説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置、ならびに半導体装置の製法

【課題】薄型化が可能な、リードレス構造の表面実装型の半導体装置の樹脂封止に用いられる半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】基板9上に搭載した半導体素子5の電極6と、上記半導体素子5の周囲に設けられた複数の導電部4とを電気的に接続するワイヤー7と、上記基板9と、半導体素子5と、複数の導電部4とが封止樹脂層8中に内蔵され、上記基板9の底面と導電部4の底面とが、上記封止樹脂層8から露出している半導体装置の上記封止樹脂層8の形成に用いられる、ポリエチレン系ワックスを含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型のリードレス構造の半導体装置、特に薄型で低コストな半導体装置の封止材料に用いられる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた表面実装型のリードレス構造の半導体装置、ならびに半導体装置の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路やトランジスタ、ダイオード等の個別部品、特に近年、LSIのパッケージ実装では、パッケージサイズの小型化、薄型化および高集積化が求められている。上記LSIの実装技術のうち、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)に代表されるリード端子がパッケージ内部に取り込まれた形態のパッケージは、小型化と高集積化の面から特に注目されるパッケージ形態の一つである。このようなQFNの製造方法の中でも、近年では、複数のQFN用チップをリードフレームのパッケージパターン領域のダイパッド上に整然と配列させ、成形金型のキャビティ内で封止樹脂材料を用いて一括封止した後、切断によって個別のQFN構造物に切り分けることにより、リードフレーム面積当たりの生産性を飛躍的に向上させるという製造方法が特に注目されている。一方、半導体装置をマザーボード等の基板に実装する際の接続信頼性を向上させる手法として、実装面側の導体の一部が、封止樹脂から突出した、いわゆるスタンドオフを有する半導体装置が求められている。
【0003】
また、近年では、さらなる薄型化を目的として、リードレス構造の半導体装置が開発されている。このようなリードレス構造の半導体装置の製法として、例えば、つぎのような方法が提案されている。まず、基材に金属箔を貼り付け、所定部分に金属箔が残るように上記金属箔のエッチングを行い、図7に示すように、基材20面にダイパッド部分23aおよび導電部23bを形成する。つぎに、上記ダイパッド部分23a上に接着剤層24を介して半導体素子21を固着した後、ワイヤー25を用いて上記半導体素子21と導電部23bとを電気的に接続する。ついで、成形金型を用いてトランスファー成形を行うことにより、上記半導体素子21と導電部23bとが導通された空間部分のみを封止樹脂層26により樹脂封止する。そして、図8に示すように、上記封止樹脂層26から基材20を分離することによって半導体素子を封止してなるパッケージを製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。上記製法においては、基材20上にてダイパッド部分23aおよび導電部23bを形成するため、導電部の薄型化が可能であり、また封止材料を用いて樹脂封止してなるパッケージを個片化する場合、リードフレームを切断する必要がないため、ダイシング時のブレードの摩耗の少ないという利点を有している。
【特許文献1】特開平9−252014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のリードフレームを用いての一括封止による製法では、生産性の向上、パッケージサイズの小型化および高集積化は実現可能であるが、例えば、3列以上の多列配線は困難であり、多ピン化にも限界があった。また、前記スタンドオフ構造に関しても、QFNの成形時にリードフレーム下面に貼り付けられる耐熱性粘着テープに主に使用されるシリコーン系粘着剤は、耐熱性を高めるために高度に架橋されており、流動性が乏しいものであった。したがって、スタンドオフ構造を有する半導体装置を製造する場合には、その製造過程において導体の一部を粘着剤層に埋没させることが必要であるが、上記理由により埋没させることが困難であり、結果としてスタンドオフ構造を有する半導体装置を製造することが困難となっていた。さらに、上記リードフレームは、半導体製造工程での搬送性、取り扱い性の点から、通常100〜200μmの厚みを必要とされることから、半導体装置の薄型化への制約要因となっていた。
【0005】
また、上記特許文献1の半導体装置の製造方法においては、ダイパッド部分23aおよび導電部23bを形成するための金属箔のエッチング工程および樹脂封止のためのトランスファー成形工程中では、基材20と上記金属箔部分とが充分に密着されていることが要求され、一方、トランスファー成形後では、基材20と封止樹脂層26、基材20と金属箔部分とは容易に分離可能なことが要求される。このように、上記基材20と金属箔は、その密着特性において相反する特性が要求される。すなわち、上記エッチングのための薬品に対しては耐久性が、またトランスファー成形での高温下およびモールド樹脂が成形金型内を流れる際に加わる圧力下においては半導体素子21がずれることのないような耐久性が必要であるにもかかわらず、樹脂モールド後には、基材20と封止樹脂層26、基材20と金属箔とは容易に分離可能なことが要求されるのである。しかし、上記特許文献1に基材20として例示された、テフロン(登録商標)材料、シリコーン材料、あるいはテフロン(登録商標)コーティングされた金属等の材料では、このような相反する密着特性を満足することが到底できるものではなく、封止材料および半導体装置の製造方法としては満足のいくものではなかった。
【0006】
