説明

半導体記憶装置、及びその製造方法

【課題】ダイオードの順方向特性を劣化させることなく逆方向特性を改善させる。
【解決手段】半導体記憶装置は、可変抵抗素子19及びダイオードDを有し、かつピラー状の第1及び第2のメモリセルと、第1のメモリセル及び第2のメモリセル間に設けられ、かつボイド21を有する絶縁層20とを含む。さらに、ダイオードDの中央部は、その上部及び下部よりも幅が狭くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置、及びその製造方法に係り、例えば記憶素子として可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同じデザインルール(F)でメモリデバイス密度を向上させる方法として、1ビットを形成するのに必要な面積を小さくすることが挙げられる。また、同じメモリ構造を縦方向に積層構造とすることで、同様にメモリデバイス密度を向上させることもできる。これらを達成する方法の一つとして、クロスポイント型のメモリセルが挙げられる。この構造では、上部配線と下部配線との交わるところに記憶領域を形成することで、1ビットあたりのセル面積を小さくすることができ、またその単純な構造から縦方向に積層するのにも適している。
【0003】
クロスポイント型のメモリセルは、PCRAM(phase change random access memory)やReRAM(resistive random access memory)など、いわゆる可変抵抗素子と組み合わせることで、メモリ動作させることができる。上部配線と下部配線とに挟まれた記憶素子の抵抗値を書き換え/判別することで、“0”及び“1”の情報を記憶/読み出しすることができる。ただし、この場合、メモリ情報の誤読み出しを避けるため、記憶素子に加え、整流作用のあるダイオードを付加するのが一般的である。
【0004】
クロスポイント側のメモリセルに用いられる代表的なダイオードとして、PINダイオードが挙げられる。このPINダイオードでは、シリコンを用いてデバイスが形成される。N型半導体層とP型半導体層との間に、不純物が導入されない真性半導体層を形成することで、逆方向リーク電流を抑制し、逆方向への電圧耐圧を向上している。この真性半導体層の厚さを厚くすると、逆方向の特性は改善すると同時に順方向電流は減少する。また、N型半導体層やP型半導体層の不純物濃度を濃くすると、抵抗低下から順方向電流は増加するが、プロセス中の熱により不純物が真性半導体層へ拡散し逆方向の特性が劣化する。このように、様々な構造やプロセスの変更において、順方向と逆方向との特性はトレードオフの関係にある。
【0005】
また、この種の関連技術として、高温時でもデータ保持特性が劣化しない相変化メモリ素子の構造が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−78663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ダイオードの順方向特性を劣化させることなく逆方向特性を改善させることが可能な半導体記憶装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る半導体記憶装置は、可変抵抗素子及びダイオードを有し、かつピラー状の第1及び第2のメモリセルと、前記第1のメモリセル及び前記第2のメモリセル間に設けられ、かつボイドを有する絶縁層とを具備し、前記ダイオードの中央部は、その上部及び下部よりも幅が狭い。
【0009】
本発明の一態様に係る半導体記憶装置の製造方法は、配線層上に、ダイオード及び可変抵抗素子が積層されたメモリセルを形成する工程と、前記メモリセルをピラー状に加工する工程と、前記ダイオードの中央部を細くする工程とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダイオードの順方向特性を劣化させることなく逆方向特性を改善させることが可能な半導体記憶装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す平面図。
【図2】図1に示したI−I´線に沿った半導体記憶装置の断面図。
【図3】第1の実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図4】図3に続く半導体記憶装置の製造工程を示す平面図。
【図5】図3に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図6】図5に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図7】図6に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図8】図7に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図9】図8に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図10】PINダイオードDのオン電流とオフ電流との関係を示すグラフ。
