半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置
【課題】シミュレータの解析領域を縮小した場合であっても計算結果を保証し得る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびかかるシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置を提供する。
【解決手段】
半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する。少なくとも1つのpnジャンクションを含む半導体装置の一部である対象領域について、一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの対象領域内部における一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する。空乏層のエッジ位置が対象領域内の所定位置に達したときの対象領域への印加電圧を半導体装置の耐圧と推定する。
【解決手段】
半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する。少なくとも1つのpnジャンクションを含む半導体装置の一部である対象領域について、一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの対象領域内部における一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する。空乏層のエッジ位置が対象領域内の所定位置に達したときの対象領域への印加電圧を半導体装置の耐圧と推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスシミュレータを使用した半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスシミュレータは、FET等の半導体素子の断面構造もしくは三次元構造を入力し、そのデバイスの動作を確認するためのシミュレーション装置である。計算内容は、シミュレータにより異なるが、DC解析や小信号AC解析、ハーモニックバランス法を使用した大信号解析、過渡解析等が可能である。計算結果は、端子を流れる電流やSパラメータ等の実測において確認できる結果のみでなく、各メッシュ点の電位(ポテンシャル)、電子密度、ホール密度等のパラメータの確認も可能である。デバイスシミュレータは、素子の製造工程を模擬的に再現するプロセスシミュレータとの統合も可能であり、これはTCAD(Technology Computer Aided Design)と呼ばれている。TCADを用いることにより、短時間で製造プロセスに基づく素子の電気的特性を予測することができる。すなわち、従来の試行錯誤的な方法で素子製作から電気的特性の評価までに要する期間に比べると、圧倒的に短い時間で素子特性を予測することができる。
【0003】
特許文献1には、レイアウト図よりデバイスシミュレーションを行なう部分を抽出し、抽出部分の構造に基づいてデバイスシミュレーションを行なうと共に、抽出部分を一つの素子に見立てて回路全体の集中定数回路を作成し、回路シミュレーションを行ない、抽出部分に供給される電圧及び電流を算出し、算出された電圧及び電流に基づいて抽出部分で発生する熱エネルギーを求め、回路の耐熱エネルギーと比較して回路構成の良否を評価する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−260882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デバイスシミュレータでは、半導体デバイスの全領域を小区間に分割し、解析対象である半導体デバイスの構造やそのデバイス中の不純物濃度分布等を考慮し、半導体デバイスの電気的特性をシミュレーションしている。例えば、図1に示すように、絶縁分離領域10で隔てられた2つのFET1およびFET2の素子間の耐圧をデバイスシミュレータで計算しようとする場合、解析領域が広く、計算点が多くなるため計算時間が増大してしまうといった問題があった。計算時間を短縮するためには、解析領域を小さくすることが有効であるが、解析領域を小さくした場合でも、計算結果が適正なものであるかどうかは不明である。すなわち、解析領域を小さくした場合には、その結果を保証するための何らかの措置が必要となる。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、デバイスシミュレータを用いて半導体素子間の耐圧を計算する場合において、シミュレータの解析領域を縮小した場合であっても計算結果を保証し得る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびかかるシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、等電位線についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく等電位線の位置を算出する多次元シミュレーションステップと、前記等電位線の位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造における空乏層に関する定義値と不純物濃度との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置について設定されるべき空乏層の定義値を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置の内部電位についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における電位を算出する多次元シミュレーションステップと、前記対象領域内部の最低電位が前記一次元シミュレーション値を超えたときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造の不純物濃度と、前記接合構造がパンチスルーに至る際の前記接合構造内部の最低電位との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置がパンチスルーに至る際の前記半導体装置内部の最低電位を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のシミュレーション装置は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧を求める半導体装置のシミュレーション装置であって、前記半導体装置の構造の入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段に入力された前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造を生成し、前記接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を算出する一次元シミュレーション手段と、多次元シミュレーションの対象とすべき前記半導体装置の領域を指定する対象領域指定手段と、前記対象領域指定手段によって指定された対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域をバイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーション手段と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置によれば、計算時間を大幅に短縮しながらも計算結果の信頼性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シミュレーションの対象となる半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】シミュレーションの対象となる半導体装置の構造を示す断面図である。
【図3】シミュレーション結果である半導体装置のI−V特性図である。
【図4】本発明の実施例1に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る耐圧シミュレーション方法に用いられるnpn構造を示す図である。
【図6】空乏層が表示されたnpn構造を示す図である。
【図7】電圧印加に伴ってnpn構造上に拡がる空乏層エッジの様子を示す図である。
【図8】図8(a)は、計算対象となる部分が明示された半導体装置の断面図である。図8(b)は、対象領域を逆バイアスしたときの空乏層の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施例である半導体装置のシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例2に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図11】電圧印加に伴ってnpn構造上を移動する等電位線の様子を示す図である。
【図12】本発明の実施例3に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図13】アクセプタ濃度Naと空乏層の定義を示す定数Cとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例4に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図15】アクセプタ濃度Naと閾地電圧Vpとの関係を示すグラフである。
【図16】多次元シミュレーションの対象となる対象領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、以下に示す図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【0015】
(実施例1)
図2に、本発明に係る耐圧シミュレーション方法を用いて耐圧を求めようとする半導体装置1の構造例を示す。半導体装置1は、STI(Shallow Trench Isolation)等の素子分離領域10によって絶縁分離されたnチャンネルMOS型のFET1とFET2とを含んでいる。FET1およびFET2は、それぞれn型半導体からなるドレイン領域12a、12b、n型半導体からなるソース領域14a、14b、およびゲート電極等を含んでいる。
【0016】
従来、かかる構造の半導体装置において、FET1−FET2間の絶縁耐圧をデバイスシミュレータによって計算しようとする場合、半導体装置1の断面構造又は三次元構造をデバイスシミュレータに入力し、FET1のソース端子S1、ゲート端子G1、FET2のソース端子S2、ゲート端子G2、およびバックゲート端子Bに接地電位を印加し、FET1のドレイン端子D1およびFET2のドレイン端子D2に電圧をスイープさせながら正電圧を印加してpn接合を逆バイアスしてV−I特性を取得する。ドレイン端子D1およびD2への印加電圧の上昇に伴って、ドレイン領域12a、12bからそれぞれ空乏層13a、13bが拡がる。図2に示すように、空乏層13aおよび13bが絶縁分離領域10の底部を超えて繋がると、急激に電流が流れ始めブレークダウンに至る。
【0017】
図3は、かかるデバイスシミュレーションを行った結果得られるFET1とFET2との間の絶縁耐圧を示すV−I特性である。このように、従来のシミュレーション方法においては、FET1およびFET2を含む半導体装置1の全体を計算の対象としていたために計算結果が得られるまでに膨大な時間を要していた。また、計算時間を短縮するために解析領域を小さくした場合には、図3に示すV−I特性と同等の結果が得られない場合があった。
【0018】
本発明は、計算結果を保証しつつ計算時間の短縮を図ろうとするものである。図4は、本発明に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して本発明に係るシミュレーション方法について説明する。
【0019】
はじめに、図5に示すように、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造2をTCADに入力する。すなわち、npn構造2のn型領域20aおよび20bの不純物濃度は、半導体装置1のドレイン領域12aおよび12b(又はソース領域14aおよび14b)と同一の不純物濃度に設定され、npn構造2のp型領域20cの不純物濃度は、半導体装置1のp基板11と同一の不純物濃度に設定される。
【0020】
次に、入力したnpn構造2に対してI−V特性を計算する。具体的には、図6に示すように、npn構造2のn型領域20aおよび20bにそれぞれ端子を設け、一方のn型領域20aを接地電圧とし、他方のn型領域20bに電圧をスイープさせながら正電圧を印加し、このときの電流値を読取る。このようにしてnpn構造2のI−V特性を求めることにより、npn構造2のパンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を取得する(ステップS1)。かかるI−V特性の計算は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0021】
