説明

半導体集積回路

【課題】電気的に書き換えが不可能な不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路において、データの更新、不揮発性メモリの再利用を可能にする。
【解決手段】不揮発性メモリを複数のブロックに分割して、ブロックを使い捨てにする形で、不揮発性メモリのデータの更新、不揮発性メモリの再利用を可能にしたものである。即ち、あるブロックの第1のフラグがデータ「1」の場合には、当該ブロックはすでにデータが書き込まれ、再書き込みが不能であるとブロック選択回路13によって判定される。データを更新したい場合には、残りのブロックがブロック選択回路13によって選択され、そのブロックに更新されたデータが書き込まれる。この時、そのブロックの第2のフラグをデータ「1」に設定する。こうして、次々とデータを更新していき、あるブロックに最終的な更新データが書き込まれた場合に、そのブロックの第2のフラグをデータ「1」に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、データメモリや、プログラムメモリとして、不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路(例えば、マイクロコンピュータ)が知られている。不揮発性メモリとしては、マスクROMや、紫外線消去型EPROM、電気的に書き込み及び消去が可能なフラッシュメモリが知られている。
【0003】
また、近年では、半導体集積回路の内部回路のトリミングデータや、半導体集積回路の識別コードデータ等のデータを格納するために、小容量の不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路が開発されている。
【0004】
なお、フラッシュメモリを内蔵した半導体集積回路については、例えば特許文献1、2に記載されている。
【特許文献1】特開2000−112755号公報
【特許文献2】特開2000−105758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内部回路のトリミングデータや、識別コードデータ等を格納するために、小容量の不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路において、それらのデータを書き換えることが必要な場合には、不揮発性メモリとして、電気的に書き換え可能なメモリ(例えば、フラッシュメモリ)を用いることが必要であった。
【0006】
しかしながら、そのような用途の不揮発性メモリは、小規模であることから、フラッシュメモリ等を用いることは半導体集積回路のコストが高くなるという問題があった。
【0007】
一方で、電気的に書き換えが不可能な不揮発性メモリでは、一度書き込んだデータを書き換えることができず、不揮発性メモリの再利用ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、データを電気的に書き込み可能で、データを電気的に書き換え不可能な不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路であって、前記不揮発性メモリは、複数のブロックに分割され、各ブロックは、データを格納する複数のメモリセルを有したデータメモリ領域を備え、各ブロックに対応して設けられ、データが書き込まれ再書き込みが不能であるか否かを示す第1のフラグを格納する第1のフラグメモリと、前記第1のフラグメモリに格納された前記第1のフラグに基づいて、前記複数のブロックの中、データが書き込まれていないブロックを選択する選択動作を行うブロック選択回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気的に書き換えが不可能な不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路において、データの更新、不揮発性メモリの再利用が可能になる。また、不揮発性メモリとして電気的に書き換え可能なメモリ(例えば、フラッシュメモリ)を用いる場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による半導体集積回路について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態による半導体集積回路の構成を示す図である。半導体集積回路は不揮発性メモリを内蔵したものであるが、図1においては不揮発性メモリだけを示している。半導体集積回路は、不揮発性メモリ以外の内部回路(例えば、マイクロコンピュータの場合には、CPU、発振回路、入出力回路等)を内蔵している。
【0011】
不揮発性メモリは、データが書き込まれて半永久的に保持される不揮発性メモリ領域10、アドレス発生回路11、データ読み出し書き込み回路12、ブロック選択回路13を備えている。
【0012】
