説明

半導体装置、および半導体装置の製造方法

【課題】配線抵抗の上昇や絶縁耐性の劣化を抑制しつつ、配線信頼性を確保する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体基板と、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50に埋め込まれた、Cuにより構成される配線10と、配線10の表層に設けられた、銅錯体を含有する表面層20と、を備える。配線10の表層に銅錯体を含有する表面層20を備えることにより、配線抵抗の上昇や絶縁耐性の劣化を抑制しつつ、配線信頼性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの銅配線における微細化が進むにつれて、配線信頼性の低下が懸念される。配線信頼性の低下の要因としては、例えば配線表面におけるエレクトロマイグレーションの発生等が挙げられる。配線信頼性を向上するための技術としては、例えば特許文献1〜13、および非特許文献1等に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1では、Cu配線中に不純物であるSiを導入することにより、Cu表面でのCu原子移動を抑制し、エレクトロマイグレーション特性を改善すると記載されている。特許文献2においても同様に、Cu配線中にSiを導入することが記載されている。非特許文献1では、Cu配線にAlを添加して合金化することにより、エレクトロマイグレーション耐性が向上することが記載されている。特許文献3には、Cu配線上に、Cuの酸化膜を設けることが記載されている。また、特許文献4〜13には、配線上に設けられるキャップメタルに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278000号公報
【特許文献2】特開2008−263097号公報
【特許文献3】特開2003−7704号公報
【特許文献4】特開2007−35734号公報
【特許文献5】特開2006−253666号公報
【特許文献6】特開2003−243393号公報
【特許文献7】特開2003−243389号公報
【特許文献8】特開2006−120664号公報
【特許文献9】特開2003−243499号公報
【特許文献10】特開2009−32807号公報
【特許文献11】特開2004−31586号公報
【特許文献12】特開2009−147214号公報
【特許文献13】特開2009−147213号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Yokogawa and H. Tsuchiya J. Appl. Phys. 101, 013513(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エレクトロマイグレーション特性を向上するためには、上述のように例えば配線中に不純物を導入することや、配線を合金化することが考えられる。しかし、配線中に不純物を導入し、または配線を合金化した場合、配線抵抗は上昇してしまう。
また、例えば配線上にキャップメタルを形成することで、エレクトロマイグレーション特性の向上を図ることも考えられる。しかし、キャップメタルを形成する無電解めっきプロセスにおいて、配線が埋め込まれている絶縁膜に金属成分が染みこみ、配線間の絶縁耐性が劣化してしまう場合がある。
このため、配線抵抗の上昇や絶縁耐性の劣化を抑制しつつ、配線信頼性を確保することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、半導体基板と
前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に埋め込まれた、Cuにより構成される配線と、
前記配線の表層に設けられた、銅錯体を含有する表面層と、
を備える半導体装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、Cuにより構成される配線の表層に、銅錯体を含有する表面層が設けられている。これにより、配線のエレクトロマイグレーション特性を向上することができる。また、配線の表層のみに銅錯体を含有する表面層を形成することができるため、配線抵抗の上昇を抑制することができる。さらに、配線の表層部分を処理することにより銅錯体を含有する表面層を形成することができる。このため、表面層を形成する工程において、層間絶縁膜に金属成分が染みこまない。これにより、配線間の絶縁耐性の劣化を抑制することができる。
従って、配線抵抗の上昇や絶縁耐性の劣化を抑制しつつ、配線信頼性を確保することができる。
【0009】
本発明によれば、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜中に、Cuにより構成される配線を形成する工程と、前記配線の表層に、銅錯体を含有する表面層を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配線抵抗の上昇や絶縁耐性の劣化を抑制しつつ、配線信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す配線を示す模式図である。
【図3】図1に示す半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】図1に示す半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、半導体装置100を示す断面図である。半導体装置100は、半導体基板(図示せず)と、層間絶縁膜50と、配線10と、表面層20と、を備えている。層間絶縁膜50は、半導体基板上に設けられている。配線10は、層間絶縁膜50に埋め込まれている。また、配線10は、Cuにより構成される。表面層20は、配線10の表層に設けられている。また、表面層20は、銅錯体を含有する。
以下、本実施形態に係る半導体装置100の構成について、詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、配線10は、層間絶縁膜50に埋め込まれている。また、配線10は、Cuにより構成されている。
表面層20は、配線10の表層に設けられており、銅錯体を含有する。表面層20は、配線10の表層を改質することにより形成されている。表面層20の層厚は、例えば1nmである。
