説明

半導体素子及び該半導体素子を備える半導体素子構造

【課題】本発明は、かかる事情に鑑み、トランジスタの遮断状態を自然に実現し、半導体領域に金属領域との界面近傍の空乏層の形成を抑制しつつ、ショットキー障壁を実質的に下げることができるようにソース領域のフェルミ準位を選択することにより、駆動電流を増加させる半導体素子及び該半導体素子を備える半導体素子構造を提供することを課題とする。
【解決手段】ソース領域6及びドレイン領域7は、フェルミ準位が異なる第1金属領域10及び第2金属領域11を有し、第1金属領域10は、半導体領域5の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域5の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、第2金属領域11は、第1金属領域10のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体領域と金属領域とを少なくとも有する半導体素子及び該半導体素子を備える半導体素子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体に金属を接合するショットキー接合が知られている。このショットキー接合は、電圧を加えることで、一方向には電流が流れるが、逆方向には電流が流れないという整流性を有している。
【0003】
MOS型電界効果トランジスタ(以下、単に「MOSFET」と略す)の微細化が進むなかで、ソース接合(通常はpn接合)、ドレイン接合(通常はpn接合)をショットキー接合に置き換えたショットキー接合トランジスタの研究が行われている(非特許文献1の「1 まえがき」参照)。このショットキー接合トランジスタのソース領域及びドレイン領域は、不純物を拡散させて形成する半導体を使用せずに、金属を使用するものがある。このソース領域及びドレイン領域に金属を用いたMOSFETは、金属自体の抵抗が極めて低いため、ソース領域及びドレイン領域の抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】木下敦寛、八木下淳史、古賀淳二、「不純物偏析ショットキー接合トランジスタ」、東芝レビュー、株式会社東芝 技術企画室、2004年12月、Vol.59、No.12、p.52−55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなショットキー接合トランジスタを活用して駆動電流を増加させる試みがある。駆動電流を増加させるためには、ソース領域のフェルミ準位(フェルミレベル)は、チャネル領域の伝導帯の底(下端)のエネルギーレベルより高くする必要がある。しかし、この場合、遮断状態を実現するには半導体領域の電位をソース領域の電位に対して負値に設定する必要があり、素子構造の改変と回路構成上の余分な配線が必要となり、得策ではない。多くの場合、この問題を避けるために、ソース領域のフェルミ準位(フェルミレベル)は、チャネル領域の伝導帯の底(下端)のエネルギーレベルより低くする。その結果、チャネル領域では、ソース領域との界面近傍に空乏層が広がる傾向にある。この傾向は、微細化されるにともない、短チャネル効果を顕著にする。
【0006】
チャネル領域の空乏層の広がりを抑制するには、ソース領域のフェルミ準位をチャネル領域のフェルミ準位に近づける必要がある。その際、チャネル領域では、ソース領域との界面近傍にショットキー障壁が形成される。駆動電流は、このショットキー障壁を越えてソース領域からチャネル領域に流れる。すなわち、ショットキー障壁の存在は、駆動電流を増加させる妨げとなる。
【0007】
このように、駆動電流は、実質的なショットキー障壁を下げることによってチャネル領域のソース領域との界面近傍に形成される空乏層を抑制しつつ、ソース領域のキャリアが半導体領域に流入しやすくすることにより増加させることができる。チャネル領域に接合する金属は、空乏層の形成を抑制するために、フェルミ準位をチャネル領域のフェルミ準位に合わせる必要がある。また、チャネル領域に接合する金属は、ショットキー障壁を下げるために、フェルミ準位をチャネル領域のフェルミ準位より高くする必要がある。これらを達成することは、従来の構成では困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑み、トランジスタの遮断状態を自然に実現し、半導体領域に金属領域との界面近傍の空乏層の形成を抑制しつつ、ショットキー障壁を実質的に下げることができるようにソース領域のフェルミ準位を選択することにより、駆動電流を増加させる半導体素子及び該半導体素子を備える半導体素子構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体素子は、半導体領域と、該半導体領域に接合するソース領域と、半導体領域に接合するドレイン領域とを備える半導体素子において、ソース領域若しくはドレイン領域の少なくとも一方の領域は、フェルミ準位が異なる第1金属領域及び第2金属領域を有し、第1金属領域は、半導体領域の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、第2金属領域は、第1金属領域のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であり、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第1金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第2金属領域は、第1金属領域に接合し、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第2金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第1金属領域は、第2金属領域に接合することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、ソース領域若しくはドレイン領域の少なくとも一方の領域は、第1金属領域及び第2金属領域を有する。