説明

半導体装置及びマイクロフォン

【課題】半導体素子を実装する部材と信号入出力手段を設けている部材とが別部材となったパッケージ構造を有する半導体装置の構造を簡略にする。
【解決手段】マイクロフォン41のパッケージを、カバー44と基板45によって構成する。カバー44に設けた凹部46内にはマイクチップ42と回路素子43を納めて凹部46の天面に接着固定する。凹部46の外側においてカバー44の下面には複数個のボンディング用パッド48を設ける。回路素子43にボンディングワイヤ51aの一端を接続し、その他端をボンディング用パッド48に接続する。基板45は信号入出力手段として信号入出力端子58を有しており、基板45の上面には信号入出力端子58と導通した接続電極54がボンディング用パッド48と対向して設けられている。基板45とカバー44は、接続電極54とボンディング用パッド48を導電性接着剤やハンダなどの導電性部材60により接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及びマイクロフォンに関する。具体的には半導体素子をパッケージ内に納めた半導体装置に関するものである。また、マイクチップ(音響センサ)をパッケージ内に納めたマイクロフォンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)技術を利用して製造されるマイクロフォンは、一般に基板とカバーによって構成されたパッケージ内にMEMSマイクチップを納めた構造を有する。このマイクロフォンには、カバーにマイクチップを実装したものと基板にマイクチップを搭載したものとがある。また、パッケージ内に音響振動を導入するための音響孔もカバーに開口される場合と、基板に開口される場合とがある。
【0003】
マイクロフォンには、バックチャンバ(ダイアフラムに対して音響孔と反対側の空間)の容積が大きいほど感度が高くなるという特徴がある。そのため、カバーに音響孔があいている場合には、この音響孔を覆うようにしてカバーの内面にマイクチップを実装する方が、マイクロフォンの感度を高くするうえで好ましい。
【0004】
基板に音響孔があいている場合も、音響孔を覆うようにして基板にマイクチップを実装すれば、バックチャンバの容積を大きくすることができる。しかし、基板の音響孔を覆うようにして基板にマイクチップを実装した場合には、マイクロフォンの基板を機器の回路基板に実装するときに発生するハンダヒュームのためマイクチップが汚染されたり、マイクチップのダイアフラムにスティックなどの不具合が引き起こされることがある。そのため、基板に音響孔があいている場合にも、カバーにマイクチップを実装することがある。
【0005】
こうしてカバーにマイクチップを実装するようにしたマイクロフォンとしては、例えば特許文献1に開示されたものがある。図1は、特許文献1に開示されたマイクロフォンの断面図である。特許文献1に記載されたマイクロフォン11では、カバー12に設けた凹部内にマイクチップ13(MEMS microphone)とICチップ14を実装している。マイクチップ13は、カバー12にあけた音響孔20を覆うように配置されている。一方、基板16には、信号入出力手段である入出力配線17が形成されており、基板16の上面には入出力配線17と導通した接続電極18が設けられている。カバー12は基板16の上面に固定されており、マイクチップ13及びICチップ14は、カバー12と基板16からなるパッケージ内に納められている。
【0006】
このマイクロフォン11においては、ボンディングワイヤ15aによってマイクチップ13とICチップ14が接続されている。また、カバー12の内面には、その上面(天面)から側面下端にかけて複数本の内部導体配線19が設けられており、マイクチップ13はボンディングワイヤ15bによって内部導体配線19の端のボンディング用パッド19aに接続され、ICチップ14もボンディングワイヤ15cによって内部導体配線19の端のボンディング用パッド19aに接続されている。そして、カバー12を基板16の上面に取り付ける際、各内部導体配線19を基板16の接続電極18に接触させることにより、マイクチップ13やICチップ14を入出力配線17に導通させている。
【0007】
しかし、特許文献1のマイクロフォン11では、凹部内においてその上面から側面下端にかけて内部導体配線19を設けなければならず、内部導体配線19の加工が面倒である。このようにカバーにマイクチップを実装する場合には、マイクチップを基板に接続させるための配線が複雑になり、マイクロフォンの製造コストが高くつくとともに信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
また、マイクロフォン11のような構造では、カバー12の箱状に窪んだ凹部内でボンディング用パッド19aにワイヤボンドを行わなければならないので、凹部の縁にワイヤボンド用の治具(キャピラリ)が入るスペースが必要となる。そのため凹部内に余分なスペースが必要となり、パッケージが大型化する。
【0009】
一方、特許文献2に開示されたマイクロフォン21(condenser microphone)では、パッケージをカバー22、サイド基板29及び基板28の3つの部材に分けている。カバー22にはマイクチップ23(microphone element)とICチップ24が実装され、マイクチップ23はカバー22の音響孔22aを覆うように配置されている。マイクチップ23とICチップ24はボンディングワイヤ26aによって接続され、カバー22に設けたボンディング用パッド25とマイクチップ23及びICチップ24の間はそれぞれボンディングワイヤ26b、26cによって電気的に接続されている。基板28の上面には信号入出力手段である外部接続端子27が設けられ、基板28の下面には接続電極33が設けられ、外部接続端子27と接続電極33はスルーホール32によって接続されている。また、カバー22と基板28の間の空間の周囲はサイド基板29によって囲まれている。そしてカバー22と基板28の間にサイド基板29を挟み込み、スルーホール30及びコイルスプリング31の上端と下端をそれぞれ接続電極33とボンディング用パッド25に圧接させることにより、ボンディング用パッド25を外部接続端子27に導通させている。
【0010】
このような構造のマイクロフォン21では、カバー22の上にマイクチップ23とICチップ24を実装し、マイクチップ23及びICチップ24をボンディング用パッド25にワイヤボンドした後、カバー22の上にサイド基板29と基板28を重ねてボンディング用パッド25と外部接続端子27を導通させている。したがって、サイド基板29に妨げられることなくワイヤボンド作業を容易に行うことができ、パッケージ内部の空間も小さくできる。
【0011】
しかし、特許文献2のような構造では、パッケージを構成する部材点数が多くなるとともに、サイド基板29内にスルーホール30やコイルスプリング31といった構造を作製しなければならず、パッケージ構造が複雑化してマイクロフォン21のコストが高くつく。また、パッケージ内の空間が大きくならなくても、サイド基板29の壁厚を小さくできないので、パッケージの外形サイズを小さくできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0283988号明細書(US 2008/0283988 A1)
