説明

半導体集積回路装置

【課題】セキュリティを保ちながら、低コストで、容易に、IPの使用可否や機能制限などを設定する。
【解決手段】ヒューズ回路3には、製品毎に設定されたシリアルナンバーが記憶されている。中央処理装置2は、暗号化されたIP活性化ソフトウェアを復号化して半導体メモリ7に展開し、暗号化プログラムによってヒューズ回路3に記憶されたシリアルナンバーを暗号化し、該シリアルナンバーと半導体メモリ7に展開された予め暗号化されたシリアルナンバーとが一致するか否かを判定する。一致の場合、暗号化された機能制限設定値を復号化プログラムを用いて復号化し、機能制限設定レジスタ5アクセスし、復号化された機能制限設定値を設定する。そして、機能制限設定レジスタ5設定された機能制限設定値に基づいて、周辺IP81 〜8n の使用可否や機能や性能などの制限が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置の仕様変更技術に関し、特に、カスタム用半導体集積回路装置における設計、製造コストの低減に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの少量多品種生産となる半導体集積回路装置、いわゆるカスタムICの開発においては、コスト低減が求められている。通常、カスタムICは、要求仕様に応じて製品毎に、設計、製造することが一般的であり、そのため、製品毎に設計費用やマスク費用が必要となる。
【0003】
上記した費用を低減する技術として、本発明者が検討したところによれば、要求仕様に応じて、カスタムICに搭載されたIP(Intellectual Property)の使用可否や、機能などを制限を行った後、ユーザに販売することが考えられる。
【0004】
また、IPの使用可否や機能などの制限する技術としては、設計やマスクなどを変更することによって実施するもの、中央処理装置に設けられたレジスタなどを設定することによりソフトウェア的に実施するもの、あるいは、カスタムICの外部端子に任意の信号を入力し、ハードウェアにより実施するものなどが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のようなカスタムICなどの半導体集積回路装置におけるIPの使用可否や機能などの制限の技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0006】
すなわち、設計変更やマスク変更によってIPの使用可否や機能などを制限する技術では、設計費用やマスク費用などが必要となり、コストアップとなってしまうという問題がある。
【0007】
また、中央処理装置のレジスタを用いて設定する場合、および外部端子に任意の信号を入力して設定する場合には、販売後もIPの使用可否や機能などを任意に変更することが可能となってしまい、セキュリティが保証されないという問題がある。
【0008】
これにより、ユーザ側でIPの使用可否や機能などの制限を解除するIPの使用可否の改ざんなどが行われる恐れが生じてしまうことになる。
【0009】
本発明の目的は、セキュリティを保ちながら、低コストで、容易に、IPの使用可否や機能制限などを設定することのできる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明は、複数の周辺モジュールを有した半導体集積回路装置であって、該半導体集積回路装置の製品毎に付与された認識番号から、それら複数の周辺モジュールの使用可否、および該複数の周辺モジュールの機能制限を設定する機能制限設定部を備えたものである。
【0013】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0014】
本発明は、前記機能制限設定部が、半導体集積回路装置の製品毎に付与された認識番号を記憶する識別番号記憶部と、予め暗号化された認識番号と、複数の周辺モジュールの使用可否、およびそれら複数の周辺モジュールの機能制限を示す設定データからなる暗号化された機能制限設定値とが格納された設定データ格納部と、復号化された機能制限設定値を格納する機能制限設定レジスタと、識別番号記憶部に記憶された認識番号と設定データ格納部に格納された認識番号とが一致するか否かを判定し、一致する際に、設定データ格納部に格納された機能制限設定値を復号化し、機能制限設定レジスタに設定する一致判定設定部とよりなるものである。
【0015】
また、本発明は、前記一致判定設定部が、設定データ格納部に格納された認識番号を復号化する復号化部と、識別番号記憶部に記憶された認識番号と復号化部に復号化された認識番号とが一致するか否かを判定する判定部と、該判定部が一致すると判定した際に、設定データ格納部に格納された機能制限設定値を復号化し、その復号化した機能制限設定値を機能制限設定レジスタに設定する復号化部とよりなるものである。
【0016】
さらに、本発明は、前記一致判定設定部が、識別番号記憶部に記憶された認識番号を暗号化する暗号化部と、該暗号化部が暗号化した認識番号と設定データ格納部に格納された認識番号とが一致するか否かを判定する判定部と、該判定部が一致すると判定した際に、設定データ格納部に格納された機能制限設定値を復号化し、その復号化した機能制限設定値を機能制限設定レジスタに設定する復号化部とよりなるものである。
【0017】
また、本発明は、前記一致判定設定部が、中央処理装置よりなるものである。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
(1)セキュリティを保ちながら、容易に製品毎に対応する周辺IPの使用可否などの機能制限を設定することができる。