第1金属領域は、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に空乏層の形成を抑制するようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、半導体領域に第1金属領域との界面近傍に形成されるショットキー障壁が下がるようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、第1金属領域を介して半導体領域にキャリアを注入する。キャリアは、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に形成されたショットキー障壁を越えて半導体領域に注入することができる。このようにして、半導体素子は、第2金属領域から半導体領域に駆動電流を高効率に増加させることができる。
【0011】
本発明に係る半導体素子は、半導体領域と、該半導体領域に接合するエミッタ領域と、半導体領域に接合するコレクタ領域とを備える半導体素子において、エミッタ領域若しくはコレクタ領域の少なくとも一方の領域は、フェルミ準位が異なる第1金属領域及び第2金属領域を有し、第1金属領域は、半導体領域の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、第2金属領域は、第1金属領域のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であり、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第1金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第2金属領域は、第1金属領域に接合し、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第2金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第1金属領域は、第2金属領域に接合することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、エミッタ領域若しくはコレクタ領域の少なくとも一方の領域は、第1金属領域及び第2金属領域を有する。第1金属領域は、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に空乏層の形成を抑制するようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、半導体領域に第1金属領域との界面近傍に形成されるショットキー障壁が下がるようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、第1金属領域を介して半導体領域にキャリアを注入する。キャリアは、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に形成されたショットキー障壁を越えて半導体領域に注入することができる。このようにして、半導体素子は、第2金属領域から半導体領域に駆動電流を高効率に増加させることができる。
【0013】
本発明に係る半導体素子は、半導体領域と、該半導体領域に接合する金属領域とを備える半導体素子において、金属領域は、フェルミ準位が異なる第1金属領域及び第2金属領域を有し、第1金属領域は、半導体領域の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、第2金属領域は、第1金属領域のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であり、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第1金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第2金属領域は、第1金属領域に接合し、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第2金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第1金属領域は、第2金属領域に接合することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、金属領域は、第1金属領域及び第2金属領域を有する。第1金属領域は、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に空乏層の形成を抑制するようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、半導体領域に第1金属領域との界面近傍に形成されるショットキー障壁が下がるようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、第1金属領域を介して半導体領域にキャリアを注入する。キャリアは、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に形成されたショットキー障壁を越えて半導体領域に注入することができる。このようにして、半導体素子は、第2金属領域から半導体領域に駆動電流を高効率に増加させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、第1金属領域は、第2金属領域と半導体領域との間の厚さが金属の特性を示す厚さ以上で且つキャリアの平均自由工程以下であることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、第2金属領域から注入されたキャリアは、第2金属領域から第1金属領域を介して半導体領域に移動する際に、第1金属領域での散乱・拡散が十分抑制されるため、大半が大きな影響を受けることなく半導体領域に到達することができる。このようにして、半導体素子は、第2金属領域から半導体領域に駆動電流を高効率に増加させることができる。
