説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】無機材料を用いてコストの低減を図りながら、応力集中によるクラックを回避しつつ、銅配線を覆うことができるパッシベーション膜を有する半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、層間絶縁膜25と、層間絶縁膜25上に突出して形成され、銅を主成分とする材料からなる配線27と、配線27を覆うように形成されたパッシベーション膜30とを含む。パッシベーション膜30は、配線27側から順に第1窒化膜31、中間膜33および第2窒化膜32を積層した積層膜からなる。中間膜33は、第1および第2窒化膜31,32とは異なる絶縁材料(たとえば酸化物)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、銅を主成分とする材料からなる配線を層間絶縁膜上に有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線材料には、従来からアルミニウムが用いられてきたが、配線抵抗を低減するために、より導電性の高い配線材料である銅を用いることが提案されている。たとえば、非特許文献1には、最上層配線に銅配線を用いた構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−319946号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Efland他、「LeadFrameOnChip offers Integrated Power Bus and Bond over Active Circuit」Proceedings of 2001 International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs, Osaka、p65−68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーデバイスの最上層配線を銅配線で構成する場合、電気抵抗を充分に低くするために、5〜20μmの厚膜銅配線を適用することが好ましい。銅は空気中で容易に酸化するから、銅配線を絶縁材料からなるパッシベーション膜で覆う必要がある。このようなパッシベーション膜には、外部接続のために、銅配線の一部を露出させるためのパッド開口が形成されることになる。銅配線表面のパッド開口からの露出部は、パッドと呼ばれる。パッドの表面が酸化されるとワイヤボンディングができなくなるから、バッドの表面には、アルニミウムその他の金属からなるキャップ層が成膜される。
【0006】
銅配線を覆うパッシベーション膜には、ポリイミドその他の樹脂材料をコーティングして形成される有機膜を適用するのが好ましいと考えられる。これは、厚膜の銅配線とその周囲との大きな段差を埋めるためである。しかし、有機膜の形成に要するコストが高くつくのが難点である。そこで、無機膜を用いることが考えられる。無機膜の典型例である酸化シリコン膜は、銅配線に接する膜として用いることができない。銅は酸化シリコン中に容易に拡散するからである。無機膜の他の例である窒化シリコン膜は、銅の拡散を防ぐことができるので、銅配線に接する膜として用いることができる。
【0007】
本願発明者は、図6に示すように、厚膜銅配線1を覆うように窒化シリコン膜2を形成する実験を行った。作製した構造を顕微鏡観察したところ、厚膜銅配線1と最上層の層間絶縁膜3とが接する下角部4付近で、窒化シリコン膜2にクラックが発生しやすいという問題があることが分かった。これは、下角部4付近において窒化シリコン膜2に応力が集中することに起因すると考えられる。窒化シリコン膜2の膜厚を小さくすれば応力集中の問題は緩和されるが、水分の進入を防ぐためには、1μm程度以上の膜厚を確保する必要がある。
【0008】
したがって、無機材料を用いてコストの低減を図りながら、応力集中によるクラック発生の問題を回避しつつ、銅配線(とくに厚膜銅配線)を覆うことができるパッシベーション膜の実現が困難であった。
この発明の目的は、上記課題を克服した半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の半導体装置は、層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に突出して形成され、銅を主成分とする材料からなる配線と、前記配線を覆うように形成されたパッシベーション膜とを含む。前記パッシベーション膜は、前記配線側から順に第1窒化膜、中間膜および第2窒化膜を積層した積層膜からなる。前記中間膜は、前記第1および第2窒化膜とは異なる絶縁材料からなる(請求項1)。
