説明

半導体圧力センサ

【課題】ダイヤフラムの破壊耐圧を向上させることのできる半導体圧力センサを得ることを目的とする。
【解決手段】厚さ方向の一面に開口する凹部2が形成された第1半導体基板3と、第1半導体基板3の一面と相対して配置される第2半導体基板4と、第1半導体基板3と第2半導体基板4との間に介装され、凹部2と第2半導体基板4との間を連通する貫通穴5が形成された第1酸化シリコン膜6と、を備え、貫通穴5及び凹部2の開口と相対する側から見て、貫通穴5の縁部の少なくとも一部が、凹部2の開口縁部の内側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧力センサ用半導体基板は、以下の手順で製造される。
まず、単結晶シリコン基板からなる第1半導体基板の一面側に所定の厚さの酸化膜を形成し、酸化膜の厚み方向に穴方向の一致する貫通穴を、酸化膜の一部を除去して形成する。次いで、貫通穴の内周面と面一の内周面を有する凹部を第1半導体基板に形成する。次いで、単結晶シリコン基板からなる第2半導体基板を、酸化膜の表面に露出する貫通穴を覆うように、第1半導体基板に酸化膜を介して接合する。また、第2半導体基板を薄肉化して凹部と相対する第2半導体基板の部位にダイヤフラムを形成し、さらに、ダイヤフラムの表面に歪検出素子を形成することで、従来の圧力センサ用半導体基板が製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4214567号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧力センサ用半導体基板では、第1半導体基板に形成された凹部の開口縁部の位置と、酸化膜に形成された貫通穴の縁部の位置が一致している。ここで、酸化膜には、残留応力が生じているが、酸化膜に働く残留応力に起因した応力の大きさは、貫通穴の縁部で不連続となる。また、圧力がダイヤフラムに外部から付加されて、ダイヤフラムが撓むと、凹部の開口縁部に大きな応力が生じる。従来の圧力センサ用半導体基板のように、凹部の開口縁部の位置と貫通穴の縁部の位置とが一致していると、ダイヤフラムが撓む際にダイヤフラムに発生する応力に、貫通穴の縁部を境界として不連続となる応力が重畳される。このため、圧力がダイヤフラムに外部から付加されたときのダイヤフラムの破壊耐圧が著しく低下する。
【0005】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、ダイヤフラムの破壊耐圧を向上させることのできる半導体圧力センサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の半導体圧力センサは、厚さ方向の一面に開口する凹部が形成された第1半導体基板と、第1半導体基板の一面と相対して配置される第2半導体基板と、第1半導体基板と第2半導体基板との間に介装され、凹部と第2半導体基板との間を連通する貫通穴が形成された第1絶縁膜と、を備え、貫通穴及び凹部の開口と相対する側から見て、貫通穴の縁部の少なくとも一部が、凹部の開口縁部の内側に位置している。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る半導体圧力センサによれば、第1絶縁膜に形成された貫通穴及び第1半導体基板に形成された凹部の開口と相対する側から見て、貫通穴の縁部の少なくとも一部が、凹部の開口縁部より内側に位置している。これにより、凹部の開口縁部と貫通穴の縁部とが離間して配置されるので、第2半導体基板が撓む際に第2半導体基板に発生する応力に、貫通穴の縁部を境界として不連続となる応力が重畳されることがなくなり、圧力が凹部と相対する第2半導体基板の部位に外部から付加されたときの第2半導体基板の破壊耐圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の準備工程を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の絶縁膜・凹部形成工程を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の基板連結工程を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法のダイヤフラム形成工程を説明する図である。
【図6】はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の歪検出素子形成・後処理工程を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの要部拡大断面図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの破壊耐圧と(第1酸化シリコン膜の延出量)/(第1酸化シリコン膜の厚さ)との関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る半導体圧力センサの断面図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る半導体圧力センサの断面図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る半導体圧力センサの連結基板酸化処理工程を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法のダイヤフラム形成工程を説明する図である。
【図13】この発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の歪検出素子形成・後処理工程を説明する図である。
【図14】この発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの断面図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の絶縁膜・凹部形成工程を説明する図である。
