説明

半導体装置、歪ゲージ、圧力センサおよび半導体装置の製造方法

【課題】温度依存性を小さくできるとともに、製造が容易なピエゾ抵抗体等を提供する。
【解決手段】半導体材料に外力が作用したときの抵抗値の変化を利用するピエゾ抵抗体である。半導体材料として、表面の終端の少なくとも一部が水素終端とされたp型半導体特性を持つダイヤモンドを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料に外力が作用したときの抵抗値の変化を利用するピエゾ抵抗体を利用した半導体装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特告平5−13451号には、ダイアフラムにこれの歪に生じた出力信号を発する歪ゲージとして、ダイヤモンド単結晶板上にダイヤモンド半導体膜を形成して構成した歪ゲージを用いた圧力検出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特告平5−13451号公報
【特許文献2】米国特許第5303594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の圧力検出器では、ピエゾ抵抗体を構成するダイヤモンド半導体膜としてボロン等の不純物を導入したドープ・ダイヤモンドを用いるため、温度依存性が大きく、また、製造プロセスが複雑になるなどの問題がある。
【0005】
本発明の目的は、温度依存性を小さくできるとともに、製造が容易なピエゾ抵抗体を有する半導体装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置は、外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を有する半導体装置において、前記半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えることを特徴とする。
この半導体装置によれば、半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えるので、温度依存性を抑制できるとともに、製造工程を単純化できる。
【0007】
前記ダイヤモンドが絶縁性ダイヤモンドで形成され、前記ダイヤモンドの表面の一部が水素終端化されてもよい。
【0008】
本発明の歪ゲージは、外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を用いた歪ゲージにおいて、前記半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えることを特徴とする。
この歪ゲージによれば、半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えるので、温度依存性を抑制できるとともに、製造工程を単純化できる。
【0009】
前記ピエゾ抵抗体の一端にソース電極が、前記ピエゾ抵抗体の他端にドレイン電極が、前記ピエゾ抵抗体の前記一端および前記他端の間にゲート電極が、それぞれ配置された電界効果トランジスタが構成されてもよい。
【0010】
前記ダイヤモンド表面の外側に形成された保護層と、ドープ・ダイヤモンドにより形成され、前記ピエゾ抵抗体の温度を検出する温度センサと、を備え、前記ゲート電極は前記半導体のホールの量を制御してもよい。
【0011】
本発明の圧力センサは、圧力を受けて変形するダイアフラムと、前記ダイアフラムの変形量に基づいて半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を用いた歪ゲージと、を備える圧力センサにおいて、前記半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えることを特徴とする。
この圧力センサによれば、半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えるので、温度依存性を抑制できるとともに、製造工程を単純化できる。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法は、外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造方法において、水素プラズマによりダイヤモンド表面の少なくとも一部を水素終端化するステップと、前記水素終端化するステップにより水素終端化されたダイヤモンド表面を抵抗体として形成するステップと、金属膜により前記抵抗体に対して電気的接続を獲得するステップと、前記抵抗体の表面の水素終端構造を保護するための保護層を形成するステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法は、外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造方法において、水素プラズマによりダイヤモンド表面の少なくとも一部を水素終端化するステップと、前記水素終端化するステップにより水素終端化されたダイヤモンド表面を電界効果トランジスタのホールチャンネルとして機能するピエゾ抵抗体を形成するステップと、金属膜により前記抵抗体に対して電気的接続を獲得するステップと、前記ホールチャンネル上にホール量を制御するためのゲート電極を形成するステップと、前記抵抗体の表面の水素終端構造を保護するための保護層を形成するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体装置によれば、半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えるので、温度依存性を抑制できるとともに、製造工程を単純化できる。
【0015】
本発明の歪ゲージによれば、半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えるので、温度依存性を抑制できるとともに、製造工程を単純化できる。
【0016】
本発明の圧力センサによれば、半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えるので、温度依存性を抑制できるとともに、製造工程を単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ピエゾ抵抗体を使用した歪ゲージの構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のIb−Ib線断面図、(c)は(b)の一部拡大図。
【図2】本発明の圧力センサの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のIIb−IIb線断面図。
