説明

半導体デバイス用基板洗浄液及び洗浄方法

【課題】基板表面を腐食することなく微粒子付着による汚染、有機物汚染及び金属汚染を同時に除去することができ、しかも水リンス性も良好で、短時間で基板表面を高清浄化することができる半導体デバイス用基板洗浄液を提供する。
【解決手段】
以下の成分(A)〜(D)を含有してなる半導体デバイス用基板洗浄液。
(A)ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸
(B)スルホン酸型アニオン性界面活性剤
(C)カルボン酸型アニオン性界面活性剤
(D)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス用基板表面を効果的に洗浄するための洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程では、デバイスの高速化・高集積化のために、配線として抵抗値の低い新金属材料(Cu等)、層間絶縁膜として低誘電率(Low−k)材料が導入されてきている。
半導体デバイス用基板は、まず、シリコンウェハ基板の上に、金属膜や層間絶縁膜の堆積層を形成した後に、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下、「CMP」と称す。)によって表面の平坦化処理を行い、平坦となった面の上に新たな層を積み重ねて行くことで製造される。半導体デバイス用基板は、各層において精度の高い平坦性が必要である。
【0003】
このCMP工程後の半導体デバイス用基板表面には様々な夾雑物が残留している。例えば、金属配線や低誘電率膜の削りカス、CMP工程で使用されるスラリーに含まれるコロイダルシリカ、スラリー中に含まれる防食剤に由来する有機物残渣などである。多層構造を持つ半導体デバイスを製造する上で、これらの夾雑物を除去することが必須である。低誘電率膜は疎水性であり、水との親和性が低く、洗浄液をはじいてしまうので洗浄が困難である。また、コロイダルシリカは100nm以下と非常に小さいために、除去が困難である。有機物残渣は溶解、分解することが可能ではあるが、溶解性、分解性の高い洗浄液では金属配線に腐食を起こしてしまう、などといった課題が挙げられる。これらの課題を解決するために、様々な洗浄技術の適用が試みられている。
【0004】
その中の一つとして最も重要な技術がゼータ電位の制御である。酸性の水中では銅配線を導入した半導体デバイス用基板表面が負電荷に帯電することが知られている。一方、CMP工程で使用されているスラリー中に含まれるコロイダルシリカは酸性の水中では正電荷に帯電することが知られている。そして、CMP工程の後工程である基板の洗浄工程において、洗浄液にアニオン性界面活性剤を含まない場合では、正電荷に帯電したコロイダルシリカの微粒子が負電荷に帯電した半導体デバイス用基板表面へ付着しやすい。この付着を防ぐためにはコロイダルシリカのゼータ電位を負に制御する必要がある。
また、CMP工程の後工程である基板の洗浄工程ではCu配線の低腐食性も求められている。特に近年ではデバイスの集積化が進み、Cu配線が細くなっていることから、従来のデバイスでは問題にならなかったような小さな腐食でさえ、歩留りの低下を引き起こす要因となることがある。
【0005】
このような課題を解決するために、様々な洗浄技術の適用が試みられている。
例えば、特許文献1には基板に付着した微粒子や有機汚染を除去するため、特定の界面活性剤と水に、アルカリ又は有機酸を添加した洗浄液が開示されている。
また、特許文献2には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤と、アミノ酢酸又はキナルジン酸のような金属と錯体を形成する化合物と、アルカリ成分とを含有してなる洗浄液が開示されている。
特許文献3には、界面活性剤としてカルボン酸型アニオン性界面活性剤の1種類のみを含む洗浄液が開示されている。
特許文献4には、カルボン酸型アニオン性界面活性剤を含むアルカリ性洗浄液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−289060号公報
【特許文献2】特開2002−270566号公報
【特許文献3】特開2005−194294号公報
【特許文献4】特許第4038069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらを用いた半導体デバイス製造工程において、様々な洗浄法が提案されているが、従来技術では、洗浄液による基板の洗浄効果が不充分であったり、洗浄液によって基板表面(特に金属配線)を腐食したり、洗浄液が超純水を用いたリンス工程で除去されにくいため、長時間のリンスが必要になり、洗浄の短時間化の妨げとなったりするなどの問題があった。
特に疎水性の低誘電率絶縁膜や腐食しやすいCu配線の表面上の様々な汚染を短時間で充分に除去できる技術はなく、その確立が求められていた。
【0008】
本発明は上記問題を解決する為になされたものであり、基板表面を腐食することなく微粒子付着による汚染、有機物汚染及び金属汚染を同時に除去することができ、しかも水リンス性も良好で、短時間で基板表面を高清浄化することができる半導体デバイス用基板洗浄液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、疎水性の低誘電率絶縁膜表面の汚染を効果的に洗浄するためには、界面活性剤を活用して疎水面のぬれ性を向上することが重要であると考え、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の界面活性剤を含む溶液を洗浄液として用いると、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 以下の成分(A)〜(D)を含有してなる半導体デバイス用基板洗浄液。
