説明

半導体基板および半導体基板の製造方法

【課題】ボンディングワイヤが接続されたボンディングパッドを一面に有する半導体基板において、ワイヤの接続によるボンディングパッド下部のクラックの発生を適切に検出できるようにする。
【解決手段】半導体基板1の内部にてボンディングパッド10の下部には、当該半導体基板1の特性を検査するための検査用配線40が設けられており、検査用配線40は、ボンディングパッド10のうちボンディングワイヤ70の端部が位置する部位の直下に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重および振動を加えることにより接続部材が接続されたボンディングパッドを一面に有する半導体基板、および、そのような半導体基板の製造方法に関し、特に接続部材としてボンディングワイヤを用いた場合に好適である。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の半導体基板としては、基板内部に回路素子を有し、回路素子の上に絶縁層を有し、絶縁層の内部に回路素子用の素子用配線を有し、ボンディングパッドを絶縁層の上に設けた構成のものが提案されている。そして、ボンディングパッドには、接続部材としてのボンディングワイヤを接続してなる。
【0003】
このボンディングワイヤは、ボンディングパッド上に接触した状態で、荷重を加えつつ振動を印加することにより、当該パッドに接続される。このとき、ボンディングパッドの下部に位置する基板内部、具体的には絶縁層には、接続時の荷重や振動により、クラックが発生し、絶縁層内の素子用配線やその下の回路素子がダメージを受ける恐れがある。
【0004】
このような場合、一般には、ワイヤボンディング前後で回路素子の特性を測定し、そのワイヤボンディング前後の特性を比較することにより、ワイヤボンディングによるクラックの検出を行っていた。
【0005】
ここで、従来より、特許文献1には、プローブが接触する検査用電極の下に検査用配線を配置し、プローブ接触時の荷重による基板内部のクラックの発生を検出するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、ワイヤボンディング用のボンディングパッドの下部に発生するクラックを検出する方法として、上記特許文献1に記載の方法を適用することを考えた。この場合、具体的には、ボンディングパッドの下の基板内部に、検査用配線を配置し、ワイヤボンディングの荷重や振動により発生するクラックを、検査用配線により検出することが考えられる。
【0008】
しかし、単にボンディングパッドの下部に検査用配線を設けるという方法では、最もクラックの発生しやすい部位に検査用配線を設けて、精度よくクラック検出を行うことが難しい。また、ボンディングパッドの下部にまんべんなく検査用配線を配置すれば、クラックの検出精度は向上するが、当該パッド下部のスペースが検査用配線に専有され、素子用配線の配置スペースに制約が生じるなどの問題が起こる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明者は、基板内部に回路素子を有し、回路素子の上に絶縁層を有し、絶縁層内部に素子用配線を有し、ボンディングパッドを絶縁層上に設けた構成の半導体基板について、ボンディングパッドにボンディングワイヤを接続した場合に基板内部に発生する応力をシミュレーションした。
【0010】
その結果、当該基板内部に発生する応力が最大となりやすい部位は、ボンディングパッドのうちワイヤの端部が位置する部位の直下の絶縁層と、ボンディングパッドの下部に位置する絶縁層のうち素子用配線の端部の上部もしくは下部との、2箇所であることがわかった。
【0011】
このことについては、次のように推定される。ボンディングパッドの直下において、ワイヤ端部を挟んでワイヤ内側に位置する部位はワイヤ接続時の荷重や振動による変形が生じるが、ワイヤ外側に位置する部位はそのような変形が起こらないので、当該ワイヤ端部に位置する部位では変位の差が大きくなり、結果、応力が最大となると考えられる。一方、素子用配線の端部については、当該配線端部の角部が存在し、その角部に応力が集中しやすくなるため、応力が最大となると考えられる。
【0012】
なお、このような問題は、ボンディングワイヤだけに限らず、たとえば電子部品などの接続に用いられるバンプなど、荷重および振動を加えることによりボンディングパッドに接続される接続部材であれば、同様に発生するものと推定される。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、荷重および振動を加えることにより接続部材が接続されたボンディングパッドを一面に有する半導体基板において、接続部材の接続によるボンディングパッド下部のクラックの発生を適切に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、荷重および振動を加えることにより接続部材(70)が接続されたボンディングパッド(10)を一面に有する半導体基板において、当該基板内部にてボンディングパッド(10)の下部には、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が設けられており、検査用配線(40)は、ボンディングパッド(10)のうち接続部材(70)の端部が位置する部位の直下に配置されていることを特徴とする。
