説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】高誘電体材料を含むゲート絶縁膜とメタルゲート電極とを有する半導体装置の製造中にポリシリコンからなる残渣が素子分離領域上に生じる虞があり、不良の原因であった。
【解決手段】半導体基板10の第1の活性領域10a上には、第1のゲート絶縁膜13aと、第1の下層導電膜14a及び第1のシリコン膜18aを有する第1のゲート電極19aとを備えた第1導電型の第1のトランジスタが形成されており、半導体基板10の第2の活性領域10b上には、第2のゲート絶縁膜13bと、第2の下層導電膜14b及び第2のシリコン膜18bを有する第2のゲート電極19bとを備えた第2導電型の第2のトランジスタが形成されている。第1のゲート絶縁膜13aは高誘電体材料と第1の金属とを含有し、第1の下層導電膜14aは導電材料と第1の金属とを含有し、第2の下層導電膜14bは第1の下層導電膜14aと同一の導電材料を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に高誘電体材料を含むゲート絶縁膜と金属膜を含むゲート電極(以下では「メタルゲート電極」という。)とを有するMISFET(Metal-insulator semiconductor field-effect transistor)を備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary metal-oxide semiconductor )デバイスには、さらなる微細化が要求されている。CMOSデバイスをさらに微細化させるためには、ゲート絶縁膜の薄膜化が必要となる。しかし、従来のシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜をさらに薄膜化すると、リーク電流の増大を招来し、LSI(Large scale integration )回路の待機時電流が増大する虞がある。このため、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜の薄膜化は、限界に来ている。そこで、シリコン酸化膜に代えて高誘電体材料からなる絶縁膜をゲート絶縁膜とする、CMIS(Complementary metal-insulator semiconductor)デバイスが注目されている。高誘電体材料からなる絶縁膜は、物理的な膜厚を厚くしても電気的な膜厚を薄くすることが可能であり、ゲート絶縁膜の薄膜化をさらに進めることができると期待されている。現在、ゲート絶縁膜用の高誘電体材料として最も有望視されているのは、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)である。
【0003】
また、ゲート電極についても、従来のポリシリコンからなる電極ではその空乏化が無視できなくなってきており、空乏化が起こらないメタルゲート電極の開発が盛んに行われている。
【0004】
一方、N型MISFETとP型MISFETとでは、ゲート絶縁膜及びゲート電極に求められる特性が互いに異なる。具体的には、N型MISFETでは実効仕事関数を低くすることが好ましく、P型MISFETでは実効仕事関数を高くすることが好ましい。このため、互いに異なる特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を有するN型MISFETとP型MISFETとを形成するプロセスが提案されている(例えば非特許文献1を参照。)。
【0005】
以下では、図9(a)〜(d)及び図10(a)〜(b)を用いて、従来の半導体装置の製造方法を説明する。なお、図中において、左側に示す「NTr」とはN型MISFETが形成されるN型MISFET形成領域NTrを示し、右側に示す「PTr」とはP型MISFETが形成されるP型MISFET形成領域PTrを示している。
【0006】
まず、図9(a)に示すように、半導体基板110の上部に素子分離領域111を形成し、これにより、半導体基板110におけるN型MISFET形成領域NTrには第1の活性領域110aが形成され、半導体基板110におけるP型MISFET形成領域PTrには第2の活性領域110bが形成される。その後、半導体基板110におけるN型MISFET形成領域NTrにp型ウェル領域112aを形成する一方、半導体基板110におけるP型MISFET形成領域PTrにn型ウェル領域112bを形成する。その後、半導体基板110の上面全体に第1の絶縁膜113及び第1の導電膜114を順次形成し、第1の導電膜114のうち第1の活性領域110aの上に形成された部分を覆うアモルファスシリコン膜115を選択的に形成する。
【0007】
次に、図9(b)に示すように、アモルファスシリコン膜115をマスクとして、第1の絶縁膜113及び第1の導電膜114のそれぞれうち第2の活性領域110bの上に形成された部分を除去する。その後、半導体基板110の上面のうち第1の絶縁膜113で覆われていない部分の上及びアモルファスシリコン膜115上に第2の絶縁膜116及び第2の導電膜117を順次形成し、第2の導電膜117のうち第2の活性領域110bの上に形成された部分を覆うアモルファスシリコン膜118を選択的に形成する。
【0008】
続いて、図9(c)に示すように、アモルファスシリコン膜118をマスクとして、第2の絶縁膜116及び第2の導電膜117のそれぞれのうち第1の活性領域110aの上に形成された部分を除去する。
【0009】
続いて、図9(d)に示すように、アモルファスシリコン膜115,118を除去した後、第1の導電膜114上、第2の導電膜117上ならびに半導体基板110の上面のうち第1の絶縁膜113及び第2の絶縁膜116に覆われていない部分の上に、ポリシリコン膜120を形成する。
【0010】
続いて、図10(a)に示すように、第1の導電膜114,第2の導電膜117及びポリシリコン膜120を選択的に除去する。これにより、第1の活性領域110aの上には、第1の導電膜114及びポリシリコン膜120からなる第1のゲート電極200が形成され、第2の活性領域110bの上には、第2の導電膜117及びポリシリコン膜120からなる第2のゲート電極201が形成される。
【0011】
そして、図10(b)に示すように、第1の絶縁膜113及び第2の絶縁膜116を選択的に除去する。これにより、第1の活性領域110a上には、第1の絶縁膜113からなる第1のゲート絶縁膜を介して第1のゲート電極200が形成され、第2の活性領域110b上には、第2の絶縁膜116からなる第2のゲート絶縁膜を介して第2のゲート電極201が形成される。このようにして、従来の半導体装置を形成することができる。
【0012】
ここで、第1の絶縁膜113をHfSiON膜とし、第1の導電膜114をTiN膜とし、第2の絶縁膜116をHfO膜とし、第2の導電膜117をTaN膜とすれば、N型MISFET及びP型MISFETの特性をそれぞれ最適化することができる。
【非特許文献1】S.C.Song 他, "Highly Manufacturable 45nm LSTP CMOSFETs Using Novel Dual High-k and Dual Metal Gate CMOS Integration", VLSI, 2006年, p.16−17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、前述の従来の半導体装置の製造方法では、図9(c)に示す工程において、第2の絶縁膜(HfO膜)116を選択的に除去するためにHF溶液を使用すると、第1の絶縁膜(HfSiON膜)113及び第2の絶縁膜(HfO膜)116よりも素子分離領域(NSG(non-doped silicate glass)膜)111の方がHF溶液に対するエッチングレートが速いため、図9(c)に示すように素子分離領域(NSG膜)111における第1の絶縁膜(HfSiON膜)113及び第2の絶縁膜(HfO膜)116の端部下にアンダーカット部119が形成される。
【0014】
この後の工程で半導体基板110の上にポリシリコン膜(PドープトPolySi膜)120を形成するが、このとき、図9(d)に示すようにアンダーカット部119内を埋めるようにしてポリシリコン膜120が形成される。その後、第1のゲート電極200及び第2のゲート電極201を形成するためにエッチングを行っても(図10(a))、また、第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜を形成するために第1の絶縁膜113及び第2の絶縁膜116を選択的に除去しても(図10(b))、アンダーカット部119内のポリシリコンを除去することはできない。そして、アンダーカット部119内にポリシリコンの残渣部121が発生すると、ゲート配線に短絡などが引き起こされ、その結果、半導体装置の不良の原因となる。
【0015】
前記に鑑み、本発明は、それぞれが最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を有するN型MISFETならびにP型MISFETを備え、且つ、従来の半導体装置において不良の原因となっていたポリシリコンの残渣が発生しない半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体装置は、半導体領域における第1の活性領域上に設けられた第1導電型の第1のトランジスタと、素子分離領域により第1の活性領域とは分離された半導体領域における第2の活性領域上に設けられた第2の導電型の第2のトランジスタとを備えている。第1のトランジスタは、第1の活性領域の上に形成され、高誘電体材料と第1の金属とを含有する第1のゲート絶縁膜と、第1のゲート絶縁膜上に形成され且つ導電材料と第1の金属とを含有する第1の導電膜と第1の導電膜の上に形成された第1のシリコン膜とを有する第1のゲート電極とを備えている。第2のトランジスタは、第2の活性領域の上に形成され、高誘電体材料を含有する第2のゲート絶縁膜と、第2のゲート絶縁膜上に形成され且つ導電材料を含有する第2の導電膜と第2の導電膜の上に形成された第2のシリコン膜とを有する第2のゲート電極とを備えている。
【0017】
本発明の半導体装置では、第2のゲート絶縁膜及び第2の導電膜は、第1の金属を含有していないことが好ましい。
【0018】
本発明の半導体装置では、第1のトランジスタは、第1の金属により実効仕事関数の値が変更されていることが好ましい。
【0019】
本発明の半導体装置では、第1の金属は、ランタノイド系元素、スカンジウム、ストロンチウムおよびマグネシウムの少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
本発明の半導体装置では、第2のゲート絶縁膜及び第2の導電膜は、第2の金属を含有していることが好ましく、第2のトランジスタは、第2の金属により実効仕事関数の値が変更されており、第2の金属は、アルミニウムおよびタンタルの少なくとも一つであればよい。
【0021】
本発明の半導体装置では、第1のゲート電極は、第1の導電膜と第1のシリコン膜との間に設けられた第3の導電膜を有し、第2のゲート電極は、第2の導電膜と第2のシリコン膜との間に設けられ、第3の導電膜と同一の材料からなる第4の導電膜を有していることが好ましい。なお、第3の導電膜及び第4の導電膜は、窒化チタン、窒化タンタル、炭化タンタル、ルテニウム又は窒化アルミニウムモリブデンからなればよい。
【0022】
本発明の半導体装置では、第1の導電膜は、厚み方向の全領域に第1の金属を含有していることが好ましい。
【0023】
本発明の半導体装置では、第1のゲート電極の膜厚は、第2のゲート電極の膜厚と同一であることが好ましい。
【0024】
後述の好ましい実施形態では、第1のトランジスタは、N型MISトランジスタであり、第2のトランジスタは、P型MISトランジスタである。
【0025】
本発明の半導体装置では、高誘電体材料は、ハフニウム、ジルコニウムおよびイットリウムの少なくとも一つを含有する酸化物、酸窒化物またはシリケートであることが好ましい。
【0026】
本発明の半導体装置では、導電材料は、窒化チタン、窒化タンタル又は炭化タンタルからなることが好ましい。
【0027】
