説明

半導体装置の製造方法

【課題】絶縁膜上での抵抗が十分に高く、且つ銅配線上での抵抗が十分に低いキャップ層を形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコン基板1上に第3の層間絶縁膜10を形成する工程と、第3の層間絶縁膜10に第1の配線溝10aを形成する工程と、第1の配線溝10aに銅を埋め込んで第1、第2の銅配線12a、12bにする工程と、第3の層間絶縁膜10と第1、第2の銅配線12a、12bの上に、希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いる反応性スパッタ法により、キャップ層13として窒化ジルコニウム層を形成する工程とを有し、第3の層間絶縁膜10上に形成されるキャップ層13は、比抵抗が1×109μΩ・cm以上となるように形成される半導体装置の製造方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化とチップサイズの縮小化に伴い、配線の微細化及び多層配線化が加速的に進められている。こうした多層配線構造を有するロジックデバイスでは、配線抵抗を低減するために、低抵抗金属である銅を材料として配線を形成することが実用化されている。
【0003】
銅膜はアルミニウム膜に比べてパターニングするのが非常に困難であるため、銅膜のパターニングにより銅配線を形成するは極めて難しい。そこで、通常は、絶縁膜のホールや溝に銅膜を埋め込んで銅配線を形成するダマシン法を採用することになる。
【0004】
上下の銅配線は銅よりなるビアによって互いに接続されるが、下層の銅配線の表面がプロセス中に汚染、腐食、或いは酸化されると、ビアと銅配線との間に接続不良が発生する恐れがある。そのため、銅配線を備えた半導体装置を作製する場合には、銅配線を保護するためのキャップ層が必要となる。
【0005】
キャップ層の中でも、窒化ジルコニウム(ZrN)膜は、絶縁膜の上で絶縁性を呈し、且つ銅配線の上で導電性を呈するという特異な性質を有するので、キャップ層にホールを形成しなくても、キャップ層を介して上下の銅配線同士が電気的に接続されるという利点が得られる。
【0006】
このように窒化ジルコニウム膜をキャップ層として形成する点については特許文献1に開示されている。
【0007】
特許文献1には、窒化ジルコニウム膜の成膜方法として、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられている。これらのうち、CVD法は、酸化シリコン膜のような絶縁膜の成膜方法としては広く普及しているものの、金属膜や窒化ジルコニウム膜のような導電性を呈する膜の成膜方法としては開発途上の段階にあり、成膜コストが高いという問題がある。
【0008】
これに対し、スパッタ法は、導電膜の成膜方法として広く一般に普及しているため、CVD法と比較して成膜コストが安いという利点がある。
【0009】
キャップ層として形成される窒化ジルコニウム層の抵抗は、隣接する銅配線同士が窒化ジルコニウム層を介して電気的に接続されないように、絶縁膜の上では十分に高い必要がある。一方、銅配線の上の窒化ジルコニウム層は、上下の銅配線同士の接続抵抗が高くならないように、十分に低い必要がある。
【0010】
安価なスパッタ法を採用する場合にも、絶縁膜と銅配線の上で抵抗値が明確な選択性を有するように窒化ジルコニウム膜を形成することが望まれる。
【特許文献1】特開2003−17496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、絶縁膜上での抵抗が十分に高く、且つ銅配線上での抵抗が十分に低いキャップ層を形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、半導体基板の上方に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜に第1溝又は第1ホールを形成する工程と、前記第1溝又は前記第1ホールに銅を埋め込んで第1銅配線を形成する工程と、前記第1絶縁膜と前記第1銅配線の上に、希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いる反応性スパッタ法により、キャップ層としてチタン族元素の窒化物よりなる層を形成する工程とを有し、前記第1絶縁膜上に形成されるキャップ層は、比抵抗が1×109μΩ・cm以上となるように形成される半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
このような比抵抗を有するキャップ層は、例えば、(i)成膜雰囲気の圧力を1.33Pa以下にする、及び(ii)ターゲットに印加する電力のパワー密度を6.58W/cm2以下とする、のいずれかの条件を採用することで形成される。