【図3】圧力センサに温度センサとしてのダイヤモンドサーミスタを付加した例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb線断面図。
【図4】圧力センサに保護層を設けた例を示す図であり、(a)は図2に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図、(b)は図3に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図。
【図5】ピエゾ抵抗体を使用した歪ゲージの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のVb−Vb線断面図、(c)は(b)の一部拡大図。
【図6】ピエゾ抵抗体を使用した圧力センサの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のVIb−VIb線断面図。
【図7】圧力センサに温度センサとしてのダイヤモンドサーミスタを付加した例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のVIIb−VIIb線断面図。
【図8】圧力センサに保護層を設けた例を示す図であり、(a)は図6に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図、(b)は図7に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図。
【図9】他の実施形態を示す図であり、(a)はダイヤフラムの構成例を示す断面図、(b)はピエゾ抵抗体の他の形状を示す図。
【図10】ピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造プロセスのうちステップ1〜ステップ10を示す図。
【図11】ピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造プロセスのうちステップ11〜ステップ20を示す図。
【図12】水素終端ダイヤモンドピエゾFETの製造プロセスのうちステップ1〜ステップ10を示す図。
【図13】水素終端ダイヤモンドピエゾFETの製造プロセスのうちステップ11〜ステップ20を示す図。
【図14】水素終端ダイヤモンドピエゾFETの製造プロセスのうちステップ21〜ステップ25を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による半導体装置等の実施形態について説明する。
【0019】
本発明に適用されるピエゾ抵抗体は水素終端ダイヤモンド表面の半導体特性を利用したものである。
【0020】
水素終端ダイヤモンドとは、ダイヤモンド表面において水素原子により終端化されている表面構造を持ったダイヤモンドである。ダイヤモンドは炭素の同素体の一つであり、結晶内部は炭素同士の共有結合により構成されている。CVD(化学気相成長)法により合成されるダイヤモンドは、メタンなどの原料ガスとグラファイトの成長を抑制する水素ガスを含む環境下にて合成されるため、基本的には表面構造は水素終端状態となっている。酸素終端を持つダイヤモンド表面も水素プラズマ処理もしくは水素気流中で加熱することにより、ダイヤモンド表面を水素終端化することが可能である。水素終端ダイヤモンドはp型伝導性を持ち、その半導体特性を活かして、ガスセンサ・MESFET・MISFET・電子放出源などへの利用が試みられている。
【0021】
ピエゾ抵抗効果は、結晶に応力・ひずみが作用したときにその抵抗率が変化する効果である。例えば、単結晶シリコン等の半導体材料に外力が作用すると結晶格子に歪みが生じ、伝導バンドや価電子バンドのエネルギ状態が変化する。これによりバンド中のキャリアの数や移動度に変化が生じ、巨視的には電気伝導度あるいは抵抗率の変化が生じる。この特性を歪みセンサや圧力センサ等の物理センサの検出原理として利用できる。
【0022】
本発明では、ピエゾ抵抗効果を生じる抵抗体として水素終端ダイヤモンド表面のp型半導体を用いており、応力・ひずみが作用した際のp型伝導層の抵抗率の変化を計測することにより、ピエゾ抵抗体を歪み検出素子として利用できる。
【0023】
従来のドープ・ダイヤモンド膜によるピエゾ抵抗体を製造する場合、ノンドープ・ダイヤモンド(絶縁性ダイヤモンド)膜を成膜した基板上にボロン等の不純物を導入したドープ・ダイヤモンド(導電性ダイヤモンド)膜を成膜し、抵抗体の形状にパターニングする必要があり、同一基板上へのノンドープ・ダイヤモンド膜およびドープ・ダイヤモンド膜両方の成膜を必要としている。
【0024】
一方、本発明のピエゾ抵抗体では、ノンドープ・ダイヤモンド膜を成膜後、同一CVDチャンバ内での水素プラズマ処理によりダイヤモンド表面のp型導電性が発現するため、ドーピングガスとしてのジボラン等の有毒ガスを必要とせず、ピエゾ抵抗体の作成プロセスを簡素化することが可能になる。
【0025】
さらに、従来のドープ・ダイヤモンド膜によるピエゾ抵抗体では、ダイヤモンドの価電子帯の頂点から伝導帯の底までのバンドギャップが5.5eVに対して、不純物としてボロンを用いた場合、アクセプター準位が価電子帯より上方0.37eVの比較的深い位置に形成される。一方、本発明による水素終端ダイヤモンド表面のp型伝導層を用いたピエゾ抵抗体によると、アクセプター準位が価電子帯より上方0.05eV以下の浅い位置に形成されるため、室温にて熱励起しているアクセプターの割合が大きい。そのため、ドープ・ダイヤモンド膜によるピエゾ抵抗体では高温時に熱励起されるアクセプターの割合が顕著に増加することで温度依存性が大きくなるが、水素終端ダイヤモンドを用いたピエゾ抵抗体では、温度依存性を小さくすることが可能になり、高温環境化での使用に適した圧力センサ等を作製することが可能になる。
【0026】
図1は、ピエゾ抵抗体を使用した歪ゲージの構成例を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線断面図、図1(c)は図1(b)の一部拡大図である。
【0027】
図1(a)、図1(b)および図1(c)に示すように、歪ゲージは、表面にダイヤモンド膜11が形成されたシリコン基板10を用いて構成され、シリコン基板10上に直線状のピエゾ抵抗体12が形成される。ピエゾ抵抗体12の両端には、電極13,13が形成され、電極13,13間の電圧値等に基づいてピエゾ抵抗体12の抵抗値が計測される。ピエゾ抵抗体12が本発明のピエゾ抵抗体に相当する。
【0028】
