説明

半導体装置の製造方法

【課題】膜中の有機成分の脱離による大きな体積収縮を抑制し、クラックなどの構造破壊を抑制することのできる光薄膜形成技術を提供する。
【解決手段】処理室に基板を搬入する工程と、前記処理室に有機シリコン系ガスを供給し、前記有機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、前記処理室に無機シリコン系ガスを供給し、前記無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、を備えるように半導体装置の製造方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理用ガスを真空紫外光等により励起し、基板上に薄膜を形成する薄膜形成技術に関するものであり、例えば、半導体集積回路(以下、ICという。)が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウエハ)に、酸化膜等を堆積(デポジション)して成膜等する上で有効な半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの回路を製造する過程では、処理用ガスを用いて、様々な方法で基板表面に成膜しており、成膜方法の1つに光薄膜形成技術がある。これは、アルゴン(Ar)やキセノン(Xe)などのエキシマによって発生した高いエネルギを有する励起光を用いて、材料ガスを分解して薄膜を形成するものであり、例えば、有機シロキサンガスであるOMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン:Octamethylcyclotetorasiloxane)に、真空紫外光(VUV:Vacuum Ultra Violet)を照射して薄膜を形成する方法が知られている。この方法によって形成した薄膜は、特定の条件下において流動性を有する成膜特性を有し、段差間の狭い空間への絶縁材料埋め込み技術として期待されている。また、室温から200℃以下の温度領域で成膜することが可能であり、下地基板として、従来の半導体以外に、有機系材料、すなわちプラスチックなどの基板やレジスト材料の上にも絶縁薄膜を形成できる方法として有望視されている。
【0003】
しかし、この方法では、有機原料を主体とする故に、薄膜中に有機成分が取り込まれてしまい、本発明者らが光電子分光法(XPS)にて組成確認を行った結果では、例えばOMCTSを用いた場合、30atm%以上の有機成分(カーボン)が存在することが分かった。このような高い濃度の有機成分を含む薄膜は、その後の熱処理やアッシングやエッチングなどの加工処理によって、膜中の有機成分が脱離してしまう。この脱離による膜の体積減少率は、最大で、膜中の有機成分の含有率に近い規模になることを、本発明者らは確認した。
【0004】
薄膜が10%を超える規模で体積収縮した場合、収縮による大きな応力変化が発生する。薄膜の機械的強度を超える応力変化が発生した場合は、クラックなどの破壊現象に至る。流動性を利用した段差被覆を行う光薄膜形成の場合は、段差の角や立ち上がりにおいてクラックが生じる可能性が高く、保護膜としての機能を大きく損なってしまうばかりでなく、配線間においては短絡などの原因となる場合がある。
【0005】
下記の特許文献1には、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスに真空紫外光を照射して、高アスペクト比で狭い幅の溝内に、緻密なシリコン酸化膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−87475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、膜中の有機成分の脱離による体積収縮を抑制し、クラックなどの構造破壊を抑制することのできる光薄膜形成技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において開示される半導体装置の製造方法に関する発明のうち、代表的なものは、次のとおりである。すなわち、
処理室に基板を搬入する工程と、
前記処理室に有機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記処理室に無機シリコン系ガスを供給し、該無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【0009】
また、本明細書において開示される基板処理装置に関する発明のうち、代表的なものは、次のとおりである。すなわち、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に有機シリコン系ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記処理室内に無機シリコン系ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記処理室内に紫外光を照射する発光部と、