また、樹脂モールド後には、封止樹脂層26と基材20が容易に分離可能でなければならないが、上記特許文献1にはそのような要求を満足させるための提案がなされておらず、信頼性の高い半導体装置を安定して製造することは困難であるという問題を有している。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、薄型で、リードレス構造の表面実装型の半導体装置封止材料として用いられる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた表面実装型のリードレス構造の半導体装置、ならびに半導体装置の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、基板上に搭載された半導体素子の電極と、上記半導体素子の周囲に設けられた複数の導電部とを電気的に接続する電気的接続部と、上記基板と、半導体素子と、複数の導電部とが封止樹脂層中に内蔵され、上記基板の底面と導電部の底面とが、上記封止樹脂層から露出している半導体装置の上記封止樹脂層の形成に用いられる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂組成物が、ポリエチレン系ワックスを含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、基板上に搭載された半導体素子の電極と、上記半導体素子の周囲に設けられた複数の導電部とを電気的に接続する電気的接続部と、上記基板と、半導体素子と、複数の導電部とが封止樹脂層中に内蔵され、上記基板の底面と導電部の底面とが、上記封止樹脂層から露出している半導体装置であって、上記封止樹脂層が上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体によって形成されている半導体装置を第2の要旨とする。
【0010】
さらに、本発明は、上記半導体装置の製造方法であって、基材面に接着剤層を形成してなる接着シートを準備する工程と、上記接着シートの接着剤層面の所定部分に,半導体素子搭載用の基板と,複数の導電部を形成する工程と、半導体素子の電極が形成されていない面を上記基板上に固着して半導体素子を搭載する工程と、上記基板上に搭載された上記半導体素子の電極と上記導電部とを電気的に接続する工程と、上記基板と,上記基板上に搭載された半導体素子と,上記接着シート上に形成された導電部と,それらの電気的接続部とを包含するよう,ポリエチレン系ワックスを含有するエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止して接着シート面上に半導体装置を形成する工程と、上記形成された半導体装置から、接着シートを剥離する工程とを備えた半導体装置の製法を第3の要旨とする。
【0011】
本発明者らは、薄型でリードレス構造の信頼性の高い半導体装置を得るための封止材料およびそれを用いてなる製法を求めて鋭意検討を重ねた。その結果、つぎのような新規な製法とそれに用いられる特殊な封止材料を見出した。すなわち、基材面に接着剤層が形成された接着シートを準備して、この接着剤層面に、半導体素子搭載用の基板と複数の導電部を形成し、半導体素子の電極が形成されていない面を上記基板面に固着して半導体素子を搭載する。つぎに、上記基板上に搭載された上記半導体素子の電極と上記導電部とを電気的に接続した後、これら半導体素子と、導電部と、それらの電気的接続部とを包含するようにエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止して接着シート面上に半導体装置を形成する。ついで、上記形成された半導体装置から、接着シートを剥離することにより半導体装置を製造するという方法を採用し、このような製法によって得られるリードレス構造の半導体装置において、封止材料であるエポキシ樹脂組成物が、必須成分としてポリエチレン系ワックスを含有すると、成形型からの良好な離型性の付与のみならず、上記ポリエチレン系ワックスが封止樹脂部分と接着シートの接着剤層との界面に滲出し、上記接着シートからの半導体装置の剥離が容易となり、しかも信頼性の高い、リードレス構造の薄型の半導体装置が得られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明は、基板上に搭載された半導体素子の電極と、上記半導体素子の周囲に設けられた複数の導電部とを電気的に接続する電気的接続部と、上記基板と、半導体素子と、複数の導電部とが封止樹脂層中に内蔵され、上記基板の底面と導電部の底面とが、上記封止樹脂層から露出している半導体装置の上記封止樹脂層の形成に用いられる、ポリエチレン系ワックスを含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。このため、半導体装置の製造工程において、後述の接着シートからの半導体装置の剥離が容易に行えるようになる。また、このような半導体装置の製造工程において、製造された半導体装置から後述の接着シートを剥離する際に、基板上に搭載された半導体素子および導電部が全て上記エポキシ樹脂組成物によって形成された封止樹脂層中に内蔵されて良好に転写されるようになる。このようにして得られる半導体装置は、上記半導体素子を搭載した基板底面および導電部底面が、上記封止樹脂層から露出した形状となり、リードレス構造の薄型化が図られたものである。
【0013】
そして、本発明は、基材面に接着剤層が形成された接着シートの、接着剤層面に半導体素子搭載用の基板および複数の導電部を形成し、半導体素子の電極が形成されていない面を上記基板面に固着して基板上に半導体素子を搭載する。そして、基板上に搭載された上記半導体素子の電極と上記導電部とを電気的に接続した後、基板と、半導体素子と、導電部と、それらの電気的接続部とを包含するように、前記ポリエチレン系ワックスを含有するエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止して接着シート面上に半導体装置を形成する。ついで、上記形成された半導体装置から、接着シートを剥離することにより半導体装置を製造する方法である。このため、得られる半導体装置は、先に述べたように、上記半導体素子を搭載した基板底面および導電部底面が、形成された封止樹脂層から露出した形状となり、リードレス構造の薄型化が図られたものである。また、上記製造工程中において、半導体素子を搭載した基板および導電部は接着シートの接着剤層面に固着されているため、半導体素子の位置ずれ等も生じず、さらに工程数も少なくてすみ低コスト化が実現する。しかも、上記半導体装置の製造方法において、前記ポリエチレン系ワックスを含有するエポキシ樹脂組成物を用いるため、上記接着シートからの半導体装置の剥離が容易に行え、また、半導体装置から上記接着シートを剥離する際には、半導体素子を搭載した基板および導電部が全てエポキシ樹脂組成物による封止樹脂層内に包含されて良好に転写されるようになる。
