説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の製造コストを低減させ、信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体ウエハSWを支持するステージ53と、半導体ウエハSWに対向するターゲット54と、半導体ウエハSWとターゲット54との間に配置されたコリメータ61と、半導体ウエハSWとターゲット54との間の空間とコリメータ61とを囲むロアーシールド62及びダークスペースシールド63とを備える成膜装置を用い、スパッタリング法によって半導体ウエハSWにNi−Pt合金膜を形成する。この際、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域にAl膜71を予め形成しておくが、コリメータ61の下面61bより下に位置する領域にはAl膜71を形成しない。ロアーシールド62及びダークスペースシールド63を取り外して洗浄する際に、アルカリ溶液によってAl膜71を溶解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、スパッタリング法で合金膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化が進むにつれて、電界効果トランジスタ(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)はスケーリング則に従い微細化されるが、ゲートやソース・ドレインの抵抗が増大して電界効果トランジスタを微細化しても高速動作が得られないという問題が生ずる。そこで、ゲートを構成する導電膜およびソース・ドレインを構成する半導体領域の表面に自己整合により低抵抗の金属シリサイド層、例えばニッケルシリサイド層またはコバルトシリサイド層などを形成することにより、ゲートやソース・ドレインを低抵抗化するサリサイド技術が検討されている。
【0003】
サリサイド技術では、半導体基板に形成したソース・ドレイン領域上に金属膜を形成し、熱処理によってこの金属膜とソース・ドレイン領域を構成するシリコン領域とを反応させることで、ソース・ドレイン領域の上層部に金属シリサイド層を形成する。
【0004】
特開平10−321559号公報(特許文献1)には、スパッタ成膜室における成膜中の発塵を低減する技術が記載されている。
【0005】
特開平10−88337号公報(特許文献2)には、スパッタ装置のコリメータに付着した付着物の剥離を防止する技術が記載されている。
【0006】
特開2010−98042号公報(特許文献3)には、NiPt合金膜を用いてニッケル白金シリサイド層を形成する技術が記載されている。
【0007】
特開2006−249534号公報(特許文献4)には、アルミニウムを下地として金、銀、白金族などの貴金属被膜が表面に形成されている基材を、アルカリ液に浸漬し、アルミニウム下地層をアルカリ溶解することによって、貴金属被膜を溶解せずに剥離させ、固液分離し、剥離した貴金属を金属状態で回収する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−321559号公報
【特許文献2】特開平10−88337号公報
【特許文献3】特開2010−98042号公報
【特許文献4】特開2006−249534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者の検討によれば、次のことが分かった。
【0010】
ゲートを構成する導電膜およびソース・ドレインを構成する半導体領域の表面にサリサイドプロセスにより形成する金属シリサイド層は、微細化による低抵抗化の要求から、コバルトシリサイドよりも、ニッケルシリサイドからなることが好ましい。金属シリサイド層をコバルトシリサイドではなくニッケルシリサイドとすることで、金属シリサイド層の抵抗をより低くすることができ、ソース・ドレインの拡散抵抗や、コンタクト抵抗などをより低減できる。また、金属シリサイド層をコバルトシリサイドではなくニッケルシリサイドとすることで、金属シリサイド層を薄く形成することができ、ソース・ドレインの接合深さを浅くできるので、電界効果トランジスタの微細化に有利となる。
【0011】
金属シリサイド層としてニッケルシリサイド層を用いる場合、ニッケルシリサイド層中にPtが添加されていると、形成された金属シリサイド層の凝集が少ないこと、形成された金属シリサイド層において、高抵抗なNiSi相の異常成長を抑制できることなどの利点を得られるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0012】
サリサイド技術でNiとPtのシリサイドからなるPt添加ニッケルシリサイド層を形成するには、Ni−Pt合金膜を半導体基板上に形成する必要がある。このNi−Pt合金膜を半導体基板上にスパッタリング法で成膜する場合、スパッタリングに使用するターゲットはNi−Pt合金で構成される。
【0013】
半導体基板上にNi−Pt合金膜をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットからのスパッタ粒子が、半導体基板上だけでなく、成膜装置のチャンバの内壁にも付着する虞がある。チャンバの内壁に付着したスパッタ粒子による付着物は除去しにくい。このため、ターゲットからのスパッタ粒子がチャンバの内壁に付着(堆積)するのを防止するためのシールド部材を設け、このシールド部材をチャンバから取り外し可能としておけば、スパッタ粒子がチャンバの内壁に付着するのを防止できる。しかしながら、チャンバに付着しない代わりに、シールド部材にスパッタ粒子が付着してしまう。
【0014】
半導体基板にNi−Pt合金膜を成膜する際に、スパッタ粒子がシールド部材へ付着したことによって形成された付着物は、Ni−Pt合金で構成される。半導体基板へのNi−Pt合金膜の成膜工程を繰り返すと、スパッタ粒子によるシールド部材への付着物も増加していくため、所定の枚数の半導体基板に対してNi−Pt合金膜を成膜する処理を行った後、シールド部材を交換する必要がある。成膜装置から取り外されたシールド部材は、洗浄してスパッタ粒子による付着物を上手く除去できれば、再利用が可能となるため、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0015】
また、Ptは高価であり、資源的に回収する価値があるため、シールド部材に付着したNi−Pt合金からなる付着物を的確に除去して、Ptを回収することも望まれる。Ptの回収率を上げることは、半導体装置の製造コストの低減につながる。
【0016】
このため、シールド部材に付着したNi−Pt合金を的確に除去する手法が求められる。
【0017】
また、スパッタリング法で半導体基板上に成膜する場合、半導体基板の主面に異物が混入すると、製造された半導体装置の信頼性を低下させる可能性がある。このため、成膜時に半導体基板の主面へ異物が混入する可能性を抑制して、製造された半導体装置の信頼性を向上させることが望まれる。
【0018】
本発明の目的は、半導体装置の製造コストを低減させることができる技術を提供することにある。
【0019】
また、本発明の目的は、半導体装置の信頼性を向上させることができる技術を提供することにある。
【0020】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0022】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、チャンバと、前記チャンバ内に配置されて半導体ウエハを支持する支持台と、前記支持台に支持された前記半導体ウエハに対向するターゲットと、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間に配置されたコリメータと、前記チャンバ内に配置されて前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間の空間と前記コリメータとを囲むシールド部材とを備える成膜装置を用いる。そして、(a)スパッタリング法によって前記半導体ウエハの主面上にNi−Pt合金膜を形成する工程、(b)前記(a)工程後、前記シールド部材を前記成膜装置から取り外す工程、(c)前記(b)工程後、前記シールド部材を洗浄する工程を有する。前記(a)工程で用いられる前記シールド部材は、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より上に位置する領域の少なくとも一部にアルミニウム膜が形成され、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より下に位置する領域には前記アルミニウム膜が形成されていない。前記(c)工程は、(c1)アルカリ溶液によって前記アルミニウム膜を溶解して除去する工程を含んでいる。
【0023】
また、他の代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、チャンバと、前記チャンバ内に配置されて半導体ウエハを支持する支持台と、前記支持台に支持された前記半導体ウエハに対向するターゲットと、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間に配置されたコリメータと、前記チャンバ内に配置され、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間の空間と前記コリメータとを囲むシールド部材とを備える成膜装置を用いる。そして、(a)スパッタリング法によって前記半導体ウエハの主面上に合金膜を形成する工程、(b)前記(a)工程後、前記シールド部材を前記成膜装置から取り外す工程、(c)前記(b)工程後、前記シールド部材を洗浄する工程を有する。前記ターゲットは、第1元素と第2元素との合金からなり、前記第1元素は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Geからなる群から選択された少なくとも一種からなり、前記第2元素は、Nb,Mo,Pd,Au,Pt,Ru,Rh,Irからなる群から選択された少なくとも一種からなり、前記合金膜は、第1元素と第2元素との合金膜である。前記(a)工程で用いられる前記シールド部材は、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より上に位置する領域の少なくとも一部にAl膜、Zn膜、Pb膜またはSn膜からなる金属膜が形成され、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より下に位置する領域には前記金属膜が形成されていない。前記(c)工程は、(c1)アルカリ溶液によって前記金属膜を溶解して除去する工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0025】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の製造コストを低減させることができる。
【0026】
また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図である。
【図8】本発明の一実施の形態によるシリサイド材料の成膜装置の概略平面図である。
【図9】本発明の一実施の形態によるシリサイド材料の成膜工程図である。
【図10】図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図15】合金膜形成工程で用いる成膜装置の説明図(断面図)である。
【図16】合金膜形成工程で用いる成膜装置の説明図(断面図)である。
【図17】合金膜形成工程で用いる成膜装置の説明図(断面図)である。
【図18】合金膜形成工程で用いる成膜装置の説明図(断面図)である。
【図19】合金膜形成工程で用いる成膜装置の説明図(断面図)である。
【図20】成膜装置を用いたNi−Pt合金膜の成膜工程から、コリメータ、ロアーシールドおよびダークスペースシールドの洗浄工程までを示す工程フロー図である。
【図21】ステンレス鋼板にAl膜をAl溶射によって形成し、そのAl膜を引っ張ったときに、どの程度の引っ張り荷重で剥がれたかを示すグラフである。
【図22】Al膜の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0030】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0031】
<半導体装置の製造工程について>
本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図4は、本発明の一実施の形態である半導体装置、例えばCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0032】
まず、図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。それから、半導体基板1の主面に素子分離領域2を形成する。素子分離領域2は酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon )法などにより形成される。例えば、半導体基板1に形成された溝(素子分離溝)2aに埋め込まれた絶縁膜により、素子分離領域2を形成することができる。
【0033】
次に、図2に示されるように、半導体基板1の主面から所定の深さに渡ってp型ウエル3およびn型ウエル4を形成する。p型ウエル3は、pチャネル型MISFET形成予定領域を覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、nチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。また、n型ウエル4は、nチャネル型MISFET形成予定領域を覆う他のフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、pチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。
【0034】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、半導体基板1の表面(すなわちp型ウエル3およびn型ウエル4の表面)上にゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
【0035】
次に、半導体基板1上(すなわちp型ウエル3およびn型ウエル4のゲート絶縁膜5上)に、ゲート電極形成用の導体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜6を形成する。シリコン膜6のうちのnチャネル型MISFET形成予定領域(後述するゲート電極GE1となる領域)は、フォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜6のうちのpチャネル型MISFET形成予定領域(後述するゲート電極GE2となる領域)は、他のフォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のp型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜6は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
【0036】
次に、図3に示されるように、シリコン膜6をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極GE1,GE2を形成する。
【0037】
nチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極GE1は、n型の不純物を導入した多結晶シリコン(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、p型ウエル3上にゲート絶縁膜5を介して形成される。すなわち、ゲート電極GE1は、p型ウエル3のゲート絶縁膜5上に形成される。また、pチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極GE2は、p型の不純物を導入した多結晶シリコン(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、n型ウエル4上にゲート絶縁膜5を介して形成される。すなわち、ゲート電極GE2は、n型ウエル4のゲート絶縁膜5上に形成される。ゲート電極GE1,GE2のゲート長は、必要に応じて変更できるが、例えば50nm程度とすることができる。
【0038】
次に、図4に示されるように、p型ウエル3のゲート電極GE1の両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)n型半導体領域7aを形成し、n型ウエル4のゲート電極GE2の両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)p型半導体領域8aを形成する。n型半導体領域7aおよびp型半導体領域8aの深さ(接合深さ)は、例えば30nm程度とすることができる。
【0039】
次に、ゲート電極GE1,GE2の側壁上に、側壁絶縁膜(絶縁膜)として、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンあるいはそれら絶縁膜の積層膜などからなる側壁スペーサまたはサイドウォール(側壁絶縁膜)9を形成する。サイドウォール9は、例えば、半導体基板1上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
【0040】
サイドウォール9の形成後、(一対の)n型半導体領域7b(ソース、ドレイン)を、例えば、p型ウエル3のゲート電極GE1およびサイドウォール9の両側の領域にヒ素(As)またはリン(P)などのn型の不純物をイオン注入することにより形成する。例えば、ヒ素(As)を10〜30keVの加速電圧で1×1015/cm〜1×1016/cm程度、例えば20keVで4×1015/cm注入して、リン(P)を5〜20keVの加速電圧で1×1014/cm〜1×1015/cm程度、例えば10keVで5×1014/cm注入して、n型半導体領域7bを形成する。また、(一対の)p型半導体領域8b(ソース、ドレイン)を、例えば、n型ウエル4のゲート電極GE2およびサイドウォール9の両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより形成する。例えば、ホウ素(B)を1〜3keVの加速電圧で1×1015/cm〜1×1016/cm程度、例えば2keVで4×1015/cm注入して、p型半導体領域8bを形成する。n型半導体領域7bを先に形成しても、あるいはp型半導体領域8bを先に形成してもよい。イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理を、例えば1050℃程度のスパイクアニール処理にて行うこともできる。n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの深さ(接合深さ)は、例えば80nm程度とすることができる。
【0041】