前記処理室内の雰囲気を排気するガス排気部と、
前記第1ガス供給部から供給する有機シリコン系ガスに前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成し、前記第2ガス供給部から供給する無機シリコン系ガスに前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成するよう制御する制御部と、
を備える基板処理装置。
【発明の効果】
【0010】
上記のように半導体装置の製造方法や基板処理装置を構成すると、膜中の有機成分の脱離による体積収縮を抑制し、クラックなどの構造破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置を、側面から見た断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板載置部を、側面から見た断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る処理室における、ガスの供給と排気の様子を示す図である。
【図4】第1実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。
【図5】第2実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。
【図6】第3実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。
【図7】第4実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る基板処理装置について、図1と図3を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置を、側面から見た断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る処理室における、ガスの供給と排気の様子を示す図である。
図1において、300は基板処理装置であり、基板を処理する処理室301や後述するランプ室60を含み、チャンバ上壁306、基板載置部311、チャンバ側壁312、チャンバ底壁313等から構成されている。
302は、ウエハ200(基板)上におけるガスの流れを制御するガス流れ制御リング302である。
【0013】
303は、処理室301内に処理用ガスを供給するガス供給孔であり、図3に示すように、半リング状に複数並べて設けられる。図3は、ガス供給孔303が6つの例である。303a〜303fは、各ガス供給孔を表す。
ガス供給孔303は、処理用ガスを一時的に格納するバッファ空間としての、供給ガス用バッファ室309に隣接する。供給ガス用バッファ室309は、図3に示すように、チャンバ側壁312内部で半リング状の通路を形成している。図1に示すように、供給ガス用バッファ室309には、ガス導入管324が接続されている。ガス導入管324は、第1ガス供給管319aを介して、有機シリコン系材料ガスである第1ガス供給源316aに接続され、第2ガス供給管319bを介して、無機シリコン系材料ガスである第2ガス供給源316bに接続され、また第3ガス供給管319cを介して、不活性ガスを供給する第3ガス供給源316cに接続される。
このように、処理室301へ供給する前に、有機シリコン系材料ガスと無機シリコン系材料ガスを混合し、また、供給ガス用バッファ室309を介して、ガス供給孔303から処理用ガス(有機シリコン系材料ガスと無機シリコン系材料ガスと不活性ガスの混合ガス)を供給するので、基板上に均一に処理用ガスを供給することが可能となる。
【0014】
第1ガス供給管319aには、第1ガス供給源316aから供給ガス用バッファ室309に向かって、ガス流量を制御するマスフローコントローラ(MFC)317a、開閉バルブ318aが配設されている。第1ガス供給管319a、第1ガス供給源316a、マスフローコントローラ317a、開閉バルブ318aをまとめて第1ガス供給部と呼ぶ。
第2ガス供給管319bには、第2ガス供給源316bから供給ガス用バッファ室309に向かって、ガス流量を制御するマスフローコントローラ317b、開閉バルブ318bが配設されている。第2ガス供給管319b、第2ガス供給源316b、マスフローコントローラ317b、開閉バルブ318bをまとめて第2ガス供給部と呼ぶ。
また、第3ガス供給管319cには、第3ガス供給源316cから供給ガス用バッファ室309に向かって、ガス流量を制御するマスフローコントローラ317c、開閉バルブ318cが配設されている。第3ガス供給管319c、第3ガス供給源316c、マスフローコントローラ317c、開閉バルブ318cをまとめて第3ガス供給部と呼ぶ。
更には、第1ガス供給部、第2ガス供給部、第3ガス供給部、ガス導入管324をまとめて、ガス供給部と呼ぶ。
【0015】
304は、処理室301内から処理用ガスを排気するガス排気孔であり、図3に示すように、半リング状に複数並べて設けられる。図3は、ガス排気孔304が6つの例である。304a〜304fは、各ガス排気孔を表す。
