半導体装置の製造方法
【課題】金属細線流れによる不良を防ぐことができる半導体装置の製造方法を得る。
【解決手段】IGBT1を電力用リード4上に固着し、IGBT1を制御する制御用半導体素子3を制御用リード5上に固着し、制御用リード5と制御用半導体素子3を金属細線11により接続する。IGBT1と制御用半導体素子3との間において制御用リード5上に保護部材14を固着する。これらの構成をキャビティ19内に配置する。IGBT1側からキャビティ19内に樹脂16を注入する。この際に、保護部材14がキャビティ19の天井に接するため、IGBT1側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れは保護部材14により防止される。従って、樹脂16は、IGBT1側から制御用リード5の下側に流れた後に、制御用リード5の間隙21を通って制御用リード5の下側から上側に流れて制御用半導体素子3及び金属細線11を封止する。
【解決手段】IGBT1を電力用リード4上に固着し、IGBT1を制御する制御用半導体素子3を制御用リード5上に固着し、制御用リード5と制御用半導体素子3を金属細線11により接続する。IGBT1と制御用半導体素子3との間において制御用リード5上に保護部材14を固着する。これらの構成をキャビティ19内に配置する。IGBT1側からキャビティ19内に樹脂16を注入する。この際に、保護部材14がキャビティ19の天井に接するため、IGBT1側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れは保護部材14により防止される。従って、樹脂16は、IGBT1側から制御用リード5の下側に流れた後に、制御用リード5の間隙21を通って制御用リード5の下側から上側に流れて制御用半導体素子3及び金属細線11を封止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体素子と制御用半導体素子を樹脂で封止する半導体装置の製造方法に関し、特に金属細線流れによる不良を防ぐことができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスファーモールド型の半導体装置を製造する際に、樹脂注入時の圧力と温度を用いて、封止と同時に接着性の絶縁膜によりリードフレームと放熱板を接着する(例えば、特許文献1,2参照)。リードフレーム上にはIGBT、MOSFET、ダイオードなどの電力用半導体素子や、ICなどの制御用半導体素子が固着される。
【0003】
DIP(Dual In-Line Package)タイプの半導体装置のトランスファーモールド時において、高温で軟化した樹脂を金型のキャビティ内に注入する。その際に、注入口付近では樹脂の流速が早いためせん断応力が大きく、出口付近では小さくなる。そこで、制御用半導体素子に接続された金属細線が樹脂から受けるせん断応力を極力減らすために、電力用半導体素子側から樹脂を注入し、制御用半導体素子に向かって流すことが多い。
【0004】
近年、装置全体の放熱性を高めるために、絶縁膜だけでなく樹脂に対してもフィラーの充填率を高める傾向にある。フィラー量を増やすと粘度が増加してせん断応力が増加し、金属細線の変形量が大きくなる。そこで、リードフレームの一部を折り曲げて樹脂の流速を抑えて金属細線の変形を低減することが提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−124400号公報
【特許文献2】特開2004−172239号公報
【特許文献3】特開昭63−300545号公報
【特許文献4】特開平5−291461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、樹脂が折り曲げ部の上側及び両脇から回り込むことで複雑な流れとなり、様々な方向から金属細線に応力がかかる。これにより、金属細線が他の金属細線や制御用リードに接近又は接触して不良になる可能性がある。特に、樹脂の流れに平行ではない方向にルーピングされた金属細線は変形しやすい。また、制御用半導体素子が多機能の高集積回路素子である場合、金属細線同士の間隔がファインピッチになるため、金属細線の変形に対する許容量は厳しくなる。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は金属細線流れによる不良を防ぐことができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、電力用半導体素子を電力用リード上に固着し、前記電力用半導体素子を制御する制御用半導体素子を制御用リード上に固着し、前記制御用リードと前記制御用半導体素子を金属細線により接続する工程と、前記電力用半導体素子と前記制御用半導体素子との間において前記制御用リード上に保護部材を固着する工程と、前記電力用リード、前記制御用リード、前記電力用半導体素子、前記制御用半導体素子、前記金属細線、及び前記保護部材を、上金型と下金型の間に形成されるキャビティ内に配置する工程と、前記電力用半導体素子側から前記キャビティ内に樹脂を注入する工程とを備え、前記保護部材は前記キャビティの天井に接し、前記電力用半導体素子側から前記制御用半導体素子側に向かう前記樹脂の横方向の流れは前記保護部材により防止され、前記樹脂は、前記電力用半導体素子側から前記制御用リードの下側に流れた後に、前記制御用リードの間隙を通って前記制御用リードの下側から上側に流れて前記制御用半導体素子及び前記金属細線を封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、金属細線流れによる不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す裏面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【図5】図1のI−IIに沿った断面図である。
【図6】図5の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図11】図10の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す裏面図である。図2〜図4は本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。図5は図1のI−IIに沿った断面図である。図6は図5の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。