【0014】
そして、上記導電部が、上下にそれぞれ張り出し部分を有していると、封止樹脂層内においてアンカー(投錨)効果を発揮することから、導電部と封止樹脂層との接合強度が一層高くなり好ましいものである。
【0015】
また、上記接着シートの接着剤層が、熱硬化型接着剤組成物により形成されると、導電部の形成が容易となる。
【0016】
さらに、上記接着シートの接着剤層が、特定の特性(x)および(y)を備えたエポキシ樹脂組成物を用いて形成されたものであると、接着シート面上に形成された半導体装置からの上記接着シートの剥離が容易となり、基板および導電部が封止樹脂層中に内蔵されて良好に転写されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の半導体装置である、リードレス構造の半導体装置について、一例をあげて説明する。すなわち、図5に示すように、この半導体装置は、基板9上に搭載された半導体素子5の上面に設けられた電極6と、その周辺の所定領域に配置された複数の導電部4上部とがワイヤー7にて電気的に接続されている。そして、半導体素子5と導電部4とが電気的に接続された空間部分である、上記基板9と半導体素子5と導電部4と上記両者を電気的に接続するワイヤー7とが、外部環境から保護するために封止樹脂層8により樹脂封止されている。また、半導体装置の底面側は、上記半導体素子5搭載面の裏側となる基板9底面および上記導電部4底面とが封止樹脂層8からそれぞれ露出しその一部が突出している。
【0018】
そして、図5に示すように、上記複数の導電部4の形状として、その上下にそれぞれ張り出し部分(リブ)4a,4bを設けることにより、封止樹脂層8内においてアンカー(投錨)効果を発揮することから、導電部4と封止樹脂層8との接合強度が一層高くなり好ましいものである。なお、上記複数の導電部4の形状としては、図5に示すように、円柱部分の上下に張り出し部分4a,4bが設けられた形状以外に、図6(a)に示すように、上下に設けられた張り出し部分4aと4b間の部分が上方に向かって徐々に断面積が小さくなるようテーパーが施された円錐台形状を有する導電部4′、図6(b)に示すように、上下に設けられた張り出し部分4aと4b間の部分が上方に向かって徐々に断面積が大きくなるようテーパーが施された逆円錐台形状を有する導電部4″があげられる。上記導電部4の形状は、その用途や種類等によって適宜決定されるが、特に、図6(b)に示す形状は、導電部4″を下部からくわえ込むため、アンカー効果を発揮しやすい。
【0019】
上記導電部4としては、縦横マトリックス状に上記導電部4が配置された独立端子である。上記独立端子とは、銅,銅を含有する合金等の金属を素材として、CSP(Chip Scale/size Package )の端子パターンが刻まれたものであり、その電気的接点部分は、銀,ニッケル,パラジウム,金等の素材により被覆(メッキ)されている場合もある。このような独立端子(導電部4)の厚みは、通常、5〜100μm程度が好ましい。
【0020】
上記独立端子は、後の切断工程にて切り分けが容易となるように、個々のCSPの配置パターンが整然と並べられているものが好ましい。
【0021】
つぎに、本発明の半導体装置における、その製法について一例をあげて説明する。
【0022】
まず、図1に示すように、基材1面に接着剤層2を形成してなる接着シート3を準備した後、この接着シート3の接着剤層2面の所定部分に、半導体素子搭載用の基板9および複数の導電部4を、それぞれその一部が接着剤層2中に埋没されるよう形成する。なお、このようにその一部が接着剤層2中に埋没するよう設けられた基板9および複数の導電部4は、接着剤層2が熱硬化型接着剤組成物の場合、後工程での加熱硬化により、接着シート3に固定されることとなり、製造工程におけるずれ等が生じず好ましいものである。
【0023】
上記接着シート3の接着剤層2面の所定部分に、基板9の一部および複数の導電部4の一部がそれぞれ接着剤層2中に埋没した状態に形成する方法としては、例えば、上記接着シート3を加熱したところに金属箔をラミネートすることにより、金属箔の一部を埋め込むことができる。ついで、一般的に用いられているフォトリソグラフを用いたパターンエッチング法により導電部以外の金属箔をエッチングし導電部4を形成することができる。なお、上記基板9および複数の導電部4の一部を接着剤層2中に埋没させる場合の埋没部分の厚みは、スタンドオフ構造を有する半導体装置の実装信頼性を高める観点から、基板9および導電部4の各厚み全体の5〜30%となるよう設定することが好ましい。
【0024】
ついで、図2に示すように、半導体素子5の電極6が形成されていない面を上記基板9に従来公知の接着剤等を介して固着し基板9上に半導体素子5を搭載する。つぎに、図3に示すように、基板9上に搭載された上記半導体素子5の電極6と上記導電部4とをワイヤー7により電気的に接続する(ワイヤーボンディング)。
【0025】
上記ワイヤーボンディングした後、図4に示すように、上記基板9と、基板9上に搭載された半導体素子5と、上記接着シート3上に形成された導電部4と、ワイヤー7とを包含するように、特定の特性を備えたエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止して封止樹脂層8を形成することにより接着シート3面上に半導体装置を形成する。そして、接着シート3面上に半導体装置を形成した後、この半導体装置から接着シート3を剥離することにより、図5に示す構造の半導体装置が得られる。
【0026】
上記エポキシ樹脂組成物を用いての樹脂封止は、例えば、通常のトランスファーモールド法により金型を用いて行われる。なお、モールド後には必要に応じて封止樹脂層8の後硬化加熱を行うようにする。この後硬化加熱は、半導体装置から接着シート3を剥離する前に行ってもあるいは剥離後に行ってもよいが、剥離前に行う方が接着シート3の剥離が容易となり好ましい。
