説明

半導体装置

【課題】ロジック系CMOSトランジスタおよびパワー系DMOSトランジスタのそれぞれが最適な構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】第1半導体領域2の表面側に設けられた第1ソース領域3、ドレイン領域4と、第1ゲート13と、第1ゲートの両側面に形成された第1サイドウォール15と、第1LDD領域17とを有する第1のMOSトランジスタと、第2半導体領域22の表面側に設けられた第2ソース領域23、ドレイン領域24と、第2ゲート33と、第2ゲートの第2ドレイン側の側面に形成され、第1サイドウォールよりも広い第2サイドウォール41と、第2サイドウォール直下に形成されたドリフト領域43と、第2ゲートの第2ソース側の側面に形成され、第1サイドウォールよりも狭い第3サイドウォール35と、第3サイドウォール直下に形成された第2LDD領域37とを有する第2のMOSトランジスタを備えた半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種類の異なるトランジスタとを混載した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化は、ロジック系の回路要素とパワー系の回路要素を混載するシステムLSIの分野においても進展し、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の最小ゲート長が0.35μm、さらに0.13μmといった設計ルールが適用されるようになってきた。これに伴い、短ゲートのパワーDMOS(Double Diffused Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタが実現され、微細化されたCMOSトランジスタとDMOSトランジスタとを、同一基板上に混載した半導体装置を製作することが可能になってきた。
【0003】
一方、MOSトランジスタなどの回路要素の微小化にともない、マスク合わせの位置ずれなどプロセスマージンが相対的に大きくなり、デバイスの設計マージンが小さくなる傾向にある。特に、ロジック系トランジスタとパワー系トランジスタとを混載するLSI(Large Scale Integration circuit)では、それぞれ異なる設計要求を伴うことから、さらに設計条件が制約され、マージンが無くなるようなケースも生じていた。
【0004】
そこで、解決策の1つとして、MOSトランジスタのゲート電極の側面に形成可能なサイドウォールをイオン注入マスクとして使用し、ゲート周辺の微細構造を形成するプロセス技術が用いられている。例えば、特許文献1には、CMOSトランジスタのゲート電極の側面に形成するサイドウォールの幅と、DMOSトランジスタのゲート電極側面に形成されるサイドウォールの幅とを変えてDMOSトランジスタの耐圧を向上させる半導体装置が記載されている。
【0005】
しかしながら、LSIの限られたチップ面積を有効に活用して高集積化を行うという制約の下、ロジック系トランジスタとパワー系トランジスタとを、それぞれ最適な構造に形成する技術として、まだ検討の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−33024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の半導体装置では、DMOSトランジスタのゲート電極側面に形成されるサイドウォールを厚くし、チャネル領域とドレイン領域の間に形成されるドリフト領域の幅を広げてゲート・ドレイン間の耐圧を向上させている。しかしながら、ソース領域側にも厚いサイドウォールが形成されるため、ソース領域とチャネル領域との間に幅の広い中間濃度領域、所謂LDD(Lightly Doped Drain)領域が形成され、DMOSトランジスタのON抵抗が高くなり過ぎる場合があった。また、ソース領域とチャネル領域との間に必ずしも必要とされないサイドウォールが形成されることにより、ソースドレイン間の間隔が広がり高集積化が妨げられる懸念もある。
【0008】