【0017】
本発明に係る半導体素子構造は、前記半導体素子と、該半導体素子に接合する配線領域とを有する半導体素子構造において、配線領域は、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第2金属領域のフェルミ準位以上のフェルミ準位を有する金属であり、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第1金属領域のフェルミ準位以上のフェルミ準位を有する金属であることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、第2金属領域のフェルミ準位は、配線領域のフェルミ準位未満で且つ第1金属領域のフェルミ準位以上となる。第2金属領域のキャリアは、配線領域に注入されず、第1金属領域にのみに注入される。また、配線領域のキャリアも第2金属領域を介して第1金属領域に注入される。このように、第1金属領域には、第2金属領域及び配線領域からキャリアが効率的に注入されるように構成することができる。よって、第1金属領域が帯電しやすくなり、第2金属領域から半導体領域へ駆動電流を流しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の如く、本発明に係る半導体素子及び該半導体素子を備える半導体素子構造によれば、半導体領域に金属領域との界面近傍の空乏層の発生を抑制しつつ、ショットキー障壁を実質的に下げることにより、トランジスタの遮断動作特性を顕著に劣化させることなく駆動電流を増加させるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るMOSFETの構成を説明する構造図を示す。
【図2】(a)は、第1金属領域及び第2金属領域のフェルミ準位の関係を説明する説明図、(b)及び(c)は、チャネル領域と第1金属領域及び第2金属領域との関係を説明する説明図を示す。
【図3】(a)は、本発明に係るMOSFETのソース領域の構成を説明する構造図、(b)は、MOSFETのエネルギーバンド構造を説明する図を示す。
【図4】本発明に係るMOSFETのエネルギーバンド構造を説明する図を示す。
【図5】本発明に係るMOSFETのエネルギーバンド構造を説明する図を示す。
【図6】他のMOSFETのソース領域の構成を説明する構造図を示す。
【図7】他のMOSFETのエネルギーバンド構造を説明する図を示す。
【図8】他のMOSFETのソース領域の構成を説明する構造図を示す。
【図9】他のMOSFETのエネルギーバンド構造を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る半導体素子構造の一実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。
【0022】
まず、同実施形態に係る半導体素子構造の基本構造について、図1及び図3(a)を参酌しつつ、説明する。同実施形態に係る半導体素子構造1は、nチャネルMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)である例を説明する。図1は、nチャネルMOSFETの構成を説明する構造図である。図3(a)は、nチャネルMOSFETのソース領域を拡大した構造図である。
【0023】
本発明に係る半導体素子構造1は、本発明に係る半導体素子としてのnチャネルMOSFET2と、該MOSFET2を設ける基板電極3と、MOSFET2に接合する配線領域4とを有する。
【0024】
MOSFET2は、半導体で形成されたチャネル領域5と、該チャネル領域5に接合するソース領域6と、チャネル領域6に接合するドレイン領域7と、チャネル領域5を少なくとも覆うように形成された絶縁物領域8と、該絶縁物領域8上のチャネル領域5に対応する位置に接合されるゲート電極9とを備える。チャネル領域5は、本発明に係る半導体領域に相当する。
【0025】
チャネル領域5は、n型又はp型のいずれかの導電型の半導体が選択される。本実施形態では、p型半導体である例を説明する。チャネル領域5は、基板電極3上に形成される。チャネル領域5は、ソース領域6とドレイン領域7との間に形成される。
【0026】
ソース領域6及びドレイン領域7は、フェルミ準位が異なる2つ以上の、第1金属領域10及び第2金属領域11を有する。図2(a)に示すように、第1金属領域10は、チャネル領域5の価電子帯の頂上のエネルギーレベルEv以上で且つチャネル領域5の真性フェルミ準位Ei以下のフェルミ準位Efm1を有する金属Aで形成される。第2金属領域11は、第1金属領域10のフェルミ準位Ei以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベルEc以下のフェルミ準位Efm2を有する金属Bで形成される。なお、価電子帯の頂上のエネルギーレベルEvは、価電子帯が取り得るエネルギーレベルの最高レベルを意味する。伝導帯の底のエネルギーレベルEcは、伝導帯が取り得るエネルギーレベルの最低レベルを意味する。
【0027】
本実施形態に係る第1金属領域10は、チャネル領域5の価電子帯の頂上のエネルギーレベルEv以上で且つチャネル領域5の真性フェルミ準位Ei以下のフェルミ準位Efm1を有する金属Aで形成される。第2金属領域11は、チャネル領域5の真性フェルミ準位Ei以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベルEc以下のフェルミ準位Efm2を有する金属Bで形成される。
【0028】
