説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】素子を過大電圧から保護するツェナーダイオードによって、余分な面積を必要としない半導体装置を実現する。
【解決手段】p型基層102と埋め込み絶縁層104と活性層106が積層されているSOI基板100の活性層106の一部に素子領域122が形成されており、素子領域を一巡する素子領域分離用絶縁壁124が形成されている。素子領域分離用絶縁壁124は、活性層106の表面から埋め込み絶縁層104を貫通してp型基層102に至っている。素子領域分離用絶縁壁124の壁厚の内側に導体132が形成されており、導体132はn型領域130とp型基層102で形成されるツェナーダイオード131を介して接地される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置とその製造方法に関する。特に、SOI基板を利用する半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon On Insulator)基板を利用して半導体装置を形成する技術が普及している。通常のSOI基板は、p型基層と埋め込み絶縁層と活性層が積層された構造を備えており、その活性層内に半導体構造を形成する。
同一半導体基板内に、複数個の回路を形成する技術も普及している。この技術では、一つの回路の動作が、隣接する回路の動作に影響しないように、単位となる回路を一巡する絶縁壁を設けることによって、単位となる回路と回路の間を電気的に絶縁する。本明細書では、単位となる回路が形成されている領域を素子領域といい、素子領域を周囲から絶縁する絶縁壁を素子領域分離用絶縁壁という。
SOIの活性層の一部に素子領域を形成する場合は、活性層の表面から埋め込み絶縁層に達するとともに素子領域を一巡する閉ループに沿って伸びている素子領域分離用絶縁壁を形成する。
【0003】
素子領域には、トランジスタ等の素子が作り込まれる。その素子に過大な電圧が印加されると、例えばゲート絶縁膜が破壊されること等によって、素子が破壊されることがある。あるいは、素子領域に過大な電圧が印加されると、活性層と基層を絶縁する埋め込み絶縁層が破壊されることがある。静電気現象によって、トランジスタ等の素子や素子領域に過大な電圧が印加される可能性がある。そこで、トランジスタ等を過大電圧から保護する回路が必要とされる。ツェナーダイオードを利用して保護回路を形成する技術が知られている。
【0004】
ツェナーダイオードを利用する保護回路が特許文献1に開示されている。特許文献1の半導体装置は、図8に示すように、p型基層264と埋め込み絶縁層262と活性層260が積層されているSOI基板270を利用している。なお図示の210は表面の絶縁層である。この半導体装置では、活性層260内にMOS型のトランジスタ220を形成している。すなわち、図示の222はn型のソース領域であり、244はp型のチャネル領域であり、226はn型のドレイン領域であり、234はゲート絶縁膜であり、224は内部ゲート電極である。
図示の212,214,216は、表面絶縁層210を貫通する導体であり、212はソース領域222とソース電極202を接続しており、214は内部ゲート電極224と外部ゲート電極204を接続しており、216はドレイン領域226とドレイン電極206を接続している。
図示の252、254は、素子領域分離用の絶縁壁であり、活性層260の表面から埋め込み絶縁層262に達するとともに素子領域を一巡する閉ループに沿って伸びている。
【0005】
ソース領域222とソース電極202を接続している導体212は、埋め込み絶縁層262を貫通してp型基層264に達している。導体212が接する部分では、p型基層264が局所的にn型化されている。図示の266は、n型領域である。n型領域266とp型基層264によって、ダイオード268が形成されている。ソース電極202は、ダイオード268を介して、p型基層264に接続されており、p型基層264は端子272で接地されている。
n型領域266とp型基層264によって形成されるダイオード268の降伏電圧は、MOS型のトランジスタ220の動作電圧よりも高く、ソース電極202に正常な動作電圧が印加されている限り、ダイオード268は導通せず、MOS型トランジスタ220は正常に動作する。ソース電極202に過大な電圧が印加されると、ダイオード268が降伏し、それ以上の電圧がMOS型トランジスタ220に印加されることはない。ダイオード268の降伏電圧は、MOS型トランジスタ220が破壊する電圧、あるいは埋め込み絶縁層262が破壊する電圧よりも低く設定されている。ダイオード268は、所定の電圧が印加されると降伏するツェナーダイオードであり、MOS型トランジスタ220を過大な電圧から保護する。
