半導体装置およびその製造方法
【課題】Cu配線パターンとキャップ層との界面を伝うCuの拡散を抑制し、同時にCu配線パターンの抵抗の増大を抑制するCuダマシン配線の製造法を提供する。
【解決手段】基板41上に側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜45を形成する。側壁面のうち、上端部を含む上側の第1の部分Dを覆い、凹部の底面と下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように覆う、金属膜47を形成する。凹部の側壁面と底面とを連続的に覆う導電性拡散障壁膜48を形成する。銅を充填し銅配線パターン49A、49B、49Cとする。絶縁膜上と銅配線パターンの表面を覆う絶縁性拡散障壁膜49を形成する。熱処理により、銅配線パターンと絶縁性拡散障壁膜との界面に、金属元素の濃集領域49Dを形成する。金属元素の濃集領域では、金属膜を構成する金属元素の濃度が、銅配線パターン中よりも高い。
【解決手段】基板41上に側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜45を形成する。側壁面のうち、上端部を含む上側の第1の部分Dを覆い、凹部の底面と下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように覆う、金属膜47を形成する。凹部の側壁面と底面とを連続的に覆う導電性拡散障壁膜48を形成する。銅を充填し銅配線パターン49A、49B、49Cとする。絶縁膜上と銅配線パターンの表面を覆う絶縁性拡散障壁膜49を形成する。熱処理により、銅配線パターンと絶縁性拡散障壁膜との界面に、金属元素の濃集領域49Dを形成する。金属元素の濃集領域では、金属膜を構成する金属元素の濃度が、銅配線パターン中よりも高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に半導体装置に係り、特に多層配線構造を有する半導体装置およびその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の半導体集積回路装置においては、共通基板上に莫大な数の半導体素子が形成されており、これらを相互接続するために、多層配線構造が使われている。
【0003】
多層配線構造では、配線層を構成する配線パターンを埋設した層間絶縁膜が積層される。
このような多層配線構造では、下層の配線層と上層の配線層とが、層間絶縁膜中に形成されたビアコンタクトにより接続される。
【0004】
特に最近の超微細化・超高速半導体装置では、多層配線構造中における信号遅延(RC遅延)の問題を軽減するため、層間絶縁膜として低誘電率膜(いわゆるlow−k膜)が使われる。これと共に、配線パターンとして、低抵抗の銅(Cu)パターンが使われている。
【0005】
このようにCu配線パターンを低誘電率層間絶縁膜中に埋設した多層配線構造においては、Cu層のドライエッチングによるパターニングが困難であるため、層間絶縁膜中に予め配線溝あるいはビアホールを形成するいわゆるダマシン法あるいはデュアルダマシン法が使われる。ダマシン法あるいはデュアルダマシン法では、このようにして形成された配線溝あるいはビアホールをCu層で充填し、その後、層間絶縁膜上の余剰なCu層を化学機械研磨(CMP)により除去する。
【0006】
その際、Cu配線パターンが層間絶縁膜に直接に接すると、Cu原子が層間絶縁膜中に拡散し、短絡などの問題を惹起するため、Cu配線パターンが形成される配線溝あるいはビアホールの側壁面および底面を、導電性拡散バリア、いわゆるバリアメタル膜により覆い、Cu層を、かかるバリアメタル膜上に堆積することが一般になされている。バリアメタル膜としては、一般的にタンタル(Ta)やチタン(Ti)、タングステン(W)などの高融点金属、あるいはこれら高融点金属の導電性窒化物が用いられる。
【特許文献1】特開2004−289008号公報
【特許文献2】特開2003−257979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1A〜図1Gは、典型的なダマシン法によるCu配線パターンの形成例を示す。
【0008】
図1Aを参照するに、図示を省略した基板上には層間絶縁膜11が形成されており、前記層間絶縁膜11上には、開口部12Aを有するハードマスクパターン12が形成され、図1Bに示す構造が得られる。
【0009】
次に前記層間絶縁膜11が前記ハードマスクパターン12をマスクにパターニングされ、前記層間絶縁膜11中には、前記開口部12Aに対応して、配線溝あるいはビアホールとなる凹部11Aが形成され、図1Cに示す構造が得られる。
【0010】
次に、前記図1Cの構造上に導電性拡散障壁膜13を、典型的にはスパッタにより、前記導電性拡散障壁膜13が前記ハードマスクパターン12、および前記凹部11Aの側壁面および底面を連続して覆うように形成し、図1Dに示す構造を得る。
【0011】
さらに前記図1Dの構造上にCu層14を、スパッタ法および電解メッキ法により、前記Cu層14が前記導電性拡散障壁膜13を、前記ハードマスクパターン12を覆う部分および前記凹部11Aの側壁面および底面を覆う部分を、前記凹部11Aを充填して覆うように形成し、図1Eの構造を得る。
【0012】
次に、前記図1Dの構造におけるCu層14を、その下の導電性拡散障壁膜13まで含め、前記ハードマスクパターン12が露出するまで、化学機械研磨(CMP)法により除去し、前記開口部12Aを、前記導電性拡散障壁膜13を介してCuパターン14Aにより充填した図1Fに示す構造を得る。
【0013】
さらに前記図1Fの構造上に、前記Cu配線パターン14Aおよびハードマスクパターン12を覆うように、絶縁性拡散障壁膜(キャップ膜)15を形成し、さらにその上に次の層間絶縁膜16を形成することにより、図1Gの構造を得る。
【0014】
このようにして得られたCu配線パターン14Aを含む配線構造ないし多層配線構造では、Cu配線パターン14AからのCu原子の層間絶縁膜11中への拡散が、導電性拡散障壁膜13およびキャップ膜15により阻止され、Cu原子が層間絶縁膜11あるいは16中に拡散することにより生じる配線の短絡やリーク電流の発生の問題が回避される。
【0015】
一方、このような構造では、前記キャップ層15はSiCやSiNなどの絶縁層であるため、金属であるCu配線パターン14Aとの界面に欠陥が生じることは避けられず、その結果、特に前記Cu配線パターン14Aに通電される場合、前記Cu配線パターン14A中のCu原子が、このような界面を伝って、例えば図2に示すようにCu配線パターンの外にまでエレクトロマイクグレーションやストレスマイグレーションにより拡散する恐れがある。このようなCu原子が、前記層間絶縁膜11中に形成された隣接する同様なCu配線パターンに到達すると、リーク電流が発生してしまう。
【0016】
また前記凹部11Aを形成する際にハードマスクパターン12を使わず、レジストパターンを使った場合には、前記ハードマスクパターン12は存在せず、前記Cu原子は前記界面から、直接に層間絶縁膜11中へと拡散してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一の側面によれば半導体装置は、基板と、前記基板上に形成され、側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜と、前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分において、前記絶縁膜が露出するように覆う金属膜と、前記凹部の側壁面と底面とを連続的に覆い、かつ前記側壁面のうち前記第1の部分においては、前記金属膜をも覆う第1の拡散障壁膜と、前記凹部を前記第1の拡散障壁膜を介して充填する銅配線パターンと、前記絶縁膜上において、前記銅配線パターンの表面を覆う絶縁性の第2の拡散障壁膜と、前記銅配線パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に形成された金属元素の濃集領域と、を備え、前記金属元素の濃集領域は、前記金属層を構成する金属元素を、前記銅配線パターン中よりも高い濃度で含むことを特徴とする。
【0018】
他の側面によれば半導体装置の製造方法は、層間絶縁膜中に凹部を形成する工程と、前記開口部の側壁面に金属膜を、前記金属膜が前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を覆い、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように堆積する工程と、前記層間絶縁膜上に、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って第1の拡散障壁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜上に銅層を堆積し、前記開口部を、前記拡散防止膜を介して前記銅層により充填する工程と、前記層間絶縁膜上の銅層を除去し、前記開口部中に、前記銅層により、銅パターンを形成する工程と、前記層間絶縁膜上に、前記銅パターンの上面に接して、絶縁性の第2の拡散障壁膜を形成する工程と、前記銅層を加熱処理し、前記金属膜を構成する金属元素を、前記銅パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に濃集させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
前記第1および第2の側面によれば、凹部を充填するCu配線パターンには、前記Cu配線パターンを覆う絶縁性の拡散障壁層との界面に沿って、前記開口部側壁面の上部に形成した金属膜から拡散した金属原子が濃集した濃集領域が形成される。このような金属原子は前記界面に存在する欠陥に安定に捕獲され、前記Cu配線パターン中のCu原子がかかる欠陥を伝って前記Cu配線パターンの外部に拡散するのを抑制する。その際、金属膜を、前記層間絶縁膜が前記凹部の底面および側壁面のうち、上端部を含む上部を除いて露出するように形成することにより、Cu配線パターンの抵抗の増加を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明者は本発明の基礎となる研究において、Cu配線中に分布する元素の詳細な分析を実施した。以下、この研究を説明する。
【0021】
図3は、前記研究において作製したCu配線パターンの試料20の構成を示す。
【0022】
図3を参照するに前記試料20は、100nmの膜厚の熱酸化膜よりなるシリコン酸化膜22を有するシリコン基板21上に形成されており、前記シリコン酸化膜22上には低誘電率膜(いわゆるlow−K膜)、より具体的には、SiOCよりなる層間絶縁膜23が、約500nmの膜厚で形成されている。前記層間絶縁膜23上には膜厚が例えば50nmの炭化シリコン(SiC)よりなるハードマスク層24が、例えばプラズマCVD法により形成されており、前記層間絶縁膜23中には凹部23が、前記ハードマスク層24をマスクにしたドライエッチングにより、3000nmの幅および800nmの深さで形成されている。
【0023】
さらに前記図3の試料20では、前記凹部23Tの側壁面および底面を連続的に覆ってチタン(Ti)よりなる金属膜25が、前記凹部23Tの断面形状に整合した断面形状および約20nmの膜厚で、形成されており、前記金属膜25上には、前記凹部23Tの側壁面および底面を連続的に覆って、さらにタンタル(Ta)または窒化タンタル(TaN)よりなる第1の拡散障壁膜26が、前記金属膜25の断面形状に整合した形状および約10nmの膜厚で形成されている。前記金属膜25および拡散障壁膜26は、スパッタ法により形成している。
【0024】
