説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板の第2主面に導入された不純物を活性化でき、第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぎ、第1主面側に精度良くコンタクトホールを形成することのできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板101の第1主面上に層間絶縁膜107を形成する工程と、コンタクトホール形成予定領域において、層間絶縁膜107を所定厚さ分残して除去する工程と、半導体基板101を第2主面側から所定厚さ除去して半導体基板101を薄くする工程と、薄くされた半導体基板101の第2主面の表層に不純物を導入する工程と、不純物の導入後、金属電極108を構成する材料の融点以上の温度で半導体基板101を熱処理する工程と、熱処理後、残された層間絶縁膜107を除去してコンタクトホール109を形成する工程と、コンタクトホール109内及び層間絶縁膜107上に金属電極108を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の第1主面側にコンタクトホールを形成するとともに、半導体基板の厚さを薄くした後に半導体基板の第2主面の表層に不純物層を形成してなる半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の第1主面側にコンタクトホールを形成するとともに、半導体基板の厚さを薄くした後に半導体基板の第2主面の表層に不純物層を形成してなる半導体装置の製造方法として、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1には、フィールドストップ層(FS層)を有する構成の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の製造方法が示されている。具体的には、先ず半導体ウエハ(半導体基板)の表面(第1主面)に設けた層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、エミッタ等の表面電極を形成する。すなわち、表面構造を形成する。その後、半導体基板の裏面(第2主面)を研削除去して半導体基板を薄くし、研削除去した後の半導体基板の第2主面にイオン注入し、熱処理することで、不純物層(FS層及びコレクタ層)を形成するようにしている。
【特許文献1】特開2004−103982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される製造方法においては、熱処理をする前に表面電極を形成するため、表面電極を構成する材料の融点以下である比較的低温(例えば500℃以下)で熱処理をせざるを得ない。したがって、イオン注入された不純物の活性化が不十分となる恐れがある。
【0005】
また、特許文献1とは別の製造方法として、例えば図5及び図6に示す製造方法も考えられる。図5は、特許文献1とは別の半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)はコンタクトホール形成工程、(b)は研削除去工程、(c)は不純物導入工程である。図6は、図5に続く半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)は熱処理工程、(b)は表面電極形成工程、(c)は裏面電極形成工程である。なお、図5及び図6においては、後述する実施形態同様、トレンチゲート構造のFS型IGBTを製造するものとし、便宜上、トレンチ、ゲート絶縁膜、ゲート電極、エミッタ領域を省略して図示している。また、符号については、後述する実施形態と同一構成について同一の符号を付与するものとする。
【0006】
先ず半導体基板101の第1主面上に設けた層間絶縁膜107に、フォトリソグラフィによりコンタクトホール109を形成する(図5(a)参照)。そして、半導体基板101の第2主面を研削除去して半導体基板101を薄くする(図5(b)参照)。研削除去後、半導体基板の第2主面にイオン注入(図5(c)参照)し、熱処理することで、不純物層(コレクタ層110及びFS層112)を形成する(図6(a)参照)。そして、不純物層形成後に、表面電極(エミッタ電極108)を形成(図6(b)参照)し、図示されないパッシベーション膜形成後に、裏面電極(コレクタ電極111)を形成する(図6(c)参照)。このような製造方法によれば、表面電極形成前に熱処理を実施するので、熱処理温度をイオン注入された不純物の活性化が十分な温度とすることが可能である。なお、図5(b)に示す符号121は、研削除去する際に半導体基板101の第1主面側の表面を保護する第1の保護部材であり、図5(c)に示す符号122は、不純物導入時に半導体基板101の第1主面側の表面を保護する第2の保護部材である。
