説明

印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置

【課題】印刷を実施する前に色合いを確認することができるようにして、印刷の失敗を防止し損紙の発生を抑制することが出来るようにする。
【解決手段】印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、製版データを印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、それを画像又は印刷物として出力して、出力された印刷物の発色状態の色調が許容の範囲内であるか否かを判定して、印刷絵柄の目標濃度を設定し、印刷絵柄の実際の発色濃度が、目標濃度に近づくように、色調制御を実施するものにおいて、判定時に、色調が許容の範囲内であれば、目標濃度を製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、色調が許容の範囲内でなければ、目標濃度を、基準の目標濃度に対して色合いが許容の範囲内になるようにモニタ又はプリンタで確認しながら補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の絵柄色調制御に用いるのに適した、印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機の絵柄の色調を制御するために、種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2に提案された技術では、各色の印刷ユニットで印刷された絵柄の分光反射率を分光計にて測定し、インキキーのキーゾーン毎の分光反射率(キーゾーン全体の平均分光反射率)を演算し、さらに各キーゾーンの分光反射率を色座標値(L***)に変換する。そして、各色のインキ供給量を調整して試印刷を行い、所望の色調を有する印刷シート(以下、OKシートという)が得られたら、OKシートの各キーゾーンの色座標値を目標色座標値に設定する。次に、本印刷を開始してキーゾーン毎にOKシートと印刷シート(以下、本印刷で得られた印刷シートを本刷りシートという)との色座標値の差(色差)を算出し、色差がゼロになるように各印刷ユニットの各インキキーの開度をオンライン制御によって調整する。
【0003】
しかし、かかる技術において計測手段として用いている分光計は、コストが高い上、新聞用輪転機のように極めて高速で移動する対象(印刷シート)を計測することは処理能力上困難である。また、上記技術では、OKシートが印刷されてから色調制御が開始されることになるため、立ち上がりからOKシートが印刷されるまでの間に多くの損紙が発生してしまう。
【0004】
そこで、特許文献3には、これらの課題を解決すべく、次のような手順で色調制御を行なう技術が提案されている。
まず、印刷絵柄をインキ供給装置のインキ供給単位幅で分割したときのインキ供給単位幅毎の目標混色網濃度を設定する。なお、インキ供給装置のインキ供給単位幅とは、インキ供給装置がインキキー装置である場合には各インキキーのキー幅(キーゾーン)のことであり、インキ供給装置がデジタルポンプ装置である場合には各デジタルポンプのポンプ幅のことである。なお、目標混色網濃度の設定方法については、後述する。
【0005】
印刷を開始して本刷りシートが得られると、IRGB濃度計を用いて本刷りシートのインキ供給単位幅毎の実混色網濃度を計測する。そして、予め設定した各インキ色の網点面積率と混色網濃度との対応関係に基づき、実混色網濃度に対応する各インキ色の実網点面積率を求める。実網点面積率を実混色網濃度から求める方法としては、各インキ色の網点面積率と混色網濃度との関係を記憶したデータベース、例えば、ISO/TC130国内委員会が制定した新聞印刷Japan Color(ISO12642)基準のカラースケールを印刷し、IRGB濃度計で実測したデータベースを用いてもよく、より簡単には、そのデータベースを利用して公知のノイゲバウアーの式で近似した値を利用することもできる。また、上記の網点面積率と混色網濃度との対応関係に基づき、目標混色網濃度に対応する各インキ色の目標網点面積率も求めておく。目標網点面積率については、実網点面積率のように毎回求める必要はなく、目標混色網濃度が変わらない限りは一度求めておけばよい。例えば、目標混色網濃度を設定した時点で目標網点面積率も求めておいてもよい。
【0006】