【図16】この発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の半導体圧力センサの製造方法の酸化膜選択除去工程を説明する図である。
【図17】この発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の基板連結工程を説明する図である。
【図18】この発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法のダイヤフラム形成工程を説明する図である。
【図19】この発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の歪検出素子形成・後処理工程を説明する図である。
【図20】この発明の実施の形態5に係る半導体圧力センサの断面図である。
【図21】この発明の実施の形態6に係る半導体圧力センサの断面図である。
【図22】この発明の実施の形態7に係る半導体圧力センサ付き内燃機関装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの断面図である。
【0011】
図1において、半導体圧力センサ1Aは、厚さ方向の一面に開口する凹部2が形成された第1半導体基板3と、一面を凹部2と逆側に向け、他面を凹部2に向けて配置される第2半導体基板4と、第1半導体基板3と第2半導体基板4との間に介装され、凹部2と第2半導体基板4とを連通する貫通穴5が形成された第1絶縁膜としての第1酸化シリコン膜6と、第2半導体基板4の一面側に設けられる歪検出素子7と、を備える。
また、図示しないが、半導体圧力センサ1Aは、歪検出素子7への電力供給や、歪検出素子7から出力される電気信号を外部に取り出すための配線や電極、及びこれらを保護するための保護膜などを有している。
【0012】
第1半導体基板3及び第2半導体基板4のそれぞれは、単結晶シリコン基板が用いられ、このように単結晶シリコン基板の間に酸化シリコン膜を備えた構造は一般にSOI(Silicon On Insulator)と呼ばれる。
【0013】
凹部2は、深さ方向を第1半導体基板3の厚み方向に一致させて形成され、深さ方向に直交する断面の外形が正方形に作製されている。また、第1酸化シリコン膜6の厚さ方向は、第1半導体基板3及び第2半導体基板4の厚み方向に一致し、貫通穴5の穴方向は、第1酸化シリコン膜6の厚み方向に一致している。
【0014】
そして、貫通穴5及び凹部2の開口と相対する側から見て、貫通穴5の縁部は、全域で凹部2の開口縁部より内側に位置し、貫通穴5と凹部2の開口縁部との間の距離は、所定の値になっている。つまり、第1酸化シリコン膜6は、所定の長さだけ、凹部2の開口縁部から延出されている。
【0015】
また、基準圧力室8が、凹部2と貫通穴5を構成する壁面、及び貫通穴5の開口を覆う第2半導体基板4の壁面に囲まれる空間により形成されている。また、凹部2と相対する第2半導体基板4の領域が、ダイヤフラム9を構成する。即ち、第2半導体基板4内のダイヤフラム9とその他の領域との境界は、凹部2の開口縁部と相対する第2半導体基板4の枠で定義される。なお、ダイヤフラム9の外周縁部の一部は、第1酸化シリコン膜6を介して凹部2と相対する。
【0016】
また、歪検出素子7が、凹部2と逆側に向けられたダイヤフラム9の一面に互いに離間して複数形成されている。
ダイヤフラム9に外部から圧力が加えられると、ダイヤフラム9が撓み、主にダイヤフラム9の境界側の部位が歪む。
歪検出素子7は、ダイヤフラム9の歪み量に応じて抵抗が変化する抵抗素子を有し、抵抗の変化に応じた電気信号を出力するように構成されている。
つまり、ダイヤフラム9は、基準圧力室8と外部の圧力との差圧に応じて撓むので、半導体圧力センサ1Aは、ダイヤフラム9の一面(凹部2と逆側の面)に付加される圧力と基準圧力室8との差圧に応じた圧力を検出する。なお、基準圧力室8内の圧力が真空である場合、ダイヤフラム9に付加された圧力を絶対圧として測定することが可能となる。
【0017】
以上のように構成された半導体圧力センサ1Aによれば、貫通穴5及び凹部2の開口と相対する側から見て、貫通穴5の縁部の全域が、凹部2の開口縁部より内側に位置している。ここで、第1酸化シリコン膜6では残留応力が生じており、第1酸化シリコン膜6の残留応力に起因した応力の大きさは、貫通穴5の縁部で不連続に変化する。半導体圧力センサ1Aでは、凹部2の開口縁部と貫通穴5の縁部とが離間して配置されるので、ダイヤフラム9に外部から付加される圧力と基準圧力室8内の圧力の差に起因してダイヤフラム9が撓んだときにダイヤフラム9に生じる応力に、貫通穴5の縁部を境界として不連続となるように生じる第1酸化シリコン膜6の応力が重畳されることがなくなる。これにより、ダイヤフラム9への局所的な応力集中が抑制されてダイヤフラム9の破壊耐圧が大きくなるので、ダイヤフラム9が破壊されることを未然に防止できる。
【0018】
次いで、半導体圧力センサ1Aの製造方法について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の準備工程を説明する図、図3のこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の絶縁膜・凹部形成工程を説明する図、図4はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の基板連結工程を説明する図、図5はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法のダイヤフラム形成工程を説明する図、図6はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の歪検出素子形成・後処理工程を説明する図である。
【0019】
準備工程では、図2に示されるように、第1半導体素地基板10及び第2半導体素地基板11を用意する。
第1半導体素地基板10及び第2半導体素地基板11は、面方位が100の単結晶シリコン基板である。第1半導体素地基板10の導電型、及び抵抗率は、特に限定されるものではないが、例えば、第1半導体素地基板10は、P型の導電型を有し、かつ、1〜10Ω・cm程度の抵抗率を有するものが好適である。第2半導体素地基板11としては、導電型がN型であり、1〜10Ω・cm程度の抵抗率を有するものが好適である。