排気孔304は、バッファ空間としての排気バッファ室310と接続されている。図3に示すように、排気バッファ室310は、チャンバ側壁312の内部に、半リング状の通路を形成するものである。
排気バッファ室310には、ガス排気管325が接続されている。ガス排気管325には、真空ポンプ327及びAPC(Auto Pressure Controller)バルブ326が接続されている。真空ポンプ327は、処理室内の雰囲気を排気する。APCバルブ326は、排気流量を調整して、処理室内の圧力を調整する。
ガス排気管325、真空ポンプ327、APCバルブ326をガス排気部と呼ぶ。
【0016】
図3に示すように、ガス供給部の供給孔303とガス排気部の排気孔304は、基板載置部311の基板載置面の周囲において、向かい合うよう構成される。すなわち、それぞれのガス供給孔303a〜303fと、それぞれのガス排気孔304a〜304fが、向かい合うように構成されている。例えば、図3において、供給孔303aと排気孔304aが向かい合うよう構成され、供給孔303fと排気孔304fが向かい合うよう構成される。このようにすると、基板表面に均一にガスを供給することができる。
【0017】
また、基板載置面は、ガス供給部の供給孔303の一端(303a)と、それに対向するガス排気部の排気孔304の一端(304a)を結ぶ線と、前記ガス供給部の供給孔の他端(303f)とそれに対向する前記排気孔の他端(304f)を結ぶ線の間に、納まるように構成される。このようにすると、基板上に確実にガス流を形成することができる。
【0018】
305は、ウエハ200(基板)を処理室301へ搬入、あるいは処理室301から搬出する基板搬入/搬出口である。ウエハ200を搬入/搬出する際、基板載置部支持機構314が下降し、基板載置部311の基板載置面と基板搬入出口305が同程度の高さとなる。ウエハ200を処理室へ搬入するときは、ウエハ移載機(不図示)によって、基板載置部311の基板載置面にウエハ200が載置される。ウエハ200を処理室から搬出するときは、逆に、ウエハ移載機(不図示)によって、基板載置部311の基板載置面から、ウエハ200がピックアップされる。
【0019】
307は、波長100nm以上で200nm以下の真空紫外光を照射する発光部としてのランプであり、チャンバ上壁(ランプ収納部上壁)306に固着され、ウエハ200の処理面と対向する面に設けられている。308は、ランプ307から照射される真空紫外光を透過する石英製の光透過窓である。光透過窓308は、ランプ307と処理室301の間にあり、真空紫外光を透過するとともに、処理室301の雰囲気をランプ307に晒さないための仕切りでもある。
ランプ307、光透過窓308を処理用ガスを励起、分解する励起部と呼ぶ。
【0020】
311は、ウエハ200(基板)を載置する基板載置部であり、基板の処理面がランプ307と対向するように基板が載置される。基板載置部311には、基板載置部311が所定の温度になるよう加熱するヒータ(不図示)が内蔵されている。314は、基板載置部311を支持する基板載置部支持機構である。315は、ベローズ(Bellows)であり、蛇腹を有する伸縮可能な気密封止部である。
基板載置部支持機構314が昇降することにより、基板載置部311が昇降する。図1では、基板載置部311は上昇した状態である。基板処理時は、図1に示すように、基板載置部311を所定の位置に上昇させ、基板を処理する。
【0021】
ランプ307と基板載置部311との距離は、基板処理(プロセス)の種類ごとに適宜変更することができる。処理用ガスへの照射エネルギー量を多く求めているプロセス、即ちガスのエネルギーレベルを高くすることが求められているプロセスにおいては、ランプ307から近い位置に、基板載置部311を上昇させるのがよい。
このように、基板処理時における基板載置部支持機構314の高さ位置を変えることで、様々なプロセスに対応することが可能となる。
【0022】
続いて、図2および図3を用いて、基板載置部311及びその周辺の構造について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る処理室に用いる基板載置部を、側面から見た断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る処理室における、ガスの供給と排気の様子を示す図である。
【0023】
基板載置部311は、図3に示すように、上面から見た形が円形であり、アルミ製である。また、図2に示すように、基板載置部311の円周端部(円周部分の端部)406には、凹部(ザグリ)が設けられている。該凹部に、ガス流れ制御リング302の内周端部(内周部分の端部)が、上方からはめ込まれる構造となっている。ガス流れ制御リング302は、アルミ製である。
ガス流れ制御リング302は、基板載置部支持機構314が下降した位置にある場合、ガス排気孔304上に載置されて待機している。基板載置部支持機構314が基板処理時の位置まで上昇する過程において、円周端部406のザグリに、ガス流れ制御リング302の内周端がはめ込まれ、基板載置部支持機構314とガス流れ制御リング302が共に上昇する。