前記凹部23Tは、前記第1の拡散障壁層26を介してCuパターン27により充填されており、前記Cuパターン27の上面は、前記ハードマスク層24を覆って例えば50nmの膜厚に形成された、SiCよりなる絶縁性の第2の拡散障壁膜28により覆われている。前記Cuパターン27は、スパッタ法によりCuシード層を形成し、さらに電解メッキ法によりその上にCu層を形成した後、前記Cu層を前記ハードマスク層24が露出するまでCMP法により除去する周知の方法により形成している。
【0025】
前記第2の拡散障壁膜28はプラズマCVD法により、350℃以上400℃以下の温度で形成され、さらに前記第2の拡散障壁膜28上には次の層間絶縁膜29が、プラズマCVD法あるいは塗布法により形成されている。なお、前記拡散障壁層28の形成の際、また前記層間絶縁膜29の形成をプラズマCVD法で行った場合にも、前記Cuパターン27は350℃〜400℃の温度範囲で熱処理を受ける。図3の試料20の場合、前記第2の拡散障壁膜28の形成後、前記Cu配線パターン27は400℃の温度で60分の熱処理を受けている。
【0026】
本発明の発明者は、前記図3の構造に対し、前記Cuパターン27中におけるTiの分布を、前記図3の構造中、図4において破線Rで囲んだ断面について、高精度オージェ分析装置を用いて分析した。ただし図4中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付している。
【0027】
図4に示すように、前記断面は前記Cu配線パターン27を斜めに切断したもので、前記Cu配線パターン27の一部、前記第1の拡散障壁膜26の一部、前記金属膜25の一部、さらに第2の拡散障壁膜28の一部を含んでいる。前記Cu配線パターン27の下部は含まれていない。
【0028】
図5は、前記高精度オージェ分析装置により得た測定結果を示す。図5中、個々の点はTi原子の検出を表している。また図5中、線A1−A2,A3,A4は、図4に示した補助線に対応している。
【0029】
図5の結果を見ると、もともと前記Cu配線パターン27の上端部、すなわち前記Cu配線パターン27と前記第2の拡散障壁膜28膜との界面にはTiは導入していなかったにもかかわらず、前記補助線A1−A2に沿った領域においてTi原子が濃集し、高濃度に析出していることがわかる。
【0030】
一方、図5中、補助線A3,A4に沿ったTi原子の濃集は、前記金属層25に対応しているが、この部分を詳細に見ると、前記Ti原子の濃集が、破線で囲んだ部分では非常に顕著であるのに対し、前記Cu配線パターン27と第2の拡散障壁層28との界面に近い、深さが約260nmまでの領域Dでは減少していることがわかる。これらのことから、前記補助線A1−A2に沿ったTi原子の濃集は、もともと前記金属膜25に含まれていたTi原子が、前記Cu配線パターン27上端の角部を経由して、前記Cu配線パターン27と第2の拡散障壁膜28との界面に沿って、図6に概略的に示すように拡散したものと考えられる。ただし図6中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0031】
なお図5中、破線で囲んだ領域のうち、色が薄い部分は、色の濃い部分に対し、より高濃度でTi原子が存在していることを示している。これらの部分では、Ti原子の濃度が、熱処理の前から大きくは変わっておらず、前記金属膜25は、熱処理前の状態に近い状態で残留していることを示している。一方、前記深さ260nmまでの領域Dでは、前記金属膜25は前記補助線A1−A2に沿って濃集したTi原子の源となっており、これに伴い、前記図6に概略的に示すように、膜厚を減少させているものと考えられる。
【0032】
ところで、これまでのエレクトロマイグレーションの研究から、Cu配線パターン中におけるCu原子の拡散では、主として前記Cu配線パターンと、SiNやSiCN、SiCなどよりなり、前記第2の拡散障壁膜28に対応する、いわゆるキャップ膜との界面での拡散が支配的であると考えられている。以下では、前記第2の拡散障壁膜28をキャップ膜と記すことにする。前記界面では絶縁膜と金属膜が接するため、欠陥ないし空孔が多く存在し、配線構造中でも密着性が最も弱い。一方、それ以外の界面、すなわちCu配線パターンの側面や底面では、前記Cu配線パターンが、前記第1の拡散障壁膜26など、金属元素を含むいわゆるバリアメタルと接するため、空孔は少なく、界面の密着力は比較的強い。そのため、エレクトロマイグレーションによりCu原子が輸送される場合には、Cu原子の輸送は、Cu配線パターンとキャップ膜との界面の、界面密着性の最も悪い拡散パスに沿って進行しやすい。またそのため、かかる界面では、エレクトロマイグレーションの結果、空孔が集合し、ボイドが形成される確率も極めて高い。
【0033】
これに対し、図5のように、Cu配線パターン27とキャップ層28との界面にTi原子を析出させた構造ではCu原子が前記Ti原子によりピニングされ、かかる界面を伝って生じるCu原子の拡散を抑制することが可能である。例えば特許文献2を参照。
【0034】
一方、図5のTi原子の分布からわかるように、Ti原子は前記キャップ膜28とCu配線パターン27との界面に濃集しており、前記Cu配線パターン27の内部ではほとんど検出されていていない。前記Cu配線パターン27内部におけるTi原子の濃度は、ノイズレベル以下である。このため、前記図3〜図5の配線構造において、前記金属膜25からのTi原子の拡散が、前記Cu配線パターン27の抵抗を上昇させることはない。
【0035】
図5の測定結果は、前記図3の試料20について、その上にさらに多層配線構造を形成し、すべての製造工程を終了した後、図4に示すようにカットしたものについての結果であり、このため、前記Cu配線パターン27には、さまざまな熱処理が、トータルで400℃、1時間の熱処理に対応する熱量が加えられている。
【0036】
さらに、このような実験を、前記金属膜25をTi膜からマンガン(Mn)膜、ジルコニウム(Zr)膜、アルミニウム(Al)膜に変更し、またそれぞれについて、前記第1の拡散障壁膜26を前記Ta膜からMn膜、さらに窒化Ta(TaN)膜および窒化Ti(TiN)膜に変更して繰り返し行ったところ、添加元素に多少は依存するものの、300℃〜500℃温度範囲で、1分間〜1時間程度の熱処理を行えば、同じような現象が発現し、深さが約260nmよりも浅い領域Dにおいて、金属層25中の金属原子の濃度が減少することが確認されている。なお、前記金属膜25がMn膜であり拡散障壁膜26もMn膜である場合には、拡散障壁膜26の上端部も前記金属元素の源として作用するが、膜25,26を合わせた膜厚が増大しているため、このようにMn原子が拡散をしても、拡散障壁膜26の機能が損なわれることはない。
【0037】
このように、図6の配線構造20では、前記Cu配線パターン27とその表面を覆うキャップ膜28との界面の領域27DにTi原子などの金属原子の濃集が生じるため、前記界面に沿ったCu原子の拡散が抑制され、配線構造20は優れたエレクトロマイグレーション耐性およびストレスマイグレーション耐性を示す。
【0038】
一方、図3あるいは図6の配線構造20では、Tiなどの金属原子の源となる金属膜25が、前記凹部23Tの側壁面および底面を連続的に覆って形成されていたが、前記金属膜25のうち、実際に金属原子の源となる部分は、先にも説明したように、深さが260nm以内の領域Dに限られる。それ以外の部分、すなわち前記凹部23Tの側壁面のうち、前記領域Dより下側の部分および前記凹部23Tの底面を覆う部分においては、前記金属膜25は配線パターン27の抵抗を増大するのに寄与するだけである。
【0039】
図7A〜図7Hは、上記の知見を多層配線構造の形成に適用し、その際、不要な部分への金属膜の形成を抑制し、配線抵抗を低減させた第1の実施形態による多層配線構造を有するは半導体装置40の製造方法を示す。
【0040】
図7Aを参照するに、前記半導体装置40はシリコン基板41上に形成されており、前記シリコン基板41上には素子分離構造41Iにより、素子領域40Aが画成されている。
【0041】
前記素子領域40A中には、前記シリコン基板41上にシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜、さらにはシリコン酸窒化膜などよるなるゲート絶縁膜42を介してポリシリコンゲート電極43が形成されており、前記シリコン基板41中には、前記素子領域40のうち、前記ゲート電極43の第1の側および第2の側に、それぞれn型あるいはp型のLDD領域41a,41bが、それぞれ形成されている。
【0042】
前記ゲート電極43の前記第1および第2の側の側壁面には、それぞれの側壁絶縁膜43W1,43W2が形成され、前記シリコン基板41中、前記素子領域40のうち、前記側壁絶縁膜43W1の前記第1の側にはp型あるいはn型のソース拡散領域41cが、また前記側壁絶縁膜43W2の前記第2の側には、p型あるいはn型のドレイン拡散領域41dが形成されている。
【0043】
さらに前記シリコン基板41は、前記ゲート電極43を前記側壁絶縁膜43W1,43W2も含めて覆うシリコン酸化膜44を、下地絶縁膜として形成されている。
【0044】
さらに前記下地絶縁膜44上には、CVD法あるいはSOD(Spin On Deposition)法などにより、いわゆるLow−K膜45を、層間絶縁膜として形成する。図示の例では前記層間絶縁膜45としてSiOC膜を、CVD法により、250nmの膜厚に形成している。さらに前記SiOC膜45上にハードマスク膜として、SiC膜46をプラズマCVD法により例えば50nmの膜厚に形成し、図7Aの構造を得る。
【0045】
次に前記図7Aの構造において、前記層間絶縁膜45のうち、形成したい配線パターンに対応する部分に、配線溝45A,45B,45Cを、前記ハードマスク層45をマスクとしたドライエッチングにより形成し、図7Bの構造を得る。図7Bの例では、前記配線パターンには、領域Aに形成される、配線幅がほぼ最小の0.1μmのものと、領域Bに形成される、配線幅がより太いものとが含まれている。
【0046】
次に、前記図7Bの構造に対し、前記金属膜25に対応する金属膜47を室温のスパッタ法で成膜し、図7Cの構造を得る。図7Cの例では、ここでは前記金属膜47として、フィールド膜厚相当で5nmの膜厚のTi膜を用いている。先にも説明したように、前記金属膜47としては、他にMn膜、Zr膜、Al膜などを使うことができる。
【0047】
さらに前記図7Cの構造に対し、斜め方向に、例えば前記層間絶縁膜45の主面に対して5〜75°の角度θだけ傾け、基板41を回転させながらリスパッタを行い、配線幅によらず、配線溝45A〜配線溝45Cの底面および側壁面のうち底面に近い部分に堆積された金属膜47を削り、陰になる前記配線溝45A〜配線溝45Cの肩部、すなわち配線溝の上端部を含む、好ましくは深さが260nmまでの領域Dにのみ、前記金属膜47を残す。本実施形態では前記リスパッタは、ターゲットバイアスを510W、基板バイアスを380W、高周波コイル電力を1190Wとする条件で、前記行うことができる。ただしその場合、リスパッタ条件は上記のものに限るものではなく、バリアメタルの種類や厚さ、層間膜の種類等に応じて微調整することが必要である。
【0048】
次に、前記図7Dの構造上に、Ti原子の拡散を防止するバリアメタル膜48を、前記第1の拡散障壁膜26に対応して、室温のスパッタ法で成膜し、図7Eの構造を得る。図7Eの例では、前記バリアメタル膜48として、図3あるいは図6の配線構造20と同様に、Ta膜を、フィールド膜厚で5nm相当の膜厚に形成している。
【0049】
次に、前記図7Eの構造の全面に、シード層となるCu膜(図示せず)を、室温のスパッタ法で20nmの厚さで形成する。その後、電解めっき法によりCu層49を、前記Cu層49が前記配線溝45A〜配線溝45Cを充填するように形成し、図7Fの構造を得る。その後、前記基板41およびその上の構造を150℃の温度で熱処理し、前記Cu膜49中の結晶粒を成長させる。
【0050】