次に、TCADに空乏層の定義値を暫定的に入力して、npn構造2上に空乏層を表示させる(ステップS2)。空乏層の定義値とは、シミュレータ上で空乏層を表示させるために用いられる空乏層に関するシミュレーション値をいう。ここでは、空乏層の定義の初期設定として、n型領域20aおよび20bについては、ドナー濃度Ndと電子濃度nの比n/Ndが例えば0.5となる位置を空乏層のエッジとして定義する。この場合、空乏層の定義値は0.5となる。p型領域20cについては、アクセプタ濃度Naと正孔濃度pの比p/Naが例えば0.5となる位置を空乏層のエッジとして定義する。この場合、空乏層の定義値は0.5となる。このような空乏層の定義をTCAD入力することで、図6に示すように、npn構造2上には、2つのpnジャンクションの近傍に空乏層21、22のエッジが表示されることとなる。
【0022】
次に、ステップS1で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧に至る前後の電圧をnpn構造2に印加しつつ空乏層の状態を確認し、ブレークダウン電圧と空乏層の状態が整合しているかどうかを判定する(ステップS3)。すなわち、npn構造2のブレークダウンは、図7に示すように、電圧印加に伴って正電圧を印加している側のpnジャンクションから伸びた空乏層エッジ22aが、空乏層21まで到達し、空乏層21と空乏層22が繋がったときに急激に電流が増加するパンチスルー現象に基づいて起る。そこで、本ステップにおいては、ステップS1で求めたnpn構造2のブレークダウン電圧以上の電圧をnpn構造2に印加したときに空乏層21と空乏層22とが結合しいていない場合、又は、ステップS1で求めたnpn構造2のブレークダウン電圧未満の電圧をnpn構造2に印加したときに空乏層21と空乏層22とが既に結合している場合には、ブレークダウン電圧と空乏層の状態が整合していないものと判断する。
【0023】
次に、ステップS3においてnpn構造2のブレークダウン電圧と、空乏層21、22の状態が整合していないものと判断された場合には、ステップS2において設定した空乏層の定義値を変更する。
【0024】
具体的には、npn構造2にステップS1で得られた自身のブレークダウン電圧以上の電圧を印加しているにもかかわらず、空乏層21と空乏層22とが結合していない場合には(ステップS4)、n/Ndおよびp/Naの値を増加させる方向に調整し、空乏層の定義値を再設定する(ステップS5)。反対に、npn構造2に印加された電圧がステップS1で求めた自身のブレークダウン電圧に満たないにもかかわらず、空乏層21と空乏層22とが結合してしまっている場合には(ステップS6)、n/Ndおよびp/Naの値を減少させる方向に調整し、空乏層の定義値を再設定する(ステップS7)。そして、ステップS1で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧と、空乏層21、22の状態が整合するまでステップS3からステップS7までの処理を繰り返し行う。かかるステップS2からステップ7までの処理は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。このようにして得られた空乏層の定義値は、一次元シミュレーション値として以降のステップで行われる多次元シミュレーションによる解析に利用される。
【0025】
次に、ステップS7までの処理を経て得られた空乏層の定義値を一次元シミュレーション値として利用して、半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを抽出して解析対象領域を縮小した上で計算を行う。本実施例においては、図8(a)に示すように、FET1のドレイン領域12aと素子分離領域10とを含む破線で囲む部分(以下、この領域を対象領域30と称する)を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS8)。
【0026】
次に、ステップS7までの処理を経て取得した空乏層の定義をTCADに入力する(ステップS9)。
【0027】
次に、図8(b)に示すように、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることにより対象領域30内のpnジャンクションを逆バイアスし、このときの先のステップで得られた空乏層の定義に基づき定義された空乏層13aのエッジ位置を算出する(ステップS10)。尚、かかる空乏層13aのエッジ位置を算出する処理は、二次元又は三次元シミュレーションによるものであるが、解析領域が縮小されているので、半導体装置1の全体構造を計算対象とする場合と比較して計算時間を大幅に短縮することができる。
【0028】
次に、対象領域30に接続されたD1−B端子間の印加電圧の増加とともに伸びる空乏層13aのエッジが素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの電圧値を読み取る(ステップS11)。このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧であるとみなすことができる。
【0029】
すなわち、図2に示すように、半導体装置1は、2つのドレイン領域12aおよび12bの各々のエッジから伸びた空乏層13a、13bが素子分離領域10の底部の中央位置において結合したときにブレークする。従って、一方のドレイン領域12aから伸びた空乏層13aが素子分離領域10の底部の中央位置に到達したときの印加電圧を素子間絶縁耐圧とみなすことができる。ここで、ステップS7まで処理によって半導体装置1に対して空乏層は適性に定義され、空乏層の拡がりと耐圧の関係は、整合がとれているので、このようにして推定された半導体装置1の素子間絶縁耐圧は適正なものとなる。
【0030】
図9は、上記した半導体装置の耐圧シミュレーション方法を実行する半導体装置のシミュレーション装置100の構成を示すブロック図である。入力部101は、耐圧を求めようとする半導体装置1の構造の入力を受け付ける。一次元シミュレーション部102は、入力部101に入力された半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有する図5に示す如きnpn構造を生成し、生成したnpn構造について一次元シミュレーションを行って、半導体装置1における空乏層についての一次元シミュレーション値を算出する。対象領域指定部103は、外部入力に基づいて多次元シミュレーション部104による多次元シミュレーションの対象とすべき半導体装置1の領域を指定する。多次元シミュレーション部104は、対象領域指定部103によって指定された対象領域について一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、対象領域をバイアスしたときの対象領域内部における一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する。耐圧推定部105は、空乏層のエッジ位置が対象領域内の所定位置に達したときの対象領域への印加電圧を半導体装置1の耐圧として出力する。
【0031】
次に、上記した構成を有するシミュレーション装置100の動作について説明する。入力部101は、ユーザインターフェースを介して耐圧を求めようとする半導体装置1の断面構造の入力がなされると、装置内部に入力構造を取り込む。入力される半導体装置1の断面構造には、半導体装置1に含まれる各領域の形状、寸法、組成、不純物濃度等の情報が含まれている。
【0032】
一次元シミュレーション部102は、入力された半導体装置1の断面構造に基づいて、半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造2を生成する。すなわち、npn構造2のn型領域20aおよび20bの不純物濃度は、半導体装置1のドレイン領域12aおよび12b(又はソース領域14aおよび14b)と同一の不純物濃度に設定され、npn構造2のp型領域20cの不純物濃度は、半導体装置1のp基板11と同一の不純物濃度に設定される。
【0033】
続いて、一次元シミュレーション部102は、生成したnpn構造2に対して一次元シミュレーションを行って、I−V特性を計算し、パンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を算出する。続いて、一次元シミュレーション部102は、上記ブレークダウン電圧とnpn構造内に形成される空乏層の状態が整合するように空乏層の定義値を算出する。すなわち、一次元シミュレーション部102は、npn構造2に印加された電圧が上記ブレークダウン電圧に到達したときに、npn構造2内の各pnジャンクション近傍に形成される空乏層同士が結合することとなるような空乏層の定義値を算出する。算出された空乏層の定義値は、一次元シミュレーション値として多次元シミュレーション部104に供給される。
【0034】
対象領域指定部103は、外部入力に基づいて、入力部101より入力された半導体装置1の構造のうち、多次元シミュレーション部104による多次元シミュレーションの対象とすべき領域を指定する。対象領域指定部103は、外部入力に基づいて、例えば、図8(a)に示すように、FET1のドレイン領域12aと素子分離領域10とを含む破線で囲む領域を対象領域30として指定する。
【0035】
多次元シミュレーション部104は、対象領域指定部103によって指定された対象領域について、一次元シミュレーション部によって算出された空乏層に関する一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行う。すなわち、多次元シミュレーション部104は、図8(b)に示すように、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることにより対象領域30内のpnジャンクションを逆バイアスし、このときの一次元シミュレーション部102によって算出された空乏層の定義値に基づく空乏層13aのエッジ位置を算出する。空乏層13aのエッジ位置は、対象領域30の断面構造とともに表示モニタ(図示せず)上に図示されるようにしてもよい。
【0036】
耐圧推定部105は、対象領域30に印加された電圧の増加とともに伸びる空乏層13aのエッジが素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの電圧値を読み取り、このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧として出力する。
【0037】
このように、本発明に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置によれば、一次元シミュレーションによって耐圧を求めようとする半導体装置の空乏層に関する一次元シミュレーション値を取得し、該半導体装置の一部分のみを多次元シミュレーションによる計算対象として抽出し、取得した一次元シミュレーション値を用いて対象領域について多次元シミュレーションを行って、対象領域に含まれるpnジャンクションに逆バイアスを加えたときの当該一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出し、該空乏層のエッジ位置が対象領域内の所定位置に達したときの印加電圧を該半導体装置の耐圧と推定することとしたので、多次元シミュレーションの計算対象領域が縮小され、計算時間を大幅に短縮しながらも計算結果の信頼性を確保することが可能となる。
【0038】
(実施例2)
上記した実施例1においては、一次元シミュレーション値として空乏層の定義値を取得し、対象領域30内における当該一次元シミュレーション値に基づき定義された空乏層のエッジの位置から対象とする半導体装置の素子間絶縁耐圧を推定することとした。本実施例においては、一次元シミュレーション値として等電位線の電位を求め、対象領域30内における当該一次元シミュレーション値として求めた電位を示す等電位線の位置から対象とする半導体装置の素子間絶縁耐圧を推定することとしている。つまり、実施例1では空乏層の分布を耐圧の指標としているのに対して実施例2では特定の電位を示す等電位線の分布を耐圧の指標としているのである。
【0039】
図10は、本発明の実施例2に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
【0040】
はじめに、実施例1と同様に、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるp型領域およびn型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造2をTCADに入力し、npn構造2のI−V特性を計算する。そして、得られたnpn構造2のI−V特性から、npn構造2のパンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を取得する(ステップS21)。かかるI−V特性の計算は、一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0041】
次に、ステップS21で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧に至る前後の電圧をnpn構造2に印加し、このときの等電位線をnpn構造2上に表示させる(ステップS22)。例えば、初期設定として、0V電位の等電位線をnpn構造2上に表示させる。等電位線は、npn構造2の2つのpnジャンクションの近傍にそれぞれ現れる。図11に示すように、npn構造2に対する印加電圧の増加に伴って、正電圧を印加した側のpnジャンクション近傍に位置していた等電位線40aは、接地電位を印加した側の他方のpnジャンクションの方向に向かって移動する。
【0042】
