説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 開口部が設けられ、当該開口部に二次元電子ガスで形成されるチャネルを備える縦型半導体装置の耐圧性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】 GaN系積層体15は、n−型GaNドリフト層4/p型GaNバリア層6/n+型GaNコンタクト層7、を有し、開口部28は表層からn−型GaNドリフト層4内にまで届いていて、開口部の壁面および底部を覆うように位置する、電子走行層22および電子供給層26を含む再成長層27と、開口部の周囲に位置するソース電極Sと、開口部の再成長層上に位置するゲート電極Gと、開口部の底部に位置する底部絶縁膜37とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電力のスイッチングに用いられる、半導体装置およびその製造方法、とくに窒化物半導体のうちGaN系半導体を用いた半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大電流用のスイッチング素子には、高い逆方向耐圧と低いオン抵抗とが求められる。III族窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)は、バンドギャップが大きいことから、高耐圧、高温動作などの点で優れており、とくにGaN系半導体を用いた縦型トランジスタは、大電力の制御用トランジスタとして注目されている。たとえばGaN系半導体に開口部を設けて、その開口部の壁面に二次元電子ガス(2DEG:2 Dimensional Electron Gas)のチャネルを含む再成長層を設けることで、移動度を高めオン抵抗を低くした縦型GaN系FETの提案がなされている(特許文献1)。この縦型GaN系FETでは、耐圧性能やピンチオフ特性を改善するためにp型GaNバリア層などを配置する機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の縦型GaN系FETでは、上記p型GaNバリア層とnGaNドリフト層とのpn接合に形成される空乏層により、耐圧性能は向上されるかもしれない。しかし、開口部はp型GaNバリア層を突き抜けてnGaNドリフト層内にまで届いている。このため、ゲート電極Gはp型GaNバリア層を介在させずにドレイン電極に対向することになる。大電力用スイッチング素子に用いる場合、オフ動作には、ソース電極(グランド)とドレイン電極との間に数百V〜千数百Vの電圧が印加される。オフ動作時にはゲート電極にマイナス数V程度の電圧がかけられる。上記の高いソース−ドレイン間電圧のため、開口部の底とくに底の稜線(断面図では角部)付近のnGaNドリフト層に電界集中が生じる。この結果、開口部の底の稜線の不可避的な凹凸等を起点に半導体の破壊が生じる。
本発明は、開口部が設けられ、当該開口部にチャネルおよびゲート電極を備える縦型半導体装置において、オフ動作時の耐圧性能を向上させた半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体装置は、開口部が設けられたGaN系積層体を備える縦型の半導体装置である。この半導体装置では、GaN系積層体は、表層側へと順次、n型GaN系ドリフト層/p型GaN系バリア層/n型GaN系コンタクト層、を有し、開口部は表層からn型GaN系ドリフト層内にまで届いている。その開口部の壁面および底部を覆うように位置する、電子走行層および電子供給層を含む再成長層と、再成長層、n型GaN系コンタクト層およびp型GaN系バリア層に接するソース電極と、開口部において再成長層上に位置するゲート電極と、開口部の底部に限定されてゲート電極の下に位置する底部絶縁膜とを備えることを特徴とする。
【0006】
縦型の半導体装置では、一方の主面(GaN系半導体層の表面)上のソース電極と、そのソース電極に該GaN系半導体層を挟んで対向するドレイン電極との間に、数百ボルト〜千数百ボルトの高電圧が印加される。ソース電極はグランド電位に固定され、ドレイン電極に高電圧が印加される。またゲート電極は、チャネルの開閉のためにオフ時にマイナス数ボルト、たとえば−5Vに保持される。すなわちオフ動作時、ゲート電極が最低電位を保持する。ゲート電極とドレイン電極との間の距離は、ソース電極とドレイン電極との間の距離よりも小さく、オフ動作時には、ドレイン電極とゲート電極との間には、上記の−5V分だけ高くなった電圧がかかる。従来の形態では、ゲート電極は、半導体層に接して、ショットキー構造の金属部分を構成している。