さらに、前記Cu層49を、CMP法により、前記ハードマスク層46が露出するまで研磨し、図7Gの構造を得る。図7Gの構造では、前記Cu層49から、前記配線溝45A〜配線溝45Cを充填するCu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cが形成されている。
【0051】
さらに、前記図7Gの構造上に、前記第2の拡散障壁膜28に対応するキャップ膜49としてSiC膜をプラズマCVD法により、前記Cu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cの上面を覆うように50nmの厚さで形成し、さらにその上に膜厚が500nmのシリコン酸化膜50と膜厚が50nmのSiN膜51を、350℃〜400℃の温度で実行されるプラズマCVD法などによって形成し、図7Hの構造を得る。
【0052】
さらに、このようにして得られた図7Hの構造において、図示はしていないが、配線端部のパッド領域において前記シリコン酸化膜50をエッチングで除去し、アルミニウム(Al)膜を成膜し、さらにパターニングすることで、Cu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cの抵抗測定用の端子電極を形成した。このアルミニウム膜の成膜工程は、Cu配線構造の一般的な製造工程の一部であり、この工程において、前記Cu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cには、約400℃での熱処理が約30分間加えられる。
【0053】
このような前記絶縁膜45あるいは46の形成工程、あるいは前記端子電極の形成工程に伴う熱処理の結果、図7Hに示すように前記Cu配線パターン49A〜49Cの各々において、その上のキャップ層49との界面に沿って、前記金属膜47からのTi原子などの金属原子の拡散の結果、前記領域Dに対応して、前記Ti原子などの金属原子の濃集領域49Dが形成される。またこれに伴って、前記金属膜47の膜厚は減少する。しかし金属膜47が消失することはない。
【実施例1】
【0054】
このように濃集領域49Dが形成された配線幅が0.1μmのCu配線パターンにつついて配線抵抗を調べたところ、以下の表1に示す結果を得た。ただし表1中、「実施例1」として示しているのは、上記図7A〜図7Hで説明したプロセスにより形成されたCu配線パターンについての抵抗値であり、一方「比較例1」として示しているのは、前記図7Cで説明したTi膜47の成膜工程および前記図7Dで説明したリスパッタ工程を省略した場合の、同じく配線幅が0.1μmのCu配線パターンの抵抗値、さらに「比較例2」として示しているのは、図7Dで説明したリスパッタ工程を省略した場合の、配線幅が0.1μmのCu配線パターンの抵抗値を示している。表1中、「実施例1」、「比較例1」、「比較例2」の抵抗値は、「実施例1」の抵抗値に対して規格化して示してある。
【0055】
【表1】
表1を参照するに、配線幅0.1μmのCu配線パターンで比較した場合、従来例1の配線抵抗は実施例1の配線抵抗の98%であり、わずかながらTi膜47が形成されているため、配線溝中におけるCu配線パターンの割合がわずかながら減少し、抵抗値がわずかながら上昇していることを示している。
【0056】
これに対し従来例2では、配線抵抗は実施例1の110%まで増大しているが、これは前記Ti膜47が配線溝45A〜配線溝45Cの側壁面および底面の全体を連続して覆っており、配線溝中におけるCu配線パターンの割合が、実施例1の場合よりも減少している効果を反映している。
【0057】
次に、このように形成された配線幅が0.1μmのCu配線パターンについて、信頼性試験を行って配線寿命を評価したところ、以下の表2に示す結果を得た。ただし、信頼性試験は300℃の温度で、電流加速条件を3MA/cm2に設定して実施している。またその際、配線長さは1000μmとしているが、これは、いわゆるBlech長よりもはるかに長い。このため、この信頼性試験においては配線長さの効果は影響していないと考えられる。表2中、「実施例1」、「比較例1」、「比較例2」は、表1のものと同じである。また表2中、「実施例1」および「比較例2」の配線寿命は、「実施例1」の配線寿命に対して規格化して示してある。
【0058】
【表2】
表2に示すように、実施例1のCu配線パターンでは配線寿命が、従来例1のCu配線パターンの配線寿命より約5倍長いことが示された。また従来例2のCu配線パターンでは配線寿命は、実施例1とほぼ同等であることが示された。
【0059】
上記表1および表2の結果を勘案すると、配線抵抗と信頼性の両面を鑑みて、実施例1のCu配線パターンが有利であることが結論される。
【0060】
[第2の実施形態]
図8A〜図8Hは、デュアルダマシン法による多層配線構造の形成を含む第2の実施形態による半導体装置の製造方法を示す。ただし図中、先に説明した部分には対応する参照符号を付し、説明を省略する。
【0061】
図8Aを参照するに、まず図7A〜図7Gで説明した前記第1の実施形態と同じ方法で、下層配線まで製造する。
【0062】
次に、先に図7Hで説明したように、キャップ膜としてSiC膜51を、プラズマCVD法により、前記Cu配線パターン49A〜49Cの表面を覆うように、例えば50nmの厚さで形成し、その後、プラズマCVD法により、SiOC膜よりなるlow−K膜を、層間絶縁膜61として約550nmの膜厚に形成する。さらに前記層間絶縁膜61上に、厚さが50nmのSiC膜62を、ハードマスク層として形成し、図8Bに示す構造を得る。
【0063】
次に、前記ハードマスク層62をパターニングしてビアホールに対応する開口部を形成し、前記ハードマスク層62をマスクに前記層間絶縁膜61を前記キャップ層49が露出するまで、ドライエッチングによりエッチングし、前記層間絶縁膜61中に、図8Cに示すビアホール61Vを形成する。
【0064】
さらに前記ハードマスク層62をパターニングして、前記層間絶縁膜61中に形成される配線溝に対応した開口部を形成し、前記ハードマスク層62をマスクに前記層間絶縁膜をドライエッチングによりエッチングし、前記層間絶縁膜61中に、図8Cに示す配線溝61Tを形成する。前記配線溝61Tのドライエッチングは、エッチング時間を制御することにより、所望の深さに到達したところで打ち切られ、その結果、図8Cに示す構造が得られる。
【0065】
次に前記図8Cの構造上に、Ti膜63を、基板41を、前記基板に垂直な軸の回りで回転させながら角度θの斜めスパッタを行うことにより、フィールド領域における厚さが1nm〜10nmとなるように形成する。このような斜めスパッタでは、配線溝61Tの底面およびこれに続く側壁面の下部、さらにビアホール61Vの側壁面および底面における金属膜63の堆積はほとんど生じない。
【0066】
斜めスパッタを行う際の角度θは、前記金属膜62が前記配線溝61Tの肩部、すなわち側壁面の上端部から260nmまでの深さDのみを覆うように最適化するのが好ましい。実際には半導体装置の多層配線構造中には、異なった幅の配線溝が多数形成されているが、前記金属膜62は、先にも図6で説明したようにTiなどの金属原子の源となるものであり、各配線溝において肩部にわずかに存在しておれば十分なので、前記角度θは、多層配線構造中の最も幅の広い配線溝において、前記金属膜63が配線溝側壁面の上端部から260nmまでの深さを覆うように最適化するのが好ましい。この場合、より幅の狭い配線溝においては、前記金属膜63は前記側壁膜の上端部から測って、260nmよりも浅い領域を覆うことになる。例えば前記配線溝61Tの幅が100nmである場合、前記角度θは69°に設定し、また前記配線溝61Tの幅が1000nmである場合には、前記角度θは14°に設定するのが好ましい。上記金属膜62のスパッタは室温で実行することができる。
【0067】
なお、配線レイアウトによっては、トレンチの底部に近い側面や底部にも堆積するのが回避できない場合も考えられるが、そのような場合には、先に図7Dで説明したのと同様に、リスパッタを行ってこれらの余計な膜を取り除くことが有効である。
【0068】
先にも述べたように、前記金属膜63はTi膜に限定されるものではなく、Mn膜、Zr膜、Al膜などを使うことも可能である。
【0069】
その後は、先の実施形態と全く同じ工程を行う。
【0070】
すなわち、前記金属膜63上に前記配線溝61Tおよびビアホール61Vの側壁面と底面を連続して覆うように、拡散障壁膜64としてTa膜を室温でのスパッタ法により、例えば10nmの膜厚で形成し、図8Eの構造を得る。なお前記拡散障壁膜64はTa膜に限定されるものではなく、例えばMn膜などの他の金属膜や、TaN膜やTiN膜など、高融点金属の導電性窒化物膜であってもよい。
【0071】
さらに前記図8Eの構造上にCuシード層(図示せず)を室温でのスパッタ法により、20nmの膜厚で全面に形成し、さらに前記Cuシード層上にCu層65を、電解めっき法により、前記配線溝61Tおよびビアホール61Vを充填するように、形成する。これにより、図8Fに示す構造が得られる。
【0072】
さらに前記図8Fの構造に対し、150℃の温度で熱処理を実施し、前記Cu層65中においてCu結晶に粒成長をさせた後、前記Cu層65をCMP法により、前記ハードマスク膜62が露出するまで研磨し、図8Gに示すように、前記配線溝61TをCu配線パターン65Tが充填し、また前記ビアホール61Vを前記Cu配線パターン65Tから延出するCuビアプラグ65Vが充填する構造を得る。前記ビアプラグ65Vはその下のCu配線パターン48と、前記拡散障壁膜64を介して電気的にコンタクトしている。
【0073】
さらに前記図8Gの構造上に、前記Cu配線パターン65Tを覆って例えばSiCよりなるキャップ膜66をプラズマCVD法によりCuの拡散防止膜として、例えば50nmの厚さで形成し、さらにその上に、膜厚が500nmのシリコン酸化膜67と膜厚が50nmのシリコン窒化膜68を、絶縁膜として形成し、図8Hに示す多層配線構造を得る。
【0074】
さらにその後、図示していないが、所定のパッド領域に対応して前記絶縁膜67,68をエッチングで除去し、前記パッド領域にアルミニウム膜を形成し、これをさらにパターニングすることで、パッド電極を形成する。
【0075】
前記膜66〜68の形成工程、および前記パッド電極の形成工程は、一般的なCu配線構造の形成工程の一部であるが、これらの工程を総合すると、ほぼ400℃の熱処理が45分間加えられていることになる。その結果、前記Cu配線パターン65Tの表面には、前記金属膜63から拡散したTi原子など金属原子の濃集領域65Dが、前記能粒領域49Dと同様に形成され、前記Cu配線パターン65Tとキャップ膜66との界面に沿ったCu原子の拡散を抑制する。また本実施形態でも、前記金属膜63は前記配線溝61Tの側壁面の肩部、すなわち上端部を含む、限られた深さDの範囲に限られているため、前記配線溝61Tを充填するCu配線パターン65Tの割合の減少はわずかで、配線抵抗の増大は最小限に止められる。
【0076】
例えば本実施形態においてこのように形成されたCu配線パターン65Tの配線抵抗を測定したところ、前記図8Dに示すTiの斜めスパッタを実施しなかった場合と比べて約1%高いことが確認された。しかし、前記第1の実施形態の実施例1と同じ条件で行ったエレクトロマイグレーション試験では、本発明のCu配線パターン65Tの配線寿命は、前記金属膜63の形成を行わなかったものの配線寿命より約4.5倍長いことが確認された。
【0077】
このように、本実施形態による多層配線構造は、配線抵抗の上昇をおぎなって余りある信頼性向上が得られることがわかった。
【0078】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
(付記1)
基板と、
前記基板上に形成され、側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜と、