【0014】
この条件で形成されたキャップ層は、第1絶縁膜の上では測定限界を超えるような十分に高いシート抵抗を有するので、隣接する第1銅配線同士がキャップ層によって電気的に不必要に接続されることは無い。
【0015】
一方、第1銅配線とキャップ層とを合わせたシート抵抗は、キャップ層を形成しない場合と殆ど変わらない程度に十分に低い。従って、第1銅配線の上に第2銅配線を形成する場合でも、第1銅配線と第2銅配線との間の電気抵抗がキャップ層によって上昇せず、これらの銅配線同士の接続抵抗を低いままに抑えることが可能となる。スパッタ法による膜の形成において、上記のような下地による電気抵抗の選択性が得られることは、本発明者により初めて見出された。
【0016】
また、上記混合ガスの全流量に対する窒素ガスの流量比の百分率を50%以上にすることで、スパッタのモードがターゲット窒化モードに移行し、窒素濃度が高く銅の拡散防止能力に優れたキャップ層を形成することが可能となる。
【0017】
更に、キャップ層を形成する工程における基板温度を250℃以上にすることで、キャップ層が緻密化し、第1絶縁膜上でのキャップ層のシート抵抗が上昇して、第1絶縁膜上におけるキャップ層の絶縁性をより一層高めることが可能となる。
【0018】
また、キャップ層を形成した後に、窒素含有雰囲気中において該キャップ層をアニールする工程を行っても良い。このようなアニールによりキャップ層の窒素濃度が高められ、キャップ層の銅拡散防止能力が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、チタン族元素の窒化物よりなるキャップ層の成膜条件として、(i)成膜雰囲気の圧力を1.33Pa以下にする、及び(ii)ターゲットに印加する電力のパワー密度を6.58W/cm2以下とする、のいずれかの条件を採用するので、絶縁膜上では抵抗が十分に高く、つまり、比抵抗が1×109μΩ・cm以上であり、且つ銅配線上では抵抗が十分に低いキャップ層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(1)第1実施形態
図1は、本実施形態で使用される窒化ジルコニウム膜用のDCマグネトロンスパッタ装置の構成図である。
【0022】
そのスパッタ装置は、Ar供給口100a、窒素供給口100b、及びガス排出口100cを備えたチャンバ100を有する。Ar供給口100aは、スパッタガスであるアルゴンガスを供給するために設けられるが、スパッタガスはアルゴンガスに限定されず、アルゴンガス以外の希ガスをスパッタガスとして用いても良い。また、窒素供給口100bは、ジルコニウムを窒化させる窒素ガスを供給するために設けられる。
【0023】
チャンバ100の中には、リング部材103によりフェイスダウンの状態でシリコン基板1を保持する基板保持部101が配されると共に、シリコン基板1と対向するようにZrターゲット104が配される。
【0024】
そのZrターゲット104の平面形状は直径が3インチ(7.62cm)の円形であり、ターゲット104におけるZrの組成比は99.99%である。更に、Zrターゲット104には、パワーが可変な直流電源105が電気的に接続される。そして、Zrターゲット104の下方には、該ターゲット104の中心に回転軸が一致する不図示の磁石が設けられており、その磁石が回転することによってチャンバ内に磁場が発生する。
【0025】
また、基板保持部101にはランプ102が内蔵されており、そのランプ102の輻射熱によりシリコン基板1が所定の温度に加熱される。
【0026】
更に、その基板保持部101には、チャンバ101内にプラズマを発生させるための周波数が13.56MHzの高周波電源107が電気的に接続される。
【0027】
成膜に際しては、供給口100a、100bからチャンバ100内にアルゴンガスと窒素ガスとが供給されると共に、不図示の排気ポンプに接続されたガス排出口100cからガスが排気されてチャンバ100内が所定の圧力に維持される。これと同時に、直流電源105と高周波電源107のそれぞれからチャンバ100内の雰囲気に所定の電力が印加され、反応性スパッタ法により窒化ジルコニウム膜が形成される。
【0028】
本願発明者は、このようなスパッタ装置を用い、窒化ジルコニウム膜の最適な成膜条件を以下のようにして求めた。なお、以下では、高周波電源107のパワーは50Wに固定している。
【0029】
図2は、成膜条件を様々に振って得られた窒化ジルコニウム膜の絶縁膜上でのシート抵抗を表す図である。この調査では、成膜圧力、N2流量比、直流電源105のパワー、及び成膜時間を図示のように変化させた。なお、このうちN2流量比とは、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガスの全流量に占める窒素ガスの流量の割合のことである。