図1に示すように、シリコン基板10の片端側(図1(a)における左端側)は支持部15により支持され、片持ち梁構造の歪ゲージが構成される。他端側(図1(a)における右端側)に力が加えられシリコン基板10が厚み方向に撓むと、ピエゾ抵抗体12に引張応力または圧縮応力が加わり、応力に依存した抵抗値変化がピエゾ抵抗体12に生ずる。その抵抗値を計測し応力印加前後における抵抗値変化量を算出することにより、歪み量を算出することができる。さらに、片持ち梁の機械的特性値や寸法値から歪ゲージに加わった応力および梁を撓ませるために要した力が算出される。したがって、ピエゾ抵抗体12の抵抗値変化から、梁に加えた力を計測することが可能となる。
【0029】
図1に示す歪ゲージを作製する手順としては、シリコン基板10上にマイクロ波プラズマCVD装置によりダイヤモンド膜11を成膜し、水素プラズマによりダイヤモンド表面の水素終端化処理を行う。次に、ピエゾ抵抗体12に対応する水素終端部のパターニング、配線のフォトリソグラフィを経て、ピエゾ抵抗体12および電極13等を備える歪ゲージを作製することができる。なお、図1(c)は、ピエゾ抵抗体12の領域における水素終端ダイヤモンド表面の状態を模式的に表現している。
【0030】
図2は、本発明の圧力センサの構成例を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb線断面図である。この圧力センサは、ピエゾ抵抗体を使用した歪ゲージの原理を利用したものである。
【0031】
図2(a)および図2(b)に示すように、圧力センサは、表面にダイヤモンド膜21が形成されたシリコン基板20を用いて構成され、シリコン基板20上に直線状のピエゾ抵抗体22a,22aおよび「コ」の字形状のピエゾ抵抗体22b,22bが形成される。ピエゾ抵抗体22aの両端には電極23a,23aが、ピエゾ抵抗体22b,22bの両端には電極23b,23bが、それぞれ形成されている。電極23a,23a間の電圧値等に基づいてピエゾ抵抗体22aの抵抗値が、電極23b,23b間の電圧値等に基づいてピエゾ抵抗体22bの抵抗値が、それぞれ計測される。ピエゾ抵抗体22aおよびピエゾ抵抗体22bが、本発明のピエゾ抵抗体に相当する。
【0032】
シリコン基板20の中央部は他の領域よりも薄く形成され、ダイアフラム25として機能する。ピエゾ抵抗体22b,22bはダイアフラム25の端部に形成され、ピエゾ抵抗体22a,22aはダイアフラム25にかからないシリコン基板20の周辺部に形成されている。
【0033】
ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bは、ブリッジ回路を構成しており、ダイアフラム25に圧力が印加されシリコン基板20の厚み方向に撓むと、ピエゾ抵抗体22b,22bに引張応力または圧縮応力が加わり、応力に依存した抵抗値変化がピエゾ抵抗体22b,22bに生ずる。その抵抗値変化をブリッジ回路により電流値または電圧値として出力することにより、ダイアフラム25への応力印加前後における抵抗値変化量を算出することにより、ダイアフラム25端部における歪み量を算出することができる。さらに、ダイアフラム25の機械的特性値や寸法値からダイアフラム25に加わった応力およびダイアフラム25を撓ませるために要した圧力が算出される。したがって、ブリッジ回路の出力変化から、ダイアフラム25に印加された圧力を計測することが可能となる。
【0034】
図2に示す圧力センサを作製する手順としては、シリコン基板20上にマイクロ波プラズマCVD装置によりダイヤモンド膜21を成膜し、水素プラズマによりダイヤモンド表面の水素終端化処理を行う。次に、ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bに対応する水素終端部のパターニング、配線のフォトリソグラフィを経て、ピエゾ抵抗体22a,22a、ピエゾ抵抗体22b,22bおよび電極23a,23a,23b,23b等を備える圧力センサを作製することができる。
【0035】
ダイアフラム25の作製に関しては、ダイヤモンドピエゾ抵抗体を形成する前後を問わない。また異方性エッチングにより形成された矩形状のダイアフラム、等方性エッチングによる円形もしくは楕円のダイアフラム等、種々の形状のダイアフラムが適用される。
【0036】
ピエゾ抵抗体の配置は図2の例に限定されない。例えば、ダイアフラムの中央部に2つの水素終端ダイヤモンドピエゾ抵抗体を、ダイアフラムの端部に2つの水素終端ダイヤモンドピエゾ抵抗体を、それぞれ形成してもよい。この場合、ダイアフラムの中央部と端部とでピエゾ抵抗体に印加される応力(引張応力または圧縮応力)が逆転するため、4つのピエゾ抵抗体のブリッジ回路による出力合成によって、出力値を増大させることができる。また単一の水素終端ダイヤモンドピエゾ抵抗体をダイアフラムの端部または中央部に形成し、このピエゾ抵抗体の抵抗値変化から計測箇所の歪量を計測してもよい。
【0037】
図3は、図2に示す圧力センサに温度センサとしてのダイヤモンドサーミスタを付加した例を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線断面図である。なお、図3において、図2と同一要素には同一符号を付している。
【0038】
図3(a)および図3(b)に示すように、ダイヤモンド膜21の表面には、直線状のサーミスタ4が形成され、サーミスタ4の両端に電極41,41が接続されている。サーミスタ4の抵抗値を電極41,41間の電圧等に基づいて検出することにより、シリコン基板1の温度、すなわちダイアフラム25に接触する流体等の温度を計測することができる。サーミスタ4はダイアフラム25にかからないシリコン基板20の周辺部に形成されており、ダイアフラム25の撓みによる歪みが生ずることはなく、常に温度を正確に把握することが可能となる。サーミスタ4の抵抗値は、ダイアフラム25に接触する流体等の温度計測のみならず、ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bの抵抗値の温度ドリフトの補償に使用することもできる。後者により、広い温度範囲における正確な圧力計測が可能となる。
【0039】
図3に示す圧力センサを作製する手順としては、シリコン基板20上にマイクロ波プラズマCVD装置によりノンドープ・ダイヤモンド膜であるダイヤモンド膜21、サーミスタ4を構成するドープ・ダイヤモンド膜を順次、成膜する。サーミスタ4を構成するドープ・ダイヤモンド膜としては、例えば、ボロンをドープしたダイヤモンド膜を使用することができる。次に、ドープ・ダイヤモンド膜をパターニングし、サーミスタ4形成領域以外のドープ・ダイヤモンド膜は02−RIEなどにより除去し、ノンドープ・ダイヤモンド膜であるダイヤモンド膜21を露出させる。続けて水素プラズマによりダイヤモンド膜21表面の水素終端化処理を行い、ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bに対応する水素終端化部のパターニング・配線のフォトリソグラフィにより、ダイヤモンド膜21表面上にピエゾ抵抗体、電極およびサーミスタ4を形成することで、図3に示す圧力センサを作製することができる。
