説明

半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法

【課題】高速性及び記憶保持特性に優れた半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置1は、半導体基板22上に形成された下部電極55と、下部電極55上に形成され、電気磁気効果を示す電気磁気効果層53と、電気磁気効果層53上に形成された上部電極51と、上部/下部電極51、55間に電圧を印加して所定方向に揃えられた電気磁気効果層53の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層57とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体メモリ等に利用される半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやインターネットの発展に伴い、デジタルデータをいかに効率よく保持するかが重要な開発課題となっている。データを保持する記憶装置は、その用途に合わせて幾つかある。記憶装置として、強磁性体の磁化方向によりデータを定義する磁気記録方式を用いた記憶装置がある。磁気記録方式を用いた記憶装置には、ハードディスクなどがある。磁気記録方式を用いた記憶装置は記憶保持特性に優れるが、データの読出し方法が走査型であり高速性や携帯性に問題がある。
【0003】
また、記憶装置として、電源を切っても直前の記憶が保持され、かつランダムアクセスが可能な不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)がある。種々の不揮発性RAMのなかで、自発分極を持つ強誘電体をキャパシタの誘電体層に用いた不揮発性メモリ(FeRAM)は、消費電力が小さいことから、モバイル分野の次世代メモリとして期待されている。FeRAMでは、誘電体層の分極の向きによりデータが定義される。FeRAMでは、データの読出しは電圧駆動の電気回路で全て行われるため、磁気記録方式を用いた記憶装置に比較して高速性や携帯性に優れている。しかしながら、FeRAMは、誘電体層の形成材料自体の疲労、劣化及びインプリントなどの問題があり、更なる大容量不揮発性メモリに適用することは難しくなってきている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−43227号公報
【特許文献2】特開2005−104744号公報
【特許文献3】特開2005−156390号公報
【非特許文献1】白鳥紀一、喜多英治:固体物理 (1979) Vol.14 No.10 「磁性体の電気磁気効果」
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society. 127, 8889
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高速性及び記憶保持特性に優れた半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、半導体基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成され、電気磁気効果を示す電気磁気効果層と、前記電気磁気効果層上に形成された上部電極と、前記上部/下部電極間に電圧を印加して所定方向に揃えられた前記電気磁気効果層の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層とを有することを特徴とする半導体記憶装置によって達成される。
【0007】
また、上記目的は、半導体基板上に下部電極を形成し、前記下部電極上に電気磁気効果を示す電気磁気効果層を形成し、前記電気磁気効果層上に上部電極を形成し、前記上部/下部電極間に電圧を印加して所定方向に揃えられた前記電気磁気効果層の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層を形成することを特徴とする半導体記憶装置の製造方法によって達成される。
【0008】
また、上記目的は、電気磁気効果を示す電気磁気効果層に電圧を印加して前記電気磁気効果層の磁化方向を所定方向に揃え、前記磁化によって前記電気磁気効果層周囲に磁場を発生させ、前記磁場によって磁気記憶層の磁化方向を前記磁化方向に基づいた所定方向に揃えた後に前記電圧の印加を止め、前記磁気記憶層に前記電気磁気効果層の前記磁化方向に基づいて方向が決まる残留磁化を発生させて、前記残留磁化の方向に対応付けてデータを書込むことを特徴とする半導体記憶装置のデータ書込み方法によって達成される。
【0009】
また、上記目的は、電気磁気効果を示し、磁気記憶層に発生した残留磁化によって誘電分極が発生した電気磁気効果層に電圧を印加し、前記残留磁化の方向を前記誘電分極の方向に基づいて読出して、前記残留磁化の方向に対応付けたデータを読出すことを特徴とする半導体記憶装置のデータ読出し方法によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速性及び記憶保持特性に優れた半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施の形態による半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法について図1乃至図15を用いて説明する。図1は、本実施の形態による半導体記憶装置1をメモリセルとして備えたメモリセルアレイの構成を示す回路図である。
【0012】