型半導体領域7bは、n型半導体領域7aよりも不純物濃度が高く、p型半導体領域8bは、p型半導体領域8aよりも不純物濃度が高い。これにより、nチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n型半導体領域(不純物拡散層)7bおよびn型半導体領域7aにより形成され、pチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p型半導体領域(不純物拡散層)8bおよびp型半導体領域8aにより形成される。従って、nチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域は、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。n型半導体領域7aは、ゲート電極GE1に対して自己整合的に形成され、n型半導体領域7bは、ゲート電極GE1の側壁上に形成されたサイドウォール9に対して自己整合的に形成される。p型半導体領域8aは、ゲート電極GE2に対して自己整合的に形成され、p型半導体領域8bは、ゲート電極GE2の側壁上に形成されたサイドウォール9に対して自己整合的に形成される。
【0042】
このようにして、p型ウエル3に、電界効果トランジスタとしてnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qnが形成される。また、n型ウエル4に、電界効果トランジスタとしてpチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qpが形成される。これにより、図4の構造が得られる。nチャネル型MISFETQnは、nチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができ、pチャネル型MISFETQpは、pチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができる。また、n型半導体領域7bは、nチャネル型MISFETQnのソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができ、p型半導体領域8bは、pチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができる。
【0043】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、nチャネル型MISFETQnのゲート電極GE1およびソース・ドレイン領域(ここではn型半導体領域7b)の表面と、pチャネル型MISFETQpのゲート電極GE2およびソース・ドレイン領域(ここではp型半導体領域8b)の表面とに、低抵抗の金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層41bに対応)を形成する。以下に、この金属シリサイド層の形成工程について説明する。
【0044】
図5および図6は、図4に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。図7は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図であり、図4の構造が得られた後、サリサイドプロセスによりゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの表面に金属シリサイド層(金属・半導体反応層)を形成する工程の製造プロセスフローが示されている。図8はシリサイド材料(金属シリサイド層形成用の材料膜、ここでは合金膜11およびバリア膜12に対応)の成膜装置の概略平面図、図9はシリサイド材料の成膜工程図(プロセスフロー図)である。図10〜図14は、図6に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。なお、図7は、図5、図6、図10および図11の工程の製造プロセスフローに対応し、図9は図5および図6の工程の製造プロセスフローに対応する。
【0045】
上記のようにして図4の構造が得られた後、図5に示されるように、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの表面を露出させてから、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8b上を含む半導体基板1の主面(全面)上に合金膜11を、スパッタリング法を用いて形成(堆積)する(図7のステップS1)。すなわち、ステップS1では、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8b上を含む半導体基板1上に、ゲート電極GE1,GE2を覆うように、合金膜11がスパッタリング法により形成される。合金膜11は、Ni(ニッケル)とPt(白金)との合金膜、すなわちNi−Pt合金膜である。
【0046】
合金膜11におけるNi(ニッケル)とPt(白金)の比(原子比)を1−x:xとすると、合金膜11は、Ni1−xPt合金膜と表記することができる。Ni1−xPt合金膜におけるNi(ニッケル)の割合(比率)は、(1−x)×100%であり、Ni1−xPt合金膜におけるPt(白金)の割合(比率)は、x×100%である。なお、本願で元素の割合(比率、濃度)を%で示す場合には、原子%である。例えば、合金膜11としてNi0.963Pt0.037合金膜などを用いることができ、合金膜11がNi0.963Pt0.037合金膜の場合には、合金膜11におけるNi(ニッケル)の割合(比率)は96.3原子%で、合金膜11におけるPt(白金)の割合(比率)は3.7原子%となる。
【0047】
それから、図6に示されるように、合金膜11上にバリア膜(応力制御膜、酸化防止膜、キャップ膜)12を形成(堆積)する(図7のステップS2)。バリア膜12は、例えば窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば15nm程度とすることができる。バリア膜12は、応力制御膜(半導体基板の活性領域の応力を制御する膜)および酸素の透過を防止する膜として機能し、半導体基板1に働く応力の制御や合金膜11の酸化防止などのために合金膜11上に設けられる。
【0048】
また、ステップS1(合金膜11堆積工程)の前に、HFガス、NFガス、NHガス又はHガスのうち少なくともいずれか一つを用いたドライクリーニング処理(後述する工程P2に対応)を行って、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7b及びp型半導体領域8bの表面の自然酸化膜を除去した後、半導体基板1を大気中(酸素含有雰囲気中)にさらすことなく、ステップS1及びステップS2を行えば、より好ましい。
【0049】
以下に、合金膜11およびバリア膜12の好ましい形成方法の一例について説明する。
【0050】
合金膜11およびバリア膜12の成膜には、図8に示されるシリサイド材料の成膜装置20が用いられる。
【0051】
図8に示されるように、成膜装置20は、第1搬送室21aと第2搬送室21bの2つの搬送室が配置され、第1搬送室21aの周囲に開閉手段であるゲートバルブ22を介してロードロック室23,24および3つのチャンバ25,26,27が備わり、第2搬送室21bの周囲に開閉手段であるゲートバルブ22を介して2つのチャンバ28,29が備わったマルチチャンバタイプである。さらに、第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間には2つの搬送用のチャンバ30,31が備わっている。第1搬送室21aは排気機構等により所定の真空度に保持され、その中央部には半導体ウエハSWを搬送するための多関節アーム構造の搬送用ロボット32aが設けられている。同様に、第2搬送室21bは排気機構等により所定の真空度に保持され、その中央部には半導体ウエハSWを搬送するための多関節アーム構造の搬送用ロボット32bが設けられている。
【0052】
第1搬送室21aに備わるチャンバ25,26は相対的に高温の加熱処理を行う加熱処理用チャンバ、チャンバ27はドライクリーニング処理(処置)用チャンバである。第2搬送室21bに備わるチャンバ28はスパッタリング法により合金膜11(Ni−Pt合金膜)を成膜する成膜用チャンバ、チャンバ29はスパッタリング法によりバリア膜12(例えば窒化チタン膜)を成膜する成膜用チャンバである。また、バリア膜12をプラズマCVD法で成膜する場合は、チャンバ29はプラズマCVD法によりバリア膜12(例えばチタン膜)を成膜する成膜用チャンバとなる。
【0053】
第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間に備わるチャンバ30,31は第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間での半導体ウエハSWの受け渡しを行う受渡用チャンバであり、また半導体ウエハSWの冷却にも用いられる冷却用チャンバである。なお、成膜装置20では、第1搬送室21aのみに備わるチャンバを3つとし、第2搬送室21bのみに備わるチャンバを2つとしたが、これに限定されるものではなく、同じ用途のチャンバまたは他の用途のチャンバを追加することも可能である。
【0054】
まず、1枚の半導体ウエハSWをウエハ搬入出室33内に設置された搬送用ロボット36によっていずれかのフープ34から取り出し(図9の工程P1)、いずれかのロードロック室23または24へ搬入する。半導体ウエハSWは、上記半導体基板1に対応するものである。フープ34は半導体ウエハSWのバッチ搬送用の密閉収納容器であり、通常25枚、12枚、6枚等のバッチ単位で半導体ウエハSWを収納する。フープ34の容器外壁は微細な通気フィルタ部を除いて機密構造になっており、塵埃はほぼ完全に排除される。従って、クラス1000の雰囲気で搬送しても、内部はクラス1の清浄度が保てるようになっている。成膜装置20とのドッキングは、フープ34の扉をポート35に取り付けて、ウエハ搬入出室33の内部に引き込むことによって清浄さを保持した状態で行われる。続いてロードロック室23内を真空引きした後、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを第1搬送室21aを経てドライクリーニング処理用のチャンバ27へ真空搬送し、チャンバ27内で半導体ウエハSWをドライクリーニング処理する(図9の工程P2)。
【0055】
ドライクリーニング処理時には、リモートプラズマ発生装置(図示せず)において還元ガス、例えばNFガスおよびNHガスを添加したArガス(プラズマ励起用の希ガス)を励起させてプラズマを生成し、このプラズマをチャンバ27内へ導入する。チャンバ27内に導入されたプラズマをシャワーヘッド(図示せず)を介して半導体ウエハSWの主面上に供給することにより、プラズマとシリコン(ゲート電極GE1,GE2を構成する多結晶シリコンとn型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bが形成された半導体基板1を構成する単結晶シリコン)の表面に形成された自然酸化膜との間で起きる還元反応によって自然酸化膜が除去される。
【0056】
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWをドライクリーニング処理用のチャンバ27から加熱処理用のチャンバ25(またはチャンバ26)へ第1搬送室21aを介して真空搬送し、チャンバ25(またはチャンバ26)に備わるステージ上に載せる(図9の工程P3)。チャンバ25(またはチャンバ26)のステージ上に半導体ウエハSWを載せることにより、半導体ウエハSWを所定の温度で加熱し、半導体ウエハSWの主面上に残留していた生成物(上記ドライクリーニング処理時に還元反応により生成された生成物)を昇華させて除去する。半導体ウエハSWの主面上での温度は、例えば150から400℃が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。
【0057】
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを加熱処理用のチャンバ25(またはチャンバ26)から冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)へ第1搬送室21aを介して真空搬送し、チャンバ30(またはチャンバ31)に備わるステージ上に載せる(図9の工程P4)。チャンバ30(またはチャンバ31)のステージ上に半導体ウエハSWを載せることにより、半導体ウエハSWは冷却される。
【0058】
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWを冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)から合金膜11成膜用のチャンバ28へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図9の工程P5)。チャンバ28内を排気機構により所定の真空度、例えば1.33×10−6Pa程度とした後、半導体ウエハSWを所定の温度に加熱し、チャンバ28内へArガスを所定の流量により導入してスパッタリング法により半導体ウエハSWの主面上へ合金膜11(Ni−Pt合金膜)を堆積する。この合金膜11の堆積工程が、上記ステップS1(図7のステップS1)に対応する。合金膜11の厚さ(堆積膜厚)は、例えば25nmであり、成膜時におけるスパッタリング条件は、例えば成膜温度25℃、Arガス流量35sccmである。
【0059】
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWを合金膜11成膜用のチャンバ28からバリア膜12成膜用のチャンバ29へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図9の工程P6)。チャンバ29内を排気機構により所定の真空度とした後、半導体ウエハSWを所定の温度に加熱し、チャンバ29内へArガスおよびNガスを所定の流量により導入してスパッタリング法により半導体ウエハSWの主面上へ窒化チタン膜などからなるバリア膜12を堆積する。このバリア膜12の堆積工程が、上記ステップS2(図7のステップS2)に対応する。バリア膜12の厚さ(堆積膜厚)は、例えば15nmであり、成膜時におけるスパッタリング条件は、例えば成膜温度40℃、Arガス流量28sccm、窒素ガス流量80sccmである。
【0060】
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWをバリア膜12成膜用のチャンバ29から冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図9の工程P7)。
【0061】
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)からいずれかのロードロック室23または24へ真空搬出し、さらに搬送用ロボット36によって半導体ウエハSWをロードロック室23または24からウエハ搬入出室33を介していずれかのフープ34へ戻す(図9の工程P8)。
【0062】
このようにして、合金膜11およびバリア膜12を形成した後、半導体基板1に第1の熱処理(アニール処理)を施す(図7のステップS3)。ステップS3の第1の熱処理は、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または窒素(N)ガスあるいはそれらの混合ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことができ、例えばRTA(Rapid Thermal Anneal)法を用いて行なうことができる。
【0063】
ステップS3の第1の熱処理により、図10に示されるように、ゲート電極GE1,GE2を構成する多結晶シリコン膜と合金膜11、およびn型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bを構成する単結晶シリコンと合金膜11を選択的に反応させて、金属・半導体反応層である金属シリサイド層41aを形成する。ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの各上部(上層部)と合金膜11とが反応することにより金属シリサイド層41aが形成されるので、金属シリサイド層41aは、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの各表面(上層部)に形成される。
【0064】
このように、ステップS3の第1の熱処理で、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8b(を構成するSi)と合金膜11を選択的に反応させて、ニッケルおよび第1金属元素Mのシリサイドからなる金属シリサイド層41aを形成するが、第1の熱処理を行った段階では、金属シリサイド層41aは、(Ni1−yPtSi相(ここで0<y<1)の白金添加ニッケルシリサイド層である。従って、ステップS3の第1の熱処理は、金属シリサイド層41aが(Ni1−yPtSi相となるが、Ni1−yPtSi相とはならないような熱処理温度で行なうことが好ましい。
【0065】
ステップS3の第1の熱処理により、合金膜11中のNiとPtとがn型半導体領域7b、p型半導体領域8bおよびゲート電極GE1,GE2中に拡散して金属シリサイド層41aが形成される。このステップS3では、n型半導体領域7b、p型半導体領域8b及びゲート電極GE1,GE2中へのNiの拡散係数よりも、n型半導体領域7b、p型半導体領域8b及びゲート電極GE1,GE2中へのPtの拡散係数の方が大きくなる熱処理温度で第1の熱処理を行ない(第1の条件)、かつ、金属シリサイド層41a上に合金膜11の未反応部分が残存するように第1の熱処理を行なう(第2の条件)ことが、より好ましい。これにより、形成された金属シリサイド層41aを構成する金属元素(NiおよびPt)に占めるPtの割合を、合金膜11に占めるPtの割合よりも大きくすることができる。これについて、以下に説明する。
【0066】
シリコン領域中におけるNiとPtの拡散係数は、どちらも温度が高くなるにつれて増大するが、拡散係数の温度依存性はNiとPtとで異なる。すなわち、ある温度Tで、シリコン領域中におけるNiの拡散係数と、シリコン領域中におけるPtの拡散係数とが同じになり、シリコン領域への拡散しやすさは、NiとPtで同じであるが、この温度Tよりも高温では、シリコン領域中におけるNiの拡散係数が、シリコン領域中におけるPtの拡散係数よりも大きくなり、PtよりもNiの方がシリコン領域に拡散しやすくなる。この温度Tは、279℃である(すなわちT=279℃)。上記第1の条件を満たすためには、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度を上記温度Tよりも低くすればよい。これにより、ステップS3の第1の熱処理では、合金膜11からシリコン領域(ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bを構成する各シリコン領域)中へ、Ni(ニッケル)よりもPt(白金)の方が、拡散しやすくなる。
【0067】
また、上記第2の条件は、シリコン領域(n型半導体領域7b、p型半導体領域8bおよびゲート電極GE1,GE2を構成する各シリコン領域)上に形成されている合金膜11の全部(全厚み)を前記シリコン領域と反応させるのではなく、前記シリコン領域上に形成されている合金膜11の一部(下層部分)のみを前記シリコン領域と反応させることを意味している。この場合、前記シリコン領域上に形成されている合金膜11の上層部分は、前記シリコン領域とは反応せず、金属シリサイド層41a上に未反応部分(合金膜11の未反応部分)として残存することになる。
【0068】