【図11】デバイス寸法と最大くびれ量との関係を示す図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す平面図。
【図13】図12に示したI−I´線に沿った半導体記憶装置の断面図。
【図14】図12に示したII−II´線に沿った半導体記憶装置の断面図。
【図15】第2の実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程を示すI−I´線に沿った断面図。
【図16】図15に続く半導体記憶装置の製造工程を示す平面図。
【図17】図16に続く半導体記憶装置の製造工程を示すI−I´線に沿った断面図。
【図18】図17に続く半導体記憶装置の製造工程を示すI−I´線に沿った断面図。
【図19】図18に続く半導体記憶装置の製造工程を示すI−I´線に沿った断面図。
【図20】図19に続く半導体記憶装置の製造工程を示すI−I´線に沿った断面図。
【図21】図19に続く半導体記憶装置の製造工程を示すII−II´線に沿った断面図。
【図22】図21に続く半導体記憶装置の製造工程を示すII−II´線に沿った断面図。
【図23】図22に続く半導体記憶装置の製造工程を示すII−II´線に沿った断面図。
【図24】本発明の第3の実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図25】図24に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図26】図25に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図27】図26に続く半導体記憶装置の製造工程を示す断面図。
【図28】本発明の第4の実施形態に係るスクリーニング方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す平面図である。図2は、図1に示したI−I´線に沿った半導体記憶装置の断面図である。本実施形態の半導体記憶装置は、可変抵抗素子をメモリセルに使用した抵抗変化型メモリである。
【0014】
例えばシリコン単結晶基板(図示せず)上に形成された任意のレベル層上に、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層11が設けられている。層間絶縁層11内には、それぞれがX方向に延在するように、複数の下部配線層が設けられている。下部配線層は、ワード線WLに対応する。図1には、簡略化のために、3本のワード線WL1〜WL3を示している。
【0015】
ワード線WLの上方には、それぞれがY方向に延在するように、複数の上部配線層が設けられている。上部配線層は、ビット線BLに対応する。図1には、簡略化のために、3本のビット線BL1〜BL3を示している。
【0016】
複数のワード線WLと複数のビット線BLとの交差領域にはそれぞれ、複数のメモリセルMCが設けられている。すなわち、本実施形態の半導体記憶装置は、クロスポイント型の抵抗変化型メモリである。
【0017】
メモリセルMCの平面形状は、特に制限されない。本実施形態では、メモリセルMCの平面形状は、例えば、円である。メモリセルMCは、ピラー状に形成されており、記憶素子としての可変抵抗素子19と、整流素子としてのPINダイオードDとが直列に接続されて構成されている。
【0018】
具体的には、ワード線WL上には、金属がPINダイオードDのシリコン(Si)と反応するのを防ぐために、バリア膜12が設けられている。バリア膜12上には、N型半導体層13、真性(intrinsic)半導体層(I層)14、P型半導体層15が順に積層されたPINダイオードDが設けられている。PINダイオードD上には、下部電極16、記録層17、上部電極18が順に積層された可変抵抗素子19が設けられている。可変抵抗素子19上には、メモリセルMCを保護し、かつCMP(chemical mechanical polishing)工程時のストッパーとして機能する保護膜32が設けられている。
【0019】
記録層17は、電圧又は電流が印加されることにより、少なくとも2値以上の抵抗値を、少なくとも室温にて双安定状態として取り得る。この2つの安定な抵抗値を書き込み及び読み出すことにより、少なくとも2値のメモリ動作を実現する。
【0020】
PINダイオードDは、その上部及び下部よりも中央部の幅が狭くなっており、具体的には、I層14の幅は、N型半導体層13及びP型半導体層15のそれよりも狭くなっている。換言すると、PINダイオードDは、その側面が凹状になっており、また、その中央部がくびれている。なお、メモリセルMCは、どの方向に切断した断面図も図2と同じであり、従って、PINダイオードDは、その中央部全体がくびれている。
【0021】