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0058826号明細書(US 2008/0058826 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、マイクチップを実装している部材(カバー)とマイクロフォンの信号入出力手段を設けている部材(基板)とが別部材となったマイクロフォンでは、従来においては、半導体装置を実装した面と同じ面にボンディング用パッドを設けていたので、パッケージの構造又は配線構造が複雑になっていた。
【0014】
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、半導体素子(マイクチップ)を実装する部材と信号入出力手段を設けている部材とが別部材となったパッケージ構造を有する半導体装置(マイクロフォン)の構造を簡略にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る半導体装置は、パッケージを構成する第1の部材及び第2の部材と、前記第1の部材に形成された凹部の内部に納めて前記第1の部材に実装された半導体素子と、前記第2の部材に設けた信号入出力手段と、前記第1の部材の、前記凹部の外部又は前記凹部内の開口部近傍に設けたボンディング用パッドと、前記第1の部材の、前記第2の部材と対向する面に設けられ、かつ、前記ボンディング用パッドと導通した第1の接合部と、前記第2の部材の、前記第1の接合部と対向する位置に設けられ、かつ、前記信号入出力手段と導通した第2の接合部と、前記半導体素子に一端を接続され、前記ボンディング用パッドに他端を接続されたワイヤ配線と、前記第1の接合部と前記第2の接合部を接合させる導電性部材とを備えている。
【0016】
本発明の半導体装置においては、前記第1の部材の凹部の外部又は凹部内の開口部近傍にボンディング用パッドを設けているので、第1の部材に実装した半導体素子とボンディングワイヤをワイヤ配線で結び、第1の部材の第1の接合部と第2の部材の第2の接合部を接合させるだけで簡単に半導体素子を第2の部材に接続することができる。よって、半導体装置のパッケージにおける配線構造を簡略にすることができ、半導体装置を低コスト化できる。しかも、ボンディング用パッドが第1の部材の凹部の外部又は凹部内の開口部近傍に設けられているので、凹部内にワイヤボンド用の治具を挿入する必要がないので、凹部の面積を小さくでき、パッケージを小さくすることができる。
【0017】
本発明に係る半導体装置のある実施態様は、前記第2の部材が前記凹部と対向する面に窪みを有している。かかる実施態様によれば、パッケージ内の空間が高くなるので、ボンディング用パッドに接続されたワイヤ配線が第2の部材に接触しにくくなり、ワイヤ配線によるショートを防ぐことができる。
【0018】
本発明に係る半導体装置の別な実施態様は、前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部を同じ位置に設けたものである。かかる実施態様によれば、ボンディング用パッドと第1の接合部を設けるための面積を小さくでき、半導体装置の小型化に寄与する。
【0019】
本発明に係る半導体装置のさらに別な実施態様は、前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部とを別な位置に設けたものである。かかる実施態様によれば、ワイヤ配線が接続されたボンディング用パッドと別な位置にハンダや導電性接着剤などの導電性部材が適用されるので、導電性部材によってワイヤ配線の接続部分が影響を受けるのを避けることができる。
【0020】
本発明に係る半導体装置のさらに別な実施態様においては、前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部が、前記第1の部材の同じ方向を向いた面に設けられていてもよい。例えば、ボンディング用パッドと第1の接合部が同じ水平面上に設けられていてもよく、同じ傾斜面上に設けられていてもよい。
【0021】
本発明に係る半導体装置のさらに別な実施態様においては、前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部は、前記第1の部材の異なる方向を向いた面に設けられていてもよい。例えば、ボンディング用パッドと第1の接合部が湾曲した曲面上に設けられていてもよい。また、いずれか一方が水平面上に設けられ、他方が傾斜面上に設けられていてもよい。
【0022】
本発明に係る半導体装置のさらに別な実施態様は、前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部が、前記凹部の底面と平行な同一平面内に位置している。かかる実施態様によれば、ボンディング用パッドにおけるワイヤボンドの方向と、凹部の底面に実装された半導体素子に対するワイヤボンドの方向とが同じ方向になるので、ワイヤボンドの工程が容易になる。また、例えばボンディング用パッドと第1の接合部の画像認識が容易になるなど、半導体装置の組立精度が向上する。
【0023】
本発明に係る半導体装置のさらに別な実施態様は、前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部が、前記凹部の底面と平行な異なる平面内に位置している。かかる実施態様によれば、ボンディング用パッドにおけるワイヤボンドの方向と、凹部の底面に実装された半導体素子に対するワイヤボンドの方向とが同じ方向になるので、ワイヤボンドの工程が容易になる。また、ボンディング用パッドを第2の部材から若干離すことができるので、ワイヤ配線が第2の部材に接触しにくくなる。
【0024】
本発明に係る半導体装置のさらに別な実施態様は、前記第1の接合部の外周縁が、その内側の領域よりも高くなったものである。かかる実施態様によれば、ハンダや導電性接着剤などの導電性部材が第1の接合部から外に漏れにくくなる。
【0025】
また、本発明の半導体装置における第1の部材の材料としては、銅貼り積層板、ガラスエポキシ、セラミック、プラスチック、金属、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つの材料又はこれらの複合材料などを用いることがっできる。同様に、第2の部材の材料としても、銅貼り積層板、ガラスエポキシ、セラミック、プラスチック、金属、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つの材料又はこれらの複合材料などを用いることができる。さらに、この半導体装置は、前記第1の部材及び前記第2の部材が、外部の電磁ノイズを遮断するための電磁シールド機能を備えていてもよい。
【0026】