前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分において、前記絶縁膜が露出するように覆う金属膜と、
前記凹部の側壁面と底面とを連続的に覆い、かつ前記側壁面のうち前記第1の部分においては、前記金属膜をも覆う第1の拡散障壁膜と、
前記凹部を前記第1の拡散障壁膜を介して充填する銅配線パターンと、
前記絶縁膜上において、前記銅配線パターンの表面を覆う絶縁性の第2の拡散障壁膜と、
前記銅配線パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に形成された金属元素の濃集領域と、
を備え、
前記金属元素の濃集領域は、前記金属層を構成する金属元素を、前記銅配線パターン中よりも高い濃度で含むことを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記金属元素は、チタン,マンガン,ジルコニウムおよびアルミニウムよりなる群から選ばれることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
(付記3)
前記金属膜は、前記側壁面のうち、前記上端部から前記底面方向に、260nm以内の範囲を覆うことを特徴とする付記2記載の半導体装置。
(付記4)
前記金属元素はチタンであることを特徴とする付記3記載の半導体装置。
(付記5)
前記第2の拡散障壁膜は、シリコンを含む炭化物膜または窒化物膜であることを特徴とする付記1〜付記4のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1の拡散障壁膜は、タンタルまたはマンガンを含む金属膜よりなることを特徴とする付記1〜付記5のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
(付記7)
前記第1の拡散障壁膜は、タンタルまたはチタンの窒化物膜であることを特徴とする付記1〜付記5のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
(付記8)
層間絶縁膜中に凹部を形成する工程と、
前記開口部の側壁面に金属膜を、前記金属膜が前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を覆い、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように堆積する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って第1の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に銅層を堆積し、前記開口部を、前記拡散防止膜を介して前記銅層により充填する工程と、
前記層間絶縁膜上の銅層を除去し、前記開口部中に、前記銅層により、銅パターンを形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記銅パターンの上面に接して、絶縁性の第2の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記銅層を加熱処理し、前記金属膜を構成する金属元素を、前記銅パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に濃集させる工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記金属膜は、前記側壁面のうち、前記上端部から前記底面方向に、260nm以内の範囲を覆うことを特徴とする付記8記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記金属元素はチタンであることを特徴とする付記9記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記熱処理は、350℃以上、400℃以下の温度で実行されることを特徴とする付記8〜付記10のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
(付記12)
前記金属膜を形成する工程は、前記金属膜を、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って形成する工程と、前記金属膜を、前記開口部の底面および前記第2の部分から除去する工程と、を含むことを特徴とする付記8〜付記11のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記金属膜を形成する工程はスパッタ法により実行され、前記スパッタ法は、前記金属膜が前記側壁面のうち前記第1の領域に堆積し、前記第2の部分および底面には、前記上端部の陰になって堆積しないように、前記層間絶縁膜の主面に対して斜め方向に実行されることを特徴とする付記8〜付記11のうち、いずれか項記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1A】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その1)である。
【図1B】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その2)である。
【図1C】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その3)である。
【図1D】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その4)である。
【図1E】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その5)である。
【図1F】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その6)である。
【図1G】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その7)である。
【図2】従来技術の課題を説明する図である。
【図3】第1の実施形態の原理を説明する図である。
【図4】第1の実施形態の原理を説明する別の図である。
【図5】第1の実施形態の原理を説明するさらに別の図である。
【図6】第1の実施形態の原理を説明するさらに別の図である。
【図7A】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その1)である。
【図7B】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その2)である。
【図7C】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その3)である。
【図7D】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その4)である。
【図7E】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その5)である。
【図7F】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その6)である。
【図7G】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その7)である。
【図7H】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その8)である。
【図8A】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その1)である。
【図8B】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その2)である。
【図8C】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その3)である。
【図8D】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その4)である。
【図8E】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その5)である。
【図8F】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その6)である。
【図8G】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その7)である。
【図8H】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その8)である。
【符号の説明】
【0080】
11,16,23,29,45,61 層間絶縁膜
11A,23T 凹部
12,24,46,62 ハードマスクパターン
12A 開口部
13,26,48,64 導電性拡散障壁膜
14,49,65 Cu層
15,28,49 絶縁性拡散障壁膜
20 半導体装置
21,41 基板
22,44,50,51,67,68 絶縁膜
25,47,63 金属膜
27D,49D 金属原子濃集領域
41A 素子領域
41a,41b LDD拡散領域
41c,41d ソース/ドレイン拡散領域
41I 素子分離領域
42 ゲート絶縁膜
43 ゲート電極
43W1,43W2 ゲート側壁絶縁膜
45A〜45C,61T 配線溝
49A〜49C,65T Cu配線パターン
61V ビアホール
65V Cuビアプラグ
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に半導体装置に係り、特に多層配線構造を有する半導体装置およびその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の半導体集積回路装置においては、共通基板上に莫大な数の半導体素子が形成されており、これらを相互接続するために、多層配線構造が使われている。
【0003】
多層配線構造では、配線層を構成する配線パターンを埋設した層間絶縁膜が積層される。
このような多層配線構造では、下層の配線層と上層の配線層とが、層間絶縁膜中に形成されたビアコンタクトにより接続される。
【0004】
特に最近の超微細化・超高速半導体装置では、多層配線構造中における信号遅延(RC遅延)の問題を軽減するため、層間絶縁膜として低誘電率膜(いわゆるlow−k膜)が使われる。これと共に、配線パターンとして、低抵抗の銅(Cu)パターンが使われている。
【0005】
このようにCu配線パターンを低誘電率層間絶縁膜中に埋設した多層配線構造においては、Cu層のドライエッチングによるパターニングが困難であるため、層間絶縁膜中に予め配線溝あるいはビアホールを形成するいわゆるダマシン法あるいはデュアルダマシン法が使われる。ダマシン法あるいはデュアルダマシン法では、このようにして形成された配線溝あるいはビアホールをCu層で充填し、その後、層間絶縁膜上の余剰なCu層を化学機械研磨(CMP)により除去する。
【0006】
その際、Cu配線パターンが層間絶縁膜に直接に接すると、Cu原子が層間絶縁膜中に拡散し、短絡などの問題を惹起するため、Cu配線パターンが形成される配線溝あるいはビアホールの側壁面および底面を、導電性拡散バリア、いわゆるバリアメタル膜により覆い、Cu層を、かかるバリアメタル膜上に堆積することが一般になされている。バリアメタル膜としては、一般的にタンタル(Ta)やチタン(Ti)、タングステン(W)などの高融点金属、あるいはこれら高融点金属の導電性窒化物が用いられる。
【特許文献1】特開2004−289008号公報