【0010】
この構成によれば、パッシベーション膜は、第1および第2窒化膜で中間膜を挟んだ積層膜からなる。第1窒化膜が銅を主成分とする配線(以下「銅配線」という。)側に配置されているので、銅の拡散は第1窒化膜によって阻止できる。中間膜は、第1窒化膜の応力を緩和し、さらに、パッシベーション膜の厚膜化に寄与する。さらに、第2窒化膜が中間膜に積層されているから、水分その他の異物の進入を効果的に防ぐことができる。したがって、中間膜によって第1窒化膜の応力を緩和してそのクラックを抑制しながら、充分な膜厚を有するパッシベーション膜によって銅配線を保護することができる。パッシベーション膜は無機材料からなっているので、低コストで形成できる。
【0011】
第1窒化膜を薄く形成しても、積層膜からなるパッシベーション膜は全体として充分な膜厚を有することができる。したがって、第1窒化膜を薄く形成しておくことによって、第1窒化膜の応力を一層小さくすることができるから、第1窒化膜にクラックが生じることをより一層抑制することができる。
前記銅配線は厚みが10μm以上(たとえば10μm〜20μm)であってもよい。このような厚膜銅配線を前述のようなパッシベーション膜で覆うことによって、厚膜銅配線と層間絶縁膜との接触部近傍などでパッシベーション膜にクラックが生じることを抑制して、厚膜銅配線を充分に保護することができる。また、前記銅配線は幅が10μm以上(たとえば10μm〜20μm)であってもよい。たとえば、このような幅広(好ましくはさらに厚膜)の銅配線は、パワーデバイスの電源配線であってもよい。また、前記銅配線は、最上層配線であってもよい。
【0012】
銅配線を形成する「銅を主成分とする材料」としては、たとえば、純度が99.9%以上の銅の他、Al,Ti,Ag等を添加した銅合金を用いることができる。
前記中間膜は、前記第1窒化膜の材料よりも応力の小さい材料からなるバッファ(緩衝)膜であることが好ましい(請求項2)。この構成により、第1窒化膜に生じる応力を効果的に緩和できる。
【0013】
より具体的には、前記中間膜は、酸化膜(酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜など)であってもよい。酸化膜への銅の拡散は、窒化膜によって阻止される。また、酸化膜は、窒化膜に比較して応力が小さいので、第1窒化膜に生じた応力を緩和して、第1窒化膜にクラックが生じることを抑制できる。
この発明の一実施形態においては、前記半導体装置は、前記層間絶縁膜上に形成され、前記配線中の銅が前記層間絶縁膜へと拡散することを防ぐバリア膜をさらに含む。そして、前記配線が、前記バリア膜上に形成され、前記バリア膜の縁部から張り出したオーバーハング部を有している(請求項3)。このようなオーバーハング部は、たとえば、銅配線をマスクとしてバリア膜をウェットエッチングする場合に、不可避的に生じる。第1窒化膜を形成すると、オーバーハング部と層間絶縁膜との間の隙間に第1窒化膜が入り込む。この隙間の部分では、第1窒化膜が、層間絶縁膜、バリア膜の側壁、および銅配線の底面に付着し、その結果、第1窒化膜中に空隙が生じる場合がある。第1窒化膜に大きな応力が生じると、当該空隙を基点としたクラックが生じやすくなる。この発明の構成では、第1窒化膜に中間膜が積層されることによってその応力が緩和されるので、クラックの発生を抑制できる。
【0014】
前記第1窒化膜(銅配線に近い側の内側膜)の膜厚は、前記第2窒化膜の膜厚よりも小さいことが好ましい。(請求項4)。この構成により、第1窒化膜の応力を抑制できるから、第1窒化膜にクラックが生じることをより一層効果的に抑制できる。
前記中間膜は、前記配線の厚さ方向に沿って前記層間絶縁膜から離れるほど幅狭となるテーパー部を有していてもよい(請求項5)。この構成によれば、配線と層間絶縁膜との接触部の周縁において中間膜の膜厚を厚くできるから、第1窒化膜の応力集中をより一層効果的に緩和できる。これにより、クラックの発生を一層効果的に抑制できる。また、中間膜に対する第2窒化膜のカバレッジが良くなるから、パッシベーション膜の保護性能を高くすることができる。
【0015】
テーパー状の断面プロファイル(輪郭)を有する中間膜は、たとえば、高密度プラズマCVD(HDPCVD:High-Density Plasma Chemical Vapor Deposition)法によって形成することができる。