上記第1の条件および上記第2の条件を満たすように第1の熱処理を行えば、この第1の熱処理において、シリコン領域(n型半導体領域7b、p型半導体領域8bおよびゲート電極GE1,GE2を構成する各シリコン領域)へNiよりもPtの方が拡散しやすいため、合金膜11からシリコン領域に拡散するNiとPtの原子数の比は、合金膜11を構成するNiとPtの原子比に比べて、Ptの割合が増加したものとなる。このため、金属シリサイド層41aにおけるNiとPtの比も、合金膜11を構成するNiとPtの原子比に比べて、Ptの割合が増加したものとなる。すなわち、合金膜11がNi1−xPt合金膜(ここで0<x<1)であり、かつ金属シリサイド層41aが、(Ni1−yPtSi相(ここで0<y<1)であるとすると、x<yとなる。
【0069】
但し、ステップS3の第1の熱処理が上記第1の条件を満たしても、上記第2の条件を満たさなかった場合には、シリコン領域(n型半導体領域7b、p型半導体領域8bおよびゲート電極GE1,GE2を構成する各シリコン領域)上の合金膜11を構成していたNiとPtは、拡散係数の差にかかわらず、全部がシリコン領域に拡散して金属シリサイド層41aの形成に寄与する。このため、たとえNiよりもPtの方がシリコン領域に拡散しやすかったとしても、シリコン領域上の合金膜11を構成していたNiとPtの全量がシリコン領域と反応して金属シリサイド層41aを形成するので、金属シリサイド層41aにおけるNiとPtの比は、合金膜11におけるNiとPtの比を維持したものになってしまう。すなわち、合金膜11がNi1−xPt合金膜(ここで0<x<1)であり、かつ金属シリサイド層41aが、(Ni1−yPtSi相(ここで0<y<1)であるとすると、x=yとなってしまうのである。
【0070】
従って、上記第1の条件と上記第2の条件の両方を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41aにおけるPtの比率を高めることが可能になる。すなわち、上記第1の条件と上記第2の条件を両立させることで、金属シリサイド層41aを構成する金属元素(NiとPtを足したもの)に占めるPtの割合を、合金膜11に占めるPtの割合よりも大きくすることができる。換言すれば、上記第1の条件と上記第2の条件を両立させることで、合金膜11としてNi1−xPt合金膜を用いて(Ni1−yPtSi相(Mは好ましくはPt)の金属シリサイド層41aを形成するにあたって、x<yとすることができる。
【0071】
また、バリア膜12は、合金膜11と反応しがたい膜であり、ステップS3の第1の熱処理を行っても合金膜11と反応しない膜であることが望ましく、この観点から、バリア膜12として、窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜は好ましい。なお、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bと反応する合金膜の厚さよりも十分に厚い合金膜11を形成した場合は、酸化防止膜としてのバリア膜12は省略しても良い。
【0072】
次に、ウェット洗浄処理を行うことにより、バリア膜12と、未反応の合金膜11(すなわちステップS3の第1の熱処理工程にてゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bまたはp型半導体領域8bと反応しなかった合金膜11)とを除去する(図7のステップS4)。この際、未反応の合金膜11(すなわちステップS3の第1の熱処理工程にてゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bまたはp型半導体領域8bと反応しなかった合金膜11)が金属シリサイド層41a上から除去されるが、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの表面上に金属シリサイド層41aを残存させる。ステップS4のウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、または硫酸と過酸化水素水とを用いたウェット洗浄などにより行うことができる。図10には、ステップS4のウェット洗浄処理によって、バリア膜12および未反応の合金膜11を除去した段階が示されている。
【0073】
次に、半導体基板1に第2の熱処理(アニール処理)を施す(図7のステップS5)。ステップS5の第2の熱処理は、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または窒素(N)ガスあるいはそれらの混合ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことができ、例えばRTA法を用いて行なうことができる。また、ステップS5の第2の熱処理は、上記ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高い熱処理温度で行う。
【0074】
ステップS5の第2の熱処理は、金属シリサイド層41aの低抵抗化と安定化のために行なわれる。ステップS5の第2の熱処理を行うことにより、図11に示されるように、ステップS3の第1の熱処理で形成された(Ni1−yPtSi相の金属シリサイド層41aは、Ni1−yPtSi相の金属シリサイド層41bに変わり、金属元素(Niと第1金属元素Mを足したもの)とSiとの組成比が1:1の化学量論比により近い、安定な金属シリサイド層41bが形成される。
【0075】
すなわち、(Ni1−yPtSi相の金属シリサイド層41aと、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7b及びp型半導体領域8bのSiとを、ステップS5の第2の熱処理で更に反応させて、(Ni1−yPtSi相より安定で低抵抗率のNi1−yPtSi相からなる金属シリサイド層41bを、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7b及びp型半導体領域8bの表面上(上層部分)に形成する。ステップS5の第2の熱処理は、Ni1−yPty2Si相の金属シリサイド層41aをNi1−yPtSi相の金属シリサイド層41bにすることができるような温度で行う必要があるため、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度は、少なくともステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高くする必要がある。また、金属シリサイド層41bがNi1−yPtSi相よりも高抵抗率のNi1−yPtSi相にはならないようにするため、ステップS5の第2の熱処理は、金属シリサイド層41bがNi1−yPtSi相となるが、Ni1−yPtSi相とはならないような熱処理温度で行なうことが好ましい。
【0076】
なお、Ni1−yPtSi相は、(Ni1−yPtSi相およびNi1−yMtSi相よりも低抵抗率であり、ステップS5以降も(半導体装置の製造終了まで)金属シリサイド層41bは低抵抗のNi1−yPtSi相のまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップとなった状態でも)、金属シリサイド層41bは低抵抗のNi1−yPtSi相となっている。
【0077】
このようにして、nチャネル型MISFETQnのゲート電極GE1およびソース・ドレイン領域(n型半導体領域7b)の表面(上層部)と、pチャネル型MISFETQpのゲート電極GE2およびソース・ドレイン領域(p型半導体領域8b)の表面(上層部)とに、Ni1−yPtSi相の金属シリサイド層41bが形成される。
【0078】
次に、図12に示されるように、半導体基板1の主面上に絶縁膜42を形成する。すなわち、ゲート電極GE1,GE2およびサイドウォール9を覆うように、金属シリサイド層41b上を含む半導体基板1上に絶縁膜(第1絶縁膜)42を形成する。絶縁膜42は例えば窒化シリコン膜からなり、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。それから、絶縁膜42上に絶縁膜42よりも厚い絶縁膜43を形成する。絶縁膜43は例えば酸化シリコン膜などからなり、TEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、またはTetra Ethyl Ortho Silicateとも言う)を用いて成膜温度400℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。これにより、絶縁膜42,43からなる層間絶縁膜が形成される。その後、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨するなどして、絶縁膜43の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜42の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
【0079】
次に、図13に示されるように、絶縁膜43上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜43,42をドライエッチングすることにより、絶縁膜42,43にコンタクトホール(貫通孔、孔)44を形成する。この際、まず絶縁膜42に比較して絶縁膜43がエッチングされやすい条件で絶縁膜43のドライエッチングを行い、絶縁膜42をエッチングストッパ膜として機能させることで、絶縁膜43にコンタクトホール44を形成してから、絶縁膜43に比較して絶縁膜42がエッチングされやすい条件でコンタクトホール44の底部の絶縁膜42をドライエッチングして除去する。コンタクトホール44の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bの表面上の金属シリサイド層41bの一部や、ゲート電極GE1,GE2の表面上の金属シリサイド層41bの一部などが露出される。
【0080】
次に、コンタクトホール44内に、タングステン(W)などからなる導電性のプラグ(接続用導体部)45を形成する。プラグ45を形成するには、例えば、コンタクトホール44の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜43上に、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法によりバリア導体膜45a(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜45bをCVD法などによってバリア導体膜45a上にコンタクトホール44を埋めるように形成し、絶縁膜43上の不要な主導体膜45bおよびバリア導体膜45aをCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグ45を形成することができる。ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bまたはp型半導体領域8b上に形成されたプラグ45は、その底部でゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域7bまたはp型半導体領域8bの表面上の金属シリサイド層41bと接して、電気的に接続される。
【0081】
次に、図14に示されるように、プラグ45が埋め込まれた絶縁膜43上に、ストッパ絶縁膜(エッチングストッパ用絶縁膜)46および配線形成用の絶縁膜47を順次形成する。ストッパ絶縁膜46は絶縁膜47への溝加工の際にエッチングストッパとなる膜であり、絶縁膜47に対してエッチング選択比を有する材料を用いる。ストッパ絶縁膜46は、例えばプラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜とし、絶縁膜47は、例えばプラズマCVD法により形成される酸化シリコン膜とすることができる。なお、ストッパ絶縁膜46と絶縁膜47には次に説明する第1層目の配線が形成される。
【0082】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線を形成する。まず、レジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜47およびストッパ絶縁膜46の所定の領域に配線溝48を形成した後、半導体基板1の主面上(すなわち配線溝48の底部および側壁上を含む絶縁膜47上)にバリア導体膜(バリアメタル膜)49aを形成する。バリア導体膜49aは、例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などを用いることができる。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜49a上に銅のシード層(図示せず)を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜(主導体膜)49bを形成する。銅めっき膜49bにより配線溝48の内部を埋め込む。それから、配線溝48以外の領域の銅めっき膜49b、シード層およびバリアメタル膜49aをCMP法により除去して、銅を主導電材料とする第1層目の配線49を形成する。配線49は、プラグ45を介してnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用のn型半導体領域7bおよびp型半導体領域8bやゲート電極GE1,GE2などと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法により2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。
【0083】
<成膜装置について>
次に、合金膜11形成工程(上記ステップS1に対応)で用いた成膜装置について、より詳細に説明する。
【0084】
図15〜図19は、合金膜11形成工程(上記ステップS1に対応)で用いた成膜装置51の説明図である。図15には、成膜装置51の概略構成を示す全体断面図(全体側面断面図)が示されている。図16は、図15の部分拡大断面図であり、バッキングプレート55、ターゲット54、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63、コリメータ61、ステージ53、半導体ウエハSWおよびカバーリング67などが示され、チャンバ52自身や絶縁部材60、マグネット部59などは示されていない。図17は、図16とほぼ同じ断面領域が示されているが、図17では、コリメータ61において開口部61aを横切る断面が示されているため、コリメータ61において開口部61aが示されており、一方、図16では、コリメータ61において開口部61aを横切らない断面(開口部61aの側壁を構成する薄い金属板に沿う断面)が示されているため、コリメータ61において開口部61aは示されていない。図18は、図17の部分拡大断面図である。
【0085】
図15に示される成膜装置51は、上記図8の成膜装置20におけるチャンバ28(合金膜11成膜用のチャンバ28)に対応するものである。本実施の形態では、合金膜11をスパッタリング法により形成しており、図15の成膜装置51は、スパッタリング成膜装置(スパッタリング成膜チャンバ)である。
【0086】
図15に示されるように、成膜装置51は、チャンバ(スパッタリング成膜用のチャンバ、成膜室、成膜容器)52と、チャンバ52内に配置(収容)され、半導体ウエハSW(半導体基板1)を支持するためのステージ(支持台、ウエハステージ、基板支持ペデスタル)53とを備えている。そして、ターゲット(スパッタリングソース)54が固定されたバッキングプレート(バックプレート、ターゲットホルダ、ターゲット保持板)55が、チャンバ52の上部に取り付けられており、ターゲット54の主面(バッキングプレート55と対向する側とは反対側の主面)がステージ53側(すなわちステージ53に支持された半導体ウエハSW側)を向いている。
【0087】
ターゲット54は、スパッタリング中に半導体ウエハSW(半導体基板1)に堆積されるべき材料で構成されており、ここでは、半導体ウエハSW(半導体基板1)上にNi−Pt合金膜(合金膜11)を形成するので、ターゲット54は、Ni−Pt合金(NiとPtとの合金)からなる。なお、上述のように、半導体ウエハSWは、上記半導体基板1に対応するものである。
【0088】
ステージ53は、半導体ウエハSWを支持する支持台とみなすことができ、ステージ53上に配置した半導体ウエハSWの主面(合金膜11を形成する側の主面)がターゲット54の主面(ターゲット54においてバッキングプレート55と対向する側とは反対側の主面)と略平行に対向するように、半導体ウエハSWを支持(保持)できるようになっている。このため、半導体ウエハSWにNi−Pt合金膜(合金膜11)を形成する際には、ターゲット54は、ステージ53に支持された半導体ウエハSWに対向した状態となる。また、ステージ53に、半導体ウエハSWを加熱するための加熱機構(ヒータなど)を設けることもできる。
【0089】
また、チャンバ52には、真空ポンプなどの真空ポンピングシステム(真空排気システム)56が接続されており、真空ポンピングシステム56によって、チャンバ52内の圧力を所望の圧力(真空度)に制御できるようになっている。真空ポンピングシステム56は、好ましくはチャンバ52の下部に接続されている。真空ポンピングシステム56を用いることで、合金膜11を成膜する際のチャンバ52内の圧力は、例えば0.1〜1Pa程度とすることができる。また、スパッタリング用のガスが、ガスソース(ガス供給源)57からマスフローコントローラ(ガス流量制御部)58を経て、チャンバ52内に所望の流量で供給されるようになっている。ガスソース57からチャンバ52内に供給するスパッタリング用のガスとしては、アルゴン(Ar)ガスが好ましいが、他の形態として、他の不活性ガスを用いることもできる。
【0090】
バッキングプレート55およびそれに固定されたターゲット54は、電圧が印加されてカソード(陰極)となるように構成されている。例えば、ステージ53上に半導体ウエハSW(半導体基板1)を配置し、チャンバ52内を所定の真空度にしてアルゴンガスを導入し、ターゲット54(バッキングプレート55)に負の電圧(負電位)を印加すると、ターゲット54と半導体ウエハSWとの間に電場が発生し、プラズマ化したArイオンが生成される。Arイオンはカソードとしてのターゲット54の表面(主面)に衝突し、ターゲット原子(ターゲット54を構成している原子)をはじき出し、はじき出されたターゲット原子(すなわちスパッタ粒子)が半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面(表面)上に堆積して、上記合金膜11が形成される。
【0091】
バッキングプレート55の後部(バッキングプレート55においてターゲット54が固定されている側とは反対側)には、マグネット部59が配置されている。このマグネット部59は、ターゲット54近傍に磁場を発生させて、プラズマ化したアルゴン(Ar)ガスがターゲット54に衝突しやすくするために(すなわちスパッタ効率を向上させるために)設けられている。すなわち、バッキングプレート55の後部にマグネット部59を配置することで、ターゲット54と半導体ウエハSWとの間に直交電磁界を形成してプラズマをターゲット54近傍の空間に閉じ込め、プラズマ密度を高めて効率良くスパッタリングを行うことができる(いわゆるマグネトロンスパッタリング)。
【0092】
チャンバ52は接地されている。バッキングプレート55は、絶縁体からなる絶縁部材(例えばセラミック部材)60を介してチャンバ52に支持されているため、バッキングプレート55とチャンバ52との間は、電気的に絶縁(分離)されている。ステージ53およびステージ53上に配置された半導体ウエハSW(半導体基板1)も接地されているが、他の形態として、ステージ53およびステージ53上に配置された半導体ウエハSW(半導体基板1)に高周波電圧を印加可能な構成とし、必要に応じて半導体ウエハSWに電圧(高周波電圧)を印加することもできる。