第1の部材の第1の接合部と第2の部材の第2の接合部とを接合するには、ハンダ、導電性樹脂、導電性テープ又はろう材のうちの少なくとも1つからなる導電性部材を用いるのが望ましい。これらの導電性部材を用いることにより、第1の部材と第2の部材の機械的接合と電気的接合とを同時に行うことができる。さらに、第1の部材と第2の部材の接合強度や密封性を高めたい場合には、非導電性樹脂又は非導電性テープを併用してもよい。
【0027】
本発明に係る半導体装置は、2個以上の半導体素子を収容していてもよい。たとえば、前記半導体素子としてセンサと回路素子を備え、前記回路素子又は前記センサに一端を接続された前記ワイヤ配線の他端を前記ボンディング用パッドのうちのあるものに接続し、前記回路素子又は前記センサに一端を接続された別な前記ワイヤ配線の他端を前記ボンディング用パッドのうちの別なものに接続していてもよい。
【0028】
また、本発明の半導体装置はマイクロフォンに適用することができる。たとえば、前記センサがマイクチップで、前記第1の部材がパッケージのカバーで、前記第2の部材がパッケージの基板であるマイクロフォンにおいて、前記カバーに音響孔が開口されていて、前記マイクチップは前記音響孔を覆うようにして前記カバーに取り付けられていてもよい。このようなマイクロフォンはトップポート型のマイクロフォンとなるので、バックチャンバの容積を大きくでき、マイクロフォンを高感度化できる。また、前記センサがマイクチップで、前記第1の部材がパッケージのカバーで、前記第2の部材がパッケージの基板であるマイクロフォンであって、前記基板に音響孔が開口されていてもよい。この場合には、ボトムポート型のマイクロフォンとなるが、マイクチップはカバーに設けられているので、音響孔から入ったハンダヒュームでマイクチップが汚染されたり、マイクチップのダイアフラムがスティックを起こすのを防止することができる。
【0029】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、特許文献1に開示されたマイクロフォンを示す断面図である。
【図2】図2は、特許文献2に開示されたマイクロフォンを示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1によるマイクロフォンの長手方向に沿った断面図である。
【図4】図4は、実施形態1のマイクロフォンの幅方向に沿った断面図(図3のX−X線断面図)である。
【図5】図5(a)及び(b)は、実施形態1のマイクロフォンに用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。図5(c)は実施形態1の変形例の一部を示す平面図である。図5(d)は実施形態1の別な変形例の一部を示す平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態2によるマイクロフォンの幅方向に沿った断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、実施形態2のマイクロフォンに用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態3によるマイクロフォンの長手方向に沿った断面図である。
【図9】図9は、実施形態3のマイクロフォンの幅方向に沿った断面図である。
【図10】図10(a)及び(b)は、実施形態3のマイクロフォンに用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態4によるマイクロフォンの長手方向に沿った断面図である。
【図12】図12は、実施形態4のマイクロフォンの幅方向に沿った断面図である。
【図13】図13(a)及び(b)は、実施形態4のマイクロフォンに用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態5によるマイクロフォンの長手方向に沿った断面図である。
【図15】図15は、実施形態5のマイクロフォンの幅方向に沿った断面図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態6によるマイクロフォンの長手方向に沿った断面図である。
【図17】図17は、実施形態6のマイクロフォンの幅方向に沿った断面図である。
【図18】図18は、本発明の実施形態7によるマイクロフォンの長手方向に沿った断面図である。
【図19】図19は、実施形態7のマイクロフォンの幅方向に沿った断面図である。
【図20】図20は、実施形態7のマイクロフォンの異なる箇所における幅方向に沿った断面図である。
【図21】図21(a)及び(b)は、実施形態7のマイクロフォンに用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。
【図22】図22は、本発明の実施形態8による半導体装置の幅方向に沿った断面図である。
【図23】図23(a)及び(b)は、実施形態8の半導体装置に用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。
【図24】図24(a)〜(e)は、実施形態8による半導体装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図25】図25(a)〜(c)は、実施形態8による半導体装置の製造工程を示す概略断面図であって、図24(e)に続く工程を示す。
【図26】図26(a)〜(d)は、実施形態8による半導体装置の製造工程を示す概略断面図であって、図25(a)〜(c)に続く工程を示す。
【図27】図27は、本発明に係る実施形態9による半導体装置の幅方向に沿った断面図である。
【図28】図28(a)及び(b)は、実施形態9の半導体装置に用いられているカバーの平面図と基板の平面図である。
【図29】図29は、本発明に係る実施形態10による半導体装置の幅方向に沿った断面図である。
【図30】図30(a)〜(c)は、実施形態10による半導体装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図31】図31(a)〜(c)は、実施形態10による半導体装置の製造工程を示す概略断面図であって、図30(c)に続く工程を示す。
【図32】図32(a)〜(e)は、本発明に係る実施形態11による半導体装置の製造工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更することができる。
【0032】
(第1の実施形態)
以下、図3、図4及び図5を参照して本発明の実施形態1によるトップポート型のマイクロフォン41を説明する。図3はマイクロフォン41の長手方向に沿った断面を示す断面図である。図4は図3のX−X線に沿った幅方向の断面を示す断面図である。このマイクロフォン41は、MEMS技術を用いて製造されるMEMSマイクロフォンである。
【0033】
マイクロフォン41は、カバー44と基板45からなるパッケージ内にマイクチップ42と回路素子43を納めたものである。図5(a)は、マイクチップ42と回路素子43を実装したカバー44(第1の部材)の下面図、図5(b)は基板45(第2の部材)の上面図である。また、図5(a)には、楕円部分のソルダーレジストを除去した状態を併せて表している。