次に、予め設定した網点面積率と単色網濃度との対応関係に基づき、実網点面積率に対応する実単色網濃度を求める。実単色網濃度を実網点面積率から求める方法としては、単色網濃度と網点面積率との関係を表すマップやテーブルを用意しておき、これらのマップやテーブルに実網点面積率を当てはめてもよく、より簡単には、公知のユールニールセンの式を用いて前記関係を近似して、それを利用して求めてもよい。また、上記の網点面積率と単色網濃度との対応関係に基づき、目標網点面積率に対応する目標単色網濃度も求めておく。目標単色網濃度については、実単色網濃度のように毎回求める必要はなく、目標網点面積率が変わらない限りは一度求めておけばよい。例えば、目標網点面積率を設定した時点で目標単色網濃度も求めておいてもよい。
【0007】
次に、予め設定した網点面積率と単色網濃度とベタ濃度との対応関係に基づき、目標網点面積率のもとでの目標単色網濃度と実単色網濃度との偏差に対応するベタ濃度偏差を求める。ベタ濃度偏差を求める方法としては、上記体対応関係を表すマップやテーブルを用意しておき、これらのマップやテーブルに目標網点面積率,目標単色網濃度及び実単色網濃度を当てはめてもよく、より簡単には、公知のユールニールセンの式を用いて前記関係を近似して、それを利用して求めてもよい。そして、求めたベタ濃度偏差に基づきインキ供給単位幅毎にインキ供給量を調整し、各色のインキの供給量をインキ供給単位幅毎に制御する。ベタ濃度偏差に基づくインキ供給量の調整量は、簡単には、公知のAPI(オートプリセットインキング)関数を用いて求めることができる。
【0008】
このような絵柄色調制御方法によれば、分光計ではなくIRGB濃度計を用いて色調制御を行なうことができるので、計測手段にかかるコストが低減できるとともに新聞輪転機のような高速印刷機にも十分に対応することが可能となる。
また、外部(例えば、印刷依頼元等)から印刷対象絵柄のkcmy網点面積率データ[例えば、製版用の画像データ(製版データ)等]を取得できる場合の目標混色網濃度の設定手法として、以下の点が提案されている。
【0009】
まず、取得した画像データ(kcmy網点面積率データ)に対し、印刷対象絵柄を構成する画素の中からインキ供給単位幅毎に各インキ色に対応する注目画素(注目画素とは、一画素でもよく、連続する一塊の複数画素でもよい)をそれぞれ設定し、予め設定した網点面積率と混色網濃度との対応関係に基づき注目画素の網点面積率を混色網濃度に変換する。そして、注目画素の混色網濃度を目標混色網濃度として設定するとともに、設定した注目画素の実混色網濃度を計測する。
【0010】
これによれば、Japan Color(ISO12642)のデータベースを利用するなど画素単位で発色を推定できるのでOKシートが印刷されるのを待つまでもなく、印刷開始直後から絵柄の特定の注目点(注目画素)について色調制御を行なうことができる。なお、kcmy網点面積率データとしては、印刷対象絵柄のビットマップデータ(例えば、1bit−Tiff製版用データ)でもよく、ビットマップデータをCIP3データ相当の低解像度データに変換したものを用いてもよい。
【0011】
なお、注目点(注目画素)の設定方法として、ビットマップデータを用いてタッチパネル等の表示装置上に印刷絵柄の画像を表示して、オペレータが任意に注目点を指定する方法や、インキ色毎に最も濃度感度の高い画素、或いは、インキ色毎に各画素の網点面積率に対して最も自己相関が大きい画素を演算して自動抽出し、注目画素として設定する方法が提案されている。また、注目画素の具体的な設定方法としては、自己相関感度Hを導入し、この自己相関感度Hが最も大きい画素を最も自己相関が大きい画素とし、この画素を注目画素として設定するようにしている。例えば、シアンの自己相関感度Hcは、各画素面積率データ(c,m,y,k)を用いて、“Hc=cn/(c+m+y+k)”で表すことができ、この自己相関感度Hcの値が最も高い画素がシアンの注目点となる(n:自己相関べき乗で例えば、1.3程度を選ぶ)。
【0012】
このように、インキ色毎に各画素の網点面積率に対して最も自己相関が大きい画素を演算して抽出し、これを注目画素として設定し、この注目画素に関して目標単色網濃度及び実単色網濃度を算出して実単色網濃度が目標単色網濃度に近づくようにインキ供給量をフィードバック制御することにより、より安定した色調制御を行なうことができる。
【特許文献1】特開2001−18364号公報
【特許文献2】特開2001−47605号公報
【特許文献3】特開2004−106523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、印刷を行なう際には、予め製版を行なう必要がある。つまり、製版データを取得して、製版データの各画素面積率データ(c,m,y,k)から例えばCTP(Computer to Plate)により製版し、製版した刷版を輪転機等の印刷機に取り付けて印刷を行
なうことになる。そして、上述の各色調制御は実際の印刷によって行われることになる。
