説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】貫通電極を有する半導体装置において、貫通電極によって被覆された貫通孔の内部を充填する保護層にクラック等が発生する不具合を防止する。
【解決手段】
貫通電極9を被覆するとともに、貫通孔6内を充填する保護層10を備える半導体装置1において、保護層10が複数層11、12からなり、複数層の保護層のうち最も半導体基板2の一面2aに近い層が、少なくとも貫通電極の底面9aと側面9bの交差部を被覆し、かつ、ポジ型感光性樹脂を用いて形成されることを特徴とする半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通電極を備える半導体装置に係り、特に、貫通電極が形成される貫通孔の内部を充填する保護層にクラック等が発生する不具合を防止し、保護層の耐久性を向上させる半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで受光素子やイメージセンサ素子等の回路素子を備える半導体装置においては、回路素子と配線層との接続にワイヤーボンディングが使用されていた。これに対し、最近、ワイヤーボンディングに代わり、貫通電極(Through-Silicon Via、TSV)を用いた半導体装置、特に、貫通電極を用いたウエハレベルパッケージが提案されてきている。
【0003】
貫通電極は、半導体基板に垂直に形成した貫通孔を、導電性を有する金属で被覆することによって電極として利用するものである。貫通電極の技術は、ワイヤーボンディングによって接続する従来の手法と比較して、配線距離を大幅に短縮できるため、半導体装置の高速化、省電力化、小型化に寄与する。
これら優れた特徴は、現在急速に進んでいる実装の高密度化や、情報処理速度の高速化が実現できるという点において非常に優位である。
【0004】
従来の貫通電極を用いた半導体装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。図8に従来の貫通電極を備えた半導体装置の一例を示す。この半導体装置101は、一面102aが絶縁部103をなす半導体基板102と、該半導体基板102の一面102a上に形成された回路素子104を主な構成要素としている。
【0005】
半導体基板102には、電極パッド105が半導体基板の他面102b側から露呈するように、貫通孔106が形成されている。半導体基板102の両面及び該貫通孔106の内部には絶縁層107が形成されており、該絶縁層上であって貫通孔の側面及び半導体基板の他面102b側には再配線層108及び貫通電極109が形成されている。該貫通電極109は、電極パッド105と電気的に接続されている。
【0006】
回路素子104は、配線部119によって電極パッド105と電気的に接続されている。さらに、電極パッド105は貫通電極109を介して再配線層108と電気的に接続されており、これにより、回路素子104は、半導体基板102の他面102b側との電気的接続が可能となっている。
【0007】
再配線層108及び貫通電極109は、主にCuから構成されている。また、再配線層108及び貫通電極109は、保護層110(オーバーコート層)で被覆されることによって、保護されている。
この保護層110を形成する際には、安価なネガ型感光性樹脂が多用される。このネガ型感光性樹脂は、貫通孔106の内部に埋め込まれると同時に、再配線層108を含む半導体基板102の他面102b側を被覆する。ここで使用されるネガ型感光性樹脂はドライフィルム状、またはワニス状の樹脂である。フィルムラミネートやスピンコートなどの手法によって、ネガ型感光性樹脂が貫通孔106の内部へと充填される。
【0008】
保護層110の形成後は、フォトリソグラフィによってはんだバンプ15を載せるCuパッドの開口部や、チップサイズにダイシングするためのスクライブラインを形成して、完成となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−152435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年の配線パターン等の微細化に伴い、貫通孔106のアスペクト比が大きくなるのに従って、従来の構造では、感光性樹脂の塗膜の際にボイド151ができてしまうという不具合があった。原因としては、アスペクト比が大きい貫通孔には感光性樹脂が入りにくく、貫通孔の内部を完全に樹脂で充填し難いことが考えられる。特に、貫通孔の内部を被覆する貫通電極109の底面109aと側面109bの交差部近傍において、ボイド151が発生し易い。
【0011】