この発明の半導体装置の製造方法は、層間絶縁膜上に突出するように、銅を主成分とする材料からなる配線を形成する工程と、処理室内で、還元性ガスによるプラズマ処理を前記配線に施す工程と、前記プラズマ処理の後、前記処理室内で、プラズマCVD法によって前記配線の表面(頂面および側面を含む。)および層間絶縁膜の表面(少なくとも前記配線の側面近傍領域の表面)を覆う第1窒化膜を形成する工程と、前記第1窒化膜を覆うように、前記第1窒化膜とは異なる材料からなる中間膜を形成する工程と、前記中間膜を覆うように、前記中間膜とは異なる材料からなる第2窒化膜を形成する工程とを含む(請求項6)。
【0016】
この方法により、請求項1に記載した半導体装置を作製できる。さらに、この方法では、処理室内で還元ガスによるプラズマ処理を銅配線(銅を主成分とする材料からなる配線)に施した後に、同じ処理室内で行うプラズマCVD法によって第1窒化膜が形成される。これにより、銅配線の表面の酸化膜を除去した状態で第1窒化膜が形成される。その結果、第1窒化膜は銅配線に対して良好な密着性を有するので、第1窒化膜の膜剥がれを抑制できる。
【0017】
プラズマCVD法のための処理室での第1窒化膜の形成に先立って、処理室外でのウェットエッチングによって銅配線表面の酸化膜を予め除去しておくことが考えられるかもしれない。しかし、この場合、銅配線が処理室内の高温の雰囲気に晒されると、その表面に速やかに酸化膜が形成されてしまう。このような酸化膜が形成された表面に第1窒化膜を形成しても、この第1窒化膜は、充分な密着性を有することはできない。
【0018】
前記中間膜を形成する工程は、前記第1窒化膜の材料よりも応力の小さい材料からなるバッファ(緩衝)膜を形成する工程を含むことが好ましい(請求項7)。この方法により、バッファ膜によって第1窒化膜の応力を効果的に緩和でき、第1窒化膜にクラックが生じることを抑制できる。
前記配線を形成する工程は、前記層間絶縁膜上にバリア膜を形成する工程と、前記バリ膜上に所定の配線パターンの銅膜を形成する工程と、前記バリア膜を前記配線パターンにエッチング(たとえばウェットエッチング)する工程とを含んでいてもよい(請求項8)。バリア膜のエッチング(とくにウェットエッチング)によって、前述のようなオーバーハング部が生じる。この場合でも、第1窒化膜のクラックを効果的に抑制できることは既述のとおりである。
【0019】
前記第1および第2窒化膜は、前記第1窒化膜の膜厚が前記第2窒化膜の膜厚よりも小さくなるように形成されることが好ましい(請求項9)。これにより、第1窒化膜の応力を低減できるから、第1窒化膜にクラックが生じることを一層効果的に抑制できる。
前記中間膜を形成する工程は、高密度プラズマCVD(High-Density Plasma Chemical Vapor Deposition)法によって酸化膜を形成する工程を含んでいてもよい(請求項10)。この場合、中間膜は、テーパー形状の断面プロファイルを有することになる。これにより、銅配線と層間絶縁膜との接触部における中間膜の膜厚が厚くなるので、第1窒化膜の応力を一層効果的に低減できる。加えて、中間膜に対する第2窒化膜のカバレッジが良くなるので、パッシベーション膜の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、上配線(最上層配線)の下縁部付近の構造を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3A】図3Aは、図1および図2に示す半導体装置の製造工程における模式的な断面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの次の工程における模式的な断面図である。
【図3C】図3Cは、図3Bの次の工程における模式的な断面図である。
【図3D】図3Dは、図3Cの次の工程における模式的な断面図である。
【図3E】図3Eは、図3Dの次の工程における模式的な断面図である。
【図3F】図3Fは、図3Eの次の工程における模式的な断面図である。
【図3G】図3Gは、図3Fの次の工程における模式的な断面図である。
【図3H】図3Hは、図3Gの次の工程における模式的な断面図である。
【図3I】図3Iは、図3Hの次の工程における模式的な断面図である。
【図3J】図3Jは、図3Iの次の工程における模式的な断面図である。
【図3K】図3Kは、図3Jの次の工程における模式的な断面図である。
【図3L】図3Lは、図3Kの次の工程における模式的な断面図である。