上記の構成によれば、開口部の底部に底部絶縁膜が配置され、その底部絶縁膜が、最低電位保持部のゲート電極と、開口部の底部に接する部分のn型GaN系ドリフト層との間に介在する。このため、ゲート電極とn型GaN系ドリフト層との間の距離は、確実に、絶縁膜の厚み分だけ大きくなる。従来の形態では、とくに開口部の角部の内側に嵌合していたゲート電極の凸部は、その角部から離れる。このとき、上記のように従来の装置におけるゲート電極が形成するショットキー構造は、本発明ではMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造へと変えられている。この結果、角部の外側に接していたn型GaN系ドリフト層に生じる電界集中は緩和される。この結果、当該箇所のn型GaN系ドリフト層に破壊が生じにくくなる。
なお、不純物の導電型n型またはp型について、濃度は限定していないが、低濃度から高濃度の全範囲を含むものである。
【0007】
底部絶縁膜は、開口部の底部を覆う再成長層の上に位置することができる。
これによって、開口部の底部および壁面が連続して再成長層で覆われるので、角部等に偶発的に生成する不規則な凹凸などがなく、電界集中を局所的に助長する形状要因をなくすことができる。また、開口部の底部および壁面を連続して覆う再成長層上に底部絶縁膜を配置することで、製造工程の簡単化をはかることができる。
【0008】
再成長層は、開口部の壁面を覆って該開口部の底部を形成するn型GaN系ドリフト層で終端し、底部絶縁膜は、開口部の底部に位置するn型GaN系ドリフト層を覆うように位置することができる。
これによって開口部の底部は、金属(ゲート電極)/底部絶縁膜/n型GaN系ドリフト層という、簡単な構造になり、耐圧性能上、好ましい構造を得ることができる。
【0009】
開口部の、少なくとも壁面において、ゲート電極の下であって再成長層上に位置する絶縁層を備えることができる。
ゲート電極下でチャネル上に絶縁層を配置することで、ゲートに正電圧を印加したときのゲートリーク電流を抑制できるため、大電流動作がしやすくなる。また、しきい値電圧をより正方向にシフトできるため、ノーマリーオフを得やすくなる。
なお、上記の絶縁層は、開口部の底部へと連続して、当該底部に位置する底部絶縁膜の上または下に延在することができる。この場合、この絶縁層と底部絶縁膜とは、底部において厚みを増して、オフ時に最低電位保持部のゲート電極とn型GaNドリフト層との間の距離をより大きくすることができる。この結果、角部に接するn型GaNドリフト層の部分における電界集中を一層緩和することができる。
【0010】
再成長層が、開口部の壁面を覆って、該壁面と該開口部の底部とが交差する箇所で終端する構造において、絶縁膜が開口部の壁面から連続して底部絶縁膜を兼ねて、開口部の底部に位置するn型GaN系ドリフト層を覆うように位置する構成をとることができる。
これによって、上述のノーマリオフなどの性能を得ながら、耐圧性能を向上させる簡単な一つの構造を得ることができる。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、縦型のGaN系半導体装置の製造方法である。この製造方法は、n型GaN系ドリフト層上にp型GaN系バリア層を形成する工程と、p型GaN系バリア層上にn型GaN系コンタクト層を形成する工程と、エッチングにより、表層からn型GaN系ドリフト層内に届く開口部を形成する工程と、開口部の壁面および底部を覆うように、電子走行層および電子供給層を含む再成長層をエピタキシャル成長させる工程と、開口部の底部に限定して底部絶縁膜を形成する工程と、底部絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記の方法によれば、再成長層を形成した後、ゲート電極を形成する前に、底部絶縁膜を形成することで、簡単に、開口部の角部付近のn型GaN系ドリフト層に生じる電界集中を緩和することができる。
【0013】
再成長層の成長工程において、開口部の壁面に該開口部の底部を形成しているn型GaN系ドリフト層にまで当該再成長層を形成するか、または開口部の底部に位置する再成長層をエッチングによって除き、次いで、底部絶縁膜の製造工程において開口部の底部に露出するn型GaN系ドリフト層を覆うように底部絶縁膜を形成することができる。
または、再成長層の形成工程では、該再成長層を開口部の壁面および底部を覆うように形成し、底部絶縁膜の形成工程において再成長層上に当該底部絶縁膜を形成することができる。
上記のどちらの製造方法によっても、簡単に、底部絶縁膜を配置して電界集中の生じにくい半導体装置を製造することができる。
【0014】
