説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】
支持基板上に形成された第1導電層と、層間絶縁層上に形成された第2導電層とをコンタクトホールによって電気的に接続した半導体装置において、安価に、前記第1導電層と第2導電層とのコンタクト不良を抑制した半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
開口部内における第1導電層102の状態は、開口部端部付近102bよりも中心部付近102cにおいて表面粗さがより大きい、もしくは導電性は薄膜の粒径がより大きくなるように形成されている。従って、コンタクトホール104における第1導電層102と第2導電層105との電気的接続が良好となってコンタクト不良の発生を抑制可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に係り、特に、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下ではTFTと記載することもある。)やその他の素子を接続する層間絶縁層に設けられた開口部(以下ではコンタクトホールと記載することもある。)近傍の構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TFT基板、例えば、ドライビング用のTFT基板においては、上下配線を分離絶縁する層間絶縁層に設けられたコンタクトホールを介してスイッチング用TFT素子に接続されている。また、表示装置の場合には、さらに画素電極がコンタクトホールを介してドライビング用のTFT基板に接続されている。
【0003】
このようなコンタクトホールを設けた半導体装置では、コンタクト不良の発生確率の低減が課題であり、コンタクトホールの形状が工夫されている。例えば、特許文献1には、フォトリソグラフィーの工夫により側壁のテーパー角度が60°以下である形状のコンタクトホールを形成することが開示されている。また、特許文献2では、層間絶縁層材料の特性を利用して、側壁の曲率半径が連続的に変化する曲面状形状のコンタクトホールを形成することが開示されている。さらに、特許文献3では、コンタクトホール形成時のエッチング方法の工夫により多重プロファイル形状のコンタクトホールを形成することが開示されている。しかしながら、これらの特許文献に開示されたコンタクトホールの形成方法においては、フォトリソグラフィー法と乾式、湿式エッチング法を組み合わせる方法が用いられている。このように、コンタクトホールの形成方法として、フォトリソグラフィー法と乾式、湿式エッチング法を用いると、フォトマスクが必要であったり、露光、現像、焼成、剥離といった多段階の工程が必要となり、高コストな製造プロセスになってしまう問題を招く。
【0004】
このような問題を改善するために、フォトリソグラフィーを用いないコンタクトホールの形成方法が提案されている。例えば、特許文献4においては、フォトリソグラフィーを用いない方法として、レーザ光照射により層間絶縁層を除去してコンタクトホールを形成する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献4においては、フォトリソグラフィーを用いずにレーザ光照射によって、支持基板上に選択的に形成された導電性光吸収層上の層間絶縁層を除去してコンタクトホールを形成することが開示されているが、このコンタクトホールで露出される導電性光吸収層の表面特性を変化させることについては記載がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであって、支持基板上に形成された第1導電層と、層間絶縁層上に形成された第2導電層とをコンタクトホールによって電気的に接続した半導体装置において、安価に、前記第1導電層と第2導電層とのコンタクト不良を抑制した半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持基板上に形成される導電性薄膜からなる第1導電層と、当該第1導電層上に積層された層間絶縁層と、当該層間絶縁層上に積層された第2導電層の積層構成を有し、前記層間絶縁層に設けられて前記第1導電層の表面の一部を露出する開口部を介して前記第1導電層と前記第2導電層とが電気的に接続された構造を有する半導体装置において、
前記第1導電層は開口部領域内に複数の粒界が含まれる状態で成膜され、
前記開口部で露出された開口部領域において、前記第1導電層の表面粗さ、もしくは前記第1導電層の粒径が、開口部端部付近よりも中央部付近において大きい状態で前記第1導電層と前記第2導電層とを電気的に接続したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の半導体装置において、
