説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】低コストでありながら、作業性、高流動性、耐燃性、耐半田クラック性のバランスに優れた半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】半導体を封止するのに用いられるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ当量が350g/eq以上、600g/eq以下である特定のビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と、結晶性エポキシ化合物(A−2)と、特定のノボラック型フェノール樹脂(B)と、当該樹脂組成物の全量に対する配合割合が75質量%以上、93質量%以下である無機充填材(C)と、を含み、特定の全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃以上、90℃以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、ならびに、その半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)、超大規模集積回路(VLSI)等の電子部品や半導体装置の高密度化、高集積化に伴い、それらの実装方式は、挿入実装から表面実装に移り変わりつつある。それに伴い、リードフレームの多ピン化及びリードの狭ピッチ化が要求されており、小型・軽量でかつ多ピン化に対応できる表面実装型のQFP(Quad Flat Package)等が各種の半導体装置に用いられている。そしてその半導体装置は、生産性、コスト、信頼性等のバランスに優れることからエポキシ樹脂組成物を用いて封止されるのが主流となっている。
【0003】
従来、難燃性を付与する目的から、半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、臭素含有エポキシ樹脂、酸化アンチモンが一般的に使用されてきたが、近年、環境保護の観点からダイオキシン類似化合物を発生する危惧のある含ハロゲン化合物や毒性の高いアンチモン化合物の使用を規制する動きが高まっている。こうした中、ブロム化エポキシ樹脂やアンチモン化合物に代わる難燃性付与剤として、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が使用されてきているが、溶融樹脂粘度の増大化による流動性の低下や耐半田性の低下という課題があった。
【0004】
上記のような状況から、難燃性付与剤を添加せずとも良好な難燃性が得られる半導体エポキシ樹脂組成物として、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。これらのエポキシ樹脂組成物は、耐燃性、耐半田クラック性、熱時低弾性率、高接着性で、難燃性に優れ、信頼性の高い半導体装置を得ることができるものの、これらの樹脂の製造には、コストがかかる、また、薄型の半導体装置を封止する際に流動性が十分でない場合があるという難点があった。
さらに近年では、1パッケージ内にチップを積層する構造、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置が登場している。このような半導体装置では、従来よりも樹脂封止部分の肉厚が薄くなることで未充填が発生しやすい、あるいは成形中のワイヤ流れが発生しやすいなど、封止工程の歩留まりを低下させる懸念がある。そこで、樹脂組成物の流動特性を向上させるために、低分子量のエポキシ樹脂又はフェノール樹脂硬化剤を用いる手法が想起されるが、同手法によって、樹脂組成物(タブレット)同士の固着による成形工程中の搬送不良、設備停止を起こしやすい(作業性の低下)、硬化性低下によって耐半田性、耐燃性、成形性のいずれかの特性が損なわれる、などの不具合が発生する場合がある。以上のように、半導体装置の細線化、薄型化によって、樹脂組成物は、従来以上に流動性を向上させつつ、作業性、耐半田クラック性、耐燃性、連続成形性を確保し、バランスさせることが重要課題となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−203911号公報
【特許文献2】特開2004−155841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低コストでありながら、作業性、高流動性、耐燃性、耐半田クラック性のバ
ランスに優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、半導体を封止するのに用いられるエポキシ樹脂組成物であって、下記一般式(1):
【化1】

(上記一般式(1)において、R1は炭素数1〜2の炭化水素基、又は水素原子であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0〜2の整数である。nは0〜20の整数であり、全体の平均値は0.5より大きく、5より小さい正数である。)で表され、かつエポキシ当量が350g/eq以上、600g/eq以下であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と、結晶性エポキシ化合物(A−2)と、下記一般式(2):
【化2】

(上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。bは0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、その平均値は1〜5の正数ある。)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)と、当該樹脂組成物の全量に対する配合割合が75質量%以上、93質量%以下である無機充填材(C)と、を含み、前記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃以上、90℃以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と前記結晶性エポキシ化合物(A−2)との配合割合が、その合計量100質量%に対して、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)が65質量%以上、90質量%以下、結晶性エポキシ化合物(A−2)が10質量%以上、35質量%以下であるものとすることができる。
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と前記結晶性エポキシ化合物(A−2)との合計量が、全エポキシ樹脂に対して、50質量%以上であるものとすることができる。
【0010】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm=0成分の含有割合が面積分率で19%以下であり、かつm=1成分の含有割合が面積分率で15%以上、75%以下であり、かつm≧2成分の含有割合が面積分率で12%以上、70%以下であるものとすることが
できる。
【0011】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm=0成分の含有割合が面積分率で12%以下であるものとすることができる。
【0012】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm≧2成分の含有割合が面積分率で25%以上、50%以下であるものとすることができる。
【0013】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm=1成分の含有割合が面積分率で30%以上、70%以下であるものとすることができる。
【0014】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記結晶性エポキシ化合物(A−2)が、ビフェニル型エポキシ、ビスフェノール型エポキシからなる群から選択される少なくとも1種であるものとすることができる。
【0015】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記結晶性エポキシ化合物(A−2)が、置換基として炭素数1〜3のアルキル基を有するビフェニル型エポキシ、置換基として炭素数1〜3のアルキル基を有するビスフェノール型エポキシからなる群から選択される少なくとも1種であるものとすることができる。
【0016】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記無機充填材(C)がシリカであるものとすることができる。
【0017】
本発明の半導体装置は、上述の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、低コストでありながら、作業性、高流動性、耐半田クラック性、耐燃性のバランスに優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図2】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、半導体を封止するのに用いられるエポキシ樹脂組成物であって、一般式(1)で表され、かつエポキシ当量が特定範囲であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と、結晶性エポキシ化合物(A−2)と、一般式(2)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)と、配合割合が特定範囲の無機充填材(C)と、を含み、前記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃以上、90℃以下であることによって、低コストでありながら、高流動性、耐半田クラック性
、耐燃性のバランスに優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置が得られるものである。以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
先ず、半導体封止用エポキシ樹脂組成物について説明する。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂として下記一般式(1)で表され、かつエポキシ当量が350g/eq以上、600g/eq以下であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)を用いることができる。
【0022】
【化1】