【0013】
この半導体装置は、電力用半導体素子であるIGBT1とダイオード2を含む3相インバータ回路と、制御用半導体素子3とを内蔵したトランスファーモールド型のIPM(Intelligent Power Module)である。また、長手方向の側面に電力用リード4と制御用リード5をそれぞれ配置したDIP(Dual In-Line Package)でもある。
【0014】
IGBT1及びダイオード2が電力用リード4上にはんだ6により固着されている。IGBT1及びダイオード2を制御する制御用半導体素子3が制御用リード5上に導電性接着剤7により固着されている。IGBT1、ダイオード2、及び電力用リードは制御用リード5よりも低い位置にある。
【0015】
ダイオード2と電力用リード4が金属細線8で電気的に接続されている。ダイオード2とIGBT1が金属細線9で電気的に接続されている。IGBT1のゲート電極と制御用リード5が金属細線10で電気的に接続されている。制御用半導体素子3と制御用リード5が金属細線11により電気的に接続されている。金属細線8,9,10はAlからなり、金属細線11はAuからなる。
【0016】
電力用リード4の下面に絶縁膜12を介して放熱板13が設けられている。IGBT1及びダイオード2と制御用半導体素子3との間において制御用リード5上に保護部材14が絶縁接着剤15により固着されている。
【0017】
これらの構成が樹脂16により封止されている。ただし、電力用リード4及び制御用リード5の外部リード部分や放熱板13の裏面は樹脂16から露出している。樹脂16は、熱伝導率の高いAl2O3、SiO2などのセラミックスから成る充填剤と、電気抵抗率が高いエポキシ樹脂を代表とする有機物とから構成され、放熱性と絶縁性を合わせ持つ。
【0018】
続いて、上記の半導体装置の製造方法を説明する。図7〜図9は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0019】
まず、図7に示すように、IGBT1及びダイオード2を電力用リード4上に固着し、制御用半導体素子3を制御用リード5上に固着し、制御用リード5と制御用半導体素子3を金属細線11により接続する。電力用リード4の下面に絶縁膜12を介して放熱板13を設ける。IGBT1及びダイオード2と制御用半導体素子3との間において制御用リード5上に保護部材14を固着する。これらの構成を、熱した上金型17と下金型18の間に形成されるキャビティ19内に配置する。上金型17と下金型18を閉じた際に、保護部材14はキャビティ19の天井に接する。
【0020】
次に、図8に示すように、IGBT1及びダイオード2側の注入口20からキャビティ19内に、高温で軟化した樹脂16を注入する。この際に、硬く、樹脂16の流れによって塑性変形しにくい保護部材14がキャビティ19の天井に接するため、IGBT1及びダイオード2側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れは保護部材14により防止される。そして、樹脂16は、IGBT1及びダイオード2側から制御用リード5の下側に流れ、制御用リード5の下側領域が充填される。
【0021】
次に、図9に示すように、樹脂16は、制御用リード5の間隙21を通って制御用リード5の下側から上側に流れて制御用半導体素子3及び金属細線11を封止する。その後に、リードフレームの加工等を行うことで本実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【0022】
本実施の形態の効果を比較例と比較して説明する。図10は比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図11は図10の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。IGBT1及びダイオード2側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れにより、金属細線11が他の金属細線や制御用リード5に接近又は接触して不良になる可能性がある。
【0023】
制御用半導体素子の四辺から金属細線11が配線されており、樹脂16の流れに平行ではない方向にルーピングされた金属細線11もある。このような金属細線11は樹脂16からのせん断応力を受けて変形しやすい。
【0024】
一方、本実施の形態では、保護部材14がキャビティ19の天井に接するため、IGBT1及びダイオード2側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れは保護部材14により防止される。これにより、金属細線11の横方向への変形を防ぐことができる。
【0025】
また、樹脂16は、間隙21を通って制御用リード5の下側から上側に流れる。このため、金属細線11のループ高さ方向に樹脂16が流れ、せん断能力もループ高さ方向に働く。従って、全ての金属細線11が同方向に流れ、金属細線11同士がショートする心配がない。また、金属細線11は制御用リード5から遠ざかる方向に流れるため制御用リード5に接触することもない。これにより、金属細線流れによる不良を防ぐことができる。
【0026】
また、樹脂16の流れが保護部材14でせき止められることにより、樹脂封止中に電力用リード4から放熱板13に圧力がかかる。これにより、電力用リード4と放熱板13が絶縁膜12により良好に接着させるため、安定した絶縁耐圧を保つことができる。
【0027】
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14は、キャビティ19の天井に対して斜め向きに設けられている。これによりトランスファーモールド時に上金型17を閉じた際に保護部材14が弾性域の変形で上金型17に追従して、保護部材14にかかる応力を保護部材14が一部吸収するため、上金型17の磨耗を減らすことができる。
【0028】
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14は、制御用リード5との固着部分から先端に向かって細くなる。これにより、保護部材14が更に応力を緩和するため、上金型17の磨耗を更に減らすことができる。
【0029】
実施の形態4.