(A)ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸
(B)スルホン酸型アニオン性界面活性剤
(C)カルボン酸型アニオン性界面活性剤
(D)水
<2> 成分(A)が、カルボキシル基を2以上且つヒドロキシ基を1以上有する化合物である前記<1>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<3> 成分(A)が、炭素数2〜10の化合物である前記<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<4> 成分(A)が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種である前記<1>に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
<5> 成分(B)が、アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、アルキルメチルタウリン酸及びその塩、並びにスルホコハク酸ジエステル及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種である前記<1>から<4>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
<6> 成分(C)が、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩である前記<1>から<5>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
R−O−(AO)m−(CH2n−COOH (1)
(但し、Rは炭素数8〜15の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、AOはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基であり、mは3〜30であり、nは1〜6である。)
<7> 成分(A)が、5〜30質量%、成分(B)が、0.01〜10質量%、成分(C)が、0.01〜10質量%の濃度で含有される前記<1>から<6>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
<8> 成分(A)が、0.05〜3質量%、成分(B)が、0.0001〜1質量%、成分(C)が、0.0001〜1質量%の濃度で含有される前記<1>から<6>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
<9> 成分(B)と成分(C)との質量比率[成分(B)/成分(C)]が、1/15〜1.5/1の範囲内である前記<1>から<8>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
<10> 水/洗浄液の質量比率を40として測定した一次粒径が80nmのコロイダルシリカのゼータ電位が、−30mV以下である前記<1>から<9>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の半導体デバイス用基板洗浄液を用いて、半導体デバイス用基板を洗浄する半導体デバイス用基板の洗浄方法。
<12> 半導体デバイス用基板が基板表面にCu配線と低誘電率絶縁膜を有し、かつ、化学的機械的研磨を行った後の前記半導体デバイス用基板を洗浄する前記<11>記載の半導体用デバイス基板の洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体デバイス用基板の洗浄において、基板表面を腐食することなく、基板に付着した微粒子や有機汚染、金属汚染を同時に除去することが可能であり、水リンス性も良好な半導体デバイス用基板洗浄液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明は、以下の成分(A)〜(D)を含有してなる半導体デバイス用基板洗浄液に関する。
(A)ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸
(B)スルホン酸型アニオン性界面活性剤
(C)カルボン酸型アニオン性界面活性剤
(D)水
【0013】
本発明において、成分(A)は、ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるが、ポリカルボン酸とは、分子内に2以上のカルボキシル基を有する化合物であり、ヒドロキシカルボン酸とは、分子内に1以上のヒドロキシ基及び1以上のカルボキシル基を有する化合物である。
これらのうち、分子内に2以上のカルボキシル基と1以上のヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。
成分(A)の化合物として、炭素数が比較的少ないほうが、入手や取り扱いが容易であるため、炭素数は好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは3〜8であり、特に好ましくは3〜6である。
成分(A)の化合物の好適な具体例としてはシュウ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸が挙げられ、とりわけクエン酸が好ましい。