図1に示すメモリセルアレイは、不図示の半導体基板上に一方向に延びる複数のビット線103と、ビット線103の延伸方向に直交して延びる複数のワード線104と、ワード線104に平行な複数のプレート線105とを有している。ビット線103とワード線104との各交差位置に対応して半導体記憶装置1がそれぞれ形成されている。半導体記憶装置1は選択用トランジスタ102と磁気記憶部106とを有している。
【0013】
選択用トランジスタ102のゲート電極10はワード線104に接続されている。選択用トランジスタ102のドレイン電極27はビット線103に接続され、ソース電極28は磁気記憶部106内の上部電極51(図1では不図示)に接続されている。また、磁気記憶部106の下部電極55(図1では不図示)はプレート線105に接続されている。
【0014】
図2(a)は、半導体記憶装置1の基板面に垂直な断面構造を示している。本実施の形態による半導体記憶装置1は、電気磁気効果を利用して磁気記憶層57にデータの書込み及び読出しをする点に特徴を有している。電気磁気効果とは、電気磁気効果を示す物質に電場Eを印加すると当該物質の磁化が所定方向に揃えられて物質全体として磁化Mが発生し、磁場Hを印加すると当該物質に誘電分極Pが発生する効果である。
【0015】
図2(a)に示すように、半導体記憶装置1の選択トランジスタ102は、例えばp型シリコン半導体基板22に形成された素子分離絶縁膜24で画定された素子領域内に形成されている。半導体基板22として、n型シリコン半導体基板を用いてもよい。選択トランジスタ102は、ゲート電極10、ゲート絶縁膜7、ソース領域3及びドレイン領域4を有している。ゲート絶縁膜7は、シリコン半導体基板22上に形成され、ゲート電極10はゲート絶縁膜7上に形成されている。
【0016】
ゲート絶縁膜7下方の半導体基板22の表層部はチャネル領域となっている。チャネル領域を挟んだ両側には、n型不純物活性化領域であるソース領域3とドレイン領域4とが形成されている。
【0017】
半導体基板22全面には酸窒化シリコン(SiON)のカバー膜(不図示)が約200nmの厚さに形成されている。カバー膜全面には二酸化シリコン(SiO)の層間絶縁膜20が約1.0μmの厚さに形成されて、ソース領域3、ドレイン領域4、ゲート絶縁膜7、ゲート電極10及び素子分離絶縁膜24を覆っている。
【0018】
ソース/ドレイン領域3、4上には、層間絶縁膜20を開口したコンタクトホールにタングステン(W)を埋め込んだタングステン・プラグが形成されている。ソース領域3と電気的に接続されたタングステン・プラグはソース電極28として機能し、ドレイン領域4と電気的に接続されたタングステン・プラグ(図2(a)では不図示)はドレイン電極27として機能する。なお、ソース/ドレイン領域3、4及びゲート電極10のそれぞれの上表面にシリサイド膜(不図示)が形成されていてもよい。層間絶縁膜20上表面は平坦化されており、ドレイン電極27、ソース電極28の上面がそれぞれ露出している。
【0019】
層間絶縁膜20上表面には、半導体記憶装置1の磁気記憶部106の下部電極55が形成されている。下部電極55は、例えば白金(Pt)で形成されている。下部電極55の厚さは、例えば100〜300nm程度である。下部電極55下部には、層間絶縁膜20と下部電極55との密着層として酸化チタン層(不図示)が形成されている。
【0020】
下部電極55上には、1次の電気磁気効果を示す電気磁気効果層53が形成されている。電気磁気効果層53は、例えば膜厚d=100nmの酸化クロム(Cr)で形成されている。電気磁気効果層53の電気磁気定数αは、例えばα=2×10−9(s/m)である。Crの他に、例えばFeTeO、NbMn、TaMn、FeGaO、NiO1I、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、又はTbPO等を電気磁気効果層53の形成材料に用いることができる。
【0021】
本実施の形態の電気磁気効果層53は、膜厚方向に電場Eを印加すると電場Eと逆方向に磁化Mが発生し、膜厚方向に磁場Hを印加すると磁場Hと逆方向に誘電分極Pが発生するようになっている。なお、電気磁気効果層53の形成材料を選択することにより、電場Eと磁化Mの方向や磁場Hと誘電分極Pの方向を種々選択することができる。また、膜厚方向に直交する方向に電気磁気効果を生じさせることも可能である。
【0022】
電気磁気効果層53上には上部電極51が形成されている。上部電極51は、例えばPtで形成されている。上部電極51の厚さは、例えば100〜300nm程度である。
【0023】
上部電極51上には磁気記憶層57が形成されている。磁気記憶層57は垂直磁化膜である。磁気記憶層57は、強磁性体で形成され、例えばNi系合金、Fe系合金、Co系合金、CoCr系合金、CoPt系合金、CoCrTa系合金、CoCrPt系合金、CoCrPt系合金のCo系合金のいずれかで形成されている。磁気記憶層57の保磁力(抗磁場)Hcは、例えばHc=4000Oe(エルステッド)であり、飽和磁化Msは、例えばMs=10000Gである。また、磁気記憶層57は導電性を有している。
【0024】
このように、下部電極55と、下部電極55上の電気磁気効果層53と、電気磁気効果層53上の上部電極51と、上部電極51上の磁気記憶層57とで磁気記憶部106が構成されている。
【0025】
層間絶縁膜20上の全面にはSiOの層間絶縁膜38が形成され、層間絶縁膜20及び磁気記憶部106を覆っている。磁気記憶層57のほぼ中央部上には層間絶縁膜38を開口したコンタクトホール83が形成され、ソース電極28上には層間絶縁膜38を開口したコンタクトホール85が形成されている。コンタクトホール83は、磁気記憶層57の中央部上に限らず磁気記憶層57上に形成されていればよく、例えば図2(b)に示すように、磁気記憶層57の端部上に形成されていてもよい。