【0015】
それによれば、基板内部のうち、接続部材(70)の接続時に最も応力が大きくクラックが生じやすい接続部材(70)の端部の直下に、検査用配線(40)を配置しているから、接続部材(70)の接続によるボンディングパッド(10)下部のクラックの発生を適切に検出することが可能となる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板において、検査用配線(40)は、ボンディングパッド(10)のうち接続部材(70)の中央部が位置する部位よりも接続部材(70)の端部が位置する部位の直下に集中するように偏って配置されていることを特徴とする。
【0017】
それによれば、半導体基板の内部にて、ボンディングパッド(10)のうち接続部材(70)の中央部が位置する部位の直下には、素子用配線(30)などを配置するスペースが生じやすくなり、好ましい。
【0018】
請求項3に記載の発明では、荷重および振動を加えることにより接続部材(70)が接続されたボンディングパッド(10)を一面に有する基板であって、当該基板内部に回路素子(20)を有し、回路素子(20)の上に絶縁層(50)を有し、絶縁層(50)の内部に回路素子用の素子用配線(30)を有し、ボンディングパッド(10)は絶縁層(50)の上に設けられている半導体基板において、絶縁層(50)の内部にてボンディングパッド(10)の下部には、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が設けられており、さらに、検査用配線(40)は、素子用配線(30)の端部の上部もしくは下部に位置し、素子用配線(30)の端部と重なるように配置されていることを特徴とする。
【0019】
それによれば、基板内部のうち、接続部材(70)の接続時に最も応力が大きくクラックが生じやすい素子用配線(30)の端部の直上もしくは直下に、検査用配線(40)を配置しているから、接続部材(70)の接続によるボンディングパッド(10)下部のクラックの発生を適切に検出することが可能となる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の半導体基板において、絶縁層(50)は、第1の層(51)と、当該第1の層(51)とは材質が異なり且つ当該第1の層(51)よりも機械的強度の弱い第2の層(52)とよりなり、検査用配線(40)は、第2の層(52)の内部もしくは近傍に位置していることを特徴とする。
【0021】
それによれば、検査用配線(40)は、絶縁層(50)のうちでも機械的強度が弱くクラックが発生しやすい第2の層(52)にクラックが発生したとき、そのクラックの影響を受けやすい位置にあるため、当該第2の層(52)のクラックを検出することが容易になる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、請求項3または4に記載の半導体基板において、検査用配線(40)および素子用配線(30)は膜状のものであり、検査用配線(40)は素子用配線(30)よりも薄いものであることを特徴とする。
【0023】
検査用配線(40)が厚いものであると、素子用配線(30)と同様の理由で配線端部に応力が集中し、クラックが生じやすくなるが、検査用配線(40)を素子用配線(30)よりもうすくすれば、そのような問題を極力抑制することが可能となる。
【0024】
ここで、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体基板において、検査用配線(40)を、同一平面上にてジグザグ形状または蛇行形状をなすものにすれば、検査用配線(40)と発生したクラックとが重なりやすくなり、クラック検出精度の向上につながる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体基板においては、接続部材は、ボンディングワイヤ(70)とすることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明では、ボンディングパッド(10)を一面に有し、このボンディングパッド(10)に対して荷重および振動を加えることにより接続部材(70)を接続してなる半導体基板の製造方法において、ボンディングパッド(10)を有するとともに、ボンディングパッド(10)のうち接続部材(70)の端部が位置する予定の部位の直下に、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が配置された半導体よりなる基板(1)を用意し、ボンディングパッド(10)に接続部材(70)を接続する前および後に、検査用配線(40)の電気特性を測定する工程を行うことを特徴としている。