また、感光性樹脂の露光に際に、露光光は貫通孔106の内部に到達しにくい。そのため、貫通孔の内部において、感光性樹脂の光化学反応が十分に進まず、未反応な感光成分が残留することにより、機械的強度の劣る保護層となり、クラック状の空隙152が発生してしまうという問題があった。
これら、ボイド151やクラック状の空隙152が保護層110に存在することによって、これらのボイドや空隙を起点にクラックが拡大しやすくなり、ひいては貫通電極109の断線が生じやすくなり、結果的に半導体装置101の信頼性が低下することとなる。
【0012】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、貫通電極を構成する貫通孔の内部を充填する保護層にクラック等が発生する不具合を防止する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に対し、本発明の以下の手段により解決を図る。
すなわち、本発明の半導体装置は、一面に電極パッドを備えた半導体基板と、前記半導体基板の他面から一面まで貫通し、前記電極パッドを露呈する貫通孔と、前記電極パッドの露呈部及び前記貫通孔の側面を被覆し、前記電極パッドと電気的に接続された貫通電極と、前記貫通電極を被覆するとともに、前記貫通孔内を充填する保護層と、を備える半導体装置において、前記保護層は、複数層からなり、前記複数層の保護層のうち最も前記半導体基板の一面に近い層は、少なくとも前記貫通電極の底面と前記貫通電極の側面との交差部を被覆し、かつ、ポジ型感光性樹脂を用いて形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の一面に電極パッドを形成する工程Aと、前記半導体基板の他面から一面にかけて貫通する貫通孔を形成し、前記電極パッドを露呈する工程Bと、前記電極パッドの露呈部及び前記貫通孔の側面を被覆する貫通電極を形成する工程Cと、ポジ型感光性樹脂を用いて前記貫通電極を被覆する工程Dと、
前記半導体基板の他面に光照射する工程Eと、少なくとも前記貫通電極の底面と前記貫通電極の側面との交差部に前記ポジ型感光性樹脂が残存するように、該ポジ型感光性樹脂を除去する工程Fと、次いで、前記貫通孔内に樹脂を充填する工程Gと、を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の半導体装置の製造方法は、前記工程D〜工程Fを複数回繰り返してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る半導体装置によれば、貫通電極を被覆するとともに、貫通孔内を充填する保護層を複数層からなる保護層とし、これら複数層からなる保護層
は、少なくとも前記貫通電極の底面と側面との交差部を被覆し、かつ、ポジ型感光性樹脂を用いて形成されるという構成とした。これにより、貫通孔の内部に保護層が確実に充填された半導体装置を提供することができる。また、露光光が届きにくい貫通孔の底面の隅部にポジ型感光性樹脂を充填することになるので、貫通孔の内部の感光性樹脂が露光されないことによる問題を排除できる。ゆえに、成型後において樹脂クラック等の不具合の発生を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る半導体装置の製造方法は、まず、光が届きにくい貫通電極の底部をポジ型感光性樹脂で被覆し、該ポジ型感光性樹脂を被覆した面に対して、光照射し、貫通電極の底面にポジ型感光性樹脂が残存するように樹脂を除去する構成とした。これにより、貫通孔の内部に保護層を確実に充填することができるとともに、露光光が届きにくい貫通電極の底面の隅部にポジ型感光性樹脂を充填することになるので、貫通孔の内部の感光性樹脂が露光されないことによる問題を排除できる。ゆえに、成型後において樹脂クラック等の不具合の発生を抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明の請求項3に係る半導体装置の製造方法によれば、上記ポジ型感光性樹脂の充填、光照射、樹脂除去の工程を複数回繰り返す構成とした。これにより、少しずつ貫通孔の内部に樹脂が充填されるため、より確実に貫通孔の内部に樹脂が充填され、充填不良が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の工程を順に説明する図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図8】従来の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態を示す断面図である。