【0030】
また、この調査では、図中に示されるように、シリコン基板の上に絶縁膜として厚さ100nnの熱酸化膜を形成し、その上に反応性スパッタ法により窒化ジルコニウムを形成した。
【0031】
図2に示されるように、熱酸化膜上でシート抵抗が測定限界(4×109Ω/□)以上の∞(比抵抗が1×109μΩ・cm以上)となるのは、次の条件(i)、(ii)のいずれかを採用したときである。
【0032】
(i)成膜圧力が1.33Pa以下
(ii)直流電源105のパワーが300W以下
これらの条件の少なくとも一つを採用すれば、絶縁膜上での窒化ジルコニウム膜を十分に高めることができる。
【0033】
なお、(ii)におけるパワーが300W以下なる条件は、該パワーをZrターゲット104の面積(45.58cm2≒3.14×3.812cm2)で割ってパワー密度に換算すると、6.58W/cm2以下なる条件に相当する。
【0034】
また、(i)のように成膜圧力を1.33Pa以下にすることでシート抵抗が高められるのは、圧力が低いほどスパッタ粒子の平均自由工程が長くなり、同じパワーであれば膜が緻密化することが原因であると考えられる。
【0035】
このような膜の緻密化によるシート抵抗の上昇は、窒化ジルコニウム膜を成膜するときの基板温度を高めることによっても実現することができる。実際、本願発明者が行った別の実験によれば、基板温度を250℃とした場合、絶縁膜上における窒化ジルコニウム膜のシート抵抗が∞になった。よって、基板温度を250℃以上としても、絶縁膜上におけるシート抵抗が∞になる窒化ジルコニウム膜が形成できると期待できる。
【0036】
図3は、窒素ガスの流量比と窒化ジルコニウム膜の成膜速度との関係を調査して得られたグラフである。
【0037】
同図に示されるように、窒素ガスの流量比の百分率が50%以上になると、成膜速度が大きく低下することが分かる。これは、窒素ガスの流量比の百分率が50%未満の場合には、Zrターゲット104から飛来したZr原子がプラズマ雰囲気中で窒化して基板上に堆積するのに対し、窒素ガスの流量比の百分率が50%以上になると、Zrターゲット104の表面が窒化しながらスパッタがゆっくり進行するターゲット窒化モードになるためである。
【0038】
ターゲット窒化モードでは、窒素濃度が高く銅の拡散防止能力に優れた窒化ジルコニウム膜を成膜することができる。図3の結果から、窒素ガスの流量比の百分率を50%以上にすることで、ターゲット窒化モードのスパッタ法により窒素濃度の高い窒化ジルコニウム膜を形成できることが明らかになった。
【0039】
図4は、窒素ガスの流量比と窒化ジルコニウム膜の窒素濃度との関係をXPS(X-Ray Photoelectron Spectroscopy)法により調査して得られたグラフである。
【0040】
図4に示されるように、窒素ガスの流量比の百分率が50%以上になると、窒化ジルコニウム膜の窒素濃度が飽和する。
【0041】
ところで、窒化ジルコニウム膜は、図2の調査で判明した成膜条件を採用することで絶縁膜上において抵抗を十分に高めることができるが、銅膜上ではその抵抗が十分に低くなければならない。
【0042】
そこで、本願発明者は、様々な成膜条件で銅膜上に窒化ジルコニウム膜を形成し、その銅膜と窒化ジルコニウム膜とを合わせたシート抵抗を四端子法で測定した。
【0043】
その結果を図5に示す。なお、この調査では、シリコン基板上に厚さ100nmの熱酸化膜、厚さ10nmのTa(タンタル)バリア膜、及び厚さ60nmの銅膜を形成し、この銅膜の上に窒化ジルコニウム膜を形成した。また、図5におけるZrN膜形成前の銅膜上のシート抵抗とは、上記の銅膜単体でのシート抵抗である。
【0044】
図5に示されるように、成膜条件を様々に変化させても、窒化ジルコニウム膜を形成した後のシート抵抗(最右欄)に大きな変化は見られず、いずれの条件でも絶縁膜や抵抗値が数kΩの高抵抗膜にはなっていない。このように、銅膜上に形成された窒化ジルコニウム膜は、絶縁膜上(図2)に比べて成膜条件による膜質の差が発生し難く、比較的低抵抗な膜になる。従って、図2で明らかとなった絶縁膜上での抵抗値が十分に高くなる成膜条件(i)、(ii)を採用しても、銅膜上での窒化ジルコニウムの抵抗が実使用に耐えない程高くなることは無い。
【0045】
このように、既述の(i)、(ii)の成膜条件を採用することで、絶縁膜上での抵抗値が十分に高く、且つ銅膜上での抵抗値が十分に低い窒化ジルコニウム膜を形成することができる。
【0046】
なお、上記では窒化ジルコニウム膜について詳述したが、ジルコニウムと同じチタン族元素であるチタンやハフニウムもジルコニウムに類似の化学的性質を有するので、これらの窒化膜を形成する場合にも上記の(i)、(ii)の成膜条件を採用することで、絶縁膜上と銅膜上とで抵抗値に明確な選択性を有する膜が形成されると期待できる。
【0047】