層間絶縁層11及びワード線WL上、かつメモリセルMC間には、層間絶縁層20が設けられている。層間絶縁層20内かつX方向に隣接するメモリセルMC間(具体的には、PINダイオードD間)には、ボイド(void)21が設けられている。同様に、層間絶縁層20内かつY方向に隣接するメモリセルMC間(具体的には、PINダイオードD間)にも、ボイド(void)21が設けられている。上部電極18上及び層間絶縁層20上には、ビット線BLが設けられている。
【0022】
(材料)
次に、半導体記憶装置を構成する各層の材料の一例について説明する。
【0023】
上部配線層(ビット線BL)及び下部配線層(ワード線WL)としては、タングステン(W)やアルミニウム(Al)などと、窒化チタン(TiN)などのバリア層との積層膜が用いられる。上部配線層及び下部配線層の厚さはそれぞれ、30〜200nm程度である。
【0024】
バリア膜12としては、窒化チタン(TiN)や、チタン(Ti)と窒化チタン(TiN)との積層膜などが用いられる。バリア膜12の厚さは、3〜20nm程度である。保護膜32としては、例えばタングステン(W)が用いられる。保護膜32の厚さは、20〜100nm程度である。
【0025】
PINダイオードDとしては、シリコン(Si)が用いられ、具体的には、PINダイオードDを構成するN型半導体層13は、シリコン(Si)にリン(P)などのドナーを導入して形成され、I層14は、真性半導体からなり、P型半導体層15は、シリコン(Si)にホウ素(B)などのアクセプタを導入して形成される。PINダイオードDの厚さ(高さ)は、50〜300nm程度である。
【0026】
下部電極16としては、例えば、チタンシリサイドと窒化チタン(TiN)との積層膜が用いられる。すなわち、窒化チタン(TiN)とシリコン(Si)との間にチタン(Ti)を挟み、このチタン(Ti)をシリサイド化することで、PINダイオードDと窒化チタン(TiN)との界面に、チタンシリサイドを形成する。PINダイオードDと窒化チタン(TiN)との界面にチタンシリサイドを設けることで、界面抵抗を下げることができる。上部電極18としては、例えば、窒化チタン(TiN)が用いられる。下部電極16及び上部電極18の厚さはそれぞれ、5〜30nm程度である。層間絶縁層20としては、例えば、酸化シリコン(SiO)が用いられる。
【0027】
記録層17としては、NiO、CoO、TiO、NbO、TaO、CeO、HfO、ZrO、MnO、CrO、FeO、CrO、CuOなどが挙げられる。記録層17の厚さは、2〜50nm程度である。
【0028】
(製造方法)
次に、図1及び図2のように構成された半導体記憶装置の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図3に示すように、例えばシリコン単結晶基板(図示せず)上に形成された任意のレベル層上に、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層11を堆積する。続いて、ダマシン法によって、層間絶縁層11内に、複数の下部配線層(ワード線WL)を形成する。すなわち、この層間絶縁層11内に、ワード線WLと同じ形状を有する複数の溝を形成する。続いて、これらの溝内に配線材料を堆積した後、この配線材料を溝部分だけ残すように層間絶縁層11の上面を平坦化する。これにより、層間絶縁層11内に、それぞれがX方向に延在するライン状の複数のワード線WLが形成される。
【0030】
続いて、ワード線WL及び層間絶縁層11上に、バリア膜12、PINダイオードDの材料(N型半導体層13、I層14及びP型半導体層15)、下部電極16、記録層17、上部電極18、保護膜32を順に堆積する。PINダイオードDは、シリコン層を成膜中にリン(P)やホウ素(B)を含むソースガスを選択的に流すことで、N型半導体層、P型半導体層、不純物を含まない(又は不純物濃度が十分低い)真性半導体層を形成する。或いは、シリコン層を成膜後に、イオン注入によってPINダイオードDを形成してもよい。
【0031】
続いて、図4(平面図)及び図5(断面図)に示すように、リソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)法によって、保護膜32上かつメモリセルMCの形成予定領域に、メモリセルMCの数に対応するハードマスク層30を形成する。各ハードマスク層30の平面形状は、メモリセルMCと同じ平面形状を有している。ハードマスク層30としては、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン又は窒化シリコンが用いられる。
【0032】
続いて、図6に示すように、例えばRIE法によって、保護膜32、上部電極18、記録層17、下部電極16、P型半導体層15、I層14、N型半導体層13、バリア膜12をエッチングし、ピラー状の複数のメモリセルMCを形成する。
【0033】