図1において、符号1は半導体装置、2は半導体基板、3は絶縁部、4は回路素子、5は電極パッド、6は貫通孔、7は絶縁層、8は再配線層、9は貫通電極、20は支持基板、21は接合樹脂を示している。
【0019】
図1に示されているように、本発明の半導体装置1は、再配線層8及び貫通電極9、回路素子4等が設けられてなる半導体基板2が、接合樹脂21を介して支持基板20によって支持されている構造である。
半導体基板2は、例えば、シリコンやGaAs等の半導体基板である。半導体基板2の厚さは、例えば数百μm程度である。半導体基板2の一面2aは絶縁部3をなしている。
【0020】
半導体基板2は、シリコンウエハ等の半導体ウエハでもよく、半導体ウエハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップであってもよい。半導体基板2が半導体チップである場合には、まず、半導体ウエハの上に各種回路素子等を形成した後、チップ寸法に切断することで複数の半導体チップを得ることができる。
回路素子4は、例えばメモリ、IC、撮像素子、MEMS素子などの半導体機能素子などである。
【0021】
支持基板20としては、半導体基板2との接合時温度における熱膨張率が半導体基板2に近い部材を選択することが望ましい。具体的には、ガラス基板が好適であるが、回路素子2に光学特性が要求されない場合には透明である必要はない。また、支持基板20は必ずしも必要なものではなく、半導体基板2に要求される強度的に問題がなければ省略してもよい。
接合樹脂21としては、接着性及び電気絶縁性を有する材料からなるものが用いられる。例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブタン(BCB)樹脂などが望ましい。
【0022】
半導体基板2の一面2a側には電極パッド5が設けられている。電極パッド5の材質としては、AlやCu、アルミニウム−シリコン(Al−Si)合金、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金等の導電性に優れる材料が好適に用いられる。
電極パッド5は、配線部19を介して、半導体基板2の一面2a側にある回路素子4と電気的に接続されている。配線部19は、半導体基板2の一面2a上に配され、電極パッド5や回路素子4等を電気的に接続して回路をなす。配線部19の材質としては、電極パッド5と同様の材質を用いればよく、AlやCu、アルミニウム−シリコン(Al−Si)合金、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金等の導電性に優れる材料が好適である。
【0023】
半導体基板2には、電極パッド5が設けられた部分に、他面2bから一面2aにわたって貫通孔6が形成されている。よって、他面2b側から見ると、貫通孔6を通して電極パッド5の一部が露呈される。貫通孔6の口径は、例えば数十μm程度である。また、半導体基板2上に設けられる貫通孔6の数は、特に限定されない。
【0024】
また、半導体基板2の他面2b及び貫通孔5の側面には絶縁層7が設けられている。絶縁層7によって、半導体基板2は、基板の他面2b、及び貫通孔6の側面が絶縁性を有する。絶縁層7は、例えばSiO、SiN、又は樹脂膜から成る。
【0025】
さらに、貫通孔6の内部には、貫通孔6の側面および電極パッド5の露呈部を覆う貫通電極9が形成されている。半導体基板2の他面2b側には、再配線層8が形成されている。再配線層8の一端は貫通電極9と電気的に接続されている。貫通電極9は、電極パッド5と電気的に接続されている。貫通電極9および再配線層8は、導電性に優れた材料から形成することが好ましい。また貫通電極9は、電極パッド5との密着性に優れるとともに、電極パッド5の内部に拡散しにくい材料を用いれば、さらに好ましい。例えば、再配線層8及び貫通電極9としては、Cu、Al、Ni、Ag、Pb、Sn、Au、Co、Cr、Ti、TiW等の導体(各種の金属や合金等)、あるいはそれらの組み合わせが好適である。
【0026】
また、貫通電極9は、貫通孔6の側面の全体を被覆する必要はなく、例えば、貫通電極9が貫通孔6の一部に、半導体基板2の一面2aと他面2bとの間に亘って配された構成としてもよい。
【0027】
そして、半導体基板2の他面2b側及び貫通孔6の内部は、保護層10で被覆されている。前述したように、半導体基板2及び貫通孔6は、絶縁層7、及び再配線層8及び貫通電極9によって被覆されているため、保護層10は、これら絶縁層7、再配線層8及び貫通電極9を被覆するように形成されている。