【0026】
層間絶縁膜38上及びコンタクトホール83、85の内部には、アルミニウム(Al)の配線34が形成されている。磁気記憶層57は、コンタクトホール83内部に形成された配線34に接続されている。上部電極51は、導電性を有する磁気記憶層57を介して配線34に電気的に接続され、配線34を介してソース電極28に電気的に接続されている。
【0027】
次に、電気磁気効果層53の電気磁気効果について図3及び図4を用いて説明する。図3は、図2(a)に示す半導体記憶装置1から磁気記憶部106だけを取り出して模式的に示している。上部電極51及び下部電極55は電圧源71に接続されている。
【0028】
図3及びこれ以後の図において、下部電極55から上部電極51に向かう方向を「上向き(上方向)」といい、その逆方向を「下向き(下方向)」という。また、座標系を用いる場合は下部電極55から上部電極51に向かう方向を正方向とし逆向きを負方向とする。
【0029】
図4(a)及び図4(b)は、1次の電気磁気効果を説明する図である。図4(a)の横軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に印加される電場Eの成分を表している。縦軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に生じる磁化Mの成分を表している。図4(a)に示すように、電気磁気効果層53に印加された電場Eとそれにより発生する磁化Mとは線形の関係であり例えば直線αで示される。本例では、印加された電場Eの方向と逆方向に磁化Mが発生するので、直線αの傾きは「−」(マイナス)である。
【0030】
図4(b)の横軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に印加される磁場Hの成分を表している。縦軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に生じる誘電分極Pの成分を表している。図4(b)に示すように、電気磁気効果層53に印加された磁場Hとそれにより発生する誘電分極Pとは線形の関係であり例えば直線βで示される。本例では、印加された磁場Hの方向と逆方向に誘電分極Pが発生するので、直線βの傾きは「−」である。
【0031】
このように、物質に電場Eを印加すると物質全体として電場Eに比例した磁化Mが発生し、磁場Hを印加すると物質に磁場Hに比例した誘電分極Pが発生することを1次の電気磁気効果という。電気磁気効果については、非特許文献1に詳細に記載されている。
【0032】
次に、半導体記憶装置1のデータ書込み方法について図5及び図6を用いて説明する。図5はデータ「1」の書込み方法を示し、図6はデータ「0」の書込み方法を示している。本実施の形態による半導体記憶装置1は、データ書込み及びデータ読出しに図4に示した1次の電気磁気効果を利用する。
【0033】
データを書込むには、所定のビット線103とワード線104とを駆動して、データを書込む半導体記憶装置1を選択する。選択された半導体記憶装置1の磁気記憶部106には、ビット線103の電圧が上部電極51に印加され、プレート線105の電圧が下部電極55に印加される。
【0034】
磁気記憶部106にデータ「1」を書込む場合には、プレート線105の電位より高い正極性の電位をビット線103に印加する。これにより、図5(a)に示すように、上部/下部電極51、55間の電気磁気効果層53に上部電極51側が高電位になるデータ「1」書込み電圧Vw1が印加される。データ「1」書込み電圧Vw1は、例えば電圧値が+20V、パルス幅が1nsのパルス電圧である。データ「1」書込み電圧Vw1が印加されると、上部電極51に正電荷(「+」で示す)が集まり、下部電極55に負電荷(「−」で示す)が集まるので、下向きの電場Ew1が電気磁気効果層53に印加される。
【0035】
電場Ew1の印加により、電気磁気効果層53の磁化は上向きに揃えられ、電気磁気効果層53には全体として上向きの磁化Mw1が発生する。磁化Mw1によって、電気磁気効果層53の周囲に磁場が発生し、当該磁場によって磁気記憶層57の磁化は上向きに揃えられ、磁気記憶層57には全体として上向きの磁化Mm1’が発生する。電圧Vw1の印加を止めると電気磁気効果による電気磁気効果層53の磁場は消滅するが、強磁性体の磁気記憶層57には図5(b)に示すように、上向きの残留磁化Mm1が維持される。これにより磁気記憶部106にデータ「1」が書込まれ記憶される。
【0036】
また、磁気記憶層57に上向きの残留磁化Mm1が維持される結果、当該残留磁化Mm1により電気磁気効果層53には上向きの磁場が印加され、この磁場により図5(b)に示すように、電気磁気効果層53には、下向きの誘電分極P1が僅かながら生じている。
【0037】
磁気記憶部106にデータ「0」を書込む場合には、プレート線105の電位より低い逆極性(負極性)の電位をビット線103に印加する。これにより、図6(a)に示すように、上部/下部電極51、55間の電気磁気効果層53に上部電極51側が低電位になるデータ「0」書込み電圧Vw0が印加される。データ「0」書込み電圧Vw0は、例えば電圧値が−20V、パルス幅が1nsのパルス電圧である。データ「0」書込み電圧Vw0が印加されると、下部電極55に正電荷が集まり、上部電極51に負電荷が集まるので、電気磁気効果層53に上向きの電場Ew0が印加される。