基板載置部支持機構314が所定位置まで上昇した後、ガス流れ制御リング302は、ガス排気孔304の上方に、ガス排気孔304と所定の間隔を空けた状態で停止する。このとき、ガス流れ制御リング302の外周端(外周部分の端部)は、供給用ガスバッファ室309の壁と所定の距離を開けるようになっている。
【0024】
なお、基板処理時において、ガス流れ制御リング302の表面の高さと、ウエハ200の表面の高さは、同じであることが好ましい。このようにすると、ガス流れ制御リング302付近のガスの流速が、基板中央部のガスの流速と同じになる。つまり、基板の周縁部と中央部のガスの流速が同じになる。したがって、基板面内の成膜速度が同じになり、膜厚の均一性が向上する。
【0025】
ガス供給孔303から供給されたガスは、ウエハ200上に晒された後、ガス流れ制御リング302の表面から、供給用バッファ室309とガス流れ制御リング302の間の空間を経由して、ガス流れ制御リング302の裏面に位置されている排気孔304から排気される。
ガス流れ制御リング302によって、処理用ガスは、ウエハ200の外周端から基板載置部支持機構314側に流入することが妨げられ、ウエハ200の外周端から水平方向に流れ、排気される。したがって、ガス流れ制御リング302が無い場合に比べ、ガス排気を均一にすることが可能となるので、基板表面を均一に処理することが可能となる。また、ガス流れ制御リング302によって、処理用ガスを無駄に消費することが抑制でき、ガス流れの再現性も向上する。
また、ガス流れ制御リング302を設けることにより、基板載置部311の高さを変えても、ガス流れを均一にすることができる。このため、種々の異なるプロセスに対応するため、基板載置部311の高さを変えても、ガス流れを均一にすることができ、異なるプロセスへの対応が容易となる。
【0026】
続いて、本実施形態の処理室を使用する基板処理の動作を、第1〜4実施例により説明する。図4〜7は、それぞれ、第1〜4実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。なお、以下の各構成部の動作は、制御部108によって制御されるものである。
【0027】
(第1実施例)
まず、基板載置部311が基板搬入出口305と同程度の高さとなるよう、基板載置部支持機構314が昇降され、位置調整される。次に、ウエハ200(基板)が処理室へ搬入され、基板載置部311の基板載置面に、ウエハ200が載置される。
【0028】
基板載置部311の基板載置面にウエハ200が載置された後、基板載置部311が、所定の位置まで上昇する。この上昇途中で、サセプタ円周端部406の凹部(ザグリ)に、ガス流れ制御リング302の内周端がはめ込まれ、基板載置部311とガス流れ制御リング302が共に上昇する。基板載置部311が所定の高さまで上昇すると、水平回転を開始し、また、基板載置部311が所定の温度になるよう加熱される。
【0029】
基板載置部311が所定の温度になった後、ガス供給部から材料ガスを供給する。すなわち、図4に示すように、第1ガス供給部から有機シリコン系ガスを供給するとともに、第2ガス供給部から無機シリコン系ガスを供給する。材料ガス供給時、並行して、第3ガス供給部から不活性ガス等のキャリアガスを供給してもよい。図4において、縦軸はガス流量、横軸は時間であり、41は有機シリコン系ガス、42は無機シリコン系ガスである。図4の例では、有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを、同時に供給開始し、同時に供給停止している。
有機シリコン系ガスとしては、例えば、ヘキサメチルジシラン((CHSi)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS:(CHSiNHSi(CH)、ヘキサメチルジシロキサン(SiO(CH)、テトラエトキシシラン(TEOS: Si(OC54)を用いることができ、無機シリコン系ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、テトラシラン(Si10)を用いることができる。また、不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスや、アルゴン、ヘリウム等の希ガスを用いることができる。
【0030】
材料ガスを供給しながら、ガス排気部からガスを排気することにより、処理室内が所定の圧力に維持される。このとき、供給されたガスは、ウエハ200表面から、ガス流れ制御リング302表面を通り、排気孔304を経由して排気される。
材料ガスの供給開始と共に、ランプ307から真空紫外光を照射する。これにより励起、分解されたガスは、ウエハ200上に吸着され、成膜処理が行われる。基板載置部311を回転させながら、供給孔303から排気孔304へガス流を形成することにより、膜厚の均一性を向上できる。
【0031】
本例では、有機シリコン系ガスとしてヘキサメチルジシランを用いて流量を10sccmとし、無機シリコン系ガスとしてジシランを用いて流量を2sccmとし、処理室201内温度を50℃とし、処理室圧力を1〜200Paとして、3分間実施した。