【0006】
【特許文献1】特開2001−308330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の半導体装置では、素子領域分離用絶縁壁252,254で取り囲まれている素子領域内に、保護用ツェナーダイオード268を形成している。この場合、素子領域の面積が増大することが避けられない。特許文献1の技術によれば、素子領域内に形成されているトランジスタ220等を過大電圧から保護することができるが、半導体装置が大型化してしまう問題を作り出す。
本発明は、上記の問題を解決するものであり、半導体装置の小型化に反しない態様で、素子領域あるいは素子領域に形成されている素子を過大な電圧から保護することができる半導体装置を提供する。また、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置は、p型基層と埋め込み絶縁層と活性層が積層されているSOI基板の活性層の一部に素子領域が形成されている半導体装置に関する。本発明の半導体装置は、活性層の表面から埋め込み絶縁層に達するとともに素子領域を一巡する閉ループに沿って伸びている素子領域分離用絶縁壁と、ツェナーダイオードを備えている。そのツェナーダイオードは、素子領域分離用絶縁壁の壁厚内に含まれるとともに活性層の表面から埋め込み絶縁層を貫通してp型基層に達する領域に形成されており、活性層の表面に臨む導体がn型領域を介してp型基層に接している。
【0009】
本発明の半導体装置の場合、素子領域あるいは素子領域内に形成されている素子に過大な電圧が印加されるような場合は、ツェナーダイオードが降伏するために、それ以上に過大な電圧が素子領域内に形成されている素子あるいは埋め込み絶縁層に印加されることがない。ツェナーダイオードが保護機能を実現する。しかも、そのツェナーダイオードが、元々必要な素子分離用絶縁壁の壁厚内に形成されるために、ツェナーダイオードのための専用スペースを確保する必要がなく、半導体装置の小型化に背くことがない。
【0010】
n型領域は、p型基層と接する領域に形成してもよいし、p型基層内に形成してもよい。後者の場合、ツェナーダイオードの製造工程を簡易化しやすい。
【0011】
ツェナーダイオードに接続する導体は、素子領域を一巡していることが好ましい。この場合、前記導体は、素子領域分離用絶縁壁の壁厚内を伸びて素子領域を一巡する。
この場合、素子領域内の各所に過大電圧から保護する素子が存在する場合に、その素子と導体を接続しやすい。また、素子領域を一巡する導体がシールド効果を果たすことになり、ノイズの伝播を禁止しやすい。
【0012】
通常の半導体装置は、活性層の表面を覆う表面絶縁層を備えていることが多い。この場合、表面絶縁層を貫通して導体と電気的に接触する導体コンタクトを確保することが好ましい。
この場合、過大電圧から保護する素子領域内に形成されている素子あるいは埋め込み絶縁層とツェナーダイオードを表面絶縁層(層間絶縁膜)の表面で接続することができる。配線作業が容易化される。
【0013】
導体は、金属又はポリシリコンで形成することができる。
金属を用いて導体を形成する場合、抵抗率が小さい導体を得ることができる。金属に代えて、ポリシリコンで導体を形成することもできる。ポリシリコンを利用する場合、n型のポリシリコンを利用すると、そのn型のポリシリコンからn型不純物をp型基層に拡散することができ、n型領域を形成しやすい。n型領域の形成工程を簡易化しやすい。
【0014】
また本発明は、新規で有用な半導体装置の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、p型基層と埋め込み絶縁層と活性層が積層されているSOI基板を用い、その活性層の一部に素子領域が形成されている半導体装置を製造する。
本発明の製造方法では、活性層の表面から埋め込み絶縁層に達するとともに素子領域を一巡する閉ループに沿って伸びており、少なくとも一部では埋め込み絶縁層を貫通してp型基層に達するトレンチを形成する工程と、そのトレンチを画定する両側壁の各々に素子領域分離用絶縁壁を成長させる工程と、トレンチの両側壁に成長した一対の素子領域分離用絶縁壁の間を活性層の表面からp型基層まで伸びる範囲に、p型基層に接するn型領域と、そのn型領域に接するとともに活性層の表面に至る導体を形成する工程を備えている。
【0015】