前記層間絶縁層の開口部の側縁をテーパー面としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、支持基板上に導電性薄膜からなる第1導電層を形成する工程と、当該第1導電層上に層間絶縁層を積層する工程と、当該層間絶縁層に前記第1導電層の表面の一部を露出する開口部を形成する工程と、前記層間絶縁層及び前記開口部に露出された第1導電層の表面に第2導電層を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法において、
前記層間絶縁層に形成される開口部は、レーザ光照射によってレーザ光照射部分の層間絶縁層を除去して形成されるとともに、当該開口部で露出された開口部領域において、前記第1導電層の表面粗さ、もしくは前記第1導電層の粒径が、開口部端部付近よりも中央部付近において大きくなるように変形させたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
レーザ光照射によってレーザ光照射部分の層間絶縁層が除去されて前記層間絶縁層に開口部が形成された後、
前記層間絶縁層表面にクリーニングローラを接触させることにより、当該層間絶縁層を清掃することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持基板上に形成された第1導電層と、層間絶縁層上に形成された第2導電層を開口部(コンタクトホール)によって電気的に接続された半導体装置において、安価に、前記第1導電層と第2導電層とのコンタクト不良を抑制した半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による一実施形態に係る半導体装置のコンタクトホール部分の概略構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明による一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す概略断面図で、(a)は第1導電層の作製工程を示す断面図、(b)は層間絶縁層の作製工程を示す断面図、(c)はレーザ光加工工程を示す断面図、(d)はコンタクトホールの作製工程を示す断面図、(e)は第2導電層の作製工程を示す断面図である。
【図3】実施例1で得られた半導体装置のコンタクトホール部分の走査型電子顕微鏡(SEM)像写真である。
【図4】実施例1で得られた半導体装置のコンタクトホール部分の断面SEM像である。
【図5】比較例によるコンタクトホールの作製工程を示す断面図で、(a)は第1導電層の作製工程を示す断面図、(b)は層間絶縁層の作製工程を示す断面図、(c)はフォトレジスト層形成工程を示す断面図、(d)は露光工程を示す断面図、(e)は現像工程を示す断面図、(f)はドライエッチング工程を示す断面図、(g)はフォトレジスト層除去工程を示す断面図、(h)は第2導電層の作製工程を示す断面図である。
【図6】比較例で得られた半導体装置のコンタクトホール部分の断面SEM像である。
【図7】半導体装置の製造方法におけるその他の実施の形態の製造工程を示すフロー図である。(a)は第1導電層の作製工程、(b)は層間層間絶縁層の作製工程、(c)はコンタクトホールの作製工程、(e)はクリーニング工程、(f)は第2導電層の作製工程を示す。
【図8】実施例3で得られた半導体装置のコンタクトホール部分のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、コンタクトホールを設けた半導体装置において、層間絶縁層の上下に形成された第1導電層と第2導電層のコンタクトホールにおけるコンタクト不良について種々検討を行った。その結果、導電性薄膜からなる第1導電層は、低温で成膜した場合に開口部領域内に複数の粒界が含まれた状態、つまり、導電性薄膜は平均粒径が100〜500nm程度と小さく、抵抗要因となる粒界が多数存在していて、コンタクトホール上で第1導電層と第2導電層を接続した際に、第1導電層と第2導電層とが良好に電気的接続が行われていないことを究明した。この問題の解決を図るべく更なる検討を続けた結果、フォトリソグラフィーを使用することなくレーザ光を照射してコンタクトホールを形成する際に、コンタクトホール形成によって露出される第1導電層において、(1):表面粗さを開口部端部付近よりも中央部付近において大きい、もしくは、(2):第1導電層を形成する導電性薄膜の粒径を、開口部端部付近よりも中央部付近において大きくなるようにレーザ光を照射してコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールで第1導電層と第2導電層とを接続すれば、コンタクトホールにおける第1導電層と第2導電層との電気的接続が良好となりコンタクト不良を抑制できることに気が付き本発明を完成させるに至った。電気的接続が良好になるのは、コンタクトホール中央付近において表面粗さが大きくなることにより凹凸形状の効果によって第1導電層と第2導電層の接触面積が増加すること、粒径が大きくなることによって抵抗要因となる粒界が低減できるためである。
【0013】