本実施形態に係る半導体装置1は、この保護層10が、少なくとも貫通孔6の内部に配され、ポジ型感光性樹脂からなる第一の層11、つまり保護層10のうち最も半導体基板2の一面2aに近い層と、ネガ型感光性樹脂からなる第二の層12とから構成されていることを特徴としている。ポジ型感光性樹脂とは、露光部が薬液により除去されるような感光性樹脂であり、ネガ型感光性樹脂とは、露光部以外が薬液により除去されるような感光性樹脂である。
【0028】
図1に示すように、第一の層11は、貫通孔6の内部うち、半導体基板2の一面2a側、つまり、貫通孔6の底部側に配されており、貫通電極9の底面9a側を被覆している。その厚さは特に問わないが、少なくとも、貫通電極9の底面9aと側面9bとの交差部は、ポジ型感光性樹脂からなる第一の層11によって被覆されている。
第一の層11には、例えばポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの様々な樹脂材料を適用することができる。
第二の層12は、第一の層11を覆うように、貫通孔6の内部及び半導体基板2の他面2b側を被覆している。第二の層12は、少なくとも再配線層8の接続部が露呈されるようにパターニングされ、この接続部に半球状のはんだバンプ15が形成される。第二の層12には、ポジ型、ネガ型を問わず、どちらのタイプの感光性樹脂でも適用可能である。第二の層12には、例えば、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの様々な樹脂材料を用いることができる。
【0029】
本実施形態に係る半導体装置1は、貫通孔内を充填する保護層を複数層からなる保護層とした。これにより、貫通孔の内部に保護層が確実に充填された半導体装置を提供することができる。
さらに、本実施形態に係る半導体装置1は、少なくとも貫通電極9の底面と側面の交差部を、ポジ型感光性樹脂からなる第一の層11で被覆した構成である。ポジ型感光性樹脂は、感光反応の大小に関わらず、所望の熱硬化処理を経た後においては安定した強度の樹脂層を得ることができる。ゆえに、光が届きにくい貫通孔内部において、少なくとも貫通電極9の底面と側面の交差部にポジ型感光性樹脂からなる第一の層11を配することによって、従来、貫通電極9の底面と側面の交差部において発生し易かった保護層10のクラック等の発生を抑制することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、第二の層12をネガ型感光性樹脂からなるものとしたが、これに限ることはなく、ポジ型感光性樹脂としてもよい。また、半導体基板2の他面2b側を保護し、かつ、再配線層8の一部を露呈させるようにパターニングが可能な樹脂であれば、どのような樹脂でも使用可能である。
【0031】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2は、断面図を用いて本発明の半導体装置の製造方法の工程を順に説明する図である。なお、図2については、支持基板及び接合樹脂を省略している。
【0032】
以下、各工程ごとに順に説明する。まず、再配線層8及び貫通電極9まで形成済みの半導体基板2を用意する段階までを図2(a)を参照して説明する。
(1)まず、回路素子4を備えた半導体基板2を用意し、半導体基板2の一面2aに電極パッド5及び配線部19を形成する(工程A)。
【0033】
(2)半導体基板2の他面2bから電極パッド5に到達する貫通孔6を形成する(工程B)。この貫通孔6は、半導体基板2の他面2b側から、電極パッド5が露呈するように形成される。貫通孔6の直径、断面形状は、特に限定されるものではなく、半導体基板2の厚さや所望の用途に応じて適宜設定され、所望の配線に応じて適宜決めることができる。本例では、半導体基板2の厚さは100μmであり、貫通孔6の孔径は80μmである。
【0034】
貫通孔6の形成には、例えばDRIE(Deep-Reactive Ion Etching)法、ウェットエッチング法、マイクロドリルなどによる機械加工法、光励起電解研磨法等を用いることができる。
【0035】
(3)貫通孔6の側面及び半導体基板2の他面2b上に絶縁層7を形成した後、電極パッド5の露呈部、貫通孔6の側面を被覆する貫通電極9、及び半導体基板2の他面2bを被覆する再配線層8を形成する(工程C)。電極パッド5と絶縁層7条の再配線層8及び貫通電極9は電気的に接続されている。
絶縁層7は、例えばSiOをプラズマCVD等により成膜することで形成される。再配線層8及び貫通電極9の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えばスパッタリング法、蒸着法、めっき法等、あるいはこれらの2つ以上の方法の組み合わせが挙げられる。また、再配線層8及び貫通電極9のパターニングには、フォトリソグラフィ技術が好適に用いられる。
【0036】