【図4】図4Aは前記実施形態に従って作製した半導体装置(実施例)の電子顕微鏡写真であり、図4Bは膜厚2μmのSiNの単層でパッシベーション膜を形成した比較例の電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、この発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図6】厚膜銅配線を単層の窒化シリコン膜で覆った試作例(比較例)の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。半導体装置10は、半導体基板20を備えている。半導体基板20は、たとえば、Si(シリコン)基板である。半導体基板20には、トランジスタ(たとえばパワートランジスタ)その他の機能素子が作り込まれている。半導体基板20上には、第1層間絶縁膜21が積層されている。第1層間絶縁膜21は、たとえば、SiO(酸化シリコン)からなる。第1層間絶縁膜21上には、下配線22が形成されている。下配線22は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。
【0022】
第1層間絶縁膜21および下配線22上には、第2層間絶縁膜23が積層されている。第2層間絶縁膜23は、たとえば、SiOからなる。この第2層間絶縁膜23の表面は平坦化されている。
第2層間絶縁膜23上には、第3層間絶縁膜25が積層されている。第3層間絶縁膜25は、たとえば、SiN(窒化シリコン)からなる。
【0023】
また、第2層間絶縁膜23および第3層間絶縁膜25には、下配線22と厚さ方向に対向する部分に、それらを厚さ方向に貫通するビアホール26が形成されている。ビアホール26は、上側ほど開口面積が大きくなるようなテーパー形状に形成されている。
第3層間絶縁膜25上には、最上層配線としての上配線27が形成されている。
上配線27は、平面視でビアホール26を含む領域上に形成され、第3層間絶縁膜25から上方に突出して形成されている。上配線27は、たとえば、第3層間絶縁膜25の表面からの突出量が2μm以上(たとえば、10μm〜20μm)となるような厚さを有している。上配線27の下端部は、ビアホール26内に入り込み、下配線22に接続されている。上配線27は、Cu(たとえば、純度99.9%のCu)からなる。
【0024】
上配線27と下配線22、第2層間絶縁膜23および第3層間絶縁膜25との間には、CuイオンおよびAuの拡散に対するバリア性を有するバリア膜28が介在されている。バリア膜28は、たとえばTi(チタン)またはTiW(チタン‐タングステン合金)からなる。バリア膜28は、上配線27からCu(Cuイオン)が拡散するのを防止することができるので、上配線27と別の最上層配線との間にリークパスが形成されるのを防止する。
【0025】
第3層間絶縁膜25および上配線27上には、パッシベーション膜30が形成されている。パッシベーション膜30は、上配線27の表面(頂面および側面)を覆うように形成されている。パッシベーション膜30において、ビアホール26の直上の位置には、ビアホール26に対応した窪みが形成されている。この窪みからずれた平坦な領域には、上配線27の表面の一部を露出させるパッド開口34が、パッシベーション膜30の厚さ方向に貫通して形成されている。上配線27においてパッド開口34から露出した部分がパッドである。このパッドに接するようにキャップメタル層35が形成されている。キャップメタル層35は、パッド開口34を覆う領域に形成されており、パッド開口34内を埋め尽くして、上配線27に接している。キャップメタル層35は、たとえば、バリア層35aと、接着層35bとの積層膜からなる。バリア層35aは、パッド開口34において上配線27に接している。バリア層35aは、CuイオンおよびAuの拡散に対するバリア性を有しており、たとえば、Ti(チタン)またはTiW(チタンタングステン)からなる。接着層35bは、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。
【0026】
キャップメタル層35には、Auからなるボンディングワイヤ36の一端部が接合される。ボンディングワイヤ36の他端部は、半導体装置10の外部に接続される。これにより、ボンディングワイヤ36は、キャップメタル層35、上配線27およびバリア膜28を介して、下配線22と電気的に接続される。キャップメタル層35に含まれるバリア層35aは、ボンディングワイヤ36中のAuが上配線27への拡散することを防止し、かつ、上配線27中のCuがボンディングワイヤ36へと拡散することを防止する。キャップメタル層35に含まれる接着層35bは、バリア層35aに対して良好な密着性を有し、かつ、Auからなるボンディングワイヤ36に対する優れた接着性を有する。
【0027】
パッシベーション膜30は、第1窒化膜31と、第2窒化膜32と、中間膜33とを積層した積層膜からなる。最下層の第1窒化膜31は、上配線27の頂面および側面に接し、さらに、第3層間絶縁膜25の表面に接している。中間膜33は、第1窒化膜31と第2窒化膜32との間に挟まれている。最上層の第2窒化膜32は外部に露出しており、パッド開口34の周縁部において、キャップメタル層35に下方(半導体基板20側)から接している。
