説明

半導体基板用洗浄剤組成物

【課題】
化合物半導体基板の予備洗浄(プレ洗浄)技術の課題であった、洗浄力不足等の課題を解決すると共に、繰り返し使用時の洗浄スタミナ性を向上させた予備洗浄(プレ洗浄)剤組成物を提供することにある。
【解決手段】
炭化水素、グリコールエーテル、ノニオン性界面活性剤、分岐炭素鎖を有するエタノールアミンを含有する洗浄剤組成物により、研磨処理後の半導体基板、特にGaAs、サファイア、SiCのような化合物半導体と呼ばれる基板、に付着したワックス、研磨剤、パーティクル(研削屑等の異物)の汚れの除去に好適に使用しうるプレ洗浄剤組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨処理後の半導体基板、特にGaAs、サファイア、SiCのような化合物半導体と呼ばれる基板から研磨後の汚れを洗浄するための洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体基板は、その基板上に薄膜を形成させたものを加工し利用される。この薄膜形成の為には、基板表面の平坦性と清浄性が求められる。特に発光ダイオード(LED)は、サファイア基板の上にGaN、GaAs等の薄膜結晶を形成させ、製造される。このとき、薄膜が平坦・均一でなければ、LEDの歩留まり低下の原因となる。薄膜を均一に成長させるためには、そのベースとなるサファイア基板が平坦かつ高い清浄度を有する必要がある。
【0003】
まず基板を平坦化するために研磨加工するが、その際ワックス(蝋のような油脂の固形物)を用いて基板を一時固定し、コロイダルシリカ等の研磨剤を用いて研磨する。
【0004】
研磨加工して平坦化した基板には、上記ワックスや研磨剤のほか、パーティクル(研削屑等の異物)も付着している。薄膜形成するためには、基板に残るこれらワックス・研磨剤・パーティクルを可能な限り落とす必要がある。そのため、通常は研磨加工後に基板を洗浄する工程を有し、高い清浄目標を達成するために、予備洗浄(プレ洗浄)に加えて、仕上げ洗浄(ファイナル洗浄)が行われている。
【0005】
本願は、予備洗浄(プレ洗浄)に係わる洗浄剤組成物を提供するものである。従来、予備洗浄では有機溶剤が多用されてきた。そのため、作業安全性への不安のみならず、基板への汚れの再付着の発生による洗浄性能の不足が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献−1】特開平10−112451号公報
【特許文献−2】特開平9−36078号公報
【特許文献−3】特開2003−289060号公報
【特許文献−4】特開2002−69492号公報
【0007】
特許文献―1および特許文献―2には、ワックス除去を目的とする半導体基板洗浄剤および洗浄方法が開示されている。更に、特許文献―3および特許文献―4にはパーティクル除去を目的とする精密洗浄剤および洗浄方法が開示されている。しかしながら、化合物半導体基板においては、高い清浄度が得られないという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、化合物半導体基板のプレ洗浄技術の課題であった、洗浄力不足等の課題を解決すると共に、繰り返し使用時の洗浄スタミナ性を向上させた予備洗浄(プレ洗浄)剤組成物を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、クレーム構成に基づく解決手段に至った。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記構成による洗浄剤組成物を提供する。即ち、
〔1〕
(A)炭素数8〜20の飽和脂肪族炭化水素、及び/又は、不飽和脂肪族炭化水素を1〜20質量%、
(B)一般式(1)で表されるグリコールエーテルを5〜40質量%、

−O−(AO)−R (1)
但し、Rは炭素数4〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基又はベンジル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であるが構造中に少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれ、nはAOの平均繰り返し数を示し、1〜4の数である。また、Rは水素基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基である。

(C)一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を1〜20質量%、

3−O−(AO)−H (2)
但し、Rは炭素数8〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基又はベンジル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であるが少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれ、nはAOの平均繰り返し数を示し8〜20である。

