1制御入力Rsldの変動が小さい場合、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高いレベルで得ることができるという特性を確保しながら、燃料供給装置10の非線形特性を補償できる値として算出される。これに加えて、大偏差成分値UHは、目標燃料圧Pf_cmdが大幅に急変することで、第1制御入力Rsldの変動が大きい場合などの制御の速応性が要求される状況において、第1制御入力Rsldの挙動を第2制御入力Udsmに適切に反映させ、制御の速応性を確保するための値として算出される。
【0084】
したがって、これらの3つの値ULdsm,UH,Ucentの総和として算出される第2制御入力Udsmは、第1制御入力Rsldの変動が小さい場合には、第1制御入力Rsldの前述した優れた制御上の特性、すなわち燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高レベル状態に維持できるという特性を備えると同時に、変調値ULdsmがΔΣ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムで変調されていることにより、燃料供給装置10の非線形特性を補償できる値として算出される。
【0085】
これに加えて、目標燃料圧Pf_cmdが大幅に急変した場合などの制御の速応性が要求される状況においては、第2制御入力Udsmは、これに含まれる大偏差成分値UHにより、制御の速応性を確保できる値として算出される。また、第2制御入力Udsmは、その中心値Ucentが第1制御入力Rsldのマクロ的な変化に追従するような値として算出されるので、その振幅2・DUDを、第1制御入力Rsldが制御中に示し得る最大値と最小値との幅をカバーするような大きな値にする必要がなく、それよりも小さい値に設定するだけで、前述した第1制御入力Rsldの前述した優れた制御上の特性を確保しながら、燃料供給装置10の非線形特性を補償することができる値として算出される。
【0086】
なお、制御上の必要性に応じて、大偏差成分値UHを値0に設定し、第2制御入力Udsmを、変調値ULdsmと中心値Ucentの総和として算出してもよい。
【0087】
また、制御入力選択部80では、第1制御入力Rsldおよび第2制御入力Udsmの一方が、前述した状態判定部70で設定された2つのフラグF_FC,F_PDECの値に応じて、制御入力Upfとして選択される。具体的には、F_FC=1のとき、またはF_FC=0&F_PDEC=1のとき、すなわちF/C運転の実行条件が成立しているとき、または燃料供給運転中で減圧制御の実行条件が成立しているときには、第1制御入力Rsldが制御入力Upfとして選択され、F_FC=0かつF_PDEC=0のときには、第2制御入力Udsmが制御入力Upfとして選択される。
【0088】
次に、図5を参照しながら、ECU2により実行される燃料圧制御処理について説明する。本処理は、前述した制御入力Upfを算出するものであり、所定の制御周期ΔT(例えば5msec)で実行される。
【0089】
まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、RAMに記憶されている燃料圧Pfの値を読み込む。すなわち、燃料圧Pfの値をサンプリングする。なお、この燃料圧Pfの値は、図示しない燃料噴射制御処理において、燃料圧センサ20の検出信号値の移動平均演算により算出される。
【0090】
次いで、ステップ2に進み、エンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。このエンジン始動フラグF_ENGSTARTは、図示しない判定処理において、エンジン回転数NEおよびIG・SW23の出力信号に応じて、エンジン始動制御中すなわちクランキング中であるか否かを判定することにより設定されるものであり、具体的には、エンジン始動制御中であるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0091】
ステップ2の判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ3に進み、目標燃料圧Pf_cmdを所定の始動時用値Pf_stに設定する。この所定の始動時用値Pf_stは、エンジン始動時間の短縮化と、エンジン始動に適した燃料噴霧とをバランス良く確保できる値(例えば2MPa)に設定されている。
【0092】
次に、ステップ4に進み、燃料圧と目標燃料圧との偏差の絶対値|Pf−Pf_cmd|が所定の判定値ε(例えば2MPa)より小さいか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、燃料噴射を適切に実行可能な燃料圧Pfが確保されていることを表すために、ステップ5で、燃料圧確保フラグF_Pf_OKを「1」に設定する。
【0093】
一方、ステップ4の判別結果がNOのときには、ステップ6で、燃料圧確保フラグF_Pf_OKを「0」に設定する。なお、F_Pf_OK=0のときには、燃料噴射制御処理および点火時期制御処理において、燃料噴射弁9による燃料噴射および点火プラグによる点火がそれぞれ停止される。