続いて、図7に示すように、アルカリ系溶液を用いたウエットエッチングによってPINダイオードDを細くする。これにより、中央部がくびれたPINダイオードDが形成される。アルカリ系溶液に対するシリコン(Si)のエッチングレートは不純物濃度が高いほど遅いことが知られており、その結果、不純物濃度の低いI層14がくびれたPINダイオードDが形成される。このウエットエッチングに用いる溶液としては、トリメチル・2-オキシエチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド(TM−Y)や、水酸化カリウム(KOH)などが用いられる。
【0034】
なお、ピラー状のメモリセルMCを形成するためのRIE工程(図6の製造工程)において、エッチング条件を制御することで、中央部がくびれたPINダイオードDを形成してもよい。このRIE工程は、例えば、エッチングガスを適宜変えることで制御可能である。具体的には、塩素(Cl)とアルゴン(Ar)との混合ガスを用いて、上部電極18、記録層17、下部電極16を加工する。続いて、臭化水素(HBr)と酸素(O)との混合ガスを用いて、シリコン層(P型半導体層15、I層14、及びN型半導体層13)を上から1/4程度加工する。その際、シリコン層の側壁には反応生成物が形成される。続いて、フッ素(F)をエッチングガスに混入してエッチングの等方成分を増やすことで、シリコン層を横方向にも削りながら2/4程度加工する。最後に、フッ素(F)をエッチングガスから除いて、シリコン層を1/4程度加工する。このようなRIE工程により、中央部がくびれたPINダイオードDを形成することができる。
【0035】
続いて、図8に示すように、メモリセルMC間を埋め込むように、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層20を試料全面に堆積する。これにより、メモリセルMCの下部及び上部は層間絶縁層20で埋まり、一方、PINダイオードDの横には、PINダイオードDのくびれに起因してボイド21が発生する。なお、このボイド21を安定的に形成するためには、PINダイオードDの中央部が少なくとも3nm程度細くなっている必要がある。
【0036】
続いて、図9に示すように、CMP法によって、保護膜32が露出するように、層間絶縁層20を平坦化する。続いて、図1及び図2に示すように、保護膜32上に配線材料を堆積し、この配線材料をリソグラフィ及びRIE法によってパターニングする。これにより、保護膜32上に複数の上部配線層(ビット線BL)が形成される。このようにして、第1の実施形態に係る半導体記憶装置が製造される。
【0037】
次に、本実施形態に係るPINダイオードDの特性について説明する。PINダイオードDに順方向電圧を印加した場合に流れる順電流(forward current)は、PINダイオードDを構成するN型半導体層13及びP型半導体層15の体積に比例する。すなわち、PINダイオードDの順電流Ifは以下の式で表される。
If ∝ N型半導体層及びP型半導体層の体積
一方、PINダイオードDに逆方向電圧を印加した場合に流れる逆電流(forward current)は、その主成分が表面リーク電流である。表面リーク電流は、PINダイオードDの表面欠陥、表面ラフネス、表面への付着物などに起因して発生し、PINダイオードDの表面領域を流れるリーク電流である。表面リーク電流は、PINダイオードDの周辺長に比例し、PINダイオードDの長さ(図2の縦方向の長さ)に反比例する。すなわち、PINダイオードDの逆電流Irは、半径rとすると、以下の式で表される。
Ir ∝ 1/∫dx/2πr
図2に示す断面形状を有するPINダイオードDは、N型半導体層13及びP型半導体層15の体積を減少させずに、PINダイオードDの中央部の周辺長を短くすることが可能となる。この結果、順電流を減少させずに、表面リーク電流を低減することができる。
【0038】
最小加工寸法(minimum feature size)が例えば45nmで形成されたデバイスを考える。20%程度の誤差を考慮すると、メモリセルMCのサイズ(すなわち、PINダイオードDのサイズ)は、“45nm±10nm”となる。このサイズを有するPINダイオードDについて順電流と逆電流との評価を行った。
【0039】
図10は、45nmのサイズを有するPINダイオードDの順電流(オン電流)と逆電流(オフ電流)との関係を示すグラフである。横軸がオン電流、縦軸がオフ電流を表しており、これらの単位は任意単位(arbitrary unit)である。図10には、くびれなし(くびれ量がゼロ)、くびれ量が10nm、くびれ量が20nmの3つの場合のグラフを載せている。
【0040】
図10によって、同じオン電流に対して3つのグラフのオフ電流を比較することができる。図10から、くびれ量を大きくするにつれて、オフ電流すなわち表面リーク電流を低減できることが確認できる。すなわち、PINダイオードDは、くびれ量が大きいほど、リーク特性が改善する。
【0041】
