説明

半導体装置

【課題】 強誘電体膜と強磁性体膜との2つの層を積層することなく、かつ強磁性及び強誘電性を損なうことのない構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体からなる表層部を含む基板1の該表層部内のチャネル領域2の両側に、ソース領域3及びドレイン領域4が形成されている。チャネル領域の上にゲート絶縁膜7が形成されている。ゲート絶縁膜の上に被制御膜9が形成されている。被制御膜は、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す。被制御膜の上にゲート電極10が形成されている。被制御膜の磁化の向きを変化させる磁化制御構造が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に不揮発性半導体メモリ等に利用される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自発分極を持つ強誘電体をキャパシタの誘電体層に用いた不揮発性メモリ(FRAM)が、次世代のメモリとして期待されている。FRAMは、非接触のICカード等への応用が期待される。特に、電界効果型トランジスタ(FET)のゲート絶縁膜上に強誘電体膜を設けた構造を有する1トランジスタ型FRAMは、非破壊読み出しが可能であり、セル面積を小さくすることができるという特徴を有する。このため、1トランジスタ−1キャパシタ型FRAMや、2トランジスタ−2キャパシタ型FRAMに比べて、高密度化の点で有利である。
【0003】
代表的な1トランジスタ型FRAMは、ソース及びドレインが形成された半導体基板(S)のチャネル領域の上に、ゲート絶縁膜(I)、強誘電体膜(F)、及び電極膜(M)が積層された構造を有する。この構造を有するFETは、MFIS型FETと呼ばれる。強誘電体膜の分極方向によってソース−ドレイン間のコンダクタンスが変化することを利用し、”0”状態と”1”状態とが判別される。
【0004】
強誘電体膜には、ペロブスカイト構造を有するPb(Zr,Ti)O(PZT)系の材料や、ビスマス層状構造を有する(Bi,La)Ti12あるいはSrBiTa等が用いられる。ビスマス層状構造を有する強誘電体は、PZT系材料とは異なり鉛を含まないので、環境の面からは好ましい材料であるといえるが、PZT系材料にくらべて分極が小さい。
【0005】
1トランジスタ型FRAMのゲート絶縁膜上に形成された強誘電体膜は減極しやすく、長時間のデータ保持特性に課題がある。長時間のデータ保持を実現するために、データ消失前にリフレッシュ電圧を印加する等の操作を行う必要がある。強誘電体膜の減極が生じる原因として、ゲート絶縁膜の絶縁性が十分ではないために生じるリーク電流によって、蓄積電荷が減少すること、強誘電体膜の表面の電荷を中性化するために強誘電体膜内部に逆電界が生成されやすいこと等が挙げられる。
【0006】
図6に、下記の特許文献1に開示された1トランジスタ型不揮発性メモリの断面図を示す。半導体基板100の表層部に、ソース領域101及びドレイン領域102が形成され、両者の間にチャネル領域103が画定されている。チャネル領域103の上に、強誘電体膜104、強磁性体膜105、及びゲート電極106がこの順番に積層されている。強誘電体膜104は、その厚さ方向に分極される。強磁性体膜105は、基板面に平行で、かつキャリアの移動方向に垂直な方向(図6の紙面に垂直な方向)に磁化される。
【0007】
強磁性体膜105が磁化されると、チャネル領域103を移動するキャリアに、ローレンツ力が作用する。磁化の向きにより、ソース−ドレイン間のコンダクタンスが変化する。このコンダクタンスの変化を利用して、メモリが実現される。
【0008】
分極の向きの異なる2つの状態、及び磁化の向きの異なる2つの状態が実現される。分極の向きと磁化の向きとの組み合わせによって、合計4つの状態が実現される。特許文献1に開示されたメモリは、この4つの状態をそれぞれ4つの値に対応させた4値メモリである。4つの状態のうち2つの状態のみを利用して2値メモリとして利用することも可能である。強誘電体膜の分極に、強磁性体膜の磁化を併用することにより、データ保持特性を改善することが可能になる。
【0009】