【0020】
絶縁膜・凹部形成工程では、図3に示されるように、第1半導体素地基板10の表面を熱酸化法によって酸化する。これにより、第1半導体素地基板10は、第1半導体基板3と、第1半導体基板3の表面全域に構成される第1酸化シリコン膜6からなる半導体/絶縁膜基板12となる。第1酸化シリコン膜6の厚さは0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.2〜3.0μmである。第1酸化シリコン膜6の厚さを0.2〜3.0μmとすることで、水分が第1酸化シリコン膜6の表面に吸収されやすくなる。
【0021】
次いで、第1半導体基板3の厚み方向の一面側の第1酸化シリコン膜6の所定部位を、写真製版技術とプラズマエッチング技術を用いて除去し、正方形の内形形状を有する貫通穴5を形成する。
【0022】
さらに、貫通穴5を介して第1半導体基板3にエッチングを施し、第1半導体基板3の一面に開口する凹部2を形成する。
凹部2の形成には、パーフルオロシクロブタンガスと六フッ化硫黄ガスとを交互にエッチング対称領域に導入することで、第1半導体基板3の厚み方向へのエッチングを行うことが可能な所謂ボッシュプロセスを採用する。第1半導体基板3のエッチング条件を調整することで、凹部2の内形の一辺を第1酸化シリコン膜6の貫通穴5の一辺より1〜5μm程度大きくする。なお、凹部2の形成には、ボッシュプロセスを採用するものに限定されず、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどのアルカリ溶液によるウェットエッチングを採用してもよい。
【0023】
基板連結工程では、図4に示されるように、第2半導体素地基板11が、貫通穴5を覆い、第1酸化シリコン膜6を介して第1半導体基板3と相対するように、以下に説明する直接接合法によって、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを連結する。
【0024】
半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11との連結作業では、まず、98%の濃度の硫酸と30%の濃度の過酸化水素水とを容積比で4:1の割合で混合して130℃に加熱した混合溶液を用意し、半導体/絶縁膜基板12をこの混合溶液により約10分間洗浄処理を施した後、純水にて洗浄する。これにより、半導体/絶縁膜基板12の表面は親水化される。
【0025】
次に、室温下にて、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを、第2半導体素地基板11が貫通穴5を覆うように互いに密接させて仮固定する。
【0026】
半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11との仮固定は、大気圧〜真空の圧力環境下で行えばよいが、後工程で形成される基準圧力室8を真空にする場合には、真空中で仮固定を行うのが好ましい。
【0027】
そして、仮固定した半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11に対してアニール処理を行い、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを接合する。これにより、基準圧力室8が、凹部2と貫通穴5の壁面、及び貫通穴5の開口を覆う第2半導体素地基板11の壁面に囲まれる空間により形成される。
【0028】
半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを強固に接合するためには、アニール処理の条件は、1000〜1200℃の温度範囲で行うのが好適であり、また処理時間は、2時間以上、より望ましくは6時間以上がよい。また、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11の表面の酸化を行うため、酸素や水蒸気を導入した環境下でアニール処理を行うのが好ましい。なお、アニール処理により形成される酸化膜の図示は省略している。
【0029】
ダイヤフラム形成工程では、図5に示されるように、第2半導体素地基板11を研削、化学機械研磨などの技術を用いて所定の厚さまで薄肉化する。第2半導体基板4が、薄肉化された第2半導体素地基板11により構成される。また、ダイヤフラム9が、凹部2の開口と相対する第2半導体基板4の領域により形成される。
【0030】
第2半導体素地基板11の研削・研磨時は、大気圧環境下で行われるので、基準圧力室8が真空の場合、第2半導体素地基板11の厚みが薄くなるほどダイヤフラム9の形成対称となる第2半導体素地基板11の部位(以下、ダイヤフラム形成領域とする)が撓み、形成されたダイヤフラム9の厚みがばらついてしまう可能性がある。
【0031】
ダイヤフラム9の薄肉化の限界は、このダイヤフラム9の厚みのばらつきやダイヤフラム9の撓み量により決定される。ダイヤフラム9の厚みのばらつき及びダイヤフラム9の撓み量は、1μm以下であることが望ましい。半導体圧力センサ1Aが測定する圧力範囲にもよるが、例えば、半導体圧力センサ1Aが0〜1気圧の圧力の範囲を測定するのに用いられる場合、外形が一辺500μmの正方形で、厚さが20μmのダイヤフラム9であれば、ダイヤフラム9の厚みのバラつきや撓み量を1μm以下にすることができる。
【0032】
歪検出素子形成後処理工程では、まず、図6に示されるように、歪検出素子7をダイヤフラム9の所定の位置に以下に説明するように形成する。
例えば、歪検出素子7は、N型である第2半導体基板4にボロンなどのP型の不純物を注入して拡散することで第2半導体基板4に形成することが好ましい。
【0033】
なお、可視光では、凹部2が見えないため、ダイヤフラム9の境界を判別しづらい。そこで、1000nm以上の波長を含む白色光を第1半導体基板3、第1酸化シリコン膜6、及び第2半導体基板4に照射し、透過した光または反射した光を赤外線カメラで撮像することで、ダイヤフラム9の境界を確認することができる。