【0032】
このように、成膜時の処理室圧力範囲は、1〜200Paとすることが好ましい。1Paよりも低い圧力では、有機シリコン系ガスのみを用いて成膜した場合でも流動性が十分でないこと、また、200Paを超える圧力領域においては、空間中の気相反応により、反応生成物がパーティクルとなって基板上に降り注ぐことが、発明者らの検討により分かっている。
また、同時に供給する際の有機シリコン系ガスに対する無機シリコン系ガスの流量比率は、0.2以下とすることが好ましい。この理由は、無機シリコン系ガスは、有機シリコン系ガスよりも空間中で気相反応を生じやすいためである。
【0033】
所望の基板処理が終わると、第1ガス供給部は有機シリコン系ガスの供給を停止し、第2ガス供給部は無機シリコン系ガスの供給を停止し、基板載置部311は回転を停止する。また、ランプ307からの真空紫外光の照射を停止する。第3ガス供給部からは不活性ガスが供給され、それと同時に、ガス排気部は処理室内の雰囲気を排気する。このようにして、処理室内の雰囲気を不活性雰囲気に入れ替える。
処理室内の雰囲気を入れ替えた後、もしくは入れ替えの処理の間、基板載置部支持機構314は下降し、基板載置部311と基板搬入出口305が同程度の高さとなるよう、基板載置部311の位置が制御される。基板載置部311が下降した後、処理室301から、処理済みのウエハ200が搬出される。
【0034】
第1実施例によれば、シリコン酸化膜中の有機成分の構成比率を下げることができ、後工程で熱処理を実施したときのシリコン酸化膜の収縮率を抑制することができる。
【0035】
(第2実施例)
次に、第2実施例について図5を用いて説明する。図5は、第2実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。材料ガスを導入するタイミング以外は、第1実施例と同様であるので説明を省略する。
第2実施例においては、基板載置部311が所定の高さまで上昇して水平回転を開始し、所定の温度になった後、図5に示すように、第1ガス供給部から有機シリコン系ガスを供給し、所定の時間経過後に、第2ガス供給部から無機シリコン系ガスを供給する。材料ガス供給時、並行して、第3ガス供給部から不活性ガス等のキャリアガスを供給してもよい。図5において、縦軸はガス流量、横軸は時間であり、51は有機シリコン系ガス、52は無機シリコン系ガスである。図5の例では、有機シリコン系ガスを無機シリコン系ガスよりも先に供給開始し、途中で有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを両方供給し、その後同時に供給停止している。
【0036】
所望の基板処理が終わると、有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスの供給を停止し、基板回転を停止し、真空紫外光の照射を停止する。不活性ガスが処理室内へ供給されるとともに処理室内の雰囲気が排気され、処理室内の雰囲気を不活性雰囲気に入れ替える。
処理室内の雰囲気を入れ替えた後、処理室301から、処理済みのウエハ200が搬出される。
【0037】
第2実施例によれば、シリコン酸化膜形成の初期段階において有機シリコン系ガスにより成膜するので、ウエハ上の反応堆積物に流動性を与えることができ、狭い溝内等への段差被覆性を良好にすることができる。このように、初期段階において、狭い溝内等の最深部に膜形成するうえで有効である。また、次の有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを混合する段階においては、前述の初期段階よりも、シリコン酸化膜中の有機成分の構成比率を下げることができる。
【0038】
(第3実施例)
次に、第3実施例について図6を用いて説明する。図6は、第3実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。材料ガスを導入するタイミング以外は、第1実施例と同様であるので説明を省略する。
第3実施例においては、基板載置部311が所定の高さまで上昇して水平回転を開始し、所定の温度になった後、図6に示すように、第2ガス供給部から無機シリコン系ガスを供給し、所定の時間経過後に、第1ガス供給部から有機シリコン系ガスを供給する。材料ガス供給時、並行して、第3ガス供給部から不活性ガス等のキャリアガスを供給してもよい。図6において、縦軸はガス流量、横軸は時間であり、61は有機シリコン系ガス、62は無機シリコン系ガスである。図6の例では、無機シリコン系ガスを有機シリコン系ガスよりも先に供給開始し、途中で有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを両方供給し、その後同時に供給停止している。
【0039】
所望の基板処理が終わると、有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスの供給を停止し、基板回転を停止し、真空紫外光の照射を停止する。不活性ガスが処理室内へ供給されるとともに処理室内の雰囲気が排気され、処理室内の雰囲気を不活性雰囲気に入れ替える。