【特許文献1】特開2004−172483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたメモリにおいては、強誘電体膜と強磁性体膜とを積層しなければならない。強磁性材料と強誘電体材料とを混合して加圧成形する方法も考えられるが、この方法では、強誘電体膜や強磁性体膜の特性や信頼性が損なわれるおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、強誘電体膜と強磁性体膜との2つの層を積層することなく、かつ強磁性及び強誘電性を損なうことのない構造を有する半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によると、半導体からなる表層部を含む基板の該表層部内のチャネル領域の両側に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記チャネル領域の上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置され、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す被制御膜と、前記被制御膜の上に形成されたゲート電極と、前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁化制御構造とを有する半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
被制御膜が、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す材料で形成されているため、強誘電体膜と磁性体膜との2層を別々に形成する必要がない。強誘電性による誘電分極と、強磁性またはフェリ磁性による磁化を併用してデータを記憶することにより、データ保持特性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、第1の実施例による半導体装置の斜視図を示す。基板1の、p型シリコンからなる表層部にチャネル領域2が画定されている。チャネル領域2の両側に、n型不純物が添加されたソース領域3及びドレイン領域4が形成されている。
【0015】
チャネル領域2の上に、ゲート絶縁膜7、被制御膜9、及びゲート電極10がこの順番に積層されている。ゲート絶縁膜7は、例えば酸化ハフニウム等の絶縁材料で形成されており、その厚さは3〜15nm、例えば5nmである。被制御膜9は、例えばBiFeO(以下、「BFO」と記す。)で形成されており、その厚さは300nmである。ゲート電極10は、例えばPtで形成されており、その厚さは100nmである。
【0016】
チャネル領域2、ソース領域3、ドレイン領域4、ゲート絶縁膜7、被制御膜9、及びゲート電極10が、nチャネルMFIS型FETを構成する。半導体基板1の上に被制御膜9を直接形成しても、キャリアトラップ準位等の少ない良好な界面が得られる場合には、ゲート絶縁膜7を省略してもよい。
【0017】
ソース領域3からドレイン領域4に向かう方向(チャネル領域2をキャリアが移動する方向)をX軸とし、基板1の表面に平行な面をXY面とし、基板1の表面の法線方向をZ軸とするXYZ直交座標系を導入する。キャリア(電子)の移動する向きをX軸の正方向とし、ソース領域3を左側に、ドレイン領域4を右側に見て進む方向をY軸の正方向とする。
【0018】
ゲート絶縁膜7、被制御膜9、及びゲート電極10を覆うように、基板1の上に、酸化シリコン等からなる層間絶縁膜20が形成されている。磁化用配線11が、層間絶縁膜20の上に配置されている。磁化用配線11は、チャネル領域2内のキャリアの移動方向と平行な方向(X方向)に延在し、チャネル領域2の上方を通過する。
【0019】
ソース領域3が配線Vsに接続され、ドレイン領域4が配線Vdに接続されている。ゲート電極10が、配線Vg0に接続されている。磁化用配線11の、X軸の負側の端が配線Vg1に接続され、X軸の正側の端が配線Vg2に接続されている。配線Vg1及びVg2が、磁化用電源12に接続されている。磁化用電源12は、配線Vg1及びVg2を介して、磁化用配線11に、X軸の正の向きに、または負の向きに電流を流すことができる。
【0020】
次に、図2(A)〜図2(F)を参照して、第1の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。図2(A)、図2(C)、及び図2(E)は、半導体装置の断面図を示し、図2(B)、図2(D)、及び図2(F)は、それぞれ図2(A)、図2(C)、及び図2(E)に示した製造段階における装置の平面図を示す。
【0021】
図2(A)及び図2(B)に示したp型シリコンからなる半導体基板1の表層部に、通常のMOSFETの製造工程と同様に、シャロートレンチアイソレーション構造の素子分離絶縁膜を形成する。酸化シリコンからなる仮のゲート酸化膜、及び多結晶シリコンからなる仮のゲート電極を形成する。仮のゲート電極をマスクとして、n型不純物をイオン注入し、活性化アニールを行う。これにより、ソース領域3及びドレイン領域4が形成される。仮のゲート酸化膜及び仮のゲート電極を除去する。
【0022】
半導体基板1の上に、酸化ハフニウム膜7aを、例えば電子ビーム蒸着により形成する。ラピッドサーマルアニール(RTA)炉を用い、酸化性雰囲気中において、750℃〜850℃で熱処理を行う。酸化ハフニウム膜7aの上に、BFO膜9aを、例えばパルスレーザ蒸着(PLD)法により形成する。BFO膜9aの上に、白金膜10aを、電子ビーム蒸着により形成する。
【0023】