ゲート電極形成工程よりも前、底部絶縁膜の形成工程の後または前に、少なくとも開口部の壁面においてゲート電極の下に位置するように、絶縁層を形成する工程を備えることができる。
これによって、ゲートに正電圧を印加したときのゲートリーク電流を抑制でき、大電流動作がしやすい半導体装置を簡単に製造することができる。また、上記の絶縁層を設けることで、ノーマリーオフを得やすい半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体装置によれば、開口部が設けられ、当該開口部にチャネルおよびゲート電極を備える縦型半導体装置において、オフ動作時の耐圧性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における縦型GaN系FET(半導体装置)を示す断面図である(図2のI−I線に沿う断面図)。
【図2】図1の縦型GaN系FETの平面図である。
【図3】図1の縦型GaN系FETの製造方法を示し、支持基体上にオーミック接触するGaN層を有する基板にコンタクト層までのエピタキシャル積層体を形成した状態を示す図である。
【図4】エッチングによって開口部を設けた状態を示す図である。
【図5】RIEによって開口部を設ける段階を示し、(a)はレジストパターンを配置した状態、(b)はイオンを照射しながら開口を掘り下げて開口を拡大(後退)させてゆく状態、を示す図である。
【図6】開口部に、再成長層を形成した状態を示す図である。
【図7】開口部底部の再成長層上に底部絶縁膜を形成した状態を示す図である。
【図8】図1に示す半導体装置の変形例を示し、本発明の実施の形態1に属する半導体装置の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2における縦型GaN系FET(半導体装置)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における縦型GaN系FET(半導体装置)10の断面図である。縦型GaN系FET10は、導電性のGaN基板1と、その上にエピタキシャル成長した、n型GaNドリフト層4/p型GaNバリア層6/n型GaNコンタクト層7、を備える。このn型GaNドリフト層4/p型GaNバリア層6/n型GaNコンタクト層7は、連続して形成されたGaN系積層体15を形成する。GaN基板1の種類によっては、GaN基板1とn型GaNドリフト層4との間にAlGaN層またはGaN層からなるバッファ層を挿入してもよい。
なお、GaN基板1は、いわゆる一体物の厚手のGaN基板でも、または支持基体上にオーミック接触するGaN層を有する基板であってもよい。さらに、GaN系積層体の成長時にGaN基板等の上に形成して、その後の工程で、GaN基板等の所定厚み部分を除いて、製品の状態では薄いGaN層下地のみが残っているものであってもよい。これら、GaN基板、支持基体上にオーミック接触するGaN層を有する基板、製品に薄く残された下地のGaN層などを、単にGaN基板と略称する場合もある。
上記の薄い下地のGaN層は、導電性でも非導電性でもよく、ドレイン電極は、製造工程および製品の構造によるが、薄いGaN層の表面または裏面に設けることができる。GaN基板または支持基体等が製品に残る場合、当該支持基体または基板は、導電性でも、非導電性でもよい。導電性の場合は、ドレイン電極は、その支持基体または基板の裏面(下)またはおもて面(上)に直接設けることができる。また、非導電性の場合は、非導電性基板の上であって、上記半導体層中の下層側に位置する導電層の上に、ドレイン電極を設けることができる。
また、p型GaNバリア層は、本実施の形態ではp型GaNバリア層6としているが、p型AlGaN層を用いてもよい。積層体15を構成するその他の層についても、場合に応じて、上記に示したGaN層を他のGaN系半導体層としてよい。
【0018】
GaN系積層体15には、n型GaNコンタクト層7からp型GaNバリア層6まで貫通してn型GaNドリフト層4内に至る開口部28が設けられている。開口部28は、壁面(側面)28aと底部28bとが露出されている。その開口部28の壁面28aおよび底部28bと、GaN系積層体15の表層(n型GaNコンタクト層7)とを被覆するように、エピタキシャル成長した再成長層27が形成されている。再成長層27は、i(intrinsic)型GaN電子走行層22およびAlGaN電子供給層26で構成される。i型GaN電子走行層22とAlGaN電子供給層26との間にAlN等の中間層を挿入してもよい。ソース電極Sは、再成長層27、n型コンタクト層7、およびp型GaNバリア層に電気的に接続する。図1では、ソース電極Sは、下方に延在して、その側面で再成長層27およびn型コンタクト層7に接触し、その先端部でp型GaNコンタクト層7に接触して電気的接続をしている。ドレイン電極DはGaN基板1の裏面に位置する。