【0023】
一般式(1)において、R1は炭素数1〜2の炭化水素基、又は水素原子であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、水素原子又はメチル基であることが好ましい。R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、メチル基であることが好ましい。aは0〜2の整数である。nは0〜20の整数であり、全体の平均値は0.5より大きく、5より小さい正数である。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)は、分子の両末端にグリシジル基を有し、n≧1の場合には、架橋点間距離が長く、かつ、分子中に水酸基を含む構造をとるものである。このような構造によって、特定範囲のエポキシ当量となるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)を用いた樹脂組成物は、半田リフロー温度領域で低弾性率と高密着性とを示し、結果として優れた耐半田性を発現する。
【0024】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)のエポキシ当量の下限値は、350g/eqで以上であることが好ましく、より好ましくは380g/eq以上、さらに好ましくは410g/eq以上である。エポキシ当量の下限値が上記範囲内であると、耐半田性に優れる。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)のエポキシ当量の上限値は、600g/eqで以下であることが好ましく、より好ましくは550g/eq以下、さらに好ましくは500g/eq以下である。エポキシ当量の上限値が上記範囲内であると、耐湿性と流動性に優れる。
【0025】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応により得ることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)の製造に用いられるビスフェノール類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールE等が挙げられ、これらを単独で用いても、複数用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFが安価で入手できる点で好ましい。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)の合成方法については特に限定しないが、例えば、ビスフェノール類を過剰のエピクロルヒドリンに溶解させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で30〜150℃、好ましくは40〜100℃で0.5〜10時間反応させる方法等が挙げられる。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することによりビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)を得ることができる。本発明で規定する特定の当量を得る方法としては、エピハロヒドリンの配合量を低減する、反応系に低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂を加えて、2段法で合成する、又
は合成温度を高くする、などの手法によってエポキシ当量を高く調整することができる。また、このほか公知の方法で合成したもの、又は市販される一般式(1)で示されるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)を用いてもよい。市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製1001、1002、DIC株式会社製1050、1055、東都化成株式会社製YDF−011、YDF−7011R、YD−901のなどを挙げることができる。また、市販のビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、東都化成株式会社製YDF−2001を例示することができる。
【0026】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と同時に結晶性エポキシ化合物(A−2)用いることができる。結晶性エポキシ化合物(A−2)は、分子量が小さく溶融粘度が低いことから、結晶性エポキシ化合物(A−2)を用いた樹脂組成物の良好な流動性を発現することができる。また、特定範囲のエポキシ当量を有するビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)、特定範囲の軟化点を有するノボラック型フェノール樹脂(B)と組み合わせた場合において、燃焼試験時の表面発泡層が速やかに形成され、耐燃性が優れる点で好ましい。その機構については推定の域をでないが、硬化物の熱時弾性率が適正な範囲となり、熱分解時又は着火時に硬化物の内部で発生する熱分解ガスが、硬化物の表面層をゴムのように膨張させて表面発泡層を形成し、この表面発泡層による未燃焼部への酸素の遮断及び断熱作用によって、硬化物が自己消火性を示すためと考えられる。
【0027】
このような、結晶性エポキシ化合物としては、たとえば、アルキル置換又は非置換のビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D、オキシビスフェノール等のジグリシジルエーテル化合物を挙げることができ、市販品としては新日鐵化学株式会社製YSLV−80XY(テトラメチルビスフェノールF型エポキシ)、同YSLV−120TE(アルキル置換型ビスフェノールS型エポキシ)、ジャパンエポキシレジン製YX−4000(テトラメチルビフェノールのエポキシ)、ジャパンエポキシレジン製YL6810(ビスフェノールA型エポキシ)などを挙げることができる。
【0028】
また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物におけるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と結晶性エポキシ化合物(A−2)との配合割合は、その合計量100質量%に対して、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)が65質量%以上、90質量%以下、結晶性エポキシ化合物(A−2)が10質量%以上、35質量%以下であることが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)が70質量%以上、80質量%以下、結晶性エポキシ化合物(A−2)が20質量%以上、30質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂組成物におけるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と結晶性エポキシ化合物(A−2)との割合が上記範囲内にあると、耐半田性に優れながら、かつ高流動性、低吸水性にも優れる。また、エポキシ樹脂組成物におけるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と結晶性エポキシ化合物(A−2)との割合が上記範囲内にあると、特定範囲の軟化点を有するノボラック型フェノール樹脂(B)と組み合わせによる耐燃性の向上効果をより効果的に発現することができる。
【0029】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と結晶性エポキシ化合物(A−2)とを併用する上述の効果が損なわれない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用することができる。併用できるエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナ
フトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール又はジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。半導体封止用エポキシ樹脂組成物としての耐湿信頼性を考慮すると、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンが極力少ない方が好ましく、硬化性の点からエポキシ当量としては100g/eq以上500g/eq以下が好ましい。
【0030】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と結晶性エポキシ化合物(A−2)の合計の配合割合の下限値は、全エポキシ樹脂中に、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、耐半田性に優れながら、かつ高流動性、低吸水性にも優れる効果を得ることができる。
【0031】
エポキシ樹脂全体の配合割合の下限値は、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値は、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性を有する。