これら成分(A)の化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用しても良い。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)のカルボキシル基の一部が塩となったものを用いても良い。
【0014】
成分(B)のスルホン酸型アニオン性界面活性剤としては、スルホ基(−SO3H)を有するアニオン性界面活性剤のいずれも使用できるが、アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、アルキルメチルタウリン酸及びその塩、並びにスルホコハク酸ジエステル及びその塩が好ましい。
より好ましいものとしては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデカンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
この中でも、品質の安定性や入手のしやすさから、ドデシルベンゼンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩が好適に用いられる。
なお、成分(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0015】
成分(C)のカルボン酸型アニオン性界面活性剤とは、親水部位としてカルボキシル基を、また、疎水部位として炭素数5以上の炭化水素基を有する化合物である。親水部位と疎水部位の他に、これらを結合する部位としてオキシエチレン基、オキシプロピレン基、あるいはそれらが複数連結した基等が存在していてもよい。
その中でも下記一般式(1)で表される化合物が好適である。
R−O−(AO)m−(CH2n−COOH (1)

(一般式(1)において、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。また、AOはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を表す。mは3〜30であり、nは1〜6である。)
一般式(1)において、Rの炭素数は、5〜15が好ましく、10〜13が更に好ましい。また、mは4〜20が好ましく、4.5〜10が更に好ましい。また、nは1〜3が好ましい。なお、mは、分子毎に繰り返し単位数の異なる化合物の混合物として存在している場合があり、従って、全体の平均値を表している。
【0016】
一般式(1)で表される化合物として、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸などを挙げることができる。
成分(A)と成分(B)を含む洗浄液に、さらに成分(C)のカルボン酸型アニオン性界面活性剤を添加することで、ゼータ電位の著しい低下が起こる。ゼータ電位の著しい低下は成分(B)と成分(C)両方を含む時に引き起こされるものであり、成分(B)や成分(C)を単独で含む洗浄液中では十分な低下が起こらない。
ゼータ電位が低下することで、CMP工程で使用されているスラリー中に含まれるコロイダルシリカなどの微粒子と半導体デバイス用基板表面で電気的な反発が引き起こされる。この電気的な反発が起こることによって、コロイダルシリカなどの微粒子が半導体デバイス用基板表面に付着しにくくなる。
なお、成分(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0017】
また、成分(D)である水は、本発明の洗浄液の溶媒である。溶媒として使用される水としては、不純物を極力低減させた脱イオン水や超純水を用いることが好ましい。なお、本発明の効果を損なわない範囲において、エタノールなど水以外の溶媒を含んでいてもよい。
また、成分(A)〜(C)及びその他の添加剤についても必要に応じて精製したものを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の洗浄液の製造方法は、特に限定されず従来公知の方法によればよく、例えば、洗浄液の構成成分(成分(A)〜(D)、必要に応じて他の成分)を混合することで製造することができる。
混合順序も反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であり、洗浄液の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
【0019】
本発明の洗浄液は、洗浄に適した濃度になるように直接成分(A)〜(C)の濃度を調整して製造することもできるが、輸送、保管時のコストを抑制する観点から、それぞれの成分を高濃度で含有する洗浄液(以下、「洗浄原液」と称す場合がある。)を製造したのちに、成分(D)である水で希釈して使用されることも多い。
この洗浄原液における各成分の濃度は、特に制限はないが、成分(A)〜(C)及び必要に応じて添加される他の成分並びにこれらの反応物が、洗浄原液中で分離したり、析出しない範囲であることが好ましい。
その好適な濃度範囲は、成分(A)が、5〜30質量%、成分(B)が、0.01〜10質量%、成分(C)が、0.01〜10質量%の濃度範囲である。このような濃度範囲であると、輸送、保管時において、含有成分の分離がおこりづらく、また、水を添加することにより容易に洗浄に適した濃度の洗浄液として好適に使用することができる。
【0020】
半導体デバイス用基板の洗浄を行う際における各成分の濃度は、洗浄対象となる半導体デバイス用基板に応じて適宜決定される。
洗浄液として用いられる際の成分(A)の濃度は、通常、0.05〜3質量%であり、好ましくは、0.06〜1質量%である。