【0019】
再成長層27を覆って、ゲート電極Gの下に絶縁層9が位置している。この絶縁層9は、ゲート電極に正電圧を印加したときのゲートリーク電流を抑制するために配置されていて、大電流動作がしやすくなる。また、しきい値電圧をより正方向にシフトできるため、ノーマリーオフを得やすくなる。ただし、この絶縁層9は、なくてもよく、必須ではない。
【0020】
動作オン時には、再成長層27の、AlGaN電子供給層26とi型GaN電子走行層22とのi型GaN電子走行層内界面に、二次元電子ガス(2DEG:2 Dimensional Electron Gas)が生成する。格子定数の違いに起因する自然分極やピエゾ分極等によって二次元電子ガスがi型GaN電子走行層22内のAlGaN層側の界面に生じる。スイッチング対象の電子は、ソース電極Sからその二次元電子ガスを経てn型GaNドリフト層4からドレイン電極Dにいたる経路をとる。再成長層27は、連続してi型GaN電子走行層22とAlGaN電子供給層26とが成長されるため、両者の界面における不純物準位等は低く抑えられる。このため、開口部28を設けて厚み方向に大電流を流しながら、低いオン抵抗で大電流(面積当たり)を流すことができる。
【0021】
本実施の形態における特徴は、開口部28の底部に位置する底部絶縁膜37にある。この底部絶縁膜37によって、開口部の底部付近のn型GaNドリフト層4と、ゲート電極Gとは距離をあけられる。とくに開口部の底部と壁面とが交差する稜線または角部Kに外側から接するn型GaNドリフト層4と、ゲート電極Gとは一定距離だけ確実に離される。また、従来における、ゲート電極Gが、直接、再成長層27またはn型GaNドリフト層4に接するショットキー構造から、本実施の形態では、底部絶縁膜37が両者の間に介在するMIS構造になっている。
上記したように、オフ動作時には、グランド電位に保持されるソース電極Sとドレイン電極Dとの間に、数百ボルト〜千数百ボルトの高電圧が印加される。またゲート電極は、チャネルの開閉のためにオフ時にマイナス数ボルト、たとえば−5Vに保持される。オフ動作時、ゲート電極が最低電位を保持する。
従来の半導体装置のように、ゲート電極Gが開口部28の底部および壁面を連続して隙間なく覆う構造では、上記電位の境界条件下で、角部Kに接する部分のn型GaNドリフト層4に大きな電界集中が生じる。従来の半導体装置では、ゲート電極は、上記角部Kに内側から嵌合する凸部を有する。角部Kに接する部分のn型GaNドリフト層4では、電気力線は角部Kの外側から内側に向かって断面を絞られて高密度になって流れる。角部の内側から嵌合する凸部とは、厳密には、角部Kを覆う再成長層に内側から嵌合するというべきであるが、再成長層の厚みは小さく差異は小さいので、それほど大きな影響がない場合は、厳密に区別しないで説明する。
上記の内側から嵌合する凸部のために、ゲート電極Gの最低電位を保持する凸部に接する部分のn型GaN系ドリフト層4に大きな電界集中が生じる。この電界集中によってこの部分のp型GaNバリア層6が破壊される場合がある。
【0022】
本実施の形態の半導体装置10のゲート電極Gは、底部絶縁膜37によって、開口部28の底部に接するn型GaNドリフト層4から、所定距離、離されている。とくにゲート電極Gは、開口部28の角部Kに内側から嵌合する部分を持たない。この底部絶縁膜37の厚みを大きくとることで、角部に接する部分のn型GaNドリフト層4の電界集中は緩和される。この結果、上記の稜線または角部に接する部分のn型GaNドリフト層4に大きな電界集中は生じず、高電圧に起因する絶縁破壊は生じにくくなる。
【0023】
底部絶縁膜37の厚みを大きくするほど、最低電位保持部のゲート電極Gとn型GaNドリフト層4との間の距離は大きくなる。このため、底部絶縁膜37の厚みは、再成長層27(22,26)の厚みの3倍以上あることが望ましく、さらに好ましくは5倍以上とするのがよい。再成長層27の厚みは、厚くても0.3μm程度なので、底部絶縁膜37の厚みは、0.9μm(3倍)以上あるのがよく、1.5μm(5倍)以上あればさらによい。
底部絶縁膜37には、Al、SiO、SiN、NiO、Scなどを用いることができる。
【0024】