【0032】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には硬化剤として、下記一般式(2)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)を用いることができるが、下記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃以上、90℃以下であることが好ましい。下記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。bは0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、その平均値は1〜5の正数である。下記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)を用いた樹脂組成物であって、かつ下記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が上記の特定範囲の軟化点となる場合には、作業性、流動性、耐半田性を向上させることができる。なお、下記一般式(2)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)を1以上用いる場合において、下記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が上記の特定範囲の軟化点となれば、下記一般式(2)で表される個別のノボラック型フェノール樹脂(B)の軟化点については、上記の特定範囲ではないものを含んでいてもよいが、一般式(2)で表される個別のノボラック型フェノール樹脂(B)の軟化点の全てが、上記の特定範囲である場合がより好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
一般式(2)で表される個別のノボラック型フェノール樹脂(B)は、上述の構造であれば、特に限定されないが、その軟化点の下限値は、55℃以上であることが好ましく、
より好ましくは60℃以上である。一般式(2)で表される個別のノボラック型フェノール樹脂(B)の軟化点の下限値が上記範囲内であると、ノボラック型フェノール樹脂のブロッキングが生じにくく作業性を損なう恐れが少ない。また、一般式(2)で表される個別のノボラック型フェノール樹脂(B)の軟化点の上限値は90℃以下であることが好ましく、より好ましくは85℃以下である。一般式(2)で表される個別のノボラック型フェノール樹脂(B)の軟化点の上限値が上記範囲内であると、これを用いたエポキシ樹脂組成物は流動性に優れ、耐半田性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0035】
本発明では、一般式(2)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)は、一般式(2)の構造で表され、全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が上述の範囲であれば、分子量分布に特に制限はないが、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、以下の分子量分布の範囲であることが好ましい。
【0036】
一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)に対するm=0成分の含有割合は、GPCの面積分率法で19%以下が好ましく、12%以下がより好ましい。m=0成分は、もっとも低分子であり、温度や湿度によっては樹脂組成物中で可塑剤的な作用を奏するために、樹脂組成物同士が融着(タブレット固着)し、作業性が低下する場合がある。また、m=0成分のフェノール性水酸基は1分子あたり2個であり、かつ、本発明に用いるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)のエポキシ基も1分子あたり2個であるために、硬化反応においては架橋構造よりも鎖長構造が優先的に形成され、硬化物の硬度が不足し連続成形性が低下する場合がある。このため、m=0成分の含有割合が上述の上限値を超えた場合には、樹脂組成物のブロッキング性や連続成形性が低下する場合がある。
【0037】
一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)に対するm=1成分の含有割合は、GPCの面積分率で15%以上、75%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以上、70%以下、さらに好ましくは、40%以上、65%以下である。m=1の成分は、m=0に次いで低分子量かつ低粘度であり、高流動性を発現するが、過剰に存在する場合には、m=0成分同様のタブレット固着の問題が生じる場合がある。また、一分子内に3個のフェノール性水酸基を有することから、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)のような2官能のエポキシ樹脂と架橋構造を形成し、良好な硬化性、成形性を発現することが可能である。このため、m=1成分が上述の上限値を超えると、樹脂組成物同士のブロッキングが起こる場合があり、上記下限値を下回る場合には流動性と硬化性が低下する場合がある。
【0038】
一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)に対するm≧2成分の含有割合は、GPCの面積分率で12%以上、70%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以上、50%以下である。m≧2の成分は、比較的粘度が高く、タブレット固着を抑制する効果が得られるものの、過剰に存在すると、流動性の低下だけでなく、半田リフロー試験においてはクラックが生じやすくなる傾向がある。このため、m≧2成分が上述の上限値を超えた場合には、流動性及び耐半田クラック性が低下する場合があり、上記下限値を下回ると、樹脂組成物同士のブロッキングが生じる場合がある。また、m≧2の成分が過剰に存在すると、特定範囲のエポキシ当量を有するビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と、結晶性エポキシ化合物(A−2)と組み合わせた場合において得られる、燃焼試験時の表面発泡層の形成過程において、表層にクラックが生じる場合があるために、相乗効果による耐燃性が発現できない場合がある。
【0039】
ここで、一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)とは、m=1成分、m≧2成分、m=0成分の含有割合がいかなるものであるかにかかわらず、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に含まれる、1種又は複数の一般式(2)で表される
ノボラック型フェノール樹脂(B)の全体を意味する。
【0040】
本発明におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定は次のように行なわれる。GPC装置は、ポンプ、インジェクター、ガードカラム、カラム及び検出器から構成され、溶媒にはテトラヒドロフラン(THF)を用いる。ポンプの流速は0.5ml/分にて測定を行う。これよりも高い流速では目的の分子量の検出精度が低くなるため好ましくない。また、上記の流速で精度よく測定を行うためには流量精度のよいポンプを使用することが必要であり、流量精度は0.10%以下が好ましい。ガードカラムには市販のガードカラム(例えば、東ソー株式会社製TSK GUARDCOLUMN HHR−L:径6.0mm、管長40mm)、カラムには市販のポリスチレンジェルカラム(東ソー株式会社製TSK−GEL GMHHR−L:径7.8mm、管長30mm)を複数本直列接続させる。検出器には示差屈折率計(RI検出器。例えば、WATERS社製示差屈折率(RI)検出器W2414)を用いる。測定に先立ち、ガードカラム、カラム及び検出器内部は40℃に安定させておく。試料には、濃度3〜4mg/mlに調整したノボラック型フェノール樹脂(B)のTHF溶液を用意し、これを約50〜150μlインジェクターより注入して測定を行う。試料の解析にあたっては、単分散ポリスチレン(
以下PS)標準試料により作成した検量線を用いる。検量線はPSの分子量の対数値とP
Sのピーク検出時間(保持時間)をプロットし、3次式に回帰したものを用いる。検量線作成用の標準PS試料としては、昭和電工株式会社製ShodexスタンダードSL−105シリーズの品番S−1.0(ピーク分子量1060)、S−1.3(ピーク分子量1310)、S−2.0(ピーク分子量1990)、S−3.0(ピーク分子量2970)、S−4.5(ピーク分子量4490)、S−5.0(ピーク分子量5030)、S−6.9(ピーク分子量6930)、S−11(ピーク分子量10700)、S−20(ピーク分子量19900)を使用する。
【0041】
ノボラック型フェノール樹脂(B)は、一般式(2)の構造で表され、上述の範囲の軟化点であれば、重合の方法や軟化点の調整方法に特に制限はない。重合方法の例としては、フェノール類とホルムアルデヒドを酸触媒下で重縮合させた後、残留モノマー及び水分を蒸留除去する方法を挙げることができるが、これに限らず市販のフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂を用いてもよい。また、軟化点を調整するために、後述する反応モル比、蒸留、水洗、抽出、カラムクロマトグラフィー分別、あるいは所定の分子量分布のノボラック型フェノール樹脂を混合するなどの手法を用いることができる。
【0042】