【0040】
ダイヤモンドサーミスタの形成方法は限定されない。例えば、Si基板上にマイクロ波プラズマCVD装置によりノンドープ・ダイヤモンド膜を成膜し、Cr(クロム)やTi(チタン)等でダイヤモンドサーミスタ形成部分以外の領域を覆ってやり、ドープ・ダイヤモンドを成膜する。その後、CrもしくはTiをエッチングしてリフトオフによりドープ・ダイヤモンド膜をパターニングしてもよい。
【0041】
図4(a)は、図2に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図である。なお、図4(a)において、図2と同一要素には同一符号を付している。
【0042】
図4(a)の例では、ダイヤモンド膜21の表面全面に保護層5が形成されている。この保護層5によりダイヤモンド膜21の表面の水素終端構造を高温による酸化等から保護することができる。また、保護層5により、水素終端表面の経時劣化やNO2ガスなどの吸着による正孔濃度の変化等に対する影響が少なくなり、安定した動作を確保できる。
【0043】
保護層5の材質は限定されないが、保護層5の成膜時にダイヤモンド膜21の表面と化学反応を生じない絶縁性材料が使用される。例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、スパッタカーボン、ECRスパッタカーボン、Si34(窒化珪素)、AlN(窒化アルミニウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、テフロン(登録商標)、SiC(炭化珪素)、SiO2(酸化珪素)、TiO2(酸化チタン)、Al23(酸化アルミニウム)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、ZnO(酸化亜鉛)などが使用される。
【0044】
図4(b)は、図3に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図である。なお、図4(b)において、図3と同一要素には同一符号を付している。
【0045】
図4(b)の例では、ダイヤモンド膜21の表面全面に保護層5が形成されている。この保護層5によりダイヤモンド膜21の表面の水素終端構造を高温による酸化等から保護することができる。また、保護層5により、水素終端表面の経時劣化やNO2ガスなどの吸着による正孔濃度の変化等に対する影響が少なくなり、安定した動作を確保できる。また、保護層5は、サーミスタ4の機能に影響を与えない。
【0046】
保護層5の材質は限定されないが、保護層5の成膜時にダイヤモンド膜21の表面およびサーミスタ4を構成するドープ・ダイヤモンドと化学反応を生じない絶縁性材料が使用される。例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、スパッタカーボン、ECRスパッタカーボン、Si34(窒化珪素)、AlN(窒化アルミニウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、テフロン(登録商標)、SiC(炭化珪素)、SiO2(酸化珪素)、TiO2(酸化チタン)、Al23(酸化アルミニウム)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、ZnO(酸化亜鉛)などが使用される。
【0047】
図5は、ピエゾ抵抗体を使用した歪ゲージの構成例を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線断面図、図5(c)は図5(b)の一部拡大図である。図5のゲージは、図1に示す歪ゲージのピエゾ抵抗体にゲート電極を付加することで水素終端のp型半導体特性を利用したFET(電界効果トランジスタ)を構成したものである。なお、図5において図1と同一要素には同一符号を付している。
【0048】
図5(a)、図5(b)および図5(c)に示すように、歪ゲージは、表面にダイヤモンド膜11が形成されたシリコン基板10を用いて構成され、シリコン基板10上に直線状のピエゾ抵抗体12が形成される。ピエゾ抵抗体12の両端には、電極13,13が形成され、電極13,13間の電圧値等に基づいてピエゾ抵抗体12の抵抗値が計測される。また、ピエゾ抵抗体12の中央にはゲート電極として機能する電極14が形成され、電極13,13がソース、ドレインとして機能するFETが構成される。
【0049】
図5に示すように、シリコン基板10の一端側(図5(a)における左端側)は支持部15により支持され、片持ち梁構造の歪ゲージが構成される。他端側(図5(a)における右端側)に力が加えられシリコン基板10が厚み方向に撓むと、ピエゾ抵抗体12に引張応力または圧縮応力が加わり、応力に依存した抵抗値変化がピエゾ抵抗体12に生ずる。その抵抗値を計測し応力印加前後における抵抗値変化量を算出することにより、歪み量を算出することができる。さらに、片持ち梁の機械的特性値と寸法値から歪ゲージに加わった応力および梁を撓ませるために要した力が算出される。したがって、ピエゾ抵抗体12の抵抗値変化から、梁に加えた力を計測することが可能となる。
【0050】
また、図5に示す歪ゲージでは、ピエゾ抵抗効果を生じる抵抗体12として水素終端ダイヤモンド表面のp型伝導層を利用したFETを作製し、電極14のゲート電圧によりホール量が制御されたソース−ドレイン間のホールチャネルを用いており、応力・歪が作用した際のホールチャネルの抵抗率の変化を計測することにより、抵抗体12を歪検出素子として利用する。ゲート電圧によるホール量の制御は、歪検出感度の調整や温度依存性の調整に利用することができる。
【0051】
図5に示す歪ゲージを作製する手順としては、シリコン基板10上にマイクロ波プラズマCVD装置によりダイヤモンド膜11を成膜し、水素プラズマによりダイヤモンド表面の水素終端化処理を行う。次に、ピエゾ抵抗体12に対応する水素終端部のパターニング、配線のフォトリソグラフィを経て、ピエゾ抵抗体12および電極13,13,14等を備える歪ゲージを作製することができる。なお、図5(c)は、ピエゾ抵抗体12の領域における水素終端ダイヤモンド表面の状態を模式的に表現している。
【0052】