本発明の半導体装置では、第1のゲート絶縁膜は、第1の活性領域と第1のゲート絶縁膜における高誘電体材料との間に、酸窒化シリコンからなる第1の下地膜を有し、第2のゲート絶縁膜は、第2の活性領域と第2のゲート絶縁膜における高誘電体材料との間に、酸窒化シリコンからなる第2の下地膜を有していることが好ましい。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体領域における第1の活性領域上に設けられた第1のトランジスタと、素子分離領域により第1の活性領域とは分離された半導体領域における第2の活性領域上に設けられた第2のトランジスタとを備えた半導体装置の製造方法である。具体的には、第1の活性領域及び第2の活性領域の上に、高誘電体材料からなる高誘電体膜および導電材料からなる下層導電膜を順次形成する工程(a)と、下層導電膜のうち第1の活性領域上に形成された部分の上に、第1の金属を含有する第1の材料膜を形成する工程(b)と、高誘電体膜及び下層導電膜のそれぞれのうち第1の活性領域上に設けられた部分に、第1の材料膜から第1の金属を拡散させる工程(c)と、工程(c)の後、第1の材料膜を除去する工程(d)と、工程(d)の後、下層導電膜の上にシリコン膜を形成する工程(e)と、シリコン膜、下層導電膜及び高誘電体膜をエッチングする工程(f)とを備えている。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法では、工程(d)の後で工程(e)の前に、下層導電膜上に上層導電膜を形成する工程(g)をさらに備えていることが好ましく、工程(e)では、上層導電膜上にシリコン膜を形成していることが好ましく、工程(f)は、上層導電膜をエッチングする工程をさらに含んでいることが好ましい。
【0030】
本発明の半導体装置の製造方法では、工程(a)の後で工程(b)の前に、下層導電膜のうち第2の活性領域上に形成された部分の上に第1の保護膜を形成する工程(h)をさらに備えていることが好ましく、工程(b)では、下層導電膜のうち第2の活性領域上に形成された部分の上には、第1の保護膜を介して第1の材料膜を形成することが好ましく、工程(d)は、第1の保護膜を除去する工程を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の半導体装置の製造方法では、工程(a)の後で工程(e)の前に、下層導電膜のうち第2の活性領域上に形成された部分の上に第2の金属を含有する第2の材料膜を形成する工程(i)と、高誘電体膜及び下層導電膜のそれぞれのうち第2の活性領域上に設けられた部分に第2の材料膜から第2の金属を拡散させる工程(j)と、工程(j)の後第2の材料膜を除去する工程(k)とをさらに備えていることが好ましい。さらに、工程(i)の前に、下層導電膜のうち第1の活性領域上に形成された部分の上に第2の保護膜を形成する工程(l)を備えていることが好ましく、工程(i)では、下層導電膜のうち第1の活性領域上に形成された部分の上には第2の保護膜を介して第2の材料膜を形成することが好ましく、工程(k)は第2の保護膜を除去する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によれば、それぞれが最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を有するN型MISFETならびにP型MISFETを備え、且つ、従来の半導体装置において不良の原因となっていたポリシリコンの残渣が発生しないので半導体装置の不良の原因を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。例えば、膜厚及び濃度などはそれぞれ以下に示す数値に限定されず、また、成膜方法及びエッチング方法などは以下に示す方法に限定されない。また、以下では、同一の部材に対して同一の符号を付け、説明を省略する場合がある。
【0034】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0035】
まず、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。なお、図中において、左側に示す「NTr」とはN型MISFET(第1の導電型の第1のトランジスタ)が形成されるN型MISFET形成領域NTrを示し、右側に示す「PTr」とはP型MISFET(第2の導電型の第2のトランジスタ)が形成されるP型MISFET形成領域PTrを示している。
【0036】
図1に示すように、半導体基板10の上部(半導体領域)には、p型ウェル領域12aが形成された第1の活性領域10aとn型ウェル領域12bが形成された第2の活性領域10bとを区画するように、トレンチ内に絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域11が形成されている。そして、半導体装置は、N型MISFET形成領域NTrの第1の活性領域10a上に設けられたN型MISFET(N型MISトランジスタ)と、P型MISFET形成領域PTrの第2の活性領域10b上に設けられたP型MISFET(P型MISトランジスタ)とを備えている。
【0037】
N型MISFETは、第1の活性領域10a上に形成された第1のゲート絶縁膜13aと、第1のゲート絶縁膜13a上に形成された第1のゲート電極19aと、第1のゲート電極19aの側面上に第1のオフセットスペーサ20aを介して形成され、断面形状がL字状の第1の内側サイドウォール22aと第1の外側サイドウォール23aとからなる第1のサイドウォール24aと、第1の活性領域10aにおける第1のゲート電極19aの側方下の領域に形成された接合深さの比較的浅いn型エクステンション領域21aと、第1の活性領域10aにおける第1のサイドウォール24aの外側方下の領域に形成された接合深さの比較的深いn型ソースドレイン領域25aと、n型ソースドレイン領域25a上及び第1のゲート電極19a上に形成されたシリサイド層26とを備えている。
【0038】
第1のゲート絶縁膜13aは、下側(第1の活性領域10a側)から順次形成された,酸窒化シリコン(SiON)からなる第1の下地膜(図示せず)と、第1の金属であるランタン(La)を含有する窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)からなる第1の高誘電体膜とで構成されている。第1の高誘電体膜は、比誘電率がシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜よりも大きな絶縁膜であり、比誘電率が8以上の金属酸化物、金属酸窒化物、シリケート又は窒素含有シリケートを含む高誘電体材料からなる。高誘電体材料としては、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)またはイットリウム(Y)などの金属の酸化物、酸窒化物、シリケートまたは窒素含有シリケートを挙げることができ、上述のHfSiONは、その一例である。
【0039】
第1のゲート電極19aは、下側(第1のゲート絶縁膜13a側)から順次形成された,第1の金属であるLaを含有する窒化チタン(TiN;導電材料)からなり膜厚が1nmの第1の下層導電膜(第1の導電膜)14aと、TiNからなり膜厚が13nmの第1の上層導電膜(第3の導電膜)17aと、ポリシリコンからなり膜厚が90nmの第1のシリコン膜18aとで構成されており、第1のシリコン膜18a上にはシリサイド層26が形成されている。
【0040】
P型MISFETは、第2の活性領域10b上に形成された第2のゲート絶縁膜13bと、第2のゲート絶縁膜13b上に形成された第2のゲート電極19bと、第2のゲート電極19bの側面上に第2のオフセットスペーサ20bを介して形成され、断面形状がL字状の第2の内側サイドウォール22bと第2の外側サイドウォール23bとからなる第2のサイドウォール24bと、第2の活性領域10bにおける第2のゲート電極19bの側方下の領域に形成された接合深さの比較的浅いp型エクステンション領域21bと、第2の活性領域10bにおける第2のサイドウォール24bの外側方下の領域に形成された接合深さの比較的深いp型ソースドレイン領域25bと、p型ソースドレイン領域25b上及び第2のゲート電極19b上に形成されたシリサイド層26とを備えている。
【0041】
第2のゲート絶縁膜13bは、下側(第2の活性領域10b側)から順次形成された,SiONからなる第2の下地膜(図示せず)とHfSiONからなる第2の高誘電体膜とで構成されている。第2の高誘電体膜は、第1の高誘電体膜と同一の高誘電体材料からなる。
【0042】
第2のゲート電極19bは、下側(第2のゲート絶縁膜13b側)から順次形成された,TiN(導電材料)からなり膜厚が1nmの第2の下層導電膜(第2の導電膜)14bと、TiNからなり膜厚が13nmの第2の上層導電膜(第4の導電膜)17bと、ポリシリコンからなり膜厚が90nmの第2のシリコン膜18bとで構成されており、第2のシリコン膜18b上にはシリサイド層26が形成されている。第2の下層導電膜14bは、第1の下層導電膜14aと同一の導電材料を含有しており、第2の上層導電膜17bは第1の上層導電膜17aと同一の材料からなり、第2のシリコン膜18bは第1のシリコン膜18aと同一の材料からなる。また、第2のゲート電極19bの膜厚は、第1のゲート電極19aの膜厚と略同一である。
【0043】
本実施形態に係る半導体装置の構造上の特徴は、以下に示す点である。
【0044】
本実施形態に係る半導体装置は、N型MISFETとP型MISFETとが互いに最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を備えたCMISFETである。
【0045】
具体的には、N型MISFETにおける第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極19aの第1の下層導電膜14aは、それぞれ、第1の金属であるLaを含有している。一方、P型MISFETにおける第2のゲート絶縁膜13bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極19bの第2の下層導電膜14bは、それぞれ、第1の金属であるLaを含有していない。
【0046】
P型MISFETは、第2の高誘電体膜を有する第2のゲート絶縁膜13b及び第2の下層導電膜14bを有する第2のゲート電極19bによって、実効仕事関数が例えば4.75eV以上になる材料で第2の高誘電体膜及び第2の下層導電膜14bが構成されている。すなわち、P型MISFETでは、第2のゲート絶縁膜13bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極19bの第2の下層導電膜14bが第1の金属を含有していない状態で、実効仕事関数がミッドギャップ(4.6eV程度)よりも高くなっている。
【0047】
一方、N型MISFETは、第1の金属を含有している第1の高誘電体膜を有する第1のゲート絶縁膜13aと第1の金属を含有している第1の下層導電膜14aを有する第1のゲート電極19aとによって、実効仕事関数が例えば4.4eV以下になっている。すなわち、N型MISFETでは、第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極19aの第1の下層導電膜14aに第1の金属を含有させることによって、実効仕事関数をミッドギャップ(4.6eV程度)よりも低くしている。
【0048】
第1の金属は、高誘電体膜及び下層導電膜への添加によりトランジスタの実効仕事関数を低下させる金属であり、第1の金属としては、上述のLaの他には、例えばLa以外のランタノイド系元素、スカンジウム(Sc)、ストロンチウム(Sr)またはマグネシウム(Mg)などを用いることができる。これにより、N型MISFETの実効仕事関数をP型MISFETの実効仕事関数よりも低くすることができる。具体的には、N型MISFETの実効仕事関数を、ミッドギャップ(4.6eV程度)よりも低くすることができ、好ましくは4.4eV以下にすることができる。従って、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧を低くすることができる。
【0049】
ここで、MISFETでは、一般に、様々な要因によりゲート電極の仕事関数とは異なる仕事関数を示すため、ゲート電極の仕事関数と区別するために「実効仕事関数」と表記している。また、「ミッドギャップ」は、シリコンのバンドギャップの中間値であり、その数値は上述の通り4.6eV程度である。
【0050】