実際の加工を考えると、PINダイオードDが曲がったり、或いは折れたりせずに、安定的にPINダイオードDを加工できる必要があり、また、加工後の機械的応力に耐えられる必要がある。これらの条件を考慮すると、PINダイオードDのくびれ部分での許容最小幅は5nm程度必要である。
【0042】
図11は、デバイス寸法が45nm、35nm、25nmの3つの場合における最大くびれ量を示す図である。リソグラフィ時の寸法バラツキや加工バラツキにより、デバイス寸法は、15%〜20%程度の誤差を有する。図11は、デバイス寸法の誤差が20%程度である場合の計算結果である。PINダイオードDのくびれ部分での許容最小幅は、全てのデバイス寸法において5nm程度である。最大くびれ量とは、デバイス寸法から最大くびれ部分の幅を引いた値であり、また、括弧内は片側のくびれ量を表している。
【0043】
例えばデバイス寸法が25nmの場合、誤差は“25×0.2=5nm”、最大くびれ量は“25×0.8−5=15nm”、片側のくびれ量は最大くびれ量の概略半分“8nm”である。すなわち、デバイス寸法が25nmの場合、“15nm”が最大限くびれさせることのできる量となる。
【0044】
纏めると、PINダイオードDの最大くびれ量は、ダイオードのサイズを“L”nm、中央部の許容最小幅を5nm、製造誤差をサイズ“L”の15乃至20%とすると、“L−5−誤差”nmである。前述したように、ボイド21を安定的に形成するためには、PINダイオードDの中央部のくびれ量は少なくとも3nm程度必要である。この条件を合わせると、PINダイオードDのくびれ量は、
3nm乃至“L−5−誤差”nm
の範囲に設定される。
【0045】
以上詳述したように第1の実施形態では、PINダイオードDと可変抵抗素子19とを積層しかつ直列に接続してメモリセルMCを構成し、複数のワード線WLと複数のビット線BLとの交差領域にそれぞれ、複数個のメモリセルMCをマトリクス状に配置する。そして、PINダイオードDは、その上部及び下部よりも中央部の幅が狭くなるように、すなわち中央部がくびれるように形成される。さらに、最隣接するメモリセルMC間の層間絶縁層20内にボイド21を形成するようにしている。
【0046】
従って第1の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第1に、下部電極16とP型半導体層15との界面の面積を広く保つことができるため、コンタクト抵抗上昇を抑制できる。同様に、バリア膜12とN型半導体層13との界面の面積を広く保つことができるため、コンタクト抵抗上昇を抑制できる。
第2に、抵抗として働く上部及び下部の高濃度層(N型半導体層13及びP型半導体層15)の体積を大きく保つことができるため、PINダイオードDの抵抗上昇を抑制できる。
第3に、PINダイオードDの中央部の周辺長を短くし、かつ、電流が流れる方向のPINダイオードDの長さを長くすることで、表面リーク電流に起因する逆方向のリーク電流を抑制できる。これら第1乃至第3の効果の結果、PINダイオードDの順電流が低減するのを防ぎつつ、逆方向のリーク電流を抑制することができる。
【0047】
第4に、デバイスサイズが小さくなった時に、隣接するビット間の干渉がより顕在化する。ここで、第1の実施形態では、最隣接するメモリセルMC間にボイド21が存在する。このボイド21は絶縁性が高いため、メモリセル間の熱的、電気的干渉を抑制できる。この結果、メモリセル密度を高くした場合でも、不良及び誤動作の少ない半導体記憶装置を構成することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態と異なる製造方法によって半導体記憶装置を製造するようにしている。この第2の実施形態の製造方法に起因して、ボイドの位置やPINダイオードDの形状が第1の実施形態と異なっている。
【0049】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す平面図である。図13は、図12に示したI−I´線に沿った半導体記憶装置の断面図である。図14は、図12に示したII−II´線に沿った半導体記憶装置の断面図である。
【0050】
例えばシリコン単結晶基板(図示せず)上に形成された任意のレベル層上に、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層11が設けられている。層間絶縁層11上には、金属が層間絶縁層11へ拡散するのを防ぐためのバリア膜31を介して、それぞれがX方向に延在するように、複数の下部配線層(ワード線WL)が設けられている。バリア膜31としては、窒化チタン(TiN)や、窒化チタン(TiN)とチタン(Ti)との積層膜などが用いられる。バリア膜31の厚さは、3〜20nm程度である。ワード線WLの上方には、それぞれがY方向に延在するように、複数の上部配線層(ビット線BL)が設けられている。
【0051】