図6は、ピエゾ抵抗体を使用した圧力センサの構成を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は図6(a)のVIb−VIb線断面図である。
【0053】
図6(a)および図6(b)に示すように、圧力センサは、表面にダイヤモンド膜21が形成されたシリコン基板20を用いて構成され、シリコン基板20上に直線状のピエゾ抵抗体22a,22aおよび「コ」の字形状のピエゾ抵抗体22b,22bが形成される。ピエゾ抵抗体22aの両端にはドレイン電極、ソース電極として機能する電極23a,23aが、ピエゾ抵抗体22aの中央にはゲート電極として機能する電極24aが、それぞれ形成されて、水素終端ダイヤモンド表面のp型伝導層を利用したFETが構成される。また、ピエゾ抵抗体22b,22bの両端にはドレイン電極、ソース電極として機能する電極23b,23bが、ピエゾ抵抗体22b,22bの中央には、ゲート電極として機能する電極24bが、それぞれ形成されて水素終端ダイヤモンド表面のp型伝導層を利用したFETが構成される。電極23a,23a間の電圧値等に基づいてピエゾ抵抗体22aの抵抗値が、電極23b,23b間の電圧値等に基づいてピエゾ抵抗体22bの抵抗値が、それぞれ計測される。また、水素終端ダイヤモンド表面のp型伝導層のホール量は、それぞれのFETのゲート電極により制御され、歪検出感度の調整や温度依存性の調整に利用することができる。具体的には、ゲート電圧を温度に応じて変化させることにより、ピエゾ抵抗体の抵抗値の温度依存性を打ち消すことができる。あるいは、ゲート電圧の電圧値を、ピエゾ抵抗体の抵抗値の温度依存性が抑制される電圧値に維持することができる。
【0054】
シリコン基板20の中央部は他の領域よりも薄く形成され、ダイアフラム25として機能する。ピエゾ抵抗体22b,22bはダイアフラム25の端部に形成され、ピエゾ抵抗体22a,22aはダイアフラム25にかからないシリコン基板20の周辺部に形成されている。
【0055】
ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bは、ブリッジ回路を構成しており、ダイアフラム25に圧力が印加されシリコン基板20の厚み方向に撓むと、ピエゾ抵抗体22b,22bに引張応力または圧縮応力が加わり、応力に依存した抵抗値変化がピエゾ抵抗体22b,22bに生ずる。その抵抗値変化をブリッジ回路により電流値または電圧値として出力することにより、ダイアフラム25への応力印加前後における抵抗値変化量を算出することにより、ダイアフラム25端部における歪み量を算出することができる。さらに、ダイアフラム25の機械的特性値からダイアフラム25に加わった応力およびダイアフラム25を撓ませるために要した圧力が算出される。したがって、ブリッジ回路の出力変化から、ダイアフラム25に印加された圧力を計測することが可能となる。
【0056】
図6に示す圧力センサを作製する手順としては、シリコン基板20上にマイクロ波プラズマCVD装置によりダイヤモンド膜21を成膜し、水素プラズマによりダイヤモンド表面の水素終端化処理を行う。次に、ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bに対応する水素終端部のパターニング、配線のフォトリソグラフィを経て、ピエゾ抵抗体22a,22a、ピエゾ抵抗体22b,22bおよび電極23a,23a,24a,23b,23b,24b等を備える圧力センサを作製することができる。
【0057】
ピエゾ抵抗体の配置は図6の例に限定されない。例えば、ダイアフラムの中央部に2つの水素終端ダイヤモンドピエゾ抵抗体を、ダイアフラムの端部に2つの水素終端ダイヤモンドピエゾ抵抗体を、それぞれ形成してもよい。この場合、ダイアフラムの中央部と端部とでピエゾ抵抗体に印加される応力(引張応力または圧縮応力)が逆転するため、4つのピエゾ抵抗体のブリッジ回路による出力合成によって、出力値を増大させることができる。また単一の水素終端ダイヤモンドピエゾ抵抗体をダイアフラムの端部または中央部に形成し、このピエゾ抵抗体の抵抗値変化から計測箇所の歪量を計測してもよい。
【0058】
図7は、図6に示す圧力センサに温度センサとしてのダイヤモンドサーミスタを付加した例を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のVIIb−VIIb線断面図である。なお、図7において、図6と同一要素には同一符号を付している。
【0059】
図7(a)および図7(b)に示すように、ダイヤモンド膜21の表面には、直線状のサーミスタ4が形成され、サーミスタ4の両端に電極41,41が接続されている。サーミスタ4の抵抗値を電極41,41間の電圧等に基づいて検出することにより、シリコン基板1の温度、すなわちダイアフラム25に接触する流体等の温度を計測することができる。サーミスタ4はダイアフラム25にかからないシリコン基板20の周辺部に形成されており、ダイアフラム25の撓みによる歪みが生ずることはなく、常に温度を正確に把握することが可能となる。サーミスタ4の抵抗値は、ダイアフラム25に接触する流体等の温度計測のみならず、ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bの抵抗値の温度ドリフトの補償に使用することもできる。後者により、広い温度範囲における正確な圧力計測が可能となる。
【0060】
図7に示す圧力センサを作製する手順としては、シリコン基板20上にマイクロ波プラズマCVD装置によりノンドープ・ダイヤモンド膜であるダイヤモンド膜21、サーミスタ4を構成するドープ・ダイヤモンド膜を順次、成膜する。次に、ドープ・ダイヤモンド膜をパターニングすることで、サーミスタ4以外の領域を除去し、その領域のダイヤモンド膜21の表面を露出させる。続いて、水素プラズマによりダイヤモンド表面の水素終端化処理を行う。次に、ピエゾ抵抗体22a,22aおよびピエゾ抵抗体22b,22bに対応する水素終端部のパターニング、配線のフォトリソグラフィを経て、図7に示す圧力センサを作製することができる。
【0061】
図8(a)は、図6に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図である。なお、図8(a)において、図6と同一要素には同一符号を付している。
【0062】
図8(a)の例では、ダイヤモンド膜21の表面全面に保護層5が形成されている。この保護層5によりダイヤモンド膜21の表面の水素終端構造を高温による酸化等から保護することができる。また、保護層5により、水素終端表面の経時劣化やNO2ガスなどの吸着による正孔濃度の変化等に対する影響が少なくなり、安定した動作を確保できる。
【0063】