表面層20は、例えばシアン化物イオンを配位子とする銅錯体であるCuCNを含有する。また、表面層20は、ハロゲン化物イオン、NH、またはCO等を配位子とする銅錯体を含有していてもよい。
【0015】
図2は、図1に示す配線10を示す模式図である。図1に示すように、配線10には、Cuの結晶粒界が形成されている。
表面層20は、配線10の表層のみに設けられている。そして、図2に示すように、表面層20に含有される銅錯体は、配線10を構成するCuの結晶粒界には形成されない。これにより、配線抵抗が上昇することを抑制することができる。
【0016】
表面層20の層厚は、例えばTOF−SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて半導体装置100における深さ方向のプロファイルを解析することにより、測定することができる。
【0017】
半導体装置100は、バリアメタル膜30を備えている。図1に示すように、バリアメタル膜30は、配線10の側面および底面を覆うように設けられている。
また、半導体装置100は、層間絶縁膜50上および配線10上に設けられたバリア絶縁膜40を備えている。バリア絶縁膜40は、例えばSiN、またはSiCN等により構成される。
【0018】
半導体装置100は、バリア絶縁膜40上に設けられた層間絶縁膜52と、層間絶縁膜52に埋め込まれたビア14および配線12と、配線12の表層に設けられた表面層22を備えている。
ビア14は、配線10上に設けられており、配線10の表層と接触する。図1に示すように、表面層20は、例えば配線10の表層のうちビア14と接触する部分には設けられない。これにより、配線10とビア14との間のコンタクト抵抗が上昇することを抑制することができる。ビア14は、例えばCuにより構成される。
配線12は、ビア14上に設けられており、ビア14を介して配線10と接続する。配線12およびビア14は、層間絶縁膜52中に、例えばデュアルダマシン法を用いて一体として形成される。配線12は、例えばCuにより構成される。
【0019】
表面層22は、例えば表面層20と同様に、配線12の表層を改質することにより形成されている。表面層22の層厚は、例えば1nmである。
表面層22は、銅錯体を含有する。表面層22は、例えばシアン化物イオンを配位子とする銅錯体であるCuCNを含有する。また、表面層22は、ハロゲン化物イオン、NH、またはCO等を配位子とする銅錯体を含有していてもよい。
【0020】
半導体装置100は、バリアメタル膜32を備えている。図1に示すように、バリアメタル膜32は、ビア14の側面、ならびに配線12の側面および底面を覆うように設けられている。
また、半導体装置100は、配線12上および層間絶縁膜52上に設けられたバリア絶縁膜42を備えている。バリア絶縁膜42は、バリア絶縁膜40と同様、例えばSiN、またはSiCN等により構成される。
【0021】
次に、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法を説明する。図3および図4は、図1に示す半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
半導体装置100の製造方法は、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜50中に、Cuにより構成される配線10を形成する工程と、配線10の表層に、銅錯体を含有する表面層20を形成する工程と、を備えている。なお、本実施形態において、表面層20は、銅錯体としてCuCNを含有する。
以下、半導体装置100の製造方法について詳細に説明する。
【0022】
まず、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜50に開口を形成する。次いで、当該開口内および層間絶縁膜50上に、バリアメタル膜30を構成する金属膜および配線10を構成する金属膜を順に堆積する。次いで、これらの金属膜をCMPにより平坦化する。これにより、図3(a)に示すように、層間絶縁膜50中に、バリアメタル膜30および配線10が形成される。
次いで、配線10表面の還元処理を行う。配線10の還元処理は、配線10表面に対しNHプラズマ処理をすることによって行われる。これにより、配線10表面の酸化膜等を除去することができる。
【0023】
次に、図3(b)に示すように、配線10の表層に、銅錯体を含有する表面層20を形成する。表面層20は、配線10の表層部分に銅錯体を形成することにより設けられる。このため、配線10の表層のみに、表面層20を形成することが可能となる。表面層20は、例えば1nmの層厚を有するように形成される。
表面層20は、配線10の表面に対しHCNプラズマ処理を行うことによって形成される。これにより、配線10表面に位置するCuとHCNが反応し、配線10の表層に、CuCNを含有する表面層20が形成される。
シアン化物イオンは、銅との反応性が高い。このため、HCNプラズマ処理において、配線10の表層のみにCuCNを含有する表面層20を形成することが容易となる。従って、配線10を構成するCuの結晶粒界にシアン化物イオンが入り込み、配線10の抵抗が上昇することを抑制できる。また、HCNプラズマ処理時にシアン化物イオンが層間絶縁膜50に導入されても、配線10間の絶縁耐性に影響を及ぼさない。従って、絶縁耐性の劣化を抑制することができる。さらに、配線10の表層にCuCNを含有する表面層20を形成することで、配線10の酸素や水等による劣化を防止することができる。
なお、シアン化物イオンの代わりに、シアン化物イオンと同様に銅との反応性が高いハロゲン化物イオン、NH、またはCO等を配線10の表面のみに導入するよう当該処理を行うことにより、表面層20を形成してもよい。
これらを用いた場合においても、シアン化物イオンと同様、配線10の抵抗が上昇することを抑制でき、絶縁耐性の劣化を抑制することができ、かつ配線10の劣化を抑制することができる。
【0024】
次に、図3(c)に示すように、層間絶縁膜50上および配線10上に、バリア絶縁膜40を形成する。バリア絶縁膜40は、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
なお、上記した、配線10表面の還元処理、表面層20の形成、およびバリア絶縁膜40の形成は、例えば300℃以上400℃以下の条件により行われる。また、上記した、配線10表面の還元処理、表面層20の形成、およびバリア絶縁膜40の形成は、例えば同一のチャンバ内で連続して行うことができる。