【0027】
上記半導体装置の製造において用いられる接着シート3は、樹脂封止工程が完了するまで半導体素子5搭載用の基板9や導電部4を確実に固着し、しかも半導体装置から剥離する際には容易に剥離可能なものであることが好ましい。このような特性を備えた接着シート3は、前述のように、基材1面に接着剤層2が形成された構成からなる。上記基材1の厚みは、特に限定するものではないが、ハンドリング性の観点から、通常、10〜200μm程度、より好ましくは25〜100μm、特に好ましくは50〜100μmの範囲に設定される。また、上記接着剤層2の厚みは、特に限定されるものではないが、製膜性の観点から、通常、1〜50μm程度、より好ましくは5〜30μmの範囲に設定される。
【0028】
そして、上記基材1としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート等のプラスチック製基材、およびこれらの多孔質基材、グラシン紙、上質紙、和紙等の紙製基材、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、アラミド等の不織布、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔、ニッケル箔等の金属製フィルム基材等があげられる。これらのなかでも、取り扱い性の容易さという観点から、金属製フィルム基材を用いることが好ましい。
【0029】
上記接着シート3の接着剤層2を形成する接着剤組成物としては、シリコーン系やアクリル系等の各種感圧性接着剤、エポキシ樹脂/ゴム系接着剤、ポリイミド系接着剤等の各種接着剤があげられる。なかでも、耐熱性および接着性の観点から、熱硬化型接着剤組成物が好ましく用いられ、特に、エポキシ樹脂に弾性体(例えばゴム成分)を配合したエポキシ樹脂組成物が好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂(a成分)、エポキシ樹脂用硬化剤(b成分)、弾性体(c成分)を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物が好ましく用いられる。このエポキシ樹脂組成物を用いる場合、通常、基板および導電部の形成素材の貼り合わせは、未硬化のいわゆるBステージ状態(半硬化状態)にして貼り合わせることが可能であり、150℃未満の比較的低温にて貼り合わせることが可能である。しかも、貼り合わせた後に熱硬化させることにより弾性率を向上させ耐熱性を向上させることができる。
【0030】
上記エポキシ樹脂(a成分)としては、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0031】
また、上記エポキシ樹脂(a成分)としては、接着シート剥離後の糊残りを防止するという観点から、エポキシ当量1000g/eq以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは650g/eq以下のものである。
【0032】
上記エポキシ樹脂(a成分)の含有量は、耐熱性および柔軟性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体の40〜95重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは60〜80重量%である。
【0033】
上記エポキシ樹脂用硬化剤(b成分)としては、例えば、フェノール樹脂、各種イミダゾール系化合物およびその誘導体、ヒドラジン化合物、ジシアンジアミドおよびこれらをマイクロカプセル化したもの等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、例えば、硬化剤としてフェノール樹脂を用いる場合は、さらに硬化促進剤として、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物等を併用してもよい。
【0034】
上記硬化剤(b成分)の含有量は、その種類によって異なり一概に特定することができないが、例えば、フェノール樹脂の場合、エポキシ樹脂と当量となるように含有することが好ましい。その他の硬化剤および硬化促進剤の含有量は、それぞれ、エポキシ樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.05〜5部の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.1〜3部である。
【0035】
また、上記弾性体(c成分)としては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム等のエポキシ樹脂系接着剤に従来から使用されるゴム成分、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、封止樹脂層を形成した後の接着シートの剥離の容易さという観点から、NBRを用いることが好ましく、特にアクリロニトリルを5重量%以上、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%共重合したものが好ましい。さらには、カルボキシル基で変性したゴムを用いることがより好ましい。このようなゴムとしては、具体的には日本ゼオン社製のNipol 1072J 等のアクリロニトリル−ブタジエンゴム、根上工業社製のパラクロンME2000等のアクリルゴム等があげられる。
【0036】
上記弾性体(c成分)の含有量は、柔軟性および耐熱性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体の5〜40重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。
【0037】
さらに、上記エポキシ樹脂(a成分)、エポキシ樹脂用硬化剤(b成分)および弾性体(c成分)以外に、接着シートの諸特性を劣化させない範囲内で、導電性付与充填剤、無機質充填剤、有機質充填剤、老化防止剤、顔料、シランカップリング剤、粘着付与剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。これら添加剤のなかでも、老化防止剤は高温での劣化を防止する上で有効な添加剤であり、好ましく用いられる。