成分(A)の濃度が、0.05質量%未満では、半導体デバイス用基板の汚染の除去が不充分になるおそれがあり、3質量%を超えてもそれ以上の効果は得られないことに加え、洗浄後の洗浄液の水洗除去にコストがかかることになる。また、成分(A)の濃度が3質量%を超えると銅配線の腐食といった不具合を引き起こすことがある。
【0021】
界面活性剤である成分(B)及び成分(C)は、特に半導体デバイス用基板に付着する微粒子の除去に寄与する。
洗浄液として用いられる際の成分(B)の濃度は、通常、0.0001〜1質量%であり、好ましくは、0.0001〜0.3質量%である。成分(C)の濃度は、通常、0.0001〜1質量%であり、好ましくは、0.0001〜0.3質量%である。
成分(B)及び/又は成分(C)の濃度が低すぎると、半導体デバイス用基板に付着する微粒子が充分除去できなくなるおそれがあり、逆に濃度が高すぎても濃度に見合う効果の向上は得られないのに加え、過度の泡立ちを生じたり、廃液処理の負荷が増加することになる。
また、半導体デバイス用基板表面に露出している絶縁膜層は疎水性であり、界面活性剤を含まない洗浄液では、絶縁膜層表面と洗浄液の親和性が低く、充分に洗浄が行なえないが、界面活性剤を含む洗浄液では、洗浄液の液滴を絶縁膜に滴下した際の接触角が低下し、洗浄効果の向上が期待できる。
さらに、成分(C)を添加した洗浄液において、水/洗浄液の質量比率を40として測定したCu配線のエッチレートの低下が確認されており、Cu配線の細線部への腐食性が低下するものと考えられる。
【0022】
なお、微粒子汚染に対する除去性能を充分得るためには、成分(B)と成分(C)との質量比率[成分(B)/成分(C)]が、1/15〜1.5/1の範囲内であることが好ましく、1/10〜1/1の範囲内であることがより好ましい。
洗浄液が、成分(B)のみを含有する場合には、微粒子付着の防止、除去が充分にできないという問題があり、成分(C)のみでは、洗浄効果が不足し、またゼータ電位の低下が充分に起こらないという問題があるが、本発明の洗浄液は、成分(B)と成分(C)の2種類のアニオン性界面活性剤を含有することにより、それぞれのアニオン性界面活性剤を単独で含む洗浄液と比較して、著しいゼータ電位の低下が起こるという利点がある。
質量比率[成分(B)/成分(C)]が、1/15未満である場合、あるいは1.5/1を超える場合ではゼータ電位が充分に低下しない場合がある。
【0023】
なお、上述のように、洗浄に供する洗浄液は、洗浄対象となる半導体デバイス用基板に対して各成分の濃度が適切なものとなるように洗浄原液を希釈して製造してもよいし、その濃度になるように直接各成分を調整して製造してもよい。
【0024】
コロイダルシリカのゼータ電位が負の洗浄剤を用いることにより、コロイダルシリカ等の微粒子が半導体デバイス用基板表面への付着を防ぐことができる。本発明の洗浄液は、成分(B)、成分(C)の2種のアニオン性界面活性剤を組み合わせて用いることによりゼータ電位の顕著な低下と、洗浄効果の向上を達成したものである。
本発明の洗浄液において、水/洗浄液の質量比率を40として測定した一次粒径が80nmのコロイダルシリカのゼータ電位が、−30mV以下であることが好ましく、−40mV以下であることがより好ましい。なお、コロイダルシリカは球状のものを使用する。その一次粒径は電子顕微鏡を用いて観察することにより測定できる。このようなコロイダルシリカとしては、例えば、日揮触媒化成工業株式会社製の「カタロイドS」シリーズを使用すればよい。
上記条件にて測定したゼータ電位が、−30mVより大きいと、半導体デバイス用基板とコロイダルシリカの静電的な反発が十分におこらず、コロイダルシリカの微粒子の半導体デバイス用基板への付着が十分に防げない場合がある。
【0025】
本発明の洗浄液は、その使用時(希釈洗浄液)のpHとして、pH5以下であることが好ましい。より好ましいpHは1〜4,特に好ましくは1〜3である。
pHが5を超えると、成分(A)による洗浄効果が不十分になりやすい。pHが低いほど洗浄の面で有利であるが、pHが1未満になると基板の腐食が問題となるおそれがある。
pHの調整は成分(A)〜(C)の種類及び量の選択及び四級アンモニウム水酸化物(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)等のpH調節剤として作用するその他の成分の添加によって行うことができる。
【0026】
なお、本発明の洗浄液は、その性能を損なわない範囲において、その他の成分を任意の割合で含有していてもよい。
他の成分としては、酢酸、プロピオン酸等の1価のカルボン酸、
2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトエタノール、チオグリセロール等の含硫黄有機化合物、
ベンゾトリアゾール、3−アミノトリアゾール、N(R23(R2は互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基及び/又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基)、ウレア、チオウレア等の含窒素有機化合物、
ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー、
3OH(R3は炭素数1〜4のアルキル基)等のアルキルアルコール系化合物、等の防食剤;
水素、アルゴン、窒素、二酸化炭素、アンモニア等の溶存ガス、
フッ酸、フッ化アンモニウム、BHF(バッファードフッ酸)等のドライエッチング後に強固に付着したポリマー等の除去効果が期待できるエッチング促進剤;
ヒドラジン等の還元剤;
過酸化水素、オゾン、酸素等の酸化剤;
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;