(D)モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプ
ロパノールアミンから選択される少なくとも1種以上の、分岐炭素鎖を有す
るアルカノールアミンを1〜30質量%、
以上、(A)〜(D)の4成分を含有することを特徴とする半導体基板用液体洗浄剤組成物。
〔2〕
半導体基板が、硬脆材料基板であり、中でもGaAs、サファイア、SiC等のような化合物半導体や酸化物半導体であることを特徴とする請求項1記載の洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化合物半導体基板の製造工程において付着するワックスを高度に除去でき、さらに除去されたワックスが混入した洗浄剤組成物を繰り返し使用しても、洗浄力低下の少ない、即ちスタミナ洗浄性の観点に優れた予備洗浄(プレ洗浄)剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
(A成分)
ここで(A)成分は、炭素数8〜20の飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素である。(A)成分は、炭素数が8〜20が好ましく、炭素数が10〜16がより好ましい。炭素数が8〜20、特に10〜16であるとワックス汚れに対する洗浄性がより向上する。また炭素数が下限値以上であると引火性が低く、炭素数が上限値以下であると均一で透明な外観の洗浄剤組成物が得られやすい。
(A)成分は、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素であれば特に限定されず、具体的にはオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン等の直鎖状又は分岐鎖状のアルカン;オクテン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン等の直鎖状又は分岐鎖状のアルケン等が挙げられる。(A)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
具体的な商品例示としては、流動パラフィンNo.30(商品名、中央化成製、炭素数12〜14の混合物)、N12D(商品名、日鉱石油化学製ノルマルパラフィン、炭素数12)、リニアレン14(商品名、出光興産製αオレフィン、炭素数14)等が挙げられる。
本発明品の洗浄剤組成物における(A)成分の割合は、1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。(A)成分の割合が1%以上であると、ワックスに対する洗浄性が向上する。また、20%以下であれば、均一で透明な外観を呈する組成物が得られる。
【0014】
(B成分)
ここで(B)成分は、一般式(1)として以下に表される化合物である。
−O−(AO)n−R・・・(1)式
は炭素数4〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基又はベンジル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nはAOの平均繰り返し数を示し、1〜4の数である。ただし、−(AO)−の繰り返し構造中には少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれる。尚、nが2以上の場合、AOはアルキレンオキシドが単独で付加していても、2種以上のアルキレンオキシドが混合して付加していてもよく、また、混合付加の場合の形態もランダム付加でもブロック付加でもどちらでも良い。Rは水素基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基である。なかでも、当該洗浄剤組成物のワックスに対する洗浄性、液安定性(均一性、透明性)がより向上することから、Rは水素基がより好ましい。
(B)成分は、一般式(1)として表される化合物であれば特に限定されず、具体的なものとして、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリアルキレングリコールモノブチルエーテル(EO1モル、PO2モル付加体)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチル−ヘキシルエーテル(2―エチルヘキシルジグリコール)、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルトリグリコール等が挙げられる。中でも、ワックスに対する洗浄性がより向上することから、エチレンオキサイド付加系の、ヘキシルジグリコール、2―エチルヘキシルジグリコール、トリアルキレングリコールモノブチルエーテル(EO1モル、PO2モル付加体)、トリエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
(B)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、具体的な商品例示として、ヘキシルジグリコール(商品名、日本乳化剤製)、2エチルヘキシルジグリコール(商品名、日本乳化剤製)、キョーワノールシリーズ(商品名、協和発酵ケミカル製)レオソルブ703B(商品名、ライオン製)、ブチルトリグリコール(商品名、日本乳化剤製)、ブチセノールシリーズ(商品名、協和発酵ケミカル製)などの市販品を用いることができる。
本発明品の洗浄剤組成物における(B)成分の割合は、5〜40質量%であることが好ましく、16〜25質量%であることがより好ましい。(B)成分の割合が5%以上であると、ワックスに対する洗浄性、均一で透明な外観を呈する液安定性が向上する。40%以下であれば、均一で透明な外観を呈する液安定性が向上する。
(B)成分の主たる配合効果は、(A)成分を可溶化させて、(A)成分と相乗的にワックスの除去性を高める役割を担うものである。
【0015】
(C成分)
ノニオン性界面活性剤とは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素或いは芳香族炭化水素に任意のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加したものであり、一般式(2)として以下に表される化合物である。
−O−(AO)n−H・・・(2)式
ここで、Rは炭素数8〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基又はベンジル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nはAOの平均繰り返し数を示し、8〜20の数である。ただし、−(AO)−の繰り返し構造中には少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれる。尚、nが2以上の場合、AOはアルキレンオキシドが単独で付加していても、2種以上のアルキレンオキシドが混合して付加していてもよく、また、混合付加の場合の形態もランダム付加でもブロック付加でもどちらでも良い。
(C)成分は、一般式(2)として表される化合物であれば特に限定されず、具体的なものとして、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、均一で透明な外観を呈する液安定性及び洗浄後のすすぎ性がより向上することから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好ましい。前記例示の化合物中、ポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレン基、少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれるポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基であることが好ましく、ポリオキシエチレン基、少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれるポリオキシプロピレン基であることがより好ましい。(C)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
具体的な商品例示として、ドバノックスシリーズ(商品名、ライオン製)、レオコールシリーズ(商品名、ライオン製)、レオックスシリーズ(商品名、ライオン製)、ニューコールシリーズ(商品名、日本乳化剤製)、ソフタノールシリーズ(商品名、日本触媒製)、ノイゲンシリーズ(商品名、第一工業製薬製)などの市販品を用いることができる。
本発明品の洗浄剤組成物における(C)成分の割合は、1〜20質量%であることが好ましく、6〜10質量%であることがより好ましい。(C)成分の割合が1%以上であると、均一で透明な外観を呈する液安定性及び洗浄後のすすぎ性が向上する。20%以下であれば、ワックスに対する洗浄性、抑泡性が向上する。