(2)第2実施形態
第1実施形態で説明したような抵抗値に明確な選択性がある窒化ジルコニウム膜は、銅配線上に形成されるキャップ層として特に有用である。
【0048】
そこで、本実施形態では、銅配線を形成するダマシンプロセスに対し、第1実施形態で説明した窒化ジルコニウム膜の成膜条件(i)、(ii)を適用する。
【0049】
図6〜図9は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0050】
まず、図6(a)に示す断面構造について説明する。
【0051】
p型のシリコン(半導体)基板1の上には、能動素子領域を囲む素子分離絶縁層2が形成されている。その能動素子領域にはMOSトランジスタ3が形成されている。MOSトランジスタ3は、シリコン基板1上にゲート絶縁膜3aを介して形成されたゲート電極3bと、ゲート電極3bの両側のシリコン基板1内に形成されたLDD(Lightly Doped Drain)構造の第1、第2のn型不純物拡散層3c、3dを有している。また、ゲート電極3bの側面には絶縁性サイドウォール3eが形成されている。
【0052】
シリコン基板1上には、MOSトランジスタ3を覆う酸化シリコン(SiO2)よりなる第1の層間絶縁膜4が形成されている。第1の層間絶縁膜4のうち、第1のn型不純物拡散層3cと第2のn型不純物拡散層3dの上にはそれぞれ第1のコンタクトホール4aと第2のコンタクトホール4bが形成されている。
【0053】
第1及び第2のコンタクトホール4a、4b内には、それぞれ第1の導電性プラグ5aと第2の導電性プラグ5bが埋め込まれている。第1及び第2の導電性プラグ5a、5bは、それぞれ窒化チタン膜とタングステン膜の二層構造を有している。
【0054】
第1の層間絶縁膜4の上には、第2の導電性プラグ5bに接続されるアルミニウムよりなる一層目配線7が形成されている。また、第1の層間絶縁膜4と一層目配線7の上には、酸化シリコン、BPSG、PSG等のいずれかからなる第2の層間絶縁膜8が形成されている。第2の層間絶縁膜8のうち第1の導電性プラグ5aの上には、コンタクトホール8aが形成され、その中には窒化チタン膜とタングステン膜の二層構造を有する第3の導電性プラグ9が埋め込まれている。
【0055】
第2の層間絶縁膜8と第3の導電性プラグ9は、膜厚350nmの酸化シリコンよりなる第3の層間絶縁膜10に覆われている。そして、第3の層間絶縁膜10には第1の配線溝10aと第2の配線溝10bが形成されている。
【0056】
第1の配線溝10aは、その一部が第3の導電性プラグ9に重なる形状を有している。第1の配線溝10aの中にはタンタル、窒化タンタル、窒化チタンなどのバリアメタル層11aと銅層11bからなる多層構造を有する第1の銅配線12aが形成されている。また、第2の配線溝10b内には、第1の銅配線12aと同じ層構造を有する第2の銅配線12bが形成されている。
【0057】
次に、図6(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0058】
まず、図1で説明したスパッタ装置の基板保持部101に、図6(a)に示す構造が作成されたシリコン基板1を保持させる。次いで、第1実施形態で説明したように、(i)成膜圧力が1.33Pa以下、及び(ii)直流電源105のパワーが300W以下のいずれかの条件を採用して厚さ約10nmの窒化ジルコニウム膜を形成し、それをキャップ層13とする。なお、キャップ層13の膜厚は10nmに限定されず、0nmより大きく20nm以下の厚さであってもよい。
【0059】
そのZrNキャップ層13は、第1、第2配線12a、12bに接する領域では比抵抗値が約300μΩ・cm以下の低抵抗層13aとなり、酸化シリコンよりなる第3の層間絶縁膜10に接する領域では比抵抗値が1×109μΩ・cm以上の高抵抗層13bとなる。
【0060】
なお、窒化ジルコニウム膜に代えて、チタン又はハフニウムの窒化膜をキャップ層13として形成してもよい。
【0061】
次に、図7(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0062】
まず、スパッタ装置から図6(b)に示す構造の作成されたシリコン基板1を取り出し、不図示の窒素アニールチャンバ内にシリコン基板1を入れる。
【0063】
そして、そのチャンバ内に窒素を導入し、基板温度を約400℃とする条件でZrNキャップ層13をアニールする。これにより、ZrNキャップ層13の膜中に窒素が取り込まれ、窒素濃度が高く銅の拡散防止能力に優れたZrNキャップ層13が得られる。そのアニールの際、窒素雰囲気の圧力は1kPa〜1MPa、例えば100kPaとされる。なお、大気圧よりも高い圧力でこの窒素アニールを行う場合は、加圧チャンバを用いてアニールを行えばよい。
【0064】