【0038】
電場Ew0の印加により、電気磁気効果層53の磁化は下向きに揃えられ、電気磁気効果層53には全体として下向きの磁化Mw0が発生する。磁化Mw0によって、電気磁気効果層53の周囲に磁場が発生し、当該磁場によって磁気記憶層57の磁化は下向きに揃えられ、磁気記憶層57には全体として下向きの磁化Mm0’が発生する。電圧Vw0の印加を止めると電気磁気効果層53の電気磁気効果による磁場は消滅するが、強磁性体の磁気記憶層57には図6(b)に示すように、下向きの残留磁化Mm0が維持される。これにより磁気記憶部106にデータ「0」が書込まれ記憶される。
【0039】
また、磁気記憶層57に下向きの残留磁化Mm0が維持される結果、当該残留磁化Mm0により電気磁気効果層53には下向きの磁場が印加され、この磁場により図6(b)に示すように、電気磁気効果層53には、上向きの誘電分極P0が僅かながら生じている。
【0040】
以上説明したように、上部/下部電極51、55間に印加するデータ書込み電圧Vw1、Vw0の極性によって電気磁気効果層53の磁化Mw1、Mw0の方向が決まり、電気磁気効果層53の磁化Mw1、Mw0の方向に基づいて磁気記憶層57の残留磁化Mm1、Mm0の方向が決まる。これは、電気磁気効果層53の形成材料として、膜厚方向に直交する方向に磁化Mが発生する物質を用いた場合も同様である。
【0041】
以上説明したデータ書込み方法では、電気磁気効果層53の形成材料及び磁気記憶層57の形成位置が下部電極55の下部か上部電極51の上部かに関わらず、データ書込み電圧Vw1、Vw0の極性によってデータを定義すればよい。上述のように、データ「1」書込み電圧Vw1を印加した場合をデータ「1」と定義し、データ「0」書込み電圧Vw0を印加した場合をデータ「0」と定義してもよい。また、データ「1」とデータ「0」とを逆に定義してもよい。
【0042】
次に、半導体記憶装置1のデータ読出し方法について図7乃至図12を用いて説明する。図7は、磁気記憶部106にデータ「1」が記憶されている状態を図3と同様に模式的に示している。上部電極51及び下部電極55は電圧源71に接続されている。また、上部/下部電極51、55間に電流計73が配置されている。データ読出し時は、電圧源71からは上部電極51に高電位、下部電極55に低電位が印加されるようになっている。
【0043】
データを読出すには、所定のビット線103とワード線104とを駆動して、データを読出す半導体記憶装置1を選択する。選択された半導体記憶装置1の磁気記憶部106には、ビット線103の電圧が上部電極51に印加され、プレート線105の電圧が下部電極55に印加される。磁気記憶部106からデータを読出す場合には、プレート線105の電位より高い電位をビット線103に印加する。これにより、図7に示すように、上部/下部電極51、55間の電気磁気効果層53に上部電極51側が高電位になるデータ読出し電圧Vrが印加される。
【0044】
図8(a)は、図4(b)と同様に電気磁気効果層53に印加された磁場Hとそれにより発生する誘電分極Pとの関係を直線βで示している。図8(a)の横軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に印加される磁場Hの成分を表し、縦軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に生じる誘電分極Pの成分を表している。
【0045】
図8(b)は、図4(a)と同様に電気磁気効果層53に印加された電荷Eとそれにより発生する磁化Mとの関係を直線αで示している。図8(b)の横軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に印加される電場Eの成分を表し、縦軸は、電気磁気効果層53の膜厚方向に生じる磁化Mの成分を表している。
【0046】
まず、図7及び、図8(a)、図8(b)を用いて、磁気記憶部106にデータ「1」が記憶されているときの電気磁気効果層53の状態について説明する。磁気記憶層57の上向きの残留磁化Mm1により電気磁気効果層53には上向きの磁場H1が印加されている。これにより、電気磁気効果層53には、1次の電気磁気効果により、図7及び図8(a)に示すように、上向きの磁場H1に比例した下向きの誘電分極P1が発生している。
【0047】
また、下向きの誘電分極P1により、電気磁気効果層53には下向きの電場E1が発生している。これにより、電気磁気効果層53には、1次の電気磁気効果により、図7及び図8(b)に示すように、下向きの電場E1に比例した上向きの磁化M1が発生している。
【0048】
ここで、図7に示すように、上部/下部電極51、55間に電圧源71からデータ読出し電圧Vrが印加されると、上部電極51に正電荷が集まり、下部電極55に負電荷が集まるので、図8(b)に示すように、下向きの電場Er(但し、|Er|>|E1|)が電気磁気効果層53に印加される。また、図7に示すように、下向きの電場Erによって電気磁気効果層53には下向きの誘電分極Prが発生する。
【0049】
データ読出し電圧Vrが印加されると、電気磁気効果層53の電場Eの変化量ΔE1は、図8(b)に示すようにΔE1=E1−Erとなる。同様に、誘電分極Pの変化量ΔP1はΔP1=P1−Prとなる。
【0050】
電場Eの変化量ΔE1は、電場E1、Erが共に下向きの同一方向であるため、|Er|より小さい値となる。同様に、誘電分極P1、Prの方向は同一方向であるため、誘電分極Pの変化量ΔP1は、|Pr|より小さい値となる。
【0051】