そこで、本発明は、ロジック系トランジスタおよびパワー系トランジスタのそれぞれが最適な構造を有して混載され、高集積化を実現することのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、半導体基板と、前記半導体基板に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の表面側に設けられた第1ソース領域および第1ドレイン領域と、前記第1半導体領域の表面側に絶縁膜を介して設けられた第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の前記第1ソース領域側および前記第1ドレイン領域側の両側面に形成された第1サイドウォールと、前記第1サイドウォール直下の前記第1半導体領域に形成された第2導電型の第1LDD領域とを有する第1のMOSトランジスタと、前記半導体基板に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、前記第2半導体領域の表面側に設けられた第2ソース領域および第2ドレイン領域と、前記第2半導体領域の表面側に設けられた第2ゲート電極と、前記第2ゲート電極の前記第2ドレイン領域側の側面に形成され、前記第2ドレイン領域に向かう方向の幅が、前記第1サイドウォールの前記第1ソース領域または前記第1ドレイン領域に向かう方向の幅よりも広い第2サイドウォールと、前記第2サイドウォール直下の前記第2半導体領域に形成された第2導電型のドリフト領域と、前記第2ゲート電極の前記第2ソース領域側の側面に形成され、前記第2ソース領域に向かう方向の幅が、前記第1サイドウォールの前記幅よりも狭い第3サイドウォールと、前記第3サイドウォール直下の前記第2半導体領域に形成された第2導電型の第2LDD領域とを有する第2のMOSトランジスタと、を備えることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロジック系トランジスタおよびパワー系トランジスタのそれぞれが最適な構造を有して混載され、高集積化が可能な半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置に混載されるトランジスタの断面を示す模式図である。
【図2】第1実施例に係る半導体装置の製造工程を示す模式図であり、(a)は半導体領域の表面にチャネル領域を形成するためのイオン注入工程を示し、(b)はゲート電極が形成された状態を示している。
【図3】図2に続く製造工程を示す模式図であり、(a)はLDD領域を形成するためのイオン注入工程を示し、(b)はドリフト領域を形成するためのイオン注入工程を示している。
【図4】図3に続く製造工程を示す模式図であり、(a)はサイドウォールとなる絶縁膜が形成された状態を示し、(b)はゲート電極の両側にサイドウォールが形成された状態を示している。
【図5】図4に続く製造工程を示す模式図であり、(a)はCMOS部およびDMOS部のソース側のサイドウォールをエッチングするためのマスクを形成した状態を示し、(b)は、DMOS部のソース側のサイドウォールをエッチングするためのマスクを形成した状態を示している。
【図6】図5に続く製造工程を示す模式図であり、(a)はソース領域およびドレイン領域を形成するためのイオン注入工程を示しており、(b)は完成したCMOS部およびDMOS部を示している。
【図7】第2実施例に係る半導体装置に混載されるトランジスタの断面を示す模式図である。
【図8】第3実施例に係る半導体装置の製造工程を示す模式図であり、(a)は、CMOS部にチャネル領域を形成するためのイオン注入工程を示しており、(b)は、DMOS部のゲート電極のソース側直下にチャネル領域を形成するための斜めイオン注入工程を示している。
【図9】図8に続く製造工程を示す模式図であり、(a)は、LDD領域を形成するためのイオン注入工程を示し、(b)は、ドリフト領域を形成するためのイオン注入工程を示している。
【図10】第3実施例に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について適宜説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る半導体装置の断面と、半導体装置に混載されるトランジスタの断面を示す模式図である。本実施形態では、ロジック系トランジスタとしてCMOSトランジスタ、および、パワー系トランジスタとしてDMOSトランジスタが混載される半導体装置を例にとって説明する。
【0014】
以下、本実施の形態では第一導電型をP型、第二導電型をN型として説明する。しかし、これに限定されず、P型とN型が逆であってもよい。また、特に明記しない限り、DMOSトランジスタは、例えば、静耐圧が5〜15V程度の低耐圧パワーMOSトランジスタを意味するものとして説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。P型半導体基板1(P-sub)を共通の基板として、CMOS部の表面側にP型半導体領域2、DMOS部の表面側にP型半導体領域22が設けられている。さらに、P型半導体領域2および22のそれぞれの表面に、第1のMOSトランジスタであるN型MOSトランジスタ10と、第2のMOSトランジスタであるDMOSトランジスタ20が設けられている。P型半導体領域2と、P型半導体領域22とは、例えば、不純物濃度および厚さなどの仕様を共通とすることができる。また、各MOSトランジスタに要求される性能に合わせて異なる仕様とすることもできる。