処理室内の雰囲気を入れ替えた後、処理室301から、処理済みのウエハ200が搬出される。
【0040】
第3実施例によれば、シリコン酸化膜形成の初期段階において無機シリコン系ガスにより成膜するので、シリコン酸化膜と基板との密着性をより高くすることができ、該密着性が要求されるプロセスにおいて有効である。
【0041】
(第4実施例)
次に、第4実施例について図7を用いて説明する。図7は、第4実施例における材料ガスを導入するタイミングチャートである。材料ガスを導入するタイミング以外は、第1実施例と同様であるので説明を省略する。
第4実施例においては、基板載置部311が所定の高さまで上昇して水平回転を開始し、所定の温度になった後、図7に示すように、第1ガス供給部から有機シリコン系ガスを供給し、所定の時間経過後に、第2ガス供給部から無機シリコン系ガスを間欠的に供給する。材料ガス供給時、並行して、第3ガス供給部から不活性ガス等のキャリアガスを供給してもよい。図7において、縦軸はガス流量、横軸は時間であり、71は有機シリコン系ガス、72は無機シリコン系ガスである。図7の例では、有機シリコン系ガスを無機シリコン系ガスよりも先に供給開始し、有機シリコン系ガスの供給中に無機シリコン系ガスを間欠的に供給することにより、間欠的に有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを両方供給し、無機シリコン系ガスを供給停止した後、有機シリコン系ガスを供給停止している。
【0042】
所望の基板処理が終わると、有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスの供給を停止し、基板回転を停止し、真空紫外光の照射を停止する。不活性ガスが処理室内へ供給されるとともに処理室内の雰囲気が排気され、処理室内の雰囲気を不活性雰囲気に入れ替える。
処理室内の雰囲気を入れ替えた後、処理室301から、処理済みのウエハ200が搬出される。
【0043】
第4実施例によれば、シリコン酸化膜形成の初期段階から流動性のある有機シリコンを常に供給するため微細パターンに埋め込みも可能となり、更には無機シリコンが混合されるため、密度の高いシリコン酸化膜を形成することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、有機シリコン系ガスのみでシリコン酸化膜を形成した場合と比較して、シリコン酸化膜中のシリコン成分の構成比率が高くなり、有機成分の構成比率が抑制される。このため、例えば、本発明により形成したシリコン酸化膜を、酸素と窒素から構成される雰囲気中で1000℃の熱処理を行った際のシリコン酸化膜の収縮率は、従来の40%から20%以下に低減することが可能であり、応力によるシリコン酸化膜のクラックなどの問題を抑制することが可能となる。
【0045】
なお、上述の実施例では、基板側面からガスを供給したが、それに限るものではなく、シャワーヘッドを用いて、基板上面からガスを供給してもよい。その場合は、ランプ307から照射される真空紫外光を透過させるために、シャワーヘッドを例えば石英製とする。
【0046】
また、ガス供給孔303は、上記のように、ガス導入管324側に、複数、半リング状に並べて、材料を供給しても良いが、それに限るものではなく、基板載置部の全周囲に亘って、複数、リング状に並べるようにしても良い。また、これに伴い、供給ガス用バッファ室309は、ガス供給孔303と同様に、半リング状ではなく、ガス供給孔303と対応する位置に、基板載置部の全周囲に亘って、設ければ良い。
また、ガス排気孔304は、上記のように、基板載置部311の基板載置面を介してガス供給孔303と対向する様に、ガス排気管325側に半リング状に並べても良いが、それに限るものではなく、基板載置部の全周囲に亘ってリング状に並べても良い。また、ガス排気孔の代わりに、例えばスリットを設けて、スリットから排気するようにしても良い。
【0047】
また、処理室301へ供給する有機シリコン系ガスに、有機シリコン系ガスの分解を促進する酸化剤となる活性ガスを添加するようにしてもよい。その場合は、活性ガスを供給する活性ガス供給部を設けるようにする。酸化剤となる活性ガスは、酸素、又はオゾン、若しくは酸素又はオゾンの励起種である。活性ガス供給部は、例えば第1ガス供給部等と同様に、第1ガス供給管319a等と並列にガス導入管324に接続され、活性ガス供給管、活性ガス供給源、マスフローコントローラ、開閉バルブからを備える。このように活性ガスを添加すると、有機シリコン系ガスの炭素−炭素結合を酸化して切断するので、有機シリコン系ガスの分解を促進することができ、成膜速度が向上する。
なお、酸素又はオゾンを励起する場合は、処理室301内又は処理室301外で紫外光により励起してもよいし、処理室301外でプラズマにより励起してもよい。
【0048】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
処理室に基板を搬入する工程と、