本発明の製造方法によると、トレンチの両側壁に一対の素子領域分離用絶縁壁を形成した段階で、一対の素子領域分離用絶縁壁の間に間隔(空所)が形成される。この空所を利用して、ツェナーダイオードを形成することができる。素子領域内に形成されている素子あるいは埋め込み絶縁層を過大電圧から保護するツェナーダイオードを、素子領域分離用絶縁壁の壁厚内に形成することができる。
【0016】
n型領域を形成ために、トレンチの両サイドから伸びる一対の素子領域分離用絶縁壁の間から露出するp型基層にn型不純物を注入してから活性化処理することによってn型領域を形成してもよい。あるいは、トレンチの両サイドから伸びる一対の素子領域分離用絶縁壁の間にn型不純物を含む導体を充填した後に熱処理してn型領域を形成してもよい。
いずれの方法によっても、比較的簡単に、保護用ツェナーダイオードを形成することができる。
【0017】
トレンチの壁に素子領域分離用絶縁壁を形成すると、トレンチの底面にまで絶縁壁が形成されることがある。この場合は、素子領域分離用絶縁壁の形成工程後に、その工程でトレンチの底面に形成された絶縁層を除去する工程を実施する。p型基層あるいはn型領域をトレンチの底面に露出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
最初に、以下で説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1) 少なくとも一部において、埋め込み絶縁層を貫通してp基層に至るトレンチを形成する。
(特徴1) トレンチの側壁に絶縁壁を形成した後にトレンチの底面をエッチングし、少なくとも一部ては埋め込み絶縁層を除去してp基層を露出させる。
【実施例】
【0019】
以下に本発明を適用した実施例を説明する。各実施例で共通する部分、又は機能が均等な部分に対しては、同じ番号を付して重複する説明を省略する。また、以下の図示及び説明は、半導体装置内の一つ素子について行うが、半導体装置内の全ての素子に対して共通的に適用される。
【0020】
(第1実施例)
最初に第1実施例の半導体装置の製造方法を説明する。説明の便利のために、その製造工程を第1段階、第2段階、第3段階に大別する。以下、図面を参照しながら、各段階について説明する。
【0021】
(第1段階)
図1は、第1実施例の半導体装置を製造する第1段階を示す模式図であり、図1(a)乃至図1(d)は、第1段階の各工程を示す断面図である。図1(a)に示す工程では、p型基層102を有するSOI基層100を用意する。図1(a)に示すように、SOI基板100は、p型基層102と、p型基層102上に積層されている埋め込み絶縁層104と、埋め込み絶縁層104上に積層されている活性層106を備えている。このようなSOI基板100は、例えば公知のSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法で形成される。
【0022】
図1(b)に示す工程では、活性層106の一部に形成されている(あるいはその後に形成される)素子領域122を一巡するトレンチ120を形成する。トレンチ120は、素子領域122を一巡する閉ループを描く。トレンチ120は、図1(b)に示すように、活性層106の表面から埋め込み絶縁層104にまで達しており、隣接する活性層106間を絶縁する。閉ループ状のトレンチ120で取り囲まれている素子領域122は、島状領域となり、その形状とサイズは、島状領域内に形成する素子によって決められる。トレンチ120は、少なくともその一部では、埋め込み絶縁層104を貫通してp型基層102に達する。本実施例では、活性層106の表面から活性層106をドライエッチングすることによって、トレンチ120を形成する。トレンチの形成方法は、特別な方法に限定されるものではない。
【0023】
次に、図1(c)に示す工程ではCVD方法を実施し、トレンチ120の外側の側壁と内側の側壁の両者に素子領域分離用絶縁壁124を形成する。この段階では、トレンチ120の外側の側壁に成長する素子領域分離用絶縁壁124と、トレンチ120の内側の側壁に成長する素子領域分離用絶縁壁124の間に、間隔(あるいは空間)128が残されている状態でCVD方法を停止する。CVD方法に代えて、熱酸化方法を実施し、トレンチ120の外側の側壁と内側の両者に酸化膜を形成してもよい。あるいは窒化物の絶縁壁を形成してもよい。
【0024】
図1(c)に示すように、素子領域分離用絶縁壁124を形成する際に、トレンチ120の底面にも絶縁膜126が形成され、p型基層102が被覆されしまうことが多い。この場合、ドライエッチングすると、トレンチ120の側壁に形成された素子領域分離用絶縁壁124は残り、トレンチ120の底面に形成された絶縁膜126は除去することができる。