複数のワード線WLと複数のビット線BLとの交差領域にはそれぞれ、複数のメモリセルMCが設けられている。メモリセルMCの平面形状は、四角形である。メモリセルMCは、ピラー状に形成されており、記憶素子としての可変抵抗素子19と、整流素子としてのPINダイオードDとが直列に接続されて構成されている。
【0052】
具体的には、ワード線WL上には、金属がPINダイオードDのシリコン(Si)と反応するのを防ぐために、バリア膜12が設けられている。バリア膜12上には、PINダイオードDが設けられている。PINダイオードD上には、可変抵抗素子19が設けられている。可変抵抗素子19上には、メモリセルMCを保護し、かつCMP工程時のストッパーとして機能する保護膜32が設けられている。
【0053】
層間絶縁層11及びワード線WL上、かつメモリセルMC間には、層間絶縁層20が設けられている。層間絶縁層20内かつX方向に隣接するメモリセルMC間(具体的には、PINダイオードD間)には、ボイド(void)21が設けられている。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、Y方向に隣接するメモリセルMC間には、ボイドが存在しない。保護膜32上及び層間絶縁層20上には、ビット線BLが設けられている。
【0054】
図14に示すように、PINダイオードDのX方向断面は、その上部及び下部よりも中央部の幅が狭くなっている。換言すると、PINダイオードDは、その中央部がくびれている。くびれ量の条件は、第1の実施形態と同じである。
【0055】
一方、図13に示すように、メモリセルMCのY方向断面は、順テーパ形状である。すなわち、PINダイオードDのY方向断面は、その中央部がくびれていない。
【0056】
(製造方法)
次に、図12乃至図14のように構成された半導体記憶装置の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0057】
図15に示すように、例えばシリコン単結晶基板(図示せず)上に形成された任意のレベル層上に、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層11を堆積する。続いて、層間絶縁層11上に、バリア膜31、下部配線層(ワード線WL)、バリア膜12、PINダイオードDの材料(N型半導体層13、I層14及びP型半導体層15)、下部電極16、記録層17、上部電極18、保護膜32を順に堆積する。
【0058】
続いて、図16(平面図)及び図17(断面図)に示すように、リソグラフィ及びRIE法によって、保護膜32上に、図12の複数のワード線WLと同じ平面形状を有するライン状の複数のハードマスク層30を形成する。ハードマスク層30としては、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン又は窒化シリコンが用いられる。
【0059】
続いて、図18に示すように、例えばRIE法によって、保護膜32、上部電極18、記録層17、下部電極16、P型半導体層15、I層14、N型半導体層13、バリア膜12、ワード線WL、バリア膜31をエッチングし、積層膜をライン状に分割する。この時、ライン状積層膜の各々は、そのY方向断面が順テーパ形状を有している。
【0060】
続いて、図19に示すように、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層20−1を試料全面に堆積する。続いて、保護膜32をストッパーとして用いて、CMP法によって、層間絶縁層20−1の上面を平坦化する。これにより、ライン状積層膜間が層間絶縁層20−1によって埋め込まれる。この時、層間絶縁層20−1内には、ボイドが形成されない。
【0061】
続いて、図20(Y方向断面)及び図21(X方向断面)に示すように、保護膜32上及び層間絶縁層20−1上に、上部配線層(ビット線BL)を堆積する。続いて、リソグラフィ及びRIE法によって、ビット線BL上に、図12の複数のビット線BLと同じ平面形状を有するライン状の複数のハードマスク層33を形成する。ハードマスク層33としては、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン又は窒化シリコンが用いられる。
【0062】
続いて、図22に示すように、RIE法によって、ビット線BL、保護膜32、上部電極18、記録層17、下部電極16、P型半導体層15、I層14、N型半導体層13、バリア膜12、およびビット線BL間の下に存在する層間絶縁層20−1をエッチングする。これにより、ピラー状の複数のメモリセルMCが形成される。この時、エッチング条件を制御して、PINダイオードDを細くすることで、中央部がくびれたPINダイオードDを形成する。なお、第1の実施形態で説明したように、RIE工程によってX方向断面が順テーパ形状のメモリセルMCを形成した後、アルカリ系溶液を用いたウエットエッチングによって中央部がくびれたPINダイオードDを形成するようにしてもよい。
【0063】