【0027】
それによれば、基板内部のうち、接続部材(70)の接続時に最も応力が大きくクラックが生じやすい接続部材(70)の端部の直下に、検査用配線(40)を配置しており、接続部材(70)の接続前と接続後に検査用配線(40)の電気特性を測定するから、接続部材(70)の接続によるボンディングパッド(10)下部のクラックの発生を適切に検出することが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明では、ボンディングパッド(10)を一面に有し、このボンディングパッド(10)に対して荷重および振動を加えることにより接続部材(70)を接続してなる基板であって、当該基板内部に回路素子(20)を有し、回路素子(20)の上に絶縁層(50)を有し、絶縁層(50)の内部に回路素子用の素子用配線(30)を有し、ボンディングパッド(10)は絶縁層(50)の上に設けられている半導体基板の製造方法において、ボンディングパッド(10)、回路素子(20)、絶縁層(50)、素子用配線(30)を有するとともに、ボンディングパッド(10)の直下に位置する絶縁層(50)の内部のうち素子用配線(30)の端部の上部もしくは下部に、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が、素子用配線(30)の端部と重なるように配置されている半導体よりなる基板(1)を用意し、ボンディングパッド(10)に接続部材(70)を接続する前および後に、検査用配線(40)の電気特性を測定する工程を行うことを特徴している。
【0029】
それによれば、基板内部のうち、接続部材(70)の接続時に最も応力が大きくクラックが生じやすい素子用配線(30)の端部の直上もしくは直下に、検査用配線(40)を配置しており、接続部材(70)の接続前と接続後に検査用配線(40)の電気特性を測定するから、接続部材(70)の接続によるボンディングパッド(10)下部のクラックの発生を適切に検出することが可能となる。
【0030】
ここで、請求項10に記載の発明のように、請求項8または9に記載の半導体基板の製造方法においては、接続部材は、ボンディングワイヤ(70)とすることができる。
【0031】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体基板の要部を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る半導体基板の要部を示す概略平面図である。
【図3】第2実施形態の他の例としての半導体基板の要部を示す概略平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る検査用配線の平面形状を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る半導体基板の要部を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る半導体基板の要部を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る検査用配線の平面形状を示す概略平面図である。
【図8】第6実施形態の他の例としての検査用配線の平面形状を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体基板1の要部を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。なお、図1において(a)は(b)の上面図であり、ボンディングパッド10の部分を示すとともに、その下に位置する検査用配線40を透過して示している。
【0035】
本実施形態の半導体基板1は、大きくは、ボンディングパッド10を一面に有する基板であって、当該基板内部にてボンディングパッド10の下部に、回路素子20、この回路素子20用の素子配線30、および、検査用配線40を備えて構成されている。
【0036】
具体的には、回路素子20はシリコン半導体よりなり、半導体プロセスにより形成されたトランジスタなどの素子である。この回路素子20の上、すなわち回路素子20よりも半導体基板1の一面側には、絶縁層50が設けられている。
【0037】
この絶縁層50は、半導体基板1の一面側の表層部を構成するものであり、TEOSやSOG(スピンオングラス)などの電気絶縁性の絶縁膜が積層されてなる一般的なものである。
【0038】
また、素子用配線30および検査用配線40は、この絶縁層50の内部に形成されているが、これら配線30、40は、上記各絶縁膜の層間配線としてスパッタやCVDなどにより形成されている。
【0039】