図14は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14に切欠き22が設けられている。これにより、保護部材14が更に応力を緩和するため、上金型17の磨耗を更に減らすことができる。
【0030】
実施の形態5.
図15は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14はスプリング状である。これにより、保護部材14が更に応力を緩和するため、上金型17の磨耗を更に減らすことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 IGBT(電力用半導体素子)、2 ダイオード(電力用半導体素子)
3 制御用半導体素子、4 電力用リード、5 制御用リード、11 金属細線
12 絶縁膜、13 放熱板、14 保護部材、16 樹脂、17 上金型
18 下金型、19 キャビティ、21 間隙、22 切欠き
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体素子と制御用半導体素子を樹脂で封止する半導体装置の製造方法に関し、特に金属細線流れによる不良を防ぐことができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスファーモールド型の半導体装置を製造する際に、樹脂注入時の圧力と温度を用いて、封止と同時に接着性の絶縁膜によりリードフレームと放熱板を接着する(例えば、特許文献1,2参照)。リードフレーム上にはIGBT、MOSFET、ダイオードなどの電力用半導体素子や、ICなどの制御用半導体素子が固着される。
【0003】
DIP(Dual In-Line Package)タイプの半導体装置のトランスファーモールド時において、高温で軟化した樹脂を金型のキャビティ内に注入する。その際に、注入口付近では樹脂の流速が早いためせん断応力が大きく、出口付近では小さくなる。そこで、制御用半導体素子に接続された金属細線が樹脂から受けるせん断応力を極力減らすために、電力用半導体素子側から樹脂を注入し、制御用半導体素子に向かって流すことが多い。
【0004】
近年、装置全体の放熱性を高めるために、絶縁膜だけでなく樹脂に対してもフィラーの充填率を高める傾向にある。フィラー量を増やすと粘度が増加してせん断応力が増加し、金属細線の変形量が大きくなる。そこで、リードフレームの一部を折り曲げて樹脂の流速を抑えて金属細線の変形を低減することが提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−124400号公報
【特許文献2】特開2004−172239号公報
【特許文献3】特開昭63−300545号公報
【特許文献4】特開平5−291461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、樹脂が折り曲げ部の上側及び両脇から回り込むことで複雑な流れとなり、様々な方向から金属細線に応力がかかる。これにより、金属細線が他の金属細線や制御用リードに接近又は接触して不良になる可能性がある。特に、樹脂の流れに平行ではない方向にルーピングされた金属細線は変形しやすい。また、制御用半導体素子が多機能の高集積回路素子である場合、金属細線同士の間隔がファインピッチになるため、金属細線の変形に対する許容量は厳しくなる。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は金属細線流れによる不良を防ぐことができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、電力用半導体素子を電力用リード上に固着し、前記電力用半導体素子を制御する制御用半導体素子を制御用リード上に固着し、前記制御用リードと前記制御用半導体素子を金属細線により接続する工程と、前記電力用半導体素子と前記制御用半導体素子との間において前記制御用リード上に保護部材を固着する工程と、前記電力用リード、前記制御用リード、前記電力用半導体素子、前記制御用半導体素子、前記金属細線、及び前記保護部材を、上金型と下金型の間に形成されるキャビティ内に配置する工程と、前記電力用半導体素子側から前記キャビティ内に樹脂を注入する工程とを備え、前記保護部材は前記キャビティの天井に接し、前記電力用半導体素子側から前記制御用半導体素子側に向かう前記樹脂の横方向の流れは前記保護部材により防止され、前記樹脂は、前記電力用半導体素子側から前記制御用リードの下側に流れた後に、前記制御用リードの間隙を通って前記制御用リードの下側から上側に流れて前記制御用半導体素子及び前記金属細線を封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、金属細線流れによる不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す裏面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【図5】図1のI−IIに沿った断面図である。
【図6】図5の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図11】図10の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す裏面図である。図2〜図4は本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。図5は図1のI−IIに沿った断面図である。図6は図5の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。
【0013】