【0007】
しかしながら、図5及び図6に示す製造方法においては、コンタクトホール109形成後、表面電極108を形成する前に半導体基板101を研削除去するため、コンタクトホール109から露出する半導体基板101の第1主面側の表層が、研削により生じた微粒子や処理液等により汚染され、半導体基板101に構成された素子の特性劣化や歩留り低下を引き起こす恐れがある。なお、上述したように第1の保護部材121によって保護したとしても、表面電極形成前には第1の保護部材121を除去するため、研削により生じた微粒子や処理液等により汚染される恐れがある。
【0008】
なお、図5及び図6に示す製造方法に対して、コンタクトホール109の形成前に半導体基板101の第2主面を研削除去することも考えられる。しかしながら、この場合には、厚さの薄い半導体基板101に対して、コンタクトホール109形成のためのフォトリソグラフィ工程を実施しなければならず、半導体基板101の反りによって精度良くコンタクトホール109を形成するのが困難となる。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、半導体基板の第2主面に導入された不純物を活性化でき、半導体基板の第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぎ、半導体基板の第1主面側に精度良くコンタクトホールを形成することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明は、半導体基板の第1主面上に、層間絶縁膜を形成する工程と、コンタクトホール形成予定領域において、層間絶縁膜を所定厚さ分残して途中まで除去する工程と、半導体基板を第1主面の裏面である第2主面側から所定厚さ除去し、半導体基板を薄くする工程と、薄くされた半導体基板に対し、第2主面の表層に不純物を導入する工程と、不純物の導入後、半導体基板を熱処理する工程と、熱処理後、残された所定厚さの層間絶縁膜を除去してコンタクトホールを形成し、半導体基板を層間絶縁膜から露出させる工程と、コンタクトホール内及び層間絶縁膜上に金属電極を形成する工程と、を備え、熱処理する工程において、半導体基板を、金属電極を構成する材料の融点以上の温度で熱処理することを特徴とする。
【0011】
このように本発明によれば、不純物の導入後の熱処理を実施した後に、半導体基板の第1主面側に金属電極を形成する。したがって、熱処理する工程において、金属電極を構成する材料の融点以上の温度で、半導体基板を熱処理することができる。すなわち、半導体基板の第2主面に導入された不純物を活性化させることができる。また、熱処理する前に、層間絶縁膜を表面から途中まで除去する(すなわち、コンタクトホールの一部を形成する)ので、その後の熱処理により、コンタクトホールの開口端部(肩部)を緩やかな曲線形状とすることができる。
【0012】
また、層間絶縁膜を一部残した状態で、半導体基板の第2主面側を所定厚さ除去する。したがって、除去により生じた微粒子や処理液等により、半導体基板の表層が汚染されるのを防ぐことができる。すなわち、半導体基板の第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぐことができる。
【0013】
さらには、半導体基板の第2主面側を所定厚さ除去する前に、層間絶縁膜を表面から途中まで除去する(すなわち、コンタクトホールの一部を形成する)。すなわち、厚さの厚い半導体基板に対して、コンタクトホール形成のためのフォトリソグラフィ工程を実施する。したがって、半導体基板の第1主面側に精度良くコンタクトホールを形成することができる。
【0014】
請求項2に記載のように、コンタクトホールを形成する工程において、半導体基板の厚さ方向に露出する、所定厚さの層間絶縁膜を含む層間絶縁膜全面をエッチングしても良い。例えばウェットエッチングや等方性ドライエッチングにより全面をエッチングし、コンタクトホールが形成された時点で、エッチングを終了とすれば良い。これによれば、製造方法を簡素化することができる。
【0015】