【0034】
図3及び図4に示すように、カバー44は銅貼り積層板やガラスエポキシ、セラミック、プラスチック、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つの材料又はこれらの複合材料からなる2枚の絶縁性基板を積層することによってできている。絶縁性材料によって形成されたカバー44には、マイクチップ42及び回路素子43を納めるための箱状をした凹部46を備えている。凹部46の天面、側壁面及び凹部46の外部におけるカバー44の下面には、そのほぼ全体に電磁シールド用の導電層47が形成されている。また、図5(a)に示すように、凹部46の外部すなわちカバー44の下面においては、凹部46の近傍に複数のボンディング用パッド48(第1の接合部を兼ねている。)が形成されている。導電層47及びボンディング用パッド48は金属膜であるが、ボンディング用パッド48の周囲は導電層47から分離されており、各ボンディング用パッド48と導電層47は互いに絶縁されている。
【0035】
マイクチップ42はMEMS素子(音響センサ)であり、例えばSi基板の開口部に音響振動感知用の薄膜のダイアフラムを設けたものである。回路素子43は、ASICやICチップ等の素子である。図3に示すように、マイクチップ42と回路素子43は、凹部46内に納められ、それぞれの裏面を接着剤によって凹部46の天面に固定されている。また、マイクチップ42は、カバー44にあけられた音響孔44aに合わせて設置され、音響孔44aを覆っている。よって、マイクチップ42は、音響孔44aがフロントチャンバとなり、凹部46内の空間がバックチャンバとなるので、広いバックチャンバ容積を持つことができ、マイクチップ42を高感度化させることができる。
【0036】
図5(a)に示すように、マイクチップ42の表面に設けた端子42aと回路素子43の表面に設けた端子43aは、ボンディングワイヤ50によって接続されている。回路素子43の表面に設けた端子43bにはボンディングワイヤ51a(ワイヤ配線)の一端が接続され、ボンディングワイヤ51aの他端はボンディング用パッド48に接続されている。また、回路素子43の表面に設けたグランド端子43cにはボンディングワイヤ51bの一端が接続され、ボンディングワイヤ51bの他端はカバー44の下面で導電層47のボンディング部47aに接続されている。なお、図5(a)では、マイクチップ42はカバー44のボンディング用パッドに接続していないが、回路構成などに応じてマイクチップ42もカバー44のボンディング用パッド48や導電層47にボンディングワイヤで結線されていてもよい。カバー44の下面(基板45と対向する面)は、ボンディング用パッド48と導電層47の外周部及びボンディングワイヤ51bを接続する箇所を除いて、ソルダーレジスト52により覆われている。
【0037】
図3及び図4に示すように、基板45は多層配線基板、銅貼り積層板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、プラスチック基板、カーボンナノチューブの基板からなる。基板45の上面には、電磁シールド用の導電層53と接続電極54(第2の接合部)が互いに分離して絶縁された状態で設けられている。また、基板45の上面はソルダーレジスト55で覆われており、接続電極54の一部(ボンディング用パッド48と対向する部分)と導電層53の外周部及びボンディング部47aに対向する領域だけがソルダーレジスト55から露出している。
【0038】
基板45の下面にはグランド接続端子56が設けられており、グランド接続端子56はバイアホール57を通じて導電層53につながっている。また、基板45の下面には信号入出力用の信号入出力端子58が設けられており、信号入出力端子58はバイアホール59を通じて接続電極54につながっている。
【0039】
カバー44は、図3及び図4に示すように、凹部46を下方に向けた状態で基板45の上面に重ねられ、導電性部材60によって対向するボンディング用パッド48と接続電極54どうしが接合される。導電性部材60としては、導電性接着剤やハンダ、導電性両面粘着テープ、溶接用のろう材のいずれか一つを用いてもよく、あるいはこれらのうちの複数の材料を併用してもよい。また、ソルダーレジスト52から露出した導電層47の外周部とソルダーレジスト55から露出した導電層53の外周部も導電性部材61によって全周にわたって、あるいはほぼ全周にわたって接合される。導電性部材61としては、導電性接着剤やハンダ、導電性両面粘着テープ、溶接用のろう材のいずれか一つを用いてもよく、あるいはこれらのうちの複数の材料を併用してもよい。カバー44と基板45を貼り合わせるために、さらに非導電性樹脂や非導電テープも併用してもよい。従って、回路素子43の端子43bは、ボンディングワイヤ51a、導電性部材60、バイアホール59などを通って信号入出力端子58に接続されている。また、回路素子43のグランド端子43cはボンディングワイヤ51b、導電性部材61、バイアホール57などを通ってグランド接続端子56に接続されている。また、カバー44の導電層47は導電性部材61によって基板45の導電層53に接合されており、グランド接続端子56をアースラインに接続することによりマイクロフォン41は導電層47、53によって外部の電磁ノイズから遮蔽される。
【0040】
このようなマイクロフォン41によれば、ボンディング用パッド48が上になるようにカバー44をひっくり返し、カバー44の表面に位置するボンディング用パッド48やボンディング部47aにボンディングワイヤ51a、51cをワイヤボンドすることができる。よって、特許文献1の場合のように凹部46内でワイヤボンドする必要がなく、簡単にマイクロフォン41の配線作業を行うことができ、マイクロフォン41のコストを安価にすることができる。また、凹部46内にワイヤボンド用の治具を挿入する必要がないので、凹部46の面積を小さくすることができ、ひいてはマイクロフォン41を小型化することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の実施形態2によるマイクロフォン71の幅方向に沿った断面図である。マイクロフォン71の長手方向に沿った断面は、図3と同様に表される。また、図7(a)は、マイクチップ42及び回路素子43を実装されたカバー44の下面図、図7(b)は基板45の上面図である。
【0042】
この実施形態では、カバー44の下面において導電層47と絶縁された電極板72を設けてあり、電極板72の中央部をソルダーレジスト52で覆うことによって電極板72を2つの領域に分割している。ソルダーレジスト52で分割された電極板72の一方の領域はボンディングワイヤ51aの端をボンディングするためのボンディング用パッド48となっており、電極板72の他方の領域は導電性部材60によって接続電極54(第2の接合部)と接合させるための接合パッド73(第1の接合部)となっている。そして、ボンディングワイヤ51aの端はボンディング用パッド48に接合され、接合パッド73が導電性部材60によって接続電極54に接合され、電極板72を介してボンディングワイヤ51aが接続電極54に導通させられる。