【特許文献2】特開2003−257979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1A〜図1Gは、典型的なダマシン法によるCu配線パターンの形成例を示す。
【0008】
図1Aを参照するに、図示を省略した基板上には層間絶縁膜11が形成されており、前記層間絶縁膜11上には、開口部12Aを有するハードマスクパターン12が形成され、図1Bに示す構造が得られる。
【0009】
次に前記層間絶縁膜11が前記ハードマスクパターン12をマスクにパターニングされ、前記層間絶縁膜11中には、前記開口部12Aに対応して、配線溝あるいはビアホールとなる凹部11Aが形成され、図1Cに示す構造が得られる。
【0010】
次に、前記図1Cの構造上に導電性拡散障壁膜13を、典型的にはスパッタにより、前記導電性拡散障壁膜13が前記ハードマスクパターン12、および前記凹部11Aの側壁面および底面を連続して覆うように形成し、図1Dに示す構造を得る。
【0011】
さらに前記図1Dの構造上にCu層14を、スパッタ法および電解メッキ法により、前記Cu層14が前記導電性拡散障壁膜13を、前記ハードマスクパターン12を覆う部分および前記凹部11Aの側壁面および底面を覆う部分を、前記凹部11Aを充填して覆うように形成し、図1Eの構造を得る。
【0012】
次に、前記図1Dの構造におけるCu層14を、その下の導電性拡散障壁膜13まで含め、前記ハードマスクパターン12が露出するまで、化学機械研磨(CMP)法により除去し、前記開口部12Aを、前記導電性拡散障壁膜13を介してCuパターン14Aにより充填した図1Fに示す構造を得る。
【0013】
さらに前記図1Fの構造上に、前記Cu配線パターン14Aおよびハードマスクパターン12を覆うように、絶縁性拡散障壁膜(キャップ膜)15を形成し、さらにその上に次の層間絶縁膜16を形成することにより、図1Gの構造を得る。
【0014】
このようにして得られたCu配線パターン14Aを含む配線構造ないし多層配線構造では、Cu配線パターン14AからのCu原子の層間絶縁膜11中への拡散が、導電性拡散障壁膜13およびキャップ膜15により阻止され、Cu原子が層間絶縁膜11あるいは16中に拡散することにより生じる配線の短絡やリーク電流の発生の問題が回避される。
【0015】
一方、このような構造では、前記キャップ層15はSiCやSiNなどの絶縁層であるため、金属であるCu配線パターン14Aとの界面に欠陥が生じることは避けられず、その結果、特に前記Cu配線パターン14Aに通電される場合、前記Cu配線パターン14A中のCu原子が、このような界面を伝って、例えば図2に示すようにCu配線パターンの外にまでエレクトロマイクグレーションやストレスマイグレーションにより拡散する恐れがある。このようなCu原子が、前記層間絶縁膜11中に形成された隣接する同様なCu配線パターンに到達すると、リーク電流が発生してしまう。
【0016】
また前記凹部11Aを形成する際にハードマスクパターン12を使わず、レジストパターンを使った場合には、前記ハードマスクパターン12は存在せず、前記Cu原子は前記界面から、直接に層間絶縁膜11中へと拡散してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一の側面によれば半導体装置は、基板と、前記基板上に形成され、側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜と、前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分において、前記絶縁膜が露出するように覆う金属膜と、前記凹部の側壁面と底面とを連続的に覆い、かつ前記側壁面のうち前記第1の部分においては、前記金属膜をも覆う第1の拡散障壁膜と、前記凹部を前記第1の拡散障壁膜を介して充填する銅配線パターンと、前記絶縁膜上において、前記銅配線パターンの表面を覆う絶縁性の第2の拡散障壁膜と、前記銅配線パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に形成された金属元素の濃集領域と、を備え、前記金属元素の濃集領域は、前記金属層を構成する金属元素を、前記銅配線パターン中よりも高い濃度で含むことを特徴とする。
【0018】
他の側面によれば半導体装置の製造方法は、層間絶縁膜中に凹部を形成する工程と、前記開口部の側壁面に金属膜を、前記金属膜が前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を覆い、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように堆積する工程と、前記層間絶縁膜上に、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って第1の拡散障壁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜上に銅層を堆積し、前記開口部を、前記拡散防止膜を介して前記銅層により充填する工程と、前記層間絶縁膜上の銅層を除去し、前記開口部中に、前記銅層により、銅パターンを形成する工程と、前記層間絶縁膜上に、前記銅パターンの上面に接して、絶縁性の第2の拡散障壁膜を形成する工程と、前記銅層を加熱処理し、前記金属膜を構成する金属元素を、前記銅パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に濃集させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
前記第1および第2の側面によれば、凹部を充填するCu配線パターンには、前記Cu配線パターンを覆う絶縁性の拡散障壁層との界面に沿って、前記開口部側壁面の上部に形成した金属膜から拡散した金属原子が濃集した濃集領域が形成される。このような金属原子は前記界面に存在する欠陥に安定に捕獲され、前記Cu配線パターン中のCu原子がかかる欠陥を伝って前記Cu配線パターンの外部に拡散するのを抑制する。その際、金属膜を、前記層間絶縁膜が前記凹部の底面および側壁面のうち、上端部を含む上部を除いて露出するように形成することにより、Cu配線パターンの抵抗の増加を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明者は本発明の基礎となる研究において、Cu配線中に分布する元素の詳細な分析を実施した。以下、この研究を説明する。
【0021】
図3は、前記研究において作製したCu配線パターンの試料20の構成を示す。
【0022】
図3を参照するに前記試料20は、100nmの膜厚の熱酸化膜よりなるシリコン酸化膜22を有するシリコン基板21上に形成されており、前記シリコン酸化膜22上には低誘電率膜(いわゆるlow−K膜)、より具体的には、SiOCよりなる層間絶縁膜23が、約500nmの膜厚で形成されている。前記層間絶縁膜23上には膜厚が例えば50nmの炭化シリコン(SiC)よりなるハードマスク層24が、例えばプラズマCVD法により形成されており、前記層間絶縁膜23中には凹部23が、前記ハードマスク層24をマスクにしたドライエッチングにより、3000nmの幅および800nmの深さで形成されている。
【0023】
さらに前記図3の試料20では、前記凹部23Tの側壁面および底面を連続的に覆ってチタン(Ti)よりなる金属膜25が、前記凹部23Tの断面形状に整合した断面形状および約20nmの膜厚で、形成されており、前記金属膜25上には、前記凹部23Tの側壁面および底面を連続的に覆って、さらにタンタル(Ta)または窒化タンタル(TaN)よりなる第1の拡散障壁膜26が、前記金属膜25の断面形状に整合した形状および約10nmの膜厚で形成されている。前記金属膜25および拡散障壁膜26は、スパッタ法により形成している。
【0024】
前記凹部23Tは、前記第1の拡散障壁層26を介してCuパターン27により充填されており、前記Cuパターン27の上面は、前記ハードマスク層24を覆って例えば50nmの膜厚に形成された、SiCよりなる絶縁性の第2の拡散障壁膜28により覆われている。前記Cuパターン27は、スパッタ法によりCuシード層を形成し、さらに電解メッキ法によりその上にCu層を形成した後、前記Cu層を前記ハードマスク層24が露出するまでCMP法により除去する周知の方法により形成している。
【0025】
前記第2の拡散障壁膜28はプラズマCVD法により、350℃以上400℃以下の温度で形成され、さらに前記第2の拡散障壁膜28上には次の層間絶縁膜29が、プラズマCVD法あるいは塗布法により形成されている。なお、前記拡散障壁層28の形成の際、また前記層間絶縁膜29の形成をプラズマCVD法で行った場合にも、前記Cuパターン27は350℃〜400℃の温度範囲で熱処理を受ける。図3の試料20の場合、前記第2の拡散障壁膜28の形成後、前記Cu配線パターン27は400℃の温度で60分の熱処理を受けている。
【0026】
本発明の発明者は、前記図3の構造に対し、前記Cuパターン27中におけるTiの分布を、前記図3の構造中、図4において破線Rで囲んだ断面について、高精度オージェ分析装置を用いて分析した。ただし図4中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付している。
【0027】
図4に示すように、前記断面は前記Cu配線パターン27を斜めに切断したもので、前記Cu配線パターン27の一部、前記第1の拡散障壁膜26の一部、前記金属膜25の一部、さらに第2の拡散障壁膜28の一部を含んでいる。前記Cu配線パターン27の下部は含まれていない。
【0028】
図5は、前記高精度オージェ分析装置により得た測定結果を示す。図5中、個々の点はTi原子の検出を表している。また図5中、線A1−A2,A3,A4は、図4に示した補助線に対応している。
【0029】
図5の結果を見ると、もともと前記Cu配線パターン27の上端部、すなわち前記Cu配線パターン27と前記第2の拡散障壁膜28膜との界面にはTiは導入していなかったにもかかわらず、前記補助線A1−A2に沿った領域においてTi原子が濃集し、高濃度に析出していることがわかる。
【0030】
一方、図5中、補助線A3,A4に沿ったTi原子の濃集は、前記金属層25に対応しているが、この部分を詳細に見ると、前記Ti原子の濃集が、破線で囲んだ部分では非常に顕著であるのに対し、前記Cu配線パターン27と第2の拡散障壁層28との界面に近い、深さが約260nmまでの領域Dでは減少していることがわかる。これらのことから、前記補助線A1−A2に沿ったTi原子の濃集は、もともと前記金属膜25に含まれていたTi原子が、前記Cu配線パターン27上端の角部を経由して、前記Cu配線パターン27と第2の拡散障壁膜28との界面に沿って、図6に概略的に示すように拡散したものと考えられる。ただし図6中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0031】
なお図5中、破線で囲んだ領域のうち、色が薄い部分は、色の濃い部分に対し、より高濃度でTi原子が存在していることを示している。これらの部分では、Ti原子の濃度が、熱処理の前から大きくは変わっておらず、前記金属膜25は、熱処理前の状態に近い状態で残留していることを示している。一方、前記深さ260nmまでの領域Dでは、前記金属膜25は前記補助線A1−A2に沿って濃集したTi原子の源となっており、これに伴い、前記図6に概略的に示すように、膜厚を減少させているものと考えられる。
【0032】