次に、請求項3に記載のように、半導体基板の第1主面上に、保護膜を形成する工程と、保護膜の上に、層間絶縁膜を形成する工程と、コンタクトホール形成予定領域において、保護膜を残して層間絶縁膜を除去する工程と、半導体基板を第1主面の裏面である第2主面側から所定厚さ除去し、半導体基板を薄くする工程と、薄くされた半導体基板に対し、第2主面の表層に不純物を導入する工程と、不純物の導入後、半導体基板を熱処理する工程と、熱処理後、保護膜を除去してコンタクトホールを形成し、半導体基板を層間絶縁膜から露出させる工程と、コンタクトホール内及び層間絶縁膜上に金属電極を形成する工程と、を備え、熱処理する工程において、半導体基板を、金属電極を構成する材料の融点以上の温度で熱処理することを特徴とする。
【0016】
このように本発明によれば、不純物の導入後の熱処理を実施した後に、半導体基板の第1主面側に金属電極を形成する。したがって、熱処理する工程において、金属電極を構成する材料の融点以上の温度で、半導体基板を熱処理することができる。すなわち、半導体基板の第2主面に導入された不純物を活性化させることができる。また、熱処理する前に、保護膜を残して層間絶縁膜を除去する(すなわち、コンタクトホールの一部を形成する)ので、その後の熱処理により、コンタクトホールの開口端部(肩部)を緩やかな曲線形状とすることができる。
【0017】
また、保護膜を残した状態で、半導体基板の第2主面側を所定厚さ除去する。したがって、除去により生じた微粒子や処理液等により、半導体基板の表層が汚染されるのを防ぐことができる。すなわち、半導体基板の第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぐことができる。
【0018】
さらには、半導体基板の第2主面側を所定厚さ除去する前に、層間絶縁膜を除去する(すなわち、コンタクトホールの一部を形成する)。すなわち、厚さの厚い半導体基板に対して、コンタクトホール形成のためのフォトリソグラフィ工程を実施する。したがって、半導体基板の第1主面側に精度良くコンタクトホールを形成することができる。
【0019】
請求項4に記載のように、コンタクトホールを形成する工程において、半導体基板の厚さ方向に露出する、保護部及び層間絶縁膜全面をエッチングしても良い。本発明の作用効果は、請求項2に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0020】
なお、800℃未満だと、コンタクトホールの肩部の形状を曲線形状とする効果が小さく、金属電極のステップカバレッジが悪くなる。また、半導体基板の第1主面の表層に形成される不純物拡散層の拡散温度以上とすると、所望の素子特性を確保することができない。したがって、請求項5に記載のように、熱処理する工程において、熱処理温度を、800℃以上、半導体基板の第1主面の表層に形成される不純物拡散層の拡散温度未満の範囲内とすると良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る製造方法を適用した半導体装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体基板101に構成された素子として、トレンチゲート構造のフィールドストップ型IGBT(Insulated GateBipolar Transistor)を含むものである。
【0023】
半導体基板101は、IGBTのドリフト層となるN導電型(N−)のFZウエハであり、例えば濃度が1×1014cm−3程度である。この半導体基板101の第1主面側表層には、IGBTの形成領域において、第1半導体領域であるP導電型(P)のベース領域102が選択的に形成されている。
【0024】
ベース領域102には、半導体基板101の第1主面よりベース領域102を貫通し、底面が半導体基板101に達するトレンチ103が選択的に形成されている。本実施形態においては、直径略1μm、深さ略5μmのトレンチ103が形成されている。そして、トレンチ底面及び側面上に形成されたゲート絶縁膜104(例えば酸化膜)を介して、トレンチ103内に例えば濃度が1×1020cm−3程度のポリシリコンが充填され、ゲート電極105が構成されている。
【0025】
また、ベース領域102には、トレンチ103(ゲート電極105)の側面部位に隣接して、第1主面側表層に第2の半導体領域であるN導電型(N+)のエミッタ領域106が選択的に形成されている。本実施形態において、エミッタ領域106は、厚さ0.5μm程度、濃度が1×1019cm−3程度である。そして、ゲート電極105を含む半導体基板101の第1主面上に層間絶縁膜107が形成されている。この層間絶縁膜107上には、例えばアルミニウム系材料を用いて構成されたエミッタ電極108が形成されており、エミッタ電極108は、層間絶縁膜107に形成されたコンタクトホール109を介して、エミッタ領域106と電気的に接続されている。なお、層間絶縁膜107とは、半導体基板101の第1主面(ベース領域102及びエミッタ領域106の表面)とエミッタ電極108との間に配置された絶縁膜であり、本実施形態においては、少なくともBPSG膜を含んでいる。また、エミッタ電極108が特許請求の範囲に記載の金属電極に相当する。