以下、PLD法の手順について説明する。真空チャンバ中にBFOセラミックスよりなるターゲットを配置する。酸化ハフニウム膜7aが形成された半導体基板1を、このターゲットに対向するように配置する。基板温度を350℃に保持し、酸素分圧を1.3Paとする。Nd:YAGレーザの3倍高調波(波長355nm)を、10Hzの繰り返し周波数でターゲットに照射することにより、酸化ハフニウム膜7a上に、BFO膜9aを300nmの厚さ堆積させる。
【0024】
BFOのバルク体は、本来強誘電体であり、かつ反強磁性体であるが、反強磁性体を薄膜化すると、強磁性の性質が現れることが知られている。BFOを主成分とする薄膜は、強誘電性と強磁性との両方の性質を持つ。
【0025】
この方法で作製したBFO膜の飽和磁化は90emu/cm(90/(4π×10−3)A/m)であった。
【0026】
図2(C)及び図2(D)に示すように、白金膜10aから酸化ハフニウム膜7aまでの3層を、フォトリソグラフィ技術を用いて所定形状にパターニングする。白金膜10a、BFO膜9a、及び酸化ハフニウム膜7aは、エッチングガスとしてアルゴンと塩素との混合ガスを用い、一括してエッチングすることができる。これにより、酸化ハフニウムからなるゲート絶縁膜7、BFOからなる被制御膜9、及び白金からなるゲート電極10が得られる。
【0027】
図2(E)及び図2(F)に示すように、層間絶縁膜20の形成、磁化用配線11の形成、ビアホールHs、Hd、Hg、及びHmの開口、これらのビアホール内への導電性プラグの充填、及び必要な多層配線(図示せず)の形成を行う。ビアホールHs内の導電性プラグはソース領域3と上層配線とを接続し、ビアホールHd内の導電性プラグは、ドレイン領域4と上層配線とを接続し、ビアホールHg内の導電性プラグは、ゲート電極10と上層配線とを接続し、ビアホールHm内の導電性プラグは、磁化用配線11と磁化用電源12とを接続する。
【0028】
図1に示した磁化用配線11に、X軸の負の向きの電流を流すことにより、被制御膜9をY軸の負の方向に磁化することができる。逆に、磁化用配線11に、X軸の正の向きの電流を流すことにより、被制御膜9をY軸の正の方向に磁化することができる。
【0029】
次に、図3(A)〜図3(C)を参照して、第1の実施例による半導体装置の動作原理について説明する。
【0030】
図3(A)に示すように、チャネル領域2とゲート電極10との間に電圧を印加して、BFOからなる被制御膜9に、Z軸の負の向きの誘電分極Pを生じさせる。ゲート電極10に、X軸の負の向きの電流を流し、被制御膜9に、Y軸の負の向きの磁化Mを生じさせる。Z軸の負の向きの誘電分極Pは、ソースドレイン間のコンダクタンスを高める作用を奏する。Y軸の負の向きの磁場により、チャネル領域2をソース領域3からドレイン領域4に向かって流れる電子が、Z軸の正の向きのローレンツ力を受ける。このため、Y軸の負の向きの磁化Mは、ソースドレイン間のコンダクタンスを高める作用を奏する。つまり、Z軸の負の向きの誘電分極PとY軸の負の向きの磁化Mは、共にコンダクタンスを高める作用を奏する。図3(C)に示すように、この状態を「1」に対応付ける。
【0031】
図3(B)に示すように、チャネル領域2とゲート電極10との間に電圧を印加して、被制御膜9にZ軸の正の向きの誘電分極Pを生じさせる。さらに、ゲート電極10に、X軸の正の向きの電流を流し、被制御膜9にY軸の正の向きの磁化Mを生じさせる。Z軸の正の向きの誘電分極Pは、ソースドレイン間のコンダクタンスを低下させる作用を奏する。Y軸の正の向きの磁場により、チャネル領域2をソース領域3からドレイン領域4に向かって流れる電子が、Z軸の負の向きのローレンツ力を受ける。このため、Y軸の正の向きの磁化Mは、ソースドレイン間のコンダクタンスを低下させる作用を奏する。つまり、Z軸の正の向きの誘電分極PとY軸の正の向きの磁化Mは、共にコンダクタンスを低下させる作用を奏する。図3(C)に示すように、この状態を「0」に対応付ける。
【0032】
図3(C)に示すように、誘電分極の向きがZ軸の正であり、かつ磁化の向きがY軸の負である状態、及び誘電分極の向きがZ軸の負であり、かつ磁化の向きがY軸の負である状態を「不定」状態とする。
【0033】
このように「0」と「1」の状態を定義すると、第1の実施例による半導体装置は、2値の不揮発性メモリとして機能する。誘電分極と磁化とが併用されて「0」または「1」状態が記憶されるため、誘電分極のみを利用するメモリに比べて、データ保持特性が改善される。
【0034】
さらに、第1の実施例では、1つの被制御膜9が、強誘電体材料、及び磁性材料の両方の特性を示すため、強誘電体層と磁性層との2層を別々に設ける必要がない。これにより、素子構造が簡単化される。被制御膜9の材料であるBFOは、従来のMFIS型FETの強誘電体層に用いられているPZT等に比べて、誘電率が小さい。このため、被制御膜9に効率的に電圧を印加することができる。また、BFOは鉛を含まないため、環境保護の点でも優れた材料であるといえる。
【0035】