【0016】
P型半導体領域2および22は、例えば、P型半導体基板1の表面に設けられた高抵抗のP型ウェル領域とすることができる。第1のMOSトランジスタおよび第2のMOSトランジスタが設けられる領域は、P型ウェル領域に限られず、例えば、シリコン基板の表面に設けられたP型の高抵抗エピタキシャル層でも良いし、高抵抗のP型シリコン基板でも良い。また、N型の半導体基板を用いることもできる。第1のMOSトランジスタおよび第2のMOSトランジスタが設けられるLSIの回路構成によって、それぞれ好適な形態が選択される。
【0017】
図1に示したCMOS部のMOSトランジスタは、N型MOSトランジスタ10であり、CMOSを構成する一方のトランジスタである。また、N型MOSトランジスタ10とともにCMOSを構成するP型MOSトランジスタ(図示しない)は、N型MOSトランジスタ10のP、Nを逆転させた構成を有している。さらに、図1に示したDMOS部のDMOSトランジスタ20も、N型MOSトランジスタ構造を有している。
【0018】
第1のMOSトランジスタであるN型MOSトランジスタ10は、第1半導体領域であるP型半導体領域2の表面に設けられた第1ソース領域であるN型のソース領域3と、ソース領域3に対して離間してP型半導体領域2の表面に設けられた第1ドレイン領域であるN型のドレイン領域4と、ソース領域3とドレイン領域4との間のP型半導体領域2の表面に設けられたP型のチャネル領域5と、を備えている。さらに、ソース領域3およびドレイン領域4の表面には、ソース電極11とドレイン電極12とが、それぞれ設けられている。
【0019】
P型半導体領域2の表面には、第1ゲート絶縁膜であるゲート絶縁膜7が設けられている。さらに、ゲート絶縁膜7を介してチャネル領域5の上に、第1ゲート電極であるゲート電極13が設けられている。
【0020】
チャネル領域5では、ゲート電極13に閾値電圧Vth以上のゲート電圧が印加された時に、ゲート絶縁膜7との界面に反転層を生じる。また、チャネル領域5には、閾値電圧Vthが所定の値となるように、P型不純物がドープされている。
【0021】
また、図1に示すように、N型MOSトランジスタ10は、チャネル領域5およびゲート電極13を中心にして左右対称の構造を有している。ゲート電極13のソース側およびドレイン側の側面には、それぞれ第1サイドウォールであるサイドウォール15が設けられている。さらに、サイドウォール15の直下であって、ソース領域3とチャネル領域5との間、およびドレイン領域4とチャネル領域5との間に、それぞれ第1LDD領域であるN型のLDD領域17が設けられている。
【0022】
図1中に示すように、ソース領域3およびドレイン領域4は、N型不純物が高濃度にドープされたN領域である。これに対し、LDD領域17は、ソース領域3およびドレイン領域4よりも低濃度に不純物がドープされたN領域であり、ホットキャリア効果を抑制するために設けられている。
【0023】
次に、DMOS部に設けられた第2のMOSトランジスタであるDMOSトランジスタ20について説明する。
【0024】
図1に示すように、DMOSトランジスタ20は、第2半導体領域であるP型半導体領域22の表面に設けられた第2ソース領域であるN型のソース領域23と、ソース領域23に対して離間して設けられた第2ドレイン領域であるN型のドレイン領域24と、ソース領域23とドレイン領域24との間のP型半導体領域22の表面に設けられたP型のチャネル領域25と、を備えている。
【0025】
さらに、P型半導体領域22の表面には、ゲート絶縁膜27が設けられ、ゲート絶縁膜27を介してチャネル領域25の上に第2ゲート電極であるゲート電極33が設けられている。
【0026】
ゲート電極33のドレイン側の側面には、第2サイドウォールであるサイドウォール41が設けられ、サイドウォール41の直下であって、チャネル領域25とドレイン領域24との間には、N型のドリフト領域43が設けられている。
【0027】
ドリフト領域43は、ソースドレイン間に印加される電圧によって空乏化するように、N型不純物が低濃度にドープされたN領域である。すなわち、ドリフト領域43が空乏化することにより、ソースドレイン間の耐圧が向上する。
【0028】
一方、ゲート電極33のソース側の側面には、第3サイドウォールであるサイドウォール35が設けられている。サイドウォール35の直下には、ソース領域23とチャネル領域25との間に、第2LDD領域であるN型のLDD領域37が設けられている。LDD領域37のN型不純物濃度は、ドリフト領域43と等しいか、ドリフト領域43よりも高濃度とすることができる。また、高濃度のN領域であるソース領域23よりも低濃度である。また、N型MOSトランジスタ10のLDD領域17と同じ濃度とすることもできる。