【0016】
(D成分)
(D)成分は分岐炭素鎖を有するエタノールアミンでありモノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンである。
これらのうち、ワックスに対する洗浄性(除去性、溶解性)及び研磨剤、パーティクルの分散性がより向上することから、モノイソプロパノールアミンがより好ましい。(D)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、具体的な商品例示として、モノイソプロパノールアミン(NANJING BAOCHUN CHEMICAL CO., LTD製)、ジイソプロパノールアミン(東京化成工業株式会社製)、トリイソプロパノールアミン(東京化成工業株式会社製)などの市販品を用いることができる。
本発明品の洗浄剤組成物における(D)成分の割合は、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。(D)成分の割合が1%以上であると、ワックスに対する洗浄性(除去性、溶解性)、pH安定性が向上する。30%以下であれば均一で透明な外観を呈する液安定性が向上する。
【0017】
(任意成分)
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、上記(A)〜(D)成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、たとえば、キレート剤、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、pH調整剤、アニオン界面活性剤、芳香族化合物等が挙げられる。
キレート剤については、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラ酢酸(TTHA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、1,3―プロパン―2―ジアミン四酢酸(PDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、プロピレンジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、シクロヘキサン―1,2―ジアミンテトラ酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸ジ酢酸、β―アラニンジ酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸などの酸またはその塩が挙げられる。塩を形成する場合の塩基としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、たとえば、フェノール系酸化防止剤[2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール及び2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール等]、アミン系酸化防止剤[モノオクチルジフェニルアミン及びモノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン;4,4’−ジブチルジフェニルアミン及び4,4’−ジペンチルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン;テトラブチルジフェニルアミン及びテトラヘキシルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン;α−ナフチルアミン及びフェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン等]、硫黄系化合物[フェノチアジン、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオプロピオネート)及びビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド等]並びにリン系酸化防止剤[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスフィト、ジフェニルジイソオクチルホスファイト及びトリフェニルホスファイト等]等が挙げられる。
防錆剤としては、たとえば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、炭素数2〜10の炭化水素基を有するベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、炭素数2〜20の炭化水素基を有するイミダゾール、炭素数2〜20の炭化水素基を有するチアゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール等の含窒素有機防錆剤;ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物及びドデセニルコハク酸アミド等のアルキル又はアルケニルコハク酸;ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート及びペンタエリスリトールモノオレエート等の多価アルコール部分エステル等が挙げられる。
消泡剤としては、たとえば、シリコーン消泡剤[ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン及びポリエーテルシリコーン等を含む消泡剤等]等が挙げられる。
酸性のpH調整剤としては、上記キレート剤で記載した以外のリン酸、カルボン酸、などが挙げられる。カルボン酸は、たとえば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、などの脂肪族カルボン酸類;安息香酸、パラターシャリーブチル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸類が好ましい。
アルカリ性のpH調整剤としては、アルカノールアミン、第4級アンモニウム水酸化物、無機塩がある。
アルカノールアミンとしては、たとえば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
第4級アンモニウム水酸化物としては、たとえば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルエチルアンモニウムハイドロオキサイド、等が挙げられる。
無機塩としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩,アルファオレフィンスルホン酸塩が挙げられる。塩の塩基としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、エタノールアミン等が挙げられる。
芳香族化合物としては、ベンゼン環に2つの置換基を有するものであればよく、具体的には、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、o−メトキシ−α−メトキシトルエン、m−メトキシ−α−メトキシトルエン、p−メトキシ−α−メトキシトルエン、α−メトキシ−o−キシレン、α−メトキシ−m−キシレン、α−メトキシ−p−キシレン、o−キシレングリコールジメチルエーテル、m−キシレングリコールジメチルエーテル、p−キシレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0018】
(洗浄方法)
前記液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬洗浄、噴流洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、超音波洗浄などが挙げられる。特に超音波洗浄によりワックス、研磨剤、パーティクル等の汚れの洗浄剤組成物への分散性を高め、汚れを効果的に除去することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて本洗浄剤組成物の有効性を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。尚、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、表中の各成分量は組成物中における純分換算した質量%である。表1に示す組成の洗浄剤組成物を常法により調製した。得られた洗浄剤組成物について下記評価を行った。ここに実施例及び比較例に用いた成分を以下に示す。
(A成分)
n−ドデカン、日鉱石油化学(株)製、N12D(商品名)
1−テトラデセン、出光興産(株)製、リニアレン14(商品名)