【0026】
半導体基板101の第2主面側表層には、P導電型(P+)のコレクタ層110が選択的に形成されている。本実施形態において、コレクタ層110は、厚さ0.5μm程度、濃度が1×1018cm−3程度である。そして、コレクタ層110は、例えばアルミニウム系材料を用いて構成されたコレクタ電極111と電気的に接続されている。
【0027】
また、本実施形態においては、図1に示すように、ドリフト層としての半導体基板101とコレクタ層110との間に、N導電型(N)のフィールドストップ層112(以下FS層112と示す)が形成されている。このようにトレンチゲート構造のIGBTとして、空乏層を止めるFS層112を備えたIGBTを採用すると、他のトレンチ構造(パンチスルー型、ノンパンチスルー型)に比べて、半導体基板101(半導体装置100)の厚さを薄くすることができる。したがって、過剰キャリアが少なく、空乏層が伸びきった状態での中性領域の残り幅が少ないため、SW損失を低減することができる。なお、図1に示すベース領域102の表面(半導体基板101の第1主面)からコレクタ層110の表面(半導体基板101の第2主面)までの厚さは、略130μmである。
【0028】
次に、上記構成の半導体装置100におけるIGBTの動作を説明する。エミッタ電極108とコレクタ電極111間に所定のコレクタ電圧を、エミッタ電極108とゲート電極105間に所定のゲート電圧を印加する(すなわち、ゲートをオンする)と、ベース領域102のエミッタ領域106と半導体基板101との間の部分がN型に反転してチャネルが形成される。このチャネルを通じて、エミッタ電極108より電子が半導体基板101に注入される。そして、注入された電子により、コレクタ層110と半導体基板101が順バイアスされ、これによりコレクタ層110からホールが注入されて半導体基板101の抵抗が大幅に下がり、IGBTの電流容量が増大する。また、エミッタ電極108とゲート電極105間にオン状態で印加されていた、ゲート電圧を0V又は逆バイアス(すなわち、ゲートをオフする)と、N型に反転していたチャネル領域がP型の領域に戻り、エミッタ電極108からの電子の注入が止まる。この注入停止により、コレクタ層110からのホールの注入も止まる。その後、半導体基板101に蓄積されていたキャリア(電子とホール)が、それぞれコレクタ電極111とエミッタ電極108から排出されるか、又は、互いに再結合して消滅する。
【0029】
次に、図2及び図3を用いて、上記構成の半導体装置100の製造方法について説明する。図2は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)は層間絶縁膜形成工程、(b)は第1除去工程、(c)は研削除去工程、(d)は不純物導入工程である。図3は、図2に続く半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)は熱処理工程、(b)は第2除去工程、(c)は表面電極形成工程、(d)は裏面電極形成工程である。なお、図2(a)〜(d)、図3(a)〜(d)においては、便宜上、トレンチ103、ゲート絶縁膜104、ゲート電極105、エミッタ領域106を省略して図示している。
【0030】
先ず、厚さ400〜800μmの半導体基板101の第1主面側表層にベース領域102を形成し、ゲート絶縁膜104、ゲート電極105、エミッタ領域106などの素子の表面構造部分を形成する。
【0031】
次に、図2(a)に示すように、半導体基板101の第1主面上、すなわちベース領域102、エミッタ領域106及びゲート電極105上に、厚さ800nm程度のBPSGからなる層間絶縁膜107を形成する。なお、形成方法としては、CVD法を採用することができる。この工程が、特許請求の範囲に示す層間絶縁膜107の形成工程に相当する。
【0032】
層間絶縁膜107形成後、図2(b)に示すように、層間絶縁膜107上にフォトレジスト120を形成し、フォトリソグラフィによる第1除去工程を実施する。具体的には、図2(b)に示すように、フォトレジスト120のうち、ベース領域102及びエミッタ領域106上に位置する部位を開口する。そして、フォトレジスト120をマスクとして、層間絶縁膜107のうち、ベース領域102及びエミッタ領域106上のコンタクトホール形成予定領域にて、例えば反応性イオンエッチングやプラズマエッチングを実施する。この第1除去工程では、半導体基板101の厚さ方向において、層間絶縁膜107を途中まで除去し、コンタクトホール形成予定領域において、所定厚さ(例えば200nm程度)の層間絶縁膜107が残された状態とする。すなわち、未完成のコンタクトホール109aを形成する。この工程が、特許請求の範囲に示す層間絶縁膜107を途中まで除去する工程に相当する。