【0028】
第1窒化膜31および第2窒化膜32は、たとえば、SiN(窒化シリコン)からなる。第1窒化膜31の膜厚は、0.1μm〜0.5μm(たとえば0.5μm)とすることが好ましい。第2窒化膜32の膜厚は、0.8μm〜2.0μm(たとえば1.0μm)とすることが好ましい。
中間膜33は、たとえば、SiO(酸化シリコン)等の酸化膜からなる。中間膜33の膜厚は、0.2μm〜1.0μm(たとえば0.5μm)とすることが好ましい。中間膜33は、第1窒化膜31および第2窒化膜32の材料よりも応力の小さい材料で構成するとよい。たとえば、SiNの応力は0.2GPaであるのに対して、SiOの応力は0.1GPaである。また、中間膜33の膜厚は、とくに第1窒化膜31に生じる応力を緩和するのに充分な値とすることが好ましい。
【0029】
図2は、上配線27の下縁部付近の構造を拡大して示す部分拡大断面図である。バリア膜28は、上配線27をマスクとしたウェットエッチングによってパターニングされる。そのため、上配線27の縁部付近では、バリア膜28がオーバーエッチングされている。すなわち、バリア膜28の縁部は、上配線27の下縁部よりも上配線27の下方領域の内方へと後退している。すなわち、上配線27は、その下縁部付近に、バリア膜28の縁部から張り出したオーバーハング部27aを有している。このオーバーハング部27aの下方には、断面コ字形(横向きU字形)のオーバーエッチング領域38が形成されている。
【0030】
パッシベーション膜30の第1窒化膜31は、オーバーエッチング領域38に入り込み、この領域38を区画する各膜の表面に接している。すなわち、第1窒化膜31は、第3層間絶縁膜25の表面、バリア膜28の側壁面、および上配線27の底面に付着している。このような複雑な構造部分での成膜は困難であるから、第1窒化膜31中に空隙39が生じる場合がある。第1窒化膜31に大きな応力が生じると、空隙39を基点としたクラックが生じやすくなる。そこで、この実施形態では、第1窒化膜31に中間膜33が積層されている。これにより、第1窒化膜31の応力が緩和されるので、クラックの発生を抑制できる。さらに、中間膜33に第2窒化膜32が積層されているので、パッシベーション膜30は、全体として、優れた表面保護性能を有する。また、パッシベーション膜30は無機材料からなっているので、低コストで形成できる。
【0031】
図3A〜3Lは、図1および図2に示す半導体装置の各製造工程における模式的な断面図である。
図3Aに示すように、トランジスタその他の機能素子が作り込まれた半導体基板20の表面に、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により、第1層間絶縁膜21が積層される。その後、スパッタ法により、第1層間絶縁膜21上に、下配線22の材料となるAl膜が形成される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、Al膜がパターニングされることにより、下配線22が形成される。次いで、HDP(High Density Plasma:高密度プラズマ)CVD法により、第1層間絶縁膜21および下配線22上に、酸化膜(SiO膜)23aが形成される。その後、プラズマCVD法により、酸化膜23a上に、USG(Undoped Silicate Glass)膜23bが形成される。これにより、酸化膜23aおよびUSG膜23bの積層膜からなる第2層間絶縁膜23が形成される。
【0032】
次に、図3Bに示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、第2層間絶縁膜23が、その表面から研削される。この第2層間絶縁膜23の研削は、第2層間絶縁膜23の膜厚が所定の目標値(たとえば9500Å)となるように実行される。これにより、第2層間絶縁膜23の表面が平坦化される。その後、プラズマCVD法により、第2層間絶縁膜23上に、第3層間絶縁膜25が形成される。その後、下配線22上に開口を有するパターンのレジストマスク41が、第3絶縁膜25上に形成される。
【0033】
次いで、図3Cに示すように、レジストマスク41をマスクとしたドライエッチング(たとえば、RIE:反応性イオンエッチング)により、第3層間絶縁膜25および第2層間絶縁膜23が選択的に除去され、それらを厚さ方向に貫通するビアホール26が形成される。
次に、図3Dに示すように、スパッタ法により、ビアホール26の内面(底面および側壁)および第3層間絶縁膜25上に、たとえばTiWからなるバリア膜28が形成される。続いて、スパッタ法により、バリア膜28上に、Cuからなるシード膜29が形成される。
【0034】