【0093】
また、ターゲット54とステージ53との間(すなわちターゲット54とステージ53上に配置された半導体ウエハSWとの間)には、コリメータ61が配置されている。半導体ウエハSWにNi−Pt合金膜(合金膜11)を形成する際には、コリメータ61がターゲット54と半導体ウエハSWとの間に存在する必要があり、このコリメータ61は、後述するように、ロアーシールド62の平坦部62dに載せられて支持されている。
【0094】
図17および図18からも分かるように、コリメータ61は、複数の開口部(孔部、アパーチャ)61aが設けられた板状の部材(金属板)である。コリメータ61において、複数の開口部61aは、例えばハニカム状に形成することができ、ハニカム状に形成した場合の各開口部61aの平面形状は六角形(例えば正六角形)とすることができる。コリメータ61は、スパッタ粒子の運動(飛行)方向を制限するように作用することができる。ターゲット54と半導体ウエハSWとの間にコリメータ61を配置することで、スパッタ粒子(ターゲット54からはじき出された原子などで構成されている粒子)の垂直成分(半導体ウエハSWに対して略垂直に入射するスパッタ粒子)のみが半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面に到達して堆積するようにすることができる。すなわち、ターゲット54から半導体ウエハSWに向かって略垂直方向(半導体ウエハSWの主面に対して略垂直方向)に入射(運動、飛行)するスパッタ粒子だけが、コリメータ61の開口部61aを通過して半導体ウエハSWに到達する。そして、それ以外のスパッタ粒子(半導体ウエハSWの主面に垂直な方向に対して所定以上の傾斜角を持って飛行するスパッタ粒子)は、コリメータ61(より特定的には開口部61aの内壁)によって遮られて、半導体ウエハSWに到達しなくなる。
【0095】
ターゲット54からのスパッタ粒子(ターゲット原子)がチャンバ52の内壁に付着(堆積)するのを防止するためのシールド部材(シールド治具、防着部材、防着治具)として、図15〜図18に示されるように、ロアーシールド(ロワーシールド、下部シールド)62とダークスペースシールド(上部シールド)63とが設けられている。
【0096】
シールド部材であるロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、チャンバ52内に配置され、半導体ウエハSWとターゲット54との間の空間とコリメータ61とを囲んでいる。半導体ウエハSWとターゲット54との間の空間(ターゲット54と半導体ウエハSWとの対向面間)がスパッタ空間(ターゲット54からのスパッタ粒子が半導体ウエハSWに向かって飛行する空間)となり、このスパッタ空間とコリメータ61とをシールド部材であるロアーシールド62およびダークスペースシールド63で囲むことで、ターゲット54からのスパッタ粒子がチャンバ52の内壁に付着するのを防止できる。
【0097】
また、ロアーシールド62とダークスペースシールド63とを一体化したシールド部材を用いることもできるが、シールド部材を下部側のロアーシールド62と上部側のダークスペースシールド63とに分けることで、例えば、ターゲットの材質、寸法を変更した場合でも、ダークスペースシールドの寸法、形状のみを変更するだけで良く、ロアーシールド、または、ダークスペースシールドと一体となったロアーシールドの寸法、形状を変更しなくて良いという利点がある。
【0098】
コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、チタン(Ti)またはステンレス鋼(SUS)によって形成することが好ましい。このうち、コリメータ61は、薄くて変形しやすい部材であるため、弾性率が高い材料からなることが好ましく、この観点から、コリメータ61は、チタン(Ti)によって形成することが、より好ましい。コリメータ61をチタン(Ti)によって形成することで、コリメータ61の再生および繰り返し使用に対する耐性を高める(向上する)ことができる。一方、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、重厚で細かい細工が施されていない部材であるため、性能面ではチタン(Ti)またはステンレス鋼(SUS)のいずれも適しているが、コスト面を考慮すると、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、ステンレス鋼(SUS)によって形成することが、より好ましい。
【0099】
ロアーシールド62は、その上部にフランジ部(鍔部)62aを有しており、このフランジ部62aが、チャンバ52の張り出し部(突出部)52a上に配置されて支持されている。チャンバ52の張り出し部52aは、チャンバ52の内壁が、内側(チャンバ52の内部側)に張り出した(突出した)部分である。
【0100】
ロアーシールド62のフランジ部62a上には、ダークスペースシールド63の端部が支持されており、ダークスペースシールド63の端部とロアーシールド62のフランジ部62aとが、チャンバ52の張り出し部52a上に支持されている。ダークスペースシールド63の端部とロアーシールド62のフランジ部62aとをチャンバ52の張り出し部52aに固定する機構を、ダークスペースシールド63、フランジ部62aおよび張り出し部52aに設けることもできる。ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、チャンバ52に接することで、接地された状態となっている。
【0101】
ダークスペースシールド63は概略的には筒状またはリング状の部材である。ダークスペースシールド63は、下方に突出したチップ部(突出部)63aを含んでいる。このチップ部63aは、ターゲット54からのスパッタ粒子がロアーシールド62とダークスペースシールド63との間の界面に入射するのを遮蔽し、それによって、ロアーシールド62とダークスペースシールド63との間の界面がスパッタリングで堆積した金属により接合されるのを防止することができる。
【0102】
バッキングプレート55は、ダークスペースシールド63上にOリング65を介して配置された状態となっている。Oリング65は、例えばカルレッツ(登録商標)、バイトン(登録商標)などの一般ゴム材料(JIS B 2410,ISO 3601-5に示されている)、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどにより形成することができる。Oリング65を配置しない場合は、バッキングプレート55とダークスペースシールド63との間の隙間が、プラズマが通り抜けない程度の隙間となるようにすることが好ましい。
【0103】
ロアーシールド62は概略的には筒状の部材である。ロアーシールド62は、ステージ53に支持された半導体ウエハSWの主面に略垂直な側壁を有する筒状の側壁部62bと、半導体ウエハSWの主面に略垂直な側壁を有し、かつ側壁部62bよりも小さな直径の筒状の側壁部62cとを有している。ロアーシールド62において、筒状の側壁部62bの下部(下端部)と筒状の側壁部62cの上部(上端部)とは、ステージ53に支持された半導体ウエハSWの主面にほぼ平行な平坦部(段差部)62dで繋がっている。筒状の側壁部62bの上部(上端部)には、上記フランジ部62aが設けられている。筒状の側壁部62bの上部において、フランジ部62aは、外側(チャンバ52の内壁に近づく側)に張り出している(突出している)。また、筒状の側壁部62bの中心軸と筒状の側壁部62cの中心軸とはほぼ一致しており、また、ステージ53に支持された半導体ウエハSWの主面の中心軸ともほぼ一致している。
【0104】
側壁部62cの下部は、内側(チャンバ52の内壁から遠ざかる側、すなわちステージ53に近づく側)に折れ曲がって(屈曲して)、半導体ウエハSWの主面にほぼ平行な平坦部(底部)62eを形成し、平坦部62eの内側端部が更に上方に折れ曲がって(屈曲して)、半導体ウエハSWの主面に略垂直な円筒状の爪部(側壁部)62fを形成している。これらフランジ部62a、側壁部62b、平坦部62d、側壁部62c、平坦部62eおよび爪部62fが一体的に形成されて、ロアーシールド62を構成している。
【0105】
ロアーシールド62の平坦部62d上に、コリメータ台座66を介してコリメータ61の外周部(周縁部、周辺部)が配置される(載せられる)ことで、コリメータ61がコリメータ台座66を介してロアーシールド62の平坦部62dに支持される。コリメータ台座66は、ロアーシールド62の平坦部62dとコリメータ61の外周部との間において、少なくとも3箇所に配置する。ロアーシールド62の平坦部62dとコリメータ61の外周部との間において、3箇所にコリメータ台座66を配置すれば、コリメータ61は3点支持され、コリメータ61を安定して支持することができる。ロアーシールド62の平坦部62d上にコリメータ台座66を介してコリメータ61を配置(支持)することが好ましいが、ロアーシールド62の平坦部62d上に直接的にコリメータ61を配置(支持)する場合もある。
【0106】
ロアーシールド62の爪部62fとステージ53上に配置された半導体ウエハSWの外周部(周縁部、周辺部)とを跨ぐように、カバーリング67が配置されている。カバーリング67は、平面形状がリング状の部材であり、カバーリング67の外周側の部分がロアーシールド62の爪部62fに載せられ(重ねられ)、カバーリング67の内周側の部分が半導体ウエハSW上に載せられた(重ねられた)状態となる。ロアーシールド62と半導体ウエハSWとの間の隙間をカバーリング67により塞ぐことで、ターゲット54からのスパッタ粒子(ターゲット原子)がロアーシールド62と半導体ウエハSWとの間の隙間を通り抜けてチャンバ52の内壁やステージ53表面に入射して付着するのを防止することができる。なお、ステージ53が下方に下がって半導体ウエハSWをステージ53上に載置する動作を行っている際には、カバーリング67は、半導体ウエハSWから離れているが、ロアーシールド62の爪部62fによって支持される。カバーリング67は、例えばステンレスやあるいは酸化アルミニウムなどのセラミックなどにより形成することができる。
【0107】
ターゲット54とバッキングプレート55とOリング65とダークスペースシールド63とロアーシールド62とカバーリング67と半導体ウエハSW(ステージ53上に配置された半導体ウエハSW)とによって囲まれた空間70が、チャンバ52内に形成されている。空間70は、ほぼ閉空間となっており、空間70の外部のチャンバ領域(チャンバ52内の領域でかつ空間70の外部の領域に対応)とは繋がっていない。空間70内にコリメータ61が配置されており、空間70は、コリメータ61よりも上(ターゲット54側)の空間70aと、コリメータ61よりも下(半導体ウエハSW側)の空間70bとを含んでいるが、空間70aと空間70bとは、コリメータ61に設けられた複数の開口部61aによって繋がっている。空間70aは、ターゲット54とバッキングプレート55とOリング65とダークスペースシールド63とロアーシールド62の一部(側壁部62b)とコリメータ61とによって囲まれた空間であり、空間70bは、ロアーシールド62の一部(側壁部62c、平坦部62e、爪部62f)とカバーリング67と半導体ウエハSW(ステージ53上に配置された半導体ウエハSW)とコリメータ61とによって囲まれた空間である。
【0108】
ターゲット54の表面(スパッタリングの際にArイオンが衝突し得る面)は、空間70に配置されており、空間70の外部には配置されていない。このため、スパッタリングの際に、ターゲット54からのスパッタ粒子は、空間70の内部を飛行し、空間70の外部は飛行しないので、ターゲット54からのスパッタ粒子が、空間70の外部に漏れ出るのを防止することができ、空間70の外部領域、例えばチャンバ52の内壁などにスパッタ粒子が付着(堆積)するのを防止することができる。なお、ターゲット54からのスパッタ粒子のうち、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子は空間70bを飛行するが、コリメータ61の開口部61aを通過しなかったスパッタ粒子は、空間70bを飛行しない。
【0109】
<コリメータの必要性について>
次に、コリメータ61を使用する理由について説明する。
【0110】
Ni−Pt合金のターゲット54を用いて半導体ウエハSW上にNi−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法で成膜する場合、NiとPtのスパッタ角(スパッタ角度)が異なる。このため、本実施の形態とは異なりコリメータ61を使用しなかった場合には、半導体ウエハSW上に形成されたNi−Pt合金膜において、Pt濃度が不均一になってしまう(すなわち、形成されたNi−Pt合金膜の面内におけるPt濃度が不均一になってしまう)。具体的には、Ni−Pt合金のターゲット54をスパッタした際のPtのスパッタ角がNiのスパッタ角よりも大きいことに起因して、半導体ウエハSWの主面の周辺部ではPt濃度が高くなり、半導体ウエハSWの主面の中央部ではPt濃度が低くなるように、半導体ウエハSWの主面上にNi−Pt合金膜が形成されてしまう。
【0111】
ここで、ターゲット54の表面にイオン(ここではArイオン)が衝突することで、ターゲット原子(ターゲット54を構成している原子、ここではNiおよびPt)がはじき出されるが、ターゲット原子(すなわちスパッタ粒子)がはじき出される角度範囲が、スパッタ角(スパッタ角度)に対応している。スパッタ角が大きいことは、広範囲(広い角度範囲)にターゲット原子がはじき出されることに対応し、スパッタ角が小さいことは、狭い範囲(狭い角度範囲)にターゲット原子がはじき出されることに対応する。NiとPtとで構成されたターゲット54にイオン(ここではArイオン)が衝突した場合には、Niのスパッタ角よりもPtのスパッタ角の方が大きくなるため、Niに比べてPtの方が広範囲(広い角度範囲)にはじき出されることになる。このため、上述のように、本実施の形態とは異なりコリメータ61を使用しなかった場合には、半導体ウエハSWの主面の中央部でPt濃度が低く、半導体ウエハSWの主面の周辺部でPt濃度が高くなるように、半導体ウエハSWの主面上にNi−Pt合金膜が形成されてしまう。
【0112】
このため、ステップS1で半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法により成膜する際には、ターゲット54と半導体ウエハSWとの間にコリメータ61を配置(挿入)する必要がある。コリメータ61を配置したことにより、スパッタ粒子の垂直成分(半導体ウエハSWの主面に対して略垂直に入射するスパッタ粒子)だけがコリメータ61の開口部61aを通過して半導体ウエハSWに到達し、それ以外のスパッタ粒子(半導体ウエハSWの主面に垂直な方向に対して所定以上の傾斜角を持って飛行するスパッタ粒子)は、コリメータ61によって遮られて、半導体ウエハSWの主面に到達しなくなる。このため、ステップS1で半導体ウエハSWの主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)を均一な濃度で成膜することができる(すなわち形成されたNi−Pt合金膜の面内におけるPt濃度を均一にすることができる)ようになる。
【0113】
<シールド部材の必要性について>
ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、ターゲット54からのスパッタ粒子(ターゲット原子)がチャンバ52の内壁に付着(堆積)するのを防止するためのシールド部材として機能することができる。チャンバ52の内壁などにスパッタ粒子が付着(堆積)すると、付着(堆積)したスパッタ粒子による膜がチャンバ52の内壁などに徐々に形成されていき、この膜がはがれて半導体ウエハSW上に異物として混入(付着)する虞がある。また、チャンバ52の内壁は洗浄処理しにくいため、チャンバ52の内壁などにスパッタ粒子が付着(堆積)してしまうと、これを除去することは容易ではない。このため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を用いてスパッタ空間(ターゲット54からのスパッタ粒子が半導体ウエハSWに向かって飛行する空間、具体的にはターゲット54と半導体ウエハSWとの対向面間)を囲み、ターゲット54からのスパッタ粒子がロアーシールド62およびダークスペースシールド63で囲まれた空間70の外部に漏れ出してチャンバ52の内壁などに付着(堆積)するのを防止する。ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は取り外し可能に構成されているため、定期的に取り外して交換される。また、コリメータ61も取り外し可能に構成されており、定期的に取り外して交換される。
【0114】
チャンバ52は、取り外しや洗浄が容易ではないが、それに比べてロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61は取り外しが容易である。このため、ターゲット54からのスパッタ粒子がロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61に付着(堆積)したとしても、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61を定期的に交換することで、それらに付着(堆積)したスパッタ粒子による膜がはがれて半導体ウエハSW上に異物として混入(付着)するのを防止することができる。また、取り外されたコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、チャンバ52に比べて洗浄しやすい。ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に対して、洗浄処理(スパッタ粒子による付着物の除去処理)を行って再利用可能にできれば、半導体装置の製造コストの低減が可能になる。また、この洗浄処理の際にPtを回収すれば、貴重な資源(ここではPt)の節約になり、半導体装置の製造コストの低減にもつながる。
【0115】
<スパッタ粒子による付着物の除去について>
次に、ターゲット54からのスパッタ粒子による付着物(堆積物)の除去について説明する。
【0116】
本実施の形態の製造工程は、半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法によって成膜する工程(上記ステップS1、すなわち工程P5に対応)を含んでいるが、この際、上記成膜装置51を用い、ターゲット54の材料には、Ni−Pt合金を使用する。ターゲット54におけるPt濃度は、例えば3〜30原子%程度とすることができる。
【0117】
半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法によって成膜する際に、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61にも、スパッタ粒子が付着(堆積)し、Ni−Pt合金からなる付着物(後述の付着物81に対応)が付着(堆積)した状態になる。ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61に付着したNi-Pt合金は、Pt濃度が低ければ酸溶液による洗浄処理で除去可能であるが、Pt濃度が大きくなってくると、酸溶液によって除去しにくくなる。Pt濃度が大きいNi−Pt合金を酸溶液で無理に除去しようと酸溶液の酸濃度を高めた場合、下地のロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61自身までもが酸に溶解してしまう可能性が生じてしまう。一方、下地のロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61が溶解しないように酸溶液の酸濃度を低くした場合、Ni−Pt合金のPt濃度が大きくなってくると、Ni−Pt合金を完全に除去することは難しくなっていき、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61上に、Ni−Pt合金の除去残りが生じる可能性が高くなる。