【0033】
このように、本実施形態においては、研削除去工程の前に、層間絶縁膜107を表面から途中まで除去する(未完成のコンタクトホール109aを形成する)ので、半導体基板101の厚さが厚い状態で、コンタクトホール109の位置を確定することができる。したがって、半導体基板101の第1主面側に精度良くコンタクトホール109を形成することができる。
【0034】
第1除去工程後、図2(c)に示すように、半導体基板101を第1主面の裏面である第2主面側から所定厚さ除去し、半導体基板101の厚さを薄くする研削除去工程を実施する。具体的には、図2(c)に示すように、半導体基板101の第1主面側の表面に、傷付き防止用の第1の保護部材121を貼着した状態で、半導体基板101を第2主面側から所定厚さ研削除去し、半導体基板101の厚さを200μm以下とする。この工程が、特許請求の範囲に示す半導体基板101を薄くする工程に相当する。なお、第1の保護部材121は、研削除去後に剥がされるものである。また、第1の保護部材121を配置せずに、研削除去を実施することもできる。
【0035】
本実施形態においては、残された層間絶縁膜107によって、半導体基板101の第1主面が保護されているため、研削除去により生じた微粒子や処理液等により、半導体基板101の第1主面側の表層が汚染されるのを防ぐことができる。すなわち、半導体基板101の第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぐことができる。
【0036】
研削除去工程後、図2(d)に示すように、薄くされた半導体基板101に対し、第2主面の表層に不純物を導入する不純物導入工程を実施する。具体的には、図2(d)に示すように、半導体基板101の第1主面側の表面に、不純物による半導体基板101の第1主面を保護する第2の保護部材122を配置した状態で、半導体基板101を第2主面に、N導電型不純物(例えばリン)のイオン注入を行い、さらにP導電型不純物(例えばボロン)のイオン注入を行う。これにより、半導体基板101の第2主面側の表層に、N導電型不純物によるイオン注入層112aとP導電型不純物によるイオン注入層110aが形成される。なお、不純物の導入としては、イオン注入に限定されるものではない。この工程が、特許請求の範囲に示す不純物を導入する工程に相当する。なお、第2の保護部材122は、イオン注入後に除去される。また、第2の保護部材122を配置せずに、研削除去を実施することもできる。
【0037】
不純物導入工程後、図3(a)に示すように、半導体基板101を熱処理する熱処理工程を実施する。この熱処理工程の目的は2つあり、第1の目的が、半導体基板101をアニールすることにより、注入されたイオンを活性化し、損傷を受けた領域を回復させること、第2の目的が、未完成のコンタクトホール109aの開口端部(肩部)を緩やかな曲線形状とする(曲率半径を大きくする)ことにある。なお、第1目的が主目的である。具体的には、半導体基板101を、エミッタ電極108を構成する材料の融点以上の温度で熱処理する。このように、エミッタ電極108を構成する材料の融点以上の温度で熱処理すると、図3(a)に示すように、イオン注入された不純物が活性化され、所望の拡散深さ、ピーク濃度を有するコレクタ層110及びFS層112が形成される。また、未完成のコンタクトホール109aの開口端部(肩部)が緩やかな曲線形状となる。また、本実施形態においては、残された層間絶縁膜107によって、半導体基板101の第1主面が保護されているため、不純物の侵入を阻止することができる。
【0038】
なお、熱処理温度を800℃未満とすると、層間絶縁膜107の流動化の効果(すなわち、未完成のコンタクトホール109aの肩部を曲線形状とする効果)が小さく、エミッタ電極108のステップカバレッジが悪くなる。また、半導体基板101の第1主面の表層に形成される不純物拡散層(本実施形態においてはエミッタ領域106)の拡散温度以上とすると、所望の素子特性を確保することができない。したがって、熱処理工程において、熱処理温度を、800℃以上、半導体基板101の第1主面の表層に形成される不純物拡散層(エミッタ領域106)の拡散温度未満の範囲内とすることが好ましい。本実施形態においては、熱処理温度を900℃としている。