その後、図3Eに示すように、バリア膜28およびシード膜29上に、平面視でビアホール26を含む領域に対向する部分に開口を有するレジストパターン42が形成される。レジストパターン42の開口は、上配線27の配線パターンに対応するパターンに形成される。次いで、レジストパターン42の開口内に、Cuがめっき成長される。これにより、レジストパターン42の開口内がCuに埋め尽くされ、Cuからなる所定の配線パターンの上配線27が形成される。上配線27の形成後、レジストパターン42は除去される。上配線27は、たとえば、膜厚が10μm程度、幅が10μm程度である。すなわち、上配線27は、第3層間絶縁膜25から10μm程度突出した状態で形成される。
【0035】
その後、図3Fに示すように、上配線27をマスクとして用いるウェットエッチングにより、シード膜29およびバリア膜28が順にエッチングされる。これにより、シード膜29およびバリア膜28において、レジストパターン42の下方に形成されていた部分が除去される。これにより、シード膜29およびバリア膜28が、上配線27に整合する配線パターンにエッチングされる。ウェットエッチングの際、バリア膜28のオーバーエッチングが生じることにより、前述のオーバーハング部27aおよびオーバーエッチング領域38が形成される。
【0036】
次に、図3Gに示すように、プラズマCVD装置の処理室50に基板20が搬入され、この処理室50内で、上配線27に対し、還元性ガスによるプラズマ処理が施される。還元性ガスとは、上配線27の表面の酸化物を還元して除去する性質のガスである。このような還元性ガスの例としては、H(水素)ガスおよびNH(アンモニア)ガスが挙げられる。NH/H混合ガスを還元性ガスとして用いてもよい。このような還元性ガスが処理室50に供給され、この還元性ガスのプラズマが処理室50内に生成させられる。このような還元性ガスによるプラズマ処理によって、上配線27の表面の酸化膜が除去される。
【0037】
次に、図3Hに示すように、同じ処理室50内において、プラズマCVD法により、パッシベーション膜30が成膜される。具体的には、第1窒化膜31が成膜され、その後、第1窒化膜31上に中間膜33が成膜され、その後、中間膜33上に第2窒化膜32が成膜される。第1窒化膜31および第2窒化膜32は、たとえば、SiH(シラン)、N(窒素)およびNH(アンモニア)を原料ガスとして処理室50に供給して行うプラズマCVD法で形成される。これにより、SiN膜が成膜される。また、中間膜33は、たとえば、SiH(シラン)、NO(亜酸化窒素)およびO(酸素)を原料ガスとして処理室50に供給して行うプラズマCVD法で形成される。これにより、SiO膜が成膜される。成膜時の基板温度は、たとえば、300℃〜400℃とされる。
【0038】
パッシベーション膜30の成膜直前に同一処理室50内で還元性ガスによるプラズマ処理が行われているので、第1窒化膜31は、上配線27に対して良好に密着する。第1窒化膜31は、上配線27の頂面および側面ならびに第3層間絶縁膜25の表面を覆うように形成される。第1窒化膜31は、少なくとも、上配線27の側面近傍の領域において第3層間絶縁膜25を覆う。中間膜33は、第1窒化膜31を覆うように形成される。第2窒化膜32は、中間膜33を覆うように形成される。
【0039】
次に、図3Iに示すように、パッド開口34に対応する開口を有するレジストマスク43が形成される。このレジストマスク43をマスクとしたドライエッチング(たとえばRIE)によって、パッシベーション膜30にパッド開口34が形成され、上配線27の一部が露出させられる。その後、レジストマスク43を剥離すると、図3Jに示す状態となる。
【0040】
この後、図3Kに示すように、スパッタ法により、第3層間絶縁膜25および上配線27上に、バリア層35aおよび接着層35bがこの順に形成される。そして、パッド開口34の上方に、キャップメタル層35に対応したレジストマスク44が形成される。バリア層35aは、たとえば、膜厚500ÅのTiW膜からなる。また、接着層35bは、たとえば膜厚1000ÅのAl膜からなる。
【0041】
次に、図3Lに示すように、レジストマスク44をマスクとして用いたドライエッチング(たとえばRIE)によって接着層35bがパターニングされる。さらに、パターニングされた接着層35bをマスクとして用いたウェットエッチングによって、バリア層35aがパターニングされる。こうして、パッド開口34を覆うキャップメタル層35が形成される。その後、キャップメタル層35にボンディングワイヤ36の一端部が接合されることにより、図1に示す半導体装置10が得られる。
【0042】