ところで、これまでのエレクトロマイグレーションの研究から、Cu配線パターン中におけるCu原子の拡散では、主として前記Cu配線パターンと、SiNやSiCN、SiCなどよりなり、前記第2の拡散障壁膜28に対応する、いわゆるキャップ膜との界面での拡散が支配的であると考えられている。以下では、前記第2の拡散障壁膜28をキャップ膜と記すことにする。前記界面では絶縁膜と金属膜が接するため、欠陥ないし空孔が多く存在し、配線構造中でも密着性が最も弱い。一方、それ以外の界面、すなわちCu配線パターンの側面や底面では、前記Cu配線パターンが、前記第1の拡散障壁膜26など、金属元素を含むいわゆるバリアメタルと接するため、空孔は少なく、界面の密着力は比較的強い。そのため、エレクトロマイグレーションによりCu原子が輸送される場合には、Cu原子の輸送は、Cu配線パターンとキャップ膜との界面の、界面密着性の最も悪い拡散パスに沿って進行しやすい。またそのため、かかる界面では、エレクトロマイグレーションの結果、空孔が集合し、ボイドが形成される確率も極めて高い。
【0033】
これに対し、図5のように、Cu配線パターン27とキャップ層28との界面にTi原子を析出させた構造ではCu原子が前記Ti原子によりピニングされ、かかる界面を伝って生じるCu原子の拡散を抑制することが可能である。例えば特許文献2を参照。
【0034】
一方、図5のTi原子の分布からわかるように、Ti原子は前記キャップ膜28とCu配線パターン27との界面に濃集しており、前記Cu配線パターン27の内部ではほとんど検出されていていない。前記Cu配線パターン27内部におけるTi原子の濃度は、ノイズレベル以下である。このため、前記図3〜図5の配線構造において、前記金属膜25からのTi原子の拡散が、前記Cu配線パターン27の抵抗を上昇させることはない。
【0035】
図5の測定結果は、前記図3の試料20について、その上にさらに多層配線構造を形成し、すべての製造工程を終了した後、図4に示すようにカットしたものについての結果であり、このため、前記Cu配線パターン27には、さまざまな熱処理が、トータルで400℃、1時間の熱処理に対応する熱量が加えられている。
【0036】
さらに、このような実験を、前記金属膜25をTi膜からマンガン(Mn)膜、ジルコニウム(Zr)膜、アルミニウム(Al)膜に変更し、またそれぞれについて、前記第1の拡散障壁膜26を前記Ta膜からMn膜、さらに窒化Ta(TaN)膜および窒化Ti(TiN)膜に変更して繰り返し行ったところ、添加元素に多少は依存するものの、300℃〜500℃温度範囲で、1分間〜1時間程度の熱処理を行えば、同じような現象が発現し、深さが約260nmよりも浅い領域Dにおいて、金属層25中の金属原子の濃度が減少することが確認されている。なお、前記金属膜25がMn膜であり拡散障壁膜26もMn膜である場合には、拡散障壁膜26の上端部も前記金属元素の源として作用するが、膜25,26を合わせた膜厚が増大しているため、このようにMn原子が拡散をしても、拡散障壁膜26の機能が損なわれることはない。
【0037】
このように、図6の配線構造20では、前記Cu配線パターン27とその表面を覆うキャップ膜28との界面の領域27DにTi原子などの金属原子の濃集が生じるため、前記界面に沿ったCu原子の拡散が抑制され、配線構造20は優れたエレクトロマイグレーション耐性およびストレスマイグレーション耐性を示す。
【0038】
一方、図3あるいは図6の配線構造20では、Tiなどの金属原子の源となる金属膜25が、前記凹部23Tの側壁面および底面を連続的に覆って形成されていたが、前記金属膜25のうち、実際に金属原子の源となる部分は、先にも説明したように、深さが260nm以内の領域Dに限られる。それ以外の部分、すなわち前記凹部23Tの側壁面のうち、前記領域Dより下側の部分および前記凹部23Tの底面を覆う部分においては、前記金属膜25は配線パターン27の抵抗を増大するのに寄与するだけである。
【0039】
図7A〜図7Hは、上記の知見を多層配線構造の形成に適用し、その際、不要な部分への金属膜の形成を抑制し、配線抵抗を低減させた第1の実施形態による多層配線構造を有するは半導体装置40の製造方法を示す。
【0040】
図7Aを参照するに、前記半導体装置40はシリコン基板41上に形成されており、前記シリコン基板41上には素子分離構造41Iにより、素子領域40Aが画成されている。
【0041】
前記素子領域40A中には、前記シリコン基板41上にシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜、さらにはシリコン酸窒化膜などよるなるゲート絶縁膜42を介してポリシリコンゲート電極43が形成されており、前記シリコン基板41中には、前記素子領域40のうち、前記ゲート電極43の第1の側および第2の側に、それぞれn型あるいはp型のLDD領域41a,41bが、それぞれ形成されている。
【0042】
前記ゲート電極43の前記第1および第2の側の側壁面には、それぞれの側壁絶縁膜43W1,43W2が形成され、前記シリコン基板41中、前記素子領域40のうち、前記側壁絶縁膜43W1の前記第1の側にはp型あるいはn型のソース拡散領域41cが、また前記側壁絶縁膜43W2の前記第2の側には、p型あるいはn型のドレイン拡散領域41dが形成されている。
【0043】
さらに前記シリコン基板41は、前記ゲート電極43を前記側壁絶縁膜43W1,43W2も含めて覆うシリコン酸化膜44を、下地絶縁膜として形成されている。
【0044】
さらに前記下地絶縁膜44上には、CVD法あるいはSOD(Spin On Deposition)法などにより、いわゆるLow−K膜45を、層間絶縁膜として形成する。図示の例では前記層間絶縁膜45としてSiOC膜を、CVD法により、250nmの膜厚に形成している。さらに前記SiOC膜45上にハードマスク膜として、SiC膜46をプラズマCVD法により例えば50nmの膜厚に形成し、図7Aの構造を得る。
【0045】
次に前記図7Aの構造において、前記層間絶縁膜45のうち、形成したい配線パターンに対応する部分に、配線溝45A,45B,45Cを、前記ハードマスク層45をマスクとしたドライエッチングにより形成し、図7Bの構造を得る。図7Bの例では、前記配線パターンには、領域Aに形成される、配線幅がほぼ最小の0.1μmのものと、領域Bに形成される、配線幅がより太いものとが含まれている。
【0046】
次に、前記図7Bの構造に対し、前記金属膜25に対応する金属膜47を室温のスパッタ法で成膜し、図7Cの構造を得る。図7Cの例では、ここでは前記金属膜47として、フィールド膜厚相当で5nmの膜厚のTi膜を用いている。先にも説明したように、前記金属膜47としては、他にMn膜、Zr膜、Al膜などを使うことができる。
【0047】
さらに前記図7Cの構造に対し、斜め方向に、例えば前記層間絶縁膜45の主面に対して5〜75°の角度θだけ傾け、基板41を回転させながらリスパッタを行い、配線幅によらず、配線溝45A〜配線溝45Cの底面および側壁面のうち底面に近い部分に堆積された金属膜47を削り、陰になる前記配線溝45A〜配線溝45Cの肩部、すなわち配線溝の上端部を含む、好ましくは深さが260nmまでの領域Dにのみ、前記金属膜47を残す。本実施形態では前記リスパッタは、ターゲットバイアスを510W、基板バイアスを380W、高周波コイル電力を1190Wとする条件で、前記行うことができる。ただしその場合、リスパッタ条件は上記のものに限るものではなく、バリアメタルの種類や厚さ、層間膜の種類等に応じて微調整することが必要である。
【0048】
次に、前記図7Dの構造上に、Ti原子の拡散を防止するバリアメタル膜48を、前記第1の拡散障壁膜26に対応して、室温のスパッタ法で成膜し、図7Eの構造を得る。図7Eの例では、前記バリアメタル膜48として、図3あるいは図6の配線構造20と同様に、Ta膜を、フィールド膜厚で5nm相当の膜厚に形成している。
【0049】
次に、前記図7Eの構造の全面に、シード層となるCu膜(図示せず)を、室温のスパッタ法で20nmの厚さで形成する。その後、電解めっき法によりCu層49を、前記Cu層49が前記配線溝45A〜配線溝45Cを充填するように形成し、図7Fの構造を得る。その後、前記基板41およびその上の構造を150℃の温度で熱処理し、前記Cu膜49中の結晶粒を成長させる。
【0050】
さらに、前記Cu層49を、CMP法により、前記ハードマスク層46が露出するまで研磨し、図7Gの構造を得る。図7Gの構造では、前記Cu層49から、前記配線溝45A〜配線溝45Cを充填するCu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cが形成されている。
【0051】
さらに、前記図7Gの構造上に、前記第2の拡散障壁膜28に対応するキャップ膜49としてSiC膜をプラズマCVD法により、前記Cu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cの上面を覆うように50nmの厚さで形成し、さらにその上に膜厚が500nmのシリコン酸化膜50と膜厚が50nmのSiN膜51を、350℃〜400℃の温度で実行されるプラズマCVD法などによって形成し、図7Hの構造を得る。
【0052】
さらに、このようにして得られた図7Hの構造において、図示はしていないが、配線端部のパッド領域において前記シリコン酸化膜50をエッチングで除去し、アルミニウム(Al)膜を成膜し、さらにパターニングすることで、Cu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cの抵抗測定用の端子電極を形成した。このアルミニウム膜の成膜工程は、Cu配線構造の一般的な製造工程の一部であり、この工程において、前記Cu配線パターン49A〜Cu配線パターン49Cには、約400℃での熱処理が約30分間加えられる。
【0053】
このような前記絶縁膜45あるいは46の形成工程、あるいは前記端子電極の形成工程に伴う熱処理の結果、図7Hに示すように前記Cu配線パターン49A〜49Cの各々において、その上のキャップ層49との界面に沿って、前記金属膜47からのTi原子などの金属原子の拡散の結果、前記領域Dに対応して、前記Ti原子などの金属原子の濃集領域49Dが形成される。またこれに伴って、前記金属膜47の膜厚は減少する。しかし金属膜47が消失することはない。
【実施例1】
【0054】
このように濃集領域49Dが形成された配線幅が0.1μmのCu配線パターンにつついて配線抵抗を調べたところ、以下の表1に示す結果を得た。ただし表1中、「実施例1」として示しているのは、上記図7A〜図7Hで説明したプロセスにより形成されたCu配線パターンについての抵抗値であり、一方「比較例1」として示しているのは、前記図7Cで説明したTi膜47の成膜工程および前記図7Dで説明したリスパッタ工程を省略した場合の、同じく配線幅が0.1μmのCu配線パターンの抵抗値、さらに「比較例2」として示しているのは、図7Dで説明したリスパッタ工程を省略した場合の、配線幅が0.1μmのCu配線パターンの抵抗値を示している。表1中、「実施例1」、「比較例1」、「比較例2」の抵抗値は、「実施例1」の抵抗値に対して規格化して示してある。
【0055】
【表1】
表1を参照するに、配線幅0.1μmのCu配線パターンで比較した場合、従来例1の配線抵抗は実施例1の配線抵抗の98%であり、わずかながらTi膜47が形成されているため、配線溝中におけるCu配線パターンの割合がわずかながら減少し、抵抗値がわずかながら上昇していることを示している。
【0056】
これに対し従来例2では、配線抵抗は実施例1の110%まで増大しているが、これは前記Ti膜47が配線溝45A〜配線溝45Cの側壁面および底面の全体を連続して覆っており、配線溝中におけるCu配線パターンの割合が、実施例1の場合よりも減少している効果を反映している。
【0057】
次に、このように形成された配線幅が0.1μmのCu配線パターンについて、信頼性試験を行って配線寿命を評価したところ、以下の表2に示す結果を得た。ただし、信頼性試験は300℃の温度で、電流加速条件を3MA/cm2に設定して実施している。またその際、配線長さは1000μmとしているが、これは、いわゆるBlech長よりもはるかに長い。このため、この信頼性試験においては配線長さの効果は影響していないと考えられる。表2中、「実施例1」、「比較例1」、「比較例2」は、表1のものと同じである。また表2中、「実施例1」および「比較例2」の配線寿命は、「実施例1」の配線寿命に対して規格化して示してある。