p型GaNバリア層6のp型不純物濃度は、1E17cm−3〜1E19cm−3程度とするのがよい。p型不純物には、MgなどのGaN系半導体中にアクセプタを形成する不純物が用いられる。また、p型GaNバリア層6の厚みは、n型GaNドリフト層の厚み等によって変わり、設計事項である。このため、厚み範囲は一概に決めることはできない。しかし、代表的な厚みについては、多くの仕様において用いられる厚みという点から、0.3μm〜1μm程度をあげることができる。これより薄いと、十分な耐圧性能やピンチオフ特性を得られないので、厚みの下限とみてもよい。このp型GaNバリア層6は、この0.3μm〜1μm程度の厚みを持つことから、あまり高濃度のMg濃度を含有させると、p型GaNバリア層6の端面に向かって直線的に移動してチャネルに悪影響を及ぼす。また、チャネルOFF時のn型GaNドリフト層とのpn接合での逆方向特性(耐圧性能)を劣化させる。
型GaNコンタクト層7の厚みは、0.1μm〜0.6μm程度とするのがよい。n型GaNコンタクト層7の長さは、5μm以下とするのがよい。
【0025】
図2は、図1に示した縦型GaN系半導体装置10の平面図であり、図1は本図におけるI−I線に沿う断面図である。図2によれば、開口部28およびゲート電極Gを六角形とし、ゲート配線12を避けながら、その周囲をほぼソース電極Sで覆って、最密充填(ハニカム構造)とすることにより単位面積当たりのゲート電極周囲長を長く取れる。このような形状の面からも、オン抵抗を下げることができる。電流は、ソース電極Sから、直接に、またはn型GaNコンタクト層7を経由して、再成長層27内のチャネル(電子走行層22)に入り、n型GaNドリフト層4を経て、ドレイン電極Dへと流れる。ソース電極Sおよびその配線と、ゲート電極G、ゲート配線12およびゲートパッド13から構成されるゲート構成体とが、相互に干渉しないために、ソース配線は、図示しない層間絶縁膜上に設けられる。層間絶縁膜にはビアホールが設けられ、そのビアホールに充填された導電部を含むソース電極Sは、層間絶縁膜上のソース導電層(図示せず)と導電接続される。このような構造によって、ソース電極Sを含むソース構成体は、大電力用の素子に好適な、低い電気抵抗および高い移動度、を持つことができる。
上記の六角形のハニカム構造は、畝状にして、畝状の開口部を密に配置することでも、上記の面積当たりの開口部周囲長を大きくでき、この結果、電流密度を向上させることができる。
【0026】
次に、本実施の形態における半導体装置10の製造方法を説明する。図3に示すように、上記の意味のGaN基板1の上に、n型GaNドリフト層4/p型GaNバリア層6/n型GaNコンタクト層7、の積層体15を成長する。GaN基板1とn型GaNドリフト層4との間にGaN系バッファ層(図示せず)を挿入してもよい。
上記の層の形成は、MOCVD(有機金属化学気相成長)法などを用いるのがよい。たとえばMOCVD法で成長することで、結晶性の良好な積層体15を形成できる。GaN基板1の形成において、導電性基板上に窒化ガリウム膜をMOCVD法によって成長させる場合、ガリウム原料として、トリメチルガリウムを用いる。窒素原料としては高純度アンモニアを用いる。キャリアガスとしては純化水素を用いる。高純度アンモニアの純度は99.999%以上、純化水素の純度は99.999995%以上である。n型ドーパント(ドナー)のSi原料には水素ベースのシランを用い、p型ドーパント(アクセプタ)のMg原料にはシクロペンタジエニルマグネシウムを用いるのがよい。
導電性基板としては、直径2インチの導電性窒化ガリウム基板を用いる。1030℃、100Torrで、アンモニアおよび水素の雰囲気中で、基板クリーニングを実施する。その後、1050℃に昇温して、200Torr、V/III比=1500で窒化ガリウム層を成長させる。上記の導電性基板上のGaN層の形成は、GaN基板1の形成だけでなく、GaN基板1上の積層体15の成長においても共通する方法である。
上記の方法で、GaN基板1上に、n型GaN層ドリフト層4/p型GaNバリア層6/n型GaNコンタクト層7、の順に成長する。
【0027】
次に、図4に示すように、開口部28をRIE(反応性イオンエッチング)によって形成する。図5(a)および(b)に示すように、エピタキシャル層4,6,7の表面にレジストパターンM1を形成した後、RIEによって、レジストパターンM1をエッチングして後退させながら開口を広げて開口部28を設ける。このRIE工程において、開口部28の斜面、すなわち積層体15の端面は、イオン照射を受けて損傷される。損傷部では、ダングリンドボンド、格子欠陥の高密度領域などが発生し、その損傷部にRIE装置由来または特定できていない部分からの導電性不純物が到達して富化が生じる。この損傷部の発生は、ドレインリーク電流の増大をもたらすので、修復する必要がある。水素やアンモニアを所定レベル含むことで、このあと説明する再成長層27の成長時に、ダングリンドボンド等の修復、および不純物の除去や不活性化を得ることができる。
【0028】