図9(a)は、電気磁気効果層53に印加される電圧Vrを示している。横軸は時間tを表し、縦軸は電圧Vを表している。図9(a)に示すように、データ読出し電圧Vrは、例えばVr=2V、パルス幅TがT=1nsのパルス電圧である。データ読出し電圧Vrは、データ書込み電圧Vw1、Vw0の大きさよりも十分小さく、また、磁気記憶層57の残留磁化Mm1、Mm0の方向が反転しない程度の大きさである。
【0052】
図9(b)は、データ「1」が記憶されている場合の上部/下部電極51、55間に流れる電流Iを示している。横軸は時間tを表し、縦軸は電流Iを表している。
【0053】
上部/下部電極51、55間に図9(a)に示すデータ読出し電圧Vrを印加すると、図9(b)に示すように、上部/下部電極51、55間には、誘電分極Pの変化量ΔP1に比例した電流I1が流れる。データ「1」が記憶されている場合、誘電分極Pの変化量ΔP1が|Pr|より小さい値となるため、相対的に小さい値の電流I1が電流計73で検出される。
【0054】
図10は、磁気記憶部106にデータ「0」が記憶されている状態を図7と同様に模式的に示している。図11(a)は、図8(a)と同様に電気磁気効果層53に印加された磁場Hとそれにより発生する誘電分極Pとの関係を直線βで示している。図11(b)は、図8(b)と同様に電気磁気効果層53に印加された電荷Eとそれにより発生する磁化Mとの関係を直線αで示している。
【0055】
図10及び、図11(a)、図11(b)を用いて、磁気記憶部106にデータ「0」が記憶されているときの電気磁気効果層53の状態について説明する。磁気記憶層57の下向きの残留磁化Mm0により電気磁気効果層53には下向きの磁場H0が印加されている。これにより、電気磁気効果層53には、1次の電気磁気効果により、図10及び図11(a)に示すように、下向きの磁場H0に比例した上向きの誘電分極P0が発生している。
【0056】
また、上向きの誘電分極P0により、電気磁気効果層53には上向きの電場E0が発生している。これにより、電気磁気効果層53には、1次の電気磁気効果により、図10及び図11(b)に示すように、上向きの電場E0に比例した下向きの磁化M0が発生している。
【0057】
ここで、図10に示すように、上部/下部電極51、55間に電圧源71からデータ読出し電圧Vrが印加されると、上部電極51に正電荷が集まり、下部電極55に負電荷が集まるので、図11(b)に示すように、下向きの電場Er(但し、|Er|>|E0|)が電気磁気効果層53に印加される。また、図10に示すように、下向きの電場Erによって電気磁気効果層53には下向きの誘電分極Prが発生する。
【0058】
データ読出し電圧Vrが印加されると、電気磁気効果層53の電場Eの変化量ΔE0は、図11(b)に示すようにΔE0=E0−Erとなる。同様に、誘電分極Pの変化量ΔP0はΔP0=P0−Prとなる。
【0059】
電場Eの変化量ΔE0は、電場E0が上向きで電場Erが下向きであるため、|Er|より大きい値となる。同様に、誘電分極P0が上向きで誘電分極Prは下向きであるため、誘電分極Pの変化量ΔP0は、|Pr|より大きい値となる。
【0060】
図12(a)は、電気磁気効果層53に印加される電圧Vrを示しており、図9(a)に示したものと同一である。図12(b)は、データ「0」が記憶されている場合の上部/下部電極51、55間に流れる電流Iを示している。横軸は時間tを表し、縦軸は電流Iを表している。
【0061】
上部/下部電極51、55間に図12(a)に示すデータ読出し電圧Vrを印加すると、図12(b)に示すように、上部/下部電極51、55間には、誘電分極Pの変化量ΔP0に比例した電流I0が流れる。データ「0」が記憶されている場合、誘電分極Pの変化量ΔP0が|Pr|より大きい値となるため、相対的に大きい値の電流I0が電流計73で検出される。
【0062】
図7及び図10に示すように、例えば電圧源71と直列に接続された電流計73を用いて上部/下部電極51、55間に流れる電流Iを検出する。データ「1」が記憶されていれば相対的に小さな電流I1が検出され、データ「0」が記憶されていれば相対的に大きな電流I0が検出される。検出される電流Iの差ΔI=I0−I1は、約10(kA/cm)となる。
【0063】
このように、データ読出し電圧Vrを上部/下部電極51、55間に印加して、上部/下部電極51、55間に流れる電流Iを検出することにより、I=I1ならデータ「1」と判断し、I=I0>I1ならデータ「0」と判定できる。
【0064】
データ読出し電圧Vrは、磁気記憶層57の残留磁化Mm1、Mm0の向きが反転しない大きさである。よって、データ読出し動作を行ってもデータ「0」又は「1」の状態は維持されるので、本実施の形態による半導体記憶装置1では非破壊読出しが可能である。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、半導体記憶装置1は、電気磁気効果層53の1次の電気磁気効果を利用して、データ書込み及び読出しをしている。本実施の形態の半導体記憶装置1では、データ書込み及び読出しは電圧駆動の電気回路で全て行われる。従って、本実施の形態によれば、高速性及び携帯性に優れた低消費電力の半導体記憶装置が実現できる。
【0066】
また、FeRAMのような強誘電性に基づいたデータ記憶では、経時変化による分極電荷量の変動は、リテンション特性やインプリント特性に影響するので半導体記憶装置の記憶保持性能劣化の原因となる。
【0067】