また、この窒素アニールにおいて、基板温度が低すぎると、窒素とZrNキャップ層13との反応性が低くなり、ZrNキャップ層13に窒素が取り込まれ難くなる。そのため、窒素アニールの基板温度は200℃以上とするのが好ましい。
【0065】
次に、図7(b)に示すように、膜厚300nmの酸化シリコンよりなる第4の層間絶縁膜14と膜厚50nmのシリコン窒化膜15と膜厚350nmの酸化シリコンよりなる第5の層間絶縁膜16をCVD法によりZrNキャップ層13の上に順に形成する。なお、シリコン窒化膜15の代わりに膜厚20nm以下の窒化ジルコニウム膜を使用してもよい。
【0066】
続いて、図8(a)に示すように、第5の層間絶縁膜16をパターニングすることにより、第1銅配線12aに一部が重なる第3配線溝16aを形成し、同時に第2銅配線12bに一部が重なる第4の配線溝16bを形成する。また、第4の層間絶縁膜14をパターニングすることにより、第3配線溝16aと第1銅配線12aが重なる部分に第1のビアホール14aを形成し、同時に第4配線溝16bと第2銅配線12bが重なる部分に第2のビアホール14bを形成する。
【0067】
第1及び第2のビアホール14a、14bの形成と第3及び第4の配線溝16a、16bの形成の順序はどちらが先であってもよく、第3及び第4の配線溝16a、16bを形成する際にシリコン窒化膜15はエッチングストップ層として機能する。また、第1及び第2のビアホール14a、14bを形成する場合にはZrNキャップ層13はエッチングストップ層として機能する。
【0068】
それらのビアホール14a、14bは、それぞれ一層目の銅配線12a、12b上に形成され、ZrNキャップ層13の低抵抗層13a(図6(b)参照)を露出させる。
【0069】
次に、図8(b)に示すように、第1及び第2のビアホール14a、14bと第3及び第4の配線溝16a、16bのそれぞれの内周面及び底面、及び第5の層間絶縁膜16の上面の上にバリアメタル層17を5〜10nmの厚さに形成する。バリアメタル層17は、スパッタ法により形成され、例えばタンタル、窒化タンタル(TaN)若しくはこれらの積層膜のいずれか、又は窒化チタン(TiN)から構成される。
【0070】
さらに、バリアメタル層17の上に銅シード層18をスパッタ法により30〜100nmの厚さに形成する。
【0071】
次に、電解メッキ法により銅層19を銅シード層18上に形成し、これにより第3及び第4の配線溝16a、16bと第1及び第2のビアホール14a、14bを完全に埋め込む。ここで、銅シード層18は銅層19の一部となる。
【0072】
この後に、図9に示すように、第5の層間絶縁膜16の上面に形成された銅層19、バリアメタル層17をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により除去する。これにより第1及び第2のビアホール14a、14bのそれぞれの中に残った銅層19、銅シード層18、バリアメタル層17を第1及び第2のビア20a、20bとして使用し、また、第3及び第4の配線溝16a、16bのそれぞれの中に残った銅層19、バリアメタル層17を第3及び第4の銅配線21a、21bとして使用する。
【0073】
第3の銅配線21aは、第1のビア20aとZrNキャップ層13を介して第1の銅配線12aに電気的に接続される。また、第4の銅配線21bは、第2のビア20bとZrNキャップ層13を介して第2の銅配線12bに電気的に接続される。
【0074】
更に、第3及び第4の銅配線21a、21bと第5の層間絶縁膜16の上に上記したZrNキャップ層13と同じ材料からなる膜厚20nm以下の二層目のキャップ層(不図示)を形成した後に、上記した工程に従って層間絶縁膜、銅配線及びビアの形成を繰り返すことにより、第2の層間絶縁膜8の上には多層構造の銅配線が形成されることになる。
【0075】
ここで、第1及び第2のビア20a、20bは、ZrNキャップ層13の低抵抗層13a(図6(b)参照)を介して第1及び第2の銅配線12a、12bにそれぞれ電気的に接続される。
【0076】
この場合、第1のZrNキャップ層13は、既述の成膜条件(i)、(ii)を用いて形成されたため、酸化シリコンよりなる第3の層間絶縁膜10上では抵抗値が測定限界を超えるような十分に高い高抵抗層13bとなり、隣接する第1の銅配線12aと第2の銅配線12bが第1のZrNキャップ層13を介して短絡することはない。
【0077】
一方、第1、第2の銅配線12a、12bとZrNキャップ層13とを合わせたシート抵抗は、第1実施形態の図5に示されるように、ZrNキャップ層13を形成しない場合と略同じ程度に十分に低い。よって、第1及び第2のビア20a、20bと第1、第2の銅配線12a、12bとの間の抵抗がZrNキャップ層13によって上昇することは無い。
【0078】