次いで、レジストパターンM1を除去し、ウエハを洗浄した後、当該ウエハをMOCVD装置に導入して、図6に示すように、アンドープGaNからなる電子走行層22、およびアンドープAlGaNからなる電子供給層26を含む再成長層27を成長する。このアンドープGaN層22およびAlGaN層26の成長においては、(NH+H)雰囲気において熱クリーニングを行い、引き続き(NH+H)を導入しつつ有機金属原料を供給する。この再成長層27の形成前の熱クリーニング時または形成時に、上記の損傷部の修復、導電性不純物の除去やパッシベーション化を進行させる。
次いで、上記ウエハをMOCVD装置から取り出し、開口部の底部に開口部をもつレジストパターン(図示せず)を用いて、図7に示すように、底部絶縁膜37を成長させる。その後、再びフォトリソグラフィと電子ビーム蒸着法を用いて、図1に示すように、ソース電極Sをエピタキシャル層表面に、ドレイン電極DをGaN系基板1の裏面に形成する。
【0029】
<図1の半導体装置に対する変形例>
図8は、本発明の実施の形態の半導体装置10であり、実施の形態1の変形例である。この変形例では、図1の半導体装置と異なり、ゲート電極Gの下に、絶縁層9を配置する。
ゲート電極下に絶縁層を配置することで、ゲートに正電圧を印加したときのゲートリーク電流を抑制できるため、大電流動作がしやすくなる。また、しきい値電圧をより正方向にシフトできるため、ノーマリーオフを得やすくなる。さらに、底部絶縁膜37と絶縁層9とが積層されるので、ゲート電極Gとn型GaNドリフト層4との間の距離が大きくなり、さらに角部Kに接する部分のn型GaNドリフト層4における電界集中を緩和することができる。
絶縁層9の厚みは、0.05μm以上0.3μm以下程度とするのがよい。絶縁層9についても、底部絶縁膜37と同様に、Al、SiO、SiN、NiO、Scなどを用いることができる。
なお、絶縁層9は、底部絶縁膜37の下で、再成長層27の上に位置してもよい。
【0030】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における縦型GaN系FET(半導体装置)10の断面図である。GaN系積層体15が、n型GaNドリフト層4/p型GaNバリア層6/n型GaNコンタクト層7で形成され、開口部28が表層からn型GaNドリフト層4に届くように設けられる点などは、実施の形態1と共通する。
本実施の形態の半導体装置10の特徴は、次の点にある。
(1)開口部28の底部に底部絶縁膜37が設けられている。この点は、実施の形態1における図1の半導体装置または、その変形例である図8の半導体装置と同じである。
(2)開口部28の底部において再成長層が配置されず、再成長層27は、開口部28の壁面を伝って底部に当たった箇所で終端している。
上記の(2)の特徴は、実施の形態1の半導体装置との間に本質的な相違を生じるものではない。底部絶縁膜37は、絶縁膜9と協働して、開口部28の角部Kに接する部分のn型GaNドリフト層4と、最低電位保持部であるゲート電極Gとの間の距離を大きくする。この結果、実施の形態1と、同様に、n型GaNドリフト層4における角部Kの電界集中を緩和することができる。
絶縁層9がゲート電極下に位置することによる作用は、実施の形態1と同じである。すなわちゲート電極下でチャネル上に絶縁層を配置することで、ゲートに正電圧を印加したときのゲートリーク電流を抑制できるため、大電流動作がしやすくなる。また、しきい値電圧をより正方向にシフトできるため、ノーマリーオフを得やすくなる。
【0031】
図9における絶縁層9は、底部絶縁膜37の上を通っているが、底部絶縁膜37の下を通ることもできる。開口部28の底部における絶縁膜37,9の作用は、底部における積層順序に左右されない。
さらに、絶縁層9は必須ではなく、あれば上記の作用を得ることができるが、耐圧性能の向上等に限定すれば、なくてもよい。
【0032】
上記開示された本発明の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の半導体装置等によれば、開口部を有する縦型の半導体装置において、開口部の底部に限定して絶縁膜を配置することで、オフ時の耐圧性能を向上することができる。二次元電子ガスを開口部の壁面に沿って厚み方向に形成することで得られる低いオン抵抗と、上記高い体圧性能とを兼備するため、大電流のスイッチング素子に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 GaN基板、4 n型GaNドリフト層、 6 p型GaNバリア層、7 n型GaNコンタクト層、9 絶縁層、10 半導体装置(縦型GaN系FET)、12 ゲート配線、13 ゲートパッド、15 GaN系積層体、22 GaN電子走行層、26 AlGaN電子供給層、 27 再成長層、28 開口部、37 底部絶縁膜、D ドレイン電極、G ゲート電極、K 開口部の稜線または角部、M1 レジストパターン、S ソース電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が設けられたGaN系積層体を備える縦型の半導体装置であって、