フェノール類には、フェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノールなどを、単独又は複数で使用することができるが、なかでも工業用フェノールがコスト面から好ましい。ホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ホルムアルデヒド水溶液などホルムアルデヒド発生源となる物質、あるいは、これらのホルムアルデヒドの溶液を使用することができる。通常は、ホルムアルデヒド水溶液を使用することが作業性やコストの面で好ましい。また、このほかにも合成原料として、予めフェノール類とアルデヒドを用いて酸触媒下で重縮合させた重合物、それらの蒸留物、抽出物、分子量分級物、缶出物を用いてよく、他にも市販の置換、無置換のビスフェノールFやノボラック型フェノール樹脂を併用しても構わない。
【0043】
酸触媒としては、通常ノボラック型フェノール樹脂合成において公知である酸触媒を用いることが可能である。例えば、硫酸、塩酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸、あるいは、シュウ酸、蟻酸、有機ホスホン酸、パラトルエンスルホン酸、ジメチル硫酸等の有機酸、酢酸亜鉛、酢酸ニッケル等を用いることが可能であり、これらを単独あるいは、2つ以上組み合わせて使用することも可能である。なかでも、シュウ酸、塩酸は、容易にフェノー
ル樹脂から触媒を除去できることから好ましい。
【0044】
フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合におけるフェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)の反応モル比(F/Pモル比)及び反応温度については、特に制限は無いが、通常、F/Pモル比は0.05〜0.7モルの範囲で、反応温度は50〜150℃の範囲で反応させることが好ましい。ここで、反応モル比(F/Pモル比)、又は反応温度を低くすることで、平均分子量を小さくし、軟化点を低く調整することができる。
【0045】
上述の蒸留による分子量調整方法としては、特に制限は無いが、たとえば常圧蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留などの手法をあげることができる。蒸留操作の温度は、50℃以上、250℃以下での蒸留操作が好ましい。蒸留温度が上記下限値未満の場合、蒸留による効率が悪くなり、生産性の観点から好ましくなく、上記上限値を超える場合は、ノボラック型フェノール樹脂の分解と高分子量化が起こるために好ましくない。具体的には、100〜150℃の常圧蒸留することにより水分を、150〜200℃、5000Paの条件で減圧蒸留することによりフェノール類モノマー成分を、200〜250℃、5000Paの条件で減圧水蒸気蒸留することにより一般式(2)のm=0成分を、それぞれ効率よく除去することができ、これらを適宜組み合わせることで、軟化点を高くすることができる。
【0046】
上述の水洗による分子量調整方法としては、具体的には、ノボラック型フェノール樹脂あるいは、ノボラック型フェノール樹脂を有機溶剤で溶解させたものに、水を加えて、常圧あるいは加圧の下、20〜150℃の温度で攪拌させた後に、静置あるいは遠心分離で水相と有機相と分離させ、水相を系外へ除去することで、水相に溶解した低分子量成分、主にフェノール類モノマー成分と一般式(2)のm=0成分とを低減することができる。これらの操作により、結果として軟化点を高く調整することが可能である。
【0047】
上述の抽出による分子量調整方法としては、トルエン、キシレン等のフェノール樹脂に対する溶解性の低い非極性溶剤を、フェノール樹脂、フェノール樹脂水溶液、あるいは、アルコール等の極性溶剤に溶解させたフェノール樹脂に添加し、常圧あるいは加圧の下、20〜150℃の温度で攪拌させてから、静置あるいは遠心分離で非極性溶剤相と他成分相と分離させ、非極性溶剤相を系外へ除去することで、非極性溶剤相に溶解した高分子量成分を除去させることができる。これらの操作を行うことで、軟化点を低減、調整することが可能である。
【0048】
上述の分別カラムによる分子量調整方法としては、分液ロート、ポリスチレンジェルを充填した分別カラムに、屈折率(RI)検出器、分液捕集用バルブを直列に接続し、分液ロートよりフェノールノボラック樹脂のテトラヒドロフラン溶液を供給した後、テトラヒドロフラン溶離液を供給し、屈折率(RI)チャートをモニターし、任意のピークが検出されてから、消失するまでの間の抽出溶液を捕集することで、軟化点を任意に調整することができる。
【0049】
上述の混合による分子量調整方法としては、特に制限は無いが、フェノール類とホルムアルデヒドを用いて酸触媒下で重縮合させた重合物、市販のノボラック型フェノール樹脂を蒸留、抽出、缶出、分別などの操作を行った後、これら複数の樹脂を溶融混合しても用いることで、調整することも可能である。
【0050】
本発明の半導体封止用硬化剤組成物では、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂(B)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他の硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン
(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などのフェノール樹脂系化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で併用できる硬化剤としては、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0051】
ノボラック型フェノール樹脂(B)の配合割合の下限値は、全硬化剤中に、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは75質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性に優れながら、かつ高流動性、作業性にも優れる効果を得ることができる。
【0052】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0053】
また、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合においては、エポキシ樹脂全体とフェノール樹脂系硬化剤全体との配合比率としては、エポキシ樹脂全体のエポキシ基数(EP)とフェノール樹脂系硬化剤全体のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の成形時に充分な硬化性を得ることができる。また、当量比がこの範囲であると、樹脂硬化物における良好な物性を得ることができる。
【0054】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、(C)無機充填材を用いることができる。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができる無機充填材(C)としては、強度、耐湿性の観点からシリカを用いることが好ましく、例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカが挙げられ、なかでも低コストであるという観点からは溶融球状シリカが、流動性の観点からは合成球状シリカが好ましい。無機充填材(C)の粒径としては、金型キャビティへの充填性を考慮すると0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。
【0055】
無機充填材(C)の含有割合の下限値としては、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体の75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、83質量%以上であることが特に好ましい。無機充填材(C)の含有割合の下限値が上記範囲内であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物は硬化物物性として、吸湿量が増加したり、強度が低下したりすることがなく、良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、無機充填材(C)の含有割合の上限値としては、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体の93質量%以下であることが好ましく、91質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。無機充填材(C)の含有割合の上限値が上記範囲内であると、流動性が損なわれることがなく、良好な成形性を得ることができる。
【0056】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、更に硬化促進剤(D)を用いることができる。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール性水酸基を2個以上含む化合物のフェノール性水酸基との反応を促進するものであればよく、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、リン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する触媒がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物熱時低弾性率という点を考慮するとホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0057】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0058】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0059】
【化3】