【0118】
酸溶液による洗浄後にロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61上にNi−Pt合金の除去残りがあると、この除去残りがだんだんと積み重なっていくため、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の使用可能回数の低下を招いてしまう。ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の使用可能回数を増大させるためには、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61への悪影響(例えば酸溶液による腐食など)を抑制しながら、表面に付着(堆積)したNi−Pt合金を的確に除去して、Ni−Pt合金の除去残りを少なくすることが望まれる。これは、半導体装置の製造コストの低減につながる。
【0119】
また、Ptは、高価であり、資源的に回収する価値があるため、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61に付着したNi−Pt合金を的確に除去して、Ptを回収することが望まれる。Ptの回収率を向上するためには、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61からNi−Pt合金の付着物をできるだけ完全に除去して、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61上のNi−Pt合金の除去残りの低減を図ることが望まれる。これも、半導体装置の製造コストの低減につながる。
【0120】
そこで、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面にAl(アルミニウム)膜71を予め形成しておき、Al膜71でコーティングされた状態のロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61を用いて、半導体ウエハSW上にNi−Pt合金膜(合金膜11)を形成することが考えられる。このAl膜71は、Al溶射によって形成することができる。この場合、半導体ウエハSW上にNi−Pt合金膜(合金膜11)が形成されるとともに、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61にもスパッタ粒子を構成するNi−Pt合金が付着(堆積)するが、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61に付着したNi−Pt合金は、Al膜71上に付着(堆積)した状態となる。Al膜71は、アルカリ溶液によって溶解して除去することができるため、スパッタリング成膜後に、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61を取り外して、これらをアルカリ溶液で洗浄する(例えばアルカリ溶液中に浸す処理を行う)ことで、Al膜71を溶解し、それによって、Al膜71上に付着(堆積)していたNi−Pt合金を除去(リフトオフ)することができる。ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61は、アルカリ溶液によってはほとんど腐食されないため、アルカリ溶液による洗浄は、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61自体に悪影響を及ぼさない。
【0121】
このため、本実施の形態では、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面にAl膜71を予め形成してから、これを成膜装置51に取り付けた状態でNi−Pt合金のスパッタリング成膜を行い、その後、アルカリ溶液による洗浄を行って、Al膜71とともにNi−Pt合金(ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61に付着したNiPt合金)を除去する。これにより、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61への悪影響を抑制しながら、Ni−Pt合金を的確に除去して、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61におけるNi−Pt合金の除去残りを少なくすることができる。
【0122】
しかしながら、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面にAl膜71を形成することは、このAl膜71が剥がれ落ちるなどして半導体ウエハSWの主面上に異物として混入(付着)する可能性を発生させる。半導体ウエハSWの主面上への異物の混入(付着)は、製造される半導体装置の信頼性や製造歩留まりを低下させるため、抑制することが望ましい。
【0123】
そこで、本実施の形態では、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面(空間70に接している面)のうち、Al膜71を形成する領域を限定することで、Ni−Pt合金の除去残りの抑制と、Al膜71の剥がれによる半導体ウエハSWの主面上への異物の混入(付着)の抑制とを両立させている。図18に、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面(空間70に接している面)に形成されたAl(アルミニウム)膜71が示されている。
【0124】
すなわち、本実施の形態では、Ni−Pt合金はPt濃度が小さければ酸溶液で除去しやすいことに着目し、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面のうち、低Pt濃度のNi−Pt合金が付着する可能性があったとしても、高Pt濃度のNi−Pt合金が付着しない領域には、Al膜71を形成せず、付着したNi−Pt合金は酸溶液による洗浄処理(後述のステップS24に対応)で除去する。一方、Ni−Pt合金のPt濃度が大きければ、酸溶液による除去は難しくなる。しかしながら、Pt濃度が大きくとも、Al膜71を用いたリフトオフ法による除去が可能なことに着目し、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面のうち、高Pt濃度のNi−Pt合金が付着する可能性がある領域には、Al膜71を予め形成しておき、アルカリ溶液による洗浄処理(後述のステップS23に対応)でAl膜71を除去するのと一緒にNi−Pt合金も除去する。
【0125】
つまり、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61の表面のうち、Al膜71を形成するのは、高Pt濃度のNi−Pt合金が付着(堆積)する可能性がある領域に限定し、低Pt濃度のNi−Pt合金が付着(堆積)する可能性があっても、高Pt濃度のNi−Pt合金が付着(堆積)しない領域には、Al膜71を形成しないようにするという観点で、Al膜71形成領域を設計する。
【0126】
<コリメータを使用した場合のスパッタ粒子による付着物について>
コリメータ61を用いた場合、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子による付着物(堆積物)に比べて、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子による付着物(堆積物)は、Pt濃度が高くなるが、これについて説明する。
【0127】
ここで、Ni−Pt合金からなるターゲット54におけるPtの割合(濃度、原子比)を割合R1と表すものとする。また、コリメータ61の開口部61aを通過したターゲット原子(スパッタ粒子)は、Ni原子とPt原子とで構成されているが、コリメータ61の開口部61aを通過したターゲット原子(スパッタ粒子)におけるPt原子の割合(すなわちコリメータ61の開口部61aを通過したNi原子およびPt原子の総数に占めるPt原子の割合)を割合R2と表すものとする。また、半導体ウエハSWの主面上に堆積するNi−Pt合金膜(合金膜11)におけるPtの割合(濃度、原子比)を割合R3と表すものとする。また、コリメータ61の開口部61aを通過できずにコリメータ61、ロアーシールド62またはダークスペースシールド63などに衝突したターゲット原子(スパッタ粒子)におけるPt原子の割合(すなわちコリメータ61の開口部61aを通過できずにコリメータ61、ロアーシールド62またはダークスペースシールド63などに衝突したNi原子およびPt原子の総数に占めるPt原子の割合)を割合R4と表すものとする。これら割合R1,R2,R3,R4の関係性は、以下のようになる。
【0128】
すなわち、割合R2と割合R3とはほぼ同じである(すなわちR2≒R3)。これは、コリメータ61の開口部61aを通過したターゲット原子(スパッタ粒子)によって半導体ウエハSWの主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)が堆積するため、コリメータ61の開口部61aを通過したターゲット原子(スパッタ粒子)におけるPt原子の割合R2と、そのターゲット原子によって半導体ウエハSWの主面上に堆積したNi−Pt合金膜(合金膜11)におけるPtの割合R3とは、ほぼ同じになるためである。
【0129】
また、割合R1と割合R2とを比べると、割合R1よりも割合R2の方が小さくなる(すなわちR1>R2)。その理由は、ターゲット54からNi原子とPt原子とがはじき出されるが、Ni原子よりもPt原子の方がスパッタ角が大きいことから、Ni原子はコリメータ61の開口部61aを通過しやすく、Ni原子に比べてPt原子はコリメータ61の開口部61aを通過しにくいためである。つまり、Ni原子よりもPt原子の方がスパッタ角が大きいことから、ターゲット54からはじき出されたPt原子のうち、コリメータ61の開口部61aを通過したPt原子の割合を割合R11とし、ターゲット54からはじき出されたNi原子のうち、コリメータ61の開口部61aを通過したNi原子の割合を割合R12とすると、割合12よりも割合R11の方が小さくなる(すなわちR11<R12)ためである。また、R1>R2であれば、R1>R3も成り立つ。
【0130】
なお、R11<R12となる理由を補足すると、スパッタ角が小さなNi原子は、半導体ウエハSWの主面に対して略垂直方向に飛行するNi原子の割合が比較的多いことから、コリメータ61の開口部61aを通過するNi原子の割合R12は比較的大きくなる。それに比べると、スパッタ角が大きなPt原子は、半導体ウエハSWの主面に対して略垂直方向に飛行するPt原子の割合が比較的小さくなることから、コリメータ61の開口部61aを通過するPt原子の割合R11が比較的小さくなる。このため、R11<R12となるのである。
【0131】
また、割合R2と割合R4とを比べると、割合R2よりも割合R4の方が大きくなる(すなわちR2<R4)。その理由は、ターゲット54からNi原子とPt原子とがはじき出されるが、Ni原子よりもPt原子の方がスパッタ角が大きいことから、Pt原子はコリメータ61の開口部61aを通過できずにコリメータ61、ロアーシールド62またはダークスペースシールド63などに衝突しやすく、Pt原子に比べてNi原子はコリメータ61の開口部61aを通過しやすいためである。つまり、ターゲット54からはじき出されたPt原子のうち、コリメータ61の開口部61aを通過できなかったPt原子の割合を割合R13とし、ターゲット54からはじき出されたNi原子のうち、コリメータ61の開口部61aを通過できなかったNi原子の割合を割合R14とすると、割合14よりも割合R13の方が大きくなる(すなわちR13>R14)ためである。
【0132】
また、割合R1は割合R2と割合R4との間の値となるため、割合R1よりも割合R2が小さくなり(すなわちR1>R2)、かつ、割合R1よりも割合R4が大きくなる(すなわちR4>R1)。
【0133】
このため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)において、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着(堆積)した場合には、その付着物におけるPt濃度は比較的小さくなる(上記割合R2程度となる)。一方、コリメータ61の開口部61aを通過できなかったスパッタ粒子は、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)や、コリメータ61の表面に衝突して付着(堆積)する。R2<R4となることからも分かるように、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面やコリメータ61の表面において、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子が付着(堆積)した場合には、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着(堆積)した場合に比べて、その付着物におけるPt濃度は大きくなる。
【0134】
図19は、ターゲット54からのスパッタ粒子による付着物(堆積物)の説明図である。図19は、上記図18と同じ断面が示されているが、半導体ウエハSWに合金膜11が形成されるとともに、ターゲット54からのスパッタ粒子による付着物(堆積物)81がコリメータ61、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびカバーリング67に付着した状態を模式的に示したものである。図19に示される付着物81のうち、付着物(堆積物)81aは、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子による付着物(堆積物)であり、付着物(堆積物)81bは、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子による付着物(堆積物)である。付着物81はPtとNiからなるが、付着物81aのPt濃度は付着物81bのPt濃度よりも大きくなっている(上述のようにR2<R4となるため)。
【0135】
図19に示されるように、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)のうち、コリメータ61の下面61bより下に位置する領域は、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子による付着物81bが付着する可能性はあるが、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子による付着物81aが付着することはない。また、カバーリング67には、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子による付着物81bが付着する可能性はあるが、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子による付着物81aが付着することはない。一方、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)のうち、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域は、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子による付着物81bが付着する可能性は無いが、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子による付着物81aが付着する可能性がある。
【0136】
<Al膜形成領域について>
そこで、本実施の形態では、Al膜71形成領域を以下のようにしている。
【0137】
本実施の形態では、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、Al(アルミニウム)膜71が形成された領域は、コリメータ61の下面61bよりも高い位置に存在するが、コリメータ61の下面61bよりも低い位置には存在しないようにする。なお、コリメータ61の下面61bより「高い」または「低い」と言う場合、コリメータ61から見て、ターゲット54に近い側を「高い」側、半導体ウエハSWに近い側を「低い」側としている。また、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面とは、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面のうち、空間70に接する側の面(空間70に露出する面)に対応している。従って、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面が空間70を囲んでいる。また、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63はシールド部材として機能するため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面は、シールド部材の内面とみなすこともできる。
【0138】
すなわち、本実施の形態では、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、コリメータ61の下面61bよりも低い位置に位置する領域には、Al(アルミニウム)膜71は形成しない。なお、コリメータ61の下面61bよりも低い位置に位置する領域とは、コリメータ61の下面61bより下に位置する領域と言うこともできる。
【0139】
コリメータ61の開口部61aを通過しなかったスパッタ粒子が付着しないのであれば、たとえコリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着し得るとしても、その付着物81bにおけるPt濃度は比較的小さい(上記割合R2程度)ため、酸溶液でその付着物81bを除去しやすい。このため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、コリメータ61の下面61bより下に位置する領域は、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着する可能性はあっても、コリメータ61の開口部61aを通過しなかったスパッタ粒子は付着しない(付着できない)ため、Al(アルミニウム)膜71を形成しないのである。つまり、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子は空間70bを飛行できないため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、空間70bに接する領域(すなわちコリメータ61の下面61bより下に位置する領域)には、Al膜71を形成しない。
【0140】