トレンチ底面をドライエッチングする場合、図1(b)の段階で作成するトレンチ120の底面が、p型基層102に達せず、埋め込み絶縁層104の深さに留まっていてもよい。トレンチ底面をドライエッチングする段階で、残った埋め込み絶縁層104をドライエッチングしてp型基層102を露出させることができるからである。
p型基層102に達するトレンチ120を形成し、その後にトレンチ底面を覆うマスクを施し、その後に素子領域分離用絶縁壁124を形成し、その後にマスクを除去してp型基層102をトレンチ120の底面に露出させてもよい。
【0025】
p型基層102は、トレンチ120の底面の一部で露出しておればよく、底面の全部で露出する必要はない。後記するツェナーダイオードは、p型基層102に接しておればよく、トレンチ120の底面の全部でp型基層102に接する必要はない。

【0026】
図2(a)は、図1(c)の段階の半導体装置の平面図である。図2(a)に示すように、素子領域122を一巡するトレンチ120の外側の側面と内側の側面に絶縁壁124,124が形成されており、両絶縁壁124の間隔128においてp型基層102が露出している。
活性層106に形成されるトレンチ120の数は一つに限られない。複数の素子領域122が存在する場合には、素子領域毎に一巡するトレンチ120が形成される。
【0027】
図2(a)の場合、一対の絶縁壁124、124の間に確保されている間隔128(ここに、導体が充填される)は、素子領域122を一巡するように形成されているが、導体充填用空間128は、一対の絶縁壁124、124の間に確保されていればよく、素子領域122を一巡する必要はない。
例えば図2(b)に示すように、素子領域122を一巡するトレンチ120の幅を局所的に変え、トレンチ120の幅が狭い領域では一対の絶縁壁124、124によってトレンチ120が充填されるまで絶縁壁の形成工程を継続するとともに、トレンチ120の幅が広い領域では一対の絶縁壁124、124の間に導体充填用空間128が残されている状態で絶縁壁の形成工程を停止することができる。
【0028】
(第2段階)
次に、図面を参照しながら第1実施例の半導体装置を製造する第2段階を説明する。図3(a)と図3(b)は、第2段階の各工程を示す断面図である。図3(a)に示す工程では、トレンチ120の底面において露出しているp型基層102に、n型不純物(例えばリン)をイオン注入する。n型不純物は、リンに限定されるものではなく、他のn型不純物であってもよい。n型不純物の注入エネルギーをコントロールすることによって、n型不純物をp型基層102の表面から所定の深さまでの範囲に注入することができる。
【0029】
n型不純物を打ち込んだ後に、熱処理することによって、図3(a)に示すように、p型基層102の表面の一部に、n型領域130を形成することができる。n型領域130の不純物濃度は、注入するn型不純物の量を調整することによって自在に調整することができる。ここで、形成されるn型領域130の不純物濃度については、後に詳細に説明する。熱処理には、例えばRTA(Rapid thermal Anneal)法が適用されるが、特に限定されるものでははい。このようにして形成されるn型領域130とp型基層102が、ツェナーダイオードに形成する。このツェナーダイオードの機能について、後に詳細に説明する。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、導体形成空間128にアルミなどの導体132を埋め込む。導体132は、一端がn型領域130に密着しており、他の一端が活性層106の表面に臨んで露出している。導体132は、延伸性が良く、抵抗率が小さいものが望ましく、アルミが好ましい。また、複数種類の金属を積層してもよい。導体132は、ツェナーダイオードのカソード電極として働く。
【0031】
上記の製造方法によって、SOI基板100の活性層106の一部に素子領域122が形成されており、活性層106の表面から埋め込み絶縁層104に達するとともに素子領域122を一巡する閉ループに沿って伸びている素子領域分離用絶縁壁124と、ツェナーダイオード131が形成されている半導体装置が製造される。ツェナーダイオード131は、素子領域分離用絶縁壁124の壁厚内に含まれるとともに活性層106の表面から埋め込み絶縁層104を貫通してp型基層102に達する領域に形成されており、活性層106の表面に臨む導体132がn型領域130を介してp型基層102に接している。
【0032】
(第2段階の第2実施例)