【0043】
実施形態1のように、ボンディングワイヤ51aを接合したボンディング用パッド48を導電性部材60によって接合させる場合では、ボンディングワイヤ51aが極細の細線である場合には、導電性部材60であるハンダの熱や導電性樹脂の硬化収縮によってボンディングワイヤ51aの接合端が外れるといった悪影響を受けるおそれがある。これに対し、実施態様2によれば、導電性部材60がボンディングワイヤ51aの接合端に触れにくいので、ボンディングワイヤ51aがボンディング用パッド48から外れたりするおそれがなく、マイクロフォン71の信頼性が向上する。
【0044】
(第3の実施形態)
図8は本発明の実施形態3によるマイクロフォン81の長手方向に沿った断面図、図9はマイクロフォン81の幅方向に沿った断面図である。また、図10(a)は、マイクチップ42及び回路素子43を実装されたカバー44の下面図、図10(b)は基板45の上面図である。
【0045】
このマイクロフォン81では、基板45の上面の周囲に周壁部82を立ち上げてあり、基板45の上面には周壁部82で囲まれた窪み83が形成されている。カバー44は、その下面を周壁部82の上面に載置するようにして基板45の上に重ねられ、導電層47の外周部は導電性部材61によって周壁部82の上面の外周部に位置する導電層53に接合される。また、接続電極54は窪み83内に設けられており、厚く塗布もしくは盛った導電性部材60によって接合パッド73に接続される。
【0046】
このような実施形態によれば、マイクロフォン81の外形の高さを高くすることなく内部の空間(凹部46及び窪み83)の高さを高くできるので、ボンディングワイヤ50、51a、51bを配線するためのスペースが広くなり、これらのボンディングワイヤ50、51a、51bが垂れ下がっても基板45に接触しにくくなり、マイクロフォン81の信頼性が向上する。
【0047】
(第4の実施形態)
図11は本発明の実施形態4によるマイクロフォン91の長手方向に沿った断面図、図12はマイクロフォン91の幅方向に沿った断面図である。また、図13(a)は、マイクチップ42及び回路素子43を実装されたカバー44の下面図、図13(b)は基板45の上面図である。
【0048】
このマイクロフォン91もボンディング用パッド48と接合パッド73を分けたものであり、さらにマイクロフォン91では、カバー44の凹部46内の開口部近傍に段落し部92を形成している。すなわち、凹部46の下端部(カバー44の下面近傍)において、凹部46の側壁面下端部を切削し、カバー44の下面よりも若干高い位置に、カバー44の下面と平行な面すなわち段落し部92を設けている。そして、図12に示すように、段落し部92からカバー44の下面にかけて屈曲した電極板72を設けるとともに電極板72の中央部を52で覆って2つの露出領域に分け、段落し部92においてソルダーレジスト52から露出した領域をボンディング用パッド48とし、カバー44の下面においてソルダーレジスト52から露出した領域を接合パッド73としている。そして、段落し部92に位置するボンディング用パッド48にボンディングワイヤ51aの端を接続し、接合パッド73を導電性部材60によって基板45の接続電極54に接合している。
【0049】
また、ボンディングワイヤ51bを接続するためのボンディング部47aも、段落し部92に設けている。
【0050】
かかる実施形態によれば、ボンディングワイヤ51a、51bを接続するためのボンディング用パッド48やボンディング部47aが段落し部92に設けられているので、基板から若干離れた位置でボンディング用パッド48及びボンディング部47aにボンディングワイヤ51a、51bを接続することができる。よって、ボンディングワイヤ51a、51bが垂れ下がっても基板45に接触しにくくなり、マイクロフォン91の信頼性を向上させることができる。
【0051】
(第5の実施形態)
図14は本発明の実施形態5によるマイクロフォン101の長手方向に沿った断面図、図15はマイクロフォン101の幅方向に沿った断面図である。
【0052】
このマイクロフォン101では、カバー44としてプリモールド樹脂やプラスチックなどで予め成形された樹脂成形品、あるいはセラミック焼成品などを用いている。このような実施形態によれば、カバー材料の選択の幅が広がるので、例えばマイクチップ42のSi基板と線膨張係数の差が小さな材料を選択してマイクチップ42に歪みが生じにくくすることができ、マイクロフォン101の精度や信頼性を向上させることができる。
【0053】
(第6の実施形態)
図16は本発明の実施形態6によるマイクロフォン111の長手方向に沿った断面図、図17はマイクロフォン111の幅方向に沿った断面図である。
【0054】
このマイクロフォン111では、金属板をプレス成型して凹部46を形成したカバー44を用いている。この金属製のカバー44は、図16に示すように外周部下面を導電性部材61によって基板45の導電層53に接合される。従って、カバー44自体が導電層53と導通し、カバー44全体が電磁シールドの機能を有する。また、図17に示すように、基板45の接続電極54の露出領域と対向する箇所において、カバー44の下面には絶縁層112が形成され、絶縁層112の下にボンディング用パッド48が設けられている。したがって、ボンディング用パッド48は絶縁層112によってカバー44と絶縁されている。
【0055】
このような実施形態によれば、カバー44に別途電磁シールド用の導電層47を設ける必要がないので、構造をより簡単にすることができ、コストの削減を図ることができる。
【0056】
なお、図14及び図15の実施形態5と図16及び図17の実施形態6では、実施形態1と同様な構造を有するものを示したが、実施形態2のようにボンディング用パッド48と接合パッド73とに分離したもの、実施形態3のように基板45に窪み83を設けたもの、実施形態4のようにカバー44に段落し部92を設けたものなども可能である。
【0057】
(第7の実施形態)
図18は本発明の実施形態7によるマイクロフォン121の長手方向に沿った断面図、図19はマイクロフォン121の幅方向に沿った断面図である。図20はマイクロフォン121の音響孔の位置における幅方向に沿った断面図である。また、図21(a)は、マイクチップ42及び回路素子43を実装されたカバー44の下面図、図21(b)は基板45の上面図である。
【0058】
このマイクロフォン121は、基板45に音響孔45aをあけたボトムポート型のマイクロフォンである。音響孔45aの開口位置以外については実施形態1と同じであるので、対応する箇所には実施形態1と同一の符号を付すことによって説明を省略する。
【0059】
このボトムポート型のマイクロフォン121では、基板45に音響孔45aが開口しているので、マイクロフォン121を適用機器の回路基板などに実装するとき、音響孔45aからハンダヒュームなどがパッケージ内に入り込むおそれがある。そのため、マイクチップ42はハンダヒュームで汚染されたり、ダイアフラムがスティックを起こしたりしないよう、マイクチップ42は音響孔45aから離してカバー44の下面に実装している。
【0060】