特に、このコンタクトホールの形成時に、層間絶縁層の開口部の側縁がテーパー面となるように、レーザ光を照射した場合には、コンタクトホールにおける第1導電層と第2導電層との電気的接続がさらに良好となり、良好にコンタクト不良を抑制することが可能となる。なお、本発明においては、導電性薄膜とは、真空蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法などによって、形成した薄膜を示す。
【0014】
次に、本発明による一実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。図1は、本発明による一実施形態に係る半導体装置のコンタクトホール部分の概略構成を示す概略断面図である。図2は、本発明による一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す概略断面図で、(a)は第1導電層の作製工程を示す断面図、(b)は層間絶縁層の作製工程を示す断面図、(c)はレーザ光加工工程を示す断面図、(d)はコンタクトホールの作製工程を示す断面図、(e)は第2導電層の作製工程を示す断面図である。
【0015】
本発明による一実施形態に係る半導体装置は、図1に示すように、支持基板101上に形成される導電性薄膜102a、102b、102cである第1導電層102を備えている。102aは開口部以外、102bは開口部端部付近、102cは開口部中央付近の導電性薄膜を示している。さらに、この第1導電層102上には、層間絶縁層103が形成されており、この層間絶縁層103の所定位置には、所定形状の開口部であるコンタクトホール104が形成されている。また、層間絶縁層103上には、第2導電層105が形成されており、コンタクトホール104上で第1導電層102と、第2導電層105とが電気的に接続されている。
【0016】
ここで、コンタクトホール104を形成する層間絶縁層103の側縁103aは、テーパー角θを有するテーパー面となっている。また、第1導電層102は、コンタクトホール104で露出する開口部D1内の開口部端部付近の状態102bと中央部付近D2の状態102cとは、異なる形態になっている。即ち、開口部端部付近の第1導電層の状態102bに対して中央部付近D2の第1導電層の状態102cは、少なくとも表面粗さがより大きい、もしくは導電性薄膜の粒径がより大きくなるように形成されている。その第1導電層の状態に倣って第2導電層105が積層されている。このような状態をとることによって、コンタクトホール104における第1導電層102と第2導電層105との電気的接続が良好となってコンタクト不良の発生を抑制可能としている。この点の詳細については、後述する。
【0017】
支持基板101としては、ガラス基板や、ポリカーボネート、PET(Polyethylen Terephthalate)、アクリルなどの樹脂基板を用いることができる。第1導電層102としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)などの金属材料等の導電性材料からなる導電性薄膜を用いることができる。第1導電層102の膜厚は、50nm〜2μmである。
【0018】
層間絶縁層103としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素樹脂などの耐熱性のある樹脂材料、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、酸化窒化シリコン(SiON)などの無機材料を用いることができる。層間絶縁層103の膜厚は、100nm〜5μmである。層間絶縁層のコンタクトホール104を形成する側縁103aは、60度以下のテーパー角θを有するテーパー面に形成されている。コンタクトホール104は、後述するように、レーザ光を照射して形成され、その開口径は5μm〜50μmである。第2導電層105は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)などの金属材料、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛等の導電性化合物等の導電性物質を含有する導電性被膜で構成され、その膜厚は、50nm〜2μmである。
【0019】
以上のように、本発明による半導体装置の特徴は、コンタクトホール104に対応する開口部領域102cの第1導電層102の状態にある。このような開口部領域102cの第1導電層102の状態は、コンタクトホール104をレーザ加工によって作製する際に容易に形成することができる。次に、レーザ加工によるコンタクトホールの作製方法について、図2に基づいて説明する。
【0020】