続いて、npn構造2に印加した電圧がステップS21で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧に到達したときに等電位線40aが等電位線40bと繋がることとなるか否かを判定する(ステップS23)。すなわち、npn構造2に対する印加電圧が自身のブレークダウン電圧に達した場合、高電位側のpnジャンクションから低電位側のpnジャンクションに向けて連続的に電位が低下するような電位勾配が形成される。従って、各pnジャンクション近傍にそれぞれ分離した存在していたある電位を示す等電位線は、ブレークダウン電圧印加時には繋がることとなる。
【0043】
npn構造2にステップS21で得られた自身のブレークダウン電圧以上の電圧を印加しているにもかかわらず、等電位線同士の結合が生じていない場合には(ステップS24)、表示すべき等電位線の電位を減少させる方向に調整する(ステップS25)。反対に、npn構造2に印加された電圧がステップS21で得られた自身のブレークダウン電圧に満たないにもかかわらず、等電位線同士の結合が生じてしまっている場合には(ステップS26)、表示すべき等電位線の電位を増加させる方向に調整する(ステップS27)。そして、ステップS21で取得した自身のブレークダウン電圧印加時に等電位線同士の結合が生じることとなるまでステップ23からステップS27までの処理を繰り返し行う。このようにして得られた電位は、一次元シミュレーション値として以降のステップで行われる多次元シミュレーションによる解析に利用される。
【0044】
ステップS22からステップ27までの処理は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0045】
次に、ステップS27までの処理を経て得られた電位を一次元シミュレーション値として利用して、半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを計算対象として指定して解析領域を縮小した上で計算を行う。実施例1の場合と同様、図8(a)において破線で囲まれた対象領域30を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS28)。
【0046】
次に、ステップS27までの処理を経て取得した電位を示す等電位線を対象領域30上に表示させながら対象領域30内のpnジャンクションに逆バイアスを加える。すなわち、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることによりpnジャンクションを逆バイアスし、このときの一次元シミュレーションにより取得した電位を示す等電位線の位置を算出する(ステップS29)。尚、対象領域30に対するシミュレーションは、二次元又は三次元シミュレーションであるが、解析領域が縮小されているので、半導体装置1の全体構造を計算対象とする場合と比較して計算時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
次に、対象領域30に接続されたのD1−B端子間の印加電圧の増加とともに移動する等電位線が素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの印加電圧の値を読み取る(ステップS30)。このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧であるとみなすことができる。
【0048】
このように、一次元シミュレーションによって耐圧を求めようとする半導体装置の等電位線に関する一次元シミュレーション値を取得し、該半導体装置の一部分のみを多次元シミュレーションによる計算対象として抽出し、取得した一次元シミュレーション値を用いて対象領域について多次元シミュレーションを行って、対象領域に含まれるpnジャンクションに逆バイアスを加えたときの当該一次元シミュレーション値に基づく等電位線を算出し、該等電位線の位置が対象領域内の所定位置に達したときの印加電圧を該半導体装置の耐圧と推定することとしたので、多次元シミュレーションの計算対象領域が縮小され、計算時間を大幅に短縮しながらも計算結果の信頼性を確保することが可能となる。
【0049】
尚、上記各実施例においては、npn構造2を用いて一次元シミュレーションを行う場合を例に説明したが、これに代えて耐圧を求めようとする半導体装置1のn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するpnp構造等の他の接合構造を用いて一次元シミュレーションを行うこととしてもよい。
【0050】
(実施例3)
以下本発明の実施例3について説明する。実施例1においては、TCADを用いてnpn構造2に対して、空乏層の定義を暫定的に設定し、ブレークダウン電圧と空乏層の状態が整合するまで空乏層の定義の設定の変更を繰り返し、適正な空乏層の定義を得るというものであった(ステップS1〜S7)。
【0051】
実施例3においては、空乏層の定義を得るプロセスが実施例1の場合と異なる。一般的に空乏層の定義は、n型領域においてn/Nd=C、p型領域においてp/Na=Cで与えることができる。ここで、nは電子濃度、Ndはドナー濃度、pは正孔濃度、Naはアクセプタ濃度、Cは定数である。これは、半導体装置内部のn型領域において、電子濃度nをドナー濃度Ndで除算した値がCとなる位置、p型領域において正孔濃度pをアクセプタ濃度Naで除算した値がCとなる位置がそれぞれ空乏層のエッジであることを意味している。かかる空乏層の定義において、例えばp型領域のアクセプタ濃度Naが変化した場合には、定数Cの値は、アクセプタ濃度Naとの間である相関をもって変化する。つまり、アクセプタ濃度Na1において空乏層はp/Na=C1で定義されるが、アクセプタ濃度がNa2に変化した場合にはその変化に伴って、空乏層はp/Na=C2で定義されることとなる。
【0052】
実施例3では、予め空乏層の定義値である定数Cの値とアクセプタ濃度Naまたはドナー濃度Ndとの間の相関を取得しておくことにより、耐圧シミュレーションの対象となる半導体装置の空乏層の定義を得る。以下、その詳細について、図12に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0053】
はじめに、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)を任意に設定し、図4に示すフローチャートに示すステップS1からステップS7に示された処理に準じて当該不純物濃度における空乏層の定義値である定数Cを得る(ステップS31)。すなわち、本ステップでは、TCADに任意の不純物濃度を有するnpn構造2をTCADに入力し、これのI−V特性を取得する。次に、暫定的に空乏層の定義を入力し、このnpn構造上に空乏層のエッジを表示させながら、空乏層の状態とI−V特性から得られたブレークダウン電圧とが整合するように空乏層の定義を合わせ込む。そして、I−V特性と整合するときの定数Cを取得する。
【0054】
次に、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)の設定を変えて、ステップS31と同様の処理によって空乏層の定義値である定数Cを得る(ステップS32)。つまり、npn構造2の不純物濃度(ドナー濃度Ndおよびアクセプタ濃度Na)を振って定数Cを取得するのである。尚、npn構造の不純物濃度を変化させる範囲および変化させる回数(すなわち、定数Cを取得するポイントの数)は任意であるが、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域の不純物濃度がその範囲に含まれることとなるように設定することが好ましい。本実施例においては、アクセプタ濃度Naを3条件(1.0×1016/cm3、1.0×1017/cm3、1.0×1018/cm3)設定し、ドナー濃度Ndを1×1017/cm3 〜1×1020の範囲で変化させ、それぞれの場合について空乏層の定義値(すなわち定数C)を取得した。かかるステップS31およびステップS32の処理は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0055】
次に、ステップS31およびS32で取得した各不純物濃度における空乏層の定義値からアクセプタ濃度Naと、定数Cとの関係式を取得する(ステップS33)。図13は、アクセプタ濃度Naを横軸にとり、定数Cの値を縦軸にとり、ステップS31およびステップS32で取得した定数Cの各々をプロットしたグラフである。図13において横軸の目盛りは対数目盛となっている。図13に示すように、アクセプタ濃度Naの上昇に伴って、定数Cの値が上昇していることが確認できる。これは、p型領域20c内のアクセプタ濃度が変化すると、その変化に伴って、p型領域20c内における空乏層の定義が変化することを意味している。このように、アクセプタ濃度Naと空乏層の定義値である定数Cは、ある一定の関係を有していることから、定数Cをアクセプタ濃度Naの関数として表すことができる。アクセプタ濃度Naと定数Cとの関係は、例えば図13に示すグラフに対して近似線を引き、この近似線を数式化することにより取得することが可能である。図13には、グラフ上の各プロットに基づいて描かれた近似線が表示されている。かかる近似線より、空乏層の定義を示す定数Cのアクセプタ濃度Naに対する関数は、
C=0.058loge(Na)−1.9427・・・(1)
と求めることができる。尚、定数Cとアクセプタ濃度Naの関係式は、グラフ上の各プロットからこれを算出する計算ソフト等を用いて求めることも可能である。
【0056】
次に、取得した定数Cとアクセプタ濃度Naとの関係式から、耐圧を求めようとする半導体装置1の空乏層の定義値を得る(ステップS34)。すなわち、耐圧を求めようとする半導体装置1のp基板11のアクセプタ濃度Naを数式(1)に代入することにより、半導体装置1のp基板11に対して設定すべき空乏層の定義値を得る。例えば、p基板11のアクセプタ濃度Naが1.5×1015/cm3である場合、上記した数式(1)にアクセプタ濃度Naを代入してC=0.08を得る。
【0057】
次に、得られた半導体装置1の空乏層の定義値を一次元シミュレーション値として利用して、半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを抽出して解析対象領域を縮小した上で計算を行う。本実施例においては、図8(a)に示すように、FET1のドレイン領域12aと素子分離領域10とを含む破線で囲む部分(対象領域30)を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS35)。
【0058】
次に、ステップS34にて取得したp基板11の空乏層の定義をTCADに入力する(ステップS36)。上記の如く、p/Na=0.08をp基板11における空乏層の定義としてTCADに入力する。
【0059】
次に、図8(b)に示すように、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることにより対象領域30内のpnジャンクションを逆バイアスし、このときのステップS34で得られた空乏層の定義値に基づき定義された空乏層13aのエッジ位置を算出する(ステップS37)。
【0060】
次に、対象領域30に接続されたD1−B端子間の印加電圧の増加とともに伸びる空乏層13aのエッジが素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの電圧値を読み取る(ステップS38)。このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧であるとみなすことができる。
【0061】
すなわち、図2に示すように、半導体装置1は、2つのドレイン領域12aおよび12bの各々のエッジから伸びた空乏層13a、13bが素子分離領域10の底部の中央位置において結合したときにブレークする。従って、一方のドレイン領域12aから伸びた空乏層13aが素子分離領域10の底部の中央位置に到達したときの印加電圧を素子間絶縁耐圧とみなすことができる。以上の各処理を経て半導体装置1の耐圧を求めることができる。
【0062】
数式(1)に示す関係式を1回取得しておけば、次回からは耐圧を求めようとする半導体装置1のp基板11の不純物濃度が異なる場合でも、数式(1)からすぐに空乏層の定義値を得ることが可能である。つまり、上記したステップS31〜S33までの処理は不要となる。
【0063】
このように、実施例1においては、耐圧を求めようとする半導体装置1における空乏層の定義値を得るために、npn構造2を用いた1次元シミュレーションを行うことを要したが(すなわち、ステップS1からS7までの処理を行うことを要したが)、本実施例によれば、かかる処理を行うことなく、空乏層の定義値を示す定数Cとアクセプタ濃度Naとの関係式を予め用意しておくことにより容易かつ迅速に、耐圧を求めようとする半導体装置1における空乏層の定義値を得ることができる。これにより、耐圧シミュレーションをより効率よく行うことが可能となる。尚、上記した実施例においては、p基板11を有する半導体装置1をシミュレーションの対象としたが、n基板を有する半導体装置に対しても同様に耐圧シミュレーションを行うことが可能である。この場合、npn構造2に替えてpnp構造を用いて定数Cとドナー濃度Ndとの関係式を求めておき、これに基づいて基板(n型基板)内における空乏層の定義を取得すればよい。
【0064】
(実施例4)
以下、本発明の実施例4について説明する。実施例1では半導体装置内部における空乏層の分布を耐圧の指標とし、実施例2では特定の電位の等電位線の分布を耐圧の指標とした。実施例4では、半導体装置1の基板電位を耐圧の指標とする。以下、本実施例に係る耐圧シミュレーション方法の詳細について図14に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0065】