このマイクロフォン121でも、回路素子43に接続されたボンディングワイヤ51a、51bの他端は、カバー44の下面に設けられていて導電性部材60、61によって基板45と接合されるボンディング用パッド48やボンディング部47aに接続するようにしているので、他端のワイヤボンドを容易に行えるようになり、マイクロフォン121のコストが安価になるとともにマイクロフォン121の小型化が図れる。
【0061】
なお、実施形態7としては、実施形態1のマイクロフォンにおいて音響孔を基板に設けたものを示したが、ボンディング用パッド48と接合パッド73とに分離した実施形態2のマイクロフォン、基板45に窪み83を設けた実施形態3のマイクロフォン、カバー44に段落し部92を設けた実施形態4のマイクロフォン、カバー44として樹脂成形品あるいはセラミックス焼成品などを用いている実施形態5のマイクロフォン、金属製のカバー44を用いている実施形態6のマイクロフォンなどにおいて基板に音響孔を開口するようにしてもよい。
【0062】
(第8の実施形態)
本発明のようなパッケージ構造の用途はマイクロフォンに限らず、種々のセンサやIC回路などを収納した半導体装置にも用いることができる。
【0063】
以下、図22〜図26を参照して本発明の実施形態8を説明する。半導体装置131は、カバー44と基板45からなるパッケージ内にセンサ134と回路素子43を納めたものであって、実施形態8の半導体装置131では、カバー44に銅張り積層板やガラスエポキシ基板、紙エポキシ基板などを用いている。図22は本発明の実施形態8による半導体装置131の断面図である。図23(a)はセンサ134と回路素子43を実装したカバー44(第1の部材)の平面図、図23(b)は導電性部材60、61を塗布した基板45(第2の部材)の下面図である。なお、図面では基板45の下面にカバー44を取り付けているが、これは製造工程を示唆するものであって、使用状態においては半導体装置131は任意の向きであってよい。
【0064】
図22及び図23(a)に示すように、カバー44は、センサ134及び回路素子43を納めるための箱状をした凹部46を備えている。このカバー44は、製造方法において述べるように、貫通孔をあけた銅貼り積層板と底面基板によって構成されている。凹部46は底面が塞がっており、上面が開口している。凹部46の底面、側壁面及び凹部46の外部におけるカバー44の上面には、そのほぼ全体に電磁シールド用の導電層47が形成されている。また、凹部46の外部すなわちカバー44の上面においては、凹部46の近傍に複数のボンディング用パッド48が形成されている。導電層47及びボンディング用パッド48は金属膜によって形成されているが、ボンディング用パッド48の周囲は導電層47から分離されており、ボンディング用パッド48の周囲にフォトレジスト等の絶縁材料からなる絶縁部132を額縁状に埋め込んで各ボンディング用パッド48と導電層47を相互に絶縁している。
【0065】
センサ134は音響センサや加速度センサ、流量センサなどのMEMS素子であり、回路素子43はICチップやASIC等の素子である。センサ134と回路素子43は、凹部46内に納められ、それぞれの下面を接着剤によって凹部46の底面に固定されている。センサ134の上面に設けた端子と回路素子43の上面に設けた端子は、ボンディングワイヤ50によって接続されている。また、回路素子43の上面に設けた端子にはボンディングワイヤ51の一端がボンディングされ、ボンディングワイヤ51の他端はボンディング用パッド48にボンディングされている。なお、図23(a)では回路素子43の近傍にボンディング用パッド48を配置しているが、センサ134とボンディング用パッド48の間もボンディングワイヤでつなぐ場合には、適宜センサ134の近傍にもボンディング用パッド48を設けてもよい。
【0066】
図22及び図23(b)に示すように、基板45は多層配線基板からなり、基板45内には信号入出力用の入出力配線133を設けている。基板45の下面においては、ボンディング用パッド48と対向させて接続電極54が設けられており、接続電極54及びその周囲を除くほぼ全面には電磁シールド用の導電層53が設けられている。接続電極54及び導電層53は金属膜によって形成されており、接続電極54の周囲は導電層53と分離している。接続電極54及び導電層53の外周部を除く領域において、導電層53の下面はソルダーレジスト55によって覆われており、接続電極54と導電層53の間にもソルダーレジスト55が埋まっている。また、接続電極54は、それぞれ基板45内の入出力配線133に導通している。
【0067】
基板45は、図22に示すようにカバー44の上面に重ねられ、導電性接着剤やハンダ、導電性両面粘着テープ、溶接用のろう材などの導電性部材60によって対向するボンディング用パッド48と接続電極54どうしが接合されている。また、導電層53の、基板外周部においてソルダーレジスト55から露出した領域は、導電性接着剤やハンダ、導電性両面粘着テープ、溶接用のろう材などの導電性部材61によって導電層47の外周部に接合されている。従って、回路素子43は、ボンディングワイヤ51と導電性部材60などを通って入出力配線133に接続される。また、導電層47は導電性部材61によって導電層53と導通しているので、導電層53をグランド電位に接続することにより半導体装置131の内部が電磁シールドされる。
【0068】
(製造方法)
つぎに、図24(a)〜(e)、図25(a)〜(c)及び図26(a)〜(d)によって上記半導体装置131の製造工程を説明する。図24(a)に示すものはカバー44の原材料であって、上下両面に銅箔142a、142bを貼った例えば2層の銅貼り積層板141である。この上面の銅箔142aは、図24(b)に示すように、ボンディング用パッド48を形成しようとする領域の周囲をエッチング除去することによって分離溝144を形成され、ボンディング用パッド48を形成しようとする領域にアイランド143が形成される。ついで、銅貼り積層板141の上面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて、分離溝144の部分にだけフォトレジストが残るようにフォトレジストをパターニングする。この結果、図24(c)に示すように、硬化したフォトレジストによりアイランド143の周囲に突枠状に絶縁部132が形成される。
【0069】
この後、図24(d)に示すように、ルーターやドリルを用いて、凹部46となる領域に合わせて銅貼り積層板141に貫通孔145をあける。そして、両面粘着テープ147によって、銅貼り積層板141の下面全体に底面基板146を貼り付け、底面基板146によって貫通孔145の下面を塞ぎ、銅貼り積層板141に凹部46を形成する。なお、底面基板146は硬質の基板に限らず、耐熱性のあるテープやシートでもよい。
【0070】
こうして銅貼り積層板141に底面基板146を貼って凹部46を形成した後、図24(e)に示すように、凹部46の内面及び銅貼り積層板141の上面全体に蒸着、スパッタリング等の方法により金属膜148を成膜する。
【0071】