図4(a)と図4(b)は、第2段階の第2実施例を示す断面図である。具体的には、図4(a)に示す工程で、一対の素子領域分離用絶縁壁124,124の間に残されている導体充填用空間128に、n型不純物を高濃度に含むポリシリコン132を充填する。ここで、n型のポリシリコン132は導体として働くことができる。次に、図4(b)に示す工程において、半導体装置を熱処理することによって、n型ポリシリコン132からp型基層102にn型不純物を熱拡散し、n型領域130を形成する。このようにしても、ツェナーダイオード131を形成することができる。この場合に、n型不純物をイオン注入する工程を省略することができ、製造工程を更に簡易化することができる。
【0033】
(第2段階の第3実施例)
n型領域130を、p型基層102に接する領域に形成してもよい。図5(a)と図5(b)は、第2段階の第3実施例を示す断面図である。具体的に、図5(a)に示す工程では、トレンチ120の底面で露出しているp型基層102の表面に、n型領域130をエピタキシャル成長させる。次に、図5(b)に示す工程で、n型領域130と密接するように導体132を充填する。このようにしても、ツェナーダイオード131を形成することができる。
【0034】
(第3段階)
上記の工程に先立って、各素子領域122内に素子を形成しておいてもよい。その逆に、先に素子領域分離用絶縁壁とツェナーダイオード131を形成し、その後に素子領域122内に素子を形成してもよい。素子領域122内に素子を形成するためには、既知の種々の技術を利用することができる。
【0035】
SOI基板100に対する処理が完了すると、図6に示すように、活性層106の表面に絶縁膜140(層間絶縁膜)を形成する。次に、必要部位に貫通孔を空け、素子に対するコンタクト142と、ツェナーダイオード131に対する導体コンタクト144を形成する。導体コンタクト144と素子コンタクト142は、例えばAlで形成することができる。過大電圧から保護する必要がある素子に接続されている素子コンタクト142を、層間絶縁膜140の表面で導体コンタクト144に接続する。
【0036】
次に、図6に示すように、p型基層102の底面を例えばAl膜を覆うことによって、裏面電極146を形成する。裏面電極146は接地用であり、ツェナーダイオード131が降伏したときに流れる電流をアースする。
【0037】
以下、前記の製造方法で得られた半導体装置について説明する。図7は、素子領域122に素子180(例えばトランジスタ)が形成されているとともに、保護用ツェナーダイオード182が形成されている半導体装置の等価回路を示す模式図である。図において、ツェナーダイオード182は、n型領域130とp型基層102で形成される構造に相当し、配線186は導体132に相当し、接触箇所184は導体コンタクト144に相当し、接触箇所172、174、176は素子コンタクト142に相当し、配線178は裏面電極146と裏面電極146を接地する接地配線に相当する。
ツェナーダイオード182の降伏電圧は、素子領域122に形成されている素子180の動作電圧より高く、素子180の耐圧よりも低く設定されている。具体的に、n型領域130を形成する工程において、n型領域130に注入するn型不純物の種類と濃度をコントロールすることによって、ツェナーダイオード131の降伏電圧が所望の電圧に調整されている。
【0038】
素子180が動作する場合、素子コンタクト172に動作電圧が印加される。この場合、ツェナーダイオード182にも動作電圧が印加されるが、その動作電圧はツェナーダイオード182の降伏電圧より小さいために、動作電圧がそのまま素子180に印加される。素子180が正常に動作するときは、ツェナーダイオード182が素子の動作に影響を与えることがない。
素子コンタクト172に過大な電圧が印加されることがある。この場合は、ツェナーダイオード180が降伏するために、素子コンタクト172に印加される電圧がツェナーダイオード180の降伏電圧を超えることがない。素子180に過大電圧が印加して素子180が破壊されることが防止される。
【0039】
SOI構造の半導体装置は、活性層に形成されている素子領域が絶縁膜によって包囲されているために、素子に生じる熱が埋め込み絶縁層の下に存在する基層102に伝熱しづらい。本発明の場合、導体132が埋め込み絶縁層104を貫通して基層102に達しているために、素子に生じる熱は導体132を介して基層102に効率的に伝熱される。
【0040】
一つの素子領域に少なくとも一つのツェナーダイオード131が形成されていればよく、2以上のツェナーダイオード131が形成されていてもよい。接続することができない複数個の素子コンタクト142が存在する場合、各コンタクト毎にツェナーダイオードを形成すればよい。
【0041】