また、本例においては、貫通電極9が、貫通孔6の全面を被覆するようにして形成された例を説明しているが、電極パッド5と半導体基板2の他面2b側の貫通電極9とが電気的に接続されていれば、これに限ることはない。例えば、貫通孔6の側面に線状に形成された貫通電極9としてもよい。
【0037】
以上の工程A〜工程Cを経て、図2(a)に示されるような、再配線層8及び貫通電極9まで形成した半導体基板2を用意することができる。
【0038】
(4)ポジ型感光性樹脂11aを半導体基板2の他面2b側から塗工し、再配線層8及び貫通電極9を被覆するとともに、貫通孔6の内部にポジ型感光性樹脂11aを充填する(工程D)。
ポジ型感光性樹脂11aは、容易に貫通孔6の内部まで樹脂が入り込むことができるように、低粘度の液状樹脂が好ましい。具体的には、粘度50〜300cPのポジ型感光性樹脂が適用できる。
ポジ型感光性樹脂11aの塗布方法としては、貫通孔6の内部まで樹脂が入り込むことができる方法が好ましい。例えばスピンコート塗布法、スプレー塗布法等が好ましい。その他、真空圧下でポジ型感光性11aを塗布した後、半導体基板2を大気圧環境下へ戻すことによって、貫通孔6の内部へ差圧充填する手法を採用することもできる。
【0039】
(5)半導体基板2の他面2bに露光光60を照射する(工程E)。露光光60には感光性樹脂の感光波長を含む光を発するものが用いられる。最適な感光波長は樹脂材料により異なるが、一般的にはg、h、i線と呼ばれる紫外線領域の光が好ましい。
【0040】
(6)図2(c)に示すように、少なくとも貫通電極9の底面9aの側面9bとの交差部にポジ型感光性樹脂11aが残存するように、ポジ型感光性樹脂の現像を行う(工程F)。この現像によって、貫通孔6の半分程度の深さまで現像され、半導体基板2の他面2b上のポジ型感光性樹脂11aは消失し、かつ、貫通電極9の底面9a付近のポジ型感光性樹脂11aは残存する。用いる現像液は、感光性樹脂の種類に応じて定めることができる。
次いで、この状態で熱処理を行い、ポジ型感光性樹脂の余分な感光基成分、溶剤成分等の揮発、及び熱硬化反応を生じさせる。
【0041】
(7)ネガ型感光性樹脂12aによって半導体基板2の他面2bの被覆、及び貫通孔6の内部の充填を行なう(工程G)。
次いで、図2(d)に示すように、ネガ型感光性樹脂12aを塗布する。ネガ型感光性樹脂12aの塗布方法としては、スピンコート塗布法、フィルムラミネート法、スプレー塗布法等を採用することができる。更には、真空圧下でネガ型感光性樹脂12aを塗布した後、半導体基板2を大気圧環境下へ戻すことによって、貫通孔6の内部へ差圧充填する手法を採用することもできる。
【0042】
次いで、ネガ型の感光性樹脂12aをフォトリソグラフィ技術を用いてパターン加工する。具体的には、図2(d)に示すように、ネガ型感光性樹脂12aにフォトマスク70を通して露光光60を照射し、マスクパターンをネガ型感光性樹脂12aに転写する。
次いで、図2(e)に示すように、ネガ型感光性樹脂12aを現像して不要な感光性樹脂を除去する。残した感光性樹脂12に対して、キュア、及びデスカムを施す。
最後に、はんだバンプ15を形成して、図1に示すような半導体装置1を得ることができる。
【0043】
本発明の半導体基板1は、上述したような方法で製造することができる。このような方法で製造することにより、光が届きにくい貫通孔6の底部においてポジ型感光性樹脂11aが充填されるため、貫通孔6の底部が確実に充填される。
【0044】
また、上述した製造方法においては、ポジ型感光性樹脂11aの塗布を一度のみとしているが、これに限ることはなく、ポジ型感光性樹脂11aの塗布を複数回繰り返し行うこともできる。つまり、工程D〜工程Fを複数回実施した後に、ネガ型感光性樹脂12aを塗布するという製造方法としてもよい。
このように、ポジ型感光性樹脂11aの塗布、露光、感光性樹脂の除去を複数回繰り返し行うことによって、少しずつ貫通孔6の内部に樹脂が充填されるため、充填不良が発生しにくくなる。
【0045】
また、第二の層は、ネガ型感光性樹脂に限ることはなく、ポジ型感光性樹脂としてもよい。また、半導体基板2の他面2b側を保護し、かつ、再配線層8の一部を露呈させるようにパターニングが可能な樹脂であれば、どのような樹脂でも使用可能である。
【0046】
次に、本発明に係るその他の実施形態を図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態に係る半導体装置のその他の実施形態の一例を示す段面図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
【0047】