(上記一般式(3)において、Pはリン原子を表す。R4、R5、R6及びR7は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整
数であり、かつx=yである。)
【0060】
一般式(3)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(3)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(3)で表される化合物において、リン原子に結合するR4、R5、R6及びR7がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0061】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】

(上記一般式(4)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。fは0〜5の整数であり、gは0〜3の整数である。)
【0062】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0063】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】

(上記一般式(5)において、Pはリン原子を表す。R8、R9及びR10は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R11、R12及びR13は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R11とR12が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0064】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の
芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0065】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0066】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0067】
一般式(5)で表される化合物において、リン原子に結合するR8、R9及びR10がフェニル基であり、かつR11、R12及びR13が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0068】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【化6】

(上記一般式(6)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R14、R15、R16及びR17は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0069】
一般式(6)において、R14、R15、R16及びR17としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0070】
また、一般式(6)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基が
プロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(6)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0071】
また、一般式(6)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0072】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0073】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の配合割合は、全エポキシ樹脂組成物中0.1質量%以上、1質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤(D)の配合割合が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
【0074】
本発明では、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)(以下、「化合物(E)」とも称する。)は、これを用いることにより、一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)、及び/又は結晶性エポキシ化合物(A−2)とノボラック型フェノール樹脂(B)との架橋反応を促進させる硬化促進剤として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、樹脂組成物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して半導体封止用樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(E)は、半導体封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(E)としては、下記一般式(7)で表される単環式化合物又は下記一般式(8)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0075】
【化7】

(上記一般式(7)において、R18、R22はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R19、R20及びR21は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0076】
【化8】