【0094】
ステップ5または6に続くステップ7では、後述するように、制御入力Upfを算出する。その後、本処理を終了する。
【0095】
一方、前述したステップ2の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ8に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。この所定値APREFは、アクセルペダルが踏まれていないことを判別するためのものであり、アクセルペダルが踏まれていないことを判別可能な値(例えば1゜)に設定されている。
【0096】
ステップ8の判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、ステップ9に進み、触媒暖機タイマの計時値Tcatが所定値Tcatlmt(例えば30sec)より小さいか否かを判別する。この触媒暖機タイマは、触媒暖機制御処理の実行時間を計時するものであり、アップカウント式のタイマで構成されている。また、触媒暖機制御は、エンジン3の排気管に設けられた触媒装置内の触媒(いずれも図示せず)をエンジン始動後に急速に活性化させるための処理である。
【0097】
ステップ9の判別結果がYESのときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ10に進み、目標燃料圧Pf_cmdを所定の触媒暖機制御用値Pf_astに設定する。この所定の触媒暖機制御用値Pf_astは、触媒暖機制御において点火時期リタード制御の実行中、安定した燃焼状態を確保できるような燃料圧Pfの値(例えば20MPa)に設定されている。
【0098】
次いで、前述したステップ7で、制御入力Upfを算出した後、本処理を終了する。
【0099】
一方、ステップ8またはステップ9の判別結果がNOのとき、すなわちエンジン始動制御中でない場合において、アクセルペダルが踏まれているとき、またはTcat≧Tcatlmtであるときには、ステップ11に進み、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図6に示すマップを検索することにより、通常運転用値Pf_mapを算出する。同図において、AP1〜AP3は、AP1<AP2<AP3の関係が成立するアクセル開度APの所定値を示している。
【0100】
このマップでは、通常運転用値Pf_mapは、エンジン回転数NEが高いほど、またはアクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン回転数NEが高いほど、またはアクセル開度APが大きいほど、エンジン3に対する要求出力が大きいことで、より高い燃料圧Pfが要求されることによる。
【0101】
ステップ11に続くステップ12では、目標燃料圧Pf_cmdを上記通常運転用値Pf_mapに設定する。次いで、前述したステップ7で、制御入力Upfを算出した後、本処理を終了する。
【0102】
次に、図7を参照しながら、前述したステップ7の制御入力Upfの算出処理について説明する。この処理では、まず、ステップ20で、第1制御入力Rsldを、前述した式(1)〜(6),(8)〜(10)により算出する。
【0103】
次いで、ステップ21に進み、F/C運転フラグF_FCが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、F/C運転の実行条件が成立しているときには、ステップ22に進み、振幅設定値DUDをF/C運転用値DUDHに設定する。次いで、ステップ23で、制御領域が制御入力Upfとして第2制御入力Udsmを選択すべき領域にあることを表すために、第2制御入力選択フラグF_DSMを「1」に設定する。
【0104】
一方、ステップ21の判別結果がNOのときには、ステップ24に進み、減圧制御フラグF_PDECが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、減圧制御の実行条件が成立しているときには、ステップ25に進み、振幅設定値DUDを減圧制御用値DUDLに設定する。次いで、前述したステップ23で、第2制御入力選択フラグF_DSMを「1」に設定する。
【0105】
一方、ステップ24の判別結果がNOで、F/C運転および減圧制御の実行条件がいずれも不成立であるときには、ステップ26に進み、振幅設定値DUDを通常制御用値DUDMに設定する。次いで、ステップ27で、制御領域が制御入力Upfとして第1制御入力Rsldを選択すべき領域にあることを表すために、第2制御入力選択フラグF_DSMを「0」に設定する。
【0106】
ステップ23または27に続くステップ28では、前述した式(11)〜(15)により、中心値Ucentを算出する。次いで、ステップ29に進み、前述した式(16)〜(22)により、大偏差成分値UHおよび小偏差成分値ULを算出する。
【0107】