【0038】
さらに、接着シート3には、必要に応じて静電防止機能を設けることができる。この接着シート3に静電防止機能を付与する方法としては、接着剤層2,基材1の各形成材料に帯電防止剤,導電性フィラーを混合する方法があげられる。また、基材1と接着剤層2との界面や、基材1の裏面に帯電防止剤を塗布して帯電防止層を形成する方法があげられる。このように、接着シート3に静電防止機能を付与することにより、接着シート3を半導体装置から分離するときに発生する静電気を抑制することができる。上記帯電防止剤としては、上記静電防止機能を有するものであれば特に限定するものではないが、具体的には、アクリル系両性界面活性剤、アクリル系カチオン界面活性剤、無水マレイン酸−スチレン系アニオン界面活性剤等の各種界面活性剤等があげられる。また、帯電防止層形成材料としては、具体的には、コニシ社製の、ボンディップPA、ボンディップPX、ボンディップP等があげられる。また、上記導電性フィラーとしては、従来公知のものを用いることができ、例えば、Ni,Fe,Cr,Co,Al,Sb,Mo,Cu,Ag,Pt,Au等の金属、これらの合金または酸化物、カーボンブラック等のカーボン等が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記導電性フィラーとしては、粉体状、繊維状のいずれであってもよい。
【0039】
上記接着シート3の製法としては、接着剤層2形成材料を有機溶剤に溶解させた溶液を基材1に塗布して加熱乾燥する方法、接着剤層2形成材料を水系媒体に分散させた分散液を基材1に塗布し、加熱乾燥する方法等があげられる。より詳しく述べると、接着シート3は、例えば、つぎのようにして作製される。すなわち、接着剤層2形成材料である上記各成分を混合し有機溶媒に溶解することにより接着剤溶液を調製する。ついで、基材1面に上記接着剤溶液を塗布した後、乾燥させて有機溶剤を除去することにより基材1面に接着剤層2が形成された接着シートが作製される。上記有機溶媒としては、溶解性の観点から、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤を用いることが好ましい。さらに、上記接着剤層2が複数層からなる接着シート3の製法としては、基材1上に順次接着剤層を形成する方法や、剥離ラミネート等を用いて予め別途作製した接着剤層を、他の接着剤層や基材1上に貼り合わせる方法、またはこれらの方法を適宜組み合わせて製造する方法があげられる。
【0040】
そして、半導体装置の製造に際して、接着シート3の接着剤層2中に基板9および導電部4の一部を埋没させるために、接着シート3と基板9および導電部4の形成材料となる導体とを貼り合わせる温度においては、低粘度であることが好ましく、また加熱硬化後は上記埋没した基板9および導電部4を安定して固定させるために高粘度であることが好ましい。さらに、半導体装置の製造に際しては、上記ワイヤーボンディング工程や樹脂封止工程において200℃近い熱履歴が加わることもあるため、接着シート3としてはそのような環境下においても安定した製造工程が可能となるよう優れた耐熱性を有することが好ましい。また、同様に上記接着シート3の基材1に対しても、上記ワイヤーボンディング工程時に硬さを維持していることが要求される。このような観点から、上記接着シート3としては、つぎのような特性を備えていることが好ましい。すなわち、接着剤層2の硬化前の120℃における弾性率は、1×102 〜1×104 Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは1×102 〜1×103 Paの範囲である。また、硬化後の接着剤層2の200℃における弾性率は、1MPa以上であることが好ましく、より好ましくは1.5〜100MPaである。さらに、硬化後の接着剤層2におけるガラス転移温度は150℃以上が好ましく、より好ましくは170℃以上である。すなわち、上記接着剤層2の硬化前の120℃における弾性率が1×104 Paを超える接着剤はその構造上作製が困難である。また、硬化後の接着剤層2のガラス転移温度が150℃未満では、後述するワイヤーボンディング工程(通常150℃以上)等で導電部4のぐらつきが生じてしまい成功率が低下する等の不具合が生じる傾向がみられる。また、後述する封止樹脂モールディング工程(175℃が通常条件)で接着剤層2が流動してしまい、その後の剥離工程で重剥離の原因となる傾向がみられるからである。さらに、硬化後の接着剤層2の200℃における弾性率が1MPa未満では、上記と同様に後述するワイヤーボンディング工程(通常150℃以上)等で導電部4のぐらつきが生じてしまい成功率が低下する等の不具合が生じる傾向がみられるからである。
【0041】
また、接着シート3の基材1の200℃における弾性率が1.0GPa以上であることが好ましい。なお、上記基材1の200℃における弾性率の上限は、一般に、1000GPaである。すなわち、基材1の200℃における弾性率が1.0GPa未満では、ワイヤーボンディング工程においてボンディング時にかかる力に対して充分な抗力を発揮できなくなる傾向がみられるからである。
【0042】
このような各弾性率を有することにより、図3に示すワイヤーボンディング工程等において接着剤層2の軟化・流動を生起し難く、より安定した結線が可能となる。なお、上記各弾性率は、例えば、上記各温度条件下、レオメトリックス社製の粘弾性スペクトルメータ(ARES)を用い、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、引張モードにて測定することができる。
【0043】
つぎに、上記封止樹脂層8形成材料である本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物としては、ポリエチレン系ワックスを必須成分として含有することを特徴とするものであり、その構成としては、例えば、上記ポリエチレン系ワックスとともに、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、硬化促進剤(C成分)と、無機質充填剤(D成分)とを用いて得られ、通常、粉末状、もしくはこれを打錠したタブレット状になっている。