【0029】
また、ソース領域23およびドレイン領域24の表面には、それぞれソース電極31およびドレイン電極32が設けられている。また、ソース電極31の直下には、ソース領域23に隣接して高濃度のPコンタクト領域39が設けられている。Pコンタクト領域39は、P型半導体領域22をソース電極31と同電位に保持して、トランジスタ動作を安定させるために設けられている。また、図示はしないが、CMOS部においても、P型半導体領域2の電位を保持するためのPコンタクト領域が設けられている。
【0030】
さらに、本実施形態に係る半導体装置では、DMOSトランジスタ20において、ゲート電極33のドレイン側の側面に設けられるサイドウォール41の幅Wは、N型MOSトランジスタ10のゲート電極13の側面に設けられるサイドウォール15の幅Wよりも広く設けられる。また、DMOSトランジスタ20のゲート電極33のソース側の側面に設けられるサイドウォール35の幅Wは、P型MOSトランジスタ10のサイドウォール15の幅Wよりも狭く設けられている。ここで、各サイドウォールの幅とは、各ゲート電極からP型半導体領域2および22の表面に沿ったソース領域またはドレイン領域に向かう方向の幅を意味する。以下、同じ。
【0031】
すなわち、N型MOSトランジスタ10およびDMOSトランジスタ20に設けられた各サイドウォールの幅は、
> W > W ・・・(1)
となる大小関係を有する。
【0032】
例えば、最小ゲート長が0.35μm、または、0.13μmで設計されるCMOSトランジスタのLDD領域17の幅は、約0.1μmである。したがって、N型MOSトランジスタ10のサイドウォール15の幅Wは、約0.1μmとすることができる。
【0033】
また、DMOSトランジスタ20の耐圧を5〜10Vに設計するとすれば、ドリフト領域43の幅は約0.2μmとなる。したがって、ドリフト領域43の上に設けられるサイドウォール41の幅Wは、約0.2μmとすれば良い。
【0034】
これに対し、DMOSトランジスタ20のソース側に設けられるサイドウォール35の幅Wは、狭くても良い。微細化が進んだとしても、ホットキャリア効果を抑制するためのLDD領域17を設けることが不可欠という訳ではない。
【0035】
また、図1中に示すように、DMOSトランジスタ20のソース領域23とチャネル領域25との間にLDD領域37を設けた場合、ゲート電極33にゲート電圧が印加されてソース電極31からドレイン電極32に電流が流れる際に、ソース電極31とドレイン電極32との間のON抵抗が大きくなるという不利な効果を生じることがある。
【0036】
したがって、DMOSトランジスタ20のソース側のサイドウォール35の幅Wを0とすることもできる。すなわち、DMOSトランジスタのゲート電極33のソース側の側面にサイドウォール35を設けないで、ソース領域23とチャネル領域25とが接した構造に形成することもできる。これにより、ソース電極31とドレイン電極32との間のON抵抗を低減することができる。また、W=0となる分、ソースドレイン間の幅を狭くすることも可能であるから、高集積化の視点からも有利となる。
【0037】
一方、DMOSトランジスタ20のチャネル領域25を狭く設ける半導体装置では、LDD領域37を形成しておく方が好ましい場合がある。例えば、製造工程で高温の熱処理が実施された場合、高濃度にドープされたソース領域23のN型不純物は、チャネル領域25の方向に拡散する。ソース領域23から拡散したN型不純物は、P型のチャネル領域25に侵入しP型キャリアの濃度を下げるので、閾値電圧VTHが所定の値からずれてしまうことがある。このような場合、N型不純物の拡散長に相当する程度の幅Wを有するサイドウォール35を設けて、その直下にLDD領域37を形成しておくと、閾値電圧VTHの変動を抑えることができる。
【0038】
したがって、それぞれに適した構造を有するN型MOSトランジスタ10とDMOSトランジスタ20とを同一基板上に混載するために、前述した式(1)の関係となるサイドウォールを各トランジスタのゲート電極側面に設けることができる。これにより、N型MOSトランジスタ10では、ホットキャリア効果を抑制することができ、DMOSトランジスタ20では、必要な耐圧を確保した上でON抵抗を低くすることが可能となる。
【0039】
(第1実施例)
図2〜図6は、第1実施例に係る半導体装置の製造工程を示す模式図である。本実施例によれば、例えば、図1に示すN型MOSトランジスタ10とDMOSトランジスタ20とを混載した半導体装置を製造することができる。