(B成分)
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、日本乳化剤(株)製、ヘキシルジグリコール(商品名)
ジエチレングリコールモノ−2エチルヘキシルエーテル、日本乳化剤(株)製、2エチルへキシルジグリコール(商品名)
トリアルキレングリコールモノブチルエーテル(EO1モル、PO2モル付加体) 、ライオン(株)製、レオソルブ703B(商品名)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル、協和発酵ケミカル(株)製、ブチセノール30(商品名)

(C成分)
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(C10AO10)、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−140(商品名)
ポリオキシエチレン2エチルへキシルエーテル(CEO20)、日本乳化剤(株)製、ニューコール1020(商品名)

(D成分)
モノイソプロパノールアミン、NANJING BAOCHUN CHEMICAL CO., LTD製、モノイソプロパノールアミン(商品名)

(D成分比較品)
トリエタノールアミン、関東化学(株)製、2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール(商品名)
【0020】
(ワックス汚れモデル基板の作成)
1)シフトワックス汚れモデル基板
約90℃に加熱したスライドガラス(76mm×26mm×1mm)表面の端部約20mm×26mmの部分に、均一になるようにシフトワックス679(日化精工(株)製)、を約0.03g程度を溶解塗布した。その後、室温で20分以上放冷したものを、モデル基板とした。
2)アルコワックス汚れモデル基板
約90℃に加熱したスライドガラス(76mm×26mm×1mm)表面の端部約20mm×26mmの部分に、均一になるようにアルコワックス5302(日化精工(株)製)を約0.03g程度を溶解塗布した。その後、室温で20分以上放冷したものを、モデル基板とした。

【0021】
(液均一性評価)
洗浄剤組成物100gを攪拌調製後、室温で静置し外観を肉眼で目視観察を行った。(評価基準)は以下とした。
○:調製後1日静置で均一透明を維持
×:調製後1日静置で白濁または2層分離

【0022】
(ワックス除去性)
1)100mLガラスビーカーに各種洗浄剤100mLを入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら液温を50℃に保った。ここにモデル基板を入れ、3分間浸漬し洗浄操作を行なった。3分後、モデル基板を洗浄剤から取り出した。
2)100mLガラスビーカーに水を100mL入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら液温を室温(15〜25℃)に保った。ここに洗浄操作で取り出したモデル基板を2分間浸漬しすすぎ操作を行った。2分後、モデル基板を洗浄剤から取り出した。
3)すすぎ操作後のモデル基板を40℃で30分以上乾燥し、モデル基板表面に付着した水分を飛ばした。
4)洗浄前後の基板の重量と塗布したワックスの重量から、ワックス除去率%を算出した。

ワックス除去率(%)=100×((洗浄前の基板重量)−(洗浄後の基板重量))/ (塗布したワックス重量)
(評価基準)は以下とした。
◎:ワックス除去率:90%以上
○:ワックス除去率:80%以上90%未満
×:ワックス除去率:80%未満

【0023】
(ワックス溶解性)
1)シフトワックス679のワックス除去率の評価を行なった後のモデル基板から除去されたシフトワックス679が分散または溶解している洗浄剤100mLを、室温(15〜25℃)で60分静置した。
2)その後、メンブレンフィルター(孔径1μm)を用いて洗浄剤100mLをろ過し、更に、イオン交換水100mLをすすぎ剤としてろ過し、フィルター上の外観を肉眼で目視観察した。
(評価基準)は以下とした。
○:フィルター上に洗浄剤に溶け残ったワックスがない
×:フィルター上に洗浄剤に溶け残ったワックスがある