具体的には、ロアーシールド62において、側壁部62c、平坦部62eおよび爪部62fの各内面(空間70に接している面)は、コリメータ61の下面61bよりも低い位置に位置しているため、Al膜71を形成しない。また、ロアーシールド62の平坦部62dの内面(空間70に接している面)は、その上に配置したコリメータ61で遮られる(遮蔽される)ことで、コリメータ61の開口部61aを通過しなかったスパッタ粒子は付着しないため、Al膜71は形成しない。
【0141】
ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、コリメータ61の下面61bより下に位置する領域はAl膜71を形成しないことで、Al膜71形成領域を抑制(低減)することができる。これにより、異物源として作用する可能性があるAl膜71の量を少なくすることができるため、Al膜71の剥がれによる半導体ウエハSWの主面への異物の混入(付着)を抑制または防止することができる。従って、製造される半導体装置の信頼性や製造歩留まりを向上させることができる。
【0142】
そして、本実施の形態では、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域の少なくとも一部にはAl(アルミニウム)膜71を形成しておく。すなわち、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)において、コリメータ61の下面61bよりも高い位置にある領域(ここではロアーシールド62の側壁部62bの内面やダークスペースシールド63の内面)は、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子が付着する可能性があるため、少なくとも一部にAl(アルミニウム)膜71を形成しておく。つまり、コリメータ61の開口部61aを通過できないスパッタ粒子は、空間70b内は飛行できないが空間70a内を飛行するため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面のうち、空間70aに接する領域(すなわちコリメータ61の下面61bより上に位置する領域)の少なくとも一部にはAl膜71を形成しておくのである。なお、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域とは、コリメータ61の下面61bよりも高い位置にある領域と言うこともできる。
【0143】
具体的には、ロアーシールド62は、一部(ここではフランジ部62aおよび側壁部62b)がコリメータ61の下面61bよりも高い位置にあり、ロアーシールド62の内面のうち、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域(ここではロアーシールド62の側壁部62bの内面)の少なくとも一部に、Al膜71を形成している。また、ダークスペースシールド63は、全体がコリメータ61の下面61bよりも高い位置にあり、ダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)の少なくとも一部に、Al膜71を形成している。
【0144】
コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着した場合には、その付着物81bにおけるPt濃度は比較的小さいため、酸溶液でその付着物を除去しやすいが、それに比べると、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子が付着した場合には、その付着物81aにおけるPt濃度は大きいため、酸溶液を用いてもその付着物81aを除去しにくい。このため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、高Pt濃度(上記割合R2よりも高Pt濃度)の付着物81aが付着する可能性がある領域である、コリメータ61の下面61bよりも高い位置にある領域には、少なくとも一部にAl(アルミニウム)膜71を形成しておくのである。Al膜71を形成しておくことで、Al膜71上に付着(堆積)した付着物81aは、アルカリ溶液による洗浄(後述のステップS23に対応)によってAl膜71を溶解することでAl膜71と一緒に除去することができる。
【0145】
更に、本実施の形態では、コリメータ61(の表面)には、Al(アルミニウム)膜71を形成しておくことが好ましい。これは、コリメータ61は、スパッタ粒子が付着しやすく、また、コリメータ61に付着するスパッタ粒子は、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子であり、その付着物81aにおけるPt濃度は比較的大きい(上記割合R2よりも高Pt濃度)ため、酸溶液を用いてもその付着物を除去しにくいからである。このため、コリメータ61にAl膜71を形成しておくことで、Al膜71上に付着(堆積)した付着物81aは、アルカリ溶液による洗浄(後述のステップS23に対応)によってAl膜71を溶解することでAl膜71と一緒に除去することができる。
【0146】
コリメータ61において、コリメータ61の各開口部61aの側壁(内壁)とコリメータ61の上面とは、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子が付着しやすいため、Al膜71を形成することが望ましい。このため、コリメータ61において、コリメータ61の各開口部61aの側壁(内壁)全体とコリメータ61の上面全体とに、Al膜71を形成することが好ましい。
【0147】
一方、コリメータ61の各開口部61aの側壁やコリメータ61の上面に比べると、コリメータ61の下面61bは、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子は付着しにくいため、Al膜71を形成する場合と、Al膜71を形成しない場合とがあり得る。コリメータ61の下面61bにもAl膜71を形成した場合(上記図18はこの場合が示されている)、コリメータ61にAl膜71を形成しやすくなり、また、成膜装置51からコリメータ61を取り外して洗浄したときに、コリメータ61においてスパッタ粒子による付着物81の除去残りが発生しにくくなる。コリメータ61の下面61bにもAl膜71を形成した場合、コリメータ61は、全体にわたってAl膜71が形成された状態となる。一方、コリメータ61の下面61bにAl膜71を形成しなかった場合には、半導体ウエハSWの上方に存在して異物源として作用する可能性があるAl膜71の量を少なくすることができるため、半導体ウエハSW上への異物の混入を、より的確に防止できるようになる。
【0148】
また、本実施の形態では、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域には、少なくとも一部にAl膜71を形成するが、ターゲット54からのスパッタ粒子(ターゲット原子)が付着する領域には、Al膜71を形成しておくことが好ましい。すなわち、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域のうち、ターゲット54からのスパッタ粒子(ターゲット原子)が付着する領域の全てに対してAl膜71を形成しておくことが好ましい。なお、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域にターゲット54からのスパッタ粒子が付着する場合、付着するスパッタ粒子は、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子である。これにより、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子はAl膜71上に付着し(すなわち付着物81aはAl膜71上に付着し)、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面においてAl膜71が形成されていない領域には付着しなくなる。つまり、ロアーシールド62の内面は、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子が付着する領域を有しているが、その付着物81aは、全て、ロアーシールド62の内面に形成されたAl膜71上に付着(堆積)することになる。また、ダークスペースシールド63の内面は、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子が付着する領域を有しているが、その付着物81aは、全て、ダークスペースシールド63の内面に形成されたAl膜71上に付着(堆積)することになる。これにより、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子による付着物81aは、Pt濃度が高くとも、アルカリ溶液による洗浄(後述のステップS23に対応)によってAl膜71と一緒に的確に除去することができ、付着物81aの除去残りの発生を的確に防止することができる。
【0149】
また、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域の全てに対してAl膜71を形成しておくこともできるが、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子が付着しない領域(付着する可能性が無い領域)があれば、そこにはAl膜71を形成しないこともできる。例えば、図18に示されるように、ダークスペースシールド63のチップ部(突出部)63a以外の下面63bは、ターゲット54からのスパッタ粒子の入射がチップ部63aによって遮られるため、スパッタ粒子は付着しない。このため、ダークスペースシールド63のチップ部(突出部)63a以外の下面63bには、Al膜71を形成しないこともできる。ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面(空間70に接している面)において、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域のうち、スパッタ粒子が付着しない領域(付着する可能性が無い領域)にはAl膜71を形成しないようにすれば、異物源として作用する可能性があるAl膜71の形成面積を、より少なくすることができる。これにより、Al膜71の剥がれによる半導体ウエハSWの主面への異物の混入(付着)を抑制または防止することができ、製造される半導体装置の信頼性や製造歩留まりを、より向上させることができる。
【0150】
一方、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の内面において、コリメータ61の下面61bより上に位置する領域全体(全部)にAl膜71を形成した場合には、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63においてAl膜71を形成していない領域に、コリメータ61の開口部61aを通過していないスパッタ粒子が付着する可能性を完全に排除できる。このため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の洗浄時に、スパッタ粒子による付着物81の除去残りが発生するのを、より確実に防止することができる。
【0151】
<成膜工程から洗浄工程までのフローについて>
次に、成膜装置51を用いたNi−Pt合金膜(合金膜11)の成膜工程から、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の洗浄工程までのフローについて説明する。図20は、成膜装置51を用いたNi−Pt合金膜(合金膜11)の成膜工程から、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の洗浄工程までを示す工程フロー図である。
【0152】
本実施の形態では、上記成膜装置51のステージ53上に半導体ウエハSWを配置(支持)し、スパッタリング法によって半導体ウエハSWの主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11に対応)を形成してから、Ni−Pt合金膜(合金膜11)が形成された半導体ウエハSWを上記成膜装置51から取り出す(図20のステップS21)。このステップS21は、上記ステップS1(すなわち上記工程P5)に相当するものである。ステップS21では、ターゲット54からのスパッタ粒子がコリメータ61の開口部61aを通過して半導体ウエハSWの主面上に堆積することにより、Ni−Pt合金膜(合金膜11)が形成される。
【0153】
ステップS21で用いられる成膜装置51のコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63には、上述のように、予めAl(アルミニウム)膜71が形成されている。すなわち、所定の領域にAl膜71が形成されたコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63が取り付けられた成膜装置51を使用して、ステップS21が行われて半導体ウエハSWの主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)が形成される。コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63のどの領域にAl膜71を形成しておくかについては上述した通りである。このステップS21は、所定枚数の半導体ウエハSWに対して繰り返し行うことができる。この場合、ある半導体ウエハSW(合金膜11をまだ形成していない半導体ウエハSW)に成膜装置51を用いて合金膜11を形成してから、この半導体ウエハSWを成膜装置51から取り出し、次の半導体ウエハSW(合金膜11をまだ形成していない半導体ウエハSW)を成膜装置51内に搬入してその半導体ウエハSWに合金膜11を形成してから、その半導体ウエハSWを成膜装置51から取り出す。この操作を所定枚数の半導体ウエハSWに対して繰り返す。すなわち、所望の枚数の半導体ウエハSWに対して、それぞれステップS21を行うことができる。
【0154】
所定の枚数の半導体ウエハSWに対して、それぞれステップS21を行った後、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を成膜装置51から取り外す(図20のステップS22)。
【0155】
取り外されたコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に対して、上記付着物(堆積物)81を除去するための洗浄処理を行う。この洗浄処理は、アルカリ溶液による洗浄処理(図20のステップS23)を含んでいる。このステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理は、Al膜71をアルカリ溶液で溶解して除去する処理である。ステップS23で使用するアルカリ溶液は、例えば水酸化ナトリウム溶液(水酸化ナトリウムの水溶液)または水酸化カリウム溶液(水酸化カリウムの水溶液)などを用いることができ、濃度は例えば5〜20g/L程度とすることができる。ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理は、例えば、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61をアルカリ溶液中に浸す(浸ける)処理などにより行うことができる。
【0156】
ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理の際には、アルカリ溶液によってAl膜71が溶解する。アルカリ溶液でAl膜71が溶解することにより、Al膜71上に付着(堆積)していた付着物81(具体的には付着物81a)をAl膜71と一緒にリフトオフして除去することができる。すなわち、ステップS21のNi−Pt合金膜(合金膜11)成膜時にコリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子によってAl膜71上に付着(堆積)した付着物81aは、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理によりAl膜71を溶解することで、Al膜71とともにリフトオフして除去することができる。ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61は、アルカリ溶液によってはほとんど腐食されないため、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理は、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61自体に悪影響を及ぼさない。また、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理の後には、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に対して水洗処理を行うことが好ましい。
【0157】
また、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63において、Al膜71を形成していない領域にもスパッタ粒子による付着物81(具体的には付着物81b)が付着(堆積)する場合があるため、酸溶液による洗浄処理(図20のステップS24)を行うことが好ましい。このステップS24の酸溶液による洗浄処理は、ステップS22でコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を取り外した後で、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理の後または前に行う。ステップS24で使用する酸溶液は、例えば希硝酸または硝酸と塩酸の水溶液などを用いることができ、濃度は例えば1〜5mol/L程度とすることができる。ステップS24の酸溶液による洗浄処理は、例えば、対象物(ロアーシールド62、ダークスペースシールド63およびコリメータ61)を酸溶液中に浸す(浸ける)処理などにより行うことができる。ステップS23の酸溶液による洗浄処理の後には、水洗処理を行うことが好ましい。
【0158】
コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63のうち、ロアーシールド62は、合金膜11の成膜時にコリメータ61の下面61bより下に位置していた領域(具体的には側壁部62cや平坦部62eの内面)に、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着(堆積)する可能性があるが、この領域にはAl膜71を形成していない。このため、ロアーシールド62に対しては、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理に加えて、ステップS24の酸溶液による洗浄処理を行うことが好ましい。ロアーシールド62の表面において、Al膜71が形成されていない領域にスパッタ粒子(コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子)による付着物81bが付着(堆積)していたとしても、この付着物81bはPt濃度が低いため、ステップS24の酸溶液による洗浄処理によって除去することができる。また、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子による高Pt濃度の付着物81aは、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理によってAl膜71とともに除去できるため、ステップS24の酸溶液による洗浄処理においては、高Pt濃度の付着物81aは除去する必要が無い。ステップS24の酸溶液による洗浄処理では、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子による付着物81b(低Pt濃度の付着物81b)を除去できれば良い。このため、ステップS24の酸溶液による洗浄処理では、酸溶液の酸濃度を高めなくとも付着物81bを的確に除去することができ、下地のロアーシールド62などが酸溶液によって悪影響を受けるのを抑制または防止することができる。