図2には、本発明による一実施形態に係る半導体装置のコンタクトホール104の作製方法を示す。図2(a)は、第1導電層102の作製工程を示す。符号101は支持基板であり、符号102は第1導電層を示す。第1導電層102の成膜は、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法などの成膜手法によって、金属材料等の導電性薄膜を形成することによってなし得る。このようにして成膜後に第1導電層102を配線形状に加工する。この第1導電層102の配線形状加工には、フォトリソグラフィー法、湿式、乾式エッチング法を用いることによって所望の配線形状を作製することができる。また、インクジェット法で直接配線形状の第1導電層を作製してもかまわない。このようにして支持基板101上に所定形状の第1導電層102を形成する。続いて、このようにして支持基板101上に形成された第1導電層102上に層間絶縁層103を形成する。
【0021】
図2(b)には、層間絶縁層103の作製工程を示す。符号103は層間絶縁層を示す。層間絶縁層103の成膜には、スピンコート法、スパッタリング法、蒸着法などの成膜手法を用いることができる。このようにして形成された層間絶縁層103にコンタクトホール104をレーザ加工によって形成する。図2(c)は、コンタクトホール104を形成するためのレーザ加工工程を示す。符号231はレーザ光を示す。このレーザ光231を第1導電層102の所望位置、大きさの開口(コンタクトホール)を形成するように、層間絶縁層103上から照射する。102cは第1導電層の溶融部分を示す。レーザ照射による加熱によってレーザ照射領域の中央付近の第1導電層は溶融し固化する。
【0022】
このレーザ加工工程では、固体レーザであるYVO4レーザやYAGレーザ、気体レーザであるエキシマレーザなどを搭載するレーザ加工装置を用いることができる。
【0023】
図2(d)は、レーザ加工後の状態であり、レーザ加工後に形成されたコンタクトホール形状を示す。符号104はコンタクトホール、符号103aはコンタクトホール104が形成された層間絶縁層103の側縁のテーパー角θを有するテーパー面を示す。符号102cは、開口部中央付近の第1導電層102の状態を示す。開口部端部付近よりも中央付近において、導電性薄膜の表面粗さもしくは粒径の少なくとも一方が変化している状態を示している。
【0024】
レーザ光231の照射によって第1導電層102の開口部中心付近102cの導電性薄膜は加熱されて溶融、固化する。導電性薄膜が溶融状態になり固化することによって、変形し表面粗さが増加する。また、溶融固化の過程で再結晶化が起こり、導電性薄膜の粒径が大きくなる。レーザ光はガウシアン分布など何らかの強度分布を持ち、照射中心付近が強く、照射周辺付近が弱くなる。レーザ光が強度分布を持つことから、前記第1導電層の変化は、コンタクトホール中央付近で顕著に起こる。その結果、レーザ光照射によって特に加熱される開口部中央付近における第1導電層102cの表面粗さが増加し、導電性薄膜の粒径が増大した状態になる。このように、開口部領域内102cにおいて、第1導電層102の表面粗さが大きくなっていることによって、凹凸形状の効果によって第2導電層105との接触面積が増加し、コンタクト抵抗の低抵抗化がはかれる。また、導電性薄膜の粒径が増大することによっても、抵抗要因となる粒界が減少することで低抵抗化する。以上のように、レーザ光加工でコンタクトホール104を形成する方法は、開口部における第1導電層102をより好ましい状態に改質することができる。
【0025】
また、コンタクトホール104は、レーザ光231の照射領域内の強度分布によって、図2(d)の103aに示すように、順テーパー形状になっている。このように、層間絶縁層103のコンタクトホール104の側縁をテーパー面とすることによって、コンタクトホール104の層間絶縁層103上に積層する第2導電層105が薄膜であっても、コンタクトホール104の端部におけるステップカバレージの劣化を防ぎ、コンタクト不良を抑制できる。この場合に、レーザ光照射領域内において、ガウシアン分布などのエネルギー分布があるレーザ光を用いることによって、レーザ光照射領域の中心よりも周辺において層間絶縁層103の除去量を低減することができる。その結果、より緩やかな順テーパー形状のコンタクトホール104を形成することができる。緩やかな順テーパー形状のコンタクトホールとすることによって、コンタクトホール104上で積層する第2導電層105が薄膜であっても、より効果的にコンタクトホール105におけるステップカバレージの劣化を防げ、コンタクト不良が抑制できる。以上のように、照射領域内でエネルギー変化があるレーザ光を用いるコンタクトホール形成方法は、コンタクトホールをより好ましい形状に加工することができるので好適である。
【0026】
図2(e)は、第2導電層105の作製工程を示す。符号105は第2導電層を示す。第2導電層の成膜は、スピンコート法、スパッタリング法、蒸着法などの成膜手法を用いることができる。成膜後に第2導電層を配線形状に加工する。第2導電層の加工には、フォトリソグラフィー法、湿式、乾式エッチング法を用いることができる。また、インクジェット法で直接配線形状の第2導電層を作製してもかまわない。第2導電層は、下層に配置される第1導電層の状態に倣って積層される。
【0027】