図4に、第2の実施例による半導体装置の概略斜視図を示す。以下、図1に示した第1の実施例による半導体装置との相違点に着目して説明する。
【0036】
第1の実施例では、チャネル領域2とゲート電極10との間に電圧を印加して、被制御膜9に誘電分極を生じさせた。第2の実施例では、チャネル領域2と被制御膜9との間に分極用電極8が配置されている。分極用電極8は、上層の配線Vpに接続される。分極用電極8とゲート電極10との間に電圧を印加して被制御膜9に誘電分極を生じさせる。
【0037】
さらに、ゲート電極10が、第1の実施例の磁化用配線11を兼ねている。磁化用電源12が、ゲート電極10に接続される。ゲート電極10に、X方向の電流を流すことにより、被制御膜9を磁化することができる。
【0038】
第2の実施例による半導体装置の製造方法について、第1の実施例による半導体装置の製造方法と対比させて簡単に説明する。
【0039】
第2の実施例では、図2(A)に示した酸化ハフニウム膜7aとBFO膜9aとの間に、分極用電極8となる白金膜を形成しておく。図2(C)に示したエッチング工程において、分極用電極8となる白金膜が露出した時点で一旦エッチングを停止させる。露出した白金膜の一部が、既にエッチングされた被制御膜9の縁よりも外側に張り出すように、エッチングマスクを変えて、この白金膜及びゲート絶縁膜7をエッチングする。この張り出し部分に、ビアホールを形成することにより、分極用電極8と配線Vpとの接続を得ることができる。
【0040】
次に、図5(A)〜図5(F)を参照して、第3の実施例による半導体装置及びその製造方法について説明する。図5(A)、図5(C)、及び図5(E)は、半導体装置の断面図を示し、図5(B)、図5(D)、及び図5(F)は、それぞれ図5(A)、図5(C)、及び図5(E)に示した製造段階における装置の平面図を示す。
【0041】
図5(A)に示すように、半導体基板1の表層部に、ソース領域3、ドレイン領域4を形成し、表面上に、酸化ハフニウム膜7aを形成する。ここまでの製造工程は、図2(A)及び図2(B)を参照して説明した第1の実施例による半導体装置の製造工程と同じである。
【0042】
酸化ハフニウム膜7aの上に、電子ビーム蒸着により白金膜8aを形成する。白金膜8aの厚さは、例えば30nmとする。白金膜8a上に、BFO膜9aを、例えばPLD法により形成する。形成条件は、第1の実施例のBFO膜9aの形成条件と同一である。BFO膜9aの上に、反強磁性のPdPtMn膜15aを電子ビーム蒸着により形成する。その厚さは、例えば20nmとする。PdPtMn膜15aの上に、白金膜10aを、電子ビーム蒸着により形成する。
【0043】
図5(C)及び図5(D)に示すように、白金膜10aからBFO膜9aまでの3層を、ゲート電極10の平面形状に対応するエッチングマスクを用いてエッチングする。白金膜8aが露出した時点でエッチングを停止する。エッチングマスクを除去し、ゲート電極10と分極用電極8とを覆う平面形状を有するエッチングマスクを新たに形成する。分極用電極8は、ソース領域3からチャネル2を経由してドレイン領域4まで達する。このエッチングマスクを用いて、白金膜8a及び酸化ハフニウム膜7aをエッチングする。これらのエッチングは、エッチングガスとしてアルゴンと塩素とを用いて行うことができる。白金のエッチングレートが、BFOのエッチングレートよりも小さいため、白金膜8aが露出した時点で、時間制御により比較的容易にエッチングを停止させることができる。
【0044】
ここまでの工程で、酸化ハフニウムからなるゲート絶縁膜7、白金からなる分極用電極8、BFOからなる被制御膜9、PdPtMnからなる反強磁性膜15、白金からなるゲート電極10が得られる。
【0045】
図5(E)及び図5(F)に示すように、層間絶縁膜20を形成し、2つのビアホールHm、及びビアホールHd、Hs、Hgを開口する。平面図において、2つのビアホールHmは、それぞれ分極用電極8の両端に配置され、ビアホールHs及びHdは、それぞれソース領域3及びドレイン領域4内に配置され、ビアホールHgは、ゲート電極10内に配置される。これらのビアホール内に、タングステン等の導電性プラグを充填する。層間絶縁膜20の上に、上層の配線をアルミニウム等で形成する。
【0046】
図4に示した第2の実施例では、ゲート電極10が磁化用配線を兼ねていたが、第3の実施例では、分極用電極8が磁化用配線を兼ねている。
【0047】
また、第3の実施例では、被制御膜9とゲート電極10との間に、反強磁性膜15が配置されている。反強磁性膜15は、例えばPdPtMn、NiO等の反強磁性材料で形成され、その厚さは例えば20nmである。反強磁性膜15がPdPtMnで形成されている場合、例えば基板温度を250℃〜280℃とし、2T程度の磁場を印加することにより、反強磁性膜15の磁化方向をY軸と平行にする。
【0048】
反強磁性膜15と被制御膜9とが交換結合することにより、被制御膜9の保磁力を大きくすることができる。これにより、データ保持特性をさらに改善させることができる。