第1金属領域10に用いる金属Aは、チャネル領域5の伝導型がnチャネル型の場合、Co,Mo,Teのいずれかの金属から選ばれることが好ましい。第2金属領域11に用いる金属Bは、Mn,Zr,In,Ag,Ti,Alのいずれかの金属が選ばれることが好ましい。チャネル領域5の伝導型がpチャネル型の場合、第1金属領域10に用いる金属Aは、Mn,Zr,In,Ag,Ti,Alのいずれかの金属から選ばれることが好ましい。第2金属領域11に用いる金属Bは、Co,Mo,Teのいずれかの金属が選ばれることが好ましい。第1金属領域10及び第2金属領域11は、単一元素に限定されず、合金であってもよい。
【0029】
このように、チャネル領域5の伝導型がpチャネル型のときに第1金属領域10として選択した金属Aは、チャネル領域5の伝導型がnチャネル型のとき、第2金属領域11として選択することができる。また、チャネル領域5の伝導型がpチャネル型のときに第2金属領域11として選択した金属Bも、チャネル領域5の伝導型がnチャネル型のとき、第1金属領域10として選択することができる。
【0030】
更に、図2(b)に示すように、第1金属領域10は、金属Aの中から、チャネル領域5のフェルミ準位Efs以下の金属を選択することが好ましい。そのとき、第2金属領域11は、金属Bの中から、第1金属領域10のフェルミ準位Efm1以上の金属であればよい。
【0031】
第1金属領域10は、チャネル領域5に接合される。第1金属領域10は、第2金属領域11との第1接合面10aとチャネル領域5との第2接合面10bとの間の厚さLaを金属の特性を示す厚さ以上で且つ電子の平均自由工程以下に設定される。第1接合面10aは、第2金属領域11から第1金属領域10に電子を注入する接合面である。第2接合面10bは、第1金属領域10からチャネル領域5に電子を注入する面である。すなわち、第1接合面10a及び第2接合面10bは、第2金属領域11とチャネル領域5との間の距離が最も小さくなる位置関係にある。
【0032】
物質は、その表面又は他の物質との界面にできるエネルギーレベル(表面準位、若しくは、界面準位)と、その内部にできるエネルギーレベルとでその性質が異なっている。これは、結晶の端面において、原子が正確に並んでいるという周期的境界条件が満たされにくいためである。この表面準位若しくは界面準位が支配的な厚さ以下では金属の内部の特性が現れない。本願発明では、この金属の内部が取り得る特性が現れる厚さを金属の特性を示す厚さとする。この金属の特性を示す厚さは、具体的には1nm以上あればよく、好ましくは、5nm以上あればよい。
【0033】
第1金属領域10の厚さLaは、第2金属領域11からチャネル領域5に電子を注入する際に、第2金属領域11とチャネル領域5との間に位置する第1金属領域10で散乱する電子を減らすため、平均自由工程以下であることが望ましい。厚さLaは、平均自由工程より更に短くすることが好ましく、例えば、平均自由工程の2分の1にすることが好ましい。また、本願発明に適した金属をすべて適用できる平均自由工程は、最大60nmである。
【0034】
一方、基板電極3に形成されるチャネル領域5の深さLabは、第1金属領域10の厚さLaよりも長く設定される。このように構成することにより、電子は、第2金属領域11から第1金属領域10の第1接合面10aを介して第1金属領域10の内部に注入され、第1金属領域10の内部から第2接合面10bを介してチャネル領域5に注入することができる。
【0035】
第2金属領域11は、第1金属領域10に接合される。第2金属領域11は、配線金属4とチャネル領域5とを電気的に絶縁するために絶縁物領域8が形成されている。第2金属領域11は、第1金属領域10との境界と配線領域4との境界との間に電子の流れを遮断可能な距離Latを形成して配置される。
【0036】
ゲート電極9は、フラットバンド電圧(平坦バンド電圧)Vfbを印加することにより、チャネル領域5のエネルギーバンドをチャネル領域5の内部から界面まで平坦(一定)にすることができる。ゲート電極9は、閾値電圧Vth以上の電圧を印加することにより、接合する絶縁物領域8と対応するチャネル領域5に反転層5aを形成することができる。
【0037】
配線領域4は、ソース領域6の第2金属領域11、ドレイン領域7の第2金属領域11及びゲート電極9それぞれに対する配線のコンタクト部である。配線領域4は、第2金属領域11のフェルミ準位Efm2以上のフェルミ準位Efsを有する金属である。本実施形態に係る配線領域4は、第2金属領域11と同じ金属Bである。
【0038】
次に、同実施形態に係る半導体素子構造1の動作について、図3〜図5を参酌しつつ、説明する。図3(b)は、配線領域4と、ソース領域6(第2金属領域11、第1金属領域10)と、チャネル領域5との配置を仮想的に一直線上に揃えて表現したエネルギーバンド構造である。ゲート電圧Vgは、MOSFET2のフラットバンド電圧Vfbに等しくしている(Vg=Vfb)。
【0039】
チャネル領域5の電子の一部は、第1金属領域10に流れ込む。第2金属領域11の電子の一部も第1金属領域10に流れ込む。チャネル領域5の価電子帯及び伝導帯のエネルギーバンドは、フェルミ準位Efsを移動させることなく、第1金属領域10との界面近傍が上方向に曲がる(下に凸の形状に変化する)。第1金属領域10の伝導帯のエネルギーバンドは、チャネル領域5及び第2金属領域11との界面近傍が下方向に曲がる(上に凸の形状に変化する)。第2金属領域11及び配線領域4の伝導帯のエネルギーバンドは、第1金属領域10との界面近傍が上方向に曲がる(下に凸の形状に変化する)。第1金属領域10は、チャネル領域5及び第2金属領域11から流れ込んだ電子が蓄積され、負に帯電する。
【0040】
同実施形態に係る半導体素子構造1は、チャネル領域5のフェルミ準位Efsと配線領域4のフェルミ準位Efcとにエネルギーレベルの差がある。キャリアの動作は、絶縁基板3にボデイ電圧Vbを印加するか否かによって異なる。以下、ボデイ電圧Vbを印加しない場合とする場合のそれぞれについて説明する。
【0041】