しかも窒化ジルコニウムは化学的に安定であって銅に比べて酸化され難いので、ビアホールや配線溝を通して露出することによって酸化したり腐食したりするおそれはなく、銅配線や銅ビアの酸化や腐食を防止する導電性/絶縁性の保護膜となる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されない。例えば、第2実施形態では第3の層間絶縁膜10に配線溝10a、10bのみを形成したが、第3の層間絶縁膜10にビアホールを形成し、銅配線12a、12bをそのビアホール内にも形成するようにしてもよい。
【0080】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0081】
(付記1) 半導体基板の上方に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜に第1溝又は第1ホールを形成する工程と、
前記第1溝又は前記第1ホールに銅を埋め込んで第1銅配線を形成する工程と、
前記第1絶縁膜と前記第1銅配線の上に、希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いる反応性スパッタ法により、キャップ層としてチタン族元素の窒化物よりなる層を形成する工程とを有し、
前記第1絶縁膜上に形成されるキャップ層は、比抵抗が1×109μΩ・cm以上となるように形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0082】
(付記2) 前記キャップ層を形成する工程は、(i)成膜雰囲気の圧力を1.33Pa以下にする、及び(ii)ターゲットに印加する電力のパワー密度を6.58W/cm2以下とする、のいずれかの条件を採用することを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
【0083】
(付記3)前記混合ガスの全流量に対する前記窒素ガスの流量比の百分率を50%以上にすることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0084】
(付記4) 前記キャップ層を形成する工程において、基板温度を250℃以上に設定することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0085】
(付記5) 前記キャップ層を形成する工程の後に、窒素含有雰囲気中において該キャップ層をアニールする工程を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0086】
(付記6) 前記キャップ層をアニールする工程は、前記窒素含有雰囲気の圧力を1kPa以上1MPa以下として行われることを特徴とする付記5に記載の半導体装置の製造方法。
【0087】
(付記7) 前記キャップ層をアニールする工程は、200℃以上の基板温度で行われることを特徴とする付記6に記載の半導体装置の製造方法。
【0088】
(付記8) 前記チタン族元素は、ジルコニウム、チタン、及びハフニウムのいずれかであることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0089】
(付記9) 前記キャップ層の上に第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第2絶縁膜のうち前記第1銅配線の上方に第2溝又は第2ホールを形成する工程と、
前記第2溝又は前記第2ホールに銅を埋め込むことにより、前記キャップ層を介して前記第1銅配線に電気的に接続された第2銅配線を形成する工程とを更に有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0090】
(付記10) 基板と、
前記基板の上方に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜に形成された第1溝又は第1ホールと、
前記第1溝又は第1ホール内に形成された第1銅配線と、
前記第1絶縁膜及び前記第1銅配線上に形成されたキャップ層と、を有し、
前記第1絶縁膜上に形成されたキャップ層は、比抵抗が1×109μΩ・cm以上であることを特徴とする半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明の各実施形態で使用されるスパッタ装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態において、成膜条件を様々に振って得られた窒化ジルコニウム膜の絶縁膜上でのシート抵抗を表す図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態において、窒素ガスの流量比と窒化ジルコニウム膜の成膜速度との関係を調査して得られたグラフである。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態において、窒素ガスの流量比と窒化ジルコニウム膜の窒素濃度との関係をXPS法により調査して得られたグラフである。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態において、成膜条件を様々に振って得られた窒化ジルコニウム膜と銅膜とを合わせたシート抵抗を表す図である。