後述の製造方法で示すように、第1の金属は、熱処理により、下層導電膜14上に形成された第1の材料膜15から下層導電膜14のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を通って高誘電体膜13のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散する。そのため、第1の下層導電膜14aでは、第1の金属は、第1の下層導電膜14aの厚み方向の全領域に存在している。一方、第1のゲート絶縁膜13aでは、熱処理の条件が異なると、第1の金属の分布が異なる。例えば、第1の金属は、第1の高誘電体材料と均一に混ざり合っていても良く、第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜内に層状に存在していても良く、第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜の上部に多く存在していても良く、第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜の下部に沈降していても良い。しかし、何れの場合であっても、N型MISFETの実効仕事関数をP型MISFETの実効仕事関数よりも低くすることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置では、N型MISFETにおける第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜は第1の金属を含有しており、第1の金属が高誘電体膜に添加されるとトランジスタの実効仕事関数が低くなる。これにより、N型MISFETの実効仕事関数をP型MISFETの実効仕事関数よりも低くすることができ、よって、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧を低くすることができる。このように、本実施形態では、N型MISFETとP型MISFETとが互いに最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を備えたCMISFETを実現することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る半導体装置では、後述の製造方法で示すように、第1のゲート絶縁膜13aと第2のゲート絶縁膜13b、第1の下層導電膜14aと第2の下層導電膜14b、第1の上層導電膜17aと第2の上層導電膜17b、第1のシリコン膜18aと第2のシリコン膜18bは、それぞれ同一の膜をパターニングして形成されているため、それぞれの境界部において段差が生じないので、良好なゲート電極構造を得ることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る半導体装置では、第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜は、第2のゲート絶縁膜13bの第2の高誘電体膜と同一の材料からなる。そのため、以下で示すように、半導体基板10の上に高誘電体膜13を形成した工程からパターニングによりゲート電極及びゲート絶縁膜を形成する工程までの間、素子分離領域11の上面が露出することを防止できる。よって、本実施形態に係る半導体装置は、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることなく製造されるので、素子分離領域11の上面にポリシリコンからなる残渣が生じることなく製造される。これについては、以下で示す半導体装置の製造方法において説明する。
【0054】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0055】
まず、図2(a)に示すように、埋め込み素子分離(Shallow Trench Isolation :STI)法により、p型シリコンからなる半導体基板10の上部に、トレンチ内に絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域11を選択的に形成する。これにより、N型MISFET形成領域NTrには、素子分離領域11によって囲まれた半導体基板10からなる第1の活性領域10aが形成され、P型MISFET形成領域PTrには、素子分離領域11によって囲まれた半導体基板10からなる第2の活性領域10bが形成される。その後、半導体基板10におけるN型MISFET形成領域NTrにp型ウェル領域12aを形成する一方、半導体基板10におけるP型MISFET形成領域PTrにn型ウェル領域12bを形成する。
【0056】
その後、半導体基板10の上面全体に膜厚が1.6nmのシリコン酸窒化膜(SiON膜)からなる下地膜(図示せず)を形成した後、例えば有機金属気相堆積(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)法により、下地膜上に膜厚が2nmのHfSiON膜からなる高誘電体膜13を形成する(工程(a))。これにより、図2(a)に示すように、高誘電体膜13は、第1の活性領域10aの上及び第2の活性領域10bの上だけでなく素子分離領域11の上にも形成される。ここで、高誘電体膜13としては、上述のように、比誘電率がシリコン酸化膜やシリコン窒化膜よりも高く、比誘電率が8以上の金属酸化物、金属酸窒化物、シリケート又は窒素含有シリケートを含む高誘電体材料からなる絶縁膜を用いることが望ましい。その後、高誘電体膜13上に、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)法により、膜厚が1nmのTiN膜からなる下層導電膜14を形成する(工程(a))。その後、下層導電膜14上に膜厚が2nmの酸化ランタン(La)膜からなる第1の材料膜15を形成する(工程(b))。ここで、第1の材料膜15としては、La膜に限定されず、後の熱処理工程(図2(c)に示す工程)において、高誘電体膜13へ拡散したときにトランジスタの実効仕事関数を低くする(具体的にはミッドギャップよりも低くする、好ましくは4.4eV以下にする)金属(つまり、第1の金属)が含有された膜を用いればよい。
【0057】
次に、図2(b)に示すように、フォトリソグラフィ法により、第1の材料膜15上に、第1の材料膜15のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を覆う一方、第1の材料膜15のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を露出するように、レジストパターン16を形成する。その後、レジストパターン16をマスクとして、第1の材料膜15のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を除去する。これにより、第1の活性領域10a上には、下地膜(不図示)、高誘電体膜13、下層導電膜14及び第1の材料膜15が順次形成される一方(工程(b))、第2の活性領域10b上には、下地膜(不図示)、高誘電体膜13及び下層導電膜14が順次形成される。ここで、Laからなる第1の材料膜15の除去は、塩酸(HCl)を主成分とする薬液を用いたウェットエッチングにより行えばよい。ここで、HfSiONとLaとでは、Laを除去する薬液(本実施形態ではHCl)に対するエッチングレートが大きく異なり、Laを除去する薬液に対するエッチング選択比(Laのエッチングレートに対するHfSiONのエッチングレートの割合)が小さいため、素子分離領域11の上において第1の材料膜15だけを除去して高誘電体膜13を残存させるということを容易に行うことができる。このように、このエッチング工程では高誘電体膜13が除去されないので、素子分離領域11の上面の露出を防止でき、よって、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることを抑制できる。
【0058】
次に、図2(c)に示すように、レジストパターン16を除去した後、半導体基板10に対して例えば800℃10分の熱処理を施す(工程(c))。すると、第1の金属であるLaが第1の材料膜15内から下層導電膜14のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を通って高誘電体膜13のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散し、これにより、Laを含有する高誘電体膜13A及びLaを含有する下層導電膜14Aが第1の活性領域10aの上に形成される。
【0059】
このように、この熱処理工程では、第1の金属は、第1の材料膜15から下層導電膜14のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散する場合もあるが、第1の材料膜15から下層導電膜14のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を通って高誘電体膜13のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散する。よって、Laを含有する下層導電膜14Aでは、その厚み方向の全領域に第1の金属が存在している。
【0060】
一方、Laを含有する高誘電体膜13A内では、この熱処理工程における熱処理の条件によっては、第1の金属が高誘電体膜13を構成する高誘電体材料と均一に混ざり合っている場合もあれば、第1の金属が層状に存在する場合もあれば、第1の金属がその上部に多く存在する場合もあれば、第1の金属がその下部に沈降する場合もある。
【0061】
次に、図3(a)に示すように、第1の材料膜15を除去した後(工程(d))、例えば物理蒸着(PVD)法により膜厚が13nmのTiN膜からなる上層導電膜17をLaを含有する下層導電膜14A上及び下層導電膜14上に形成する(工程(g))。その後、上層導電膜17上に膜厚が90nmのシリコン膜18を形成する(工程(e))。このとき、素子分離領域11の上面にはアンダーカット部が形成されていないので、素子分離領域11の上面にシリコン膜18が堆積されることを防止できる。従って、次工程においてシリコン膜18をエッチングしてもその残渣が素子分離領域11の上面に生じることを防止できる。
【0062】
次に、図3(b)に示すように、ゲートパターン形状を有するレジスト(図示せず)を用いて、ドライエッチング法により、シリコン膜18、上層導電膜17、Laを含有する下層導電膜14A、Laを含有する高誘電体膜13A、第2の活性領域10bの上に形成された下層導電膜14及び第2の活性領域10bの上に形成された高誘電体膜13をパターニングする(工程(f))。これにより、第1の活性領域10a上には、順に、第1の下地膜とLaを含有する高誘電体膜13Aとからなる第1のゲート絶縁膜13aと、Laを含有する下層導電膜14Aからなる第1の下層導電膜14aと第1の上層導電膜17aと第1のシリコン膜18aとからなる第1のゲート電極19aとが形成される。一方、第2の活性領域10b上には、順に、第2の下地膜とLaを含有していない高誘電体膜13とからなる第2のゲート絶縁膜13bと、Laを含有していない下層導電膜14からなる第2の下層導電膜14bと第2の上層導電膜17bと第2のシリコン膜18bとからなる第2のゲート電極19bとが形成される。
【0063】
次に、図3(c)に示すように、第1及び第2のゲート電極19a,19bの側面上にそれぞれ第1及び第2のオフセットスペーサ20a,20bを形成した後、第1の活性領域10aにおける第1のゲート電極19aの側方下の領域にn型エクステンション領域21aを形成する一方、第2の活性領域10bにおける第2のゲート電極19bの側方下の領域にp型エクステンション領域21bを形成する。その後、第1のゲート電極19aの側面上に第1のオフセットスペーサ20aを介してL字状の第1の内側サイドウォール22a及び第1の外側サイドウォール23aからなる第1のサイドウォール24aを形成する一方、第2のゲート電極19bの側面上に第2のオフセットスペーサ20bを介してL字状の第2の内側サイドウォール22b及び第2の外側サイドウォール23bからなる第2のサイドウォール24bを形成する。その後、第1の活性領域10aにおける第1のサイドウォール24aの外側方下の領域にn型ソースドレイン領域25aを形成する一方、第2の活性領域10bにおける第2のサイドウォール24bの外側方下の領域にp型ソースドレイン領域25bを形成する。続いて、第1のゲート電極19aの第1のシリコン膜18a、第2のゲート電極19bの第2のシリコン膜18b、n型ソースドレイン領域25a及びp型ソースドレイン領域25bの各上部に、それぞれニッケルシリサイド等からなるシリサイド層26を形成する。このようにして、第1の活性領域10a上にN型MISFETが形成され、第2の活性領域10b上にP型MISFETが形成された半導体装置が得られる。
【0064】