素子用配線30は、スパッタやCVDなどにより形成されたAlなどよりなり、絶縁層50に形成されたビアホール60を介して回路素子20に電気的に接続されている。ここで、回路素子20には、高濃度不純物領域としてのコンタクト層21が形成されており、このコンタクト層21にてビアホール60との電気的接続がなされている。
【0040】
ビアホール60は、スパッタやCVDなどにより形成されたAlやW(タングステン)などよりなる。そして、素子用配線30は、半導体基板1の一面に設けられた図示しない電極などに導通して外部との接続が成されるようになっている。
【0041】
また、ボンディングパッド10は、半導体基板1の一面すなわち絶縁層50の表面上に設けられており、一般的なAlなどよりなるものである。ここでは、ボンディングパッド10は平面矩形をなしている。
【0042】
そして、このボンディングパッド10上には、AlやAuなどよりなるボンディングワイヤ70の一端が接続されている。このボンディングワイヤ70は接続部材として構成され、一般的なワイヤボンディング法により荷重および超音波などの振動を加えることにより形成されたものである。そして、このワイヤ70の図示しない他端は、たとえば半導体基板1の一面上の電極や電子部品、あるいは外部の部材などに接続されている。
【0043】
ここで、検査用配線40は、半導体基板1の内部にてボンディングパッド10の下部に設けられている。具体的には、検査用配線40は、絶縁層50の内部にてボンディングパッド70の下部に設けられている。この検査用配線40は、半導体基板1の特性を検査するための配線であり、スパッタやCVDなどにより形成されたAlやCrSiなどよりなる。
【0044】
さらに、図1に示されるように、検査用配線40は、ボンディングパッド10のうちボンディングワイヤ70の端部が位置する部位の直下に配置されている。ここで、図1には、ボンディングワイヤ70の端部に相当する部位を、点ハッチングが施された円形枠71として表している。
【0045】
図1(a)では、検査用配線40は、ボンディングパッド10の直下の部位にて折り返し形状に配置されている。そして、検査用配線40においてボンディングパッド10の直下から外れて位置する部位である両引き出し部41、42は、電流計K1に接続されることにより、検査用配線40の抵抗値が測定可能となっている。
【0046】
なお、この場合、両引き出し部41、42を、半導体基板1に形成された別々の図示しない検査用パッドに導通させ、当該2個の検査用パッドを介して電流計K1に接続するようにすればよい。
【0047】
さらに、それ以外にも、たとえば一方の引き出し部41については、ボンディングパッド10に導通させ、ボンディングパッド10を検査用パッドとして兼用するようにすれば、検査用パッドの数を減らすことができる。つまり、検査用配線40はボンディングパッド10と導通していてもよい。
【0048】
さらに、図1(b)に示されるように、基板内部すなわち絶縁層50内部において、検査用配線40は、ボンディングワイヤ70の端部が位置する部位の直下の部位に位置するとともに、素子用配線30の端部の上部に位置し、素子用配線30の端部と重なるように配置されている。この場合も、検査用配線40は素子用配線30とは電気的に絶縁されていてもよいし、導通していてもよい。
【0049】
また、図1(b)に示されるように、検査用配線40および素子用配線30は膜状のものであるが、検査用配線40は素子用配線30よりも薄いものとされている。具体的には、たとえば素子用配線30の厚さは0.5μm程度、検査用配線40の厚さは0.05μm程度であり、検査用配線40は素子用配線30の1/10以下の薄さとされる。
【0050】
このように、本実施形態の半導体基板1は、接続部材としてのボンディングワイヤ70が接続されたボンディングパッド10を一面に有する基板であって、当該基板内部に回路素子20を有し、回路素子20の上に絶縁層50を有し、絶縁層50の内部に素子用配線30および検査用配線40を有し、ボンディングパッド10は絶縁層50の上に設けられているものである。
【0051】
そして、基板内部のうち、ボンディングワイヤ70の接続時に最も応力が大きくクラックが生じやすいボンディングワイヤ70の端部の直下に、検査用配線40を配置しているから、ボンディングワイヤ70の接続によるボンディングパッド10下部のクラックの発生を適切に検出することが可能となる。
【0052】
この場合の検査方法は次のとおりである。ボンディングパッド10を有するとともに、ボンディングパッド10のうちワイヤ70の端部が位置する予定の部位の直下に、検査用配線40が配置された半導体よりなる基板1を用意する。つまり、上記図1においてボンディングワイヤ70の接続前の状態の半導体基板1を、半導体プロセスにより作製し、用意する。
【0053】
そして、この基板1に対して、ボンディングパッド10にボンディングワイヤ70を接続する前および接続した後に、検査用配線40の電気特性を測定する工程を行う。具体的には、上記図1において、電流計K1により、検査用配線40の両引き出し部41、42間の抵抗値を測定する。