また本発明では、レーザ光を用いてコンタクトホールを形成した後にクリーニングローラを接触することにより前記層間絶縁膜表面を清掃するクリーニング工程を設けることがより好ましい。
図7にはクリーニング工程を設ける場合の半導体装置の製造方法をフロー図で示す。(a)は第1導電層の作製工程、(b)は層間層間絶縁層の作製工程、(c)はレーザ加工によるコンタクトホールの作製工程、(e)はクリーニング工程、(f)は第2導電層の作製工程を示す。
図7に示すように、クリーニング工程は、コンタクトホール形成後に行う。クリーニング後に第2導電層を形成し半導体装置が完成する。(c)に示すレーザ加工によるコンタクトホールの作製工程では、レーザ光照射によってレーザ光照射部分の層間絶縁層を除去してコンタクトホールを形成する。除去された層間絶縁層材料は、コンタクトホール内および周辺に再付着することがある。(d)に示すクリーニング工程では、この層間絶縁層材料からなる付着物を除去する。クリーニング工程では、クリーニングローラを用いる。クリーニングローラをコンタクトホール形成後の層間絶縁層表面に接触させることによって、コンタクトホール内および周辺の付着物を除去する。
かかる半導体装置の製造方法の詳細は、後述する実施例3に記載する。
【0028】
以上のような工程を経てコンタクトホールをレーザ加工によって形成し、第1導電層102と第2導電層105とを良好に電気的に接続させることが可能となる半導体装置を、容易かつ安価に確実に提供することができる。次に、本発明を、具体的な実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0029】
次に、本発明による実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
本発明による実施例1では、前述の図2に示す工程に沿って、半導体装置が製造された。この場合、この実施例1においては、支持基板101としてはガラス基板が使用され、第1導電層102としては、Ag薄膜が使用された。Ag薄膜は、Ag金属材料を使用し、直流(DC)スパッタリング法で形成、成膜した。成膜雰囲気はアルゴン(Ar)であり、圧力は0.6Pa、投入パワーは200Wである。このようにして形成された第1導電層102の膜厚は200nmである。成膜後に第1導電層102をフォトリソグラフィー、湿式エッチング法により配線形状に加工し、第1Ag配線とした。
【0030】
また、層間絶縁層103はポリイミド薄膜である。層間絶縁層103は、ポリイミド溶液をスピンコート法で塗布、成膜し、成膜後に100℃のプリベーク、180℃のポストベークを行って形成した。
【0031】
コンタクトホール104は、気体レーザであるエキシマレーザを搭載するレーザ加工装置で作製した。レーザ光の波長は248nmである。コンタクトホール104の形成には、レーザ光231は図示しないメタル開口マスクでビーム成形し、対物レンズで集光して層間絶縁層103上から照射した。加工面でのレーザ光のエネルギー密度は100mJ/cmである。
【0032】
このようにしてレーザ加工によって形成されたコンタクトホール104は、前述の図2(d)で示すような順テーパー形状を有している。図3は、実施例1で得られた半導体装置のコンタクトホール部分の走査型電子顕微鏡(SEM)像写真であり、斜め上方からコンタクトホール部分を観察している。符号D1は、コンタクトホールのホール径を示しており、ホール径は20μmである。符号D2はコンタクトホール中央付近を示している。この図3から、コンタクトホール中央付近D2の表面粗さは端部付近よりも大きくなっていることが分かる。
【0033】
また、この実施例1においては、第2導電層105は、Ag薄膜である。第2導電層105は、DCスパッタリング法で成膜した。成膜雰囲気はアルゴン(Ar)であり、圧力は0.6Pa、投入パワーは200Wである。第2導電層105の膜厚は200nmである。成膜後に第2導電層105をフォトリソグラフィー、ウェットエッチング法により配線形状に加工し、第2Ag配線とした。配線幅は40μmである。
【0034】
図4には、第2Ag配線105形成後の断面SEM像を示す。コンタクトホール中心部分を切断し横方向から観察した像である。層間絶縁層103のコンタクトホール104を形成する測縁103aは、約35度のテーパー角θを有するテーパー面である。また、この実施例1においては、第2導電層105は、Ag薄膜である。第2導電層105は、DCスパッタリング法で成膜した。成膜雰囲気はアルゴン(Ar)であり、圧力は0.6Pa、投入パワーは200Wである。第2導電層105の膜厚は200nmである。成膜後に第2導電層105をフォトリソグラフィー、ウェットエッチング法により配線形状に加工し、第2Ag配線とした。配線幅は40μmである。図4から層間絶縁層103のコンタクトホール104を形成する測縁103aは、約35度のテーパー角θを有するテーパー面となっていることが明らかである。第2導電層105は、図3に示したコンタクトホール104の形状に沿って形成され、図2(e)に示すような側縁のテーパー角が35度である順テーパー形状の凹部105aを有するようになっている。その結果、コンタクトホール104での第2導電層105のステップカバレージは良好であり、側縁103aにおける膜厚低下は抑制されている。