はじめに、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)を任意に設定し、npn構造2のV−I特性からブレークダウン電圧を得る。具体的には、TCADを用いて、図6に示すように、npn構造2のn型領域20aおよび20bにそれぞれ端子を設け、一方のn型領域20aを接地電圧とし、他方のn型領域20bに電圧をスイープさせながら正電圧を印加し、このときの電流値を読取る。このようにしてnpn構造2のI−V特性を求めることにより、npn構造2のパンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を取得する。次に、npn構造2がブレークダウンしたときの(すなわちパンチスルーに至ったときの)p型領域20c内の最低電位(以下この電圧を閾値電圧Vpと称する)を取得する(ステップS41)。npn構造2がパンチスルーに至ったとき、高電位側のpnジャンクションから低電位側のpnジャンクションに向けて連続的に電位が低下するような電位勾配が形成される。故に、npn構造2がパンチスルーに至った後、更に印加電圧を増加するとp型領域20c内の最低電位は印加電圧に伴って上昇することとなる。従って、p型領域20c内の最低電位をモニタし、閾値電圧Vpと比較することにより、npn構造がブレークダウンしているかどうかを判別することが可能となる。
【0066】
次に、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)の設定を変更し、ステップS41と同様の手順にて閾値電圧Vpを取得する(ステップS42)。尚、npn構造の不純物濃度を変化させる範囲および変化させる回数(閾値電圧Vpを取得するポイントの数)は任意であるが、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域の不純物濃度がその範囲に含まれることとなるように設定することが好ましい。本実施例においては、アクセプタ濃度Naを3条件(1.0×1016/cm3、1.0×1017/cm3、1.0×1018/cm3)設定し、ドナー濃度Ndを1×1017/cm3 〜1×1020の範囲で変化させ、それぞれの場合について閾値電圧Vpを取得した。
【0067】
次に、ステップS41およびS42で取得したデータに基づいて、閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naとの関係式を取得する(ステップS43)。図15は、アクセプタ濃度Naを横軸にとり、p型領域20cの電位(基板電位)を縦軸にとり、ステップS41およびステップS42で取得した閾値電圧Vpの各々をプロットしたグラフである。図15において横軸の目盛りは対数目盛となっている。図15に示すように、アクセプタ濃度Naの上昇に伴って、閾値電圧Vpが上昇していることが確認できる。このように、アクセプタ濃度Naと閾値電圧Vpは、ある一定の関係を有していることから、閾値電圧Vpをアクセプタ濃度Naの関数として表すことができる。アクセプタ濃度Naと閾値電圧Vpとの関係は、例えば図15に示すグラフに対して近似線を引き、この近似線を数式化することにより取得することが可能である。図15には、グラフ上の各プロットに基づいて描かれた近似線が表示されている。かかる近似線より、閾値電圧Vpのアクセプタ濃度Naに対する関数は、
Vp=0.0185loge(Na)−0.0807・・・(2)
と求めることができる。このようにして得られたグラフにおいて、近似線よりも上の領域はパンチスルーが発生する領域であり、近似線よりも下の領域はパンチスルーが発生しない領域である。尚、閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naの関係式は、グラフ上の各プロットからこれを算出する計算ソフト等を用いて求めることも可能である。
【0068】
次に、取得した閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naとの関係式を用いて半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを抽出して解析対象領域を縮小した上で計算を行う。本実施例においては、図16に示すように、FET1のドレイン領域12aとソース領域14aおよびp基板11とを含む対象領域31を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS44)。
【0069】
次に、p基板11のアクセプタ濃度Naからp基板11内においてパンチスルーが発生することとなる閾値電圧Vpを式(2)から求める(ステップS45)。具体的には、p基板11のアクセプタ濃度Naは、例えば1.5×1015/cm3であり、上記した数式(2)にアクセプタ濃度Naを代入して閾値電圧Vp=−0.22Vを得る。つまり、対象領域31のソース−ドレイン間に電圧を印加した場合において、p基板11内の最低電位が−0.22Vに達したときにソース−ドレイン間がブレークする。
【0070】
次に、図16に示すように、FET1のソース端子S1に接地電位に固定し、ドレイン端子D1にスイープさせながら正電圧を加え、このときのp基板11内の最低電位をモニタする(ステップS46)。そして、そのモニタ値がステップS45において求めた閾値電圧Vp=−0.22Vに達したときの印加電圧をFET1のソース−ドレイン間耐圧として得る(ステップS47)。以上の各処理を経て半導体装置1の耐圧を求めることができる。尚、本実施例では、nチャンネルMOSFETを耐圧シミュレーションの対象としたため、npn構造を用いて最低電位Vpを取得した。pチャンネルMOSFETを耐圧シミュレーションの対象とする場合には、pnp構造を用いて上記した手順に準じてn型領域内における最低電位Vpとドナー濃度Ndとの関係式を求めればよい。尚、この場合、pnp構造の最低電位Vpを求める際にpnp構造に印加する電圧は負電圧となる。
【0071】
このように本実施例の耐圧シミュレーション方法によれば、閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naまたはドナー濃度Ndとの関係式を予め取得しておくことにより、閾値電圧Vpを指標とした耐圧シミュレーションを行うことが可能となる。本実施例では、対象領域内の電位を耐圧の指標としているので、多次元シミュレーションを行う際に空乏層に関する計算が不要である。従って、空乏層を耐圧の指標とする実施例1および実施例3に係る方法に比べより短時間でシミュレーション結果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 半導体装置
2 npn構造
10 素子分離領域
11 p基板
12a 12b ドレイン領域
13a 13b 空乏層
14a 14b ソース領域
21 22 空乏層
22a 空乏層エッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスシミュレータを使用した半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスシミュレータは、FET等の半導体素子の断面構造もしくは三次元構造を入力し、そのデバイスの動作を確認するためのシミュレーション装置である。計算内容は、シミュレータにより異なるが、DC解析や小信号AC解析、ハーモニックバランス法を使用した大信号解析、過渡解析等が可能である。計算結果は、端子を流れる電流やSパラメータ等の実測において確認できる結果のみでなく、各メッシュ点の電位(ポテンシャル)、電子密度、ホール密度等のパラメータの確認も可能である。デバイスシミュレータは、素子の製造工程を模擬的に再現するプロセスシミュレータとの統合も可能であり、これはTCAD(Technology Computer Aided Design)と呼ばれている。TCADを用いることにより、短時間で製造プロセスに基づく素子の電気的特性を予測することができる。すなわち、従来の試行錯誤的な方法で素子製作から電気的特性の評価までに要する期間に比べると、圧倒的に短い時間で素子特性を予測することができる。
【0003】
特許文献1には、レイアウト図よりデバイスシミュレーションを行なう部分を抽出し、抽出部分の構造に基づいてデバイスシミュレーションを行なうと共に、抽出部分を一つの素子に見立てて回路全体の集中定数回路を作成し、回路シミュレーションを行ない、抽出部分に供給される電圧及び電流を算出し、算出された電圧及び電流に基づいて抽出部分で発生する熱エネルギーを求め、回路の耐熱エネルギーと比較して回路構成の良否を評価する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−260882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デバイスシミュレータでは、半導体デバイスの全領域を小区間に分割し、解析対象である半導体デバイスの構造やそのデバイス中の不純物濃度分布等を考慮し、半導体デバイスの電気的特性をシミュレーションしている。例えば、図1に示すように、絶縁分離領域10で隔てられた2つのFET1およびFET2の素子間の耐圧をデバイスシミュレータで計算しようとする場合、解析領域が広く、計算点が多くなるため計算時間が増大してしまうといった問題があった。計算時間を短縮するためには、解析領域を小さくすることが有効であるが、解析領域を小さくした場合でも、計算結果が適正なものであるかどうかは不明である。すなわち、解析領域を小さくした場合には、その結果を保証するための何らかの措置が必要となる。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、デバイスシミュレータを用いて半導体素子間の耐圧を計算する場合において、シミュレータの解析領域を縮小した場合であっても計算結果を保証し得る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびかかるシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、等電位線についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく等電位線の位置を算出する多次元シミュレーションステップと、前記等電位線の位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造における空乏層に関する定義値と不純物濃度との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置について設定されるべき空乏層の定義値を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の耐圧シミュレーション方法は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置の内部電位についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における電位を算出する多次元シミュレーションステップと、前記対象領域内部の最低電位が前記一次元シミュレーション値を超えたときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造の不純物濃度と、前記接合構造がパンチスルーに至る際の前記接合構造内部の最低電位との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置がパンチスルーに至る際の前記半導体装置内部の最低電位を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のシミュレーション装置は、2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧を求める半導体装置のシミュレーション装置であって、前記半導体装置の構造の入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段に入力された前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造を生成し、前記接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を算出する一次元シミュレーション手段と、多次元シミュレーションの対象とすべき前記半導体装置の領域を指定する対象領域指定手段と、前記対象領域指定手段によって指定された対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域をバイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーション手段と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置によれば、計算時間を大幅に短縮しながらも計算結果の信頼性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シミュレーションの対象となる半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】シミュレーションの対象となる半導体装置の構造を示す断面図である。
【図3】シミュレーション結果である半導体装置のI−V特性図である。
【図4】本発明の実施例1に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る耐圧シミュレーション方法に用いられるnpn構造を示す図である。
【図6】空乏層が表示されたnpn構造を示す図である。
【図7】電圧印加に伴ってnpn構造上に拡がる空乏層エッジの様子を示す図である。