この半導体装置は、電力用半導体素子であるIGBT1とダイオード2を含む3相インバータ回路と、制御用半導体素子3とを内蔵したトランスファーモールド型のIPM(Intelligent Power Module)である。また、長手方向の側面に電力用リード4と制御用リード5をそれぞれ配置したDIP(Dual In-Line Package)でもある。
【0014】
IGBT1及びダイオード2が電力用リード4上にはんだ6により固着されている。IGBT1及びダイオード2を制御する制御用半導体素子3が制御用リード5上に導電性接着剤7により固着されている。IGBT1、ダイオード2、及び電力用リードは制御用リード5よりも低い位置にある。
【0015】
ダイオード2と電力用リード4が金属細線8で電気的に接続されている。ダイオード2とIGBT1が金属細線9で電気的に接続されている。IGBT1のゲート電極と制御用リード5が金属細線10で電気的に接続されている。制御用半導体素子3と制御用リード5が金属細線11により電気的に接続されている。金属細線8,9,10はAlからなり、金属細線11はAuからなる。
【0016】
電力用リード4の下面に絶縁膜12を介して放熱板13が設けられている。IGBT1及びダイオード2と制御用半導体素子3との間において制御用リード5上に保護部材14が絶縁接着剤15により固着されている。
【0017】
これらの構成が樹脂16により封止されている。ただし、電力用リード4及び制御用リード5の外部リード部分や放熱板13の裏面は樹脂16から露出している。樹脂16は、熱伝導率の高いAl2O3、SiO2などのセラミックスから成る充填剤と、電気抵抗率が高いエポキシ樹脂を代表とする有機物とから構成され、放熱性と絶縁性を合わせ持つ。
【0018】
続いて、上記の半導体装置の製造方法を説明する。図7〜図9は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0019】
まず、図7に示すように、IGBT1及びダイオード2を電力用リード4上に固着し、制御用半導体素子3を制御用リード5上に固着し、制御用リード5と制御用半導体素子3を金属細線11により接続する。電力用リード4の下面に絶縁膜12を介して放熱板13を設ける。IGBT1及びダイオード2と制御用半導体素子3との間において制御用リード5上に保護部材14を固着する。これらの構成を、熱した上金型17と下金型18の間に形成されるキャビティ19内に配置する。上金型17と下金型18を閉じた際に、保護部材14はキャビティ19の天井に接する。
【0020】
次に、図8に示すように、IGBT1及びダイオード2側の注入口20からキャビティ19内に、高温で軟化した樹脂16を注入する。この際に、硬く、樹脂16の流れによって塑性変形しにくい保護部材14がキャビティ19の天井に接するため、IGBT1及びダイオード2側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れは保護部材14により防止される。そして、樹脂16は、IGBT1及びダイオード2側から制御用リード5の下側に流れ、制御用リード5の下側領域が充填される。
【0021】
次に、図9に示すように、樹脂16は、制御用リード5の間隙21を通って制御用リード5の下側から上側に流れて制御用半導体素子3及び金属細線11を封止する。その後に、リードフレームの加工等を行うことで本実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【0022】
本実施の形態の効果を比較例と比較して説明する。図10は比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図11は図10の制御用半導体素子の固着部分を拡大した上面図である。IGBT1及びダイオード2側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れにより、金属細線11が他の金属細線や制御用リード5に接近又は接触して不良になる可能性がある。
【0023】
制御用半導体素子の四辺から金属細線11が配線されており、樹脂16の流れに平行ではない方向にルーピングされた金属細線11もある。このような金属細線11は樹脂16からのせん断応力を受けて変形しやすい。
【0024】
一方、本実施の形態では、保護部材14がキャビティ19の天井に接するため、IGBT1及びダイオード2側から制御用半導体素子3側に向かう樹脂16の横方向の流れは保護部材14により防止される。これにより、金属細線11の横方向への変形を防ぐことができる。
【0025】
また、樹脂16は、間隙21を通って制御用リード5の下側から上側に流れる。このため、金属細線11のループ高さ方向に樹脂16が流れ、せん断能力もループ高さ方向に働く。従って、全ての金属細線11が同方向に流れ、金属細線11同士がショートする心配がない。また、金属細線11は制御用リード5から遠ざかる方向に流れるため制御用リード5に接触することもない。これにより、金属細線流れによる不良を防ぐことができる。
【0026】
また、樹脂16の流れが保護部材14でせき止められることにより、樹脂封止中に電力用リード4から放熱板13に圧力がかかる。これにより、電力用リード4と放熱板13が絶縁膜12により良好に接着させるため、安定した絶縁耐圧を保つことができる。
【0027】
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14は、キャビティ19の天井に対して斜め向きに設けられている。これによりトランスファーモールド時に上金型17を閉じた際に保護部材14が弾性域の変形で上金型17に追従して、保護部材14にかかる応力を保護部材14が一部吸収するため、上金型17の磨耗を減らすことができる。
【0028】
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14は、制御用リード5との固着部分から先端に向かって細くなる。これにより、保護部材14が更に応力を緩和するため、上金型17の磨耗を更に減らすことができる。
【0029】
実施の形態4.