前記処理室に有機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記処理室に無機シリコン系ガスを供給し、該無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
このようにすると、シリコン酸化膜中の有機成分の構成比率を下げることができ、後工程で熱処理を実施したときのシリコン酸化膜の収縮率を抑制することができる。
【0049】
第2の発明は、前記第1の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記基板は、該基板表面に複数の半導体素子及び該複数の半導体素子間を分離する溝が設けられた基板である半導体装置の製造方法。
このようにすると、狭い溝内へ絶縁膜材料であるシリコン酸化膜を埋め込むことが可能となる。
【0050】
第3の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記処理室に有機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程の後、前記処理室に有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程を行う半導体装置の製造方法。
このようにすると、シリコン酸化膜形成初期において流動性を与えることができ、狭い溝内等への段差被覆性を良好にすることができる。
【0051】
第4の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記処理室に無機シリコン系ガスを供給し、該無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程の後、前記処理室に有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスと無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程を行う半導体装置の製造方法。
このようにすると、シリコン酸化膜と基板との密着性をより高くすることができる。
【0052】
第5の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記処理室に有機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程中に、
前記処理室に無機シリコン系ガスを供給し、該無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程を間欠的に行う半導体装置の製造方法。
このようにすると、流動性のある有機シリコンを常に供給するため微細パターンに埋め込みも可能となり、更には無機シリコンが混合されるため、密度の高いシリコン酸化膜を形成することができる。
【0053】
第6の発明は、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に有機シリコン系ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記処理室内に無機シリコン系ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記処理室内に紫外光を照射する発光部と、
前記処理室内の雰囲気を排気するガス排気部と、
前記第1ガス供給部から供給する有機シリコン系ガスに前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成し、前記第2ガス供給部から供給する無機シリコン系ガスに前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成するよう制御する制御部と、
を備える基板処理装置。
このようにすると、シリコン酸化膜中の有機成分の構成比率を下げることができ、後工程で熱処理を実施したときのシリコン酸化膜の収縮率を抑制することができる。
【0054】
第7の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記有機シリコン系ガスが直鎖型である基板処理装置。
【0055】
第8の発明は、前記第7の発明における基板処理装置であって、
前記直鎖型有機シリコン系ガスは、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンのうち、1種又は複数種である基板処理装置。
このようにすると、TEOS等と比較して蒸気圧が高いので、基板温度が低いときに液化する危険性を低くすることができる。
【0056】
第9の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記有機シリコン系ガスは、シリコンを主鎖とする直鎖型である基板処理装置。
【0057】
第10の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記無機シリコン系ガスは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、テトラシランのうち、1種又は複数種である基板処理装置。