【0024】
(洗浄剤すすぎ性)
1)100mLガラスビーカーに各種洗浄剤を100mL入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら液温を室温(15〜25℃)に保った。ここにスライドガラス(76mm×26mm×1mm)を入れ、3分間浸漬しスライドガラスに洗浄剤を付着させた。3分後、スライドガラスを洗浄剤から取り出した。
2)100mLガラスビーカーに水を100mL入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら液温を室温(15〜25℃)に保った。ここに(1)の操作で取り出したスライドガラスを1分間浸漬しすすぎ操作を行った。1分後、モデル基板を洗浄剤から取り出した。
3)すすぎ操作後のモデル基板を40℃で30分以上乾燥し、モデル基板表面に付着した水分を飛ばした。
4)肉眼によりモデル基板に付着した洗浄剤の残渣を以下の基準で確認することですすぎ性を評価した。
(評価基準)は以下とした。
○:洗浄剤残渣が全く無い(すすぎ性100%)
△:洗浄剤残渣がわずかに付着している(すすぎ性50%以上100%未満)
×:洗浄剤残渣が多く付着している(すすぎ性50%未満)
【0025】
(スタミナ洗浄性評価)
1)100mLガラスビーカーに各種洗浄剤を100g入れ、更に、シフトワックス679を各種洗浄剤に対して1wt%添加し、マグネティックスターラーで攪拌しながら液温を50℃に保った。ここにシフトワックス汚れモデル基板入れ、3分間浸漬し洗浄操作を行なった。3分後、モデル基板を洗浄剤から取り出した。
2)100mLガラスビーカーに水を100mL入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら液温を室温(15〜25℃)に保った。ここに洗浄操作で取り出したモデル基板を2分間浸漬しすすぎ操作を行った。2分後、モデル基板を洗浄剤から取り出した。
3)すすぎ操作後のモデル基板を40℃で30分以上乾燥し、モデル基板表面に付着した水分を飛ばした。
4)洗浄前後の基板の重量と塗布したワックスの重量から、ワックス除去率%を算出した。
ワックス除去率(%)=100×((洗浄前の基板重量)−(洗浄後の基板重量))/ (塗布したワックス重量)
(評価基準)は以下とした。
◎:ワックス除去率:90%以上
○:ワックス除去率:80%以上90%未満
×:ワックス除去率:80%未満

【0026】
表1に実施例、比較例を示す。
【表1】






【0027】
表1に示すように、本発明品である実施例1〜11は、液均一性、洗浄性、スタミナ洗浄性ともに優れていた。
一方、(A)成分を含有しない比較例1は、アルコワックス5302に対する洗浄性ならびに、スタミナ洗浄性において劣るものであった。(B)成分を含有しない比較例2は、液均一性、洗浄性、スタミナ洗浄性において劣るものであった。
(C)成分を含有しない比較例3は、液均一性、洗浄剤すすぎ性において劣るものであった。(D)成分を含有しない比較例4は、シフトワックス679に対する洗浄性、スタミナ洗浄性において劣るものであった。(D)成分をトリエタノールアミンした比較例5は、スタミナ洗浄性において劣るものであった。
以上の結果から、本発明を適用することで、化合物半導体基板の製造工程において付着するワックスを良好に除去し、さらに除去されたワックスが混入しても洗浄力低下の少ない、即ちスタミナ洗浄性に優れることがわかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8〜20の飽和脂肪族炭化水素、及び/又は、不飽和脂肪族炭化水素を1〜20質量%、
(B)一般式(1)で表されるグリコールエーテルを5〜40質量%、

−O−(AO)−R (1)
(但し、Rは炭素数4〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基又はベンジル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であるが構造中に少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれ、nはAOの平均繰り返し数を示し、1〜4の数である。また、Rは水素基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基である。)

(C)一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を1〜20質量%、

3−O−(AO)−H (2)
(但し、Rは炭素数8〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基又はベンジル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であるが少なくとも1単位のオキシエチレン基が含まれ、nはAOの平均繰り返し数を示し8〜20である。)

(D)モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプ
ロパノールアミンから選択される少なくとも1種以上の、分岐炭素鎖を有するアルカノールアミンを1〜30質量%、

以上、(A)〜(D)の4成分を含有することを特徴とする半導体基板用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
半導体基板が、化合物半導体或いは酸化物半導体であることを特徴とする請求項1記載の洗浄剤組成物。



【公開番号】特開2013−10888(P2013−10888A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145378(P2011−145378)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】