【0039】
熱処理工程後、図3(b)に示すように、残された所定厚さの層間絶縁膜107を除去して、未完成のコンタクトホール109aを完全なコンタクトホール109とし、半導体基板101を層間絶縁膜107から露出させる第2除去工程を実施する。本実施形態においては、半導体基板101の厚さ方向に露出する、所定厚さの層間絶縁膜107を含む層間絶縁膜107全面を、例えばウェットエッチングする。これにより、層間絶縁膜107の厚さは、600nm程度となる。なお、完全なコンタクトホール109とは、コンタクトホール109を介して、半導体基板101の第1主面が露出された状態にあるものを指す。
【0040】
このように、本実施形態においては、第1除去工程において、未完成のコンタクトホール109aを形成するので、第2除去工程において、層間絶縁膜107を全面エッチングしてコンタクトホール109を形成する。すなわち、第1除去工程と第2除去工程とにより、コンタクトホール109が形成される。これによれば、フォトリソグラフィが不要であるので、製造方法を簡素化することができる。なお、ウェットエッチング以外にも、等方性ドライエッチングを採用することもできる。また、フォトリソグラフィが必要であるが、層間絶縁膜107のうち、残された所定厚さの層間絶縁膜107を除去することで、コンタクトホール109を形成することも可能である。
【0041】
第2除去工程後、図3(c)に示すように、コンタクトホール109内及び層間絶縁膜107上に、例えばスパッタ法によりアルミニウム系材料を堆積させ、パターニングして、エミッタ電極108を形成する表面電極形成工程を実施する。そして、図示されない、パッシベーション膜形成工程後、図3(d)に示すように、半導体基板101の第2主面上(コレクタ層110上)にコレクタ電極111を形成する裏面電極形成工程を実施する。以上により、図1に示される半導体装置100を形成することができる。
【0042】
このように本実施形態に係る半導体装置100の製造方法によれば、不純物導入後の熱処理を実施した後に、半導体基板101の第1主面側にエミッタ電極108(表面電極)を形成する。したがって、熱処理工程において、エミッタ電極108を構成する材料の融点以上の温度で、半導体基板101を熱処理することができる。すなわち、半導体基板101の第2主面に導入された不純物を活性化させることができる。また、熱処理する前に、層間絶縁膜107を表面から途中まで除去する(すなわち、未完成のコンタクトホール109aを形成する)ので、その後の熱処理により、コンタクトホール109a(109)の開口端部(肩部)を緩やかな曲線形状とすることができる。
【0043】
また、層間絶縁膜107を一部残した状態で、半導体基板101の第2主面側を研削除去するので、除去により生じた微粒子や処理液等により、半導体基板101の表層が汚染されるのを防ぐことができる。すなわち、半導体基板101の第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぐことができる。
【0044】
さらには、半導体基板101の第2主面側を研削除去する前に、半導体基板101の厚さが厚い状態で、層間絶縁膜107を表面から途中まで除去してコンタクトホール109(109a)の位置を確定するので、半導体基板101の第1主面側に精度良くコンタクトホール109を形成することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図4に基づいて説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一部を示す工程別断面図であり、(a)は保護膜及び層間絶縁膜を形成する工程、(b)は第1除去工程である。
【0046】
第2実施形態に係る半導体装置100の製造方法は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0047】
第1実施形態においては、コンタクトホール形成予定領域において、層間絶縁膜107を途中まで除去し、所定厚さ分を残すことで、研削除去時及び熱処理時に、半導体基板101の第1主面を保護する例を示した。これに対し、本実施形態においては、半導体基板101と層間絶縁膜107との間に保護膜を設け、保護膜を残して、層間絶縁膜107を除去する点を特徴とする。その他の点については、基本的に第1実施形態に示した方法と同様である。
【0048】