これに対し、本実施の形態の半導体記憶装置1では、磁気記憶層57の残留磁化Mm1、Mm0に基づいてデータが記憶保持されている。従って、本実施の形態によれば、記憶保持特性に優れた半導体記憶装置が実現できる。また、データ書込み電圧Vw1、Vw0の印加を止めた後も残留磁化Mm1、Mm0は維持され、データが記憶保持される。従って、半導体記憶装置1は、不揮発性半導体メモリとして用いることができる。
【0068】
このように、本実施の形態の形態によれば、FeRAMの利点である高速性及びハードディスクなど磁気記録方式を用いた記憶装置の利点である記憶保持特性の両方に優れた半導体記憶装置が実現できる。
【0069】
次に、本実施の形態による半導体記憶装置1の製造方法について図13乃至図15に示す製造工程断面図を用いて説明する。まず、図13(a)に示すように、STI(Shallow Trench Isolation;浅溝素子分離)法やLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法等を用いてn型又はp型シリコン半導体基板22の表層部に素子分離絶縁膜24を形成する。
【0070】
次に、素子分離絶縁膜24により区画された素子活性領域内に、ゲート絶縁膜7、ゲート電極10、ソース領域3及びドレイン領域4を備えた選択用トランジスタ102を形成する。なお、ソース/ドレイン領域3、4及びゲート電極10のそれぞれの上表面にシリサイド膜を形成してもよい。次に、全面に膜厚約200nmのシリコン酸窒化膜(不図示)をプラズマCVD法により選択用トランジスタ102を覆うようにして形成し、さらに全面に膜厚約1.0μmのSiOの層間絶縁膜20をTEOSガスを用いるプラズマCVD法により形成する。次に、層間絶縁膜20を化学的機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)法により研磨してその表面を平坦化する。
【0071】
次に、層間絶縁膜20上に層間絶縁膜20と後述する下部電極55との密着層として厚さ10〜30nm程度の酸化チタン層(不図示)を形成する。次に、図13(b)に示すように、層間絶縁膜20上の酸化チタン層上に厚さ100〜300nm程度の白金(Pt)層55aをスパッタリング法により形成する。次に、Pt層55a上に、厚さ100nm〜300nm程度、例えば100nmのCr層53aをMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属気相成長)法により形成する。次に、Cr層53a上に厚さ100〜300nm程度のPt層51aを真空蒸着法により形成する。次に、Pt層51a上に厚さ100nm〜300nm程度の磁気記憶層形成層57aをスパッタリング法により形成する。磁気記憶層形成層57aの形成材料として強磁性体を用い、例えばNi系合金などを用いる。
【0072】
次に、磁気記憶層形成層57a上にレジストを塗布してレジスト層(不図示)を形成する。次に、レジスト層をパターニングして磁気記憶層57形状のレジストパターン(不図示)を形成し、当該レジストパターンをエッチングマスクに使用してCr層53a、Pt層51a及び磁気記憶層形成層57aをエッチングする。これにより、図14(a)に示すように、電気磁気効果層53、上部電極51及び磁気記憶層57が形成される。次に、レジストパターンをエッチングにより除去する。
【0073】
次に、全面にレジストを塗布してレジスト層(不図示)を形成する。次に、レジスト層をパターニングして下部電極55形状のレジストパターン(不図示)を形成し、当該レジストパターンをマスクに使用してPt層55aをエッチングする。これにより、図14(b)に示すように、下部電極55が形成される。以上の工程によって、下部電極55、電気磁気効果層53、上部電極51及び磁気記憶層57で構成される磁気記憶部106が形成される。
【0074】
次に、図15(a)に示すように、全面にSiOの層間絶縁膜38をCVD(化学気相成長)法により形成する。次に、図15(b)に示すように、ソース領域3上の層間絶縁膜20及び層間絶縁膜38にソース領域3表面が露出するコンタクトホール85を形成し、同時にドレイン領域4上の層間絶縁膜20及び層間絶縁膜38にドレイン領域4表面が露出するコンタクトホール(不図示)を形成する。
【0075】
次に、CVD法を用いてコンタクトホール85等にタングステンを埋め込み、コンタクトホール85等内にタングステン・プラグを形成する。図15(b)に示すように、ソース領域3と電気的に接続されたタングステン・プラグはソース電極28として機能し、ドレイン領域4と電気的に接続されたタングステン・プラグ(不図示)はドレイン電極27として機能する。次に、層間絶縁膜38上のタングステンを除去し、タングステンをコンタクトホール85等内にのみ残す。
【0076】
次に、磁気記憶層57上の層間絶縁膜38に磁気記憶層57表面が露出するコンタクトホール83を形成する。次に、層間絶縁膜38上及びコンタクトホール83、85の内部にAlの配線34を形成する。これにより、上部電極51は導電性を有する磁気記憶層57を介して配線34に電気的に接続され、配線34を介してソース電極28に電気的に接続される。以上の工程によって、図15(b)に示すように本実施の形態による半導体記憶装置1が完成する。
【0077】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
図2(a)及び図2(b)を用いて説明した半導体記憶装置1では磁気記憶層57が上部電極51上に形成されていたが、本発明はこれに限らない。磁気記憶層57は例えば下部電極55の下部に形成されていてもよい。
【0078】
上記実施の形態では、電気磁気効果層53の形成材料として例えばCrを用いているが、本発明はこれに限らない。形成材料として、組成式がRMO(R、Mは任意の金属)で示される物質であって、以下に示す組成式(1)〜(8)のいずれかで示される物質を用いてもよい。