これにより、歪検出素子7を、ダイヤフラム9の中央部や、外部からダイヤフラム9に付加される圧力が、ダイヤフラム9を撓ませる方向に働いたときに、最も歪み量が大きくなるダイヤフラム9の外周縁部側の領域の正確な位置に形成することができるようになる。
【0034】
そして、図示しないが、歪検出素子7への電力供給や、歪検出素子7から出力される電気信号を外部に取り出すための配線や電極、及びこれらを保護するための保護膜などを形成した後、一体化されている第1半導体基板3、第1酸化シリコン膜6、及び第2半導体基板4を所定の形状にダイシングする。さらに、第1半導体基板3の他面側の第1酸化シリコン膜6は必要に応じて削除することで、半導体圧力センサ1Aの製造が完了する。
【0035】
半導体圧力センサ1Aを上記のように構成したことによる効果を試験により確認したので以下にその内容を具体的に説明する。
図7はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの要部拡大断面図、図8はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの破壊耐圧と(第1酸化シリコン膜の延出量)/(第1酸化シリコン膜の厚さ)との関係を示す図である。
【0036】
図7に示されるように、半導体圧力センサ1Aの凹部2の開口縁部からの第1酸化シリコン膜6の貫通穴5の縁部までの距離、言い換えれば、凹部2の開口縁部からの第1酸化シリコン膜6の延出量をX、第1酸化シリコン膜6の厚さをTとする。
また、図示しないが、以下に説明する比較用半導体圧力センサを用意した。比較用半導体圧力センサとしては、貫通穴5及び凹部2の開口と相対する側から見て、貫通穴5の縁部が、凹部2の開口縁部に一致するもの、貫通穴5の縁部が、凹部2の開口縁部の外側に位置するものを用意した。
説明の便宜上、以下では、比較用半導体圧力センサの凹部2の開口縁部から貫通穴5の縁部までの距離を−Xとする。
【0037】
そして、X/Tをパラメータとして、半導体圧力センサ1A及び比較用半導体圧力センサのダイヤフラム9の破壊耐圧を測定した。
比較用半導体圧力センサは、X/Tが0、及び約−20、及び−40のものを用意し、半導体圧力センサ1Aは、X/Tが約20、40、60、80、及び100のものを用意した。
【0038】
破壊耐圧は、ダイヤフラム9のサイズと厚さ、及び第1酸化シリコン膜6の厚さにより変化する。なお、ダイヤフラム9のサイズとは、ダイヤフラム9の厚み方向に垂直な断面の外形のサイズをいう。
各半導体圧力センサとも、各X/Tの値ごとに、ダイヤフラム9のサイズと厚さ、及び第1酸化シリコン膜6の厚さの条件の異なる複数を用意している。このとき、各半導体圧力センサとも、ダイヤフラム9の外形の一辺は200〜2000μmの範囲内に、ダイヤフラム9の厚さは5〜50μmの範囲内に、第1酸化シリコン膜6の厚さTは0.1〜5.0μmの範囲内にあるものを用いている。
【0039】
破壊耐圧の測定結果を図8に示す。
図8において、各半導体圧力センサで測定された破壊耐圧の値は、X/Tが0である比較用半導体圧力センサの破壊耐圧の値で規格化したものを相対値として示している。なお、X/Tが同じ値である複数の半導体圧力センサで測定された破壊耐圧の値の平均値を◆で図示している。
【0040】
X/Tが0の比較用半導体圧力センサの破壊耐圧が最小となり、半導体圧力センサ1A、及び比較用半導体圧力センサとも、X/Tの絶対値が大きくなるにつれて、壊耐耐圧が連続的に大きくなった。そして、X/Tが0の比較用半導体圧力センサの破壊耐圧は、半導体圧力センサ1Aのダイヤフラム9の破壊耐圧の最大値の略半分の値である。
【0041】
X/T=0の比較用半導体圧力センサの絶縁耐圧と比較して、半導体圧力センサ1Aの絶縁耐圧は、X/Tの値が15程度になると1.5倍となり、X/T=50付近で2倍に達した。また、X/Tが50を超えると、X/Tの増大に伴う半導体圧力センサ1Aの破壊耐圧の増加は飽和に向かった。
【0042】
半導体圧力センサ1Aの破壊耐圧が、X/Tの値に関わらず、X/Tが0の比較用半導体圧力センサの破壊耐圧より大きくなるのは、圧力がダイヤフラム9に外部から付加されてダイヤフラム9が撓む際にダイヤフラム9に発生する応力に、貫通穴5の縁部を境界として不連続となるように生じる第1酸化シリコン膜6の応力が重畳されることがなくなるためであると考えられる。そして、X/Tが50以上では、X/Tの値にかかわらず略一定の破壊耐圧が測定されたが、これは、ダイヤフラム9への局所的な応力集中が大きく抑制されるので、ダイヤフラム9への局所的な応力集中を避けた条件下で本来発揮されるダイヤフラム9の破壊耐圧の値が測定結果に表れたものと考えられる。
【0043】
また、半導体圧力センサ1AのX/Tが0に近づくほど、破壊耐圧が低下するのは、貫通穴5の縁部が、凹部2の開口縁部と相対するダイヤフラム9の外縁部と一致したときに、ダイヤフラム9に外部から圧力を付加したときに発生する応力が、最もダイヤフラム9の境界側の部位に集中しやすくなるためと思料される。
【0044】
一方、X/T<0の比較用半導体圧力センサでも、X/T=0の比較用半導体圧力センサと比較してダイヤフラム9の破壊耐圧が大きくなった。
しかしながら、第1半導体基板3及び第2半導体基板4の外形が一定であると仮定すると、X/Tの絶対値が0より大きくなるほど、第1半導体基板3及び第2半導体基板4の第1酸化シリコン膜6を介した接合面積が減少する。このため、X/Tを<0とすることは、第1半導体基板3及び第2半導体基板4との間の第1酸化シリコン膜6を介した接合強度の確保、及び基準圧力室8の気密性の確保の観点で好ましくない。
また、第1半導体基板3及び第2半導体基板4の間の一定の接合面積を確保する場合には、第1半導体基板3及び第2半導体基板4の外形サイズが大きくなるので、やはり好ましくない。
【0045】