【0035】
(実施例2)
実施例1と同じ第1導電層102、層間絶縁層103、第2導電層105を使用し、コンタクトホール104を形成するレーザ加工工程におけるレーザ加工装置のレーザ光を変更した。実施例2において、固体レーザであるYVO4レーザ搭載するレーザ加工装置を使用した。
【0036】
表1には、実施例1および2で用いたレーザの照射条件、および、コンタクトホール形状としてSEM観察から調べたホール径とテーパー角度を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
この表1から、実施例2においても、50μm以下のホール径を有するコンタクトホールを形成することが可能であり、コンタクトホール104を形成する層間絶縁層103の側縁103aにおいて順テーパー形状に加工することができることが明らかである。
【0039】
次に、比較例として、コンタクトホール104を、フォトリソグラフィー法と乾式(ドライ)エッチング法で形成した場合について図5に基づいて説明する。図5は、比較例によるコンタクトホールの作製工程を示す断面図で、(a)は第1導電層の作製工程を示す断面図、(b)は層間絶縁層の作製工程を示す断面図、(c)はフォトレジスト層形成工程を示す断面図、(d)は露光工程を示す断面図、(e)は現像工程を示す断面図、(f)はドライエッチング工程を示す断面図、(g)はフォトレジスト層除去工程を示す断面図、(h)は第2導電層の作製工程を示す断面図である。
【0040】
図5(a)において、符号511は支持基板のガラス基板である。符号512は、Ag薄膜である第1導電層である。第1導電層512は、直流(DC)スパッタリング法で成膜した。成膜雰囲気はアルゴン(Ar)であり、圧力は0.6Pa、投入パワーは200Wである。第1導電層512の膜厚は200nmである。成膜後に第1導電層512をフォトリソグラフィー、湿式(ウェット)エッチング法により配線形状に加工し、第1Ag配線とした。配線幅は40μmである。図5(b)において、符号521はポリイミド薄膜からなる層間絶縁層である。このポリイミド薄膜は、スピンコート法で成膜し、成膜後に100℃のプリベーク、180℃のポストベークを行った。
【0041】
上記の図5(a)、(b)で示すように、ガラス基板511上に、第1導電層512を形成し、さらに、第1導電層512を被覆するように層間絶縁層521を形成した。この工程までは、本発明による各実施例における第1導電層作製工程及び層間絶縁層作製工程と同じである。この比較例においては、層間絶縁層にコンタクトホールを形成する方法としてフォトリソグラフィー法及びエッチング法を使用して層間絶縁層にコンタクトホールを形成している。次に、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を使用して層間絶縁層にコンタクトホールを形成する方法について、図5(c)〜(g)に基づいて説明する。
【0042】
図5(c)において、符号531は、ポリイミド薄膜からなる層間絶縁層521上に塗布したフォトレジスト層を示す。図5(d)において、符号541はフォトマスクを示し、符号542は紫外光を示す。符号543は、フォトレジスト層531の感光部分を示す。図5(e)において、符号551は、現像によってフォトレジスト層531の感光部分が除去られた開口部を示す。符号552は、開口部551の側縁を示す。フォトリソグラフィー法及びエッチング法を使用して層間絶縁層にコンタクトホールを形成する場合には、図5(c)に示すように、層間絶縁層521上にフォトレジスト層531を形成する。そして、図5(d)に示すように、フォトレジスト層531上からフォトマスク541で所定照射領域となるように遮光された紫外光542が照射され、フォトレジスト層531に所定形状の感光部分543を形成する。このように感光された感光部分543を、図5(e)に示すように、現像液による湿式(ウェット)処理で開口部551を形成する。このようにして形成される開口部551の側縁552は、特別な処理しない限り、垂直に近い状態になっている。
【0043】