具体的には、図4(a)に示すように、半導体基板101の第1主面上、すなわちベース領域102、エミッタ領域106及びゲート電極105上に、先ず、厚さ200nm程度の保護膜130を形成する。この工程が、特許請求の範囲に示す保護膜130の形成工程に相当する。保護膜130としては、例えばシリコン窒化膜を採用することができる。この保護膜130は、第1実施形態に示した、残された所定厚さの層間絶縁膜107と同様の機能を果たすだけでなく、本実施形態に係る第1除去工程において、エッチングストッパとしての機能を果たす。そして、保護膜130上に、厚さ600nm程度のBPSGからなる層間絶縁膜107を形成する。
【0049】
層間絶縁膜107形成後、図4(b)に示すように、層間絶縁膜107上にフォトレジスト120を形成し、フォトリソグラフィによる第1除去工程を実施する。具体的には、図4(b)に示すように、フォトレジスト120のうち、ベース領域102及びエミッタ領域106上に位置する部位を開口する。そして、フォトレジスト120をマスクとして、層間絶縁膜107のうち、ベース領域102及びエミッタ領域106上のコンタクトホール形成予定領域にて、例えば反応性イオンエッチングやプラズマエッチングを実施する。この第1除去工程では、半導体基板101の厚さ方向において、保護膜130をエッチングストッパとし、層間絶縁膜107を除去する。すなわち、コンタクトホール形成予定領域において、保護膜130の残された未完成のコンタクトホール109aを形成する。
【0050】
第1除去工程後は、第1実施形態同様、研削除去工程、不純物導入工程、熱処理工程、第2除去工程、表面電極形成工程を経て、半導体装置100が形成される。なお、本実施形態においては、第1除去工程において、保護膜130を残しているので、第2除去工程において、保護膜130を除去することで、未完成のコンタクトホール109aを完全なコンタクトホール109とする。なお、完全なコンタクトホール109とは、コンタクトホール109を介して、半導体基板101の第1主面が露出された状態にあるものを指す。
【0051】
このように本実施形態に係る半導体装置100の製造方法においても、不純物導入後の熱処理を実施した後に、半導体基板101の第1主面側にエミッタ電極108(表面電極)を形成する。したがって、熱処理工程において、エミッタ電極108を構成する材料の融点以上の温度で、半導体基板101を熱処理することができる。すなわち、半導体基板101の第2主面に導入された不純物を活性化させることができる。また、熱処理する前に、保護膜130を残した未完成のコンタクトホール109aを形成するので、その後の熱処理により、コンタクトホール109a(109)の開口端部(肩部)を緩やかな曲線形状とすることができる。
【0052】
また、保護膜130を残した状態で、半導体基板101の第2主面側を研削除去するので、除去により生じた微粒子や処理液等により、半導体基板101の表層が汚染されるのを防ぐことができる。すなわち、半導体基板101の第2主面側を加工しながらも素子の特性劣化を防ぐことができる。
【0053】
また、半導体基板101の第2主面側を研削除去する前に、半導体基板101の厚さが厚い状態で、層間絶縁膜107を除去してコンタクトホール109(109a)の位置を確定するので、半導体基板101の第1主面側に精度良くコンタクトホール109を形成することができる。
【0054】
さらに、本実施形態においては、保護膜130をエッチングストッパとして層間絶縁膜107を除去するので、第1除去工程後に、確実に所定厚さの保護膜130を残すことができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0056】
本実施形態においては、半導体装置100に含まれる、トレンチゲート構造のFS型IGBTに、本発明の製造方法を適用する例を示した。しかしながら、本発明の製造方法を適用範囲は、上記素子に限定されるものではない。半導体基板の第1主面側において、第1主面上にコンタクトホールの形成された層間絶縁膜を有し、層間絶縁膜上に形成された金属電極がコンタクトホールを通じて半導体基板と電気的に接続されている。そして、半導体基板が第2主面側からの研削除去により薄く加工されており、その加工面に不純物が導入されて、熱処理されている構成であれば適用することができる。換言すれば、半導体基板101の両表面(第1主面と第2主面)にそれぞれ電極を有し、この電極間に電流を流す構成の素子であれば適用することができる。例えば、上記構成以外のIGBTや、パワーMOSトランジスタ、ダイオード、サイリスタ等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係る製造方法を適用した半導体装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)は層間絶縁膜形成工程、(b)は第1除去工程、(c)は研削除去工程、(d)は不純物導入工程である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)は熱処理工程、(b)は第2除去工程、(c)は表面電極形成工程、(d)は裏面電極形成工程である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を示す工程別断面図であり、(a)は保護膜及び層間絶縁膜を形成する工程、(b)は第1除去工程である。