なお、本実施形態では、高誘電体膜13及び下層導電膜14をそのまま、P型MISFETの第2のゲート絶縁膜13b及び第2のゲート電極19bの一部として用いるため、P型MISFETの実効仕事関数がミッドギャップ(4.6eV程度)よりも高く、例えば4.75eV以上になるような形成条件で下層導電膜14を形成することが望ましい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、図2(a)に示す工程において、半導体基板10の上面全体を覆うように高誘電体膜13を形成する。その後、図2(b)に示す工程では、第1の材料膜15を選択的に除去するが高誘電体膜13は除去されないので、素子分離領域11の上面は高誘電体膜13に覆われたままであり、よって、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることを防止できる。従って、図3(a)に示す工程でシリコン膜18を堆積させた後、図3(b)に示す工程でそのシリコン膜をエッチングしても、素子分離領域11の上面にポリシリコンからなる残渣が発生することを防止できる。これにより、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、従来の半導体装置において不良の原因となっていたゲート電極材料の残渣が素子分離領域11の上面に発生することを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、図2(a)に示す工程では、半導体基板10の上面全体を覆うように高誘電体膜13を形成するので、第1の活性領域10aの上にも第2の活性領域10bの上にも高誘電体膜13が形成される。しかし、図2(c)に示す工程において、第1の金属を高誘電体膜13及び下層導電膜14のそれぞれのうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散させている。第1の金属は高誘電体膜13及び下層導電膜14への拡散によりN型MISFETの実効仕事関数を低くする金属であるので、N型MISFETの実効仕事関数をP型MISFETの実効仕事関数よりも低くすることができる。よって、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧を低くすることができる。
【0067】
その上、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、図3(b)に示すように、それぞれ同一の膜をパターニングして、第1のゲート絶縁膜13aと第2のゲート絶縁膜13b、第1の下層導電膜14aと第2の下層導電膜14b、第1の上層導電膜17aと第2の上層導電膜17b、第1のシリコン膜18aと第2のシリコン膜18bを形成している。そのため、それぞれの境界部において段差が生じないので、良好なゲート電極構造を得ることができる。
【0068】
以上をまとめると、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法では、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧を低くすることができ、さらには、従来の半導体装置において不良の原因となっていたゲート電極材料の残渣を素子分離領域11の上面に発生させることなく半導体装置を製造することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、第1のゲート絶縁膜13aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極19aの第1の下層導電膜14aが第1の金属であるLaを含有しているとしたが、その代わりに、第2のゲート絶縁膜13bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極19bの第2の下層導電膜14bが第2の金属を含有していても良い。第2の金属とはP型MISFETの実効仕事関数を高くする金属(例えば、Al)であり、第2の金属が第2のゲート絶縁膜13bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極19bの第2の下層導電膜14bに添加されると、P型MISFETの実効仕事関数をN型MISFETの実効仕事関数よりも高くすることができる。よって、この場合であっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(変形例)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例について説明する。図4(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を工程順に示す断面図である。本変形例では、第1の材料膜を第1の活性領域の上だけでなく第2の活性領域の上にも形成しているが、高誘電体膜及び下層導電膜のそれぞれのうち第2の活性領域の上に形成された部分に第1の金属が拡散することを防止するために第2の活性領域の上では下層導電膜と第1の材料膜との間に第1の保護膜を形成している。
【0071】
まず、図4(a)に示すように、図2(a)に示す工程と同様の方法によって、高誘電体膜13上に膜厚が1nmのTiN膜からなる下層導電膜14を形成する工程までを行う(工程(a))。その後、下層導電膜14上に膜厚が50nmのSiO膜からなる第1の保護膜30を形成する。第1の保護膜30は、後の熱処理工程(図4(d)に示す工程)において、第1の金属が第1の材料膜15(図4(c)に示す工程で形成される)から下層導電膜14のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分、さらには、高誘電体膜13のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散することを防止するための膜である。よって、第1の保護膜30の膜厚は、後の熱処理工程(図4(d)に示す工程)において、第1の金属が第1の保護膜30上に形成された第1の材料膜15から下層導電膜14のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分、さらには、高誘電体膜13のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散しないように調整されていれば良い。
【0072】
次に、図4(b)に示すように、フォトリソグラフィ法により、第1の保護膜30上に、第2の活性領域10bの上に形成されている第1の保護膜30を覆い、第1の活性領域10aの上に形成されている第1の保護膜30を露出するレジストパターン31を形成する。その後、レジストパターン31をマスクにして、第1の保護膜30のうちレジストパターン31から露出している部分を除去する。これにより、第1の保護膜30は、下層導電膜14のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を覆うように形成される(工程(h))。この第1の保護膜30の除去は、フッ酸(HF)を主成分とする薬液を用いたウェットエッチングにより行えばよい。
【0073】
次に、図4(c)に示すように、レジストパターン31を除去した後、第1の保護膜30上と下層導電膜14のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分の上とに、膜厚が2nmのLa膜からなる第1の材料膜15を形成する。これにより、N型MISFET形成領域NTrでは、下層導電膜14上に接して第1の材料膜15が形成されるのに対して、P型MISFET形成領域PTrでは、第1の保護膜30上に第1の材料膜15が形成される(工程(b))。
【0074】
次に、図4(d)に示すように、半導体基板10に対して例えば800℃10分の熱処理を行う(工程(c))。すると、第1の金属であるLaが、第1の材料膜15であるLa膜から下層導電膜14のうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分を通って高誘電体膜13のうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分へ拡散する。これにより、第1の活性領域10aの上に、Laを含有する高誘電体膜13A及びLaを含有する下層導電膜14Aが順に形成される。
【0075】
この熱処理工程では、上記第1の実施形態で記載したように、第1の金属は、Laを含有する下層導電膜14Aでは、その厚み方向の全領域に存在しているが、Laを含有する高誘電体膜13A内では、第1の金属が高誘電体膜13を構成する高誘電体材料と均一に混ざり合っている場合もあれば、第1の金属が層状に存在する場合もあれば、第1の金属がその上部に多く存在する場合もあれば、第1の金属がその下部に沈降する場合もある。
【0076】
さらに、本変形例では、第1の材料膜15が第1の保護膜30上にも形成されているので、第1の金属であるLaは第1の保護膜30の上部に拡散し、その結果、第1の保護膜30の上部にはLaを含有する第1の保護膜30Aが形成される。しかし、第2の活性領域10bの上では、第1の材料膜15は第1の保護膜30を介して下層導電膜14の上に形成されており、第1の保護膜30は第1の金属が第1の材料膜15から下層導電膜14及び高誘電体膜13のそれぞれのうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散することを防止するための膜である。よって、第1の金属であるLaは、第1の材料膜15から第1の保護膜30を通って下層導電膜14のうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分、さらには、高誘電体膜13のうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分へ拡散しない。よって、高誘電体膜13及び下層導電膜14のそれぞれのうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分には、第1の金属であるLaは含有されない。
【0077】
その後、第1の材料膜15、Laを含有する第1の保護膜30A及び第1の保護膜30を除去した後(工程(d))、図3(a)〜(c)に示す工程を行うことによって、図3(c)に示す半導体装置を形成する。
【0078】
以上説明したように、本変形例に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置は、上記第1の実施形態に係る半導体装置と同一である。よって、本変形例に係る半導体装置は、上記第1の実施形態に係る半導体装置と略同一の効果を奏する。
【0079】
また、本変形例に係る半導体装置の製造方法においても、上記第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法と同じく、半導体基板10の上に高誘電体膜13を形成した工程からパターニングによりゲート電極及びゲート絶縁膜を形成する工程までの間、素子分離領域11の上面は高誘電体膜13に覆われたままである。よって、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることを防止できる。従って、図4(d)に示す工程の後、図3(a)に示す工程でシリコン膜18を堆積させ、その後、図3(b)に示す工程でそのシリコン膜をエッチングしても、素子分離領域11の上面にポリシリコンからなる残渣が発生することを防止できる。これにより、本変形例に係る半導体装置の製造方法であっても、従来の半導体装置において不良の原因となっていたゲート電極材料の残渣が素子分離領域11の上面に発生することを抑制することができる。
【0080】
また、本変形例に係る半導体装置の製造方法においても、上記第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法と同じく、それぞれ同一の膜をパターニングして、第1のゲート絶縁膜13aと第2のゲート絶縁膜13b、第1の下層導電膜14aと第2の下層導電膜14b、第1の上層導電膜17aと第2の上層導電膜17b、第1のシリコン膜18aと第2のシリコン膜18bを形成している。そのため、それぞれの境界部において段差が生じないので、良好なゲート電極構造を得ることができる。
【0081】
さらに、本変形例では、上記第1の実施形態とは異なり膜薄の第1の材料膜15をパターニングする工程を経ることなく半導体装置を製造することができるので、上記第1の実施形態に比べて簡便に製造できるという効果を得ることができる。
【0082】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0083】
まず、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造について、図5を参照しながら説明する。図5は、第2の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。なお、図中において、左側に示す「NTr」とはN型MISFETが形成されるN型MISFET形成領域NTrを示し、右側に示す「PTr」とはP型MISFETが形成されるP型MISFET形成領域PTrを示している。本実施形態では、上記第1の実施形態とは異なり、P型MISFETにおける第2のゲート絶縁膜の第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極の第2の下層導電膜は第2の金属を含有している。
【0084】