次に、ステップ30で、前述した式(26)により、偏差δdを算出する。その後、ステップ31で、前述した式(27)により、積分値σdを算出する。
【0108】
次いで、ステップ32で、ステップ30で算出した積分値σdが値0以上であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、ステップ33で、変調値ULdsmをDUDに設定する。一方、この判別結果がNOのときには、ステップ34で、変調値ULdsmを−DUDに設定する。
【0109】
ステップ33または34に続くステップ35では、第2制御入力Udsmを、以上のように算出した変調値ULdsmと大偏差成分値UHと中心値Ucentとの和に設定する。
【0110】
次いで、ステップ36に進み、第2制御入力選択フラグF_DSMが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、ステップ37に進み、制御入力Upfを第2制御入力Udsmに設定する。一方、この判別結果がNOのときには、ステップ38に進み、制御入力Upfを第1制御入力Rsldに設定する。以上のように制御入力Upfを算出した後、本処理を終了する。
【0111】
次に、図8〜10を参照しながら、以上のように構成された本実施形態の制御装置1による燃料圧Pfの制御結果について説明する。図8は、目標燃料圧Pf_cmdを一定に保持している状態で、本実施形態の制御装置1により減圧制御を実行したときの制御結果を示しており、図9は、減圧制御を実行する際、制御入力Upfとして第1制御入力Rsldを用いたときの比較例の制御結果を示している。
【0112】
まず、図9を参照すると明らかなように、比較例の制御結果では、減圧制御の開始直後(時刻t2以降)、燃料供給装置10の非線形特性の影響を受け、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対して大きくアンダーシュートし、両者の乖離度合が一時的に急増していることが判る。これに対して、図8の本実施形態の制御結果では、減圧制御の開始直後(時刻t1以降)、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対して若干、アンダーシュートするものの、両者の乖離度合が小さい状態に抑制されており、制御入力Upfとして第2制御入力Udsmを用いることによって、燃料供給装置10の非線形特性が適切に補償され、高レベルの制御の分解能を確保できていることが判る。
【0113】
また、図10は、F/C運転中、目標燃料圧Pf_cmdを一定に保持している状態で燃料圧制御を実行した際、時刻t4において、制御入力Upfを、第1制御入力Rsldから第2制御入力Udsmに切り換えたときの制御結果例を示している。
【0114】
同図を参照すると明らかなように、制御入力Upfとして第1制御入力Rsldを用いた間(時刻t3〜t4)は、減圧制御と昇圧制御とが交互に繰り返し実行されているとともに、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに適切に収束しないことが判る。これは、以下の理由による。まず、第1の理由としては、F/C運転中の減圧制御の際には、前述した燃料供給装置10の構造的な特性に起因して、減圧開始時、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対して一時的に大きなアンダーシュートを生じてしまうためである。
【0115】
また、第2の理由としては、昇圧制御の際には、高圧ポンプ17がクランクシャフトに連結されていることにより、エンジン3の運転中、昇圧動作が常に実行されるとともに、高圧ポンプが容積式のものであることにより、昇圧された燃料のデリバリパイプ13側への吐出動作が間欠的に実行されるためである。以上の2つの理由により、制御入力Upfとして第1制御入力Rsldを用いた場合には、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに収束することなく、減圧制御と昇圧制御とが交互に繰り返し実行されてしまう。
【0116】
一方、制御入力Upfを第1制御入力Rsldから第2制御入力Udsmに切り換えた以降(時刻t4以降)は、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdにほぼ収束した状態に制御されており、燃料供給装置10の非線形特性が適切に補償され、燃料圧制御における高レベルの分解能を確保できていることが判る。
【0117】
以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、2自由度応答指定型制御アルゴリズム[式(1)〜(6)]により、第1制御入力Rsldが算出され、この第1制御入力Rsldを、ΔΣ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズム[式(11)〜(31)]で変調することにより、第2制御入力Udsmが算出される。そして、エンジン3のF/C運転中において燃料圧Pfを制御するとき、または燃料供給運転中において燃料圧Pfを減少側に制御するときには、制御入力Upfとして第2制御入力Udsmが選択され、エンジン3の燃料供給運転中に燃料圧Pfを減少側以外に制御するときには、制御入力Upfとして第1制御入力Rsldが選択される。