【0058】
【表2】
表2に示すように、実施例1のCu配線パターンでは配線寿命が、従来例1のCu配線パターンの配線寿命より約5倍長いことが示された。また従来例2のCu配線パターンでは配線寿命は、実施例1とほぼ同等であることが示された。
【0059】
上記表1および表2の結果を勘案すると、配線抵抗と信頼性の両面を鑑みて、実施例1のCu配線パターンが有利であることが結論される。
【0060】
[第2の実施形態]
図8A〜図8Hは、デュアルダマシン法による多層配線構造の形成を含む第2の実施形態による半導体装置の製造方法を示す。ただし図中、先に説明した部分には対応する参照符号を付し、説明を省略する。
【0061】
図8Aを参照するに、まず図7A〜図7Gで説明した前記第1の実施形態と同じ方法で、下層配線まで製造する。
【0062】
次に、先に図7Hで説明したように、キャップ膜としてSiC膜51を、プラズマCVD法により、前記Cu配線パターン49A〜49Cの表面を覆うように、例えば50nmの厚さで形成し、その後、プラズマCVD法により、SiOC膜よりなるlow−K膜を、層間絶縁膜61として約550nmの膜厚に形成する。さらに前記層間絶縁膜61上に、厚さが50nmのSiC膜62を、ハードマスク層として形成し、図8Bに示す構造を得る。
【0063】
次に、前記ハードマスク層62をパターニングしてビアホールに対応する開口部を形成し、前記ハードマスク層62をマスクに前記層間絶縁膜61を前記キャップ層49が露出するまで、ドライエッチングによりエッチングし、前記層間絶縁膜61中に、図8Cに示すビアホール61Vを形成する。
【0064】
さらに前記ハードマスク層62をパターニングして、前記層間絶縁膜61中に形成される配線溝に対応した開口部を形成し、前記ハードマスク層62をマスクに前記層間絶縁膜をドライエッチングによりエッチングし、前記層間絶縁膜61中に、図8Cに示す配線溝61Tを形成する。前記配線溝61Tのドライエッチングは、エッチング時間を制御することにより、所望の深さに到達したところで打ち切られ、その結果、図8Cに示す構造が得られる。
【0065】
次に前記図8Cの構造上に、Ti膜63を、基板41を、前記基板に垂直な軸の回りで回転させながら角度θの斜めスパッタを行うことにより、フィールド領域における厚さが1nm〜10nmとなるように形成する。このような斜めスパッタでは、配線溝61Tの底面およびこれに続く側壁面の下部、さらにビアホール61Vの側壁面および底面における金属膜63の堆積はほとんど生じない。
【0066】
斜めスパッタを行う際の角度θは、前記金属膜62が前記配線溝61Tの肩部、すなわち側壁面の上端部から260nmまでの深さDのみを覆うように最適化するのが好ましい。実際には半導体装置の多層配線構造中には、異なった幅の配線溝が多数形成されているが、前記金属膜62は、先にも図6で説明したようにTiなどの金属原子の源となるものであり、各配線溝において肩部にわずかに存在しておれば十分なので、前記角度θは、多層配線構造中の最も幅の広い配線溝において、前記金属膜63が配線溝側壁面の上端部から260nmまでの深さを覆うように最適化するのが好ましい。この場合、より幅の狭い配線溝においては、前記金属膜63は前記側壁膜の上端部から測って、260nmよりも浅い領域を覆うことになる。例えば前記配線溝61Tの幅が100nmである場合、前記角度θは69°に設定し、また前記配線溝61Tの幅が1000nmである場合には、前記角度θは14°に設定するのが好ましい。上記金属膜62のスパッタは室温で実行することができる。
【0067】
なお、配線レイアウトによっては、トレンチの底部に近い側面や底部にも堆積するのが回避できない場合も考えられるが、そのような場合には、先に図7Dで説明したのと同様に、リスパッタを行ってこれらの余計な膜を取り除くことが有効である。
【0068】
先にも述べたように、前記金属膜63はTi膜に限定されるものではなく、Mn膜、Zr膜、Al膜などを使うことも可能である。
【0069】
その後は、先の実施形態と全く同じ工程を行う。
【0070】
すなわち、前記金属膜63上に前記配線溝61Tおよびビアホール61Vの側壁面と底面を連続して覆うように、拡散障壁膜64としてTa膜を室温でのスパッタ法により、例えば10nmの膜厚で形成し、図8Eの構造を得る。なお前記拡散障壁膜64はTa膜に限定されるものではなく、例えばMn膜などの他の金属膜や、TaN膜やTiN膜など、高融点金属の導電性窒化物膜であってもよい。
【0071】
さらに前記図8Eの構造上にCuシード層(図示せず)を室温でのスパッタ法により、20nmの膜厚で全面に形成し、さらに前記Cuシード層上にCu層65を、電解めっき法により、前記配線溝61Tおよびビアホール61Vを充填するように、形成する。これにより、図8Fに示す構造が得られる。
【0072】
さらに前記図8Fの構造に対し、150℃の温度で熱処理を実施し、前記Cu層65中においてCu結晶に粒成長をさせた後、前記Cu層65をCMP法により、前記ハードマスク膜62が露出するまで研磨し、図8Gに示すように、前記配線溝61TをCu配線パターン65Tが充填し、また前記ビアホール61Vを前記Cu配線パターン65Tから延出するCuビアプラグ65Vが充填する構造を得る。前記ビアプラグ65Vはその下のCu配線パターン48と、前記拡散障壁膜64を介して電気的にコンタクトしている。
【0073】
さらに前記図8Gの構造上に、前記Cu配線パターン65Tを覆って例えばSiCよりなるキャップ膜66をプラズマCVD法によりCuの拡散防止膜として、例えば50nmの厚さで形成し、さらにその上に、膜厚が500nmのシリコン酸化膜67と膜厚が50nmのシリコン窒化膜68を、絶縁膜として形成し、図8Hに示す多層配線構造を得る。
【0074】
さらにその後、図示していないが、所定のパッド領域に対応して前記絶縁膜67,68をエッチングで除去し、前記パッド領域にアルミニウム膜を形成し、これをさらにパターニングすることで、パッド電極を形成する。
【0075】
前記膜66〜68の形成工程、および前記パッド電極の形成工程は、一般的なCu配線構造の形成工程の一部であるが、これらの工程を総合すると、ほぼ400℃の熱処理が45分間加えられていることになる。その結果、前記Cu配線パターン65Tの表面には、前記金属膜63から拡散したTi原子など金属原子の濃集領域65Dが、前記能粒領域49Dと同様に形成され、前記Cu配線パターン65Tとキャップ膜66との界面に沿ったCu原子の拡散を抑制する。また本実施形態でも、前記金属膜63は前記配線溝61Tの側壁面の肩部、すなわち上端部を含む、限られた深さDの範囲に限られているため、前記配線溝61Tを充填するCu配線パターン65Tの割合の減少はわずかで、配線抵抗の増大は最小限に止められる。
【0076】
例えば本実施形態においてこのように形成されたCu配線パターン65Tの配線抵抗を測定したところ、前記図8Dに示すTiの斜めスパッタを実施しなかった場合と比べて約1%高いことが確認された。しかし、前記第1の実施形態の実施例1と同じ条件で行ったエレクトロマイグレーション試験では、本発明のCu配線パターン65Tの配線寿命は、前記金属膜63の形成を行わなかったものの配線寿命より約4.5倍長いことが確認された。
【0077】
このように、本実施形態による多層配線構造は、配線抵抗の上昇をおぎなって余りある信頼性向上が得られることがわかった。
【0078】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
(付記1)
基板と、
前記基板上に形成され、側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜と、
前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分において、前記絶縁膜が露出するように覆う金属膜と、
前記凹部の側壁面と底面とを連続的に覆い、かつ前記側壁面のうち前記第1の部分においては、前記金属膜をも覆う第1の拡散障壁膜と、
前記凹部を前記第1の拡散障壁膜を介して充填する銅配線パターンと、
前記絶縁膜上において、前記銅配線パターンの表面を覆う絶縁性の第2の拡散障壁膜と、
前記銅配線パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に形成された金属元素の濃集領域と、
を備え、
前記金属元素の濃集領域は、前記金属層を構成する金属元素を、前記銅配線パターン中よりも高い濃度で含むことを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記金属元素は、チタン,マンガン,ジルコニウムおよびアルミニウムよりなる群から選ばれることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
(付記3)
前記金属膜は、前記側壁面のうち、前記上端部から前記底面方向に、260nm以内の範囲を覆うことを特徴とする付記2記載の半導体装置。
(付記4)
前記金属元素はチタンであることを特徴とする付記3記載の半導体装置。
(付記5)
前記第2の拡散障壁膜は、シリコンを含む炭化物膜または窒化物膜であることを特徴とする付記1〜付記4のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1の拡散障壁膜は、タンタルまたはマンガンを含む金属膜よりなることを特徴とする付記1〜付記5のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
(付記7)
前記第1の拡散障壁膜は、タンタルまたはチタンの窒化物膜であることを特徴とする付記1〜付記5のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
(付記8)
層間絶縁膜中に凹部を形成する工程と、
前記開口部の側壁面に金属膜を、前記金属膜が前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を覆い、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように堆積する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って第1の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に銅層を堆積し、前記開口部を、前記拡散防止膜を介して前記銅層により充填する工程と、
前記層間絶縁膜上の銅層を除去し、前記開口部中に、前記銅層により、銅パターンを形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記銅パターンの上面に接して、絶縁性の第2の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記銅層を加熱処理し、前記金属膜を構成する金属元素を、前記銅パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に濃集させる工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記金属膜は、前記側壁面のうち、前記上端部から前記底面方向に、260nm以内の範囲を覆うことを特徴とする付記8記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記金属元素はチタンであることを特徴とする付記9記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記熱処理は、350℃以上、400℃以下の温度で実行されることを特徴とする付記8〜付記10のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