図5に示すように、半導体基板10の上部には、p型ウェル領域12aが形成された第1の活性領域10aとn型ウェル領域12bが形成された第2の活性領域10bとを区画するように、トレンチ内に絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域11が形成されている。そして、半導体装置は、N型MISFET形成領域NTrの第1の活性領域10a上に設けられたN型MISFETと、P型MISFET形成領域PTrの第2の活性領域10b上に設けられたP型MISFETとを備えている。
【0085】
N型MISFETは、第1の活性領域10a上に形成された第1のゲート絶縁膜33aと、第1のゲート絶縁膜33a上に形成された第1のゲート電極39aと、第1のゲート電極39aの側面上に第1のオフセットスペーサ20aを介して形成され、断面形状がL字状の第1の内側サイドウォール22aと第1の外側サイドウォール23aとからなる第1のサイドウォール24aと、第1の活性領域10aにおける第1のゲート電極39aの側方下の領域に形成された接合深さの比較的浅いn型エクステンション領域21aと、第1の活性領域10aにおける第1のサイドウォール24aの外側方下の領域に形成された接合深さの比較的深いn型ソースドレイン領域25aと、n型ソースドレイン領域25a及び第1のゲート電極39aの上に形成されたシリサイド層26とを備えている。
【0086】
第1のゲート絶縁膜33aは、下側(第1の活性領域10a側)から順次形成された,SiONからなる第1の下地膜(図示せず)と、第1の金属であるLaを含有するHfSiONからなる第1の高誘電体膜とで構成されている。第1の高誘電体膜は、比誘電率がシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜よりも大きな絶縁膜であり、比誘電率が8以上の金属酸化物、金属酸窒化物、シリケート又は窒素含有シリケートを含む高誘電体材料からなる。高誘電体材料としては、Hf、ZrまたはYなどの金属の酸化物、酸窒化物、シリケートまたは窒素含有シリケートを挙げることができ、上述のHfSiONは、その一例である。
【0087】
第1のゲート電極39aは、下側(第1のゲート絶縁膜33a側)から順次形成された,第1の金属であるLaを含有する窒化タンタル(TaN;導電材料)からなり膜厚が1nmの第1の下層導電膜(第1の導電膜)34aと、TaNからなり膜厚が13nmの第1の上層導電膜(第3の導電膜)37aと、ポリシリコンからなり膜厚が90nmの第1のシリコン膜18aとで構成されており、第1のシリコン膜18a上にはシリサイド層26が形成されている。
【0088】
P型MISFETは、第2の活性領域10b上に形成された第2のゲート絶縁膜33bと、第2のゲート絶縁膜33b上に形成された第2のゲート電極39bと、第2のゲート電極39bの側面上に第2のオフセットスペーサ20bを介して形成され、断面形状がL字状の第2の内側サイドウォール22bと第2の外側サイドウォール23bとからなる第2のサイドウォール24bと、第2の活性領域10bにおける第2のゲート電極39bの側方下の領域に形成された接合深さの比較的浅いp型エクステンション領域21bと、第2の活性領域10bにおける第2のサイドウォール24bの外側方下の領域に形成された接合深さの比較的深いp型ソースドレイン領域25bと、p型ソースドレイン領域25b上及び第2のゲート電極39b上に形成されたシリサイド層26とを備えている。
【0089】
第2のゲート絶縁膜33bは、下側(第2の活性領域10b側)から順次形成された,SiONからなる第2の下地膜(図示せず)と、第2の金属であるアルミニウム(Al)を含有するHfSiONからなる第2の高誘電体膜とで構成されている。第2の高誘電体膜は、第1の高誘電体膜と同一の高誘電体材料からなる。
【0090】
第2のゲート電極39bは、下側(第2のゲート絶縁膜33b側)から順次形成された,第2の金属であるAlを含有するTaN(導電材料)からなり膜厚が1nmの第2の下層導電膜34b(第2の導電膜)と、TaNからなり膜厚が13nmの第2の上層導電膜(第4の導電膜)37bと、ポリシリコンからなり膜厚が90nmの第2のシリコン膜18bとで構成されており、第2のシリコン膜18b上にはシリサイド層26が形成されている。第2の下層導電膜34bは第1の下層導電膜34aと同一の導電材料を含有しており、第2の上層導電膜37bは第1の上層導電膜37aと同一の材料からなり、第2のシリコン膜18bは第1のシリコン膜18aと同一の材料からなる。また、第2のゲート電極39bの膜厚は第1のゲート電極39aの膜厚と同一である。
【0091】
本実施形態に係る半導体装置の構造上の特徴は、以下に示す点である。
【0092】
本実施形態に係る半導体装置は、N型MISFETとP型MISFETとが互いに最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を備えたCMISFETである。
【0093】
具体的には、N型MISFETにおける第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極39aの第1の下層導電膜34aは、それぞれ、第1の金属であるLaを含有している。また、P型MISFETにおける第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極39bの第2の下層導電膜34bは、それぞれ、第2の金属であるAlを含有している。なお、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極39aの第1の下層導電膜34aはそれぞれ第2の金属を含有しておらず、また、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極39bの第2の下層導電膜34bはそれぞれ第1の金属を含有していない。
【0094】
第1の金属は、高誘電体膜及び下層導電膜への添加によりトランジスタの実効仕事関数を低下させる金属であり、第1の金属としては、上述のLaの他には、例えばLa以外のランタノイド系元素、Sc、SrまたはMgなどを用いることができる。一方、第2の金属は、高誘電体膜及び下層導電膜への添加によりトランジスタの実効仕事関数を高くする金属であり、第2の金属としては、上述のAlの他にタンタル(Ta)などを用いることができる。これにより、N型MISFETの実効仕事関数をP型MISFETの実効仕事関数よりも低くすることができる。具体的には、N型MISFETの実効仕事関数を、ミッドギャップ(4.6eV程度)よりも低くすることができ、好ましくは4.4eV以下にすることができ、一方、P型MISFETの実効仕事関数を、ミッドギャップ(4.6eV程度)よりも高くすることができ、好ましくは4.75eV以上にすることができる。従って、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧を低くすることができる。
【0095】
また、本実施形態に係る半導体装置では、N型MISFETにおける第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極39aの第1の下層導電膜34aに第1の金属が含有されているだけでなく、P型MISFETにおける第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極39bの第2の下層導電膜34bに第2の金属が含有されている。そのため、本実施形態におけるP型MISFETでは、上記第1の実施形態におけるP型MISFETよりも、実効仕事関数を高くすることができる。
【0096】
後述の製造方法で示すように、第1の金属は、熱処理により、下層導電膜34上に形成された第1の材料膜27から下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を通って高誘電体膜33のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散する。そのため、第1の下層導電膜34aでは、第1の金属は、第1の下層導電膜34aの厚み方向の全領域に存在している。一方、第1のゲート絶縁膜33aでは、熱処理の条件が異なると、第1の金属の分布が異なる。例えば、第1の金属は、第1の高誘電体材料と均一に混ざり合っていても良く、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜内に層状に存在していても良く、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜の上部に多く存在していても良く、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜の下部に沈降していても良い。しかし、何れの場合であっても、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1の下層導電膜34aに第1の金属を含有するN型MISFETの実効仕事関数は、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1の下層導電膜34aに第1の金属を含有しない場合の実効仕事関数に比べて低くすることができる。すなわち、N型MISFETでは、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極39aの第1の下層導電膜34aに第1の金属を含有させることによって、実効仕事関数をミッドギャップ(4.6eV程度)よりも低く、例えば4.4eV以下にする。
【0097】
同様に、後述の製造方法で示すように、第2の金属は、熱処理により、下層導電膜34上に形成された第2の材料膜28から下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を通って高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散する。そのため、第2の下層導電膜34bでは、第2の金属は、第2の下層導電膜34bの厚み方向の全領域に存在している。一方、第2のゲート絶縁膜33bでは、熱処理の条件が異なると、第2の金属の分布が異なる。例えば、第2の金属は、第2の高誘電体材料と均一に混ざり合っていても良く、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜内に層状に存在していても良く、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜の上部に多く存在していても良く、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜の下部に沈降していても良い。しかし、何れの場合であっても、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2の下層導電膜34bに第2の金属を含有するP型MISFETの実効仕事関数は、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2の下層導電膜34bに第2の金属を含有しない場合の実効仕事関数に比べて高くすることができる。すなわち、P型MISFETでは、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極39bの第2の下層導電膜34bに第2の金属を含有させることによって、実効仕事関数をミッドギャップ(4.6eV程度)よりも高く、例えば4.75eV以上にする。従って、P型MISFETの実効仕事関数をN型MISFETの実効仕事関数よりも高くすることができる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置では、N型MISFETにおける第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜及び第1のゲート電極39aの第1の下層導電膜34aが第1の金属を含有しており、また、P型MISFETにおける第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜および第2のゲート電極39bの第2の下層導電膜34bが第2の金属を含有している。そのため、N型MISFETの実効仕事関数をミッドギャップよりも低くすることができ且つP型MISFETの実効仕事関数をミッドギャップよりも高くすることができるので、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧の低下を図ることができる。このように、本実施形態では、N型MISFETとP型MISFETとが互いに最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を備えたCMISFETを実現することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る半導体装置では、上記第1の実施形態に係る半導体装置とは異なり、P型MISFETにおける第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜及び第2のゲート電極39bの第2の下層導電膜34bに第2の金属が含有されている。よって、本実施形態におけるP型MISFETでは、上記第1の実施形態におけるP型MISFETよりも、実効仕事関数を高くすることができるので閾値電圧を低くすることができる。