したがって、色調が適切であるか否かは、実際に印刷したものの色合いを見なければ確認することはできない。このため、印刷を開始して印刷結果の色合いを確認して良紙判定をすることになるが、良紙判定までの間にどうしても損紙が発生してしまい、コスト上の課題となっている。また、印刷内容が微妙な色調を要求するものの場合、求められる色調をなかなか得られないことがあり、良紙判定までに時間がかかるため、損紙が増大してしまうことになる。さらに、色調に特に厳しい印刷物の場合など、良紙判定した印刷物に対して、客先からクレームが発生することもあり、この場合、印刷は失敗したことになり、印刷したものが全て損紙となってしまい、色調が適切になるように何らかの変更を行なった上で所要量の印刷を再び実施しなくてはならない。
【0014】
このように、印刷した色調が適切なものにならない原因を考察する。CTPにより製版を行なう場合、製版データの網点面積率に対応したCTP出力(実際に製版する際の網点面積率)を得て製版を行なうが、このとき、最も一般的には、製版データの網点面積率をそのままCTP出力の網点面積率として製版を行なう。しかし、製版データの網点面積率をそのまま製版に適用してこれにより得られた刷版を用いて印刷を行なっても、印刷機によっては、標準的なインキ供給状態であるのに発色濃度が強過ぎたり或いは弱過ぎたりすることがある。
【0015】
これは、各印刷機の固有の印刷特性を有するためで、例えばドットゲイン特性も印刷機により異なり、ドットゲインが比較的大きい印刷機であれば発色濃度が強くなる傾向が現れ、ドットゲインが比較的小さい印刷機であれば発色濃度が弱くなる傾向が現れる。したがって、色調が適切であるように設定しているはずなのに、実際に印刷したものの色合いは適切でないといったことが発生するのである。
【0016】
もちろん、使用する印刷機の特性を認識し、予めこの特性を反映させるような処理を行なえば、印刷当初から色調を適切なものにできる。例えば、図13に示すような各印刷機の固有の印刷特性である製版カーブC(製版データの網点面積率に対するCTP出力の網点面積率の関係)を予め求め、この製版カーブに基づいてCTPによる製版を行なえば、印刷当初から色調をより適切なものにできる。
【0017】
ただし、これは製版カーブCを得ていることが前提であり、一般に行なわれるCTPによる製版は、上述のように、製版データの網点面積率をそのままCTP出力の網点面積率として製版を行なうものであり、換言すれば、図13に示すような線形の特性線Lを用いて製版を行なうものである。このような特性線Lに対して、実際に印刷に使用する輪転機の製版カーブのほとんどは、図13に示す製版カーブCのように、僅かであれカーブしているものである。
【0018】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、印刷を実施する前に色合いを確認することができるようにして、印刷の失敗を防止し損紙の発生を抑制することが出来るようにした、印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の印刷機の印刷前の色調確認方法(請求項1)は、印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力ステップと、前記出力ステップにおいて前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の発色状態の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、をそなえ、前記判定ステップにより、前記色調が前記許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、前記色調が前記許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定ステップを再び実施することを特徴としている。
【0020】