(上記一般式(8)において、R28、R29はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R23、R24、R25、R26及びR27は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0077】
一般式(8)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(8)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(E)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(E)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0078】
かかる化合物(E)の配合割合は、全半導体封止用樹脂組成物中に0.01質量%以上、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、0.8質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上、0.5質量%以下である。化合物(E)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、半導体封止用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(E)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、半導体封止用樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0079】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と無機充填材(C)との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)を添加することができる。その例としては特に限定されないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、エポキシ樹脂と無機充填材との間で反応し、エポキシ樹脂と無機充填材の界面強度を向上させるものであればよい。また、シ
ランカップリング剤は、前述の化合物(E)と併用することで、半導体封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
【0080】
より具体的には、エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0081】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合としては、全エポキシ樹脂組成物中0.01質量%以上、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、0.8質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以上、0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合が上記下限値以上であれば、エポキシ樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0082】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0083】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に特に制限は無いが、(A)〜(C)成分、及びその他の添加剤等を所定量配合したものを、たとえばミキサー、ジェットミル、ボールミル等を用いて常温で均一に粉砕、混合した後、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて90〜120℃程度まで樹脂組成物を加温しながら溶融し混練を行い、混練後の樹脂組成物を冷却、粉砕し、顆粒又は粉末状の樹脂組成物を得ることができる。樹脂組成物の粉末又は顆粒の粒度は、5mm以下が好ましい。5mmを越えると打錠時に充填不良をおこし、タブレットの質量のバラツキが大きくなる。
【0084】
さらに、得られたエポキシ樹脂組成物の粉末又は顆粒を打錠成型することによりタブレットを得ることができる。打錠成型に用いる装置としては、単発式、又は多連ロータリー式の打錠機を用いることができる。タブレットの形状は特に限定はないが、円柱状が好ましい。打錠機の杵、臼及び環境の温度に特に制限はないが、35℃以下が好ましい。上記上限値を超えると樹脂組成物が反応により粘度上昇し、流動性が損なわれる恐れがある。
打錠圧力は400×10〜3000×10Paの範囲が好ましい。打錠圧力が上記上限値を超えるとタブレット打錠直後に破壊が生じる恐れがあり、上記下限値に満たさない場合には、十分な凝集力が得られないために、輸送中にタブレットの破壊が生じる恐れがある。打錠機の杵、臼の金型の材質、表面処理に特に限定はなく、公知の材質のものを使用することができ、表面処理の例としては、たとえば放電加工、離型剤のコーティング、メッキ処理、研磨などを挙げることができる。
【0085】
次に、本発明の半導体装置について説明する。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止し半導体装置を製造するには、例えば、半導体素子を搭載したリードフレーム、回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、半導体封止用エポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形硬化すればよい。尚、半導体封止用エポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールドにて成形硬化する場合、エポキシ樹脂組成物は、粉末又は顆粒状のものをそのまま用いても、打錠成形によりタブレット化したものを用いてもよい。
【0086】
本発明の半導体装置で封止される半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
【0087】
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
【0088】
トランスファーモールドなどの成形方法で半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止した本発明の半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0089】
図1は、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0090】
図2は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。基板8の表面に、ソルダーレジスト7の層が形成された積層体のソルダーレジスト7上にダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1と基板8との導通をとるため、基板8の電極パッドが露出するよう、電極パッド上のソルダーレジスト7は、現像法により除去されている。半導体素子1の電極パッドと基板8の電極パッドとの間は金線4によって接続されている。封止用樹脂組成物の硬化体6によって、基板8の半導体素子1が搭載された片面側のみが封止されている。基板8上の電極パッドは基板8上の非封止面側の半田ボール9と内部で接合されている。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。以下配合量は質量部とする。実施例、比較例で用いた成分について、以下に示す。
【0092】
(エポキシ樹脂)
(ビスフェノール型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂YL7620(ジャパンエポキシレジン株式会社製、一般式(1)におけるR1がメチル基、aが0、nの平均値が1.7、エポキシ当量420g/eq、軟化点61℃、150℃におけるICI粘度2.50poise)。
エポキシ樹脂2:一般式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂jER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製、一般式(1)におけるR1がメチル基、aが0、nの平均値が2.1、エポキシ当量470g/eq、軟化点63℃、150℃におけるICI粘度3.40poise)。
エポキシ樹脂3:一般式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂EPICLON860(DIC株式会社製、一般式(1)におけるR1がメチル基、aが0、nの平均値が0.5、エポキシ当量240g/eq、軟化点30〜40℃(室温で半固形状)、150℃におけるICI粘度0.2poise)。
エポキシ樹脂4:一般式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂D.E.R.664UE(ダウケミカル株式会社製、一般式(1)におけるR1がメチル基、aが0、nの平均値が6.1、エポキシ当量860g/eq、軟化点104℃、150℃におけるICI粘度55poise)。
【0093】
【化1】

【0094】
(結晶性エポキシ化合物)
エポキシ樹脂5:結晶性ビスフェノールA型エポキシ樹脂YL6810(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量172g/eq、融点45℃、150℃におけるICI粘度0.03poise)。
エポキシ樹脂6:結晶性テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂YX4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量185g/eq、融点107℃、150℃におけるICI粘度0.10poise)。
エポキシ樹脂7:結晶性テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂YSLV−80XY(東都化成株式会社製、エポキシ当量190g/eq、融点80℃、150℃におけるICI粘度0.03poise)。
【0095】
(その他のエポキシ樹脂)
エポキシ樹脂8:オルソクレゾール型エポキシ樹脂EPICLONN660(DIC株式会社製、エポキシ当量210g/eq、軟化点62℃、150℃におけるICI粘度2.34poise)。
エポキシ樹脂9:オルソクレゾール型とナフトール型の共重合型エポキシ樹脂EXA−7320(DIC株式会社製、エポキシ当量225g/eq、軟化点60℃、150℃におけるICI粘度0.7poise)。
【0096】
(硬化剤)
(ノボラック型フェノール樹脂)
(単独のノボラック型フェノール樹脂)
硬化剤1:一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂PR−51714(住友ベークライト株式会社製、水酸基当量104g/eq、軟化点92℃。一般式(2)において、bは0。)
硬化剤2:一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂PR−HF−3(住友ベークライト株式会社製、水酸基当量104g/eq、軟化点80℃。一般式(2)において、bは0。)
硬化剤3:一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂VR−9305(三井化学株式会社製、水酸基当量106g/eq、軟化点75℃。一般式(2)において、bは0。)。
硬化剤4:フェノールノボラック樹脂VR−9300(三井化学株式会社製、水酸基当量105g/eq、軟化点40℃。一般式(2)において、bは0。)。
(複数のノボラック型フェノール樹脂の混合物)
硬化剤5:一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂PR−51714(住友ベークライト株式会社製、水酸基当量104g/eq、軟化点92℃。一般式(2)において、bは0。)と一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂PR−HF−3(住友ベークライト株式会社製、水酸基当量104g/eq、軟化点80℃。一般式(2)において、bは0。)とを等量で混ぜたもの(混合物の水酸基当量104g/eq、混合物の軟化点88℃)。
硬化剤6:一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂PR−51714(住友ベークライト株式会社製、水酸基当量104g/eq、軟化点92℃。一般式(2)において、bは0。)と一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂VR−9300(三井化学株式会社製、水酸基当量105g/eq、軟化点40℃。一般式(2)において、bは0。)とを等量で混ぜたもの(混合物の水酸基当量104g/eq、混合物の軟化点76℃)。
硬化剤7:一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂VR−9305(三井化学株式会社製、水酸基当量106g/eq、軟化点75℃。一般式(2)において、bは0。)と一般式(2)で表されるフェノールノボラック樹脂VR−9300(三井化学株式会社製、水酸基当量105g/eq、軟化点40℃。一般式(2)において、bは0。)とを等量で混ぜたもの(混合物の水酸基当量105g/eq、混合物の軟化点61℃)。
【0097】
【化2】