(付記12)
前記金属膜を形成する工程は、前記金属膜を、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って形成する工程と、前記金属膜を、前記開口部の底面および前記第2の部分から除去する工程と、を含むことを特徴とする付記8〜付記11のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記金属膜を形成する工程はスパッタ法により実行され、前記スパッタ法は、前記金属膜が前記側壁面のうち前記第1の領域に堆積し、前記第2の部分および底面には、前記上端部の陰になって堆積しないように、前記層間絶縁膜の主面に対して斜め方向に実行されることを特徴とする付記8〜付記11のうち、いずれか項記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1A】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その1)である。
【図1B】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その2)である。
【図1C】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その3)である。
【図1D】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その4)である。
【図1E】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その5)である。
【図1F】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その6)である。
【図1G】従来のダマシン法によるCu配線パターンの形成方法(その7)である。
【図2】従来技術の課題を説明する図である。
【図3】第1の実施形態の原理を説明する図である。
【図4】第1の実施形態の原理を説明する別の図である。
【図5】第1の実施形態の原理を説明するさらに別の図である。
【図6】第1の実施形態の原理を説明するさらに別の図である。
【図7A】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その1)である。
【図7B】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その2)である。
【図7C】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その3)である。
【図7D】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その4)である。
【図7E】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その5)である。
【図7F】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その6)である。
【図7G】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その7)である。
【図7H】第1の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その8)である。
【図8A】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その1)である。
【図8B】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その2)である。
【図8C】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その3)である。
【図8D】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その4)である。
【図8E】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その5)である。
【図8F】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その6)である。
【図8G】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その7)である。
【図8H】第2の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する図(その8)である。
【符号の説明】
【0080】
11,16,23,29,45,61 層間絶縁膜
11A,23T 凹部
12,24,46,62 ハードマスクパターン
12A 開口部
13,26,48,64 導電性拡散障壁膜
14,49,65 Cu層
15,28,49 絶縁性拡散障壁膜
20 半導体装置
21,41 基板
22,44,50,51,67,68 絶縁膜
25,47,63 金属膜
27D,49D 金属原子濃集領域
41A 素子領域
41a,41b LDD拡散領域
41c,41d ソース/ドレイン拡散領域
41I 素子分離領域
42 ゲート絶縁膜
43 ゲート電極
43W1,43W2 ゲート側壁絶縁膜
45A〜45C,61T 配線溝
49A〜49C,65T Cu配線パターン
61V ビアホール
65V Cuビアプラグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜と、
前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分において、前記絶縁膜が露出するように覆う金属膜と、
前記凹部の側壁面と底面とを連続的に覆い、かつ前記側壁面のうち前記第1の部分においては、前記金属膜をも覆う第1の拡散障壁膜と、
前記凹部を前記第1の拡散障壁膜を介して充填する銅配線パターンと、
前記絶縁膜上において、前記銅配線パターンの表面を覆う絶縁性の第2の拡散障壁膜と、
前記銅配線パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に形成された金属元素の濃集領域と、
を備え、
前記金属元素の濃集領域は、前記金属層を構成する金属元素を、前記銅配線パターン中よりも高い濃度で含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属元素は、チタン,マンガン,ジルコニウムおよびアルミニウムよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属膜は、前記側壁面のうち、前記上端部から前記底面方向に、260nm以内の範囲を覆うことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属元素はチタンであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
層間絶縁膜中に凹部を形成する工程と、
前記開口部の側壁面に金属膜を、前記金属膜が前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を覆い、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように堆積する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って第1の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に銅層を堆積し、前記開口部を、前記拡散防止膜を介して前記銅層により充填する工程と、
前記層間絶縁膜上の銅層を除去し、前記開口部中に、前記銅層により、銅パターンを形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記銅パターンの上面に接して、絶縁性の第2の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記銅層を加熱処理し、前記金属膜を構成する金属元素を、前記銅パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に濃集させる工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、側壁面と底面とにより画成された凹部を有する絶縁膜と、
前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分において、前記絶縁膜が露出するように覆う金属膜と、
前記凹部の側壁面と底面とを連続的に覆い、かつ前記側壁面のうち前記第1の部分においては、前記金属膜をも覆う第1の拡散障壁膜と、
前記凹部を前記第1の拡散障壁膜を介して充填する銅配線パターンと、
前記絶縁膜上において、前記銅配線パターンの表面を覆う絶縁性の第2の拡散障壁膜と、
前記銅配線パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に形成された金属元素の濃集領域と、
を備え、
前記金属元素の濃集領域は、前記金属層を構成する金属元素を、前記銅配線パターン中よりも高い濃度で含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属元素は、チタン,マンガン,ジルコニウムおよびアルミニウムよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属膜は、前記側壁面のうち、前記上端部から前記底面方向に、260nm以内の範囲を覆うことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属元素はチタンであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
層間絶縁膜中に凹部を形成する工程と、
前記開口部の側壁面に金属膜を、前記金属膜が前記側壁面のうち、前記側壁面の上端部を含む上側の第1の部分を覆い、前記凹部の底面、および前記凹部の側壁面のうち、前記第1の部分よりも下側の第2の部分においては前記絶縁膜が露出するように堆積する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記開口部の側壁面および底面を連続的に覆って第1の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に銅層を堆積し、前記開口部を、前記拡散防止膜を介して前記銅層により充填する工程と、
前記層間絶縁膜上の銅層を除去し、前記開口部中に、前記銅層により、銅パターンを形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記銅パターンの上面に接して、絶縁性の第2の拡散障壁膜を形成する工程と、
前記銅層を加熱処理し、前記金属膜を構成する金属元素を、前記銅パターンと前記第2の拡散障壁膜との界面に濃集させる工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図5】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図5】
【公開番号】特開2010−87114(P2010−87114A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252886(P2008−252886)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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