以上まとめると、X/T>0とすることで、第1半導体基板3及び第2半導体基板4の間の接合面積を減少させることなく、ダイヤフラム9の破壊耐圧を向上させることができるという効果が得られる。また、X/T>50の領域では、X/Tの増大に伴うダイヤフラム9の破壊耐圧の増大が飽和される。また、X/T>50となる場合、絶縁膜・凹部形成工程におけるエッチング時間に長時間を要し、第1酸化シリコン膜6を所望の寸法通りに形成することが難しくなる。このため、半導体圧力センサ1AのX/Tは、0<X/T≦50の範囲に設定するのがより好ましい。
【0046】
なお、この実施の形態1では、貫通穴5及び凹部2の開口と相対する側から見て、貫通穴5の縁部の全域が、凹部2の開口縁部より内側に位置し、貫通穴5の縁部全域が、凹部2の開口縁部から所定の距離Xだけ離間した位置にあるものとして説明したが、貫通穴5の縁部の少なくとも一部が、凹部2の開口縁部の内側に位置していれば、ダイヤフラム9の破壊耐圧の向上効果が得られる。
【0047】
また、第1半導体基板3及び第2半導体基板4は、単結晶シリコン基板であるものとして説明したが、第1半導体基板3及び第2半導体基板4は、単結晶シリコン基板に限定されず、シリコンカーバイド基板などを用いてもよい。また、第1絶縁膜は第1酸化シリコン膜6であるものとして説明したが、第1酸化シリコン膜6に限定されず、シリコンカーバイド絶縁膜などを用いてもよい。
【0048】
また、ダイヤフラム9の断面形状、及び貫通穴5の内形形状は、正方形であるものとして説明したが、円形など、他の形状であっても上記と同様の効果がえられる。
【0049】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係る半導体圧力センサの断面図である。
なお、図9において、上記実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図9において、半導体圧力センサ1Bは、第2半導体基板4と第1酸化シリコン膜6に形成された貫通穴5を覆う第2絶縁膜としての第2酸化シリコン膜15が、第2半導体基板4の凹部側の面に設けられている。つまり、第2酸化シリコン膜15が、ダイヤフラム9と凹部2との間に配置されるように、第2半導体基板4の第1酸化シリコン膜6側の面に設けられている。
半導体圧力センサ1Bの他の構成は、半導体圧力センサ1Aと同様である。
【0050】
半導体圧力センサ1Bの製造方法を以下に説明する。
半導体圧力センサ1Bの製造方法は、基板連結工程を実施に先立って、第2半導体素地基板酸化工程を実施する他は、半導体圧力センサ1Aの製造方法と同様である。
第2半導体素地基板酸化工程は、第2半導体素地基板11の表面全域に第2酸化シリコン膜15が形成されるように第2半導体素地基板11を酸化処理するものである。
【0051】
以下、説明の便宜上、酸化処理された第2半導体素地基板11を第2半導体素地基板11として説明する。
基板連結工程では、第2半導体素地基板11の一面側を第1酸化シリコン膜6と逆側に向け、第2半導体素地基板11の他面を、第1酸化シリコン膜6側上に配置されるように、第2酸化シリコン膜15を形成した第2半導体素地基板11を配置する。これにより、第2酸化シリコン膜15が第1酸化シリコン膜6の貫通穴5を覆うように設けられる。
以下、半導体圧力センサ1Aの製造方法と同様の手順で、半導体圧力センサ1Bを製造することができる。
【0052】
この実施の形態2によれば、第2酸化シリコン膜15が、ダイヤフラム9と凹部2との間に配置されるように、第2半導体基板4の第1半導体基板3側の面に設けられている。第2酸化シリコン膜15にも、第1酸化シリコン膜6と同様に残留応力が発生しており、第1酸化シリコン膜6と第2酸化シリコン膜15とが接するように配置されることから、第1酸化シリコン膜6の残量応力に起因した応力の貫通穴5の縁部での不連続性が、大幅に軽減される。貫通穴5の縁部での応力の不連続性が大幅に軽減されることから、外部からダイヤフラム9に加えられた圧力と基準圧力室8内の圧力の差によってダイヤフラム9が撓む際、ダイヤフラム9に発生する応力は、ダイヤフラム9の撓みに起因するもののみに抑制することができる。これにより、ダイヤフラム9の破壊耐圧を一層向上させることができる。
【0053】
なお、この実施の形態2では、第2絶縁膜は第2酸化シリコン膜15であるものとして説明したが、第2酸化シリコン膜15に限定されず、シリコンカーバイド絶縁膜などを用いてもよい。
【0054】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3に係る半導体圧力センサの断面図である。
なお、図10において、上記実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図10において、半導体圧力センサ1Cは、第3絶縁膜としての第3酸化シリコン膜16が、基準圧力室8の表面、言い換えれば、凹部2と貫通穴5を構成する壁面、及び貫通穴5の開口を覆う第2半導体基板4の壁面の全域に形成されている。
半導体圧力センサ1Cの他の構成は、半導体圧力センサ1Aと同様である。
【0055】
以上のように構成された半導体圧力センサ1Cによれば、凹部2と貫通穴5を構成する壁面、及び貫通穴5の開口を覆う第2半導体基板4の壁面の全域に第3酸化シリコン膜16が形成されている。第3酸化シリコン膜16が、凹部2の表面層に形成されることで、ダイヤフラム9に圧力がかかったときに、応力が集中する領域が、第1酸化シリコン膜6を介した第1半導体基板3及び第2半導体基板4の接合界面に対してずらされる。
【0056】
ここで、第1酸化シリコン膜6を介した第1半導体基板3及び第2半導体基板4の接合界面には、第1半導体基板3及び第2半導体基板4のシリコンの結晶格子定数の不整合に起因して、残留応力が発生している。このような第1半導体基板3と第2半導体基板4の接合界面に、ダイヤフラム9への圧力の付加によって大きな応力が集中すると、第2半導体基板4に発生したクラックがダイヤフラム9へ進展して、ダイヤフラム9の破壊につながることあがる。
【0057】