【0100】
また、本実施形態に係る半導体装置では、後述の製造方法で示すように、第1のゲート絶縁膜33aと第2のゲート絶縁膜33b、第1の下層導電膜34aと第2の下層導電膜34b、第1の上層導電膜37aと第2の上層導電膜37b、第1のシリコン膜18aと第2のシリコン膜18bは、それぞれ同一の膜をパターニングして形成されているため、それぞれの境界部において段差が生じないので、良好なゲート電極構造を得ることができる。
【0101】
さらに、本実施形態に係る半導体装置では、第1のゲート絶縁膜33aの第1の高誘電体膜は、第2のゲート絶縁膜33bの第2の高誘電体膜と同一の材料からなる。そのため、以下で示すように、半導体基板10の上に高誘電体膜33を形成した工程からパターニングによりゲート電極及びゲート絶縁膜を形成する工程までの間、素子分離領域11の上面が露出することを防止できる。よって、本実施形態に係る半導体装置は、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることなく製造されるので、素子分離領域11の上面にポリシリコンからなる残渣が生じることなく製造される。これについては、以下で示す半導体装置の製造方法において説明する。
【0102】
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図6(a)〜(d)、図7(a)〜(d)及び図8(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0103】
まず、図6(a)に示すように、埋め込み素子分離(STI)法により、p型シリコンからなる半導体基板10の上部に、トレンチ内に絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域11を選択的に形成する。これにより、N型MISFET形成領域NTrには、素子分離領域11によって囲まれた半導体基板10からなる第1の活性領域10aが形成され、P型MISFET形成領域PTrには、素子分離領域11によって囲まれた半導体基板10からなる第2の活性領域10bが形成される。その後、半導体基板10におけるN型MISFET形成領域NTrにp型ウェル領域12aを形成する一方、半導体基板10におけるP型MISFET形成領域PTrにn型ウェル領域12bを形成する。
【0104】
その後、半導体基板10上の全面に膜厚が1.6nmのSiON膜からなる下地膜(図示せず)を形成した後、例えば有機金属気相堆積(MOCVD)法により、下地膜上に膜厚が1nmのHfSiON膜からなる高誘電体膜33を形成する(工程(a))。これにより、図6(a)に示すように、高誘電体膜33は、第1の活性領域10aの上及び第2の活性領域10bの上だけでなく素子分離領域11の上にも形成される。ここで、高誘電体膜33としては、比誘電率がシリコン酸化膜やシリコン窒化膜よりも高く、比誘電率が8以上の金属酸化物、金属酸窒化物、シリケート又は窒素含有シリケートを含む高誘電体材料からなる絶縁膜を用いることが望ましい。その後、高誘電体膜33上に、例えば物理蒸着(PVD)法により、膜厚が1nmのTaN膜からなる下層導電膜34を形成する(工程(a))。その後、下層導電膜34上に膜厚が50nmのSiO膜からなる第1の保護膜30を形成する。第1の保護膜30は、後の熱処理工程(図6(d)に示す工程)において、第1の金属が第1の材料膜27(図6(c)に示す工程で形成される)から下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分、さらには、高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散することを防止するための膜である。よって、第1の保護膜30の膜厚は、後の熱処理工程(図6(d)に示す工程)において、第1の金属が第1の保護膜30上に形成された第1の材料膜27から下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分、さらには、高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散しないように調整されていれば良い。
【0105】
次に、図6(b)に示すように、フォトリソグラフィ法により、第1の保護膜30上に、第2の活性領域10bの上に形成されている第1の保護膜30を覆い、第1の活性領域10aの上に形成されている第1の保護膜30を露出するレジストパターン31を形成する。その後、レジストパターン31をマスクにして、第1の保護膜30のうちレジストパターン31から露出している部分を除去する。これにより、第1の保護膜30は、下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を覆うように形成される(工程(h))。第1の保護膜30の除去は、フッ酸(HF)を主成分とする薬液を用いたウェットエッチングにより行えばよい。また、このエッチング工程では高誘電体膜33及び下層導電膜34が除去されないので、素子分離領域11の上面の露出を防止でき、よって、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることを抑制できる。
【0106】
次に、図6(c)に示すように、レジストパターン31を除去した後、第1の保護膜30上と下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分の上とに、膜厚が2nmのLa膜からなる第1の材料膜27を形成する。これにより、N型MISFET形成領域NTrでは、下層導電膜34上に接して第1の材料膜27が形成されるのに対して、P型MISFET形成領域PTrでは、第1の保護膜30上に第1の材料膜27が形成される(工程(b))。ここで、第1の材料膜27としては、La膜に限定されず、後の熱処理工程(図6(d)に示す工程)において、高誘電体膜33に拡散したときにトランジスタの実効仕事関数を低くする(具体的にはミッドギャップよりも低くする、好ましくは4.4eV以下にする)金属(つまり、第1の金属)が含有された膜を用いればよい。
【0107】
次に、図6(d)に示すように、半導体基板10に対して例えば800℃10分の熱処理を行う(工程(c))。すると、第1の金属であるLaが、第1の材料膜27であるLa膜から下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分を通って高誘電体膜33のうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分へ拡散する。これにより、第1の活性領域10aの上に、Laを含有する高誘電体膜33A及びLaを含有する下層導電膜34Aが形成される。
【0108】
このように、この熱処理工程では、第1の金属は、下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を通って高誘電体膜33のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散する。よって、Laを含有する下層導電膜34Aでは、その厚み方向の全領域に第1の金属が存在している。
【0109】
一方、Laを含有する高誘電体膜33A内では、この熱処理工程における熱処理の条件によっては、第1の金属が高誘電体膜33を構成する高誘電体材料と均一に混ざり合っている場合もあれば、第1の金属が層状に存在する場合もあれば、第1の金属がその上部に多く存在する場合もあれば、第1の金属がその下部に沈降する場合もある。
【0110】
さらに、第1の材料膜27が第1の保護膜30上にも形成されているので、第1の金属であるLaは第1の保護膜30の上部に拡散し、その結果、第1の保護膜30の上部にはLaを含有する第1の保護膜30Aが形成される。しかし、第2の活性領域10bの上では、第1の材料膜27は第1の保護膜30を介して下層導電膜34の上に形成されており、第1の保護膜30は第1の金属が第1の材料膜27から下層導電膜14及び高誘電体膜13のそれぞれのうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散することを防止するための膜である。よって、第1の金属であるLaは、第1の材料膜27から第1の保護膜30を通って下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分、さらには、高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分へ拡散しない。よって、高誘電体膜33及び下層導電膜34のそれぞれのうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分には、第1の金属であるLaは含有されない。
【0111】
次に、図7(a)に示すように、第1の材料膜27、Laを含有する第1の保護膜30A及び第1の保護膜30を除去する(工程(d))。
【0112】
次に、図7(b)に示すように、Laを含有する下層導電膜34A上及び下層導電膜34上に膜厚が50nmのSiO膜からなる第2の保護膜35を形成する。第2の保護膜35は、後の熱処理工程(図7(d)に示す工程)において、第2の金属が第2の材料膜28(図7(c)に示す工程で形成される)からLaを含有する下層導電膜34AさらにはLaを含有する高誘電体膜33Aへ拡散することを防止するための膜である。よって、第2の保護膜35の膜厚は、後の熱処理工程(図7(d)に示す工程)において、第2の金属が第2の保護膜35上に形成された第2の材料膜28からLaを含有する下層導電膜34AさらにはLaを含有する高誘電体膜33Aに拡散しないように調整されていれば良い。その後、フォトリソグラフィ法により、第2の保護膜35上に、第1の活性領域10aの上に形成されている第2の保護膜35を覆い、第2の活性領域10bの上に形成されている第2の保護膜35を露出するレジストパターン36を形成する。その後、レジストパターン36をマスクにして、第2の保護膜35のうちレジストパターン36から露出している部分を除去する。これにより、第2の保護膜35は、Laを含有する下層導電膜34A上(下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分の上)に形成される(工程(l))。このエッチング工程においても高誘電体膜33及び下層導電膜34が除去されないので、素子分離領域11の上面の露出を防止でき、よって、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることを抑制できる。
【0113】
次に、図7(c)に示すように、レジストパターン36を除去した後、第2の保護膜35上及び下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分の上に、膜厚が2nmの酸化アルミニウム(Al)膜からなる第2の材料膜28を形成する。これにより、P型MISFET形成領域PTrでは、下層導電膜34上に接して第2の材料膜28が形成されるのに対して、N型MISFET形成領域NTrでは、第2の保護膜35上に第2の材料膜28が形成される(工程(i))。ここで、第2の材料膜28としては、Al膜に限定されず、後の熱処理工程(図7(d)に示す工程)において高誘電体膜33に拡散したときにトランジスタの実効仕事関数を高くする(具体的にはミッドギャップよりも高くする、好ましくは4.75eV以下にする)金属(つまり、第2の金属)が含有された膜を用いればよい。
【0114】
次に、図7(d)に示すように、半導体基板10に対して例えば800℃10分の熱処理を行う(工程(j))。すると、第2の金属であるAlが、第2の材料膜28であるAl膜から下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分を通って高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成されている部分へ拡散する。これにより、第2の活性領域10bの上に、Alを含有する高誘電体膜33B及びAlを含有する下層導電膜34Bが形成される。
【0115】