まず、不揮発性メモリ領域10の構成例について説明する。不揮発性メモリ領域10は、5つのブロック、第1〜第5のブロック101〜105に分割されており、それぞれ異なるアドレスが順番に割り当てられている。この例では、第1のブロック101にはアドレス0000〜001Fが割り当てられ、第2のブロック102にはアドレス0020〜003Fが割り当てられ、第3のブロック103にはアドレス0040〜005Fが割り当てられ、第4のブロック104にはアドレス0060〜007Fが割り当てられ、第5のブロック105にはアドレス0080〜009Fが割り当てられている。
【0013】
また、第1〜第5のブロック101〜105のそれぞれには、当該ブロックにデータが書き込まれ、再書き込みが不能であるか否かを示す、第1のフラグ(再書き込み禁止フラグ)を格納する第1のフラグメモリ領域1A〜5Aと、当該ブロックに最終的に更新されたデータが書き込まれたか否かを示す、第2のフラグを格納する第2のフラグメモリ領域1B〜5Bが、当該ブロックの一部として設けられている。
【0014】
第1〜第5のブロック101〜105の残りのメモリ領域が、半導体集積回路の内部回路のトリミングデータや、半導体集積回路の識別コードデータ(半導体集積回路を識別するためのコードデータ)等を格納するためのデータメモリ領域になっている。このように構成することで、第1のフラグ、第2のフラグを格納するための格別のレジスタを設ける必要が無くなり、回路規模を小さくできる。
【0015】
第1のフラグメモリ領域1A〜5A、第2のフラグメモリ領域1B〜5Bは、例えば、1ビットで形成され、第1のフラグがデータ「1」に設定されている時は、当該ブロックにデータが書き込まれ、再書き込みが不能であることを示し、第1のフラグがデータ「0」に設定されている時は、その反対で、データが未だ書き込まれていないため、書き込みが可能であることを示す。また、第2のフラグがデータ「1」に設定されている時は、当該ブロックに最終的に更新されたデータが書き込まれたことを示し、第1のフラグがデータ「0」に設定されている時は、その反対で、当該ブロックに最終的に更新されたデータが未だ書き込まれていないことを示す。
【0016】
図2は第1〜第5のブロック101〜105のメモリセルの構成を示す図である。図2(A)はメモリセルの回路図、図2(B)はその断面図である。メモリセルは、コントロールゲート20、フローティングゲート21、N+型のソース22、N+型のドレイン23を有しており、コントロールゲート20はワード線WLに接続され、ソース22はソース線SLに接続され、ドレイン23はビット線BLに接続されている。このメモリセルは、ワード線にHレベルの電圧を印加し、ビット線BLに高電圧を印加することにより、チャネル電流を流し、その一部の電荷をフローティングゲート21に注入することでデータを記憶させることができる。
【0017】
しかしながら、このメモリセルは、フローティングゲート21に注入された電荷を除去して、データを消去するためのデバイス構造、周辺回路を有していないため、電気的にデータの書き換えができない。不揮発性メモリには、紫外線によっては消去が可能なものもあるが、半導体集積回路をパッケージングした後には、不揮発性メモリに書き込まれたデータを消去する手段はない。つまり、この不揮発性メモリは1回だけ書き込みができるものである。(このような不揮発性メモリは、ワンタイムROMと呼ばれる)
【0018】
また、データ読み出し書き込み回路12は、アドレス発生回路11によって、指定されたアドレスのデータメモリ領域、あるいは第1のフラグメモリ領域1A〜5A、あるいは第2のフラグメモリ領域1B〜5Bに対して、データ(第1、第2のフラグを含む)の読み出し書き込みを行う。ブロック選択回路13は、データ読み出し書き込み回路12によって読み出された第1のフラグ又は第2のフラグに基づいて、第1〜第5のブロック101〜105の中、特定のブロックを選択する選択動作を行う。
【0019】
そのような選択動作は、ブロック選択回路13が第1のフラグ又は第2のフラグに基づいてブロック選択信号を出力し、そのブロック選択信号を受け取ったアドレス発生回路11が、選択されたブロックに対応したアドレスを発生することにより行われる。
【0020】
このように、本発明によれば、不揮発性メモリを複数のブロックに分割して、ブロックを使い捨てにする形で、不揮発性メモリのデータの更新、不揮発性メモリの再利用を可能にしたものである。そのために、第1、第2のフラグが利用される。即ち、あるブロックの第1のフラグがデータ「1」に設定されている場合には、当該ブロックはすでにデータが書き込まれ、再書き込みが不能であるとブロック選択回路13によって判定される。
【0021】
従って、そのデータを更新したい場合には、残りのどれかのブロック(第1のフラグがデータ「0」に設定されており、通常はデータが書き込まれていない次のアドレスを有するブロック)がブロック選択回路13によって選択され、そのブロックに更新されたデータが書き込まれる。この時、そのブロックの第2のフラグをデータ「1」に設定する。このようにして、次々とデータを更新していき、あるブロックに最終的な更新データが書き込まれた場合には、そのブロックの第2のフラグをデータ「1」に設定する。