絶縁部132の高さが銅箔142aの厚みよりも大きいので、絶縁部132を覆う金属膜148は、図25(b)に示すように、周囲よりも盛り上がる。ついで、図25(a)に示すように、絶縁部132の上で盛り上がっている金属膜148をダイサー149で水平に切削し、あるいはグラインダーで研磨して絶縁部132の上面を露出させる。このとき、図25(c)に示すように、絶縁部132の部分を平らに削らないで周囲よりも突出させたまま残し、絶縁部132の両側面に金属膜148の立上り部148aを形成する。
【0072】
こうして絶縁部132の上面を覆っている金属膜148を除去して絶縁部132の上面を露出させると、図26(a)に示すように、絶縁部132で囲まれた領域の金属膜148がボンディング用パッド48となり、それ以外の領域が電磁シールド用の導電層47となる。しかも、絶縁部132とその両側面の金属膜148は上に突出しているので、カバー44と基板45を導電性部材60、61で接合させたとき、ボンディング用パッド48と接続電極54を接合する導電性部材60や導電層47と導電層53を接合する導電性部材61が絶縁部132を越えて流れ出し、回路をショートさせるのを防ぐことができる。
【0073】
こうしてカバー44が出来上がったら、図26(b)に示すように、凹部46内にセンサ134と回路素子43を納めて底面を接着固定し、センサ134と回路素子43をボンディングワイヤ50でつなぎ、さらに回路素子43とボンディング用パッド48をボンディングワイヤ51で結線する。
【0074】
この後、別途作製された図23(b)のような基板45の下面外周部に導電性部材61を塗布するとともに接続電極54に導電性部材60を塗布し、この基板45を図26(c)に示すようにカバー44の上に重ね、図26(d)のように導電性部材60でボンディング用パッド48と接続電極54を接合させ、導電性部材61で導電層47と導電層53を接合させる。
【0075】
このような半導体装置131によれば、ボンディングワイヤ51をカバー44のボンディング用パッド48にワイヤボンドするのに凹部46内で行う必要がなく、カバー44の上面で行うことができるので、凹部46の面積を小さくすることができ、ひいては半導体装置131を小型化することができる。また、一端を回路素子43に接続されたボンディングワイヤ51の他端はカバー44の上面に設けたボンディング用パッド48に直接接続されているので、凹部46内に導体配線などを設ける必要がなくて半導体装置131の構造を簡略にすることができ、パッケージのコストを安価にできる。
【0076】
(第9の実施形態)
図27は、本発明の実施形態9による半導体装置151を示す断面図である。また、図28(a)及び(b)は、実施形態9の半導体装置151に用いられるカバー44の平面図と基板45の平面図である。
【0077】
実施形態8の場合には、カバー44の上面に設けたボンディング用パッド48にボンディングワイヤ51の先を接続しているので、ボンディングワイヤ51が下に垂れると凹部46の上端部角で導電層47に触れてショートするおそれがある。このような場合には、図27及び図28に示すように、ボンディングワイヤ51の通過位置において、凹部46の側壁とカバー44の上面とが交差していた角部においてカバー44と導電層47を切り欠いて切欠き部152を形成してもよい。
【0078】
切欠き部152は、例えばルーターやドリルで銅貼り積層板141及び導電層47を切削加工して形成すればよい。
【0079】
このような半導体装置151によれば、図27に示すように、ボンディングワイヤ51が下に垂れても導電層47との間でショートしにくくなる。
【0080】
(第10の実施形態)
本発明の実施形態10による半導体装置161は、成形品のカバー44を用いた実施形態である。図29は、この半導体装置161を示す断面図である。カバー44は、非導電性樹脂からなる樹脂成形品であって、その上面には凹部46が成形されている。このカバー44の凹部内面及び上面には電磁シールド用の導電層47とボンディング用パッド48が形成されている。凹部46内の底面にはセンサ134及び回路素子43が実装されており、回路素子43とボンディング用パッド48の間はボンディングワイヤ51によって結線されている。
【0081】
パッケージ用の基板45は多層配線基板からなり、基板45内に電磁シールド用の導電層53が設けられており、基板45の上面には信号入出力手段となる外部接続端子163が設けられている。また、基板45の下面には、バイアホール165によって外部接続端子163と導通した接続電極54がボンディング用パッド48と対向するように設けてあり、バイアホール166によって導電層53と導通したグランド電極162が外周部に設けられている。
【0082】
基板45はカバー44の上面に重ねられ、ボンディングワイヤ51を接続されているボンディング用パッド48は導電性部材60によって接続電極54と接続され、導電層47は導電性部材61によってグランド電極162に接続されている。
【0083】
(製造方法)
図30(a)〜(c)及び図31(a)〜(c)は、実施形態10の半導体装置161の製造工程を示す概略断面図である。以下、これらの図に従って半導体装置161の製造工程を説明する。
【0084】
図30(a)に示すものは、非導電性樹脂によって成形されたカバー44であって、その上面には箱状の凹部46が凹設されており、凹部46の外部においてボンディング用パッド48を形成しようとする領域を囲むようにして額縁状突起168が設けられている。図30(b)に示すように、このカバー44の凹部46内面全体及び凹部46の外の上面全体には、金属メッキを施すことによって金属膜148が形成される。ついで、図30(c)のように、ダイサー149やグラインダーよって額縁状突起168を削り取り、額縁状突起168の突出していた領域で部分的に金属膜148を除去してカバー44を露出させる。この結果、図31(a)に示すように、額縁状突起168で囲まれていた領域にはボンディング用パッド48が形成され、それ以外の領域には導電層47が形成される。また、ボンディング用パッド48の周囲は導電層47と分離されており、額縁状突起168のあった箇所に露出しているカバー44によってボンディング用パッド48と導電層47とは互いに絶縁されている。
【0085】
この後、図31(b)のように凹部46内にセンサ134及び回路素子43を納めて接着剤で固定し、センサ134と回路素子43をボンディングワイヤ50で接続する。また、ボンディングワイヤ51によって回路素子43とボンディング用パッド48を結線する。
【0086】
ついで、カバー44の上に基板45を重ね、導電性接着剤やハンダなどの導電性部材60によってボンディング用パッド48と接続電極54を接続し、導電性部材やハンダなどの導電性部材61によって導電層47とグランド電極162の外周部どうしを接続する。
【0087】
上記のように予めカバー44の上面に額縁状突起168を設けておく方法によれば、金属膜148を成膜した後に額縁状突起168の部分を切削又は研磨して額縁状突起168を除去するだけで簡単に導電層47と金属膜148を簡単にパターニングすることができる。
【0088】
(第11の実施形態)