【0054】
このとき、絶縁層50の検査用配線40近傍にクラックが発生すると、そのクラックは検査用配線40までのびて検査用配線40にダメージを与える。そのため、検査用配線40の抵抗値が変化する。そして、ワイヤ70の接続前後の抵抗値を比較して、抵抗値が変化していればクラックが発生したと判定し、当該変化が無ければクラックの発生は無いと判定する。
【0055】
つまり、最も応力が大きくなりがちなワイヤ70の直下の部位にてクラックが発生しなければ、それ以外の部位では、クラックが発生する可能性は極力低い。そして、本実施形態では、当該ワイヤ70の直下の部位に検査用配線40を設けているため、ワイヤ70の接続によるボンディングパッド10下部のクラック発生の有無を適切に精度よく検出できるのである。
【0056】
また、本実施形態の半導体基板1では、検査用配線40は、素子用配線30の端部の上部に位置し、素子用配線30の端部と重なるように配置されることによって、基板内部のうち、ワイヤ接続時に最も応力が大きくクラックが生じやすい素子用配線30の端部の直上に、検査用配線40が配置されている。そのため、ワイヤ70の接続によるボンディングパッド10下部のクラックの発生を適切に検出することが可能となる。
【0057】
この場合の検査方法は次のとおりである。ボンディングパッド10、回路素子20、絶縁層50、素子用配線30を有するとともに、ボンディングパッド10の直下に位置する絶縁層50の内部のうち素子用配線30の端部の上部に、検査用配線40が素子用配線30の端部と重なるように配置されている半導体よりなる基板1を用意する。つまり、上記図1においてボンディングワイヤ70の接続前の状態の半導体基板1を、半導体プロセスにより作製し、用意する。
【0058】
そして、この基板1に対して、ボンディングパッド10にボンディングワイヤ70を接続する前および接続した後に、検査用配線40の電気特性を測定する工程を行う。具体的には、上記同様に、電流計K1による検査用配線40の抵抗値を測定し、ワイヤ70の接続前後の抵抗値を比較してクラックの有無を判定する。
【0059】
この場合も、最も応力が大きくなりがちな素子用配線30の端部近傍にてクラックが発生しなければ、それ以外の部位では、クラックが発生する可能性は極力低い。そのため、本実施形態によれば、ワイヤ70の接続によるボンディングパッド10下部のクラック発生の有無を適切に精度よく検出できるのである。
【0060】
また、上記課題の欄にて述べたように、ワイヤ70の接続時に基板内部に発生する応力が最大となりやすい部位は、ボンディングパッド10の下部に位置する絶縁層50のうち素子用配線30の端部の上部もしくは下部である。
【0061】
そのため、ここでは図示しないが、上記図1とは逆に、検査用配線40は、素子用配線30の端部の下部に位置して素子用配線30の端部と重なるように配置されていてもよい。もちろん、検査用配線40は、素子用配線30の端部の上部と下部の両方に位置して素子用配線30の端部と重なるように配置されていてもよい。そして、これら場合の検査方法についても、上記方法と同様に、ワイヤ70接続前後で検査用配線40の電気特性を測定すればよい。
【0062】
このように、本実施形態によれば、ワイヤ70の接続前後で検査用配線40の電気特性を測定することにより、ワイヤ70端部の直下の部位に発生するクラック、および、素子用配線30端部の直上もしくは直下の部位に発生するクラックを検出することができる。つまり、本実施形態によれば、最もクラックが発生しやすい部位のクラックを検出できる半導体基板1、および、そのような半導体基板1の製造方法が提供される。
【0063】
また、本実施形態では、上述したように、検査用配線40および素子用配線30は膜状のものであり、検査用配線40は素子用配線30よりも薄いものとしている。検査用配線40が厚いものであると、素子用配線30と同様の理由で配線端部に応力が集中し、クラックが生じやすくなるが、検査用配線40を素子用配線30よりもうすくすれば、そのような問題を極力抑制することが可能となる。
【0064】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る半導体基板の要部を示す概略平面図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、検査用配線40の配置形態が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0065】
図2に示されるように、本実施形態では、上記図1に比べて、検査用配線40は、ボンディングパッド10のうちボンディングワイヤ70の中央部が位置する部位よりも当該ワイヤ70の端部が位置する部位の直下に集中するように偏って配置されている。
【0066】
つまり、配線の単位面積あたりの密度である配線密度について、本実施形態では、上記図1に比べて、検査用配線40の配線密度がワイヤ70の端部の方がワイヤ70の中央部よりも大きいものとなっている。ここでは、検査用配線40は、ワイヤ70の端部に沿って平面的にジグザク状の円形をなして配置されている。