等が挙げられる。
なお、洗浄対象となる半導体デバイス用基板において、配線として、過酸化水素と反応して溶解するCu等の金属配線が露出している場合がある。この際、洗浄に使用する洗浄液は、実質的に過酸化水素を含有しないことが好ましい。
【0027】
次いで、本発明の洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄方法は、既述した本発明の洗浄液を半導体デバイス用基板に直接接触させる方法で行われる。
【0028】
洗浄対象となる半導体デバイス用基板としては、半導体、ガラス、金属、セラミックス、樹脂、磁性体、超伝導体などの各種半導体デバイス用基板が挙げられる。
この中でも、本発明の洗浄液は、金属表面を腐食することなく、かつ、短時間のリンスで除去ができるため、配線などとして表面に金属又は金属化合物を有する半導体デバイス用基板に対して特に好適である。
【0029】
ここで、半導体デバイス用基板に使用される上記金属としては、W、Cu、Ti、Cr、Co、Zr、Hf、Mo、Ru、Au、Pt、Ag等が挙げられ、金属化合物としては、これらの金属の窒化物、酸化物、シリサイド等が挙げられる。これらの中では、Cu並びにこれらを含有する化合物が好適な対象である。
【0030】
また、本発明の洗浄方法は、疎水性の強い低誘電率絶縁材料に対しても洗浄効果が高いため、低誘電率絶縁材料を有する半導体デバイス用基板に対しても好適である。
このような低誘電率材料としては、Polyimide、BCB(Benzocyclobutene)、Flare(Honeywell社)、SiLK(Dow Chemical社)等の有機ポリマー材料やFSG(Fluorinated silicate glass)などの無機ポリマー材料、BLACK DIAMOND(Applied Materials社)、Aurora(日本ASM社)等のSiOC系材料が挙げられる。
【0031】
ここで、本発明の洗浄方法は、半導体デバイス用基板が、基板表面にCu配線と低誘電率絶縁膜を有し、かつ、該半導体デバイス用基板に対してCMPを行った後に該基板を洗浄する場合に特に好適に適用される。CMP工程では、研磨剤を用いて基板をパッドに擦り付けて研磨が行われる。
【0032】
研磨剤には、コロイダルシリカ(SiO2)、フュームドシリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、セリア(CeO2)などの研磨粒子が含まれる。このような研磨粒子は、半導体デバイス用基板の微粒子汚染の主因となるが、本発明の洗浄液は、基板に付着した微粒子を洗浄液中に分散させると共に再付着を防止する作用を有しているため、微粒子汚染の高い効果を示す。
【0033】
また、研磨剤には、酸化剤、分散剤等の研磨粒子以外の添加剤が含まれることがある。
特に、その表面に金属配線としてCu配線を有する半導体デバイス用基板におけるCMPでは、Cu配線が腐食しやすいため、防食剤が添加されることが多い。
防食剤としては、防食効果の高いアゾール系防食剤が好ましく用いられる。より詳しくは異種原子として窒素のみを含む複素環であるジアゾール系、トリアゾール系及びテトラゾール系、異種原子として窒素と酸素を含む複素環であるオキサゾール系、イソオキサゾール系及びオキサジアゾール系、異種原子として窒素と硫黄を含む複素環であるチアゾール系、イソチアゾール系及びチアジアゾール系が挙げられる。その中でも特に、防食効果に優れるベンゾトリアゾール(BTA)系の防食剤が好ましく用いられている。
【0034】
本発明の洗浄液は、このような防食剤を含んだ研磨剤で研磨した後の表面に適用すると、これら防食剤に由来した汚染を極めて効果的に除去できる点において優れている。
即ち、研磨剤中にこれらの防食剤が存在すると、Cu配線表面の腐食を抑える半面、研磨時に溶出したCuイオンと反応し、多量の不溶性析出物を生じる。本発明の洗浄液は、このような不溶性析出物を効率的に溶解除去することができ、更に、金属表面に残りやすい界面活性剤を、短時間のリンスで除去することができ、スループットの向上が可能である。
そのため、本発明の洗浄方法は、Cu配線と低誘電率絶縁膜が共存した表面を有す半導体デバイス用基板に対してCMPを行った後における前記半導体デバイス用基板の洗浄に好適であり、特にアゾール系防食剤が入った研磨剤でCMPを行った後における前記半導体デバイス用基板の洗浄に好適である。
【0035】
上述のように本発明の洗浄方法は、本発明の洗浄液を半導体デバイス用基板に直接接触させる方法で行われる。なお、洗浄対象となる半導体デバイス用基板の種類に合わせて、好適な成分濃度の洗浄液が選択される。
例えば、洗浄対象である半導体デバイス用基板が、基板表面にCu配線と低誘電率絶縁膜を有する基板である場合の各成分の好適な濃度範囲は、成分(A)が0.05〜3質量%、好ましくは0.06〜1質量%であり、成分(B)の濃度が、0.0001〜1質量%、好ましくは0.0001〜0.3質量%であり、成分(C)の濃度が、0.0001〜1質量%、好ましくは0.0001〜0.3質量%である。
【0036】
洗浄液の基板への接触方法には、洗浄槽に洗浄液を満たして基板を浸漬させるディップ式、ノズルから基板上に洗浄液を流しながら基板を高速回転させるスピン式、基板に液を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。この様な洗浄を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の基板を同時に洗浄するバッチ式洗浄装置、1枚の基板をホルダーに装着して洗浄する枚葉式洗浄装置などがある。
【0037】