半導体圧力センサ1Cでは、ダイヤフラム9に圧力がかかったときに、応力が集中する領域が、第1酸化シリコン膜6を介した第1半導体基板3及び第2半導体基板4の接合界面からずれるので、第2半導体基板に発生したクラックが進行して、ダイヤフラム9が破壊されることが防止される。つまり、ダイヤフラム9の破壊耐圧を向上させることができる。
【0058】
半導体圧力センサ1Cの製造方法を以下に説明する。
図11はこの発明の実施の形態3に係る半導体圧力センサの連結基板酸化処理工程を説明する図、図12はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法のダイヤフラム形成工程を説明する図、図13はこの発明の実施の形態1に係る半導体圧力センサの製造方法の歪検出素子形成・後処理工程を説明する図である。
なお、図11〜図13において、上記実施の形態1と同一または相当部分には、同一符号を付し、その説明は省略する。
半導体圧力センサ1Cの製造方法は、準備工程、絶縁膜・凹部形成工程、基板連結工程、連結基板酸化処理工程、ダイヤフラム形成工程、及び歪検出素子形成・後処理工程を有する。
【0059】
準備工程、及び絶縁膜・凹部形成工程は、半導体圧力センサ1Aの製造方向の準備工程、絶縁膜・凹部形成工程と同様である。基板連結工程では、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを仮固定する前に、予め、半導体/絶縁膜基板12を、水蒸気を含む環境下に配置し、凹部2の内壁面に水分を含ませておく。
【0060】
次いで行う連結基板酸化処理工程では、図11に示されるように、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11に対してアニール処理を高温にて行う。これにより、凹部2の内壁面に含まれた水分により、凹部2と貫通穴5の壁面、及び貫通穴5の開口を覆う第2半導体基板4の壁面が酸化されて第3酸化シリコン膜16が形成され、第3酸化シリコン膜16の内側に構成される空間が、基準圧力室8となる。
【0061】
以下、図12及び図13に示されるように、半導体圧力センサ1Aの製造方法と同様、ダイヤフラム形成工程、及び歪検出素子形成・後処理工程を実施することで、半導体圧力センサ1Cを得ることができる。
【0062】
ここで、基板連結工程前に、予め半導体/絶縁膜基板12の凹部2及び貫通穴5の内壁面に第3酸化シリコン膜16に相当する酸化膜を構成しておくことも考えられる。しかし、予め凹部2の表面に酸化膜を形成しておくと、酸化膜に発生する応力によって第1半導体基板3に歪みが生じたり、凹部2の開口縁部近傍での第1半導体基板3の応力が不均一となることに起因して、第1半導体基板3と第2半導体基板4の間との接合不良が発生したりする場合がある。
【0063】
また、アニール処理により、第2半導体素地基板11と凹部2に酸化膜を形成した半導体/絶縁膜基板12とを接合する際、半導体/絶縁膜基板12の凹部2側の端部近傍の部位と、当該部位と相対する第2半導体素地基板11の部位とで、酸化膜の成長速度が異なる。これに起因して、半導体/絶縁膜基板12の凹部2側の端部近傍の部位が隆起し、第2半導体素地基板11が、この部分のみと接触し、半導体/絶縁膜基板12の他の表面に接触せずに、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とが接合不良を起こす恐れがある。
半導体圧力センサ1Cの製造方法によれば、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを予め仮固定した後に第3酸化シリコン膜16を形成するので、この問題を回避可能できる。
【0064】
実施の形態4.
図14はこの発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの断面図である。
なお、図14において、上記実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0065】
図14において、半導体圧力センサ1Dは、第1半導体基板3に一体に形成されて、基準圧力室8内に設けられるストッパ17を有する他は半導体圧力センサ1Aと同様に構成されている。
【0066】
ストッパ17は、ダイヤフラム9の中心と相対する凹部2の底部に突設されている。
ここで、半導体圧力センサ1Dが測定する圧力の範囲をP1〜P2とする。
そして、半導体圧力センサ1Dの周囲の気圧がP1であるときに、ストッパ17の突出端とダイヤフラム9との間に所定の隙間が形成され、かつ、半導体圧力センサ1Dの周囲の気圧がP2となってダイヤフラム9が撓んだときに、ストッパ17の突出端がダイヤフラム9と接触せず、かつ、極力ダイヤフラム9と極力接近するようになっている。
【0067】
以上のように構成された半導体圧力センサ1Dによれば、測定する圧力の範囲の最大値P2より大きな所定の圧力(外力)で、ダイヤフラム9が所定量撓まされたときに、ストッパ17がダイヤフラム9に当接される。これにより、予期せぬ過大圧力が、外部からダイヤフラム9に付加されたときでも、ダイヤフラム9が所定量より大きく撓むことが、ストッパ17により規制されるので、ダイヤフラム9が破壊されることを極力防止できる。
【0068】
次いで、半導体圧力センサ1Dの製造方法について説明する。
図15はこの発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の絶縁膜・凹部形成工程を説明する図、図16はこの発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の半導体圧力センサの製造方法の酸化膜選択除去工程を説明する図、図17はこの発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の基板連結工程を説明する図、図18はこの発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法のダイヤフラム形成工程を説明する図、図19はこの発明の実施の形態4に係る半導体圧力センサの製造方法の歪検出素子形成・後処理工程を説明する図である。