【図5】従来の半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)はコンタクトホール形成工程、(b)は研削除去工程、(c)は不純物導入工程である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造方法を示す工程別断面図であり、(a)は熱処理工程、(b)は表面電極形成工程、(c)は裏面電極形成工程である。
【符号の説明】
【0058】
100・・・半導体装置
101・・・半導体基板
102・・・ベース領域
106・・・エミッタ領域
107・・・層間絶縁膜
108・・・エミッタ電極(表面電極)
109・・・コンタクトホール
109a・・・未完成のコンタクトホール
110・・・コレクタ層
111・・・コレクタ電極(裏面電極)
112・・・フィールドストップ層(FS層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1主面上に、層間絶縁膜を形成する工程と、
コンタクトホール形成予定領域において、前記層間絶縁膜を所定厚さ分残して途中まで除去する工程と、
前記半導体基板を前記第1主面の裏面である第2主面側から所定厚さ除去し、前記半導体基板を薄くする工程と、
薄くされた前記半導体基板に対し、前記第2主面の表層に不純物を導入する工程と、
前記不純物の導入後、前記半導体基板を熱処理する工程と、
前記熱処理後、残された所定厚さの前記層間絶縁膜を除去してコンタクトホールを形成し、前記半導体基板を前記層間絶縁膜から露出させる工程と、
前記コンタクトホール内及び前記層間絶縁膜上に金属電極を形成する工程と、を備え、
前記熱処理する工程において、前記半導体基板を、前記金属電極を構成する材料の融点以上の温度で熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記コンタクトホールを形成する工程において、前記半導体基板の厚さ方向に露出する、所定厚さの前記層間絶縁膜を含む前記層間絶縁膜全面をエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体基板の第1主面上に、保護膜を形成する工程と、
前記保護膜の上に、層間絶縁膜を形成する工程と、
コンタクトホール形成予定領域において、前記保護膜を残して前記層間絶縁膜を除去する工程と、
前記半導体基板を前記第1主面の裏面である第2主面側から所定厚さ除去し、前記半導体基板を薄くする工程と、
薄くされた前記半導体基板に対し、前記第2主面の表層に不純物を導入する工程と、
前記不純物の導入後、前記半導体基板を熱処理する工程と、
前記熱処理後、前記保護膜を除去してコンタクトホールを形成し、前記半導体基板を前記層間絶縁膜から露出させる工程と、
前記コンタクトホール内及び前記層間絶縁膜上に金属電極を形成する工程と、を備え、
前記熱処理する工程において、前記半導体基板を、前記金属電極を構成する材料の融点以上の温度で熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記コンタクトホールを形成する工程において、前記半導体基板の厚さ方向に露出する、前記保護部及び前記層間絶縁膜全面をエッチングすることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理する工程において、熱処理温度を、800℃以上、前記半導体基板の第1主面の表層に形成される不純物拡散層の拡散温度未満の範囲内としたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−329279(P2007−329279A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158951(P2006−158951)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】