【図6】図6(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図7】図7(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図8】図8(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図9】図9(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【符号の説明】
【0092】
1…シリコン基板、2…素子分離絶縁層、3…MOSトランジスタ、3a…ゲート絶縁膜、3b…ゲート電極、3c、3d…第1、第2のn型不純物拡散層、3e…絶縁性サイドウォール、4…第1の層間絶縁膜、4a、4b…第1及び第2のコンタクトホール、5a、5b…第1及び第2の導電性プラグ、7…一層目配線、8…第2の層間絶縁膜、9…第3の導電性プラグ、10…第3の層間絶縁膜、12a、12b…第1、第2の銅配線、13…キャップ層、13a…低抵抗層、13b…高抵抗層、14…第4の層間絶縁膜、14a、14b…第1、第2のビアホール、15…シリコン窒化膜、16…第5の層間絶縁膜、16a、16b…第3、第4の配線溝、17…バリアメタル層、18…銅シード層、19…銅層、20a、20b…第1及び第2のビア、21a、21b…第3及び第4の銅配線、100…チャンバ、100a…Ar供給口、100b…窒素供給口、100c…ガス排出口、101…基板保持部、102…ランプ、103…リング部材、104…Zrターゲット、105…直流電源、107…高周波電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上方に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜に第1溝又は第1ホールを形成する工程と、
前記第1溝又は前記第1ホールに銅を埋め込んで第1銅配線を形成する工程と、
前記第1絶縁膜と前記第1銅配線の上に、希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いる反応性スパッタ法により、キャップ層としてチタン族元素の窒化物よりなる層を形成する工程とを有し、
前記第1絶縁膜上に形成されるキャップ層は、比抵抗が1×109μΩ・cm以上となるように形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記キャップ層を形成する工程は、(i)成膜雰囲気の圧力を1.33Pa以下にする、及び(ii)ターゲットに印加する電力のパワー密度を6.58W/cm2以下とする、のいずれかの条件を採用することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記チタン族元素は、ジルコニウム、チタン、及びハフニウムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記キャップ層の上に第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第2絶縁膜のうち前記第1銅配線の上方に第2溝又は第2ホールを形成する工程と、
前記第2溝又は前記第2ホールに銅を埋め込むことにより、前記キャップ層を介して前記第1銅配線に電気的に接続された第2銅配線を形成する工程とを更に有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上方に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜に形成された第1溝又は第1ホールと、
前記第1溝又は第1ホール内に形成された第1銅配線と、
前記第1絶縁膜及び前記第1銅配線上に形成されたキャップ層と、を有し、
前記第1絶縁膜上に形成されたキャップ層は、比抵抗が1×109μΩ・cm以上であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−242926(P2007−242926A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64003(P2006−64003)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】