まず、ボデイ電圧Vbを印加する場合(Vb=0)のキャリアの動作について、図4を参酌しつつ、説明する。図4(a)は、ゲート電圧VgをMOSFET2のフラットバンド電圧Vfbに等しくしたとき(Vg=Vfb)のエネルギーバンド構造を示す。同図は、第1金属領域10の第2接合面10bの位置が図1及び図3(a)の点J2の位置にあるエネルギーバンド構造である。図4(b)は、ゲート電圧VgをMOSFET2の閾値電圧Vth以上にしたとき(Vg≧Vth)のエネルギーバンド構造を示す。同図は、第1金属領域10の第2接合面10bの位置が図1及び図3(a)の点J1の位置にあるエネルギーバンド構造である。図1又は図3(b)の点J1は、ゲート電圧Vgが閾値電圧Vth以上になると、nチャネル反転層5aが形成される位置である。図1又は図3(b)の点J2は、ゲート電圧Vgが閾値電圧Vth以上になっても、nチャネル反転層5aが形成されない位置である。
【0042】
第1金属領域10のフェルミ準位Efm1とチャネル領域5のフェルミ準位Efsとは、略一致している。このとき、チャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍には、高さΦaのエネルギー障壁(ショットキー障壁)が形成される。このエネルギー障壁が妨げとなり、電子は、配線領域4、第2金属領域11からチャネル領域5に注入できる量が少なくなる。
【0043】
次に、ボデイ電圧Vbを印加する場合(Vb=(Efb−Efs)/q)のキャリアの動作について、図5を参酌しつつ、説明する。図5(a)は、ゲート電圧VgをMOSFET2のフラットバンド電圧Vfbに等しくしたとき(Vg=Vfb)のエネルギーバンド構造を示す。同図は、第1金属領域10の第2接合面10bの位置が図1の点J2の位置にあるエネルギーバンド構造である。図5(b)は、ゲート電圧VgをMOSFET2の閾値電圧Vth以上にしたとき(Vg≧Vth)のエネルギーバンド構造を示す。同図は、第1金属領域10の第2接合面10bの位置が図1の点J1の位置にあるエネルギーバンド構造である。
【0044】
ボデイ電圧Vbを基板電極3(図1参照)に印加する(Vb=(Efb−Efs)/q)と、第2金属領域11とチャネル領域5との間に、高さΦbのエネルギー障壁が形成される。よって、ゲート電極9のON時に、配線領域4、第2金属領域11からチャネル領域5に注入される電子の注入量は、ボデイ電圧Vbを印加しない場合と比較して、増加する。
【0045】
図5(b)に示すように、ゲート電極9がON時の電子注入は、第2金属領域11からチャネル領域5に向かって行う。第1金属領域10は、第2金属領域11及びチャネル領域5から流れ込んだ電子によって負に帯電している。第1金属領域10に注入された電子は、この第1金属領域10に流れ込んだ電子に反発しつつ、このエネルギー障壁を越えてチャネル領域5に達する。更に、注入される電子は、第1金属領域10の第1接合面11aと第2接合面11bとの間の厚さが平均自由工程以下であるため、第1金属領域10の内部で散乱しにくくなっている。
【0046】
このように、第1金属領域10は、チャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍に空乏層の形成を抑制するようにフェルミ準位Efm1が選択される。第2金属領域11は、チャネル領域5に第1金属領域10との界面近傍に形成されるエネルギー障壁が下がるようにフェルミ準位Efm2が選択される。第2金属領域11は、第1金属領域10を介してチャネル領域5に電子を注入する。電子は、チャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍に形成されたエネルギー障壁を越えてチャネル領域5に注入することができる。このようにして、MOSFET2は、第2金属領域11からチャネル領域5に駆動電流を増加させることができる。
【0047】
第2金属領域11から注入された電子は、第2金属領域11とチャネル領域5との間の厚さが平均自由工程を超えるとき、第1金属領域10の内部で拡散される。すなわち、第2金属領域11からチャネル領域5に流れる駆動電流の増加の妨げとなる。しかし、上記構成によれば、電子は、第2金属領域11から第1金属領域10を介してチャネル領域5に移動する際に、第1金属領域10で拡散することなく、チャネル領域5に到達することができる。このようにして、MOSFET2は、第2金属領域11からチャネル領域5に駆動電流を増加させることができる。
【0048】
第2金属領域11のフェルミ準位Efm2は、配線領域4のフェルミ準位Efc未満で且つ第1金属領域10のフェルミ準位Efm1以上となる。第2金属領域11のキャリアは、配線領域4に注入されず、第1金属領域10にのみに注入される。また、配線領域4のキャリアも第2金属領域11を介して第1金属領域10に注入される。このように、第1金属領域10には、第2金属領域11及び配線領域4からキャリアが効率的に注入されるように構成することができる。よって、第1金属領域10が帯電しやすくなり、第2金属領域11からチャネル領域5へ駆動電流を流しやすくすることができる。
【0049】
なお、本発明に係る半導体素子構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0050】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、配線領域4が第2金属領域11と同じ金属Bからなる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、配線領域は、第2金属領域11のフェルミ準位Efm2以上のフェルミ準位Efcを有する金属であってもよい。
【0051】
また、配線領域は、第2金属領域11のフェルミ準位Efm2未満のフェルミ準位Efcを有する金属であってもよい。そこで、配線領域が第2金属領域11のフェルミ準位Efm2より低いフェルミ準位を有する金属Aである例を図6及び図7を参酌しつつ、説明する。なお、金属Aは、第1金属領域10と同じ金属である。また、上記実施形態と同様の構成については、同一の符号をふるとともに、その説明を省略する。