保護層5の材質は限定されないが、保護層5の成膜時にダイヤモンド膜21の表面と化学反応を生じない絶縁性材料が使用される。例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、スパッタカーボン、ECRスパッタカーボン、Si34(窒化珪素)、AlN(窒化アルミニウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、テフロン(登録商標)、SiC(炭化珪素)、SiO2(酸化珪素)、TiO2(酸化チタン)、Al23(酸化アルミニウム)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、ZnO(酸化亜鉛)などが使用される。
【0064】
図8(b)は、図7に示す圧力センサに保護層を設けた例を示す断面図である。なお、図8(b)において、図7と同一要素には同一符号を付している。
【0065】
図8(b)の例では、ダイヤモンド膜21の表面全面に保護層5が形成されている。この保護層5によりダイヤモンド膜21の表面の水素終端構造を高温による酸化等から保護することができる。また、保護層5により、水素終端表面の経時劣化やNO2ガスなどの吸着による正孔濃度の変化等に対する影響が少なくなり、安定した動作を確保できる。また、保護層5は、サーミスタ4の機能に影響を与えない。
【0066】
保護層5の材質は限定されないが、保護層5の成膜時にダイヤモンド膜21の表面およびサーミスタ4を構成するドープ・ダイヤモンドと化学反応を生じない絶縁性材料が使用される。例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、スパッタカーボン、ECRスパッタカーボン、Si34(窒化珪素)、AlN(窒化アルミニウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、テフロン(登録商標)、SiC(炭化珪素)、SiO2(酸化珪素)、TiO2(酸化チタン)、Al23(酸化アルミニウム)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、ZnO(酸化亜鉛)などが使用される。
【0067】
以上のように、水素終端ダイヤモンド表面のp型伝導層をピエゾ抵抗体として用いることにより、ボロン等の不純物を導入したドープ・ダイヤモンドをピエゾ抵抗体としたダイヤモンド圧力センサと比較して、温度依存性を抑制できるとともに、製造プロセスを単純なものとすることができる。また、高温環境下に適用可能な高感度の歪ゲージや圧力センサを得ることができる。
【0068】
また、同一基板上にボロンドープ等によるドープ・ダイヤモンドサーミスタを形成することにより、温度検知や圧力計測値の温度補正が可能となる。さらに、保護層を設けることにより、ダイヤモンドの水素終端表面の経時劣化やNO2ガスなどの吸着による正孔濃度の変化等に対する影響を抑制でき、安定した動作を確保できる。
【0069】
上記の歪ゲージおよび圧力センサでは、水素プラズマ処理をダイヤモンド成膜後に行っているが、配線のための金属電極のパターニング後に水素プラズマ処理を行い、その後、水素終端ダイヤモンド抵抗体をパターニングしてもよい。
【0070】
また、基板上へのダイヤモンド膜の合成方法は限定されず、熱フィラメントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、高温高圧合成法、プラズマアークジェット法および物理蒸着法などが使用される。
【0071】
ダイヤモンド膜に導電性を付与するためのドーパントとしては、ボロン、窒素、リン、ニッケルなどが使用される。
【0072】
ダイヤモンド膜質は限定されず、単結晶(Ia、Ib、IIa、IIb)、ナノ多結晶、マイクロ多結晶、焼結体などが使用される。
【0073】
基板の材質は限定されないが、ダイヤモンドの熱膨張率と近い熱膨張率を持った基板が高温での使用に適している。例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、Ni−Fe合金(ニッケル−鉄合金)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、グラファイト、グラッシーカーボン、アモルファスカーボンなどが使用される。
【0074】
本発明において、ダイヤモンド表面がp型半導体特性を持つ水素終端として、ダイヤモンド表面が完全に水素終端化されたものに限定されず、一部のみ水素終端化されていてもよい。また経時劣化やNO2ガスの吸着を回避するなどの目的から、表面を酸素、窒素、硫黄、塩素、フッ素、ヨウ素、臭素などの元素、もしくはアルキル基、ベンゼン環などの有機分子などにより修飾してもよい。
【0075】
本発明の圧力センサに使用されるダイアフラムを、金属部材を用いて構成することができる。図9(a)に示す例では、図2に示す圧力センサのダイアフラムに代えて、互いに接着された金属部材7とシリコン基板20Aによりダイアフラムを構成している。同様のダイアフラムを図4に示す圧力センサのダイアフラムに代えて使用することもできる。図9(a)に示すように、ダイアフラム71の領域では金属部材7の厚みが薄く形成されることで、圧力を受けて金属部材7およびシリコン基板20Aが変形する。金属部材7の材質は圧力センサの用途に応じて任意に選択でき、例えば、シリコンでは達成不可能な耐腐食性をダイアフラムに与えることが可能となる。
【0076】
本発明の圧力センサに使用されるピエゾ抵抗の形状として、任意の形状を適用することができる。図9(b)は、繰り返し折り曲げられた形状のピエゾ抵抗体27を示している。ピエゾ抵抗体27の両端には、電極28,28が接続されている。このように、ピエゾ抵抗体を繰り返し折り曲げられた形状とすることでピエゾ抵抗体の実効長を伸ばすことができ、歪や圧力の検出感度を高めることができる。図9(b)の例では、図9(b)における左右方向の実効長を効率的に伸ばすことができる。
【0077】
(ピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造プロセス)
次に、ピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造プロセスの一例について、その詳細を説明する。
図10〜図11は、ピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造プロセスを示す図であり、各工程(ステップ1〜20)における製造物の断面(図2(b)に示される部位の断面に相当)を示している。以下、図10〜図11を参照しつつ各ステップについて説明する。
【0078】