【0118】
この場合、第1制御入力Rsldは、目標値フィルタアルゴリズムと、応答指定型制御アルゴリズムとを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムより算出されるので、この第1制御入力Rsldを用いることで、目標値フィルタアルゴリズムにより、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの収束速度を適切な値に設定できるとともに、これとは別個に、応答指定型制御アルゴリズムにより、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの収束挙動を適切な状態に設定することができる。すなわち、第1制御入力Rsldの算出において、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの収束挙動および収束速度を互いに独立した状態でかつ適切なものに設定できるので、そのように算出された第1制御入力Rsldを用いることにより、燃料供給装置10がほとんど非線形特性を示さない制御領域であれば、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高レベル状態に維持できる。
【0119】
したがって、そのような制御領域で燃料圧Pfを制御する場合に相当する、エンジン3の燃料供給運転中に燃料圧Pfを減少側以外に制御する場合において、第1制御入力Rsldが制御入力Upfとして選択されることにより、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高レベル状態に維持できる。これに加えて、制御入力Upfに対する燃料圧Pfの感度が低下する条件下において、燃料供給装置10がほとんど非線形特性を示さない制御領域で、第2制御入力Udsmを制御入力Upfとして選択した場合に発生するおそれがある、制御入力Upfの振幅が燃料圧Pfにノイズ的に反映される状態を回避しながら、燃料圧Pfを目標燃料圧Pf_cmdに収束させることができる。その結果、燃料供給装置10が非線形特性をほとんど示さない制御領域において、第2制御入力Udsmを制御入力Upfとして選択した場合と比べて、燃料圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。
【0120】
一方、燃料供給装置10が一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域で、燃料圧Pfを制御する場合、すなわち、エンジン3のF/C運転中に燃料圧Pfを制御する場合、または燃料供給運転中に燃料圧Pfを減少側に制御する場合には、第2制御入力Udsmが制御入力Upfとして選択される。この第2制御入力Udsmは、前述したように、第1制御入力Rsldの前述した優れた制御上の特性、すなわち燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの追従速度および追従挙動をいずれも高レベル状態に維持できるという特性を備えると同時に、燃料供給装置10の非線形特性を補償できる値として算出されるので、燃料供給装置10が一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域で、第2制御入力Udsmを制御入力Upfとして選択することにより、燃料供給装置10の強い非線形特性を補償しながら、燃料圧Pfを目標燃料圧Pf_cmdに収束させるように制御することができる。その結果、燃料供給装置10が一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域において、第1制御入力Rsldを制御入力Upfとして選択した場合と比べて、燃料圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。これに加えて、第1制御入力Rsldの変動が大きく、制御の速応性が要求される状況では、第2制御入力Udsmに含まれる大偏差成分値UHにより、そのような速応性を確保できる。
【0121】
以上のように、燃料供給装置10が一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域、および非線形特性を示さない制御領域のいずれにおいても、燃料圧制御の分解能および制御精度を向上させることができる。
【0122】