【0079】
(1)(BiM11−x)(Ni0.5Mn0.5−yM2)O
(2)(BiM11−x)(Ni0.5−yMgMn0.5)O
(3)(BiM11−x)(Co0.5Mn0.5−yM2)O
(4)(BiM11−x)(Co0.5−yMgMn0.5)O
(5)(BiM11−x)(Cu0.5Mn0.5−yM2)O
(6)(BiM11−x)(Cu0.5−yMgMn0.5)O
(7)(BiM11−x)(FeM31−z)O
(8)(BiM11−x)(CoM31−z)O
【0080】
組成式(1)〜(8)中のM1は、Laイオン、Ceイオン、Prイオン、Ndイオン、Smイオン、Euイオン、Gdイオン、Tbイオン、Dyイオン、Hoイオン、Erイオン、Tmイオン、Ybイオン及びLuイオンから選択される少なくとも1種類以上のイオンである。
【0081】
また、M2は、Tiイオン、Zrイオン及びHfイオンから選択される1種類のイオンである。また、M3は、Caイオン、Mnイオン、Tiイオン、Zrイオン及びHfイオンから選択される1種類のイオンである。
また、組成式中のx、y、zの値はそれぞれ、(0≦x≦1)、(0≦y≦0.2)、(0≦z≦1)である。
【0082】
東らは、非特許文献2において、BiNiMnOが強磁性及び強誘電性を示すことを報告した。非特許文献2には、BiNiMnOがNiイオンとMnイオンとの間における正の超交換相互作用により強磁性を実現し、Biイオンにより強誘電性を実現する旨が記載されている。超交換相互作用とは、真中に挟まれた酸素イオン(負イオン)の媒介により二つの局在した遷移金属上のスピンの間に生じる磁気的な相互作用であり、強磁性の発現機構の一種である。
【0083】
しかしながら、BiNiMnOは、常圧下では極めて不安定であり、例えば6GPaの如き超高圧下で初めてペロブスカイト構造を持つ結晶が得られる材料である。しかし、本発明らはBiNiMnOのBiの一部を希土類イオンで置換することにより、容易に常圧下でペロブスカイト構造を持つ結晶が得られることを発見した。これにより、組成式(1)で示される物質は、常圧下で強磁性性及び強誘電性を示す。以上の理由から、電気磁気効果層53の形成材料として、組成式(1)で示される材料が適している。また、同様の理由から、電気磁気効果層53の形成材料として、組成式(2)〜(8)で示される材料が適している。なお、組成式(3)〜(6)中のCoイオン−Mnイオン及びCuイオン−Mnイオンは、Niイオン−Mnイオンと同様に超交換相互作用を示す磁性イオンである。
【0084】
以上説明した実施の形態による半導体記憶装置及びその製造方法並びにそのデータ書込み方法及びデータ読出し方法は、以下のようにまとめられる。
(付記1)
半導体基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成され、電気磁気効果を示す電気磁気効果層と、
前記電気磁気効果層上に形成された上部電極と、
前記上部/下部電極間に電圧を印加して所定方向に揃えられた前記電気磁気効果層の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層と
を有することを特徴とする半導体記憶装置。
(付記2)
付記1記載の半導体記憶装置において、
前記電気磁気効果層は、前記磁気記憶層に発生した前記残留磁化によって誘電分極が発生すること
を特徴とする半導体記憶装置。
(付記3)
付記1又は2に記載の半導体記憶装置において、
前記磁気記憶層は、前記上部電極上に形成されていること
を特徴とする半導体記憶装置。
(付記4)
付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体記憶装置において、
前記電気磁気効果層は、Cr、FeTeO、NbMn、TaMn、FeGaO、NiO1I、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO及びTbPOのいずれかで形成されていること
を特徴とする半導体記憶装置。
(付記5)
付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体記憶装置において、
前記電気磁気効果層は、組成式がRMO(R及びMは任意の金属)である形成材料で形成されていること
を特徴とする半導体記憶装置。
(付記6)
付記5記載の半導体記憶装置において、
Rサイトは、Biイオン及び希土類陽イオンを有し、
Mサイトは、陽イオンであって超交換相互作用を示す複数種の磁性イオンを有すること
を特徴とする半導体記憶装置。
(付記7)
付記6記載の半導体記憶装置において、
前記複数種の磁性イオンは、Coイオン−Mnイオン、Niイオン−Mnイオン、及びCuイオン−Mnイオンのいずれかであること
を特徴とする半導体記憶装置。
(付記8)
半導体基板上に下部電極を形成し、
前記下部電極上に電気磁気効果を示す電気磁気効果層を形成し、
前記電気磁気効果層上に上部電極を形成し、
前記上部/下部電極間に電圧を印加して所定方向に揃えられた前記電気磁気効果層の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層を形成すること
を特徴とする半導体記憶装置の製造方法。
(付記9)
電気磁気効果を示す電気磁気効果層に電圧を印加して前記電気磁気効果層の磁化方向を所定方向に揃え、
前記磁化によって前記電気磁気効果層周囲に磁場を発生させ、
前記磁場によって磁気記憶層の磁化方向を前記磁化方向に基づいた所定方向に揃えた後に前記電圧の印加を止め、