前記GaN系積層体は、表層側へと順次、n型GaN系ドリフト層/p型GaN系バリア層/n型GaN系コンタクト層、を有し、前記開口部は表層から前記n型GaN系ドリフト層内にまで届いており、
前記開口部の壁面および底部を覆うように位置する、電子走行層および電子供給層を含む再成長層と、
前記再成長層、前記n型GaN系コンタクト層および前記p型GaN系バリア層に接するソース電極と、
前記開口部において前記再成長層上に位置するゲート電極と、
前記開口部の底部に限定されて前記ゲート電極の下に位置する底部絶縁膜とを備えることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
前記底部絶縁膜は、前記開口部の底部を覆う前記再成長層の上に位置することを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記再成長層は、前記開口部の壁面を覆って該開口部の底部を形成する前記n型GaN系ドリフト層で終端し、前記底部絶縁膜は、前記開口部の底部に位置する前記n型GaN系ドリフト層を覆うように位置することを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
開口部の、少なくとも壁面において、前記ゲート電極の下であって前記再成長層上に位置する絶縁層を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記再成長層が、前記開口部の壁面を覆って、該壁面と該開口部の底部とが交差する箇所で終端する構造において、前記絶縁膜が前記開口部の壁面から連続して前記底部絶縁膜を兼ねて、前記開口部の底部に位置する前記n型GaN系ドリフト層を覆うように位置することを特徴とする、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
縦型のGaN系半導体装置の製造方法であって、
n型GaN系ドリフト層上にp型GaN系バリア層を形成する工程と、
前記p型GaN系バリア層上にn型GaN系コンタクト層を形成する工程と、
エッチングにより、表層から前記n型GaN系ドリフト層内に届く開口部を形成する工程と、
前記開口部の壁面および底部を覆うように、電子走行層および電子供給層を含む再成長層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記開口部の底部に限定して底部絶縁膜を形成する工程と、
前記底部絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを備えることを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記再成長層の成長工程において、前記開口部の壁面に該開口部の底部を形成している前記n型GaN系ドリフト層にまで当該再成長層を形成するか、または開口部の底部に位置する前記再成長層をエッチングによって除き、次いで、前記底部絶縁膜の製造工程において前記開口部の底部に露出する前記n型GaN系ドリフト層を覆うように前記底部絶縁膜を形成することを特徴とする、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記再成長層の形成工程では、該再成長層を前記開口部の壁面および底部を覆うように形成し、前記底部絶縁膜の形成工程において前記再成長層上に当該底部絶縁膜を形成することを特徴とする、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ゲート電極形成工程よりも前、前記底部絶縁膜の形成工程の後または前に、少なくとも前記開口部の壁面において前記ゲート電極の下に位置するように、絶縁層を形成する工程を備えることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−109304(P2012−109304A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255007(P2010−255007)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】