【0020】
(2)また、マスク変更や設計変更などが不要となり、低コストで、かつ短時間にカスタムの半導体集積回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態による半導体集積回路装置のブロック図、図2は、図1の半導体集積回路装置に設けられた機能制限設定部による処理例を示した説明図である。
【0023】
本実施の形態において、半導体集積回路装置1は、たとえば、ASICなどのカスタムICからなる。半導体集積回路装置1は、図1に示すように、中央処理装置2、ヒューズ回路3、シリアルナンバー格納レジスタ4、機能制限設定レジスタ5、半導体メモリ6,7、および複数の周辺IP81 〜8n から構成されている。
【0024】
また、中央処理装置2、ヒューズ回路3、シリアルナンバー格納レジスタ4、機能制限設定レジスタ5、ならびに半導体メモリ6により、機能制限設定部が構成されている。
【0025】
一致判定設定部として機能する中央処理装置2は、半導体集積回路装置1におけるすべての制御を司る。識別番号記憶部となるヒューズ回路3は、半導体集積回路装置1の認識番号であるシリアルナンバーが保存される。シリアルナンバー格納レジスタ4は、ヒューズ回路3に保存されたシリアルナンバーを取り込み、一時的に格納する。機能制限設定レジスタ5は、機能制限設定値を格納する。この機能制限設定値は、周辺IP81 〜8n の使用可否や周辺IP81 〜8n における使用機能などを制限するデータからなる。
【0026】
設定データ格納部となる半導体メモリ6は、フラッシュメモリになどに例示される不揮発性半導体メモリからなる。この半導体メモリ6には、カスタムICの個々の製品毎に対応した暗号化されたIP活性化ソフトウェアが格納されている。
【0027】
中央処理装置2は、半導体メモリに格納されているIP活性化ソフトウェアに基づいて、シリアルナンバーの暗号化、および機能制限設定レジスタ5に格納された機能制限設定値復号化と、該機能制限設定値の設定とを行い、半導体集積回路装置1が任意のカスタム仕様となるよう処理する。
【0028】
半導体メモリ7は、たとえば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリからなり、プログラムやデータなどを一時的に格納する。周辺IP81 〜8n は、たとえば、MPEG(Moving Picture Image Coding Experts Group)などの画像圧縮伸張モジュール、DSP(Digital Signal Proccesor)などの信号処理モジュール、インターネットやモデムなどの通信モジュール、SCI(Serial Communication Interface)、およびタイマなどの各種の機能ブロックから構成されている。
【0029】
これら中央処理装置2、シリアルナンバー格納レジスタ4、機能制限設定レジスタ5、半導体メモリ6,7、ならびに複数の周辺IP81 〜8n は、バスBを介して相互に接続されている。
【0030】
また、周辺IP81 〜8n には、機能制限設定レジスタ5がそれぞれ接続されており、該機能制限設定レジスタ5に設定された機能制限設定値によって、任意の周辺IP81 〜8n における使用可否や使用機能が設定される。
【0031】
次に、本実施の形態における半導体集積回路装置1の機能制限設定部の作用について説明する。
【0032】
図2は、機能制限設定部により処理例を示した説明図である。
【0033】
まず、ヒューズ回路3には、半導体集積回路装置1の製造工程において、任意のヒューズを切断することにより、製品ごとに設定された半導体集積回路装置1のシリアルナンバーが記憶されている(ステップS101)。そして、シリアルナンバー格納レジスタ4は、ヒューズ回路3に記憶されたシリアルナンバーを格納する(ステップS102)。
【0034】
続いて、中央処理装置2は、暗号化されたIP活性化ソフトウェアを復号化して半導体メモリ7に展開する。この場合、展開されたソフトウェアは、暗号化プログラム、復号化プログラム、予め暗号化された該当する製品のシリアルナンバー、および予め暗号化されたその製品に対応する暗号化された機能制限設定値からなる。
【0035】
そして、中央処理装置2は、暗号化プログラムによってヒューズ回路3に記憶されたシリアルナンバーを暗号化し(ステップS103)、該シリアルナンバーと半導体メモリ7に展開された予め暗号化されたシリアルナンバーとが一致するか否かを判定する(ステップS104)。
【0036】
一致した場合、中央処理装置2は、半導体メモリ7に展開された暗号化された機能制限設定値を復号化プログラムを用いて復号化し、機能制限設定レジスタ5にアクセスし、復号化された機能制限設定値を設定する(ステップS105)。また、ステップS104の処理において、不一致の場合には、処理が終了となる。
【0037】
そして、機能制限設定レジスタ5に設定された機能制限設定値に基づいて、任意の周辺IP81 〜8n の使用可否や機能や性能などの制限が設定される。
【0038】
それにより、本実施の形態によれば、セキュリティを保ちながら、容易に製品毎に対応する周辺IP81 〜8n の機能制限などを行うことが可能となる。
【0039】
また、半導体メモリ6のIP活性化ソフトウェアを書き換えるだけで、多様な製品に対応する機能制限などが可能となるので、マスク変更や設計変更などが不要となり、低コストでカスタムICを提供することができる。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0041】