【0052】
配線領域104(図6参照)は、第2金属領域11のフェルミ準位Efm2以下のフェルミ準位Efsを有する金属である。本実施形態に係る配線領域104は、第1金属領域10と同じ金属Aである。
【0053】
次に、同実施形態に係る半導体素子構造1の動作について、図7を参酌しつつ、説明する。図7(a)は、ゲート電圧VgをMOSFET2のフラットバンド電圧Vfbに等しくしたとき(Vg=Vfb)のエネルギーバンド構造を示す。同図は、第1金属領域10の第2接合面10bの位置が図1及び図3(a)の点J2の位置にあるエネルギーバンド構造である。
【0054】
チャネル領域5の電子の一部は、第1金属領域10に流れ込む。第2金属領域11の電子の一部は、第1金属領域10及び配線領域104に流れ込む。チャネル領域5の価電子帯及び伝導帯のエネルギーバンドは、フェルミ準位Efsを移動させることなく、第1金属領域10との界面近傍が上方向に曲がる(下に凸の形状に変化する)。第1金属領域10の伝導帯のエネルギーバンドは、チャネル領域5及び第2金属領域11との界面近傍が下方向に曲がる(上に凸の形状に変化する)。第2金属領域11の伝導帯のエネルギーバンドは、第1金属領域10と配線領域104との界面近傍が上方向に曲がる(下に凸の形状に変化する)。配線領域104の伝導帯のエネルギーバンドは、第2金属領域11との界面近傍が下方向に曲がる(上に凸の形状に変化する)。第1金属領域10は、チャネル領域5及び第2金属領域11から流れ込んだ電子が蓄積され、負に帯電する。
【0055】
図7(b)は、ゲート電圧VgをMOSFET2の閾値電圧Vth以上にしたとき(Vg≧Vth)のエネルギーバンド構造を示す。同図は、第1金属領域10の第2接合面10bの位置が図1及び図3(a)の点J1の位置にあるエネルギーバンド構造である。
【0056】
第1金属領域10のフェルミ準位Efm1とチャネル領域5のフェルミ準位Efsとは、略一致している。チャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍に高さΦaのエネルギー障壁(ショットキー障壁)が形成され、ゲート電極9のOFF時のチャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍に空乏層が発生するのを抑制する。チャネル領域5には、第1金属領域10に流れた電子の分だけ、第1金属領域10との界面近傍に正孔の蓄積領域が形成されている。この正孔の蓄積領域は、第1金属領域10からチャネル領域5への電子の注入の障害となる。電子は、配線領域4、第2金属領域11からチャネル領域5に注入できる量が少なくなる。
【0057】
そこで、第2金属領域11のフェルミ準位Efm2は、チャネル領域5のエネルギー障壁以下に設定されている。その理由は、低いエネルギー障壁を超えて第2金属領域11からチャネル領域5に多くの電子を注入するためである。第2金属領域11のフェルミ準位Efm2がチャネル領域5のエネルギー障壁以上に設定されると、ゲート電極9がOFF時にもれ電流の原因になる。
【0058】
ゲート電極9がON時の電子注入は、第2金属領域11からチャネル領域5に向かって行う。第1金属領域10は、第2金属領域11及びチャネル領域5から流れ込んだ電子によって負に帯電している。第1金属領域10に注入された電子は、この第1金属領域10に流れ込んだ電子に反発しつつ、このエネルギー障壁を越えてチャネル領域5に達する。更に、注入される電子は、第1金属領域10の第1接合面11aと第2接合面11bとの間の厚さLaが平均自由工程以下であるため、第1金属領域10の内部で散乱しにくくなっている。このようにして、MOSFET2は、第2金属領域11からチャネル領域5に駆動電流を増加させることができる。
【0059】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、配線領域4が第2金属領域11を介して第1金属領域10に接合する(第1金属領域10に直接接合しない)例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、第1金属領域210及び第2金属領域211のそれぞれに接合されるように配置されていてもよい。
【0060】
第1金属領域210は、p型半導体からなるチャネル領域5及び第2金属領域211に接合される。第1金属領域210は、配線領域204及び絶縁物領域8を接合する表面に凹状のトレンチ溝が形成される。第2金属領域211は、このトレンチ溝に形成される。第1金属領域210は、上記実施形態と同様に、トレンチ溝に形成された第2金属領域211との第1接合面210aとチャネル領域5との第2接合面210bとの間の厚さLaを金属の特性を示す厚さ以上で且つ電子の平均自由工程以下に設定される。第1接合面210aは、第1金属領域210がチャネル領域5と接合する第2接合面210bと対向する面である。且つ、第2接合面210bは、ゲート電極9をONしたときに形成される反転層と接する面である。
【0061】
配線領域204は、第1金属領域210の第1接合面210aと第2接合面210bとを含まない範囲に接合される。絶縁物領域8は、第1金属領域210の第1接合面210aと第2接合面210bとを含む範囲に接合される。第2金属領域211から第1金属領域210に注入される電子は、第1接合面210aから注入されるようになる。チャネル領域210bから第1金属領域210に注入する電子は、第2接合面210bから注入する。配線領域204から注入される電子は、チャネル領域5に直接注入されることがなく、第2金属領域211、第1金属領域210を介して注入される。よって、このように構成することによっても、図9に示すように、上記実施形態にかかる効果を達成することができる。なお、図8の構成によれば、電子は、配線領域204から第1金属領域210を介してチャネル領域5に一部注入するが、大多数が第2金属領域211から第1金属領域210を介してチャネル領域5に注入されるため、上記実施形態にかかる効果を達成する。