図5(f)において、符号561は、層間絶縁層521に形成されたエッチング部分を示す。図5(g)において、符号571は、層間絶縁層521に形成されたコンタクトホールを示す。符号572は、層間絶縁層521のコンタクトホール571を形成している側縁を示す。符号573は、コンタクトホール571で露出された第1導電層の開口部領域を示している。上記のようにして開口部551の形成されたフォトレジスト層531をマスクとして、図5(g)に示すように、下層の層間絶縁層521をエッチングし、第1導電層512が露出されるまでエッチングを行い、フォトレジスト層531を層間絶縁層521上から除去して、図5(g)に示すように、コンタクトホール571を形成した。ドライエッチングには、反応性イオンエッチング(RIE)法を用いた。エッチングガスは酸素(O)であり、エッチング圧力は30mTorr、投入パワーは25Wであった。Oプラズマにさらされることにより、エッチングマスクとするフォトレジスト層531もエッチングされるので、エッチング過程において開口部側縁552が後退し、垂直からテーパー形状に変化していく。フォトレジスト層531の開口部側縁552のテーパー形状が反映され、コンタクトホール571を形成する層間絶縁層521の側縁572も若干テーパーがついた形状に加工される。フォトリソグラフィーとエッチング処理でコンタクトホール571を作製する方法では、レーザ加工のように加熱処理が伴わないため、コンタクトホール571で露出された開口部内581において第1導電層512の構造上の変化は認められない。
【0044】
図5(h)において、符号581はAg薄膜からなる第2導電層である。符号582は、コンタクトホール571における第2導電層581のステップカバレージ(被覆性)を示す。第2導電層581は、DCスパッタリング法で成膜した。成膜雰囲気はアルゴン(Ar)であり、圧力は0.6Pa、投入パワーは200Wである。第2導電層581の膜厚は200nmである。成膜後に第2導電層581をフォトリソグラフィー、ウェットエッチング法により配線形状に加工し、第2Ag配線とした。図6には第2Ag配線形成後の断面SEM像を示す。コンタクトホール中心部分を切断し横方向から観察した像である。コンタクトホール側縁は、約65度のテーパー角θを有するテーパー面になっている。テーパー角がきついため側縁でのAg配線のステップカバレージ582は若干低下した状態になっている。
【0045】
このようにして得られた比較例及び実施例1、2における下層に配置される第1Ag配線と、上層に配置される第2Ag配線を、コンタクトホールを介して交互に接続するコンタクトチェーンパターンを作製し、コンタクトホール抵抗を求めた。実施例1、2、比較例ともに、第1および第2Ag配線の幅は40μmであり、コンタクトホール径は20μmであり、コンタクトホールの周期は190μmであり、チェーンパターンで接続したコンタクトホールの総数は768個である。比較例及び実施例1、2のチェーンパターンの抵抗値を測定し、ホール数で割ったコンタクトホール抵抗値を表2に示す。また、表2には、第1導電層の開口部内における端部付近と中央付近の結晶粒径および平均表面粗さRa(nm)を示す。結晶粒径と表面粗さは、断面SEM像からもとめた。結晶粒径は、結晶方位の違いがSEM像のコントラストの違いに現れる観察条件に設定し、コントラスト差から粒径を判定した。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果から、実施例1、2のものでは、開口部内において、端部付近よりも中央部付近で導電性薄膜の粒径が大きくなっている。また、表面粗さも開口部端部付近よりも中央部付近で大きくなっている。このようなコンタクトホール形状とすることによって、コンタクト抵抗が低くなって良好な導電性を示すことが明らかである。
【0048】
これに対し、開口部内の第1導電層の表面粗さ及び導電性薄膜の粒径が変化しない比較例のものでは、実施例1、2のものほどの低抵抗化が得られていない。
【0049】
レーザ加工でコンタクトホールを形成する実施例1、2の作製方法を図2に示し、フォトリソグラフィーとエッチングでコンタクトホールを形成する比較例の作製方法を図5に示した。図2と図5の比較から明らかなように、レーザ加工を用いることでコンタクトホール形成にフォトマスク541が不要になるとともに、工数を減らすことができ、製造コストの低減がはかれる。このような低コストな製造方法においても、表2に示すように良好なコンタクト抵抗が得られる。
【0050】
(実施例3)
実施例3として、上述したクリーニング工程を備える半導体装置の製造方法における実施の形態ならびにその実施結果を示す。
実施例1と同じ第1導電層102、層間絶縁層103、第2導電層105を使用し、コンタクトホール104も実施例1と同様にエキシマレーザ加工で形成した。図7に示すように、レーザ光加工によってコンタクトホールを形成した後にクリーニング工程を行った。
クリーニング工程ではクリーニングローラを用いた。クリーニングローラには、オサダコーポレーション社製のハンディータイプクリーナーを用いた。層間絶縁膜表面にクリーニングローラを接触させ回転させることによって、レーザ加工により発生する層間絶縁層材料からなる付着物を吸着させた。クリーニングローラに吸着した付着物は、専用の粘着性パッド上でローラーを回転させることで除去した。図8にはクリーニング前後でのコンタクトホールの状態をSEM像で示す。斜め上方からコンタクトホール部を観察した。(a)はレーザ加工によりコンタクトホールを形成した状態、(b)はクリーニング後のコンタクトホールの状態である。(a)において、103は層間絶縁層であるポリイミド、104はコンタクトホール部、102cはレーザ加工によって結晶粒径および表面性が変化した第一導電層であるAgを示す。801は、レーザ加工した層間絶縁層であるポリイミドが再付着した付着物である。コンタクトホールの形成条件や形成箇所によっては801に示すような付着物が発生することがある。付着物は大きいもので1μm程度の大きさで、図8(a)には約20個程度の付着物が認められる。(b)は(a)と同じコンタクトホールをクリーニング工程後に観察した結果である。図示のように、クリーニング工程を経ることで付着物が除去できている。SEM観察する限りでは、1μm未満の微小な付着物も除去でき、20個程度あった付着物が0個になっている。