【0098】
硬化剤1〜7のGPC測定における各m成分の面積分率、mの平均値を、他の物性値とともに表1に示した。
【0099】
【表1】

【0100】
(その他の硬化剤)
硬化剤8:多官能型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7500、軟化点110℃、水酸基当量97g/eq)。
【0101】
(無機充填材)
無機充填材1:電気化学工業製溶融球状シリカFB560(平均粒径30μm)100質量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C2(平均粒径0.5μm)6.5質量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C5(平均粒径30μm)7.5質量部とを予めブレンドしたもの。
【0102】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:下記式(9)で表される硬化促進剤
【化9】

【0103】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランKBM−803(信越化学工業株式会社製)。
シランカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランKBM−403(信越化学工業株式会社製)。
シランカップリング剤3:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランKBM−573(信越化学工業株式会社製)。
【0104】
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラックMA600(三菱化学株式会社製)。
【0105】
(離型剤)
離型剤1:カルナバワックスニッコウカルナバ(日興ファイン株式会社製、融点83℃)。
【0106】
実施例1
エポキシ樹脂1 7.3質量部
エポキシ樹脂5 2.4質量部
硬化剤7 2.8質量部
無機充填材1 86.5質量部
硬化促進剤1 0.4質量部
シランカップリング剤1 0.1質量部
シランカップリング剤2 0.05質量部
シランカップリング剤3 0.05質量部
着色剤1 0.3質量部
離型剤1 0.1質量部
をミキサーにて常温混合し、85〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、シート状に延伸させて冷却した後、ハンマーミルにより粉砕し、粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0107】
(評価項目)
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で粉末状のエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcmである。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は、120cmと良好な流動性を示した。
【0108】
固着性試験:得られた樹脂組成物を粉末成型プレス機(玉川マシナリー株式会社製、S−20−A)にて、質量15g、サイズφ18mm×高さ約30mmとなるよう調整し、打錠圧力600Paにて打錠してタブレットを得た。連続成形を行うため、得られたタブレットを装填したタブレット供給マガジンを成形装置内部にセットするが、成形装置内にセットしたマガジン内のタブレットは、実際に成形で使用されるまでの間、成形装置のマガジン内に待機状態にあり、表面温度約35℃で、最大13個垂直に積み上げた状態にあった。成形装置内でのタブレットの供給搬送は、マガジンの最下部より突き上げピンが上昇することで、最上段のタブレットがマガジン上部から押し出され、機械式アームにて持ち上げられて、トランスファー成形用ポットへと搬送される。このとき、マガジン内で待機中にタブレットが上下で固着すると搬送不良が発生する。
この固着性試験として、成形したタブレットをマガジン内部で13個垂直に積み上げ、35℃、8時間放置した後、固着状態を確認する。タブレット同士が固着していないものを◎、若干の固着はあるが容易に剥離するものを○、簡単には外れないものを×とした。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は、タブレット同士の固着はみられず、連続成形が容易に行うことができる。もし、このようなタブレットの固着が発生すると、半導体装置の封止成形工程において、正確な個数のタブレットを搬送できず、設備停止の要因になる。
【0109】
熱時曲げ弾性率:トランスファー成形機(藤和精機株式会社製、TEP−50−30)を用いて、金型温度175℃、圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を成形し、ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した後、260℃での曲げ弾性率をJIS K 6911に準じて測定した。単位はMPaである。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は、熱時曲げ弾性率667MPaと、良好な耐燃性、耐半田性を得るために適した熱時弾性率を示した。
【0110】
ガラス転移温度の測定:トランスファー成形機(藤和精機株式会社製、TEP−50−
30)を用いて、金型温度175℃、圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、長さ15mm、幅4mm、厚さ3mmの試験片を成形し、ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した後、熱膨張計(セイコーインスツルメント社製TMA‐120)を用い、5℃/分の昇温速度で昇温して、試験片の伸び率が急激に変化する温度をガラス転移点として測定した。単位は℃である。また、試験片は後述する耐半田性試験で作製する80ピンQFPから、長さ5mm、幅4mm、厚さ2mm程度の試験片を切り出して、測定することもできる。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は、ガラス転移温度130℃と、適正な熱時弾性率を得るために適したガラス転移温度を示した。
【0111】
耐燃性:低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入時間15秒、硬化時間120秒、注入圧力9.8MPaの条件で、エポキシ樹脂組成物を注入成形して、3.2mm厚の耐燃試験片を作製した。得られた試験片について、UL94垂直法の規格に則り耐燃試験を行った。表には、Fmax、ΣF及び判定後の耐燃クラスを示した。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は、Fmax:5秒、ΣF:21秒、耐燃クラス:V−0と良好な耐燃性を示した。
【0112】
耐半田性試験1:低圧トランスファー成形機(第一精工株式会社製、GP−ELF)を用いて、金型温度180℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間120秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、80ピンQFP(Cu製リードフレーム、サイズは14×20mm×厚さ2.00mm、半導体素子は7×7mm×厚さ0.35mm、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)なる半導体装置を作製した。ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した半導体装置6個を、30℃、相対湿度60%で192時間加湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC・Level3条件に従う)を行った。これらの半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置(日立建機ファインテック製、mi−scope10)で観察し、剥離又はクラックのいずれか一方でも発生したものを不良とした。不良半導体装置の個数がn個であるとき、n/6と表示した。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は0/6と良好な信頼性を示した。
【0113】
耐半田性試験2:上述の耐半田性試験1の加湿処理条件を30℃、相対湿度60%で96時間加湿処理としたほかは、耐半田性試験1と同様に試験を実施した。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は0/6と良好な信頼性を示した。
【0114】
耐湿信頼性(HAST):低圧トランスファー成形機(第一精工株式会社製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間105秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、16ピンSOP(半導体素子はHAST用標準品TEG9を使用し、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)なる半導体装置を作製した。得られた半導体装置について、IEC68−2−66に準拠してHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験を実施した。試験条件は130℃、85%RH、印加電圧20V、168時間処理とした。半導体装置1個当り4つの端子について回路のオープン不良の有無を観察し、5個の半導体装置で合計20回路を観察して不良回路の個数を測定した。不良数が0個のものを○とし、不良数が1〜5個のものを×とした。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は不良数が0個と良好な結果を示した。
【0115】
実施例2〜14、比較例1〜6
表2、表3、表4の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、
実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2、表3、表4に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
実施例1〜14は、一般式(1)で表され、かつエポキシ当量が350g/eq以上、600g/eq以下であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)、結晶性エポキシ化合物(A−2)、一般式(2)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)、無機充填材(C)を含み、かつ全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃以上、90℃以下であるものであり、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)及び結晶性エポキシ化合物(A−2)の種類や配合割合を変更したもの、ノボラック型フェノール樹脂(B)の種類や配合割合を変更したもののいずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、固着性、耐燃性、耐半田クラック性、耐湿信頼性(HAST)のバランスに優れた結果となった。
【0120】
エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)のみを用い、結晶性エポキシ化合物(A−2)を用いなかった比較例1では、熱時弾性率及びガラス転移温度が大幅に低下し、耐半田性が劣る結果となった。また、実施例1との比較において、流動性が相当量(スパイラルフローで30cm)低下し、耐燃試験におけるΣF及びFmaxも上昇する結果となった。
また、当量が600g/eqを超えるビスフェノール型エポキシ樹脂を用いた比較例2では、流動性が極端に低下し、耐湿信頼性が劣る結果となった。また、ガラス転移温度も低下したため、耐半田性も劣る傾向が確認された。一方、当量が350g/eqを下回るビスフェノール型エポキシ樹脂を用いた比較例3では、熱時弾性率が上昇し、耐燃性、耐半田性が低下する結果となった。
また、全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が90℃を越える比較例4では、熱時弾性率が大幅に上昇し、耐燃性、耐半田性が劣る結果となった。一方、全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃を下回る比較例5では、固着性が劣る結果となった。
また、エポキシ樹脂として結晶性エポキシ化合物(A−2)と他のエポキシ樹脂とを併用し、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)を用いなかった比較例6では、熱時弾性率が大幅に上昇し、耐燃性、耐半田性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に従うと、低コストでありながら、作業性、低弾性率、高流動性、耐半田クラック性、耐燃性のバランスに優れた半導体封止用樹脂組成物を得ることができるため、半導体装置、とりわけ、薄型の半導体装置や、1パッケージ内にチップを積層する構造、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置の封止用として好適である。
【符号の説明】
【0122】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体
7 ソルダーレジスト
8 基板
9 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を封止するのに用いられるエポキシ樹脂組成物であって、
下記一般式(1):
【化1】