【0067】
それによれば、半導体基板の内部にて、ボンディングパッド10のうちボンディングワイヤ70の中央部が位置する部位の直下に、素子用配線30などを配置するスペースが生じやすくなる。
【0068】
そして、図2に示されるように、当該ワイヤ中央部にも素子用配線30を配置することが可能となる。なお、図2において、ワイヤ中央部の素子用配線30は、ビアホールなどを介して検査用配線40を跨ぎ、ワイヤ70の端部の外側に延びている。
【0069】
また、検査用配線40を引き回すと配線抵抗が高くなり、検出感度が低下する恐れがあるので、図2に示されるように、検査用配線40のうちの必要部分以外、すなわちワイヤ70の端部の直下に位置する部位以外は、配線幅を太くして検査用配線40全体の抵抗を低くしている。具体的には、検査用配線40の引き出し部41、42をそれ以外に比べて幅広としている。
【0070】
図3は、本実施形態の他の例としての半導体基板の要部を示す概略平面図である。上記図2では、検査用配線40は、ワイヤ70の端部に沿った平面的にジグザク状の円形をなすものであったが、このように、一般的な円形をなすものであってもよい。
【0071】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る検査用配線40の平面形状を示す図である。図4(a)では検査用配線40は、同一平面上にて直線状のものが折り返された形状をなすが、図4(b)では検査用配線40は、検査用配線40は、同一平面上にてジグザグのものが折り返された形状をなしている。
【0072】
図4に示されるように、クラックCは平面的には直線形状となって発生するが、図4(a)のように直線状の検査用配線40の場合、クラックCと検査用配線40とが重ならない位置となる場合がある。
【0073】
それに対して、ジグザク形状の検査用配線40とすれば、検査用配線40とクラックCとが重なりやすくなり、クラック検出精度の向上につながる。なお、検査用配線40が同一平面上にて蛇行形状をなすものである場合も、当該ジグザク形状の場合と同様の効果が得られることは明らかである。
【0074】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る半導体基板の要部を示す概略断面図である。このように、素子用配線30が、基板の厚さ方向すなわち絶縁層50の厚さ方向に重ねて配置されている場合、検査用配線40は、絶縁層50内部にて上下の素子用配線30の間に位置して素子用配線30の端部と重なるように配置されていてもよい。
【0075】
この場合の検査方法についても、上記方法と同様に、ワイヤ70接続前後で検査用配線40の電気特性を測定すればよく、それによれば、応力集中箇所Pである素子用配線30端部の直上もしくは直下の部位に発生するクラックを検出することができる。
【0076】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係る半導体基板の要部を示す概略断面図である。本実施形態では、絶縁層50は、第1の層51と当該第1の層51とは材質が異なり当該第1の層51よりも機械的強度の弱い第2の層52とよりなる。
【0077】
第1の層51と第2の層52の材質は特に限定するものではないが、たとえば、第1の層51としてはCVDよりなるTEOS膜が挙げられ、第2の層52としては、凹凸を平坦化するために用いられる一般的なSOG膜が挙げられる。この場合、検査用配線40は、素子用配線30の端部と重なる位置にあるとともに、さらに、第2の層52の近傍に位置している。
【0078】
具体的には、図6に示されるように、素子用配線30の間に厚く形成されている第2の層52の近傍にまで、検査用配線40が延びて形成されている。これにより、検査用配線40は、絶縁層50のうちでも機械的強度が弱くクラックが発生しやすい第2の層52にクラックが発生したとき、そのクラックの影響を受けやすい位置にある。
【0079】
そのため、第2の層52のクラックを検出することが容易になる。なお、検査用配線40が第2の層52の近傍に位置するとは、検査用配線40が第2の層52に接した状態も含む。また、検査用配線40を第2の層52の内部に位置させても、同様の効果が発揮されることは明らかである。
【0080】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係る検査用配線40の平面形状を示す概略平面図である。図7に示されるように、検査用配線40において、その引き回し長さが大きくなると配線抵抗も大きくなり、検出感度が低下しやすくなる。
【0081】
そこで、図7では、検査用配線40の始端の引き出し部41と終端の引き出し部46以外に、途中に引き出し部42〜45を設け、検査用配線40を分割して、分割された個々の部分の抵抗値を測定するようにしている。
【0082】