本発明の洗浄液は、上記の何れの方法にも適用できるが、短時間でより効率的な汚染除去が出来る点から、スピン式やスプレー式の洗浄に好ましく使用される。そして、洗浄時間の短縮、洗浄液使用量の削減が望まれている枚葉式洗浄装置に適用するならば、これらの問題が解決されるので好ましい。
【0038】
また、本発明の洗浄方法は、物理力による洗浄方法、特に、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や周波数0.5メガヘルツ以上の超音波洗浄を併用すると、基板に付着した微粒子による汚染の除去性が更に向上し、洗浄時間の短縮にも繋がるので好ましい。特に、CMP工程後の洗浄においては、樹脂製ブラシを使用してスクラブ洗浄を行うのが好ましい。樹脂製ブラシの材質は、任意に選択し得るが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を使用するのが好ましい。
【0039】
更に、本発明の洗浄方法による洗浄の前及び/又は後に、水による洗浄を行ってもよい。
【0040】
本発明の洗浄方法において、洗浄液の温度は、通常は室温でよいが、性能を損なわない範囲で、40〜70℃程度に加温してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例及び比較例の洗浄液の製造に使用した試薬は次の通りである。
「試薬」
成分(A):(A)ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸
・クエン酸(和光純薬株式会社製、試薬特級)
成分(B):スルホン酸型アニオン性界面活性剤
・ドデシルベンゼンスルホン酸(ライオン株式会社製)(略称:DBS)
成分(C):カルボン酸型アニオン性界面活性剤
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸
日光ケミカルズ株式会社:NIKKOL ECT−7 (略称:ECT−7)
日光ケミカルズ株式会社:AKYPO RLM−100(略称:RLM−100)
成分(C’):カルボン酸型ノニオン性界面活性剤
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ライオン株式会社:レオコールTDA−400−75(略称:TDA−400−75)
その他成分
・テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(和光純薬株式会社製、試薬特級)(略称:TMAH)
【0043】
成分(C)または成分(C’)として上記した、ECT−7、RLM−100、TDA−400−75の化学構造式を下記に示す。
【化1】

【化2】

【化3】

【0044】
実施例1
(洗浄液の調製)
成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、成分(C)としてECT−7を成分(D)水と混合して、表1に示す組成の実施例1の半導体基板洗浄原液を調製した。 次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
【0045】
(ゼータ電位の測定)
コロイダルシリカ(日揮触媒化成株式会社 カタロイドSI−80P、一次粒径:80nm)の濃度が0.008質量%となるように洗浄液(希釈液)に添加し、マグネティックスターラーを用いて洗浄液(希釈液)を一時間以上攪拌した後、ゼータ電位計((株)大塚電子 ELS−6000)を用いて測定をおこなった。測定は3回行い、それらの平均値を測定結果とし、表2に示す。
【0046】
(pH測定)
上記洗浄液(希釈液)をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、pH計((株)堀場製作所 D−24)でpHの測定を行なった。測定サンプルは恒温層中で25℃に液温を保った。測定結果を表2に示す。
【0047】
(接触角)
前処理としてBD2X基板(市販品)を約1cm幅、約10cm長さに裁断した。基板の表面に付着している有機物を取り除くために、1質量%のアンモニア水(三菱化学(株) ELグレード)にBD2X基板を1分間浸漬後、超純水でよくすすぎ、エアーブローで乾燥させた。前処理を終えた基板の上に、洗浄液(希釈液)の約2.5μLの液滴を落とし、接触角計(協和界面科学(株) DM700)を用いて、その液滴と基板との接触角を測定した。測定は5回ずつ行い、それらの平均値を測定結果とし、表2に示す。
【0048】
(銅基板のエッチレート)
PVDによって製膜した銅シード基板(市販品)を2.5cm角に裁断した。カットした基板の銅の膜厚(nm)を蛍光X線分析装置(XRF)(日本電子(株) RIX−3000)で測定した。洗浄液(希釈液)中にその銅基板を120分間浸漬させた。浸漬後の基板を超純水でよくすすぎ、エアーブローで乾燥させた後。再度、XRFで銅の膜厚(nm)を測定した。エッチレートは下記(1)式で算出した。
((浸漬前の膜厚(nm))−(浸漬後の膜厚(nm)))/120分 (1)
測定結果を表2に示す。
【0049】
(銅基板の表面ラフネス)
PVDによって製膜した銅シード基板(市販品)を2.5cm角に裁断した。カットした基板を洗浄液(希釈液)中に、60分間浸漬させた後、超純水でよくすすぎ、エアーブローで乾燥させた。浸漬後の基板を約8mm幅に三等分に裁断し、中心部に位置していた基板表面を原子間力顕微鏡(島津製作所 SPM−9600)で1μm四方を走査し、ラフネスの値Rmsは最小二乗法によって算出した。測定は同一基板上の異なる2箇所の位置を測定し、それらの平均値を測定結果とし、表2に示す。
【0050】
(Cu−BTA溶解度)