【0044】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0045】
上記フェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂(A成分)の硬化剤としての作用を奏するものであり、フェノールノボラック、ナフトールノボラック、ビフェニルノボラック等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0046】
上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基当量が0.5〜2.0当量となるように配合することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2当量である。
【0047】
上記A成分およびB成分とともに用いられる硬化促進剤(C成分)は、アミン型,リン型等のものがあげられる。上記アミン型としては、2−イミダゾール等のイミダゾール類、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等の三級アミン類等があげられる。また、上記リン型としては、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記硬化促進剤(C成分)の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜2.0重量%の割合に設定することが好ましい。さらに、エポキシ樹脂組成物の流動性を考慮すると、特に好ましくは0.15〜0.35重量%である。
【0048】
上記A〜C成分とともに用いられる無機質充填剤(D成分)としては、特に限定するものではなく従来公知の各種無機質充填剤が用いられ、例えば、石英ガラス粉末、シリカ粉末、アルミナ、タルク等があげられる。特に好ましくは球状溶融シリカ粉末、粉砕シリカ粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記無機質充填剤(D成分)の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の80〜90重量%の割合に設定することが好ましく、より好ましくは85〜90重量%である。
【0049】
そして、半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、必須成分であるポリエチレン系ワックスは、離型剤としての作用を奏するものであり、好ましくは酸化ポリエチレンワックスが用いられる。より詳しくは、滴点100〜140℃で、酸価10〜30mgKOH/gの範囲の酸化ポリエチレンワックスを用いることが特に好ましい。通常、封止材料であるエポキシ樹脂組成物中に含有される離型剤は、成形型との離型性を想定して使用される。しかし、本発明においては、成形型との離型性だけではなく、前記接着シート3の接着剤層2との剥離性をも考慮しなければならない。したがって、本発明において、離型剤としてポリエチレン系ワックス以外の離型剤を用いると、上記接着剤層2との剥離に際して、エポキシ樹脂組成物硬化体(封止樹脂層8)と接着剤層2との界面に充分な量の離型剤が滲出しないため、接着シート3の剥離が困難となり高い剥離力を要することとなる。
【0050】
上記ポリエチレン系ワックスの含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.05〜1.3重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは0.1〜1.0重量%である。すなわち、0.05重量%未満では、成形型に対する離型性の低下とともに封止樹脂層8と接着シート3との剥離性の向上が得られ難く、1.3重量%を超えると、成形型表面および成形物表面にワックスが多量に滲み出してきて、汚れ(ステイン,フローマーク)の原因となる傾向がみられるからである。
【0051】
上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、上記各成分以外に必要に応じて、カーボンブラック等の顔料や着色料、シランカップリング剤、難燃剤、難燃助剤、イオントラップ剤、低応力化剤、粘着付与剤等の他の添加剤を適宜配合することができる。
【0052】
上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、例えば、前記A〜D成分および上記ポリエチレン系ワックスならびに必要に応じて他の添加剤を配合し混合した後、熱ロールやニーダー等の混練機にかけ加熱状態で溶融混合し、これを室温に冷却した後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により製造することができる。
【0053】
つぎに、本発明を実施例にもとづいて具体的に説明する。
【0054】
まず、実施例に先立って下記に示す各成分を準備した。
【0055】
〔エポキシ樹脂a〕
下記の一般式(a)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量192、融点100℃)
【化1】

【0056】
〔エポキシ樹脂b〕
下記の一般式(b)で表される繰り返し単位を有するエポキシ樹脂(エポキシ当量170、融点60℃)
【化2】

【0057】
〔エポキシ樹脂c〕
下記の一般式(c)で表されるエポキシ樹脂(エポキシ当量198、融点60℃)
【化3】

【0058】
〔フェノール樹脂a〕
下記の一般式(d)で表されるビフェニルノボラック樹脂(水酸基当量203、融点90℃)
【化4】

【0059】
〔フェノール樹脂b〕
下記の一般式(e)で表されるフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量170、融点83℃)
【化5】

【0060】
〔フェノール樹脂c〕
下記の一般式(f)で表されるフェノール樹脂(水酸基当量215、融点81℃)
【化6】

【0061】
〔硬化促進剤〕