続いて、図23に示すように、メモリセルMC間を埋め込むように、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁層20−2を試料全面に堆積する。これにより、メモリセルMCの下部及び上部は層間絶縁層20−2で埋まり、一方、PINダイオードDの横には、PINダイオードDのくびれに起因してボイド21が発生する。なお、このボイド21を安定的に形成するためには、PINダイオードDの中央部が少なくとも3nm程度細くなっている必要がある。
【0064】
続いて、図14に示すように、CMP法によって、ビット線BLが露出するように、層間絶縁層20を平坦化する。このようにして、第2の実施形態に係る半導体記憶装置が製造される。
【0065】
以上詳述したように第2の実施形態では、ワード線WL及びビット線BLを加工する2回のRIE工程を利用してピラー状のメモリセルMCを形成するようにしている。また、X方向断面において、PINダイオードDは、その上部及び下部よりも中央部の幅が狭くなるように、すなわち中央部がくびれるように形成される。さらに、X方向に隣接するメモリセルMC間にボイド21を形成するようにしている。
【0066】
従って第2の実施形態によれば、製造工程を少なくしつつ、メモリセルMCの微細化及び高集積化か可能となる。これにより、製造コストを低減することができる。その他の効果は、第1の実施形態と同じである。
【0067】
なお、本実施形態では、下部配線層(ワード線WL)及び上部配線層(ビット線BL)はそれぞれ、RIE法によって形成しているが、これらの配線層をダマシン法によって形成するようにしてもよい。
【0068】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態と異なる製造方法によって半導体記憶装置を製造するようにしている。すなわち、可変抵抗素子19への加工ダメージを低減しつつ、中央部がくびれたPINダイオードDを形成するようにしている。
【0069】
図5までの製造工程は、第1の実施形態と同じである。続いて、図24に示すように、例えばRIE法によって、保護膜32、上部電極18、記録層17、下部電極16をエッチングし、P型半導体層15の上面を露出させる。続いて、可変抵抗素子19の周囲に、例えば窒化シリコン(SiN)からなる側壁40を形成する。
【0070】
続いて、図26に示すように、RIE法によって、P型半導体層15、I層14、N型半導体層13、バリア膜12をエッチングする。これにより、ピラー状の複数のメモリセルMCが形成される。
【0071】
続いて、図27に示すように、アルカリ系溶液を用いたウエットエッチングによってPINダイオードDを細くすることで、中央部がくびれたPINダイオードDを形成する。この時、可変抵抗素子19は側壁40で囲まれているため、可変抵抗素子19への加工ダメージを防ぐことができる。なお、ピラー状のPINダイオードDを形成するためのRIE工程(図26の製造工程)において、エッチング条件を制御することで、中央部がくびれたPINダイオードDを形成してもよい。以降の製造工程は、第1の実施形態と同じである。
【0072】
以上詳述したように第3の実施形態では、まず、可変抵抗素子19のみを加工し、続いて、可変抵抗素子19の周囲に側壁40を形成して可変抵抗素子19を保護するようにしている。その後に、PINダイオードDの加工を行っている。
【0073】
従って第3の実施形態によれば、可変抵抗素子19、特に記録層17への加工ダメージを懸念することなく、中央部がくびれたPINダイオードDを形成することができる。また、可変抵抗素子19の特性劣化を防ぐことができる。なお、第3の実施形態の製造方法を第2の実施形態に適用することも可能である。
【0074】
(第4の実施形態)
第1乃至第3の実施形態で示した半導体記憶装置は、複数のワード線WLと複数のビット線BLとの交差領域に、マトリクス状に配置された複数のメモリセルMCを備えている。また、各メモリセルMCは、ワード線WLとビット線BLとの間に直列に接続された可変抵抗素子19及びPINダイオードDを備えている。
【0075】
このようなクロスポイント型の半導体記憶装置では、1本のワード線WL、又は1本のビット線BLには、複数のビットが存在している。例えば、ある1ビットにおいて、シリコン(Si)中の結晶欠陥などによってPINダイオードDがショート、或いは記録層17の欠陥によりショートした場合を考える。この時、このビットは、これに対応するワード線WLとビット線BLとがショートして不良となるが、このビットに電圧差が掛かった時には常に電流が流れるため、同じワード線WL及びビット線BLに繋がった他のビットも読み出しの時に不良となる。コスト削減のためには、大きなメモリセルアレイを形成する必要があるが、このような完全にショートしたビットが発生すると、長いビット線BL及びワード線WLに繋がったビットが同時に多数不良することになり、製造歩留まりを低下させる大きな原因となりえる。
【0076】