図3に示す実施形態は、保護層10bが、ポジ型感光性樹脂からなる第一の層11b、第二の層13b、及び、第一の層11bと第二の層13bとの間に配置された、第三の層12bとから構成されていることを特徴としている。第三の層12bは、第一の層11bの形成後において、好適な成膜方法で成膜することによって形成することができる。
この第三の層12bは、第一の層11b及び第二の層13bの両方の樹脂に対して接着性を有する材料によって形成されている。第三の層12bは樹脂に限らず、金属層であってもよい。このような構成にすることによって、第一の層11bと第二の層13bとの接着性が高くない場合に、第三の層12bを両層の間に介在させることによって、第一の層11bと第二の層13bとの接着性を高めることができる。
【0048】
また、図4に示すように、保護層10cを構成する第一の層11cは、貫通電極9の底面9aの中心付近に形成されず、貫通電極の底面9aと側面9bの交差部のみを覆うように形成されていてもよい。この構成においては、最も充填しにくい貫通電極9の底面と側面の交差部のみを、少量の第一の層11Cで充填し、次いで第二の層12Cを貫通孔内に充填することにより、貫通孔内にボイドが発生すること無く確実に充填することができる。
【0049】
また、図5に示すように、保護層10dを構成する第一の層11dは、貫通孔6の中心点を含み、半導体基板2に垂直な任意の面に沿う断面において、対称形をなす必要はない。つまり、露光によって、残存する第一の層11dが非対称形をなすことも可とする。
【0050】
また、図6に示すように、保護層10eを構成する第一の層11eは、その中心部が上方に盛り上がるような凸形状であってもよい。
【0051】
さらに、図7に示すように、保護層10fは、機能に合わせて複数層を使用することができる。図7に示した例においては、保護層10fは、第一の層11f〜第四の層14fで構成されている。
このように、複数の樹脂層で保護層10fを構成した場合、それぞれの層の目的に応じた機能を持たせることが可能となる。例えば、第一の層11f、第三の層13fには、貫通孔への充填が容易な材料を適用し、第二の層12fと第四の層14fには再配線を保護する保護膜としての機能や、パターン加工性に優れた材料を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、貫通電極を備えた半導体装置及びその製造方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…半導体装置、2…半導体基板、3…絶縁部、4…回路素子、5…電極パッド、
6…貫通孔、7…絶縁層、8…再配線層、9…貫通電極、10…保護層、11…第一の層、12…第二の層、19…配線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に電極パッドを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の他面から一面まで貫通し、前記電極パッドを露呈する貫通孔と、
前記電極パッドの露呈部及び前記貫通孔の側面を被覆し、前記電極パッドと電気的に接続された貫通電極と、
前記貫通電極を被覆するとともに、前記貫通孔内を充填する保護層と、
を備える半導体装置において、
前記保護層は、複数層からなり、
前記複数層の保護層のうち最も前記半導体基板の一面に近い層は、少なくとも前記貫通電極の底面と側面の交差部を被覆し、かつ、ポジ型感光性樹脂を用いて形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板の一面に電極パッドを形成する工程Aと、
前記半導体基板の他面から一面にかけて貫通する貫通孔を形成し、前記電極パッドを露呈する工程Bと、
前記電極パッドの露呈部及び前記貫通孔の側面を被覆する貫通電極を形成する工程Cと、
ポジ型感光性樹脂を用いて前記貫通電極を被覆する工程Dと、
前記半導体基板の他面に光照射する工程Eと、
少なくとも前記貫通電極の底面と側面の交差部に前記ポジ型感光性樹脂が残存するように、該ポジ型感光性樹脂を除去する工程Fと、
次いで、前記貫通孔内に樹脂を充填する工程Gと、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程D〜工程Fを複数回繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−222596(P2011−222596A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87257(P2010−87257)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】