トリフェニルホスフィン(TPP)
【0062】
〔離型剤a〕
酸化ポリエチレンワックス(滴点103〜108℃、酸価15〜19mgKOH/g)
【0063】
〔離型剤b〕
酸化ポリエチレンワックス(滴点108〜113℃、酸価16〜19mgKOH/g)
【0064】
〔離型剤c〕
カルナバワックス
【0065】
〔無機質充填剤a〕
平均粒径30μmの球状溶融シリカ粉末
【0066】
〔無機質充填剤b〕
平均粒径1μmの球状溶融シリカ粉末
【0067】
〔カーボンブラック〕
【実施例1】
【0068】
〔接着シートの作製〕
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(Nipol 1072J 、日本ゼオン社製、アクリロニトリル含有量18重量%)20部、エポキシ樹脂(EPPN−501HY、日本化薬社製)50部、フェノール樹脂(MEH−7500−3S、明和化成社製)30部、触媒(TPP、北興化学社製)0.5部をメチルエチルケトン(MEK)350部に溶解して接着剤溶液を調製した。ついで、上記接着剤溶液を用いて、厚み100μmの片面粗化銅合金箔(BHY−13B−7025、ジャパンエナジー社製)に塗布した後、150℃で3分間乾燥させることにより、厚み15μmの接着剤層が形成された接着シートを作製した。上記接着シートの接着剤層の硬化前の100℃での弾性率は2.5×10-3Paであり、硬化後の200℃での弾性率は4.3MPaであった。また、銅合金箔に対する接着力は、12N/20mmであった。そして、上記接着シートの接着剤層の硬化後のガラス転移温度は190℃であった。さらに、基材として用いた銅合金箔の200℃での弾性率は130GPaであった。なお、上記ガラス転移温度は、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置(DMA)を用い、昇温速度5℃/分で測定した。また、上記各弾性率は、各温度条件下、つぎのようにして測定した。
評価機器:レオメトリックス社製の粘弾性スペクトルメータ(ARES)
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
測定モード:引張モード
【0069】
また、上記接着剤層の銅合金箔に対する接着力は、つぎのようにして測定した。すなわち、幅20mm×長さ50mmの接着シートを120℃×0.5MPa×0.5m/minの条件で35μm銅箔(C7025,ジャパンエナジー社製)にラミネートした後、150℃の熱風オーブンにして1時間放置後、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で引張速度300mm/min、180°方向に35μm銅箔を引っ張り、その中心値を接着力とした。
【0070】
〔エポキシ樹脂組成物の作製〕
後記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、80〜120℃に加熱したロール混練機(5分間)にかけて溶融混練することによりエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0071】
〔半導体装置の製造〕
まず、図1に示すように、上記作製した接着シート3を準備し、この接着シート3の接着剤層2面の所定部分に、半導体素子搭載用の基板9(大きさ:4.2mm×4.2mm)および複数の導電部4(大きさ:直径0.3mm)を形成した。
【0072】
上記基板9および導電部4の形成は、つぎのようにして行った。すなわち、銅にニッケル/パラジウム/金で、上記に記載のパターンをメッキした金属箔を接着シート3の接着剤層2面に120℃で貼り付け、導電部の一部を接着剤層2に埋没させた。ついで、一般的に用いられているフォトリソグラフを用いたパターンエッチング法により導電部以外の銅をエッチングし独立した導電部4を形成した。このようにして接着シート3の接着剤層2中に基板9および導電部4の一部が埋没した状態のものを作製した。
【0073】
ついで、図2に示すように、半導体素子5の電極が形成されていない面を上記接着シート3の基板9上に接着剤(日立化成社製、EN−4000)を用いて固着することにより半導体素子5(大きさ:3.5mm×3.5mm)を搭載した。つぎに、図3に示すように、基板9上に搭載された上記半導体素子5の電極6と上記導電部4とをワイヤー7により電気的に接続した(ワイヤーボンディング)。
【0074】
ワイヤーボンディングした後、図4に示すように、上記基板9上に搭載された半導体素子5と、上記接着シート3上に形成された導電部4と、ワイヤー7とを包含するようにエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止して封止樹脂層8(厚み0.45mm)を形成することにより接着シート3面上に半導体装置を形成した。なお、上記樹脂封止は、トランスファー成形により行った。
【0075】
〔トランスファー成形条件〕
成形温度:175℃
時間:120秒
クランプ圧力:200kN
トランスファースピード:3mm/秒
トランスファー圧:5kN
【0076】
〔半導体装置(パッケージ)のサイズ〕
1パッケージ当たり156個の導電部(直径0.3mm)を有する。
パッケージ全体のサイズ:8.2mm×8.2mm
パッケージ(封止樹脂層8)の厚み:0.45mm
【0077】
〔実施例2〜9、比較例1〜5〕
エポキシ樹脂組成物の配合成分および配合量を後記の表1〜表2に示す内容に変更し、上記実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。そして、上記実施例1と同様にして接着シート3面上に半導体装置を形成した。
【0078】
このようにして、接着シート3面上に形成された状態の半導体装置を用い、この半導体装置から接着シート3を剥離することにより、図5に示す構造の半導体装置を作製した。得られた半導体装置はいずれもリードレス構造で封止樹脂層8の厚みのみの薄型タイプであり、その下面には半導体素子を搭載した基板9の一部および導電部4の一部が露出した状態となっている。なお、上記接着シート3の剥離は、温度23℃で湿度65%RHの雰囲気条件下、引張速度300mm/分で、90°方向に接着シート3を引っ張り、その中心値を接着強度として剥離力を測定した。その結果を下記の表1〜表2に併せて示す。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