図4Aは前記実施形態に従って作製した半導体装置の電子顕微鏡写真であり、上配線27の下縁部を示す。第1窒化膜31はSiNからなり、膜厚は0.5μmである。中間膜33はSiOからなり、膜厚は0.5μmである。第2窒化膜32はSiNからなり、膜厚は1.0μmである。第1窒化膜31には、オーバーエッチング領域38の付近に空隙39が形成されているけれども、第1窒化膜31、第2窒化膜32および中間膜33のいずれにもクラック等の欠損が生じていない。したがって、パッシベーション膜30は、全体として、良好な保護性能を有する。
【0043】
図4Bは、膜厚2μmのSiNの単層でパッシベーション膜5を形成した比較例の電子顕微鏡写真である。このパッシベーション膜5には、オーバーエッチング領域38の付近に生じる空隙6に起因するクラック7が生じている。したがって、外部からの水分等の浸入の懸念があり、充分な保護性能を有していない。
以上のように、この実施形態の半導体装置10においては、第3層間絶縁膜25の表面から突出して形成された上配線27(最上層配線)を覆うパッシベーション膜30が、第1窒化膜31および第2窒化膜32の間に中間膜33を挟んだ積層膜からなる。そして、中間膜33は、第1窒化膜31とは異なる材料であり、窒化膜よりも応力の小さい酸化膜からなっている。これにより、中間膜33は、第1窒化膜31の応力を緩和するバッファ膜として機能するから、第1窒化膜31のクラックを抑制しつつ、全体として充分な膜厚を有するパッシベーション膜30を実現できる。これにより、Cuからなる上配線27を保護できる。また、クラックのない第1窒化膜31が上配線27に接しているので、上配線27からの銅の拡散を阻止できる。
【0044】
また、第1窒化膜31を薄く形成しても、パッシベーション膜30は全体として充分な膜厚を有する。そこで、第1窒化膜31を薄くすることで、第1窒化膜31の応力を一層低減できる。とくに、第1窒化膜31の膜厚を第2窒化膜32の膜厚よりも小さくすることにより、第1窒化膜31の応力を低減する一方、膜厚の大きな第2窒化膜32によって、パッシベーション膜30の保護性能を強化できる。
【0045】
さらに、前述の製造方法では、上配線27をめっきで形成した後、処理室50内で還元性ガスによるプラズマ処理を行い、その後、同一処理室50内でのプラズマCVD法によって第1窒化膜31が形成されている。これにより、第1窒化膜31の成膜直前に上配線27の表面の酸化膜が除去されるから、第1窒化膜31は上配線27に対して優れた密着性を有する。これにより、パッシベーション膜30の剥がれを予防できるから、信頼性の高い半導体装置10を提供できる。
【0046】
図5は、この発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。この実施形態では、パッシベーション膜30の中間膜33は、上方(半導体基板20から離れる方向)に向かうに従って幅狭となるテーパー形状の断面プロファイル(輪郭)を有している。これにより、上配線27と第3層間絶縁膜25との接触部の周縁において中間膜33の膜厚を厚くできる。したがって、オーバーエッチング領域38の近傍において、第1窒化膜31の応力集中をより一層効果的に緩和できる。これにより、第1窒化膜31にクラックが発生することを一層効果的に抑制できる。また、上配線27の上側角部付近において、中間膜33の表面形状が緩やかな変化を呈する。たとえば、中間膜33の表面は、その断面において、長辺と側辺とが鈍角をなす台形形状の輪郭を有する。これにより、中間膜33上に形成される第2窒化膜32は、良好なカバレッジ(被覆性)で中間膜33に密着する。その結果、パッシベーション膜30の保護性能を一層向上することができる。
【0047】
上記のような中間膜33は、たとえば、高密度プラズマCVD(HDPCVD:High-Density Plasma Chemical Vapor Deposition)法で形成することができる。より具体的には、前述の図3Hの工程(パッシベーション膜の成膜工程)において、第1窒化膜31をプラズマCVD法で形成した後に、中間膜33をHDPCVD法で形成し、その後に第2窒化膜32をプラズマCVD法で形成すればよい。これにより、中間膜33は、断面台形状のプロファイルを有することになる。
【0048】
以上、本発明の2つの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、パッシベーション膜30の中間膜33をSiOで構成した例を示したが、SiON(酸化窒化シリコン)で中間膜33を構成してもよい。
また、前述の実施形態では、第3層間絶縁膜25の材料として、SiNを例示したが、代わりにSiOを用いてもよい。ただし、Cuイオンは、SiN中よりもSiO中の方が拡散しやすいので、第3層間絶縁膜25の材料としてSiNを用いることにより、Cuイオンの拡散をより良好に防止することができる。