(上記一般式(1)において、R1は炭素数1〜2の炭化水素基、又は水素原子であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0〜2の整数である。nは0〜20の整数であり、全体の平均値は0.5より大きく、5より小さい正数である。)で表され、かつエポキシ当量が350g/eq以上、600g/eq以下であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と、
結晶性エポキシ化合物(A−2)と、
下記一般式(2):
【化2】

(上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。bは0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、その平均値は1〜5ある。)で表されるノボラック型フェノール樹脂(B)と、
当該樹脂組成物の全量に対する配合割合が75質量%以上、93質量%以下である無機充填材(C)と、
を含み、
前記一般式(2)で表される全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物における軟化点が55℃以上、90℃以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と前記結晶性エポキシ化合物(A−2)との配合割合が、その合計量100質量%に対して、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)が65質量%以上、90質量%以下、結晶性エポキシ化合物(A−2)が10質量%以上、35質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)と前記結晶性エポキシ化合物(A−2)との合計量が、全エポキシ樹脂に対して、50質量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれ
るm=0成分の含有割合が面積分率で19%以下であり、かつm=1成分の含有割合が面積分率で15%以上、75%以下であり、かつm≧2成分の含有割合が面積分率で12%以上、70%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm=0成分の含有割合が面積分率で12%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm≧2成分の含有割合が面積分率で25%以上、50%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記全ノボラック型フェノール樹脂(B)の混合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、一般式(2)で表されるフェノール樹脂の全量中に含まれるm=1成分の含有割合が面積分率で30%以上、70%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
前記結晶性エポキシ化合物(A−2)が、ビフェニル型エポキシ、ビスフェノール型エポキシからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記結晶性エポキシ化合物(A−2)が、置換基として炭素数1〜3のアルキル基を有するビフェニル型エポキシ、置換基として炭素数1〜3のアルキル基を有するビスフェノール型エポキシからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機充填材(C)がシリカであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−26387(P2011−26387A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171189(P2009−171189)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】