【図8】図8(a)は、計算対象となる部分が明示された半導体装置の断面図である。図8(b)は、対象領域を逆バイアスしたときの空乏層の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施例である半導体装置のシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例2に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図11】電圧印加に伴ってnpn構造上を移動する等電位線の様子を示す図である。
【図12】本発明の実施例3に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図13】アクセプタ濃度Naと空乏層の定義を示す定数Cとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例4に係る耐圧シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図15】アクセプタ濃度Naと閾地電圧Vpとの関係を示すグラフである。
【図16】多次元シミュレーションの対象となる対象領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、以下に示す図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【0015】
(実施例1)
図2に、本発明に係る耐圧シミュレーション方法を用いて耐圧を求めようとする半導体装置1の構造例を示す。半導体装置1は、STI(Shallow Trench Isolation)等の素子分離領域10によって絶縁分離されたnチャンネルMOS型のFET1とFET2とを含んでいる。FET1およびFET2は、それぞれn型半導体からなるドレイン領域12a、12b、n型半導体からなるソース領域14a、14b、およびゲート電極等を含んでいる。
【0016】
従来、かかる構造の半導体装置において、FET1−FET2間の絶縁耐圧をデバイスシミュレータによって計算しようとする場合、半導体装置1の断面構造又は三次元構造をデバイスシミュレータに入力し、FET1のソース端子S1、ゲート端子G1、FET2のソース端子S2、ゲート端子G2、およびバックゲート端子Bに接地電位を印加し、FET1のドレイン端子D1およびFET2のドレイン端子D2に電圧をスイープさせながら正電圧を印加してpn接合を逆バイアスしてV−I特性を取得する。ドレイン端子D1およびD2への印加電圧の上昇に伴って、ドレイン領域12a、12bからそれぞれ空乏層13a、13bが拡がる。図2に示すように、空乏層13aおよび13bが絶縁分離領域10の底部を超えて繋がると、急激に電流が流れ始めブレークダウンに至る。
【0017】
図3は、かかるデバイスシミュレーションを行った結果得られるFET1とFET2との間の絶縁耐圧を示すV−I特性である。このように、従来のシミュレーション方法においては、FET1およびFET2を含む半導体装置1の全体を計算の対象としていたために計算結果が得られるまでに膨大な時間を要していた。また、計算時間を短縮するために解析領域を小さくした場合には、図3に示すV−I特性と同等の結果が得られない場合があった。
【0018】
本発明は、計算結果を保証しつつ計算時間の短縮を図ろうとするものである。図4は、本発明に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して本発明に係るシミュレーション方法について説明する。
【0019】
はじめに、図5に示すように、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造2をTCADに入力する。すなわち、npn構造2のn型領域20aおよび20bの不純物濃度は、半導体装置1のドレイン領域12aおよび12b(又はソース領域14aおよび14b)と同一の不純物濃度に設定され、npn構造2のp型領域20cの不純物濃度は、半導体装置1のp基板11と同一の不純物濃度に設定される。
【0020】
次に、入力したnpn構造2に対してI−V特性を計算する。具体的には、図6に示すように、npn構造2のn型領域20aおよび20bにそれぞれ端子を設け、一方のn型領域20aを接地電圧とし、他方のn型領域20bに電圧をスイープさせながら正電圧を印加し、このときの電流値を読取る。このようにしてnpn構造2のI−V特性を求めることにより、npn構造2のパンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を取得する(ステップS1)。かかるI−V特性の計算は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0021】
次に、TCADに空乏層の定義値を暫定的に入力して、npn構造2上に空乏層を表示させる(ステップS2)。空乏層の定義値とは、シミュレータ上で空乏層を表示させるために用いられる空乏層に関するシミュレーション値をいう。ここでは、空乏層の定義の初期設定として、n型領域20aおよび20bについては、ドナー濃度Ndと電子濃度nの比n/Ndが例えば0.5となる位置を空乏層のエッジとして定義する。この場合、空乏層の定義値は0.5となる。p型領域20cについては、アクセプタ濃度Naと正孔濃度pの比p/Naが例えば0.5となる位置を空乏層のエッジとして定義する。この場合、空乏層の定義値は0.5となる。このような空乏層の定義をTCAD入力することで、図6に示すように、npn構造2上には、2つのpnジャンクションの近傍に空乏層21、22のエッジが表示されることとなる。
【0022】
次に、ステップS1で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧に至る前後の電圧をnpn構造2に印加しつつ空乏層の状態を確認し、ブレークダウン電圧と空乏層の状態が整合しているかどうかを判定する(ステップS3)。すなわち、npn構造2のブレークダウンは、図7に示すように、電圧印加に伴って正電圧を印加している側のpnジャンクションから伸びた空乏層エッジ22aが、空乏層21まで到達し、空乏層21と空乏層22が繋がったときに急激に電流が増加するパンチスルー現象に基づいて起る。そこで、本ステップにおいては、ステップS1で求めたnpn構造2のブレークダウン電圧以上の電圧をnpn構造2に印加したときに空乏層21と空乏層22とが結合しいていない場合、又は、ステップS1で求めたnpn構造2のブレークダウン電圧未満の電圧をnpn構造2に印加したときに空乏層21と空乏層22とが既に結合している場合には、ブレークダウン電圧と空乏層の状態が整合していないものと判断する。
【0023】
次に、ステップS3においてnpn構造2のブレークダウン電圧と、空乏層21、22の状態が整合していないものと判断された場合には、ステップS2において設定した空乏層の定義値を変更する。
【0024】
具体的には、npn構造2にステップS1で得られた自身のブレークダウン電圧以上の電圧を印加しているにもかかわらず、空乏層21と空乏層22とが結合していない場合には(ステップS4)、n/Ndおよびp/Naの値を増加させる方向に調整し、空乏層の定義値を再設定する(ステップS5)。反対に、npn構造2に印加された電圧がステップS1で求めた自身のブレークダウン電圧に満たないにもかかわらず、空乏層21と空乏層22とが結合してしまっている場合には(ステップS6)、n/Ndおよびp/Naの値を減少させる方向に調整し、空乏層の定義値を再設定する(ステップS7)。そして、ステップS1で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧と、空乏層21、22の状態が整合するまでステップS3からステップS7までの処理を繰り返し行う。かかるステップS2からステップ7までの処理は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。このようにして得られた空乏層の定義値は、一次元シミュレーション値として以降のステップで行われる多次元シミュレーションによる解析に利用される。
【0025】
次に、ステップS7までの処理を経て得られた空乏層の定義値を一次元シミュレーション値として利用して、半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを抽出して解析対象領域を縮小した上で計算を行う。本実施例においては、図8(a)に示すように、FET1のドレイン領域12aと素子分離領域10とを含む破線で囲む部分(以下、この領域を対象領域30と称する)を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS8)。
【0026】
次に、ステップS7までの処理を経て取得した空乏層の定義をTCADに入力する(ステップS9)。
【0027】
次に、図8(b)に示すように、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることにより対象領域30内のpnジャンクションを逆バイアスし、このときの先のステップで得られた空乏層の定義に基づき定義された空乏層13aのエッジ位置を算出する(ステップS10)。尚、かかる空乏層13aのエッジ位置を算出する処理は、二次元又は三次元シミュレーションによるものであるが、解析領域が縮小されているので、半導体装置1の全体構造を計算対象とする場合と比較して計算時間を大幅に短縮することができる。
【0028】
次に、対象領域30に接続されたD1−B端子間の印加電圧の増加とともに伸びる空乏層13aのエッジが素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの電圧値を読み取る(ステップS11)。このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧であるとみなすことができる。
【0029】
すなわち、図2に示すように、半導体装置1は、2つのドレイン領域12aおよび12bの各々のエッジから伸びた空乏層13a、13bが素子分離領域10の底部の中央位置において結合したときにブレークする。従って、一方のドレイン領域12aから伸びた空乏層13aが素子分離領域10の底部の中央位置に到達したときの印加電圧を素子間絶縁耐圧とみなすことができる。ここで、ステップS7まで処理によって半導体装置1に対して空乏層は適性に定義され、空乏層の拡がりと耐圧の関係は、整合がとれているので、このようにして推定された半導体装置1の素子間絶縁耐圧は適正なものとなる。
【0030】
図9は、上記した半導体装置の耐圧シミュレーション方法を実行する半導体装置のシミュレーション装置100の構成を示すブロック図である。入力部101は、耐圧を求めようとする半導体装置1の構造の入力を受け付ける。一次元シミュレーション部102は、入力部101に入力された半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有する図5に示す如きnpn構造を生成し、生成したnpn構造について一次元シミュレーションを行って、半導体装置1における空乏層についての一次元シミュレーション値を算出する。対象領域指定部103は、外部入力に基づいて多次元シミュレーション部104による多次元シミュレーションの対象とすべき半導体装置1の領域を指定する。多次元シミュレーション部104は、対象領域指定部103によって指定された対象領域について一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、対象領域をバイアスしたときの対象領域内部における一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する。耐圧推定部105は、空乏層のエッジ位置が対象領域内の所定位置に達したときの対象領域への印加電圧を半導体装置1の耐圧として出力する。
【0031】
次に、上記した構成を有するシミュレーション装置100の動作について説明する。入力部101は、ユーザインターフェースを介して耐圧を求めようとする半導体装置1の断面構造の入力がなされると、装置内部に入力構造を取り込む。入力される半導体装置1の断面構造には、半導体装置1に含まれる各領域の形状、寸法、組成、不純物濃度等の情報が含まれている。
【0032】
一次元シミュレーション部102は、入力された半導体装置1の断面構造に基づいて、半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造2を生成する。すなわち、npn構造2のn型領域20aおよび20bの不純物濃度は、半導体装置1のドレイン領域12aおよび12b(又はソース領域14aおよび14b)と同一の不純物濃度に設定され、npn構造2のp型領域20cの不純物濃度は、半導体装置1のp基板11と同一の不純物濃度に設定される。
【0033】
続いて、一次元シミュレーション部102は、生成したnpn構造2に対して一次元シミュレーションを行って、I−V特性を計算し、パンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を算出する。続いて、一次元シミュレーション部102は、上記ブレークダウン電圧とnpn構造内に形成される空乏層の状態が整合するように空乏層の定義値を算出する。すなわち、一次元シミュレーション部102は、npn構造2に印加された電圧が上記ブレークダウン電圧に到達したときに、npn構造2内の各pnジャンクション近傍に形成される空乏層同士が結合することとなるような空乏層の定義値を算出する。算出された空乏層の定義値は、一次元シミュレーション値として多次元シミュレーション部104に供給される。