また、本発明の印刷機の印刷前の色調確認方法(請求項2)は、印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力ステップと、前記出力ステップにおいて前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、をそなえ、前記判定ステップにより、前記色調が第1の許容の範囲内とされたら、基準の製版カーブを用いて製版を行ない、前記色調が前記第1の許容の範囲内でないとされたら、前記の印刷機のデバイスプロファイルを用いて前記モニタ又はプリンタで確認しながら前記印刷機の製版カーブとなるように製版カーブを修正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定ステップを再び実施するとともに、前記色調が前記第1の許容の範囲よりも狭い範囲として前記第1の許容の範囲内に設定された第2の許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、前記色調が前記第2の許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記第2の許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定ステップを再び実施することを特徴としている。
【0021】
また、本発明の印刷機の印刷前の色調確認装置(請求項3)は、印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力手段と、前記出力手段において前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、をそなえ、前記印刷機は、印刷された絵柄の濃度の目標値である目標濃度を設定して印刷絵柄の実際の発色濃度が前記目標濃度に近づくように、前記判定手段により、前記色調が前記許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、前記色調が前記許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定手段による判定を再び実施することを特徴としている。
【0022】
また、本発明の印刷機の印刷前の色調確認装置(請求項4)は、印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力手段と、前記出力手段において前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、をそなえ、前記判定手段により、前記色調が第1の許容の範囲内とされたら、基準の製版カーブを用いて製版を行ない、前記色調が前記第1の許容の範囲内でないとされたら、前記の印刷機のデバイスプロファイルを用いて前記モニタ又はプリンタで確認しながら前記印刷機の製版カーブとなるように製版カーブを修正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定手段を再び実施するとともに、前記色調が前記第1の許容の範囲よりも狭い範囲として前記第1の許容の範囲内に設定された第2の許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、前記色調が前記第2の許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記第2の許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定手段による判定を再び実施することを特徴としている。
【0023】
なお、上記の各印刷機の印刷前の色調確認装置において、前記印刷機は、印刷された絵柄の濃度の目標値である目標濃度を設定して印刷絵柄の実際の発色濃度が前記目標濃度に近づくように、前記印刷絵柄に対する濃度検出センサの検出値に基づいて色調制御を実施するものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の印刷機の印刷前の色調確認方法(請求項1,2)及び色調確認装置(請求項3,4)によれば、実際に印刷を行なう前に、所定の印刷機で印刷した場合の色調を事前に確認することができるので、この確認により、目標濃度の変更や補正が適切であるか否かを事前に確認して、目標濃度を適切に効率的に修正することができる。したがって、印刷条件等を適宜変更するなどして、印刷当初から色調を適切なものにすることが可能になる。これにより、損紙の発生を抑えることや、印刷の失敗を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
ここでは、印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置並びに製版方法について説明し、その後、これらの印刷前確認方法,装置,製版方法を用いた印刷機の絵柄色調制御方法及び装置について説明する。
(A)印刷機の絵柄色調の印刷前確認並びに製版にかかる実施形態