また、第2制御入力Udsmの中心値Ucentが、第1制御入力Rsldのマクロ的な変化に追従するような値として算出されるので、変調された制御入力の振幅の中心値が変化しない従来の場合と比べて、第2制御入力Udsmの振幅をより小さい値に設定することができる。その結果、第1制御入力Rsldの変動幅が大きいときでも、高レベルの制御の分解能および制御精度を確保することができる。これに加えて、中心値Ucentは、その変化分Ducentが、−EPS<Euc<EPSのときには、偏差Eucに、0<Keu≪1が成立する更新ゲインKeuを乗算した値として算出されるので、第1制御入力Rsldが急変したときでも、これに緩やかに追従する値として算出される。その結果、減圧開始時、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対してアンダーシュートするのをより効果的に抑制することができる。
【0123】
さらに、第2制御入力Udsmの振幅を設定する振幅設定値DUDは、エンジン3のF/C運転中に燃料圧Pfを制御する場合、燃料供給運転中に燃料圧Pfを減少側に制御する場合よりも大きな値DUDHに設定されるので、変調値ULdsmの振幅が、燃料噴射運転中での減圧制御のときよりも大きな値に設定される。それにより、燃料圧制御の分解能をより高めることができ、燃料噴射再開後の燃料噴射制御を精度良く実行することができる。その結果、空燃比の制御精度を向上させることができる。
【0124】
また、変調値ULdsmの算出アルゴリズムとして、ΔΣ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムを用いているので、ΔΣ変調アルゴリズムの特性により、小偏差成分値ULが値0に近づくほど、すなわち燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに近い状況にあって、第1制御入力Rsldが変動しなくなるほど、第2制御入力Udsmの反転周波数がより高くなる。その結果、第2制御入力Udsmとして、第1制御入力Rsldを反転周波数が一定のPWMまたはディザにより変調した値を用いる場合と比べて、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの収束性を高めることができる。
【0125】
また、第1制御入力Rsldの算出アルゴリズムとして、外乱補償のために燃料圧Pfと目標燃料圧Pf_cmdとの偏差の積分値を用いる制御アルゴリズムを用いた場合、燃料供給装置10が外乱を受けた際、積分値による外乱補償作用により、燃料圧Pfと目標燃料圧Pf_cmdとの偏差が、振動的な揺り返し挙動を示したり、一時的に過大な状態になったりするおそれがある。これに対して、この制御装置によれば、燃料供給装置10が受ける外乱を補償するための外乱推定値が、燃料圧Pfおよび第1制御入力Rsldに基づき、推定アルゴリズムにより算出され、第1制御入力Rsldが、外乱推定値に基づき、2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより算出されるので、燃料供給装置10が外乱を受けた際、上述したような燃料圧Pfと目標燃料圧Pf_cmdとの偏差の積分値を用いる場合と異なり、燃料圧Pfと目標燃料圧Pf_cmdとの偏差が振動的な揺り返し挙動を示したり、一時的に過大な状態になったりするのを回避しながら、外乱の影響を補償でき、それにより、燃料圧Pfを目標燃料圧Pf_cmdに迅速に収束させることができる。
【0126】
なお、実施形態は、第1制御入力Rsldを変調することにより第2制御入力Udsmを算出するアルゴリズムとして、ΔΣ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズム[式(11)〜(31)]を用いた例であるが、本願発明のアルゴリズムはこれに限らず、第1制御入力Rsldを変調することにより第2制御入力Udsmを算出するできるものであればよい。例えば、第1制御入力Rsldを変調するアルゴリズムとして、PWM(Pulse wave Modulation)アルゴリズムや、ディザにより第1制御入力Rsldを変調するアルゴリズムを用いてもよい。
【0127】
また、実施形態の変調部64および図7のステップ30〜34において、前述した式(26)〜(30)に代えて、下式(32)〜(37)に示すΣΔ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムにより、変調値ULdsmを算出するように構成してもよい。
【0128】
【数9】

【0129】
以上のアルゴリズムにより変調値ULdsmを算出し、さらに、これを用いて前述した式(31)により第2制御入力Udsmを算出した場合でも、実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、小偏差成分値ULが値0に近づくほど、すなわち燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに近い状況にあって、第1制御入力Rsldが変動しなくなるほど、第2制御入力Udsmの反転周波数がより高くなるので、反転周波数が一定のPWMまたはディザにより変調された第2制御入力Udsmを用いる場合と比べて、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの収束性を高めることができる。