【0034】
対象領域指定部103は、外部入力に基づいて、入力部101より入力された半導体装置1の構造のうち、多次元シミュレーション部104による多次元シミュレーションの対象とすべき領域を指定する。対象領域指定部103は、外部入力に基づいて、例えば、図8(a)に示すように、FET1のドレイン領域12aと素子分離領域10とを含む破線で囲む領域を対象領域30として指定する。
【0035】
多次元シミュレーション部104は、対象領域指定部103によって指定された対象領域について、一次元シミュレーション部によって算出された空乏層に関する一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行う。すなわち、多次元シミュレーション部104は、図8(b)に示すように、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることにより対象領域30内のpnジャンクションを逆バイアスし、このときの一次元シミュレーション部102によって算出された空乏層の定義値に基づく空乏層13aのエッジ位置を算出する。空乏層13aのエッジ位置は、対象領域30の断面構造とともに表示モニタ(図示せず)上に図示されるようにしてもよい。
【0036】
耐圧推定部105は、対象領域30に印加された電圧の増加とともに伸びる空乏層13aのエッジが素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの電圧値を読み取り、このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧として出力する。
【0037】
このように、本発明に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法およびシミュレーション装置によれば、一次元シミュレーションによって耐圧を求めようとする半導体装置の空乏層に関する一次元シミュレーション値を取得し、該半導体装置の一部分のみを多次元シミュレーションによる計算対象として抽出し、取得した一次元シミュレーション値を用いて対象領域について多次元シミュレーションを行って、対象領域に含まれるpnジャンクションに逆バイアスを加えたときの当該一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出し、該空乏層のエッジ位置が対象領域内の所定位置に達したときの印加電圧を該半導体装置の耐圧と推定することとしたので、多次元シミュレーションの計算対象領域が縮小され、計算時間を大幅に短縮しながらも計算結果の信頼性を確保することが可能となる。
【0038】
(実施例2)
上記した実施例1においては、一次元シミュレーション値として空乏層の定義値を取得し、対象領域30内における当該一次元シミュレーション値に基づき定義された空乏層のエッジの位置から対象とする半導体装置の素子間絶縁耐圧を推定することとした。本実施例においては、一次元シミュレーション値として等電位線の電位を求め、対象領域30内における当該一次元シミュレーション値として求めた電位を示す等電位線の位置から対象とする半導体装置の素子間絶縁耐圧を推定することとしている。つまり、実施例1では空乏層の分布を耐圧の指標としているのに対して実施例2では特定の電位を示す等電位線の分布を耐圧の指標としているのである。
【0039】
図10は、本発明の実施例2に係る半導体装置の耐圧シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
【0040】
はじめに、実施例1と同様に、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるp型領域およびn型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造2をTCADに入力し、npn構造2のI−V特性を計算する。そして、得られたnpn構造2のI−V特性から、npn構造2のパンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を取得する(ステップS21)。かかるI−V特性の計算は、一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0041】
次に、ステップS21で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧に至る前後の電圧をnpn構造2に印加し、このときの等電位線をnpn構造2上に表示させる(ステップS22)。例えば、初期設定として、0V電位の等電位線をnpn構造2上に表示させる。等電位線は、npn構造2の2つのpnジャンクションの近傍にそれぞれ現れる。図11に示すように、npn構造2に対する印加電圧の増加に伴って、正電圧を印加した側のpnジャンクション近傍に位置していた等電位線40aは、接地電位を印加した側の他方のpnジャンクションの方向に向かって移動する。
【0042】
続いて、npn構造2に印加した電圧がステップS21で取得したnpn構造2のブレークダウン電圧に到達したときに等電位線40aが等電位線40bと繋がることとなるか否かを判定する(ステップS23)。すなわち、npn構造2に対する印加電圧が自身のブレークダウン電圧に達した場合、高電位側のpnジャンクションから低電位側のpnジャンクションに向けて連続的に電位が低下するような電位勾配が形成される。従って、各pnジャンクション近傍にそれぞれ分離した存在していたある電位を示す等電位線は、ブレークダウン電圧印加時には繋がることとなる。
【0043】
npn構造2にステップS21で得られた自身のブレークダウン電圧以上の電圧を印加しているにもかかわらず、等電位線同士の結合が生じていない場合には(ステップS24)、表示すべき等電位線の電位を減少させる方向に調整する(ステップS25)。反対に、npn構造2に印加された電圧がステップS21で得られた自身のブレークダウン電圧に満たないにもかかわらず、等電位線同士の結合が生じてしまっている場合には(ステップS26)、表示すべき等電位線の電位を増加させる方向に調整する(ステップS27)。そして、ステップS21で取得した自身のブレークダウン電圧印加時に等電位線同士の結合が生じることとなるまでステップ23からステップS27までの処理を繰り返し行う。このようにして得られた電位は、一次元シミュレーション値として以降のステップで行われる多次元シミュレーションによる解析に利用される。
【0044】
ステップS22からステップ27までの処理は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0045】
次に、ステップS27までの処理を経て得られた電位を一次元シミュレーション値として利用して、半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを計算対象として指定して解析領域を縮小した上で計算を行う。実施例1の場合と同様、図8(a)において破線で囲まれた対象領域30を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS28)。
【0046】
次に、ステップS27までの処理を経て取得した電位を示す等電位線を対象領域30上に表示させながら対象領域30内のpnジャンクションに逆バイアスを加える。すなわち、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることによりpnジャンクションを逆バイアスし、このときの一次元シミュレーションにより取得した電位を示す等電位線の位置を算出する(ステップS29)。尚、対象領域30に対するシミュレーションは、二次元又は三次元シミュレーションであるが、解析領域が縮小されているので、半導体装置1の全体構造を計算対象とする場合と比較して計算時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
次に、対象領域30に接続されたのD1−B端子間の印加電圧の増加とともに移動する等電位線が素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの印加電圧の値を読み取る(ステップS30)。このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧であるとみなすことができる。
【0048】
このように、一次元シミュレーションによって耐圧を求めようとする半導体装置の等電位線に関する一次元シミュレーション値を取得し、該半導体装置の一部分のみを多次元シミュレーションによる計算対象として抽出し、取得した一次元シミュレーション値を用いて対象領域について多次元シミュレーションを行って、対象領域に含まれるpnジャンクションに逆バイアスを加えたときの当該一次元シミュレーション値に基づく等電位線を算出し、該等電位線の位置が対象領域内の所定位置に達したときの印加電圧を該半導体装置の耐圧と推定することとしたので、多次元シミュレーションの計算対象領域が縮小され、計算時間を大幅に短縮しながらも計算結果の信頼性を確保することが可能となる。
【0049】
尚、上記各実施例においては、npn構造2を用いて一次元シミュレーションを行う場合を例に説明したが、これに代えて耐圧を求めようとする半導体装置1のn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するpnp構造等の他の接合構造を用いて一次元シミュレーションを行うこととしてもよい。
【0050】
(実施例3)
以下本発明の実施例3について説明する。実施例1においては、TCADを用いてnpn構造2に対して、空乏層の定義を暫定的に設定し、ブレークダウン電圧と空乏層の状態が整合するまで空乏層の定義の設定の変更を繰り返し、適正な空乏層の定義を得るというものであった(ステップS1〜S7)。
【0051】
実施例3においては、空乏層の定義を得るプロセスが実施例1の場合と異なる。一般的に空乏層の定義は、n型領域においてn/Nd=C、p型領域においてp/Na=Cで与えることができる。ここで、nは電子濃度、Ndはドナー濃度、pは正孔濃度、Naはアクセプタ濃度、Cは定数である。これは、半導体装置内部のn型領域において、電子濃度nをドナー濃度Ndで除算した値がCとなる位置、p型領域において正孔濃度pをアクセプタ濃度Naで除算した値がCとなる位置がそれぞれ空乏層のエッジであることを意味している。かかる空乏層の定義において、例えばp型領域のアクセプタ濃度Naが変化した場合には、定数Cの値は、アクセプタ濃度Naとの間である相関をもって変化する。つまり、アクセプタ濃度Na1において空乏層はp/Na=C1で定義されるが、アクセプタ濃度がNa2に変化した場合にはその変化に伴って、空乏層はp/Na=C2で定義されることとなる。
【0052】
実施例3では、予め空乏層の定義値である定数Cの値とアクセプタ濃度Naまたはドナー濃度Ndとの間の相関を取得しておくことにより、耐圧シミュレーションの対象となる半導体装置の空乏層の定義を得る。以下、その詳細について、図12に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0053】
はじめに、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)を任意に設定し、図4に示すフローチャートに示すステップS1からステップS7に示された処理に準じて当該不純物濃度における空乏層の定義値である定数Cを得る(ステップS31)。すなわち、本ステップでは、TCADに任意の不純物濃度を有するnpn構造2をTCADに入力し、これのI−V特性を取得する。次に、暫定的に空乏層の定義を入力し、このnpn構造上に空乏層のエッジを表示させながら、空乏層の状態とI−V特性から得られたブレークダウン電圧とが整合するように空乏層の定義を合わせ込む。そして、I−V特性と整合するときの定数Cを取得する。
【0054】
次に、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)の設定を変えて、ステップS31と同様の処理によって空乏層の定義値である定数Cを得る(ステップS32)。つまり、npn構造2の不純物濃度(ドナー濃度Ndおよびアクセプタ濃度Na)を振って定数Cを取得するのである。尚、npn構造の不純物濃度を変化させる範囲および変化させる回数(すなわち、定数Cを取得するポイントの数)は任意であるが、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域の不純物濃度がその範囲に含まれることとなるように設定することが好ましい。本実施例においては、アクセプタ濃度Naを3条件(1.0×1016/cm3、1.0×1017/cm3、1.0×1018/cm3)設定し、ドナー濃度Ndを1×1017/cm3 〜1×1020の範囲で変化させ、それぞれの場合について空乏層の定義値(すなわち定数C)を取得した。かかるステップS31およびステップS32の処理は、npn構造2のn型領域20a、20bおよびp型領域20cが並ぶ方向についてのみ計算を行う一次元シミュレーションであるので、短時間で計算結果を得ることができる。
【0055】