ここでは、検査用配線40を、引き出し部41と42の間、42と43の間、43と44の間、44と45の間、45と46の間の5個の部分A、B、C、D、Eに分割し、当該各部分の抵抗値を、各引き出し部間にて測定するようにしている。それにより、検出感度の低下を防止することができる。また、分割することで、検査用配線40のうちのどの部分A〜Fでクラックが発生しているかの特定が容易になる。
【0083】
また、図8は、本実施形態の他の例としての検査用配線40の平面形状を示す概略平面図である。上記図7に示されるように、検査用配線40の両端および途中に複数個の引き出し部41〜46を設けた場合、それに対応して図示しない検査用パッドも複数個、半導体基板に設ける必要がある。そうすると、この検査用パッドの配置スペースの分、基板サイズが大きくなるなどの問題が生じる。
【0084】
そこで、図8のように、たとえばダイオード200、201を用いることで、図7に比べて検査用パッドの数を減らすことができる。たとえば、検査用配線40の始端側から3番目までの引き出し部41、42、43までを例にとって述べる。
【0085】
この例では、始端側から1番目の引き出し部41と3番目の引き出し部43を共通の1個の第1の検査用パッド100に接続し、2番目の引き出し部42を別の第2の検査用パッド101に接続している。さらに、1番目の引き出し部41に第1のダイオード200を介在させ、3番目の引き出し部43には、第1のダイオード200とは逆方向に第2のダイオード201を介在させている。
【0086】
このとき、両検査用パッド100、101間を、電流計を介して接続し、第1の検査用パッド100を正極、第2の検査用パッド101を負極とすれば、1番目の引き出し部41と2番目の引き出し部42との間の抵抗値が測定され、第1の検査用パッド100を負極、第2の検査用パッド101を正極とすれば、3番目の引き出し部43と2番目の引き出し部42との間の抵抗値が測定される。
【0087】
このように、図8の方法によれば、1番目の引き出し部41と3番目の引き出し部43との検査用パッドを、1個の第1の検査用パッド100で兼用することができ、検査用パッドの数を減らすことができる。これと同じことが、検査用配線40の始端側から4番目から6番目までの引き出し部44、45、46までについても可能である。
【0088】
こうして、図8のように、ダイオード200、201を用いることで、検査用パッドの数を減らすことができ、結果、半導体基板のサイズの増大を抑制するなどの効果が期待できる。
【0089】
(他の実施形態)
なお、検査用配線40については、基板内部のうち素子用配線30の端部の直上または直下の部位にあるが、ワイヤ70の端部の直下の部位には無い構成でもよい。この場合、ワイヤ70の接続前後で検査用配線40の電気特性を測定すれば、素子用配線30端部の直上および直下の部位に発生するクラックは検出できる。
【0090】
また、検査用配線40については、基板内部のうちワイヤ70の端部の直下の部位にはあるが、素子用配線30の端部の直上および直下の部位には無い構成であってもよい。この場合、ワイヤ70の接続前後で検査用配線40の電気特性を測定すれば、ワイヤ70端部の直下の部位に発生するクラックは検出できる。なお、これら各部30、70の直下、直上の部位とは、半導体基板1の一面と垂直方向に沿った下方、上方に当該各部30、70が投影される部位を意味する。
【0091】
また、上記各実施形態では、検査用配線40の電気特性として抵抗値を測定したが、それ以外にも、たとえば上記特許文献1と同様に、検査用配線40の電気特性として容量値、耐圧、リーク電流の中から選択されたものを測定するようにしてもよい。
【0092】
また、接続部材としては、ワイヤボンディングにより荷重および振動を加えて接続されるボンディングワイヤ70に限定されることは無く、荷重および振動を加えて接続されるものであれば、たとえば、電子部品に設けた金や銅などのバンプであってもよい。
【0093】
また、上記各図に示した例では、ボンディングパッド10は平面矩形のものであったが、その平面形状は特に限定するものではなく、たとえば四角形以外の多角形であったり、円形であってもかまわない。
【符号の説明】
【0094】
10 ボンディングパッド
20 回路素子
30 素子用配線
40 検査用配線
50 絶縁層
51 絶縁層としての第1の層
52 絶縁層としての第2の層
70 ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重および振動を加えることにより接続部材(70)が接続されたボンディングパッド(10)を一面に有する半導体基板において、
当該基板内部にて前記ボンディングパッド(10)の下部には、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が設けられており、