なお、図15〜図19において、上記実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
半導体圧力センサ1Dの製造方法は、準備工程、絶縁膜・凹部形成工程、基板連結工程、ダイヤフラム形成工程、及び歪検出素子形成・後処理工程を有する。
準備工程は、半導体圧力センサ1Aの製造方法の準備工程と同様である。
絶縁膜・凹部形成工程では、半導体圧力センサ1Aと同様の手法で、第1酸化シリコン膜6に貫通穴5を形成するが、図15に示されるように、貫通穴5を形成領域の中央に位置する第1酸化シリコン膜6の所定部位を島状に残す。次いで、貫通穴5を介して第1半導体基板3にエッチングを施して、凹部2を形成する。これにより、凹部2の底部から突設され、突出端に第3酸化シリコン膜16の一部を有するストッパ17が凹部2内に形成される。
【0070】
酸化膜選択除去工程では、図16に示されるように、ストッパ17の突出端に形成された第3酸化シリコン膜16の部位のみを、ドライエッチングなどにより選択的に除去する。なお、イオンミリングなどの方法を用いて、ストッパの突出端に形成されている第3酸化シリコン膜16の部位を選択的に除去してもよい。
このとき、第3酸化シリコン膜16だけでなく、ストッパ17の突出端から基端に向かって所定の領域を除去する。また、ストッパ17の突出端面は、粗面にしておく。
【0071】
次いで行う基板連結工程では、図17に示されるように、半導体圧力センサ1Aの製造方法の基板連結工程と同様、第2半導体素地基板11が、貫通穴5を覆い、第1酸化シリコン膜6を介して第1半導体基板3と相対するように、半導体/絶縁膜基板12と第2半導体素地基板11とを仮固定する。このとき、ストッパ17の突出端と第2半導体素地基板11との間には所定の隙間が形成される。
【0072】
以下、図18及び図19に示されるように、半導体圧力センサ1Aの製造方法と同様に、ダイヤフラム形成工程、及び歪検出素子形成・後処理工程を実施することで、半導体圧力センサ1Dの製造が完了する。
【0073】
以上の半導体圧力センサ1Dの製造方法によれば、ダイヤフラム形成工程では、上述したように、第2半導体素地基板11を研削、化学機械研磨により薄肉化してダイヤフラム9を形成している。
【0074】
例えば、基準圧力室8が真空の場合、第2半導体素地基板11が薄肉化するにつれて、第2半導体素地基板11のダイヤフラム形成領域が撓む。形成したダイヤフラム9を微小な圧力の検出用に用いる場合、ダイヤフラム9の厚さは特に薄くする必要がある。このため、ストッパ17を設けていない場合には、第2半導体素地基板11の厚さが、所望のダイヤフラム9の厚さに近づくと、研削時の荷重によっては第2半導体素地基板11のダイヤフラム形成領域が大きく撓む。これにより、形成したダイヤフラム9の厚さが大きくばらついてしまうことがある。また、予期せぬ過大な圧力がダイヤフラム9に付加されたときに、ダイヤフラム9の変位が規制されず、ダイヤフラム9が大きく撓んで破壊してしまう恐れがある。
【0075】
一方、半導体圧力センサ1Dの製造方法のように、ダイヤフラム形成工程の前にストッパ17を設けておくことで、第2半導体素地基板11の研削時、第2半導体素地基板11のダイヤフラム形成領域が大きく撓もうとしても、ストッパ17に当接して大きく撓むことが防止される。これにより、形成されるダイヤフラム9の厚みのばらつきを抑制することができる。さらには、ダイヤフラム9に過大な圧力が付加されても、ダイヤフラム9の撓みが抑制されるので、ダイヤフラム9が破壊されることが防止される。
【0076】
また、ストッパ17の突出端面を粗面としておくことで、半導体圧力センサ1Dの完成後、ダイヤフラム9がストッパ17に当接したときに、ストッパ17とダイヤフラム9とが密着して離れなくなることを防止できる。
【0077】
なお、この実施の形態5によれば、形成するストッパ17の数は一つであるものとして説明したが、形成するストッパ17の数は一つに限定されるものではなく、ダイヤフラム9のサイズや厚みなどに応じ、適宜ストッパ17の形成数及びストッパ17の基準圧力室8内の配置位置を設定することで、ダイヤフラム形成工程でのダイヤフラム9の厚さのばらつきを抑制したり、破壊耐圧を向上させたりすることができる場合もある。
【0078】
実施の形態5.
図20はこの発明の実施の形態5に係る半導体圧力センサの断面図である。
なお、図20において、上記実施の形態3と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図20において、半導体圧力センサ1Eは、ストッパ17の表面を含む基準圧力室8の表面全域に、第3絶縁膜としての第4酸化シリコン膜18を備える。他の構成は半導体圧力センサ1Cの構成と同様である。
【0079】
なお、半導体圧力センサ1Eの製造方法は、半導体圧力センサ1Dの製造方法において、基板連結工程とダイヤフラム形成工程の間に、半導体圧力センサ1Cの製造方法の連結基板酸化処理工程と同様の工程を追加して構成している。
【0080】
以上のように構成された半導体圧力センサ1Eによれば、第4酸化シリコン膜18に覆われたストッパ17の先端とダイヤフラム9との間の隙間を第1酸化シリコン膜6の厚さよりさらに小さくすることが可能である。
【0081】
ここで、半導体圧力センサ1Eが、測定する圧力範囲の最大値P2が付加される環境下におかれてダイヤフラム9が撓んだときに、ダイヤフラム9が貫通穴5より凹部2の底部側に突出されないことは多々ある。
【0082】
半導体圧力センサ1Eが、圧力範囲の最大値P2が付加される環境下におかれてダイヤフラム9が撓んだときでも、ダイヤフラム9と接触しないように、ストッパ17の突出端を貫通穴5内に挿入させることで、以下の効果が得られる。
【0083】
即ち、ダイヤフラム形成工程で、第2半導体素地基板11を研削するときのダイヤフラム形成領域の撓みをさらに抑制することができるので、ダイヤフラム9の厚みのばらつきを一層小さくすることができる。また、過大な圧力でダイヤフラム9が外部から押圧されて撓んだときに、ダイヤフラム9が大きく撓むことが一層防止されるので、破壊耐圧をより向上させることができる。
【0084】
実施の形態6.