【0159】
コリメータ61およびダークスペースシールド63については、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子は付着(堆積)する可能性があるが、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子は付着(堆積)しない。そして、コリメータ61およびダークスペースシールド63の表面において、スパッタ粒子が付着(堆積)する領域には、予めAl膜71を形成している。このため、コリメータ61およびダークスペースシールド63に付着した付着物81(具体的には付着物81a)は、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理によってAl膜71とともに除去できるため、ステップS24の酸溶液による洗浄処理は、コリメータ61およびダークスペースシールド63については、行わなくともよい。しかしながら、ステップS24の酸溶液による洗浄処理を、ロアーシールド62だけでなく、コリメータ61およびダークスペースシールド63についても行えば、より好ましく、これにより、Al膜71が意図せずして剥げた領域などにスパッタ粒子が付着したことで形成された付着物81なども除去しやすくなる。また、ロアーシールド62に対しては、ステップS24の酸溶液による洗浄処理を行うため、コリメータ61およびダークスペースシールド63に対してステップS24の酸溶液による洗浄処理を行っても、製造工程数は増大せず、製造工程が複雑化するのも防止できる。一方、コリメータ61およびダークスペースシールド63についてステップS24の酸溶液による洗浄処理を行わない場合には、ステップS24の酸溶液による洗浄処理に要する手間が少なくすることができる。
【0160】
また、ステップS21でスパッタ粒子がコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に付着したことによる付着物81はPt(白金)を含んでいる。Pt(白金)は、高価で、資源的に回収する価値があるためであるため、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理によりコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63から除去されたPt(すなわちコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63から除去された付着物81中に含まれていたPt)は、回収することが好ましい。Pt(白金)は、ステップS23の洗浄に使用した洗浄液(アルカリ溶液)から回収することができる。ステップS23で使用したアルカリ溶液にAl膜71は溶解するが、Pt(白金)は溶解しないため、Pt(白金)の回収を容易に行うことができる。
【0161】
また、ステップS24の酸溶液による洗浄処理によって除去されたPt(すなわちコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63から除去された付着物81中に含まれていたPt)も回収すれば、更に好ましい。Pt(白金)は、ステップS24の洗浄に使用した洗浄液(酸)から回収することができる。ステップS24の洗浄処理では、Pt(白金)が酸溶液に溶解する可能性があるが、Ptが溶解した酸溶液からでも、Ptを回収することは可能である。また、Pt(白金)の回収効率を考慮すると、ステップS23,S24の洗浄処理のうち、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理を先に行い、その後で、ステップS24の酸溶液による洗浄処理を行えば、より好ましい。
【0162】
本実施の形態では、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を洗浄(ステップS23,S24の洗浄処理)した後の付着物81の除去残りの発生を抑制または防止できるため、Ptの回収率を向上することができる。このため、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0163】
ステップS23,S24で洗浄されたコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、スパッタ粒子による付着物81が除去されており、再利用(再使用)可能である。このため、ステップS23,S24の洗浄処理は、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を再生する処理とみなすこともできる。ステップS23,S24の洗浄処理の後、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の所定の領域にAl膜71をAl溶射などにより形成する。どの領域にAl膜71を形成するかについては上述の通りであるので、ここではその説明は省略する。そして、ステップS23,S24の洗浄後にAl膜71が形成されたコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を成膜装置51に取り付け、その成膜装置51を用いて半導体ウエハSW(合金膜11をまだ形成していない半導体ウエハSW)に対してステップS21を行う(すなわち合金膜11を形成する)。
【0164】
また、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63(これらは所定領域にAl膜71が形成されている)を複数セット用意しておき、ステップS22で成膜装置51からコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を取り外した後、別のセットのコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を成膜装置51に取り付けることもできる。そうすれば、取り外されたコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63について洗浄処理(ステップS23,S24の洗浄処理)を行っている間も、成膜装置51を用いたNi−Pt合金膜(合金膜11)の成膜が可能になる。ステップS23,S24の洗浄処理を行ったコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63は、所定の領域にAl膜71をAl溶射などにより形成した後、保管しておいて、次回以降のコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の交換時(成膜装置51からのコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の取り外し時)に使用することができる。
【0165】
本実施の形態では、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63を洗浄(ステップS23,S24の洗浄処理)した後の付着物81の除去残りの発生を抑制または防止できるため、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の使用可能回数(再利用可能回数)を向上することができる。このため、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0166】
また、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子においては、半導体ウエハSWの主面に対して傾斜した角度で飛行するスパッタ粒子は少ないため、コリメータ61の下面61bより下に位置する部分のロアーシールド62(具体的には側壁部62cや平坦部62eの表面)では、付着するスパッタ粒子の量自体が少ない。すなわち、ロアーシールド62のうち、合金膜11の成膜時にコリメータ61の下面61bより下に位置していた領域には、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子が付着しないだけでなく、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着するとしても、その付着量(付着物81bの量)は少ない。このため、ロアーシールド62のうち、合金膜11の成膜時にコリメータ61の下面61bより下に位置していた領域(具体的には側壁部62cや平坦部62eの表面)に付着した付着物81bは、ステップS24の酸溶液による洗浄処理で十分に除去することができる。
【0167】
また、カバーリング67は、ロアーシールド62と半導体ウエハSWとの間の隙間を塞ぐ部材として機能し、ターゲット54からのスパッタ粒子がロアーシールド62と半導体ウエハSWとの間の隙間を通り抜けてチャンバ52の内壁などに付着するのを防止するように機能することができる。このため、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63とともに、カバーリング67も、ターゲット54からのスパッタ粒子(ターゲット原子)がチャンバ52の内壁に付着(堆積)するのを防止するためのシールド部材(シールド治具、防着部材、防着治具)として機能することができる。このカバーリング67は、コリメータ61の下面61bよりも下に位置しており、ターゲット54からのスパッタ粒子のうち、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着(堆積)する可能性はあるが、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子は付着(堆積)しない。このため、カバーリング67には、Al(アルミニウム)膜71は形成しない。上記ステップS22では、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63とともに、カバーリング67も取り外すことができる。取り外したカバーリング67は、上記ステップS24の酸溶液による洗浄処理(例えばカバーリング67を酸溶液中に浸す処理)を行う。また、カバーリング67にはAl膜71を形成していないため、ステップS23のアルカリ溶液による洗浄処理は、カバーリング67については行わなくてよい。
【0168】
カバーリング67には、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子が付着(堆積)する可能性はあるが、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子は付着(堆積)しないため、コリメータ61の開口部61aを通過しないスパッタ粒子による高Pt濃度の付着物81aはカバーリング67には付着しない。このため、コリメータ61の開口部61aを通過したスパッタ粒子がカバーリング67に付着したとしても、その付着物81bは、ステップS24の酸溶液による洗浄処理によって除去することができる。洗浄処理(ステップS24の酸溶液による洗浄処理)によりカバーリング67から付着物81bを除去すれば、Ptの回収率を高めることができる。また、カバーリング67の再利用も可能になる。
【0169】
<Al膜の下地の粗面度とAl膜の厚みについて>
次に、Al膜71を形成する下地(すなわちコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面)の粗面度と、Al膜71の厚みについて説明する。
【0170】
Al膜71は、半導体ウエハSWの主面への異物源となり得るため、本実施の形態では、上述のように、Al膜71形成領域を、高Pt濃度でスパッタ粒子が付着(堆積)する領域に限定している。これにより、Al膜71が形成されている領域の面積を抑制して、Al膜71が剥がれ落ちて半導体ウエハSWの主面上に異物として混入(付着)する可能性を低下させることができ、製造される半導体装置の信頼性や製造歩留まりを向上させることができる。
【0171】
しかしながら、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に形成されたAl膜71が剥がれ落ちて半導体ウエハSWの主面上に異物として混入(付着)することは、できるだけ抑制することが望ましいため、本実施の形態では、Al膜71を形成する下地の粗面度と、Al膜71の厚みとを更に工夫することで、Al膜71の剥がれを抑制または防止している。以下、具体的に説明する。
【0172】
Al膜71の剥がれ防止の観点からは、Al膜71を形成する下地(すなわちコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面)の粗面度とAl膜71の厚みについて、それぞれ最適領域がある。
【0173】
コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)の粗面度(表面粗さ)は、6〜8μmが好ましい。ここで言う粗面度(すなわち表面粗さ)は、中心線平均粗さ(Ra)である。なお、中心線平均粗さ(Ra)とは、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さで割った値をマイクロメートル(μm)で表したものである。中心線平均粗さ(Ra)は、中心線平均粗さ測定器によって測定することができる。
【0174】
コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)が平滑過ぎると、その上に形成したAl膜71が剥がれやすくなるため、ある程度粗く(粗面化)して、アンカー効果により、Al膜71を剥がれにくくすることが好ましい。この観点で、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)の粗面度(表面粗さ)は、6μm以上が好ましい。コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)は、例えばサンドブラストなどにより粗面化することができる。但し、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)の表面を粗くしすぎると、表面の凹凸における凸部の先端が尖りやすくなり、この尖った先端に付着していたAl膜71は、かえって剥がれやすくなってしまう。このため、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)を粗くしすぎることも、Al膜71の剥がれを招いてしまうため、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)の粗面度(表面粗さ)をある程度以下に抑制することが好ましい。この観点で、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)の粗面度(表面粗さ)は、8μm以上が好ましい。従って、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の表面(Al膜71の下地となる面)の粗面度(表面粗さ)は、6〜8μmが好ましく、これにより、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63からAl膜71が剥がれてしまうのを、より的確に抑制または防止することができる。これにより、剥がれ落ちたAl膜71が半導体ウエハSWの主面上に異物として混入(付着)するのを、より的確に抑制または防止することができ、製造される半導体装置の信頼性や製造歩留まりを、より向上させることができる。
【0175】
なお、粗面度(表面粗さ)を6〜8μmとするのは、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63において、Al膜71の下地となる面(Al膜71が形成される領域)である。Al膜71が形成されない領域は、それ以外の粗面度(表面粗さ)とすることもできる。
【0176】
また、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に形成したAl膜71が厚すぎると、Al膜71が剥がれやすくなるため、Al膜71の厚みは、150μm以下が好ましい。Al膜71の厚みを150μm以下とすることで、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63からAl膜71が剥がれにくくすることができ、剥がれ落ちたAl膜71が半導体ウエハSWの主面上に異物として混入(付着)するのを、より的確に抑制または防止することができる。一方、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に形成したAl膜71が薄すぎると、Al膜71を均一に形成しづらくなるため、Al膜71の厚みは、50μm以上が好ましい。従って、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に形成したAl膜71の厚みは、50〜150μmが好ましい。
【0177】
また、Al(アルミニウム)膜71は、Al溶射によって形成することができる。Al溶射とは、アルミニウム粒子(アルミニウムからなる粒子、アルミニウム粉末)をプラズマで一部(アルミニウム粒子の表面部分)溶解した状態とし、これを窒素ガスなどのジェット流にのせて母材(ここではコリメータ61、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63)に吹き付ける技術である。つまり、Al膜71は、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に対してアルミニウム(Al)粒子を溶射することにより形成することができる。
【0178】
Al膜71をAl溶射によって形成する際に使用するアルミニウム粒子の平均粒径は、100μm以下が好ましい。例えば、Al膜71をAl溶射によって形成する際に、100μmの粒径のアルミニウム粒子を母材(ここではコリメータ61、ロアーシールド62、ダークスペースシールド63)に吹き付けると、吹き付けられたアルミニウム粒子は、母材にぶつかることによりつぶれて拡がり、25μm程度の厚みのAl(アルミニウム)膜が形成される。これを4回行うことで、100μm程度の厚みのAl(アルミニウム)膜71を形成することができる。
【0179】
もし、Al膜71をAl溶射によって形成する際に使用するアルミニウム粒子の粒径が大きすぎると、Al膜71を、好適な厚みである150μm以下で均一には形成しにくくなるが、使用するアルミニウム粒子の平均粒径を100μm以下とすることで、Al膜71を、好適な厚みである150μm以下で均一に形成しやすくなる。このため、Al膜71をAl溶射によって形成する際に使用するアルミニウム粒子の平均粒径を100μm以下とすることにより、好適な厚み(150μm以下の厚み)のAl膜71を均一に形成することができる。また、Al膜71をAl溶射によって形成する際に使用するアルミニウム粒子の平均粒径が20μm以上であれば、より好ましく、これにより、Al膜71の形成に要する時間を短縮することができ、また、Al膜71を形成しやすくなる。従って、Al膜71をAl溶射によって形成する際に使用するアルミニウム粒子の平均粒径は、20〜100μmであれば、より好ましい。