ここで、第1乃至第3の実施形態で示したPINダイオードDは、その上部及び下部よりも中央部の幅が狭くなっている。PINダイオードDのうち中央部の細い領域では、電流密度が上部及び下部の領域よりも高くなる。このため、PINダイオードDに電流を流した際、選択的に中央部を発熱させることができる。もし、メモリセルMCにショート不良が発生した場合、これに電流を流すことでPINダイオードDを破断する。これにより、ショート箇所をオープンさせることができるため、ビット線BL及びワード線WLに渡る不良を阻止することができる。
【0077】
図28は、半導体記憶装置におけるショート不良のスクリーニング方法を示すフローチャートである。
【0078】
まず、半導体記憶装置のテストを行い、不良ビットを検出する(ステップS100)。続いて、不良ビットに所定電圧を所定時間印加することで、不良ビットのPINダイオードDを破断する(ステップS101)。
【0079】
具体的には、不良ビットに繋がる選択ビット線及び選択ワード線にそれぞれ、例えば、3V及び0Vを、時間にして100μs程度印加する。一方、選択ビット線及び選択ワード線以外の非選択ビット線及び非選択ワード線にはそれぞれ、0V及び3Vを印加する。これにより、不良ビットのPINダイオードDのみが選択的に破断される。
【0080】
続いて、不良ビットのPINダイオードDが破断されたのを確認、すなわち、ショート箇所がオープンになっているのを確認する(ステップS102)。ショート箇所がオープンになっていない場合には、再度ステップS101の処理を実行する。また、不良ビットが複数存在する場合は、ステップS101の破断処理を不良ビットごとに行う。
【0081】
以上詳述したように第4の実施形態によれば、第1乃至第3の実施形態で示した半導体記憶装置を用いることで、不良ビットが発生した場合に、この不良ビットに繋がるビット線及びワード線が全て不良になるのを防ぐことができる。この結果、製造歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0082】
なお、各実施形態では、ReRAM(resistive random access memory)を一例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、PCRAM(phase change random access memory)など他の抵抗変化型メモリに適用可能であることは勿論である。
【0083】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化できる。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0084】
WL…ワード線、BL…ビット線、MC…メモリセル、D…PINダイオード、11…層間絶縁層、12,31…バリア膜、13…N型半導体層、14…真性半導体層、15…P型半導体層、16…下部電極、17…記録層、18…上部電極、19…可変抵抗素子、20…層間絶縁層、21…ボイド、30,33…ハードマスク層、32…保護膜、40…側壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変抵抗素子及びダイオードを有し、かつピラー状の第1及び第2のメモリセルと、
前記第1のメモリセル及び前記第2のメモリセル間に設けられ、かつボイドを有する絶縁層と、
を具備し、
前記ダイオードの中央部は、その上部及び下部よりも幅が狭いことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記ダイオードは、N型半導体層、P型半導体層、及びこれらに挟まれた真性半導体層を有し、
前記真性半導体層の幅は、前記N型半導体層及び前記P型半導体層のそれよりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記ダイオードの中央部のくびれ量は、3nm乃至15nmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
下部配線層上に、ダイオード及び可変抵抗素子が積層されたメモリセルを形成する工程と、
前記メモリセルをピラー状に加工する工程と、
前記ダイオードの中央部を細くする工程と、
を具備することを特徴とする半導体記憶装置の製造方法。
【請求項5】
隣接する第1のメモリセル及び第2のメモリセル間に絶縁材料を堆積することで、ボイドを有する絶縁層を形成する工程をさらに具備することを特徴とする請求項4に記載の半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−186872(P2010−186872A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30109(P2009−30109)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】