図3は印刷前の印刷関連データの流れを示す図である。図3に示すように、ここでは、新聞社が広告面等を印刷する場合を想定しており、新聞社では、広告面の印刷の注文を例えば広告代理店等のクライアントから受注する。このとき、クライアント側では、制作した広告面の製版データを自社のモニタやプリンタで確認し、問題無ければその製版データを使用して自社や外注先の印刷機(プリンタや平台校正機等)により印刷用紙に見本の印刷絵柄を刷って校正紙(ゲラ)を作成する。この製版データは、印刷する絵柄の各部の各色の網点面積率を決めたデータ(網点面積率データ)を含むものであり、クライアント側から新聞社に、この製版データと見本のゲラとが送られる。
【0026】
新聞社では、通常であれば、例えば本社において、製版データと見本のゲラとを、各印刷工場(例えば、印刷工場A〜C)に送る。各印刷工場では、製版データに基づいて製版を行ない、製版された刷版を印刷機に装着して印刷を行ない、このとき、例えば、特許文献3に記載の技術のように、実際の印刷結果の発色濃度が濃度目標値に近づくように、インキ供給量を制御する。
【0027】
本実施形態の技術では、クライアント側から新聞社の本社等に製版データと見本のゲラとが送られてきた後、印刷前に、パソコン及びこれに接続されたモニタ(又はプリンタ)といった模擬印刷ツールを用いて模擬印刷(又は、印刷を模擬した表示)を行なって、事前に確認印刷絵柄の色合い(色調)を確認する点に特徴がある。
つまり、図4(a)に示すように、新聞社の本社側では、製版データk,c,m,yをに対して本社側の基準輪転機のデバイスプロファイル及び模擬印刷ツール(モニタ又はプリンタ)のデバイスプロファイルに作用させ、製版データk,c,m,yに対応して基準輪転機で印刷した場合の印刷絵柄の発色状態に相当する模擬印刷ツールであるモニタ(又はプリンタ)に出力される発色濃度(混色網濃度)R,G,Bを求める。
【0028】
このためには、基準輪転機のデバイスプロファイル及び模擬印刷ツールのデバイスプロファイルが必用になるので、図2に示すように、基準輪転機により基準濃度でJapanColor(ISO12642)等のカラーチャート(カラースケール)を印刷して(ステップA10)、印刷した絵柄をIRGB濃度計等の発色濃度を検出しうるセンサにより測定し、カラーチャートの網点面積率k,c,m,yと色座標値(L***)との対応関係(基準輪転機のデバイスプロファイル或いはICCプロファイルL***/kcmy)を作成し(ステップA20)、センサによる測定値IRGBと色座標値(L***)との対応関係(センサデバイスプロファイルL***/IRGB)を作成する(ステップA30)。
【0029】
なお、模擬印刷ツールであるモニタ又はプリンタのデバイスプロファイルは、モニタ又はプリンタのメーカから提供されるICCプロファイル(cmyk/L***、RGB
/L***)を利用するか或いは、上述のようにチャートの色をモニタやプリンタに出
力し、実測して作成する。
なお、網点面積率については、単にkcmyとも記載し、混色網濃度については、単にRGB又はRGBIとも記載し、色座標値については、単にLabとも記載する。
【0030】
なお、このセンサデバイスプロファイルや前記の印刷機のデバイスプロファイル(cmyk⇔Lab)等は、ICCのファーマットで作成すればICCプロファイルとなり、模擬印刷ツールの一般的な形式と一致させることができる。
そして、模擬印刷ツールの出力(プリンタで印刷された絵柄或いはモニタに表示された絵柄)を見本のゲラと対応させて、出力の色合いを対象印刷物の色見本の色合いと比較して出力の色合いが許容の範囲内か否かを判定する。
【0031】
この判定は、新聞社側の製版或いは印刷にかかるオペレータが目視によって行なうこともできるが、クライアント側に、例えばプリンタで印刷された絵柄を送って、クライアント側において出力の色合いを色見本のゲラの色合いと比較して出力の色合いが許容の範囲内か否かを判定してもよい。もしくは、クライアント側に模擬印刷ツールを配備してクライアント自身で判定しても良い。
【0032】
例えば、図4(b)に示すように、模擬印刷ツールとしてのモニタをクライアント側に配備して、モニタに表示すべき発色濃度(混色網濃度)R,G,Bの情報(データ)を新聞社側から送信されるようにして、送信された発色濃度R,G,Bをモニタに出力して、クライアント自身で出力の色合いを色見本のゲラの色合いと比較して判定しても良い。この手法では、クライアント側で予めセンサデバイスプロファイルや印刷機のデバイスプロファイルを取得しておけば、新聞社側に製版データを送らなくても、クライアント側の模擬印刷ツールに製版データに対応した出力(モニタなら画面表示、プリンタなら出力表示)を行なって、上記の判定を行なうようにすることができる。
【0033】
なお、本実施形態の技術では、模擬印刷ツールの出力の色合いが許容の範囲内になければ、製版内容を変更(補正)するか或いは上記の色調制御の濃度目標値を変更(補正)するようにしている。