【0049】
第3の実施例による半導体装置に「1」を記憶させたときの初期状態におけるドレイン電流は4×10−6Aであり、30日経過後に、1×10−6Aであった。「0」を記憶させたときの初期状態におけるドレイン電流は1×10−11Aであり、30日経過後に、3×10−11Aであった。このように、30日経過しても、初期の記憶状態が十分保持されている。
【0050】
上記第1〜第3の実施例では、被制御膜9をBFOで形成したが、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す他の材料で形成してもよい。被制御膜9をBFOで形成する場合、リーク電流の増大を抑制するために、ドーパントを添加してもよい。ドーパントとして希土類元素、好ましくはLaやNdを添加することにより、リーク電流の増大を抑制することができる。LaまたはNd等の希土類元素を添加すると、Biの一部がLaまたはNdに置き換えられる。Biの組成比を1−xとし、LaまたはNdの組成比をxとしたとき、リーク電流増大抑制効果を得るために、xを0.3以下とすることが好ましい。これらのドーパントは、前駆体溶液に添加しておけばよい。
【0051】
上記第1〜第3の実施例では、被制御膜9の磁化方向をY軸と平行にしたが、必ずしも平行である必要はなく、磁化方向をキャリアの移動方向(X軸方向)と交差する方向にしてもよい。
【0052】
また、上記第1〜第3の実施例では、ゲート電極10または分極用配線11に電流を流して磁場を発生させることにより、被制御膜9を磁化した。強誘電体の誘電分極のスイッチングに伴う磁化のスイッチング現象を利用して、被制御膜9を磁化することも可能である。
【0053】
また、上記第1〜第3の実施例では、nチャネルのMFIS型FETで不揮発性メモリを構成したが、pチャネルのMFIS型FETを用いることも可能である。pチャネルの場合には、チャネル領域を移動するキャリアが正の電荷を持つ正孔である。このため、被制御膜9の磁化の向きが同一である場合に、正孔に働くローレンツ力の向きは、電子に働くローレンツ力の向きと反対になる。なお、正孔よりも電子の方が、移動度が高いため、nチャネルのMFIS型FETの方が、高速動作に適している。
【0054】
被制御膜9を形成する材料を、Z方向に最も誘電分極し易く、かつY方向に最も磁化され易いように配向させることにより、データ保持特性をさらに高めることができる。例えば、被制御膜9の下地になるゲート絶縁膜7の材料を適切に選択し、エピタキシャル成長させることにより、被制御膜9を形成する材料を配向させることが可能になる。
【0055】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0056】
上記実施例から、以下の付記に示す発明が導出される。
【0057】
(付記1) 半導体からなる表層部を含む基板の該表層部内のチャネル領域の両側に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記チャネル領域の上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に配置され、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも被制御膜と、
前記被制御膜の上に形成されたゲート電極と、
前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁化制御構造と
を有する半導体装置。(1)
(付記2)さらに、前記被制御膜と前記ゲート絶縁膜との間に、前記被制御膜の分極方向を制御する分極用電極を有する付記1に記載の半導体装置。(2)
(付記3)前記磁化制御構造は、前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁場を発生する電流を流す磁化用導電部材を含む付記1または2に記載の半導体装置。(3)
(付記4)前記磁化用導電部材は、前記基板の表面に平行で、かつ前記チャネル領域を移動するキャリアの移動方向と交差する方向に電流を流す付記1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【0058】
(付記5)前記ゲート電極が、前記磁化用導電部材を兼ねる付記3または4に記載の半導体装置。
【0059】
(付記6)さらに、前記基板の上に配置され、前記ゲート電極を覆う絶縁膜を有し、
前記磁化用導電部材は、前記絶縁膜の上に配置され、前記チャネル領域を移動するキャリアの移動方向と平行な方向に延在する付記3または4に記載の半導体装置。(4)
(付記7)前記被制御膜を形成する材料が、BiFeOを主成分とする強誘電体である付記1〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【0060】
(付記8)前記被制御膜に、希土類元素が添加されている付記7に記載の半導体装置。