【0040】
図2(a)は、CMOS部のP型半導体領域2の表面と、DMOS部のP型半導体領域22の表面と、にP型不純物をイオン注入する工程を示すシリコンウェーハの部分断面図である。それぞれチャネル領域となるP型半導体領域9とP型半導体領域29とが形成される。
【0041】
イオン注入するP型不純物としては、例えば、ボロン(B)を用いることができる。P型不純物の注入量は、トランジスタの閾値電圧Vthが所定の値となるように設定する。また、P型不純物をイオン注入した後、シリコンウェーハを熱処理し、P型不純物を活性化させてP型半導体領域9および29とする。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、P型半導体領域9および24の表面にゲート絶縁膜7および27を形成し、さらに、ゲート絶縁膜7および27の上に、それぞれゲート電極13および33を設ける。
【0043】
ゲート絶縁膜7および27は、例えば、P型半導体領域9および24の表面を熱酸化して形成することができる。また、ゲート電極13および33は、シリコンウェーハの表面に熱CVD法を用いて堆積した導電性のポリシリコン膜をパターニングして形成することができる。例えば、0.13μmルールを採用して設計をする場合、CMOS部のゲート電極13の幅(ゲート長)は、0.13μmであり、DMOS部のゲート長は、0.25〜0.3μmとすることができる。
【0044】
図3は、P型半導体領域2の表面と、P型半導体領域22の表面と、にN型不純物をイオン注入する工程を模式的に示す部分断面図である。LDD領域およびドリフト領域となるN型半導体領域が形成される。
【0045】
例えば、図3(a)に示すように、チャネル領域のイオン注入が施されたCMOS部とDMOS部とにおいて、DMOS部のドレイン側の表面に注入マスク51を形成する。注入マスク51には、フォトレジストを用いることができる。
【0046】
また、図3(a)に示すように、絶縁膜7および27を通過させてN型不純物を注入する。N型不純物の注入量は、LDD領域の濃度設定に応じて決定する。イオン注入するN型不純物には、例えば、ヒ素(As)またはリン(P)を用いることができる。
【0047】
CMOS部では、ゲート電極13をマスクとしてイオン注入し、チャネル領域5を形成するためにイオン注入されたP型半導体領域9をN型に反転させ、ゲート電極13の両側にN型半導体領域18を形成する。これにより、N型不純物がイオン注入されないゲート電極13の直下には、P型のチャネル領域5が形成される。チャネル領域5の幅は、ゲート電極13の幅にほぼ等しくなる。
【0048】
一方、DMOS部では、N型不純物は注入マスク51が形成されていないソース側にイオン注入される。また、ゲート電極33の露出部も注入マスクとして機能するため、ゲート電極33のソース側にのみN型半導体領域38が形成される。
【0049】
次に、図3(b)に示すように、CMOS部の表面と、DMOS部のソース側の表面とに、注入マスク52を形成する。その後、ドリフト領域となるN型半導体領域44を形成するために、N型不純物をイオン注入する。
【0050】
N型半導体領域44に注入されるN型不純物の量は、ソースドレイン間に所定の耐圧に相当する電圧が印加された場合に、ドリフト領域が空乏化して所望の耐圧が得られるような濃度となるように設定される。また、N型半導体領域44はゲート電極33のドレイン側のみに形成される。これにより、ゲート電極33の直下には、チャネル領域25が形成される。
【0051】
図3(a)に示す工程では、CMOS部のLDD領域17となるN型半導体領域18と、DMOS部のLDD領域37となるN型半導体領域38が同時に形成される。したがって、CMOS部のLDD領域17とDMOS部のLDD領域37とが同じ不純物濃度となるが、それぞれの濃度を変えて形成することも可能である。
【0052】
DMOSトランジスタ20のソースドレイン間のON抵抗を小さくする観点からすれば、LDD領域37のN型不純物の濃度をドリフト領域43よりも高くすることができるし、また、LDD領域17よりも高くすることもできる。
【0053】
次に、ゲート電極の側面にサイドウォールを形成する工程について説明する。図4(a)および(b)は、ゲート電極13および33の側面に、最初のサイドウォール55、56およびサイドウォール41を形成する工程を示す部分断面図である。
【0054】
まず、図4(a)に示すように、CMOS部およびDMOS部の表面に、ゲート電極33のドレイン側の側面に形成されるサイドウォール41の膜厚を持つ絶縁膜45を形成する。絶縁膜45には、例えば、熱CVD法を用いて堆積するシリコン酸化膜(SiO膜)を用いることができる。また、シリコン窒化膜(Si膜)を用いることもできる。さらに、SiO膜45とSi膜とを積層した多層膜としても良い。