次に、ステップS31およびS32で取得した各不純物濃度における空乏層の定義値からアクセプタ濃度Naと、定数Cとの関係式を取得する(ステップS33)。図13は、アクセプタ濃度Naを横軸にとり、定数Cの値を縦軸にとり、ステップS31およびステップS32で取得した定数Cの各々をプロットしたグラフである。図13において横軸の目盛りは対数目盛となっている。図13に示すように、アクセプタ濃度Naの上昇に伴って、定数Cの値が上昇していることが確認できる。これは、p型領域20c内のアクセプタ濃度が変化すると、その変化に伴って、p型領域20c内における空乏層の定義が変化することを意味している。このように、アクセプタ濃度Naと空乏層の定義値である定数Cは、ある一定の関係を有していることから、定数Cをアクセプタ濃度Naの関数として表すことができる。アクセプタ濃度Naと定数Cとの関係は、例えば図13に示すグラフに対して近似線を引き、この近似線を数式化することにより取得することが可能である。図13には、グラフ上の各プロットに基づいて描かれた近似線が表示されている。かかる近似線より、空乏層の定義を示す定数Cのアクセプタ濃度Naに対する関数は、
C=0.058loge(Na)−1.9427・・・(1)
と求めることができる。尚、定数Cとアクセプタ濃度Naの関係式は、グラフ上の各プロットからこれを算出する計算ソフト等を用いて求めることも可能である。
【0056】
次に、取得した定数Cとアクセプタ濃度Naとの関係式から、耐圧を求めようとする半導体装置1の空乏層の定義値を得る(ステップS34)。すなわち、耐圧を求めようとする半導体装置1のp基板11のアクセプタ濃度Naを数式(1)に代入することにより、半導体装置1のp基板11に対して設定すべき空乏層の定義値を得る。例えば、p基板11のアクセプタ濃度Naが1.5×1015/cm3である場合、上記した数式(1)にアクセプタ濃度Naを代入してC=0.08を得る。
【0057】
次に、得られた半導体装置1の空乏層の定義値を一次元シミュレーション値として利用して、半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを抽出して解析対象領域を縮小した上で計算を行う。本実施例においては、図8(a)に示すように、FET1のドレイン領域12aと素子分離領域10とを含む破線で囲む部分(対象領域30)を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS35)。
【0058】
次に、ステップS34にて取得したp基板11の空乏層の定義をTCADに入力する(ステップS36)。上記の如く、p/Na=0.08をp基板11における空乏層の定義としてTCADに入力する。
【0059】
次に、図8(b)に示すように、対象領域30に接続されたバックゲート端子Bに接地電位を印加し、ドレイン端子D1に電圧をスイープさせながら正電圧を加えることにより対象領域30内のpnジャンクションを逆バイアスし、このときのステップS34で得られた空乏層の定義値に基づき定義された空乏層13aのエッジ位置を算出する(ステップS37)。
【0060】
次に、対象領域30に接続されたD1−B端子間の印加電圧の増加とともに伸びる空乏層13aのエッジが素子分離領域10の底部の中央位置まで到達したときの電圧値を読み取る(ステップS38)。このときの電圧値を半導体装置1の素子間絶縁耐圧であるとみなすことができる。
【0061】
すなわち、図2に示すように、半導体装置1は、2つのドレイン領域12aおよび12bの各々のエッジから伸びた空乏層13a、13bが素子分離領域10の底部の中央位置において結合したときにブレークする。従って、一方のドレイン領域12aから伸びた空乏層13aが素子分離領域10の底部の中央位置に到達したときの印加電圧を素子間絶縁耐圧とみなすことができる。以上の各処理を経て半導体装置1の耐圧を求めることができる。
【0062】
数式(1)に示す関係式を1回取得しておけば、次回からは耐圧を求めようとする半導体装置1のp基板11の不純物濃度が異なる場合でも、数式(1)からすぐに空乏層の定義値を得ることが可能である。つまり、上記したステップS31〜S33までの処理は不要となる。
【0063】
このように、実施例1においては、耐圧を求めようとする半導体装置1における空乏層の定義値を得るために、npn構造2を用いた1次元シミュレーションを行うことを要したが(すなわち、ステップS1からS7までの処理を行うことを要したが)、本実施例によれば、かかる処理を行うことなく、空乏層の定義値を示す定数Cとアクセプタ濃度Naとの関係式を予め用意しておくことにより容易かつ迅速に、耐圧を求めようとする半導体装置1における空乏層の定義値を得ることができる。これにより、耐圧シミュレーションをより効率よく行うことが可能となる。尚、上記した実施例においては、p基板11を有する半導体装置1をシミュレーションの対象としたが、n基板を有する半導体装置に対しても同様に耐圧シミュレーションを行うことが可能である。この場合、npn構造2に替えてpnp構造を用いて定数Cとドナー濃度Ndとの関係式を求めておき、これに基づいて基板(n型基板)内における空乏層の定義を取得すればよい。
【0064】
(実施例4)
以下、本発明の実施例4について説明する。実施例1では半導体装置内部における空乏層の分布を耐圧の指標とし、実施例2では特定の電位の等電位線の分布を耐圧の指標とした。実施例4では、半導体装置1の基板電位を耐圧の指標とする。以下、本実施例に係る耐圧シミュレーション方法の詳細について図14に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0065】
はじめに、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)を任意に設定し、npn構造2のV−I特性からブレークダウン電圧を得る。具体的には、TCADを用いて、図6に示すように、npn構造2のn型領域20aおよび20bにそれぞれ端子を設け、一方のn型領域20aを接地電圧とし、他方のn型領域20bに電圧をスイープさせながら正電圧を印加し、このときの電流値を読取る。このようにしてnpn構造2のI−V特性を求めることにより、npn構造2のパンチスルー現象に基づくブレークダウン電圧を取得する。次に、npn構造2がブレークダウンしたときの(すなわちパンチスルーに至ったときの)p型領域20c内の最低電位(以下この電圧を閾値電圧Vpと称する)を取得する(ステップS41)。npn構造2がパンチスルーに至ったとき、高電位側のpnジャンクションから低電位側のpnジャンクションに向けて連続的に電位が低下するような電位勾配が形成される。故に、npn構造2がパンチスルーに至った後、更に印加電圧を増加するとp型領域20c内の最低電位は印加電圧に伴って上昇することとなる。従って、p型領域20c内の最低電位をモニタし、閾値電圧Vpと比較することにより、npn構造がブレークダウンしているかどうかを判別することが可能となる。
【0066】
次に、npn構造2のn型領域20a、20bの不純物濃度(すなわちドナー濃度Nd)およびp型領域20cの不純物濃度(すなわちアクセプタ濃度Na)の設定を変更し、ステップS41と同様の手順にて閾値電圧Vpを取得する(ステップS42)。尚、npn構造の不純物濃度を変化させる範囲および変化させる回数(閾値電圧Vpを取得するポイントの数)は任意であるが、耐圧を求めようとする半導体装置1に含まれるn型領域およびp型領域の不純物濃度がその範囲に含まれることとなるように設定することが好ましい。本実施例においては、アクセプタ濃度Naを3条件(1.0×1016/cm3、1.0×1017/cm3、1.0×1018/cm3)設定し、ドナー濃度Ndを1×1017/cm3 〜1×1020の範囲で変化させ、それぞれの場合について閾値電圧Vpを取得した。
【0067】
次に、ステップS41およびS42で取得したデータに基づいて、閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naとの関係式を取得する(ステップS43)。図15は、アクセプタ濃度Naを横軸にとり、p型領域20cの電位(基板電位)を縦軸にとり、ステップS41およびステップS42で取得した閾値電圧Vpの各々をプロットしたグラフである。図15において横軸の目盛りは対数目盛となっている。図15に示すように、アクセプタ濃度Naの上昇に伴って、閾値電圧Vpが上昇していることが確認できる。このように、アクセプタ濃度Naと閾値電圧Vpは、ある一定の関係を有していることから、閾値電圧Vpをアクセプタ濃度Naの関数として表すことができる。アクセプタ濃度Naと閾値電圧Vpとの関係は、例えば図15に示すグラフに対して近似線を引き、この近似線を数式化することにより取得することが可能である。図15には、グラフ上の各プロットに基づいて描かれた近似線が表示されている。かかる近似線より、閾値電圧Vpのアクセプタ濃度Naに対する関数は、
Vp=0.0185loge(Na)−0.0807・・・(2)
と求めることができる。このようにして得られたグラフにおいて、近似線よりも上の領域はパンチスルーが発生する領域であり、近似線よりも下の領域はパンチスルーが発生しない領域である。尚、閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naの関係式は、グラフ上の各プロットからこれを算出する計算ソフト等を用いて求めることも可能である。
【0068】
次に、取得した閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naとの関係式を用いて半導体装置1の耐圧を多次元シミュレーションにより求める。ここでは、半導体装置1の全体構造を計算対象とするのではなく、半導体装置1の一部分のみを抽出して解析対象領域を縮小した上で計算を行う。本実施例においては、図16に示すように、FET1のドレイン領域12aとソース領域14aおよびp基板11とを含む対象領域31を多次元シミュレーションの対象として指定する(ステップS44)。
【0069】
次に、p基板11のアクセプタ濃度Naからp基板11内においてパンチスルーが発生することとなる閾値電圧Vpを式(2)から求める(ステップS45)。具体的には、p基板11のアクセプタ濃度Naは、例えば1.5×1015/cm3であり、上記した数式(2)にアクセプタ濃度Naを代入して閾値電圧Vp=−0.22Vを得る。つまり、対象領域31のソース−ドレイン間に電圧を印加した場合において、p基板11内の最低電位が−0.22Vに達したときにソース−ドレイン間がブレークする。
【0070】
次に、図16に示すように、FET1のソース端子S1に接地電位に固定し、ドレイン端子D1にスイープさせながら正電圧を加え、このときのp基板11内の最低電位をモニタする(ステップS46)。そして、そのモニタ値がステップS45において求めた閾値電圧Vp=−0.22Vに達したときの印加電圧をFET1のソース−ドレイン間耐圧として得る(ステップS47)。以上の各処理を経て半導体装置1の耐圧を求めることができる。尚、本実施例では、nチャンネルMOSFETを耐圧シミュレーションの対象としたため、npn構造を用いて最低電位Vpを取得した。pチャンネルMOSFETを耐圧シミュレーションの対象とする場合には、pnp構造を用いて上記した手順に準じてn型領域内における最低電位Vpとドナー濃度Ndとの関係式を求めればよい。尚、この場合、pnp構造の最低電位Vpを求める際にpnp構造に印加する電圧は負電圧となる。
【0071】
このように本実施例の耐圧シミュレーション方法によれば、閾値電圧Vpとアクセプタ濃度Naまたはドナー濃度Ndとの関係式を予め取得しておくことにより、閾値電圧Vpを指標とした耐圧シミュレーションを行うことが可能となる。本実施例では、対象領域内の電位を耐圧の指標としているので、多次元シミュレーションを行う際に空乏層に関する計算が不要である。従って、空乏層を耐圧の指標とする実施例1および実施例3に係る方法に比べより短時間でシミュレーション結果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 半導体装置
2 npn構造
10 素子分離領域
11 p基板
12a 12b ドレイン領域
13a 13b 空乏層
14a 14b ソース領域
21 22 空乏層
22a 空乏層エッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項2】
前記一次元シミュレーション値は、前記接合構造のブレークダウン電圧と前記接合構造内部に形成される空乏層の状態が整合する値であることを特徴とする請求項1に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項3】
前記一次元シミュレーションステップは、
前記接合構造のブレークダウン電圧を一次元シミュレーションによって求めるステップと、
前記一次元シミュレーション値を暫定的に設定し、前記接合構造に電圧を印加したときの前記接合構造内部における空乏層のエッジ位置を一次元シミュレーションによって算出するステップと、
前記接合構造に印加した電圧が前記ブレークダウン電圧に達したときに前記接合構造内部に形成される前記空乏層の各々が結合するように前記一次元シミュレーション値を調整するステップと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項4】
前記対象領域は、少なくとも1つの前記FETのドレイン領域又はソース領域と、前記FET間を絶縁分離する素子分離領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項5】
前記耐圧推定ステップにおいて、前記空乏層のエッジ位置が前記素子分離領域底部の中央部に到達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定することを特徴とする請求項4に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項6】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における等電位線についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく等電位線の位置を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記等電位線の位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項7】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧を求める半導体装置のシミュレーション装置であって、