【0025】
次に、バリア絶縁膜40上に層間絶縁膜52を堆積する。次いで、層間絶縁膜52中に、ビア14および配線12を埋め込むための開口60を形成する。開口60は、例えばビアファースト法またはトレンチファースト法のいずれかにより形成することができる。
【0026】
次いで、開口60下に位置する表面層20を除去する。開口60下に位置する表面層20は、例えば層間絶縁膜52に開口60を形成する際のドライエッチングにより、層間絶縁膜52と共に除去することができる。また、開口60を形成した後、CuCNの場合は、KCN、NHOH、またはエタノール等によって洗浄することにより、開口60下に位置する表面層20を除去してもよい。これにより、図4(a)に示す構造が得られる。
【0027】
次いで、開口60内および層間絶縁膜52上に、バリアメタル膜32を構成する金属膜、ならびにビア14および配線12を構成する金属膜を形成する。次いで、これらの金属膜を、CMPにより平坦化する。これにより、図4(b)に示す構造が得られる。
次いで、表面層20と同様に、配線12の表層に表面層22を形成する。次いで、層間絶縁膜52上および配線12上に、バリア絶縁膜42を形成する。これにより、図1に示す半導体装置100が形成される。
【0028】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態によれば、Cuにより構成される配線10の表層に、銅錯体を含有する表面層20が設けられている。
配線の表層に銅錯体を含有する表面層20が形成されている。このため、配線10の表層における原子移動を抑制することができる。これにより、配線のエレクトロマイグレーション特性を向上することが可能となる。
また、表面層20は、配線10の表層部分に銅錯体を形成することにより設けられる。このため、銅錯体を含有する表面層20を配線10の表層のみに形成することが可能となる。すなわち、銅錯体は、配線10内部の結晶粒界には形成されない。従って、配線抵抗の上昇を抑制することができる。
さらに、配線10の表層部分を処理することにより、銅錯体を含有する表面層20を形成することができる。このため、表面層20を形成する工程において、層間絶縁膜50に金属成分が染みこまない。このため、配線間の絶縁耐性の劣化を抑制することができる。
従って、配線抵抗の上昇や絶縁耐性の劣化を抑制しつつ、配線信頼性を確保することができる。
【0029】
図5は、第2の実施形態に係る半導体装置102を示す断面図であって、第1の実施形態における図1に対応している。
本実施形態に係る半導体装置102は、バリア絶縁膜40およびバリア絶縁膜42を有しない点を除いて、第1の実施形態に係る半導体装置100と同様の構成を有する。すなわち、図5に示すように、層間絶縁膜52は、層間絶縁膜50上および配線10上に直接接して設けられている。
【0030】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、配線10の表層に表面層20が設けられているため、配線10の酸素や水等による劣化を防止することができる。また、配線10を構成するCuが、絶縁膜中に拡散することを防止することもできる。
さらに、層間絶縁膜等と比較して誘電率の高いバリア絶縁膜を形成しないため、半導体装置の配線容量を低減することが可能となる。
【0031】
第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、表面層20の形成工程を除いて、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法と同様である。
本実施形態において、表面層20は、配線10の表面に対しHCNガスを照射することにより形成される。これにより、配線10表面に位置するCuとHCNが反応し、配線10の表層にCuCNを含有する表面層20が形成される。なお、表面層20の形成は、例えば300℃以上400℃以下の条件により行われる。
また、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、表面層20の形成、配線10表面の還元処理、およびバリア絶縁膜40の形成は、例えば同一のチャンバ内で連続して行うことができる。
【0032】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 配線
12 配線
14 ビア
20 表面層
22 表面層
30 バリアメタル膜
32 バリアメタル膜
40 バリア絶縁膜
42 バリア絶縁膜
50 層間絶縁膜
52 層間絶縁膜
60 開口
100 半導体装置
102 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と
前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に埋め込まれた、Cuにより構成される配線と、
前記配線の表層に設けられた、銅錯体を含有する表面層と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記表面層は、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、NHまたはCOを配位子とする銅錯体を含有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記表面層の層厚は1nmである半導体装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の半導体装置において、
前記配線上に設けられ、前記配線の表層と接触するビアを備え、
前記表面層は、前記配線の表層のうち前記ビアと接触する部分には設けられていない半導体装置。
【請求項5】
半導体基板上に設けられた層間絶縁膜中に、Cuにより構成される配線を形成する工程と、
前記配線の表層に、銅錯体を含有する表面層を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−38171(P2013−38171A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171960(P2011−171960)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】