【0051】
このようにクリーニング工程を備える半導体装置の製造方法によって、コンタクトホール抵抗値に影響すると予想される付着物を除去することができる。クリーンニングの方法は、クリーニングローラをサンプルに接触させるのみの簡単なものである。簡単な方法であることから、クリーニング工程を入れても製造コストにはさほど影響しない。また、薬液などは用いないことからサンプルへの影響も無い。
【0052】
また、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記実施形態の中で示唆した以外にも、前記実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0053】
101 支持基板
102 第1導電層
102a 開口部以外の導電性薄膜
102b 開口部端部付近の導電性薄膜
102c 開口部中央付近の導電性薄膜
103 層間絶縁層
103a 側縁
104 コンタクトホール
105 第2導電層
231 レーザ光
511 ガラス基板
512 第1導電層
521 層間絶縁層
531 フォトレジスト層
541 フォトマスク
542 紫外光
543 感光部分
551 開口部
552 開口部側縁
561 エッチング部分
571 コンタクトホール
572 コンタクトホール側縁
573 開口部領域
581 第2導電層
582 ステップカバレージ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2004−294805号公報
【特許文献2】特許第3989761号公報
【特許文献3】特開2005−340776号公報
【特許文献4】特開2008−77074号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に形成される導電性薄膜からなる第1導電層と、当該第1導電層上に積層された層間絶縁層と、当該層間絶縁層上に積層された第2導電層の積層構成を有し、前記層間絶縁層に設けられて前記第1導電層の表面の一部を露出する開口部を介して前記第1導電層と前記第2導電層とが電気的に接続された構造を有する半導体装置において、
前記第1導電層は開口部領域内に複数の粒界が含まれる状態で成膜され、
前記開口部で露出された開口部領域において、前記第1導電層の表面粗さ、もしくは前記第1導電層の粒径が、開口部端部付近よりも中央部付近において大きい状態で前記第1導電層と前記第2導電層とを電気的に接続したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記層間絶縁層の開口部の側縁をテーパー面としたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
支持基板上に導電性薄膜からなる第1導電層を形成する工程と、当該第1導電層上に層間絶縁層を積層する工程と、当該層間絶縁層に前記第1導電層の表面の一部を露出する開口部を形成する工程と、前記層間絶縁層及び前記開口部に露出された第1導電層の表面に第2導電層を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法において、
前記層間絶縁層に形成される開口部は、レーザ光照射によってレーザ光照射部分の層間絶縁層を除去して形成されるとともに、当該開口部で露出された開口部領域において、前記第1導電層の表面粗さ、もしくは前記第1導電層の粒径が、開口部端部付近よりも中央部付近において大きくなるように変形させたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
レーザ光照射によってレーザ光照射部分の層間絶縁層が除去されて前記層間絶縁層に開口部が形成された後、
前記層間絶縁層表面にクリーニングローラを接触させることにより、当該層間絶縁層を清掃することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−54520(P2012−54520A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262027(P2010−262027)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】