このように、この熱処理工程では、第2の金属は、下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を通って高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散する。よって、Alを含有する下層導電膜34Bでは、その厚み方向の全領域に第2の金属が存在している。
【0116】
一方、Alを含有する高誘電体膜33B内では、この熱処理工程における熱処理の条件によっては、第2の金属が高誘電体膜33を構成する高誘電体材料と均一に混ざり合って存在する場合もあれば、第2の金属が層状に存在する場合もあれば、第2の金属がその上部に多く存在する場合もあれば、第2の金属がその下部に沈降する場合もある。
【0117】
さらに、第2の材料膜28が第2の保護膜35上にも形成されているので、第2の金属であるAlは第2の保護膜35の上部に拡散し、その結果、第2の保護膜35の上部にはAlを含有する第2の保護膜35Aが形成される。しかし、第1の活性領域10aの上では、第2の材料膜28は第2の保護膜35を介して下層導電膜34の上に形成されており、第2の保護膜35は第2の金属が第2の材料膜28からLaを含有する下層導電膜34AさらにはLaを含有する高誘電体膜33Aへ拡散することを防止するための膜である。よって、第2の金属であるAlは、第2の材料膜28から第2の保護膜35を通って下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分、さらには、高誘電体膜33のうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分へ拡散しない。よって、高誘電体膜33及び下層導電膜34のそれぞれのうち第1の活性領域10aの上に形成されている部分には、第2の金属であるAlは含有されない。
【0118】
次に、図8(a)に示すように、第2の材料膜28、Alを含有する第2の保護膜35A及び第2の保護膜35を除去した後(工程(k))、Laを含有する下層導電膜34A上及びAlを含有する下層導電膜34B上に、膜厚が13nmのTaN膜からなる上層導電膜37を形成する(工程(g))。その後、上層導電膜37上に、膜厚が90nmのポリシリコン膜からなるシリコン膜18を形成する(工程(e))。
【0119】
次に、図8(b)に示すように、ゲートパターン形状を有するレジスト(図示せず)を用いて、ドライエッチング法により、シリコン膜18、上層導電膜37、Laを含有する下層導電膜34A、Alを含有する下層導電膜34B、Laを含有する高誘電体膜33A及びAlを含有する高誘電体膜33Bをパターニングする(工程(f))。これにより、第1の活性領域10a上には、第1の下地膜及びLaを含有する高誘電体膜33Aからなる第1のゲート絶縁膜33aと、Laを含有する下層導電膜34Aからなる第1の下層導電膜34aと上層導電膜37からなる第1の上層導電膜37aとシリコン膜18からなる第1のシリコン膜18aとからなる第1のゲート電極39aが形成される。一方、第2の活性領域10b上には、第2の下地膜及びAlを含有する高誘電体膜33Bからなる第2のゲート絶縁膜33bと、Alを含有する下層導電膜34Bからなる第2の下層導電膜34bと上層導電膜37からなる第2の上層導電膜37bとシリコン膜18からなる第2のシリコン膜18bとからなる第2のゲート電極39bが形成される。
【0120】
次に、図8(c)に示すように、第1及び第2のゲート電極39a,39bの側面上にそれぞれ第1及び第2のオフセットスペーサ20a,20bを形成した後、第1の活性領域10aにおける第1のゲート電極39aの側方下の領域にn型エクステンション領域21aを形成する一方、第2の活性領域10bにおける第2のゲート電極39bの側方下の領域にp型エクステンション領域21bを形成する。その後、第1のゲート電極39aの側面上に第1のオフセットスペーサ20aを介してL字状の第1の内側サイドウォール22a及び第1の外側サイドウォール23aからなる第1のサイドウォール24aを形成する一方、第2のゲート電極39bの側面上に第2のオフセットスペーサ20bを介してL字状の第2の内側サイドウォール22b及び第2の外側サイドウォール23bからなる第2のサイドウォール24bを形成する。その後、第1の活性領域10aにおける第1のサイドウォール24aの外側方下の領域にn型ソースドレイン領域25aを形成する一方、第2の活性領域10bにおける第2のサイドウォール24bの外側方下の領域にp型ソースドレイン領域25bを形成する。続いて、第1のゲート電極39aの第1のシリコン膜18a、第2のゲート電極39bの第2のシリコン膜18b、n型ソースドレイン領域25a及びp型ソースドレイン領域25bの各上部に、それぞれニッケルシリサイド等からなるシリサイド層26を形成する。このようにして、第1の活性領域10a上にN型MISFETが形成され、第2の活性領域10b上にP型MISFETが形成された半導体装置が得られる。
【0121】
なお、本実施形態では、高誘電体膜33及び下層導電膜34に第1の金属を含有させることによって、実効仕事関数をミッドギャップよりも低くする一方、高誘電体膜33及び下層導電膜34に第2の金属を含有させることによって、実効仕事関数をミッドギャップよりも高くするため、第1の金属及び第2の金属を含有していない高誘電体膜33及び下層導電膜34によってMISFETを構成した場合の実効仕事関数がミッドギャップ程度になるような形成条件で下層導電膜34を形成することが望ましい。
【0122】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、図6(a)に示す工程において、半導体基板10の上面全体を覆うように高誘電体膜33を形成する。その後、図6(b)に示す工程では、第1の保護膜30を選択的に除去するが高誘電体膜33及び下層導電膜34は除去されないので、素子分離領域11の上面は高誘電体膜33に覆われたままであり、よって、素子分離領域11の上面にアンダーカット部が形成されることを防止できる。従って、図8(a)に示す工程でシリコン膜18を堆積させた後、図8(b)に示す工程でそのシリコン膜をエッチングしても、素子分離領域11の上面にポリシリコンからなる残渣が発生することを防止できる。これにより、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、従来の半導体装置において不良の原因となっていたゲート電極材料の残渣が素子分離領域11の上面に発生することを抑制することができる。
【0123】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、図6(a)に示す工程では、半導体基板10の上面全体を覆うように高誘電体膜33を形成するので、第1の活性領域10aの上にも第2の活性領域10bの上にも高誘電体膜33が形成される。しかし、図6(d)に示す工程において、第1の金属を高誘電体膜33及び下層導電膜34のそれぞれのうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散させている。また、図7(d)に示す工程において、第2の金属を高誘電体膜33及び下層導電膜34のそれぞれのうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散させている。第1の金属は高誘電体膜33及び下層導電膜34への拡散によりN型MISFETの実効仕事関数を低くする金属であり、第2の金属は高誘電体膜33及び下層導電膜34への拡散によりP型MISFETの実効仕事関数を高くする金属である。よって、N型MISFETの実効仕事関数をP型MISFETの実効仕事関数よりも低くすることができる。また、このように第2の金属を高誘電体膜33及び下層導電膜34のそれぞれのうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散させているので、上記第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法に比べてP型MISFETの実効仕事関数を高くすることができ、よって、P型MISFETの閾値電圧を低くすることができる。
【0124】
その上、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、図8(b)に示すように、それぞれ同一の膜をパターニングして、第1のゲート絶縁膜33aと第2のゲート絶縁膜33b、第1の下層導電膜34aと第2の下層導電膜34b、第1の上層導電膜37aと第2の上層導電膜37b、第1のシリコン膜18aと第2のシリコン膜18bを形成している。そのため、それぞれの境界部において段差が生じないので、良好なゲート電極構造を得ることができる。
【0125】
以上をまとめると、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法では、N型MISFET及びP型MISFETのそれぞれの閾値電圧を低くすることができ、さらには、従来の半導体装置において不良の原因となっていたゲート電極材料の残渣を素子分離領域11の上面に発生させることなく半導体装置を製造することができる。
【0126】
なお、本実施形態では、第1のゲート電極39aは、第1の下層導電膜34a、第1の上層導電膜37aおよび第1のシリコン膜18aからなるとしたが、第1の上層導電膜37aは設けられていなくても良い。同じく、第2のゲート電極39bには、第2の上層導電膜37bは設けられていなくても良い。
【0127】
また、本実施形態では、Laを拡散させた後にAlを拡散させたが、Alを拡散させた後にLaを拡散させても良い。その場合には、図6(a)に示す工程を行った後、図7(b)〜図7(d)に示す工程を順次行い、その後、図6(b)〜図7(a)に示す工程を順次行い、それから、図8(a)〜図8(c)に示す工程を順次行えば良い。この場合、図7(b)に示す工程では、第2の保護膜35を、Laを含有する下層導電膜34A上に残存させるのではなく下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分の上に残存させればよい。また、図6(b)に示す工程では、第1の保護膜30を、下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分の上に残存させるのではなくAlを含有する下層導電膜上に残存させればよい。
【0128】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法として、上記第1の実施形態で記載した半導体装置の製造方法を用いても良い。すなわち、まず、半導体基板10上に、下地膜、高誘電体膜33及び下層導電膜34を順次形成し(工程(a))、次に、下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分の上に第1の材料膜27を選択的に形成する(工程(b))。例えば、下層導電膜34上に第1の材料膜27を形成した後、第1の材料膜27のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を除去することによって、第1の材料膜27のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を残存させる。その後、第1の金属を第1の材料膜27から下層導電膜34のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を通って高誘電体膜33のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分へ拡散させる(工程(c))。これにより、第1の活性領域10aの上には、Laを含有する高誘電体膜33A及びLaを含有する下層導電膜34Aが順次形成される。その後、第1の材料膜27を除去した後(工程(d))、今度は、下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分の上に第2の材料膜28を選択的に形成する(工程(i))。例えば、Laを含有する下層導電膜34A及び下層導電膜34上に第2の材料膜28を形成した後、第2の材料膜28のうち第1の活性領域10aの上に形成された部分を除去することによって、第2の材料膜28のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を残存させる。その後、第2の金属を第2の材料膜28から下層導電膜34のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分を通って高誘電体膜33のうち第2の活性領域10bの上に形成された部分へ拡散させる(工程(j))。これにより、第2の活性領域10bの上には、Alを含有する高誘電体膜33B及びAlを含有する下層導電膜34Bが順次形成される。その後、第2の材料膜28を除去し(工程(k))、図8(a)〜図8(c)に示す工程を順次行えばよい。なお、この場合であっても、第2の金属を拡散させた後に第1の金属を拡散させても良い。