たとえば、前記実施の形態では、シリアルナンバー格納レジスタ4に記憶されたシリアルナンバーを暗号化し、その暗号化されたシリアルナンバーと半導体メモリ7に展開された予め暗号化されたシリアルナンバーとが一致するか否かを判定する構成としたが、ヒューズ回路3に記憶されたシリアルナンバーを暗号化せずに一致判定するようにしてもよい。
【0042】
図4は、ヒューズ回路3に記憶されたシリアルナンバーを暗号化せずに一致判定させる場合の処理例を示した説明図である。
【0043】
この場合、前記実施の形態と異なるところは、ステップS103に相当する処理がなくなり、半導体メモリ7に展開された予め暗号化されたシリアルナンバーを復号化プログラムに基づいて復号化する処理(ステップS203)が追加され、復号化した該シリアルナンバーと、シリアルナンバー格納レジスタ4に記憶されたシリアルナンバーとを比較し、一致/不一致の判定を行う(ステップS204)点である。
【0044】
その他の処理(ステップS201,S202,S205)にていては、図2におけるステップS101,S102,S105の処理と同様となっている。
【0045】
また、前記実施の形態においては、IP活性化ソフトウェアを格納した半導体メモリ6が半導体集積回路装置1に内蔵されている構成としたが、この半導体メモリ6は、半導体集積回路装置1に外部接続される構成としてもよい。
【0046】
さらに、本実施の形態では、中央処理装置2により周辺IP81 〜8n の機能制限設定処理を行う構成としたが、中央処理装置2とは別に周辺IP81 〜8n の機能制限設定処理を行う演算処理部を半導体集積回路装置に新たに設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、カスタム用の半導体集積回路装置において、セキュリティを保ちながら、低コストで、容易に、IPの使用可否や機能制限などを設定する技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態による半導体集積回路装置のブロック図である。
【図2】図1の半導体集積回路装置に設けられた機能制限設定部による処理例を示した説明図である。
【図3】本発明の他の実施の形態による機能制限設定部による処理例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 半導体集積回路装置
2 中央処理装置
3 ヒューズ回路
4 シリアルナンバー格納レジスタ
5 機能制限設定レジスタ
6 半導体メモリ
7 半導体メモリ
1 〜8n 周辺IP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周辺モジュールを有した半導体集積回路装置であって、
前記半導体集積回路装置の製品毎に付与された認識番号から、前記複数の周辺モジュールの使用可否、および前記複数の周辺モジュールの機能制限を設定する機能制限設定部を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記機能制限設定部は、
前記半導体集積回路装置の製品毎に付与された認識番号を記憶する識別番号記憶部と、
予め暗号化された前記認識番号と、前記複数の周辺モジュールの使用可否、および前記複数の周辺モジュールの機能制限を示す設定データからなる暗号化された機能制限設定値とが格納された設定データ格納部と、
復号化された前記機能制限設定値を格納する機能制限設定レジスタと、
前記識別番号記憶部に記憶された認識番号と前記設定データ格納部に格納された認識番号とが一致するか否かを判定し、一致する際に、前記設定データ格納部に格納された機能制限設定値を復号化し、前記機能制限設定レジスタに設定する一致判定設定部とよりなることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体集積回路装置において、
前記一致判定設定部は、
前記設定データ格納部に格納された認識番号を復号化する復号化部と、
前記識別番号記憶部に記憶された認識番号と前記復号化部に復号化された認識番号とが一致するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が一致すると判定した際に、前記設定データ格納部に格納された機能制限設定値を復号化し、その復号化した前記機能制限設定値を前記機能制限設定レジスタに設定する復号化部とよりなることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項2記載の半導体集積回路装置において、
前記一致判定設定部は、
前記識別番号記憶部に記憶された認識番号を暗号化する暗号化部と、
前記暗号化部が暗号化した認識番号と前記設定データ格納部に格納された認識番号とが一致するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が一致すると判定した際に、前記設定データ格納部に格納された機能制限設定値を復号化し、その復号化した前記機能制限設定値を前記機能制限設定レジスタに設定する復号化部とよりなることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記一致判定設定部は、中央処理装置であることを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−141646(P2008−141646A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327980(P2006−327980)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】