前記磁気記憶層に前記電気磁気効果層の前記磁化方向に基づいて方向が決まる残留磁化を発生させて、前記残留磁化の方向に対応付けてデータを書込むこと
を特徴とする半導体記憶装置のデータ書込み方法。
(付記10)
電気磁気効果を示し、磁気記憶層に発生した残留磁化によって誘電分極が発生した電気磁気効果層に電圧を印加し、
前記残留磁化の方向を前記誘電分極の方向に基づいて読出して、前記残留磁化の方向に対応付けたデータを読出すこと
を特徴とする半導体記憶装置のデータ読出し方法。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態による半導体記憶装置1をメモリセルとして備えたメモリセルアレイの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施の形態による半導体記憶装置1の基板面に垂直な断面構造を示す図である。
【図3】図2に示す半導体記憶装置1から磁気記憶部106だけを取り出して模式的に示す図である。
【図4】1次の電気磁気効果を説明するグラフである。
【図5】データ「1」の書込み方法を示す図である。
【図6】データ「0」の書込み方法を示す図である。
【図7】磁気記憶部106にデータ「1」が記憶されている状態を模式的に示す図である。
【図8】データ「1」が記憶されている場合の電気磁気効果層53に印加される磁場Hと電気磁気効果層53に発生する誘電分極Pとの関係及び電気磁気効果層53に印加される電場Eと電気磁気効果層53に発生する磁化Mとの関係を示す図である。
【図9】電気磁気効果層53に印加される電圧V及びデータ「1」が記憶されている場合の上部/下部電極51、55間に流れる電流Iを示す図である。
【図10】磁気記憶部106にデータ「0」が記憶されている状態を模式的に示す図である。
【図11】データ「0」が記憶されている場合の電気磁気効果層53に印加される磁場Hと電気磁気効果層53に発生する誘電分極Pとの関係及び電気磁気効果層53に印加される電場Eと電気磁気効果層53に発生する磁化Mとの関係を示す図である。
【図12】電気磁気効果層53に印加される電圧V及びデータ「0」が記憶されている場合の上部/下部電極51、55間に流れる電流Iを示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態による半導体記憶装置1の製造工程を示す断面図(その1)である。
【図14】本発明の一実施の形態による半導体記憶装置1の製造工程を示す断面図(その2)である。
【図15】本発明の一実施の形態による半導体記憶装置1の製造工程を示す断面図(その3)である。
【符号の説明】
【0086】
1 半導体記憶装置
3 ソース領域
4 ドレイン領域
7 ゲート絶縁膜
10 ゲート電極
20、38 層間絶縁膜
22 半導体基板
24 素子分離絶縁膜
27 ドレイン電極
28 ソース電極
34 配線
51 上部電極
53 電気磁気効果層
55 下部電極
57 磁気記憶層
71 電圧源
73 電流計
83、85 コンタクトホール
102 選択用トランジスタ
103 ビット線
104 ワード線
105 プレート線
106 磁気記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成され、電気磁気効果を示す電気磁気効果層と、
前記電気磁気効果層上に形成された上部電極と、
前記上部/下部電極間に電圧を印加して所定方向に揃えられた前記電気磁気効果層の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層と
を有することを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体記憶装置において、
前記電気磁気効果層は、前記磁気記憶層に発生した前記残留磁化によって誘電分極が発生すること
を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項3】
半導体基板上に下部電極を形成し、
前記下部電極上に電気磁気効果を示す電気磁気効果層を形成し、
前記電気磁気効果層上に上部電極を形成し、
前記上部/下部電極間に電圧を印加して所定方向に揃えられた前記電気磁気効果層の磁化方向に基づいて残留磁化の方向が決まる磁気記憶層を形成すること
を特徴とする半導体記憶装置の製造方法。
【請求項4】
電気磁気効果を示す電気磁気効果層に電圧を印加して前記電気磁気効果層の磁化方向を所定方向に揃え、
前記磁化によって前記電気磁気効果層周囲に磁場を発生させ、
前記磁場によって磁気記憶層の磁化方向を前記磁化方向に基づいた所定方向に揃えた後に前記電圧の印加を止め、
前記磁気記憶層に前記電気磁気効果層の前記磁化方向に基づいて方向が決まる残留磁化を発生させて、前記残留磁化の方向に対応付けてデータを書込むこと
を特徴とする半導体記憶装置のデータ書込み方法。
【請求項5】
電気磁気効果を示し、磁気記憶層に発生した残留磁化によって誘電分極が発生した電気磁気効果層に電圧を印加し、
前記残留磁化の方向を前記誘電分極の方向に基づいて読出して、前記残留磁化の方向に対応付けたデータを読出すこと
を特徴とする半導体記憶装置のデータ読出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−266538(P2007−266538A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92999(P2006−92999)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】