図32は、本発明の実施形態11による半導体装置171とその製造工程を示す。この半導体装置171は、カバー44として金属板を用いたものである。この半導体装置171の製造工程では、まず図32(a)に示すように、銅板や銅箔、アルミ板、アルミ箔、鉄板などの金属板をプレス成形してカバー44に凹部46を形成する。ついで、図32(b)に示すように、カバー44のフランジ172の上面に絶縁膜173を形成する。なお、図32(a)と図32(b)の順序は逆にし、金属板の縁に絶縁膜173を設けてから金属板をプレス成形してもよい。
【0089】
この後、図32(c)のように、絶縁膜173の上にボンディング用パッド48を設けることで、カバー44と絶縁されたボンディング用パッド48を設ける。そして、図32(d)に示すように、凹部46内の底面にセンサ134と回路素子43を実装して回路素子43とセンサ134をボンディングワイヤ50で接続し、回路素子43とボンディング用パッド48をボンディングワイヤボンディングワイヤ51で接続する。
【0090】
最後に、カバー44の上に基板45を重ねてカバー44のボンディング用パッド48と基板45の接続電極54を導電性部材60で接合させ、またカバー44のフランジ172と基板45の導電層53を導電性部材61で接合する。
【0091】
なお、上記実施形態では、マイクロフォン又はセンサと回路素子をパッケージ内に収納したが、マイクロフォン又はセンサ、あるいは回路素子だけを単体でパッケージ内に収納しても差し支えない。
【符号の説明】
【0092】
41、71、81、91、101、121 マイクロフォン
42 マイクチップ
43 回路素子
44 カバー
45 基板
44a、45a 音響孔
46 凹部
47 導電層
48 ボンディング用パッド
50、51、51a、51b ボンディングワイヤ
53 導電層
54 接続電極
56 グランド接続端子
58 信号入出力端子
60、61 導電性部材
72 電極板
73 接合パッド
82 周壁部
83 窪み
92 段落し部
131、151、161、171 半導体装置
134 センサ
152 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージを構成する第1の部材及び第2の部材と、
前記第1の部材に形成された凹部の内部に納めて前記第1の部材に実装された半導体素子と、
前記第2の部材に設けた信号入出力手段と、
前記第1の部材の、前記凹部の外部又は前記凹部内の開口部近傍に設けたボンディング用パッドと、
前記第1の部材の、前記第2の部材と対向する面に設けられ、かつ、前記ボンディング用パッドと導通した第1の接合部と、
前記第2の部材の、前記第1の接合部と対向する位置に設けられ、かつ、前記信号入出力手段と導通した第2の接合部と、
前記半導体素子に一端を接続され、前記ボンディング用パッドに他端を接続されたワイヤ配線と、
前記第1の接合部と前記第2の接合部を接合させる導電性部材と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の部材は、前記凹部と対向する面に窪みを有していることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部とが同じ位置にあることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部とは、別な位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部は、前記第1の部材の同じ方向を向いた面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部は、前記第1の部材の異なる方向を向いた面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部は、前記凹部の底面と平行な同一平面内に位置することを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ボンディング用パッドと前記第1の接合部は、前記凹部の底面と平行な異なる平面内に位置することを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の接合部の外周縁が、その内側の領域よりも高くなっていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の部材は、銅貼り積層板、ガラスエポキシ、セラミック、プラスチック、金属、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つの材料又はこれらの複合材料によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2の部材は、銅貼り積層板、ガラスエポキシ、セラミック、プラスチック、金属、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つの材料又はこれらの複合材料によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1の部材及び前記第2の部材は、外部の電磁ノイズを遮断するための電磁シールド機能を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記導電性部材は、ハンダ、導電性樹脂、導電性テープ又はろう材のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1の部材と第2の部材は、非導電性樹脂又は非導電性テープを併用して接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体素子としてセンサと回路素子を備え、
前記回路素子又は前記センサに一端を接続された前記ワイヤ配線の他端を前記ボンディング用パッドのうちのあるものに接続し、前記回路素子又は前記センサに一端を接続された別な前記ワイヤ配線の他端を前記ボンディング用パッドのうちの別なものに接続したことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記請求項15のセンサがマイクチップで、前記第1の部材がパッケージのカバーで、前記第2の部材がパッケージの基板であるマイクロフォンであって、
前記カバーに音響孔が開口されていて、前記マイクチップは前記音響孔を覆うようにして前記カバーに取り付けられていることを特徴とするマイクロフォン。
【請求項17】
前記請求項15のセンサがマイクチップで、前記第1の部材がパッケージのカバーで、前記第2の部材がパッケージの基板であるマイクロフォンであって、
前記基板に音響孔が開口されていることを特徴とするマイクロフォン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−188330(P2011−188330A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52643(P2010−52643)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】