【0130】
さらに、実施形態の変調部64および図7のステップ30〜34において、前述した式(26)〜(30)に代えて、下式(38)〜(42)に示すΔ変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムにより、第2制御入力Udsmを算出するように構成してもよい。
【0131】
【数10】

【0132】
以上のアルゴリズムにより変調値ULdsmを算出し、さらに、これを用いて前述した式(31)により第2制御入力Udsmを算出した場合でも、実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、小偏差成分値ULが値0に近づくほど、すなわち燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに近い状況にあって、第1制御入力Rsldが変動しなくなるほど、第2制御入力Udsmの反転周波数がより高くなるので、反転周波数が一定のPWMまたはディザにより変調された第2制御入力Udsmを用いる場合と比べて、燃料圧Pfの目標燃料圧Pf_cmdへの収束性を高めることができる。
【0133】
また、実施形態は、本願発明の制御装置を流体回路系またはプラントとしての燃料供給装置10を制御するものに適用した例であるが、本願発明の制御装置はこれに限らず、一時的に極めて強い非線形特性を示す制御領域と非線形特性をほとんど示さない制御領域とが存在する様々な流体回路系またはプラントに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置およびこれを適用した燃料供給装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】電磁制御弁のスプール弁機構の動作状態を示す図である。
【図3】制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】DSMコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図5】燃料圧制御処理を示すフローチャートである。
【図6】通常運転用値Pf_mapの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図7】制御入力Upfの算出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の制御装置により燃料圧の減圧制御を実行したときの制御結果例を示すタイミングチャートである。
【図9】比較例の燃料圧の減圧制御の制御結果例を示すタイミングチャートである。
【図10】フューエルカット運転中の燃料圧制御において、制御入力Upfを、第1制御入力Rsldから第2制御入力Udsmに切り換えたときの制御結果例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0135】
1 制御装置
2 ECU(目標値設定手段、第1制御入力算出手段、第2制御入力算出手段、制
御入力選択手段、中心値設定手段、振幅設定手段、外乱推定値算出手段)
3 内燃機関
4 プラント
10 燃料供給装置(流体回路系、燃料供給系)
12 燃料供給路(昇圧側流路)
14 燃料戻し路(減圧側流路)
15a 電磁アクチュエータ(アクチュエータ)
15b スプール弁機構(弁)
20 燃料圧センサ(制御量検出手段、流体圧検出手段)
30 目標燃料圧算出部(目標値設定手段)
40 2自由度応答指定型コントローラ(第1制御入力算出手段)
50 適応外乱オブザーバ(外乱推定値算出手段)
60 DSMコントローラ(第2制御入力算出手段)
61 中心値算出部(中心値設定手段)
63 振幅設定値算出部(振幅設定手段)
80 制御入力選択部(制御入力選択手段)
Upf 制御入力
Pf 燃料圧(制御量、流体圧)
Pf_cmd 目標燃料圧(目標値)
Rsld 第1制御入力
Udsm 第2制御入力
Ucent 中心値
DUD 振幅設定値(第2制御入力の振幅を設定する値)
c1 外乱推定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御入力によりプラントの制御量を制御する制御装置であって、
前記制御量を検出する制御量検出手段と、
前記制御量の目標となる目標値を設定する目標値設定手段と、
前記検出された制御量を前記設定された目標値に収束させるように制御するための第1制御入力を、所定の制御アルゴリズムにより算出する第1制御入力算出手段と、
当該算出された第1制御入力を所定の変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムで変調することにより、第2制御入力を算出する第2制御入力算出手段と、
前記プラントの状態に応じて、前記第1制御入力および前記第2制御入力の一方を前記制御入力として選択する制御入力選択手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第2制御入力算出手段は、