図14は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14に切欠き22が設けられている。これにより、保護部材14が更に応力を緩和するため、上金型17の磨耗を更に減らすことができる。
【0030】
実施の形態5.
図15は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。保護部材14はスプリング状である。これにより、保護部材14が更に応力を緩和するため、上金型17の磨耗を更に減らすことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 IGBT(電力用半導体素子)、2 ダイオード(電力用半導体素子)
3 制御用半導体素子、4 電力用リード、5 制御用リード、11 金属細線
12 絶縁膜、13 放熱板、14 保護部材、16 樹脂、17 上金型
18 下金型、19 キャビティ、21 間隙、22 切欠き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用半導体素子を電力用リード上に固着し、前記電力用半導体素子を制御する制御用半導体素子を制御用リード上に固着し、前記制御用リードと前記制御用半導体素子を金属細線により接続する工程と、
前記電力用半導体素子と前記制御用半導体素子との間において前記制御用リード上に保護部材を固着する工程と、
前記電力用リード、前記制御用リード、前記電力用半導体素子、前記制御用半導体素子、前記金属細線、及び前記保護部材を、上金型と下金型の間に形成されるキャビティ内に配置する工程と、
前記電力用半導体素子側から前記キャビティ内に樹脂を注入する工程とを備え、
前記保護部材は前記キャビティの天井に接し、
前記電力用半導体素子側から前記制御用半導体素子側に向かう前記樹脂の横方向の流れは前記保護部材により防止され、
前記樹脂は、前記電力用半導体素子側から前記制御用リードの下側に流れた後に、前記制御用リードの間隙を通って前記制御用リードの下側から上側に流れて前記制御用半導体素子及び前記金属細線を封止することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂を注入する前に、前記電力用リードの下面に絶縁膜を介して放熱板を設ける工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護部材は、前記キャビティの前記天井に対して斜め向きに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護部材は、前記制御用リードとの固着部分から先端に向かって細くなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記保護部材に切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記保護部材はスプリング状であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
電力用半導体素子を電力用リード上に固着し、前記電力用半導体素子を制御する制御用半導体素子を制御用リード上に固着し、前記制御用リードと前記制御用半導体素子を金属細線により接続する工程と、
前記電力用半導体素子と前記制御用半導体素子との間において前記制御用リード上に保護部材を固着する工程と、
前記電力用リード、前記制御用リード、前記電力用半導体素子、前記制御用半導体素子、前記金属細線、及び前記保護部材を、上金型と下金型の間に形成されるキャビティ内に配置する工程と、
前記電力用半導体素子側から前記キャビティ内に樹脂を注入する工程とを備え、
前記保護部材は前記キャビティの天井に接し、
前記電力用半導体素子側から前記制御用半導体素子側に向かう前記樹脂の横方向の流れは前記保護部材により防止され、
前記樹脂は、前記電力用半導体素子側から前記制御用リードの下側に流れた後に、前記制御用リードの間隙を通って前記制御用リードの下側から上側に流れて前記制御用半導体素子及び前記金属細線を封止することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂を注入する前に、前記電力用リードの下面に絶縁膜を介して放熱板を設ける工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護部材は、前記キャビティの前記天井に対して斜め向きに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護部材は、前記制御用リードとの固着部分から先端に向かって細くなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記保護部材に切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記保護部材はスプリング状であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−74035(P2013−74035A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210974(P2011−210974)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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