【0180】
図21は、ステンレス鋼板(ステンレス鋼の板)にAl膜71に相当するAl(アルミニウム)膜をAl溶射によって形成し、そのAl膜を引っ張ったときに、どの程度の引っ張り荷重(Al膜を引っ張る力)で剥がれたかを示すグラフである。図21のグラフの横軸は、Al膜の下地であるステンレス鋼板の粗面度(表面粗さ)に対応している。ここで言う粗面度も、中心線平均粗さ(Ra)である。図21のグラフの縦軸は、Al膜が剥がれたときの引っ張り荷重に対応している。また、図21のグラフでは、Al膜の厚みが100μmの場合を四角印(□)で、Al膜の厚みが200μmの場合を三角印(△)で、Al膜の厚みが300μmの場合を丸印(○)で、それぞれプロットしてある。
【0181】
図21からも分かるように、下地の粗面度(Ra)が2〜4μm程度だと、その上に形成したAl膜が剥がれやすくなるが、Al膜71の下地となる面の粗面度(表面粗さ)を2〜4μmよりも大きく(好ましくは6〜8μm程度)とすることで、Al膜が剥がれにくくすることができる。また、図21からも分かるように、Al膜が200μm以上だとAl膜が剥がれやすくなるため、Al膜の厚みを200μmよりも薄くする(好ましくは150μm以下、例えば100μm程度)とすることで、Al膜が剥がれにくくすることができる。
【0182】
なお、図21のグラフにおいて、Al膜の厚みが100μm(□印)で粗面度(Ra)が6μmの場合に、縦軸の引っ張り荷重が50N/mmとなっているが、これは、50N/mmの引っ張り荷重でAl膜が剥がれた訳ではなく、引っ張り荷重を印加するために使用した接着材が50N/mmの引っ張り荷重で剥がれたためである。このため、実際には、Al膜の厚みが100μm(□印)で粗面度(Ra)が6μmの場合には、Al膜が剥がれるときの引っ張り荷重は、50N/mmよりも十分に大きくなると考えられる。
【0183】
また、図21のグラフは、ステンレス鋼板上にAl膜を形成した場合であるが、チタン板(チタンからなる板)上にAl膜を形成した場合も、図21のグラフと同様の傾向が得られる。
【0184】
図22は、Al膜71の厚みの説明図である。図22には、下地の母材72上にAl膜71が形成された状態が模式的に示されている。母材72は、コリメータ61、ロアーシールド62またはダークスペースシールド63に対応している。
【0185】
Al膜71を形成する下地の母材72の表面は、図22に模式的に示されるように粗面化されており、粗面度(表面粗さ)は、上述のように好ましくは6〜8μmとされている。このため、図22に示される母材72の表面の凹凸の頂部(凸部の頂部)から底部(凹部の底部)までの距離t1は、粗面度(表面粗さ)のおよそ2倍であり、12〜16μm程度である。この母材72の表面上にAl膜71がAl溶射などによって形成されるが、下地の母材72の表面の粗面度(凹凸)に応じた凹凸が、Al膜71の表面にも生じる可能性がある。図22には、Al膜71の厚みt2が示されているが、厚みt2は、Al膜71の厚みの平均値である。Al膜71の厚みt2は、上述のように50〜150μm(すなわち50μm≦t2≦150μm)が好ましい。この厚みt2は、上記距離t1よりもかなり大きいため、下地の母材72の表面が粗面化されて凹凸(頂部から底部までが12〜16μm程度の凹凸)があったとしても、Al膜71の厚みt2は、Al膜71を形成する前の母材72の厚みと、Al溶射などによってAl膜71を形成した後の厚み(母材72とAl膜の合計の厚み)との差により求めることができる。近似的には、母材72の表面の凹凸の頂部から、Al膜71の表面の凹凸の頂部までの距離として、厚みt2を求めることもできる。
【0186】
<応用例について>
本実施の形態の製造工程は、半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法によって成膜する工程(上記ステップS1、ステップS21および工程P5に対応)を含んでおり、この場合、ターゲット54の材料には、Ni−Pt合金を使用している。半導体ウエハSWの主面上にスパッタリング法で成膜する合金膜が、Ni−Pt合金膜の場合だけでなく、Ni−Pt合金膜以外の場合であっても、以下の第1元素と第2元素との合金膜である場合には、本実施の形態の概念を適用することができる。半導体ウエハSWの主面上にスパッタリング法で成膜する合金膜が、以下の第1元素と第2元素との合金膜である場合、スパッタリングに使用するターゲット54も、以下の第1元素と第2元素との合金からなる。
【0187】
ここで、上記第1元素は、Sc(スカンジウム),Ti(チタン),V(バナジウム),Cr(クロム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Cu(銅),Zn(亜鉛),Ga(ガリウム),Ge(ゲルマニウム)からなる群から選択された少なくとも一種からなる。上記第2元素は、Nb(ニオブ),Mo(モリブデン),Pd(パラジウム),Au(金),Pt(白金),Ru(ルテニウム),Rh(ロジウム),Ir(イリジウム)からなる群から選択された少なくとも一種からなる。
【0188】
上記ターゲット54が上記第1元素および第2元素の合金からなり、このターゲット54を用いたスパッタリングを行なう場合には、本実施の形態で説明したような課題が生じ得る。すなわち、上記第1元素および第2元素の合金からなるターゲット54を使用した場合には、第1元素のスパッタ角(スパッタ角度)に比べて第2元素のスパッタ角(スパッタ角度)が大きくなる。また、ターゲット54からのスパッタ粒子が付着することによって、上記コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63に上記第1元素および第2元素の合金で構成された付着物(上記付着物81に相当するもの)が付着(堆積)した場合には、付着物における第2元素の濃度が大きくなってくると、酸溶液によって除去しにくくなる。また、上記第2元素は、高価であり、資源的に回収する価値がある。
【0189】
このため、本実施の形態で行った半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面上にNi−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法によって成膜する工程(上記ステップS1、ステップS21および工程P5に対応)を、上記第1元素と第2元素との合金からなるターゲット54を用いて半導体ウエハSWの主面上に上記第1元素と第2元素との合金膜を形成する場合に適用しても、上述したような効果を得ることが可能である。上記第1元素と第2元素との合金膜をスパッタリング法で形成する場合も、ターゲット54の材料以外は、Ni−Pt合金膜(合金膜11)をスパッタリング法で形成する場合と基本的には同じ成膜装置、成膜方法および洗浄方法を使用し、上述した通りであるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0190】
また、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63上に形成したAl膜71は、アルカリ溶液に溶解可能なため、下地(コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63)に悪影響を与えずにAl膜71を除去可能(アルカリ溶液で除去可能)であり、Al膜71をアルカリ溶液で溶解することで、Al膜71上に付着していた付着物81もAl膜71と一緒に除去することができる。このため、半導体ウエハSW上に合金膜(上記合金膜11に対応する合金膜)を成膜する前にコリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63上に予め形成しておく膜としては、Al膜71が最も適しているが、他の形態として、Al膜71の代わりに、Zn(亜鉛)膜、Pb(鉛)膜またはSn(スズ)膜を用いることもできる。これは、アルカリ溶液に溶解可能な金属(両性金属)は、Al(アルミニウム)だけではなく、Al以外にZn(亜鉛)、Pb(鉛)およびSn(スズ)があり、Zn(亜鉛)膜、Pb(鉛)膜およびSn(スズ)膜も、アルカリ溶液で溶解可能なためである。すなわち、Al膜71の代わりにZn膜、Pb膜またはSn膜を用いた場合でも、それらの膜(Al膜71の代わりのZn膜、Pb膜またはSn膜)をアルカリ溶液で溶解することで、それらの膜上に付着していた付着物81も一緒に除去することができる(この際に使用するのはアルカリ溶液のため下地に悪影響を与えずにすむ)。Al膜71の代わりに、Zn(亜鉛)膜、Pb(鉛)膜またはSn(スズ)膜を用いた場合に、それらの膜(Al膜71の代わりのZn膜、Pb膜またはSn膜)をどのような領域に形成するかは、Al膜71の場合と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。但し、コリメータ61、ロアーシールド62およびダークスペースシールド63の所定領域への形成しやすさや、アルカリ溶液による除去(溶解)しやすさ、取り扱い容易性などを考慮すると、Zn膜、Pb膜およびSn膜よりもAl膜71の方が、より好ましい。
【0191】
また、本実施の形態では、サリサイドプロセスで金属シリサイド層(上記金属シリサイド層41a,41bに対応)を形成するために使用する合金膜11を半導体ウエハSW(半導体基板1)の主面上に形成する場合について説明した。他の形態として、サリサイドプロセス以外の用途で使用する合金膜(Ni−Pt合金膜または上記第1元素および第2元素の合金膜)をスパッタリング法で成膜する場合についても、本実施の形態と同様の技術を適用することができる。
【0192】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は、半導体装置の製造技術に適用して有効である。
【符号の説明】
【0194】
1 半導体基板
2 素子分離領域
2a 溝
3 p型ウエル
4 n型ウエル
5 ゲート絶縁膜
6 シリコン膜
7a n型半導体領域
7b n型半導体領域
8a p型半導体領域
8b p型半導体領域
9 サイドウォール
9a 酸化シリコン膜
9b 窒化シリコン膜
9c 側面
11 合金膜
11a 未反応部分
11b 反応部分
12 バリア膜
20 成膜装置
21a 第1搬送室
21b 第2搬送室
22 ゲートバルブ
23 ロードロック室
24 ロードロック室
25,26,27 チャンバ
28,29,30,31 チャンバ
32a,32b 搬送用ロボット
33 ウエハ搬入出室
34 フープ
35 ポート
36 搬送用ロボット
41a,41b 金属シリサイド層
42,43 絶縁膜
44 コンタクトホール
45 プラグ
45a バリア導体膜
45b 主導体膜
46 ストッパ絶縁膜
47 絶縁膜
48 配線溝
49a バリア導体膜
49b 銅めっき膜
49 配線
51 成膜装置
52 チャンバ
52a 張り出し部
53 ステージ
54 ターゲット
55 バッキングプレート
56 真空ポンピングシステム
57 ガスソース
58 マスフローコントローラ
59 マグネット部
60 絶縁部材
61 コリメータ
61a 開口部
61b 下面
62 ロアーシールド
62a フランジ部
62b 側壁部
62c 側壁部
62d 平坦部
62e 平坦部
62f 爪部
63 ダークスペースシールド
63a チップ部
63b 下面
65 Oリング
66 コリメータ台座
67 カバーリング
70,70a,70b 空間
71 Al(アルミニウム)膜
72 母材
81 付着物
GE1,GE2 ゲート電極
Qn,Qp MISFET
SW 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、半導体ウエハを支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記半導体ウエハに対向するターゲットと、
前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間に配置されたコリメータと、
前記チャンバ内に配置され、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間の空間と前記コリメータとを囲むシールド部材と、
を備える成膜装置を用い、スパッタリング法によって前記半導体ウエハの主面上にNi−Pt合金膜を形成する工程、
(b)前記(a)工程後、前記シールド部材を前記成膜装置から取り外す工程、
(c)前記(b)工程後、前記シールド部材を洗浄する工程、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程で用いられる前記シールド部材は、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より上に位置する領域の少なくとも一部にアルミニウム膜が形成され、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より下に位置する領域には前記アルミニウム膜が形成されておらず、
前記(c)工程は、
(c1)アルカリ溶液によって前記アルミニウム膜を溶解して除去する工程、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記ターゲットはNi−Pt合金からなり、
前記(a)工程では、前記ターゲットからのスパッタ粒子が前記コリメータの開口部を通過して前記半導体ウエハの前記主面上に堆積することにより、前記Ni−Pt合金膜が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で用いられる前記コリメータは、その表面に前記アルミニウム膜が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
前記シールド部材は、前記ターゲットからのスパッタ粒子が前記チャンバの内壁に付着するのを防止するように機能することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で用いられる前記シールド部材は、前記シールド部材の内面でかつ前記コリメータの下面より上に位置する領域のうち、前記ターゲットからのスパッタ粒子が付着する領域には、前記アルミニウム膜が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で前記アルミニウム膜上に付着したスパッタ粒子による付着物は、前記(c1)工程で前記アルミニウム膜とともに除去されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の製造方法において、
前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より下に位置する領域には、前記(a)工程において、前記ターゲットからのスパッタ粒子のうちの前記コリメータの開口部を通過していないスパッタ粒子は付着しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c2)前記シールド部材を酸溶液によって洗浄する工程、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程後、前記シールド部材は再利用されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程で前記シールド部材から除去されたPtは回収されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置の製造方法において、
前記シールド部材および前記コリメータは、ステンレスまたはチタンからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、
前記シールド部材はステンレスからなり、前記コリメータはチタンからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記アルミニウム膜の厚みは、150μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記アルミニウム膜は、アルミニウム粒子を溶射することにより形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記アルミニウム粒子の平均粒径は100μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、
前記アルミニウム膜の厚みは、50〜150μmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
前記シールド部材および前記コリメータにおける前記アルミニウム膜の下地となる面の粗面度は6〜8μmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程前に、
(a1)前記半導体ウエハに半導体領域を形成する工程、
を更に有し、
前記(a)工程では、前記半導体領域上を含む前記半導体ウエハ上に前記Ni−Pt合金膜を形成し、
前記(a)工程後、
(a2)熱処理を行って前記Ni−Pt合金膜と前記半導体領域とを反応させて、NiおよびPtのシリサイドからなる金属シリサイド層を形成する工程、
を更に有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体領域は、MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、半導体ウエハを支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記半導体ウエハに対向するターゲットと、
前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間に配置されたコリメータと、
前記チャンバ内に配置され、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間の空間と前記コリメータとを囲むシールド部材と、
を備える成膜装置を用い、スパッタリング法によって前記半導体ウエハの主面上に合金膜を形成する工程、
(b)前記(a)工程後、前記シールド部材を前記成膜装置から取り外す工程、
(c)前記(b)工程後、前記シールド部材を洗浄する工程、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ターゲットは、第1元素と第2元素との合金からなり、
前記第1元素は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Geからなる群から選択された少なくとも一種からなり、
前記第2元素は、Nb,Mo,Pd,Au,Pt,Ru,Rh,Irからなる群から選択された少なくとも一種からなり、
前記合金膜は、第1元素と第2元素との合金膜であり、
前記(a)工程で用いられる前記シールド部材は、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より上に位置する領域の少なくとも一部にAl膜、Zn膜、Pb膜またはSn膜からなる金属膜が形成され、前記シールド部材の内面のうち、前記コリメータの下面より下に位置する領域には前記金属膜が形成されておらず、
前記(c)工程は、
(c1)アルカリ溶液によって前記金属膜を溶解して除去する工程、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−134360(P2012−134360A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285829(P2010−285829)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】