1.53質量%の酢酸銅水溶液/1.0質量%のベンゾトリアゾール(BTA)水溶液の質量比率が0.5となるように混合し、2.5質量%のCu−BTA錯体水溶液を調製した。洗浄液(希釈液)に2.5質量%のCu−BTA錯体水溶液を100μL添加し、マグネティックスターラーを用いて10分間攪拌した後、洗浄液中に不溶物が浮遊していないか目視で確認を行なった。洗浄液(希釈液)中に不溶物が目視で確認されなかった場合はさらに2.5質量%のCu−BTA錯体水溶液100μLの添加を行なった。同じ添加操作を洗浄液(希釈液)中に不溶物が目視で確認されるまで繰り返し行なった。洗浄液(希釈液)中に浮遊物が目視で確認された場合、それまでに添加したCu−BTA錯体の濃度を算出し、その濃度を洗浄液のCu−BTA溶解度とした。測定結果を表2に示す。
【0051】
実施例2
成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、成分(C)としてRLM−100を成分(D)水と混合して、表1に示す組成の実施例2の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0052】
実施例3
成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、成分(C)としてECT−7、その他成分として酢酸及びTMAHを成分(D)水と混合して、表1に示す組成の実施例3の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0053】
実施例4
成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、成分(C)としてECT−7、その他成分として酢酸及びTMAHを成分(D)水と混合して、表1に示す組成の実施例4の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0054】
比較例1
成分(B)を含まず、成分(A)としてクエン酸、成分(C)としてRLM−100を成分(D)水と混合して、表1に示す組成の比較例1の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0055】
比較例2
成分(C)を含まず、成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、その他成分として酢酸及びTMAHを成分(D)水と混合して、表1に示す組成の比較例2の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0056】
比較例3
成分(C)を含まず、成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、その他成分として酢酸及びTMAHを成分(D)水と混合して、表1に示す組成の比較例3の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0057】
比較例4
成分(C)の代わりに成分(C’)カルボン酸型ノニオン性界面活性剤であるTDA−400−75を使用し、成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBSを成分(D)水と混合して、表1に示す組成の比較例4の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0058】
比較例5
成分(C)を含まず、成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBSを成分(D)水と混合して、表1に示す組成の比較例5の半導体基板洗浄原液を調製した。次いで、該洗浄液原液に水を加え、40倍希釈した半導体基板洗浄液(希釈液)を調整した。洗浄液原液及び希釈液の組成を表1に示す。
得られた洗浄液を用いて、実施例1と同様の方法で各測定を行なった。測定結果を表2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表2において、ゼータ電位、エッチレート、ラフネス、接触角測定及びCu−BTA溶解度の評価基準は以下の通りである。
(ゼータ電位)
○:−40mV未満
△:−40mV以上−20mV以下
×:−20mV以上
(エッチレート)
○:0.03nm/min未満
△:0.03nm/min以上0.05nm/min未満
×:0.05nm/min以上
(ラフネス測定結果)
○:1.7nm未満
△:1.7nm以上3nm未満
×:3nm以上
(接触角測定値)
○:40度未満
△:40度以上50度未満
×:50度以上
(Cu−BTA溶解度)
○:500mg/L以上
△:400mg/L以上、500mg/L未満
×:400mg/L未満
【0062】
実施例1〜3では成分(A)としてクエン酸、成分(B)としてDBS、成分(C)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸(日光ケミカルズ社 NIKKOL ECT−7又は日光ケミカルズ社 AKYPO RLM−100)を含む洗浄液において、ゼータ電位、エッチレート、ラフネス、接触角、Cu−BTA溶解度を測定した際に、測定結果がすべて○で表わされ、良好な結果が得られた。
実施例4では成分(A)、成分(B)及び成分(C)が含有されてはいるが、成分(B)と成分(C)との質量比率[成分(B)/成分(C)]が0.02であることから、ゼータ電位の低下の程度はあまり大きくない。
【0063】
比較例1では成分(B)が含有されていない。エッチレート、ラフネス、接触角、Cu−BTA溶解度の測定項目では良好な結果が得られているが、ゼータ電位の低下が起こっていない。