【0129】
(その他の実施形態)
上記第1および第2の実施形態は、以下に示す形態であっても構わない。
【0130】
上記第1の実施形態における第1の下層導電膜14a及び第2の下層導電膜14bはどちらもTiN膜であるとしたが、TaN膜または炭化タンタル(TaC)膜であっても良い。同様に、上記第2の実施形態における第1の下層導電膜34a及び第2の下層導電膜34bはどちらもTaN膜であるとしたが、TiN膜またはTaC膜であってもよい。
【0131】
また、上記第1の実施形態における第1の上層導電膜17a及び第2の上層導電膜17bはどちらもTiN膜であるとしたが、TaN膜、TaC膜、ルテニウム膜又は窒化アルミニウムモリブデン膜であってもよい。同様に、上記第2の実施形態における第1の上層導電膜37a及び第2の上層導電膜37bはそれぞれTaN膜であるとしたが、TiN膜、TaC膜、ルテニウム膜又は窒化アルミニウムモリブデン膜であってもよい。
【0132】
第1および第2のシリコン膜18a,18bは、どちらもポリシリコンからなるとしたが、アモルファスシリコンからなってもよい。
【0133】
第1のゲート絶縁膜13a,33aは、それぞれ、第1の下地膜と第1の高誘電体膜とからなるとしたが、第1の下地膜を有していなくても良い。また、第2のゲート絶縁膜13b,33bは、それぞれ、第2の下地膜と第2の高誘電体膜とからなるとしたが、第2の下地膜を有していなくてよい。
【0134】
第1の材料膜15,27として、La膜を用いたが、La以外のランタノイド系元素、Sc、SrまたはMgなどの酸化膜を用いても良い。さらに、第1の材料膜15,27はLaなどのランタノイド系元素、Sc、SrまたはMgなどの金属を含有する膜であれば何でも良く、上記金属からなる膜であっても良い。第1の材料膜15,27が絶縁性を有していなくても、第1の金属または第1の材料膜15,27を構成する金属化合物が高誘電体膜13,33へ拡散したときに絶縁性を示せばよい。
【0135】
第2の材料膜28として、Al膜を用いたが、Ta膜を用いてもよい。また、第2の材料膜28は、AlまたはTaを含有する膜であれば何でも良く、Alからなる膜またはTaからなる膜であっても良い。第2の材料膜28が絶縁性を有していなくても、第2の金属または第2の材料膜28を構成する金属化合物が高誘電体膜33内に混入されたときに絶縁性を示せばよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、それぞれが最適な特性を有するゲート絶縁膜及びゲート電極を備えたN型MISFETならびにP型MISFETを備えるとともに従来の半導体装置において不良の原因となっていたシリコンの残渣が発生していない半導体装置を実現できるので、高誘電体膜からなるゲート絶縁膜と金属膜を有するゲート電極とを備えた半導体装置及びその製造方法などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】(a)〜(b)は、従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
【0138】
10 半導体基板
10a 第1の活性領域
10b 第2の活性領域
11 素子分離領域
12a p型ウェル領域
12b n型ウェル領域
13,33 高誘電体膜
13A,33A Laを含有する高誘電体膜
13a,33a 第1のゲート絶縁膜
13b,33b 第2のゲート絶縁膜
14,34 下層導電膜
14A,34A Laを含有する下層導電膜
14a,34a 第1の下層導電膜 (第1の導電膜)
14b,34b 第2の下層導電膜 (第2の導電膜)
15,27 第1の材料膜
16,31,36 レジストパターン
17,37 上層導電膜
17a,37a 第1の上層導電膜 (第3の導電膜)
17b,37b 第2の上層導電膜 (第4の導電膜)
18 シリコン膜
18a 第1のシリコン膜
18b 第2のシリコン膜
19a,39a 第1のゲート電極
19b,39b 第2のゲート電極
20a 第1のオフセットスペーサ
20b 第2のオフセットスペーサ
21a n型エクステンション領域
21b p型エクステンション領域
22a 第1の内側サイドウォール
22b 第2の内側サイドウォール
23a 第1の外側サイドウォール
23b 第2の外側サイドウォール
24a 第1のサイドウォール
24b 第2のサイドウォール
25a n型ソースドレイン領域
25b p型ソースドレイン領域
26 シリサイド層
28 第2の材料膜
30 第1の保護膜
30A Laを含有する第1の保護膜
33B Alを含有する高誘電体膜
34B Alを含有する下層導電膜
35 第2の保護膜
35A Alを含有する第2の保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域における第1の活性領域上に設けられた第1導電型の第1のトランジスタと、素子分離領域により前記第1の活性領域とは分離された前記半導体領域における第2の活性領域上に設けられた第2の導電型の第2のトランジスタとを備えた半導体装置であって、
前記第1のトランジスタは、
前記第1の活性領域の上に形成され、高誘電体材料と第1の金属とを含有する第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成され且つ導電材料と前記第1の金属とを含有する第1の導電膜と、前記第1の導電膜の上に形成された第1のシリコン膜とを有する第1のゲート電極とを備え、
前記第2のトランジスタは、
前記第2の活性領域の上に形成され、前記高誘電体材料を含有する第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され且つ前記導電材料を含有する第2の導電膜と、前記第2の導電膜の上に形成された第2のシリコン膜とを有する第2のゲート電極とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート絶縁膜及び前記第2の導電膜は、前記第1の金属を含有していないことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記第1のトランジスタは、前記第1の金属により実効仕事関数の値が変更されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の金属は、ランタノイド系元素、スカンジウム、ストロンチウムおよびマグネシウムの少なくとも一つであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート絶縁膜及び前記第2の導電膜は、第2の金属を含有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第2のトランジスタは、前記第2の金属により実効仕事関数の値が変更されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の半導体装置において、
前記第2の金属は、アルミニウムおよびタンタルの少なくとも一つであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極は、前記第1の導電膜と前記第1のシリコン膜との間に設けられた第3の導電膜を有し、
前記第2のゲート電極は、前記第2の導電膜と前記第2のシリコン膜との間に設けられ、前記第3の導電膜と同一の材料からなる第4の導電膜を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第3の導電膜及び前記第4の導電膜は、窒化チタン、窒化タンタル、炭化タンタル、ルテニウム又は窒化アルミニウムモリブデンからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の導電膜は、厚み方向の全領域に前記第1の金属を含有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極の膜厚は、前記第2のゲート電極の膜厚と同一であることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のトランジスタは、N型MISトランジスタであり、
前記第2のトランジスタは、P型MISトランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記高誘電体材料は、ハフニウム、ジルコニウムおよびイットリウムの少なくとも一つを含有する酸化物、酸窒化物またはシリケートであることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記導電材料は、窒化チタン、窒化タンタル又は炭化タンタルからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項1〜14のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の活性領域と前記第1のゲート絶縁膜における前記高誘電体材料との間に、酸窒化シリコンからなる第1の下地膜を有し、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の活性領域と前記第2のゲート絶縁膜における前記高誘電体材料との間に、酸窒化シリコンからなる第2の下地膜を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
半導体領域における第1の活性領域上に設けられた第1のトランジスタと、素子分離領域により前記第1の活性領域とは分離された前記半導体領域における第2の活性領域上に設けられた第2のトランジスタとを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記第1の活性領域及び前記第2の活性領域の上に、高誘電体材料からなる高誘電体膜および導電材料からなる下層導電膜を順次形成する工程(a)と、
前記下層導電膜のうち前記第1の活性領域上に形成された部分の上に、第1の金属を含有する第1の材料膜を形成する工程(b)と、
前記高誘電体膜及び前記下層導電膜のそれぞれのうち前記第1の活性領域上に設けられた部分に、前記第1の材料膜から前記第1の金属を拡散させる工程(c)と、
前記工程(c)の後、前記第1の材料膜を除去する工程(d)と、
前記工程(d)の後、前記下層導電膜の上にシリコン膜を形成する工程(e)と、
前記シリコン膜、前記下層導電膜及び前記高誘電体膜をエッチングする工程(f)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)の後で前記工程(e)の前に、前記下層導電膜上に上層導電膜を形成する工程(g)をさらに備え、
前記工程(e)では、前記上層導電膜上に前記シリコン膜を形成し、
前記工程(f)は、前記上層導電膜をエッチングする工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(a)の後で前記工程(b)の前に、前記下層導電膜のうち前記第2の活性領域上に形成された部分の上に第1の保護膜を形成する工程(h)をさらに備え、
前記工程(b)では、前記下層導電膜のうち前記第2の活性領域上に形成された部分の上には、前記第1の保護膜を介して前記第1の材料膜を形成し、
前記工程(d)は、前記第1の保護膜を除去する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項16〜18のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(a)の後で前記工程(e)の前に、
前記下層導電膜のうち前記第2の活性領域上に形成された部分の上に、第2の金属を含有する第2の材料膜を形成する工程(i)と、
前記高誘電体膜及び前記下層導電膜のそれぞれのうち前記第2の活性領域上に設けられた部分に、前記第2の材料膜から前記第2の金属を拡散させる工程(j)と、
前記工程(j)の後、前記第2の材料膜を除去する工程(k)とをさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(i)の前に、前記下層導電膜のうち前記第1の活性領域上に形成された部分の上に第2の保護膜を形成する工程(l)をさらに備え、
前記工程(i)では、前記下層導電膜のうち前記第1の活性領域上に形成された部分の上には、前記第2の保護膜を介して前記第2の材料膜を形成し、
前記工程(k)は、前記第2の保護膜を除去する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10199(P2010−10199A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164603(P2008−164603)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】