【0062】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、例えば、絶縁膜にチャネル領域が形成されるSOI(Silicon−on−insulator)ウエハに適用することもできる。この場合、第2金属領域とSOIウエハとの間の距離(深さLab)は、任意の値に設定することができる。
【0063】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、第1金属領域10の平面状の第1接合面10a及び第2接合面10bとの間によって形成される厚さLaを金属の特性を示す厚さ以上で且つ電子の平均自由工程以下に設定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1金属領域の第1接合面と第2接合面との間の距離は、金属の特性を示す厚さ以上で且つ電子の平均自由工程以下であり、且つ、第1金属領域の第2金属領域との接合面と第1金属領域のチャネル領域との接合面との間の距離が第1接合面と第2接合面との間の距離以上であれば、第1接合面及び第2接合面は、どのような形状であってもよい。例えば、第1接合面及び第2接合面は、曲面であってもよい。
【0064】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、ソース領域6及びドレイン領域7の両方の領域に第1金属領域10及び第2金属領域11を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ソース領域及びドレイン領域のいずれか一方に第1金属領域及び第2金属領域が形成され、いずれか他方にn型半導体からなる半導体領域が形成されてもよい。また、ソース領域6及びドレイン領域7は、第1金属領域及び第2金属領域のみに限定されるものではなく、第1金属領域及び第2金属領域に加え、更に、他の金属領域を備えるものであってもよく、すなわち、2つ以上の金属領域を備えていてもよい。
【0065】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、MOSFET2の伝導型がnチャネル型である例を説明したが、これに限定されるものでなく、MOSFETの伝導型がpチャネル型であってもよい。pチャネル型MOSFETとする場合は、上記実施形態でn型の半導体領域であった領域をp型の半導体領域とし、ゲート電極などの電極に印加する電圧の極性を逆にすればよい。
【0066】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、半導体素子2としてnチャネルMOSFETである例であり、チャネル領域5の半導体は、p型半導体であり、チャネル領域5のフェルミ準位Efsは、真性フェルミ準位Ei未満であって、第1金属領域10は、チャネル領域5に接合するとともに、第2金属領域11は、第1金属領域10に接合する例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、半導体素子がpチャネルMOSFETである場合、図2(c)に示すように、チャネル領域5の半導体は、n型半導体であり、チャネル領域5のフェルミ準位Efm2は、真性フェルミ準位Ei以上(好ましくはフェルミ準位Efs以上)であって、第2金属領域11は、チャネル領域5に接合するとともに、第1金属領域10は、第2金属領域11に接合するようにしてもよい。
【0068】
このように構成することにより、第2金属領域11は、チャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍に空乏層の形成を抑制するようにフェルミ準位Efm2が選択される。第2金属領域11は、チャネル領域5に第1金属領域10との界面近傍に形成されるショットキー障壁が上がるようにフェルミ準位Efm1が選択される。第2金属領域11は、第1金属領域10を介してチャネル領域5にキャリアを注入する。キャリアは、チャネル領域5の第1金属領域10との界面近傍に形成されたショットキー障壁を越えてチャネル領域5に注入することができる。このようにして、pチャネルMOSFETは、第2金属領域11からチャネル領域5に駆動電流を高効率に増加させることができる。
【0069】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、MOSFET2のチャネル領域5を構成する半導体をSiやGeなどの単体の半導体のほか、GaAs,InP,SiC,ZnSe,GaNなどの化合物半導体や、SiGe,AlxGaAs1-xのような混晶でなる半導体で製作されてもよい。また、半導体の結晶構造は、単結晶、多結晶、微結晶や非晶質のいずれでもよい。
【0070】
上記実施形態に係る半導体素子構造1は、半導体素子としてMOSFET2に適用する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、半導体素子は、半導体領域と、該半導体領域に接合するエミッタ領域と、半導体領域に接合するコレクタ領域とを備えるトランジスタなどの半導体素子に適用してもよい。また、半導体素子は、半導体領域と、該半導体領域に接合する金属領域とを備えるダイオードなどの半導体素子に適用してもよい。
【0071】