上記結果から、酸化ポリエチレンワックスを含有するエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止した実施例1〜5は、剥離力が0.1N/50mmと低く、接着シートを容易に剥離することができ作業性に優れたものであり、表面実装型でリードレス構造の信頼性の高い半導体装置を容易に製造することがわかる。また、実施例6,7は、それぞれ酸化ポリエチレンワックスの配合量が特に好ましい範囲の下限値および上限値であり、実施例6は実施例1〜5に比べて高い値となっているが容易に剥離可能であり作業性に問題はなく、実施例7も剥離性が向上したことがわかる。さらに、実施例8,9は、それぞれ酸化ポリエチレンワックスの配合量を好ましい範囲の上限値を上回るよう設定したものであり、剥離性に関してはその値が小さく問題のないものであったが、ワックスの滲み出しにより成形金型表面や成形体表面に汚れが観察された。
【0082】
これに対して、離型剤としてカルナバワックスを含有するエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止した比較例1〜5は、剥離力が10N/50mmと高く製造工程において剥離が困難なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明における半導体装置の製法により得られる半導体装置の一例を示す断面図である。
【図6】(a)および(b)はそれぞれ導電部の他の形状を示す断面図である。
【図7】従来の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】従来の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 基材
2 接着剤層
3 接着シート
4 導電部
5 半導体素子
6 電極
7 ワイヤー
8 封止樹脂層
9 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に搭載された半導体素子の電極と、上記半導体素子の周囲に設けられた複数の導電部とを電気的に接続する電気的接続部と、上記基板と、半導体素子と、複数の導電部とが封止樹脂層中に内蔵され、上記基板の底面と導電部の底面とが、上記封止樹脂層から露出している半導体装置の上記封止樹脂層の形成に用いられる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂組成物が、ポリエチレン系ワックスを含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
上記ポリエチレン系ワックスが、酸化ポリエチレンワックスである請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
上記導電部が、上下にそれぞれ張り出し部分を有している請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
基板上に搭載された半導体素子の電極と、上記半導体素子の周囲に設けられた複数の導電部とを電気的に接続する電気的接続部と、上記基板と、半導体素子と、複数の導電部とが封止樹脂層中に内蔵され、上記基板の底面と導電部の底面とが、上記封止樹脂層から露出している半導体装置であって、上記封止樹脂層が請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体によって形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
上記導電部が、上下にそれぞれ張り出し部分を有している請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の半導体装置の製造方法であって、基材面に接着剤層を形成してなる接着シートを準備する工程と、上記接着シートの接着剤層面の所定部分に,半導体素子搭載用の基板と,複数の導電部を形成する工程と、半導体素子の電極が形成されていない面を上記基板上に固着して半導体素子を搭載する工程と、上記基板上に搭載された上記半導体素子の電極と上記導電部とを電気的に接続する工程と、上記基板と,上記基板上に搭載された半導体素子と,上記接着シート上に形成された導電部と,それらの電気的接続部とを包含するよう,ポリエチレン系ワックスを含有するエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止して接着シート面上に半導体装置を形成する工程と、上記形成された半導体装置から、接着シートを剥離する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製法。
【請求項7】
上記ポリエチレン系ワックスが、酸化ポリエチレンワックスである請求項6記載の半導体装置の製法。
【請求項8】
上記導電部が、上下にそれぞれ張り出し部分を有している請求項6または7記載の半導体装置の製法。
【請求項9】
上記接着シートの接着剤層が、熱硬化型接着剤組成物を用いて形成されたものである請求項6〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製法。
【請求項10】
上記接着シートの接着剤層が、下記の特性(x)および(y)を備えたエポキシ樹脂組成物を用いて形成されたものである請求項6〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製法。
(x)硬化後のガラス転移温度が150℃以上である。
(y)硬化後の200℃での弾性率が1MPa以上である。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−77213(P2006−77213A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265813(P2004−265813)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】