【0022】
また、データの読み出しを行う場合には、データ読み出し書き込み回路12を用いて、各ブロックの第2のフラグを次々と読み出す。そして、ブロック選択回路13によって、どのブロックの第2のフラグがデータ「1」に設定されているかを判別する。これにより、第2のフラグがデータ「1」に設定されているブロック(つまり、最終的な更新データが格納されているブロック)が選択され、そのブロックから読み出されたデータが、内部回路のトリミングや、識別コードデータとして利用される。すなわち、ブロック選択回路13は、第2のフラグに基づいて、最終的にどのブロックを使用するかを選択する。
【0023】
尚、ブロック選択回路13は、半導体集積回路のリセット信号(例えば、マイクロコンピュータのリセット信号)に基づいて、前記選択動作を行うことが好ましい。
【0024】
次に、上記不揮発性メモリに格納された内部回路のトリミングデータの利用について、発振回路を例として説明する。図3は発振回路の構成図である。これは、奇数個のインバータ31から成るリングオシレータであり、各インバータ31の動作電流を与える定電流源32が各インバータ31に接続されている。そして、定電流源32が発生する電流の電流値Iを制御するための電流制御回路33が設けられている。電流制御回路33には不揮発性メモリから読み出されたトリミングデータが入力され、電流制御回路33はトリミングデータに応じた電流値Iを有する電流を発生させるようになっている。
【0025】
電流値Iが増加するとインバータ31の動作電流が増加するので、リングオシレータの発振周波数は増加し、電流値Iが減少するとインバータ31の動作電流が減少するので、リングオシレータの発振周波数は減少する。このように、定電流源32の電流値Iを調整することで発振周波数をトリミングすることができる。
【0026】
以下、発振回路のトリミングデータを例にして、不揮発性メモリの使用例(動作例)について図4を用いて説明する。このとき、半導体集積回路はパッケージングされているものとする。図4(a)に示すように、初期状態においては、不揮発性メモリはデータの書き込みが行われていない。この状態では、すべてのブロックについて第1のフラグ、第2のフラグはいずれもデータ「0」になっている。
【0027】
次に、図4(b)に示すように、アドレスの最も小さいブロックである第1のブロック101に第1のトリミングデータを書き込むと共に、第1のフラグをデータ「1」に設定する。つまり、第1のブロック101内に設けられた第1のフラグメモリ領域1Aに、データ「1」を書き込む。これで、第1のフラグは、データ「1」に設定されたので再書き込み不能を示すことになる。そして、データ読み出し書き込み回路12により、第1のトリミングデータが読み出され、発振回路の電流制御回路33に供給される。この第1のトリミングデータに基づく電流値Iにより発振回路を動作させ、その発振周波数を測定する。
【0028】
次に、図4(c)に示すように、次の第2のブロック102に第2のトリミングデータを書き込み、第1のフラグを「1」に設定する。そして、同様にして、第2のトリミングデータに基づく電流値Iにより発振回路を動作させ、その発振周波数を測定する。また、次の第3のブロック103に第3のトリミングデータを書き込み、第1のフラグを「1」に設定する。そして、同様にして、第3のトリミングデータに基づく電流値Iにより発振回路を動作させ、その発振周波数を測定する。
【0029】
そして、以上のようなテスト段階を経て、第1〜第3のトリミングデータの中、例えば第2のトリミングデータが最も適切であると判断された場合(目標とする発振周波数に最も近く調整できる)、それに対応した第2のフラグがデータ「1」に設定される。つまり、第2のブロック102の第2のフラグメモリ領域2Bに、データ読み出し書き込み回路12によって、第2のフラグにデータ「1」が書き込まれる。
【0030】
すると、次にデータを読み出す時には、ブロック選択回路13は、第2のフラグがデータ「1」に設定されているブロックを探していき、その結果、第2のブロック102を選択する。これにより、第2のブロック102から第2のトリミングデータが読み出され、発振回路のトリミングデータとして利用されることになる。
【0031】
尚、上記の不揮発性メモリの動作は一例であって、これに限定されることはなく、様々に変更が可能である。例えば、図4(b)に示すように、第1のブロック101に書き込まれた第1のトリミングデータが適切であると判断された場合には、第2、第3のトリミングデータの書き込みを行うことなく、第1のブロック101の第2のフラグをデータ「1」に設定してもよい。
【0032】