前記半導体装置の構造の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段に入力された前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造を生成し、前記接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を算出する一次元シミュレーション手段と、
多次元シミュレーションの対象とすべき前記半導体装置の領域を指定する対象領域指定手段と、
前記対象領域指定手段によって指定された対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域をバイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーション手段と、を含むことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項8】
前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧として出力する耐圧推定手段を更に含むことを特徴とする請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、
前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造における空乏層に関する定義値と不純物濃度との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置について設定されるべき空乏層の定義値を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項10】
前記関係式を求めるステップは、
任意の不純物濃度に設定された前記接合構造のブレークダウン電圧を一次元シミュレーションによって求める第1ステップと、
前記接合構造に電圧を印加したときの前記接合構造の内部における空乏層のエッジ位置を一次元シミュレーションによって算出する第2ステップと、
前記接合構造に印加した電圧が前記ブレークダウン電圧に達したときに前記接合構造の内部に形成される前記空乏層の各々が結合するように前記接合構造における空乏層の定義値を設定する第3ステップと、
前記接合構造の不純物濃度の設定を変更して前記第1ステップから前記第3ステップまでの処理を繰り返す第4ステップと、
前記第1ステップから前記第4ステップまでの処理によって得られた前記接合構造の不純物濃度毎の空乏層の定義値に基づいて前記関係式を求める第5ステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項11】
前記空乏層の定義値は、前記接合構造におけるキャリア濃度と不純物濃度の比に応じた値であることを特徴とする請求項9又は10に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項12】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置の内部電位についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における電位を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記対象領域内部の最低電位が前記一次元シミュレーション値を超えたときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、
前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造の不純物濃度と、前記接合構造がパンチスルーに至る際の前記接合構造内部の最低電位との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置がパンチスルーに至る際の前記半導体装置内部の最低電位を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項13】
前記関係式を求めるステップは、
任意の不純物濃度に設定された前記接合構造がブレークダウンしたときの前記接合構造内部の最低電位を一次元シミュレーションによって求める第1ステップと、
前記接合構造の不純物濃度の設定を変更して前記第1ステップの処理を繰り返す第2ステップと、
前記第1および第2ステップの処理によって得られた前記接合構造の不純物濃度毎の前記最低電位に基づいて前記関係式を求める第3ステップと、を含むことを特徴とする請求項12に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項1】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項2】
前記一次元シミュレーション値は、前記接合構造のブレークダウン電圧と前記接合構造内部に形成される空乏層の状態が整合する値であることを特徴とする請求項1に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項3】
前記一次元シミュレーションステップは、
前記接合構造のブレークダウン電圧を一次元シミュレーションによって求めるステップと、
前記一次元シミュレーション値を暫定的に設定し、前記接合構造に電圧を印加したときの前記接合構造内部における空乏層のエッジ位置を一次元シミュレーションによって算出するステップと、
前記接合構造に印加した電圧が前記ブレークダウン電圧に達したときに前記接合構造内部に形成される前記空乏層の各々が結合するように前記一次元シミュレーション値を調整するステップと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項4】
前記対象領域は、少なくとも1つの前記FETのドレイン領域又はソース領域と、前記FET間を絶縁分離する素子分離領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項5】
前記耐圧推定ステップにおいて、前記空乏層のエッジ位置が前記素子分離領域底部の中央部に到達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定することを特徴とする請求項4に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項6】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における等電位線についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく等電位線の位置を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記等電位線の位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項7】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧を求める半導体装置のシミュレーション装置であって、
前記半導体装置の構造の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段に入力された前記半導体装置に含まれるn型領域およびp型領域と同一の不純物濃度を有するnpn構造若しくはpnp構造を含む接合構造を生成し、前記接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を算出する一次元シミュレーション手段と、
多次元シミュレーションの対象とすべき前記半導体装置の領域を指定する対象領域指定手段と、
前記対象領域指定手段によって指定された対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域をバイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーション手段と、を含むことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項8】
前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧として出力する耐圧推定手段を更に含むことを特徴とする請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置における空乏層についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について、前記一次元シミュレーション値を用いて多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における前記一次元シミュレーション値に基づく空乏層のエッジ位置を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記空乏層のエッジ位置が前記対象領域内の所定位置に達したときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、
前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造における空乏層に関する定義値と不純物濃度との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置について設定されるべき空乏層の定義値を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項10】
前記関係式を求めるステップは、
任意の不純物濃度に設定された前記接合構造のブレークダウン電圧を一次元シミュレーションによって求める第1ステップと、
前記接合構造に電圧を印加したときの前記接合構造の内部における空乏層のエッジ位置を一次元シミュレーションによって算出する第2ステップと、
前記接合構造に印加した電圧が前記ブレークダウン電圧に達したときに前記接合構造の内部に形成される前記空乏層の各々が結合するように前記接合構造における空乏層の定義値を設定する第3ステップと、
前記接合構造の不純物濃度の設定を変更して前記第1ステップから前記第3ステップまでの処理を繰り返す第4ステップと、
前記第1ステップから前記第4ステップまでの処理によって得られた前記接合構造の不純物濃度毎の空乏層の定義値に基づいて前記関係式を求める第5ステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項11】
前記空乏層の定義値は、前記接合構造におけるキャリア濃度と不純物濃度の比に応じた値であることを特徴とする請求項9又は10に記載の耐圧シミュレーション方法。
【請求項12】
2以上のFETを含む半導体装置の素子間絶縁耐圧をデバイスシミュレータを用いて求める半導体装置の耐圧シミュレーション方法であって、
npn構造若しくはpnp構造を含む接合構造に対して一次元シミュレーションを行って、前記半導体装置の内部電位についての一次元シミュレーション値を取得する一次元シミュレーションステップと、
少なくとも1つのpnジャンクションを含む前記半導体装置の一部である対象領域について多次元シミュレーションを行って、前記対象領域内のpnジャンクションを逆バイアスしたときの前記対象領域内部における電位を算出する多次元シミュレーションステップと、
前記対象領域内部の最低電位が前記一次元シミュレーション値を超えたときの前記対象領域への印加電圧を前記半導体装置の耐圧と推定する耐圧推定ステップと、を含み、
前記一次元シミュレーションステップは、前記接合構造の不純物濃度と、前記接合構造がパンチスルーに至る際の前記接合構造内部の最低電位との関係式を求めるステップと、前記関係式に前記半導体装置の不純物濃度を代入し、前記半導体装置がパンチスルーに至る際の前記半導体装置内部の最低電位を前記一次シミュレーション値として求めるステップと、を含むことを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
【請求項13】
前記関係式を求めるステップは、
任意の不純物濃度に設定された前記接合構造がブレークダウンしたときの前記接合構造内部の最低電位を一次元シミュレーションによって求める第1ステップと、
前記接合構造の不純物濃度の設定を変更して前記第1ステップの処理を繰り返す第2ステップと、
前記第1および第2ステップの処理によって得られた前記接合構造の不純物濃度毎の前記最低電位に基づいて前記関係式を求める第3ステップと、を含むことを特徴とする請求項12に記載の耐圧シミュレーション方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−71456(P2011−71456A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257194(P2009−257194)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】
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