【0055】
図4(b)に示すように、ゲート電極13および33の側面に形成されるサイドウォール55、56および41は、RIE(Reactive Ion Etching)の異方性を利用して形成することができる。すなわち、P型半導体領域2および22の表面に垂直な方向の絶縁膜45のエッチング速度が、P型半導体領域2および22の表面に平行な横方向のエッチング速度よりも早くなるようにRIEの条件を設定する。これにより、ゲート電極13および33の側面にサイドウォール55、56および41を残して、N型半導体領域18および38、44の平坦部の絶縁膜45を除去することができる。
【0056】
この際、横方向のエッチング量を加味して、絶縁膜45の当初の膜厚を設定しておけば、ゲート電極13および33の側面に形成されるサイドウォール55、56および41が所定の幅(W)となるように制御することができる。
【0057】
次に、図5(a)に示すように、DMOS部のゲート電極33の側面に形成されたサイドウォール57を覆うようにエッチングマスク59を形成する。その後、CMOS部のゲート電極13の側面に形成されたサイドウォール55、およびゲート電極33の側面に形成されたサイドウォール56を、例えば、RIEによりエッチバックし、所定の幅(W)とする。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、CMOS部の表面と、DMOS部のドレイン側を覆い、DMOS部のN型半導体領域38とゲート電極33のソース側の端部を露出させたエッチングマスク59を形成する。続いて、例えば、RIEによりサイドウォール56をエッチバックし、所定の幅(W)とする。
【0059】
上記のとおり図4および図5に示す工程を実施することにより、CMOS部のゲート電極13の側面にはサイドウォール55が形成され、DMOS部のゲート電極33の側面には、サイドウォール56および41が形成される。また、サイドウォール55、56および41の幅W、WおよびWは、式(1)の関係を満たす。
【0060】
次に、図6(a)に示すように、CMOS部およびDMOS部の表面にN型不純物をイオン注入して高濃度のN領域を形成する。この際、ゲート電極13および33、また、それぞれの側面に形成されたサイドウォール55、56、49が注入マスクとなる。
【0061】
これにより、CMOS部では、高濃度のN型不純物がドープされたソース領域3およびドレイン領域4と、チャネル領域5と、の間のサイドウォール55直下に、それぞれLDD領域17を形成することができる。また、DMOS部では、ソース領域23とチャネル領域25との間のサイドウォール56の直下にLDD領域37を形成することができ、ドレイン領域24とチャネル領域25との間のサイドウォール41の直下にドリフト領域43を形成することができる。
【0062】
上記の工程で形成されたLDD領域17およびLDD領域37、ドリフト領域43は、それぞれ、サイドウォール55、56、49の幅に対応したソースまたはドレイン方向の幅に形成される。すなわち、ドリフト領域43のドレイン方向の幅は、LDD領域17のソースまたはドレイン方向の幅よりも広く、また、LDD領域37のソース方向の幅は、LDD領域17のソースまたはドレイン方向の幅よりも狭く形成される。
【0063】
さらに、図6(b)に示すように、CMOS部では、ソース領域3およびドレイン領域4に、それぞれソース電極11およびドレイン電極12を設けてN型MOSトランジスタ10とすることができる。また、DMOS部では、イオン注入を用いてソース側の表面に高濃度のPコンタクト領域39を形成した後、Pコンタクト領域39とソース領域23とに跨ってソース電極31を設け、ドレイン領域24の表面にドレイン電極32を設けることにより、DMOSトランジスタ20とすることができる。
【0064】
(第2実施例)
図7は、第2実施例に係る半導体装置に混載されるトランジスタの断面を示す模式図であり、CMOS部に設けられたN型MOSトランジスタの断面、およびDMOS部に設けられたDMOSトランジスタ30の断面を示す模式図である。
【0065】
図7に示すように、本実施例では、DMOS部に設けられたゲート電極33のソース側のサイドウォールが除去されている。これにより、DMOS部のソース側では、ゲート電極33の端部が注入マスクのエッジとなり、高濃度のN領域であるソース領域23がP型のチャネル領域25に接して形成される。
【0066】