また、ブロック選択回路13は、いずれのブロックについても、第2のフラグにデータ「1」が設定されていない場合には、第1のフラグにデータ「1」が設定されているブロックの中から、最も大きいアドレスを有するブロックを選択する。例えば、図4(c)の例において、第1〜第3のブロック101〜103について、第1のフラグがデータ「1」に設定されているが、いずれのブロックについても、第2のフラグにデータ「1」が設定されていない場合には、最も大きいアドレスを有するブロックである第3のブロック103(アドレス:0040〜005F)を使用するブロックとして選択する。
【0033】
このように構成することで、第2のフラグにデータ「1」が設定されていない場合にも、最も大きいアドレスを有するブロックを選択して、そのブロックに書き込まれたデータをトリミングデータ等として利用することができる。上記の例では、アドレスの順にブロックがアクセスされていくので、最後にデータ書き込まれたブロックが最も大きいアドレスを有するブロックとなる。そのようなブロックは、テストが何回か繰り返された結果、最も適切なデータが書き込まれている可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による半導体集積回路の構成を示す図である。
【図2】不揮発性メモリのメモリセルの構成を図である。
【図3】発振回路の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による半導体集積回路の使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 不揮発性メモリ領域 11 アドレス発生回路
12 データ読み出し書き込み回路 13 ブロック選択回路
20 コントロールゲート 21 フローティングゲート
22 ソース 23 ドレイン
31 インバータ 32 定電流源
33 電流制御回路 101〜105 第1〜第5のブロック
BL ビット線 WL ワード線
SL ソース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを電気的に書き込み可能で、データを電気的に書き換え不可能な不揮発性メモリを内蔵した半導体集積回路であって、
前記不揮発性メモリは、複数のブロックに分割され、各ブロックは、データを格納する複数のメモリセルを有したデータメモリ領域を備え、
各ブロックに対応して設けられ、データが書き込まれ再書き込みが不能であるか否かを示す第1のフラグを格納する第1のフラグメモリと、
前記第1のフラグメモリに格納された前記第1のフラグに基づいて、前記複数のブロックの中、データが書き込まれていないブロックを選択する選択動作を行うブロック選択回路と、を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記ブロックに最終的に更新されたデータが書き込まれたか否かを示す第2のフラグを格納する第2のフラグメモリと、を備え、
前記ブロック選択回路は、前記第2のフラグメモリに格納された前記第2のフラグに基づいて、前記複数のブロックの中、最終的にどのブロックを使用するかを選択する選択動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記ブロック選択回路は、いずれのブロックについても、前記第2のフラグが最終的に更新されたデータが書き込まれていないことを示している場合に、
第1のフラグが、データが書き込まれ再書き込みが不能であることを示しているブロックの中から、最も大きいアドレスを有するブロックを選択することを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1及び第2のフラグメモリは、前記ブロック内に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1及び第2のフラグメモリのメモリセルは、前記データメモリ領域のメモリセルと同一の構造を有していることを特徴とする請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記ブロック選択回路は半導体集積回路のリセット信号に基づいて、前記選択動作を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記不揮発性メモリの前記データ領域に格納されるデータは、半導体集積回路のトリミングデータ、又は半導体集積回路の識別コードデータであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6いずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記トリミングデータは、半導体集積回路に内蔵された発振回路の発振周波数の調整に用いられることを特徴とする請求項7に記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−80872(P2009−80872A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247593(P2007−247593)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】