前記第2制御入力の振幅の中心となる中心値を、前記第1制御入力に応じて設定する中心値設定手段と、
前記第2制御入力の振幅を、前記第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅よりも小さい値に設定する振幅設定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記所定の制御アルゴリズムは、所定の目標値フィルタアルゴリズムと、所定の応答指定型制御アルゴリズムとを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムを適用したアルゴリズムであることを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定の変調アルゴリズムは、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記プラントが受ける外乱を補償するための外乱推定値を、前記制御量および前記第1制御入力に基づき、所定の推定アルゴリズムにより算出する外乱推定値算出手段をさらに備え、
前記第1制御入力算出手段は、当該算出された外乱推定値に応じて、前記所定の制御アルゴリズムにより、前記第1制御入力を算出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
流体圧が昇圧側流路および減圧側流路の開閉により増減する流体回路系において、当該流体圧を制御する制御装置であって、
前記昇圧側流路および前記減圧側流路を開閉する弁と、
当該弁を駆動するアクチュエータと、
前記流体圧を検出する流体圧検出手段と、
前記流体圧の目標となる目標値を設定する目標値設定手段と、
前記検出された流体圧を前記設定された目標値に収束させるように制御するための第1制御入力を、所定の制御アルゴリズムにより算出する第1制御入力算出手段と、
当該算出された第1制御入力を所定の変調アルゴリズムを適用したアルゴリズムで変調することにより、第2制御入力を算出する第2制御入力算出手段と、
前記流体回路系の状態に応じて、前記第1制御入力および前記第2制御入力の一方を前記アクチュエータへの制御入力として選択する制御入力選択手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
前記第2制御入力算出手段は、
前記第2制御入力の振幅の中心となる中心値を、前記第1制御入力に応じて設定する中心値設定手段と、
前記第2制御入力の振幅を、前記第1制御入力が示し得る最大値と最小値との幅よりも小さい値に設定する振幅設定手段と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記所定の制御アルゴリズムは、所定の目標値フィルタアルゴリズムと、所定の応答指定型制御アルゴリズムとを組み合わせた目標値フィルタ型2自由度制御アルゴリズムを適用したアルゴリズムであることを特徴とする請求項6または7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記所定の変調アルゴリズムは、ΔΣ変調アルゴリズム、ΣΔ変調アルゴリズムおよびΔ変調アルゴリズムのいずれかであることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の制御装置。
【請求項10】
前記流体回路系が受ける外乱を補償するための外乱推定値を、前記流体圧および前記第1制御入力に基づき、所定の推定アルゴリズムにより算出する外乱推定値算出手段をさらに備え、
前記第1制御入力算出手段は、当該算出された外乱推定値に基づき、前記所定の制御アルゴリズムにより、前記第1制御入力を算出することを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の制御装置。
【請求項11】
前記流体回路系は内燃機関に燃料を供給する燃料供給系であり、
前記流体圧は当該燃料供給系における燃料圧であり、
前記制御入力選択手段は、前記燃料圧を減少側に制御するときには、前記第2制御入力を前記制御入力として選択することを特徴とする請求項6ないし10のいずれかに記載の制御装置。
【請求項12】
前記流体回路系は内燃機関に燃料を供給する燃料供給系であり、
前記流体圧は当該燃料供給系における燃料圧であり、
前記制御入力選択手段は、前記燃料供給系から前記内燃機関への燃料供給が停止されているときには、前記第2制御入力を前記制御入力として選択することを特徴とする請求項6ないし10のいずれかに記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−291764(P2006−291764A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110680(P2005−110680)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】