上に述べたように、本発明の半導体装置は、素子領域内に形成する素子と並列するツェナーダイオードを備えている。そのツェナーダイオードによって、素子に過大な電圧が印加されることを阻止し、素子を保護する。しかも、そのツェナーダイオードは、元々必要とされる素子領域分離用絶縁壁の壁厚の範囲に形成されるために、ツェナーダイオードのための専用スペースを取る必要がなく、半導体装置の小型化に背くことがない。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例の半導体装置を製造する第1段階を示す断面図である。
【図2】実施例の半導体装置を製造する第1段階を示す平面図である。
【図3】実施例の半導体装置を製造する第2段階を示す断面図である。
【図4】半導体装置を製造する第2段階の第2実施例を示す断面図である。
【図5】半導体装置を製造する第2段階の第3実施例を示す断面図である。
【図6】実施例の半導体装置を製造する第3段階を示す断面図である。
【図7】実施例の半導体装置の等価回路を示す模式図である。
【図8】従来の半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
100:SOI基板
102:p型基層
104:埋め込み絶縁層
106:活性層
120:トレンチ
122:素子領域
124:素子領域分離用絶縁壁
126:絶縁膜
128:導体充填用空間
130:n型領域
132:導体
140:層間絶縁膜
142:素子コンタクト
144:導体コンタクト
146:裏面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型基層と埋め込み絶縁層と活性層が積層されているSOI基板の活性層の一部に素子領域が形成されている半導体装置であり、
活性層の表面から埋め込み絶縁層に達するとともに素子領域を一巡する閉ループに沿って伸びている素子領域分離用絶縁壁と、
その素子領域分離用絶縁壁の壁厚内に含まれるとともに活性層の表面から埋め込み絶縁層を貫通してp型基層に達する領域に形成されており、活性層の表面に臨む導体がn型領域を介してp型基層に接しているツェナーダイオード、
を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記n型領域が、前記p型基層内に形成されていることを特徴とする請求項1の半導体装置。
【請求項3】
前記導体が、前記素子領域分離用絶縁壁の壁厚内を伸びて素子領域を一巡していることを特徴とする請求項2の半導体装置。
【請求項4】
前記活性層の表面を覆う表面絶縁層と、
前記表面絶縁層を貫通して前記導体と電気的に接触する導体コンタクト
をさらに有することを特徴とする請求項3の半導体装置。
【請求項5】
前記導体が、金属又はn型ポリシリコンであることを特徴とする請求項4の半導体装置。
【請求項6】
p型基層と埋め込み絶縁層と活性層が積層されているSOI基板の活性層の一部に素子領域が形成されている半導体装置の製造方法であって、
活性層の表面から埋め込み絶縁層に達するとともに素子領域を一巡する閉ループに沿って伸びており、少なくとも一部では埋め込み絶縁層を貫通してp型基層に達するトレンチを形成する工程と、
そのトレンチを画定する両側壁の各々に素子領域分離用絶縁壁を成長させる工程と、
トレンチの両側壁に成長した一対の素子領域分離用絶縁壁の間を活性層の表面からp型基層まで伸びる範囲に、p型基層に接するn型領域と、そのn型領域に接するとともに活性層の表面に至る導体を形成する工程
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記一対の素子領域分離用絶縁壁の間から露出するp型基層にn型不純物を注入してから活性化処理することによってn型領域を形成する工程、
を備えていることを特徴とする請求項6の製造方法。
【請求項8】
前記一対の素子領域分離用絶縁壁の間にn型不純物を含む導体を充填した後に熱処理して前記n型領域を形成する工程、
を備えていることを特徴とする請求項6の製造方法。
【請求項9】
前記素子領域分離用絶縁壁の形成工程後に、その工程でトレンチの底面に形成された絶縁層を除去する工程が付加されていることを特徴とする請求項7又は8の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−305663(P2007−305663A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130245(P2006−130245)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】