(ステップ1)シリコン基板Bの表面に多結晶ダイヤモンド(PCD;Poly Crystal Diamond)L1を形成した多結晶ダイヤモンド基板を準備する(図10)。
【0079】
(ステップ2)水素プラズマ処理により、多結晶ダイヤモンド基板の表面に水素終端ダイヤモンド層L2を形成する。
【0080】
(ステップ3)水素終端ダイヤモンド層L2の膜面に対して、Al(アルミニウム)スパッタリングを行い、Al膜L3を形成する。
【0081】
(ステップ4)さらに、Al膜L3の表面にポジ型のフォトレジストR1をスピンコートして恒温炉により焼成し、フォトレジストR1を乾燥させるとともにフォトレジストR1とAl膜L3との密着性を高める。
【0082】
(ステップ5)パターンが描画されているフォトマスクM1を用いて、露光によりフォトレジストR1上にパターンを転写する。
【0083】
(ステップ6)現像液により露光された箇所のフォトレジストR1を除去する。
【0084】
(ステップ7)現像により残されたフォトレジストR1のパターンをマスクとして、Al膜L3のエッチングを行う。
【0085】
(ステップ8)アセトンによりフォトレジストR1を除去する。
【0086】
(ステップ9)パターニングされたAl膜L3をマスクとして、水素終端表面(水素終端ダイヤモンド層L2)を形成した多結晶ダイヤモンドL1面に対して酸素プラズマエッチングにより、Al膜L3が形成された領域以外を酸素終端表面とする。
【0087】
(ステップ10)Alのエッチング液により、Al膜L3を除去する。以上のステップにより、水素終端表面を形成した多結晶ダイヤモンドのピエゾ抵抗体が形成される。
【0088】
(ステップ11)水素終端表面を形成した多結晶ダイヤモンドのピエゾ抵抗体を作製した面に対して、ポジ型のフォトレジストR2をスピンコートし、恒温炉により焼成する(図11)。これによりフォトレジストR2を乾燥させるとともに、フォトレジストR2と下地との密着性を高める。
【0089】
(ステップ12)マスクM1と異なるパターンが描画されたマスクM2を用いて、露光によりフォトレジストR2上にパターンを転写する。
【0090】
(ステップ13)現像液により露光された箇所のフォトレジストR2を除去する。
【0091】
(ステップ14)現像されたフォトレジストR2の表面に対して、Ti(チタン)スパッタリング、さらにAu(金)スパッタリングを行い、Ti/Au膜L4を形成する。
【0092】
(ステップ15)リフトオフによりフォトレジストR2と、フォトレジストR2上のTi/Au膜L4を除去し、Ti/Au膜L4による金属配線を形成する。
【0093】
(ステップ16)ピエゾ抵抗体および金属配線を作製した面に対して、ポジ型のフォトレジストR3のスピンコートを行い、恒温炉により焼成する。これによりフォトレジストR3を乾燥させるとともに、フォトレジストR3と下地との密着性を高める。
【0094】
(ステップ17)マスクM1およびマスクM2と異なるパターンが描画されたマスクM3を用いて、露光によりフォトレジストR3上にパターンを転写する。
【0095】
(ステップ18)現像液により露光された箇所のフォトレジストR3を除去する。
【0096】
(ステップ19)現像されたフォトレジストR3の表面に対して、Si34(窒化珪素)スパッタリングを行い、Si34膜L5を形成する。
【0097】
(ステップ20)リフトオフによりフォトレジストR3と、フォトレジストR3上のSi34膜L5を除去し、ダイヤモンドの水素終端表面を保護するための、Si34膜L5による保護膜を形成する。Ti/Au膜L4による金属配線は、外部との電気的接続を行うためにその一部が露出している。
【0098】
ステップ20の後、基板Bをエッチングしてダイヤフラムを形成することで、ダイヤモンド圧力センサを得ることができる。また、水素終端表面を形成したダイヤモンドピエゾ抵抗体を用いた加速度計、粘度計なども、同様の手法で製造することができる。
【0099】
(ピエゾFETの製造プロセス)
次に、水素終端ダイヤモンドピエゾFETの製造プロセスの一例について、その詳細を説明する。
図12〜図14は、水素終端ダイヤモンドピエゾFETの製造プロセスを示す図であり、各工程(ステップ1〜25)における製造物の断面(図6(a)のXII-XII線における断面に相当)を示している。以下、図12〜図14を参照しつつ各ステップについて説明する。
【0100】
(ステップ1)シリコン基板Bの表面に多結晶ダイヤモンド(PCD;Poly Crystal Diamond)L1を形成した多結晶ダイヤモンド基板を準備する(図12)。
【0101】
(ステップ2)水素プラズマ処理により、多結晶ダイヤモンド基板の表面に水素終端ダイヤモンド層L2を形成する。
【0102】
(ステップ3)水素終端ダイヤモンド層L2の膜面に対して、Al(アルミニウム)スパッタリングを行い、Al膜L3を形成する。
【0103】
(ステップ4)さらに、Al膜L3の表面にポジ型のフォトレジストR1をスピンコートして恒温炉により焼成し、フォトレジストR1を乾燥させるとともにフォトレジストR1とAl膜L3との密着性を高める。
【0104】
(ステップ5)パターンが描画されているフォトマスクM1を用いて、露光によりフォトレジストR1上にパターンを転写する。
【0105】
(ステップ6)現像液により露光された箇所のフォトレジストR1を除去する。
【0106】
(ステップ7)現像により残されたフォトレジストR1のパターンをマスクとして、Al膜L3のエッチングを行う。
【0107】
(ステップ8)アセトンによりフォトレジストR1を除去する。
【0108】
(ステップ9)パターニングされたAl膜L3をマスクとして、水素終端表面(水素終端ダイヤモンド層L2)を形成した多結晶ダイヤモンドL1面に対して酸素プラズマエッチングにより、Al膜L3が形成された領域以外を酸素終端表面とする。
【0109】
(ステップ10)Alのエッチング液により、Al膜L3を除去する。以上のステップにより、水素終端表面を形成した多結晶ダイヤモンドのピエゾ抵抗体が形成される。以下、ピエゾ抵抗体に電極を接続することでピエゾFETが作製される。
【0110】
(ステップ11)水素終端表面を形成した多結晶ダイヤモンドのピエゾ抵抗体を作製した面に対して、ポジ型のフォトレジストR2をスピンコートし、恒温炉により焼成する(図13)。これによりフォトレジストR2を乾燥させるとともに、フォトレジストR2と下地との密着性を高める。
【0111】
(ステップ12)マスクM1と異なるパターンが描画されたマスクM2を用いて、露光によりフォトレジストR2上にパターンを転写する。
【0112】
(ステップ13)現像液により露光された箇所のフォトレジストR2を除去する。
【0113】