【0049】
また、バリア膜28およびバリア層35aの材料として、TiおよびTiWを例示したが、バリア膜28およびバリア層35aは、導電性を有し、CuイオンおよびAuの拡散に対するバリア性を有する他の材料で形成してもよい。このような材料としては、TiおよびTiWの他にも、TiN(窒化チタン)、WN(窒化タングステン)、TaN(窒化タンタル)、Ta(タンタル)、W(タングステン)などを例示することができる。
【0050】
また、キャップメタル層35の接着層35bの材料としてAlを例示したが、Cuおよび絶縁材料との密着性が高い金属材料であればよく、Alの他に、たとえば、AlSiCu(アルミニウム‐銅合金のシリコン化合物)またはAlCu(アルミニウム‐銅合金)などを適用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 半導体装置
20 半導体基板
21 第1層間絶縁膜
22 下配線
23 第2層間絶縁膜
25 第3層間絶縁膜
27 上配線
27a オーバーハング部
28 バリア膜
29 シード膜
30 パッシベーション膜
31 第1窒化膜
32 第2窒化膜
33 中間膜
34 パッド開口
35 キャップメタル層
36 ボンディングワイヤ
38 オーバーエッチング領域
39 空隙
50 処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に突出して形成され、銅を主成分とする材料からなる配線と、
前記配線を覆うように形成されたパッシベーション膜とを含み、
前記パッシベーション膜が、前記配線側から順に第1窒化膜、中間膜および第2窒化膜を積層した積層膜からなり、前記中間膜が、前記第1および第2窒化膜とは異なる絶縁材料からなる、半導体装置。
【請求項2】
前記中間膜は、前記第1窒化膜の材料よりも応力の小さい材料からなるバッファ膜である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記層間絶縁膜上に形成され、前記配線中の銅が前記層間絶縁膜へと拡散することを防ぐバリア膜をさらに含み、
前記配線が、前記バリア膜上に形成され、前記バリア膜の縁部から張り出したオーバーハング部を有している、請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1窒化膜の膜厚が、前記第2窒化膜の膜厚よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記中間膜が、前記配線の厚さ方向に沿って前記層間絶縁膜から離れるほど幅狭となるテーパー部を有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
層間絶縁膜上に突出するように、銅を主成分とする材料からなる配線を形成する工程と、
処理室内で、還元性ガスによるプラズマ処理を前記配線に施す工程と、
前記プラズマ処理の後、前記処理室内で、プラズマCVD法によって前記配線の表面および前記層間絶縁膜の表面を覆う第1窒化膜を形成する工程と、
前記第1窒化膜を覆うように、前記第1窒化膜とは異なる材料からなる中間膜を形成する工程と、
前記中間膜を覆うように、前記中間膜とは異なる材料からなる第2窒化膜を形成する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記中間膜を形成する工程は、前記第1窒化膜の材料よりも応力の小さい材料からなるバッファ膜を形成する工程を含む、請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記配線を形成する工程は、前記層間絶縁膜上にバリア膜を形成する工程と、前記バリア膜上に所定の配線パターンの銅膜を形成する工程と、前記バリア膜を前記配線パターンにエッチングする工程とを含む、請求項6または7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1窒化膜の膜厚が前記第2窒化膜の膜厚よりも小さくなるように、前記第1および第2窒化膜が形成される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記中間膜を形成する工程が、高密度プラズマCVD法によって酸化膜を形成する工程を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−216771(P2011−216771A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85193(P2010−85193)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】