比較例2では成分(C)が含有されていない。エッチレートの低下も起こっていないが、その他の測定項目でも良好な結果が得られていない。
比較例3では40倍希釈した洗浄液のpHを3.2に設定することでゼータ電位の測定結果は良好となったが、成分(C)が含有されておらず、その他の測定項目で良好な結果が得られていない。
【0064】
比較例4では成分(A)、成分(B)と共に、成分(C)の代わりとしての成分(C’)カルボン酸型ノニオン性界面活性剤(TDA−400−75)を含有している。成分(C’)は、成分(C)であるカルボン酸型アニオン性界面活性剤と化学構造が類似しているものの、測定項目で良好な結果が得られていない。
比較例5では成分(A)、成分(B)以外の成分が含有されておらず、すべての測定項目で良好な結果が得られていない。
【0065】
以上の結果から、本発明の洗浄液を用いることで、Cu配線、絶縁膜層に悪影響を与えることなく、コロイダルシリカのゼータ電位を著しく低下させることができる。Cu配線への著しい腐食を起こすことなく、微粒子の再付着防止効果を持つことが明らかである。また、微粒子の再付着を防ぐことでCMP工程の後に洗浄を行った後の半導体基板上に残る微粒子が減ることは明らかである。つまり、Cu配線、絶縁膜層に悪影響を与えることなく、コロイダルシリカのゼータ電位の著しい低下を引き起こすことで、半導体基板の優れた清浄効果が奏されることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の半導体デバイス用基板洗浄液は、半導体デバイス用基板表面を腐食することなく、基板に付着した微粒子や有機汚染、金属汚染を同時に除去することが可能であり、水リンス性も良好であることから、本発明は半導体デバイスやディスプレイデバイスなどの製造工程における汚染半導体デバイス用基板の洗浄処理技術として、工業的に非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)〜(D)を含有してなることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
(A)ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸
(B)スルホン酸型アニオン性界面活性剤
(C)カルボン酸型アニオン性界面活性剤
(D)水
【請求項2】
成分(A)が、カルボキシル基を2以上且つヒドロキシ基を1以上有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項3】
成分(A)が、炭素数2〜10の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項4】
成分(A)が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項5】
成分(B)が、アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、アルキルメチルタウリン酸及びその塩、並びにスルホコハク酸ジエステル及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項6】
成分(C)が、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
R−O−(AO)m−(CH2n−COOH (1)
(但し、Rは炭素数8〜15の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、AOはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基であり、mは3〜30であり、nは1〜6である。)
【請求項7】
成分(A)が、5〜30質量%、成分(B)が、0.01〜10質量%、成分(C)が、0.01〜10質量%の濃度で含有されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項8】
成分(A)が、0.03〜3質量%、成分(B)が、0.0001〜1質量%、成分(C)が、0.0001〜1質量%の濃度で含有されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項9】
成分(B)と成分(C)との質量比率[成分(B)/成分(C)]が、1/15〜1.5/1の範囲内であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項10】
水/洗浄液の質量比率を40として測定した一次粒径が80nmのコロイダルシリカのゼータ電位が、−30mV以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板洗浄液を用いて、半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄方法。
【請求項12】
半導体デバイス用基板が基板表面にCu配線と低誘電率絶縁膜を有し、かつ、化学的機械的研磨を行った後の前記半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする請求項11記載の半導体デバイス用基板の洗浄方法。

【公開番号】特開2012−74678(P2012−74678A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174022(P2011−174022)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】