【0061】
(付記9)前記被制御膜を形成する材料のBiの組成比を1−x、希土類元素の組成比をxとしたとき、xが0.3以下である付記8に記載の半導体装置。
【0062】
(付記10)半導体からなる表層部を含む基板の該表層部内のチャネル領域の両側に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記チャネル領域の上に配置され、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す被制御膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極と、
前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁化制御構造と
を有する半導体装置。(5)
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施例による半導体装置の概略斜視図である。
【図2】(A)、(C)は、第1の実施例による半導体装置の製造方法を説明するための製造途中の装置の断面図であり、(B)、(D)は、それぞれ(A)、(C)の段階における平面図であり、(E)及び(F)は、それぞれ第1の実施例による半導体装置の断面図及び平面図である。
【図3】(A)及び(B)は、第1の実施例による半導体装置の動作原理を説明するための模式図であり、(C)は、分極の向き、磁化の向き、及びメモリ状態の関係を示す図表である。
【図4】第2の実施例による半導体装置の概略斜視図である。
【図5】(A)、(C)は、第3の実施例による半導体装置の製造方法を説明するための製造途中の装置の断面図であり、(B)、(D)は、それぞれ(A)、(C)の段階における平面図であり、(E)及び(F)は、それぞれ第3の実施例による半導体装置の断面図及び平面図である。
【図6】従来のMFIS型FETの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、100 基板
2、103 チャネル領域
3、101 ソース領域
4、102 ドレイン領域
7 ゲート絶縁膜
8 分極用電極
9 被制御膜
10、106 ゲート電極
11 磁化用配線
12 磁化用電源
15 反強磁性層
104 強誘電体膜
105 強磁性体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体からなる表層部を含む基板の該表層部内のチャネル領域の両側に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記チャネル領域の上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に配置され、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す被制御膜と、
前記被制御膜の上に形成されたゲート電極と、
前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁化制御構造と
を有する半導体装置。
【請求項2】
さらに、前記被制御膜と前記ゲート絶縁膜との間に、前記被制御膜の分極方向を制御する分極用電極を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記磁化制御構造は、前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁場を発生する電流を流す磁化用導電部材を含む請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
さらに、前記基板の上に配置され、前記ゲート電極を覆う絶縁膜を有し、
前記磁化用導電部材は、前記絶縁膜の上に配置され、前記チャネル領域を移動するキャリアの移動方向と平行な方向に延在する請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体からなる表層部を含む基板の該表層部内のチャネル領域の両側に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記チャネル領域の上に配置され、強誘電性を示すとともに、強磁性またはフェリ磁性をも示す被制御膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極と、
前記被制御膜の磁化の向きを変化させる磁化制御構造と
を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−216665(P2006−216665A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26274(P2005−26274)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】