このように、第1金属領域は、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に空乏層の形成を抑制するようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、半導体領域に第1金属領域との界面近傍に形成されるエネルギー障壁が下がるようにフェルミ準位が選択される。第2金属領域は、第1金属領域を介して半導体領域にキャリアを注入する。キャリアは、半導体領域の第1金属領域との界面近傍に形成されたエネルギー障壁を越えて半導体領域に注入することができる。このようにして、半導体素子は、第2金属領域から半導体領域に駆動電流を増加させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…半導体素子構造、2…MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ,半導体素子)、3…基板電極、4,104,204…配線領域、5…チャネル領域(半導体領域)、5a…反転層、6…ソース領域、7…ドレイン領域、8…絶縁物領域、9…ゲート電極、10,210…第1金属領域、10a,210a…第1接合面、10b,210b…第2接合面、11,211…第2金属領域、Ev…価電子帯の頂上のエネルギーレベル、Ec…伝導帯の底のエネルギーレベル、Ei…(チャネル領域の)真性フェルミ準位、Efs…(チャネル領域の)フェルミ準位、Efm1…(ソース領域の)フェルミ準位、Efm2…(第2金属領域の)フェルミ準位、Efc…(配線領域の)フェルミ準位、La…(第1金属領域の)厚さ、Lat…(第2金属領域の)距離、Lab…(チャネル領域の)深さ、Vg…ゲート電圧、Vfb…フラットバンド電圧、Vth…閾値電圧、Vb…ボデイ(基板)電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域と、該半導体領域に接合するソース領域と、半導体領域に接合するドレイン領域とを備える半導体素子において、
ソース領域若しくはドレイン領域の少なくとも一方の領域は、フェルミ準位が異なる第1金属領域及び第2金属領域を有し、
第1金属領域は、半導体領域の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、
第2金属領域は、第1金属領域のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であり、
半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第1金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第2金属領域は、第1金属領域に接合し、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第2金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第1金属領域は、第2金属領域に接合する
ことを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
半導体領域と、該半導体領域に接合するエミッタ領域と、半導体領域に接合するコレクタ領域とを備える半導体素子において、
エミッタ領域若しくはコレクタ領域の少なくとも一方の領域は、フェルミ準位が異なる第1金属領域及び第2金属領域を有し、
第1金属領域は、半導体領域の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、
第2金属領域は、第1金属領域のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であり、
半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第1金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第2金属領域は、第1金属領域に接合し、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第2金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第1金属領域は、第2金属領域に接合する
ことを特徴とする半導体素子。
【請求項3】
半導体領域と、該半導体領域に接合する金属領域とを備える半導体素子において、
金属領域は、フェルミ準位が異なる第1金属領域及び第2金属領域を有し、
第1金属領域は、半導体領域の価電子帯の頂上のエネルギーレベル以上で且つ半導体領域の真性フェルミ準位以下のフェルミ準位を有する金属であり、
第2金属領域は、第1金属領域のフェルミ準位以上で且つ伝導帯の底のエネルギーレベル以下のフェルミ準位を有する金属であり、
半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第1金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第2金属領域は、第1金属領域に接合し、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第2金属領域は、半導体領域に接合するとともに、第1金属領域は、第2金属領域に接合する
ことを特徴とする半導体素子。
【請求項4】
第1金属領域は、第2金属領域と半導体領域との間の厚さが金属の特性を示す厚さ以上で且つキャリアの平均自由工程以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体素子と、該半導体素子に接合する配線領域とを有する半導体素子構造において、
配線領域は、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位未満であるとき、第2金属領域のフェルミ準位以上のフェルミ準位を有する金属であり、半導体領域のフェルミ準位が真性フェルミ準位以上であるとき、第1金属領域のフェルミ準位以上のフェルミ準位を有する金属である半導体素子構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−249561(P2011−249561A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121267(P2010−121267)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】