また、図7に示す構造は、例えば、図5(b)に示す工程において、ゲート電極33のソース側のサイドウォール56をエッチバックして除去することにより形成することができる。DMOS部に設けられるDMOSトランジスタ30は、ゲート電極33のソース側にLDD領域が無く、ソース領域23とチャネル領域25とが接続して設けられている。これにより、ソース電極31とドレイン電極32との間のON抵抗を小さくすることができる。
【0067】
一方、本実施例のように、ゲート電極33のソース側のサイドウォール56を完全に除去することが、全ての場合に好ましい訳ではない。例えば、サイドウォール56のエッチング残りを無くすために、オーバーエッチングとなる条件にRIEのエッチング時間を設定する場合がある。これにより、サイドウォール56以外の場所がエッチングされ、不具合が発生することがある。
【0068】
つまり、ゲート電極33のソース側の側面のサイドウォールを完全に除去せず、幅Wの狭いサイドウォール56を残したとしても、ON抵抗が許容できる範囲にあれば、実施例1に係る半導体装置の方が好ましいこともある。
【0069】
(第3実施例)
図8および図9は、第3実施例に係る半導体装置の製造工程を示す模式図である。図8は、不純物濃度が低いP層であるP型半導体領域2および22の表面に、P型不純物をイオン注入してチャネル領域となるP型半導体領域9および65を形成する工程を模式的に示す部分断面図である。また、図9は、P型半導体領域2および22の表面に、N型不純物をイオン注入して、LDD領域およびドリフト領域となるN領域を形成する工程を示す部分断面図である。
【0070】
図8(a)に示すように、DMOS部の表面に注入マスク61を形成した後、P型不純物をイオン注入する。これにより、CMOS部のP型半導体領域2の表面に、チャネル領域5となるP型半導体領域9が形成される。
【0071】
次に、ゲート絶縁膜7および27と、ゲート電極13および33と、を形成した後、図8(b)に示すように、CMOS部の表面およびDMOS部のドレイン側の表面に注入マスク62を形成する。その後、斜め方向からP型不純物をイオン注入する。これにより、DMOS部のP型半導体領域22のソース側表面に、P型半導体領域65が形成される。また、斜め方向からイオン注入することによって、ゲート電極33のソース側端部の直下にもP型半導体領域65が入り込んで形成される。
【0072】
続いて、図9(a)に示すように、DMOS部のドレイン側に注入マスク63を形成して、N型不純物をイオン注入する。これにより、CMOS部のゲート電極13の両側には、LDD領域17となるN型半導体領域18が形成され、ゲート電極13の下にはチャネル領域5が形成される。また、DMOS部のソース側にも、LDD領域37となるN型半導体領域38が設けられ、さらに、ゲート電極33のソース側端部の下にチャネル領域64が形成される。
【0073】
次に、図9(b)に示すように、CMOS部の表面およびDMOS部のソース側に注入マスク67を形成し、N型不純物をイオン注入する。これにより、DMOS部のドレイン側にドリフト領域43となるN型半導体領域44が形成される。
【0074】
次に、実施例1の図4および図5に示す工程を用いてゲート電極13、33の側面にサイドウォールを形成する。この際、他の形成方法を用いることもできる。また、上述したような斜めに角度をつけたイオン注入によらなくても、イオン注入後の熱処理によって、ゲート電極33の下部へP型半導体領域65を入り込ませることも可能である。
【0075】
図10は、本実施例に係る半導体装置の断面を示す模式図である。同図中に示すDMOSトランジスタ40では、図8(b)に示すP型不純物の斜めイオン注入によりチャネル領域64を形成し、閾値電圧Vthが所定の値となるようにP型不純物の注入量を制御する。また、チャネル領域64の幅が狭いため、ソース領域23からのN型不純物の拡散により閾値電圧Vthが変化し易い構造となっている。したがって、高濃度のN領域であるソース領域23とチャネル領域64との間に、ソース領域23よりも不純物濃度の低いLDD領域37を形成しておけば、ソース領域23から拡散するN型不純物が閾値電圧Vthに与える影響を抑えることができる。これにより、DMOSトランジスタ40の閾値電圧Vthの再現性を向上させることができる。
【0076】
以上、本発明に係る一実施形態および実施例1〜3を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、出願時の技術水準に基づいて、当業者がなし得る設計変更や、材料の変更等、本発明と技術的思想を同じとする実施態様も本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0077】
1 半導体基板
2、22 P型半導体領域
3、23 ソース領域
4、24 ドレイン領域
5、25 チャネル領域
7、27 絶縁膜(ゲート絶縁膜)