図21はこの発明の実施の形態6に係る半導体圧力センサの断面図である。
なお、図21において、上記実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0085】
図21において、半導体圧力センサ1Fは、凹部2の底部と第1半導体基板3の他面とを連通する連通穴20が形成されている。他の構成は、半導体圧力センサ1Aの構成と同様である。
【0086】
次いで、半導体圧力センサ1Fの製造方法について説明する。
半導体圧力センサ1Fの製造方法は、絶縁膜・凹部形成工程の後に、連通穴形成工程を追加する他は、第1半導体圧力センサ1Aの製造方法と同様である。
【0087】
連通穴形成工程では、半導体/絶縁膜基板12の他面側の第1酸化シリコン膜6を写真製版技術とプラズマエッチング技術を用いて除去し、凹部2の底部と第1半導体基板3の他面とを連通する連通穴20を、絶縁膜・凹部形成工程での凹部の形成方法と同様、ボッシュプロセスを用いて形成する。ボッシュプロセスを用いて連通穴20を形成することで、連通穴20の穴方向を第1半導体基板3の厚み方向に一致させて第1半導体基板3をエッチングできるので、連通穴20の開口を小さくでき、第1半導体基板3の他面を、例えばダイボンド材によってケーシングなどに固定するための領域が確保される。
【0088】
上記のように構成された半導体圧力センサ1Fは、第1半導体基板3側の圧力と、第2半導体基板4側の圧力との差を測定する差圧センサとなる。つまり、例えば、区画された2つの空間のうち、一方の空間にダイヤフラム9が露出するように配置され、他方の空間に連通穴20の開口が露出するように配置することで、半導体圧力センサ1Fは、区画された空間の圧力差を測定することができる差圧センサとして利用可能となる。
【0089】
実施の形態7.
図22はこの発明の実施の形態7に係る半導体圧力センサ付き内燃機関装置の構成図である。
【0090】
図22において、半導体圧力センサ付き内燃機関装置24は、吸気通路26及び排気経路27を有する内燃機関25と、内燃機関25の吸気通路26の圧力を測定可能に内燃機関25に取り付けられた半導体圧力センサ1Aを有する。
つまり、半導体圧力センサ1Aのダイヤフラム9の一面が、吸気通路26内に配置されている。
【0091】
内燃機関25において、吸気通路26の圧力の測定範囲は、高々5気圧程度であるものが多いが、バックファイアが発生すると、吸気通路26内の圧力が異常に大きくなる。
このため、吸気通路26の圧力の測定範囲に対し、ダイヤフラム9は、5倍から10倍以上の破壊耐圧が求められる。
半導体圧力センサ1Aは、ダイヤフラム9の破壊耐圧が向上しており、ダイヤフラム9の厚みをある程度厚くするだけで、内燃機関25の吸気通路26内の圧力測定用としても使用できる。
【0092】
なお、この実施の形態7では、内燃機関25に半導体圧力センサ1Aを取り付けて、半導体圧力センサ付き内燃機関装置24を構成するものとして説明したが、半導体圧力センサ1Aに代え、半導体圧力センサ1B〜1Fのいずれかが取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1A〜1F 半導体圧力センサ、2 凹部、3 第1半導体基板、4 第2半導体基板、5 貫通穴、6 第1酸化シリコン膜(第1絶縁膜)、15 第2酸化シリコン膜(第2絶縁膜)、16 第3酸化シリコン膜(第3絶縁膜)、18 第4酸化シリコン膜(第3絶縁膜)、17 ストッパ、25 内燃機関、26 吸気通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一面に開口する凹部が形成された第1半導体基板と、
第1半導体基板の一面と相対して配置される第2半導体基板と、
上記第1半導体基板と上記第2半導体基板との間に介装され、上記凹部と上記第2半導体基板との間を連通する貫通穴が形成された第1絶縁膜と、
を備え、
上記貫通穴及び上記凹部の開口と相対する側から見て、上記貫通穴の縁部の少なくとも一部が、上記凹部の開口縁部の内側に位置していることを特徴とする半導体圧力センサ。
【請求項2】
上記貫通穴の縁部の全域が、上記凹部の開口縁部より内側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体圧力センサ。
【請求項3】
上記貫通穴5の縁部全域が、上記凹部の開口縁部から所定の距離Xだけ離間した位置にあり、上記第1絶縁膜の厚さをTとしたときに、0<X/T≦50を満たすことを特徴とする請求項2に記載の半導体圧力センサ。
【請求項4】
上記第2半導体基板と上記第1絶縁膜との間に、上記貫通穴の開口を覆う第2絶縁膜を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体圧力センサ。
【請求項5】
上記凹部と上記貫通穴を構成する壁面、及び上記貫通穴の開口を覆う上記第2半導体基板の壁面の全域に第3絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体圧力センサ。
【請求項6】
上記凹部と上記貫通穴を構成する壁面、及び上記貫通穴の開口を覆う上記第2半導体基板の壁面に囲まれる空間内に、上記凹部と相対する上記第2半導体基板の部位を上記凹部側に所定量以上撓ませる外力が付加されたときに、上記第2半導体基板に当接して上記第2半導体基板の撓みを規制するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の半導体圧力センサ。
【請求項7】
上記凹部と上記第1半導体基板の他面とを連通する連通穴が上記第1半導体基板に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体圧力センサ。
【請求項8】
上記凹部と相対する上記第2半導体基板の部位に、上記凹部と逆側から付加される圧力に応じた圧力値を検出可能に構成され、上記圧力が付加される上記第2半導体基板の面は、内燃機関の吸気通路内に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の半導体圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−237364(P2011−237364A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110921(P2010−110921)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】