前記検査用配線(40)は、前記ボンディングパッド(10)のうち前記接続部材(70)の端部が位置する部位の直下に配置されていることを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記検査用配線(40)は、前記ボンディングパッド(10)のうち前記接続部材(70)の中央部が位置する部位よりも前記接続部材(70)の端部が位置する部位の直下に集中するように偏って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
荷重および振動を加えることにより接続部材(70)が接続されたボンディングパッド(10)を一面に有する基板であって、当該基板内部に回路素子(20)を有し、前記回路素子(20)の上に絶縁層(50)を有し、前記絶縁層(50)の内部に前記回路素子用の素子用配線(30)を有し、前記ボンディングパッド(10)は前記絶縁層(50)の上に設けられている半導体基板において、
前記絶縁層(50)の内部にて前記ボンディングパッド(10)の下部には、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が設けられており、
さらに、前記検査用配線(40)は、前記素子用配線(30)の端部の上部もしくは下部に位置し、前記素子用配線(30)の端部と重なるように配置されていることを特徴とする半導体基板。
【請求項4】
前記絶縁層(50)は、第1の層(51)と、当該第1の層(51)とは材質が異なり且つ当該第1の層(51)よりも機械的強度の弱い第2の層(52)とよりなり、
前記検査用配線(40)は、前記第2の層(52)の内部もしくは近傍に位置していることを特徴とする請求項3に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記検査用配線(40)および前記素子用配線(30)は膜状のものであり、前記検査用配線(40)は前記素子用配線(30)よりも薄いものであることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記検査用配線(40)は、同一平面上にてジグザグ形状または蛇行形状をなすものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体基板。
【請求項7】
前記接続部材は、ボンディングワイヤ(70)であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体基板。
【請求項8】
ボンディングパッド(10)を一面に有し、このボンディングパッド(10)に対して荷重および振動を加えることにより接続部材(70)を接続してなる半導体基板の製造方法において、
前記ボンディングパッド(10)を有するとともに、前記ボンディングパッド(10)のうち前記接続部材(70)の端部が位置する予定の部位の直下に、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が配置された半導体よりなる基板(1)を用意し、
前記ボンディングパッド(10)に前記接続部材(70)を接続する前および後に、前記検査用配線(40)の電気特性を測定する工程を行うことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項9】
ボンディングパッド(10)を一面に有し、このボンディングパッド(10)に対して荷重および振動を加えることにより接続部材(70)を接続してなる基板であって、当該基板内部に回路素子(20)を有し、前記回路素子(20)の上に絶縁層(50)を有し、前記絶縁層(50)の内部に前記回路素子用の素子用配線(30)を有し、前記ボンディングパッド(10)は前記絶縁層(50)の上に設けられている半導体基板の製造方法において、
前記ボンディングパッド(10)、前記回路素子(20)、前記絶縁層(50)、前記素子用配線(30)を有するとともに、前記ボンディングパッド(10)の直下に位置する前記絶縁層(50)の内部のうち前記素子用配線(30)の端部の上部もしくは下部に、当該半導体基板の特性を検査するための検査用配線(40)が、前記素子用配線(30)の端部と重なるように配置されている半導体よりなる基板(1)を用意し、
前記ボンディングパッド(10)に前記接続部材(70)を接続する前および後に、前記検査用配線(40)の電気特性を測定する工程を行うことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項10】
前記接続部材は、ボンディングワイヤ(70)であることを特徴とする請求項8または9に記載の半導体基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−222861(P2011−222861A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92302(P2010−92302)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】