10 N型MOSトランジスタ
11、31 ソース電極
12、32 ドレイン電極
13、33 ゲート電極
15 サイドウォール(第1サイドウォール)
17、37 LDD領域
18、38 N型半導体領域
20、30、40 DMOSトランジスタ
9、29 P型半導体領域
35 サイドウォール(第3サイドウォール)
41 サイドウォール(第2サイドウォール)
43 ドリフト領域
45 絶縁膜
64 チャネル領域
第1サイドウォール幅
第2サイドウォール幅
第3サイドウォール幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の表面側に設けられた第1ソース領域および第1ドレイン領域と、前記第1半導体領域の表面側に絶縁膜を介して設けられた第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の前記第1ソース領域側および前記第1ドレイン領域側の両側面に形成された第1サイドウォールと、前記第1サイドウォール直下の前記第1半導体領域に形成された第2導電型の第1LDD領域とを有する第1のMOSトランジスタと、
前記半導体基板に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、前記第2半導体領域の表面側に設けられた第2ソース領域および第2ドレイン領域と、前記第2半導体領域の表面側に絶縁膜を介して設けられた第2ゲート電極と、前記第2ゲート電極の前記第2ドレイン領域側の側面に形成され、前記第2ドレイン領域に向かう方向の幅が、前記第1サイドウォールの前記第1ソース領域または前記第1ドレイン領域に向かう方向の幅よりも広い第2サイドウォールと、前記第2サイドウォール直下の前記第2半導体領域に形成された第2導電型のドリフト領域と、前記第2ゲート電極の前記第2ソース領域側の側面に形成され、前記第2ソース領域に向かう方向の幅が、前記第1サイドウォールの前記幅よりも狭い第3サイドウォールと、前記第3サイドウォール直下の前記第2半導体領域に形成された第2導電型の第2LDD領域とを有する第2のMOSトランジスタと、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1サイドウォール、前記第2サイドウォールおよび第3サイドウォールは、複数の絶縁膜を有して構成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2LDD領域の前記第2導電型の不純物濃度は、前記ドリフト領域の前記第2導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2LDD領域の前記第2導電型の不純物濃度は、前記第1LDD領域の前記第2導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の表面側に設けられた第1ソース領域および第1ドレイン領域と、前記第1半導体領域の表面側に絶縁膜を介して設けられた第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の前記第1ソース領域側および前記第1ドレイン領域側の両側面に形成された第1サイドウォールと、前記第1サイドウォール直下の前記第1半導体領域に形成された第2導電型の第1LDD領域とを有する第1のMOSトランジスタと、
前記半導体基板に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、前記第2半導体領域の表面側に設けられた第2ソース領域および第2ドレイン領域と、前記第2半導体領域の表面側に絶縁膜を介して設けられた第2ゲート電極と、前記第2ゲート電極の前記第2ドレイン領域側の側面に形成され、前記第2ドレイン領域に向かう方向の幅が、前記第1サイドウォールの前記第1ソース領域または前記第1ドレイン領域に向かう方向の幅よりも広い第2サイドウォールと、前記第2サイドウォール直下の前記第2半導体領域に形成された第2導電型のドリフト領域とを有する第2のMOSトランジスタと、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記第2のMOSトランジスタは、前記ソース側の前記第2ゲート電極の下部に選択的に設けられたチャネル領域を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−151301(P2011−151301A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13154(P2010−13154)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】