(ステップ14)現像されたフォトレジストR2の表面に対して、Ti(チタン)スパッタリング、さらにAu(金)スパッタリングを行い、Ti/Au膜L4を形成する。
【0114】
(ステップ15)リフトオフによりフォトレジストR2と、フォトレジストR2上のTi/Au膜L4を除去し、Ti/Au膜L4による金属配線を形成する。
【0115】
(ステップ16)ピエゾ抵抗体および金属配線を作製した面に対して、ポジ型のフォトレジストR5のスピンコートを行い、恒温炉により焼成する。これによりフォトレジストR5を乾燥させるとともに、フォトレジストR5と下地との密着性を高める。
【0116】
(ステップ17)マスクM1およびマスクM2と異なるパターンが描画されたマスクM5を用いて、露光によりフォトレジストR5上にパターンを転写する。
【0117】
(ステップ18)現像液により露光された箇所のフォトレジストR5を除去する。
【0118】
(ステップ19)現像されたフォトレジストR5の表面に対してAlスパッタリングを行い、ゲート電極を構成するAl膜L6を形成する。
【0119】
(ステップ20)リフトオフによりフォトレジストR5と、フォトレジストR5上のAl膜L6を除去することで、水素終端表面を形成した多結晶ダイヤモンドのピエゾ抵抗体上にAl膜L6によるゲート電極を形成する。Al膜L6によるゲート電極は、このピエゾ抵抗体からなるピエゾFETのホールチャネル上に位置づけられることになる。
【0120】
(ステップ21)水素終端表面を形成した多結晶ダイヤモンドのピエゾFET、金属配線およびゲート電極を作製した面に対して、ポジ型のフォトレジストR6をスピンコートし、恒温炉により焼成する(図14)。これによりフォトレジストR6を乾燥させるとともに、フォトレジストR6と下地との密着性を高める。
【0121】
(ステップ22)マスクM1、マスクM2およびマスクM5と異なるパターンが描画されたマスクM6を用いて、露光によりフォトレジストR6上にパターンを転写する。
【0122】
(ステップ23)現像液により露光された箇所のフォトレジストR6を除去する。
【0123】
(ステップ24)現像されたフォトレジストR6の面に対して、Si34をスパッタリングし、Si34膜L7を形成する。
【0124】
(ステップ25)リフトオフによりフォトレジストR6と、フォトレジストR6上のSi34膜L7を除去し、ダイヤモンドの水素終端表面を保護するための、Si34膜L7による保護層を形成する。Ti/Au膜L4による金属配線およびAl膜L6によるゲート電極は、外部との電気的接続を行うためにその一部が露出している。
【0125】
ステップ25の後、基板Bをエッチングしてダイヤフラムを形成することで、ダイヤモンド圧力センサを得ることができる。また、水素終端表面を形成したダイヤモンドピエゾFETを用いた加速度計、粘度計なども、同様の手法で製造することができる。
【0126】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、半導体材料に外力が作用したときの抵抗値の変化を利用するピエゾ抵抗体を有する半導体装置等に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
11,21 ダイヤモンド膜(ダイヤモンド)
12,22a,22b ピエゾ抵抗体
4 サーミスタ(温度センサ)
5 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を有する半導体装置において、
前記半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ダイヤモンドが絶縁性ダイヤモンドで形成され、前記ダイヤモンドの表面の一部が水素終端化されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を用いた歪ゲージにおいて、
前記半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えることを特徴とする歪ゲージ。
【請求項4】
前記ピエゾ抵抗体の一端にソース電極が、前記ピエゾ抵抗体の他端にドレイン電極が、前記ピエゾ抵抗体の前記一端および前記他端の間にゲート電極が、それぞれ配置された電界効果トランジスタが構成されることを特徴とする請求項3に記載の歪ゲージ。
【請求項5】
前記ダイヤモンド表面の外側に形成された保護層と、
ドープ・ダイヤモンドにより形成され、前記ピエゾ抵抗体の温度を検出する温度センサと、
を備え、
前記ゲート電極は前記半導体のホールの量を制御することを特徴とする請求項4に記載の歪ゲージ。
【請求項6】
圧力を受けて変形するダイアフラムと、前記ダイアフラムの変形量に基づいて半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を用いた歪ゲージと、を備える圧力センサにおいて、
前記半導体として機能する水素終端化されたダイヤモンドの表面を備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項7】
外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造方法において、
水素プラズマによりダイヤモンド表面の少なくとも一部を水素終端化するステップと、
前記水素終端化するステップにより水素終端化されたダイヤモンド表面を抵抗体として形成するステップと、
金属膜により前記抵抗体に対して電気的接続を獲得するステップと、
前記抵抗体の表面の水素終端構造を保護するための保護層を形成するステップと、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
外力の作用により半導体の抵抗値が変化するピエゾ抵抗体を有する半導体装置の製造方法において、
水素プラズマによりダイヤモンド表面の少なくとも一部を水素終端化するステップと、
前記水素終端化するステップにより水素終端化されたダイヤモンド表面を電界効果トランジスタのホールチャンネルとして機能するピエゾ抵抗体を形成するステップと、
金属膜により前記抵抗体に対して電気的接続を獲得するステップと、
前記ホールチャンネル上にホール量を制御するためのゲート電極を形成するステップと、
前記抵抗体の表面の水素終端構造を保護するための保護層を形成するステップと、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−198196(P2012−198196A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21571(P2012−21571)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】