このようにすると、材料分子の分子量中でSiの占める比率が高いので、酸化反応時において不純物の混入を少なくすることができる。
【0058】
第11の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記発光部から照射される紫外光の波長が100nm以上である基板処理装置。
このようにすると、紫外光のエネルギーで、有機シリコン系ガス及び無機シリコンガスの材料ガスの結合を切断することが可能となる。例えば、100nmの場合、12.38/エネルギー(eV)となり、Si−O結合(8.3eVで切断)を切断することが可能となる。そのため、供給されたガスの分子結合を切断することが容易となり、より流動性を高めることができると共に、再結合した際には、より高密度で結合することが可能となる。
一方、更なる高エネルギーを有する100nm未満の波長を安定して発生させるためには複雑な構成が必要となる。結果、装置が高価になってしまうという問題がある。
そこで、有機シリコン系ガス及び無機シリコン系ガスを使用する際には、100nm以上であって、且つ高エネルギーとなる波長がより望ましい。
【0059】
第12の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記処理室内に、前記有機シリコン系ガス又は前記無機シリコン系ガスの分解を促進する酸化剤となる活性ガスを供給する活性ガス供給部を備える基板処理装置。
このようにすると、有機シリコン系ガス又は無機シリコン系ガスの分解を促進することができ、成膜速度が向上する。
【0060】
第13の発明は、前記第7の発明における基板処理装置であって、
前記酸化剤となる活性ガスは、酸素、又はオゾン、若しくは酸素又はオゾンの励起種である基板処理装置。
【0061】
第14の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記制御部は、前記処理室内に前記無機シリコン系ガスを供給せずに前記有機シリコン系ガスを供給し、前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、前記処理室内に前記無機シリコン系ガスと前記有機シリコン系ガスを両方供給し、前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、を行うように制御する基板処理装置。
【0062】
第15の発明は、前記第6の発明における基板処理装置であって、
前記制御部は、前記処理室内に前記有機シリコン系ガスを供給し前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成する工程中において、前記処理室内に前記無機シリコン系ガスと前記有機シリコン系ガスを両方供給し、前記発光部からの紫外光を照射して前記基板上にシリコン酸化膜を形成する工程を行うように制御する基板処理装置。
【符号の説明】
【0063】
200・・ウエハ、300・・基板処理装置、301・・処理室、302・・ガス流れ制御リング、303・・ガス供給孔、304・・ガス排気孔、305・・基板搬入出口、306・・チャンバ上壁、307・・ランプ、308・・光透過窓、309・・供給用バッファ、310・・排気用バッファ、311・・基板載置部、312・・チャンバ側壁、313・・チャンバ底壁、314・・基板載置部支持機構、315・・ベローズ、316a・・第1ガス供給源、316b・・第2ガス供給源、316c・・第3ガス供給源、317a・・MFC、317b・・MFC、317c・・MFC、318a・・開閉バルブ、318b・・開閉バルブ、318c・・開閉バルブ、319a・・第1ガス供給管、319b・・第2ガス供給管、319c・・第3ガス供給管、324・・ガス導入管、325・・ガス排気管、326・・APCバルブ、327・・真空ポンプ、406・・サセプタ円周端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室に基板を搬入する工程と、
前記処理室に有機シリコン系ガスを供給し、該有機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記処理室に無機シリコン系ガスを供給し、該無機シリコン系ガスに紫外光を照射してシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記基板は、該基板表面に複数の半導体素子及び該複数の半導体素子間を分離する溝が設けられた基板である半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204692(P2012−204692A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68933(P2011−68933)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】