図1は、このような印刷前確認並びに製版及び濃度目標値の変更について説明するフローチャートである。なお、基準輪転機のデバイスプロファイル,センサデバイスプロファイル及び模擬印刷ツール(プリンタ又はモニタ)のデバイスプロファイルは、予め取得しているものとする。
【0034】
図1に示すように、まず、上流製版システムから製版データk,c,m,yを取得し(製版データ取得ステップ、ステップB10)、この製版データk,c,m,yを基準輪転機デバイスプロファイル(ICCプロファイル)に作用させ色座標値(L***)を計
算して取得する(第1変換ステップ,ステップB20)。さらに、取得した色座標値(L***)を模擬印刷ツール(プリンタ又はモニタ)のデバイスプロファイル(ICCプ
ロファイル)に作用させ、両者(基準輪転機デバイスプロファイル、模擬印刷ツールのデバイスプロファイル)のL***が一致するモニタ又はプリンタに与える色変換された
データR,G,B又はk,c,m,yを計算して取得する(第2変換ステップ,ステップB30)。そして、模擬印刷ツール(モニタ又はプリンタ)に色変換されたデータk,c,m,y又はR,G,Bの製版データに応じた絵柄を出力させる(出力ステップ,ステップB40)。
【0035】
模擬印刷ツール(モニタ又はプリンタ)の出力を基準輪転機の色をシミュレートしたものとして、色合いがOKか否かを判定する(判定ステップ,ステップB50)。
ここでは、判定結果を、色合いがOK(判定1)と、色合いがOKでないが色合いの違いは僅かである(判定2)と、色合いがOKでなく色合いの違いが大きい(判定3)との3つに分類して対応している。
【0036】
色合いがOK(判定1)なら、製版データk,c,m,yをそのまま反映させてCTP等によって製版を行ない(ステップB60)、印刷を行なう(ステップB70)。つまり、この場合の製版カーブは傾き1のリニアなもの(図13参照)になる。
また、色合いがOKでないが色合いの違いは僅かである(判定2)場合には、製版データ各画素の基準輪転機目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boの変更を行ない(ステップB80)、目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boをセンサデバイスプロファイルに作用させて、色座標値(L***)を取得する(ステップB90)。この場合は、ステップ
B30に戻って、目標混色網濃度変更に対応して変更された色座標値(L***)を模
擬印刷ツール(プリンタ又はモニタ)のデバイスプロファイルに作用させ、模擬印刷ツールに出力するデータR,G,B又はk,c,m,yを取得する。以後は、上記と同様の処理を行なう。目標混色網濃度変更については後述する。
【0037】
また、色合いの違いが大きい(判定3)場合には、基準輪転機デバイスプロファイル,新聞社で出力したプリンタ出力をクライアントに送付し(ステップB100)、クライアント側において、基準輪転機デバイスプロファイルをもとに製版カーブの変更を行なうこと(ステップB110)も有効である。この場合の製版カーブは適宜の曲線状のもの(図13参照)になる。また、この場合は、製版データが変更されるので、ステップB10に戻って、再び上記と同様の処理を行なう。
【0038】
したがって、色合いの違いが大きい(判定3)場合には、製版カーブを修正し、修正した製版カーブを用いて製版データを修正した上で、印刷前の確認処理を再び実施するので、製版カーブの修正が適切であるか否かを事前に確認しながら、製版カーブを適切に修正することができる。
また、色合いがやや違う(判定2)の場合には、目標網点面積率を変更して補正し、これに基づいて印刷前の確認処理を再び実施するので、目標混色網濃度の変更,補正が適切であるか否かを事前に確認しながら、目標混色網濃度を適切に修正することができる。
【0039】
特に、色合いの違いが大きい(判定3)場合には、色調制御にかかる目標値を補正するのでは対応できない場合があるが、この場合には刷版そのものを補正するので、印刷当初から色調を確実に適正化できる。また、色合いがやや違う(判定2)の場合には、比較的簡単な補正である色調制御の目標値を補正することでも十分に対応できるため、目標値補正により対応しており、色合いの不良に対して効率的に対応することができる。
【0040】
なお、ここでは、色合いの判定基準として、色合いの違いが大きいか否かの基準である第1の許容の範囲と、色合いがOKであるか否かの基準である第2の許容の範囲(当然、第1の許容の範囲の範囲内にある)を、印刷オペレータ或いはクライアント側の担当者の目視による感覚的な基準として設け、色合いがOKあるか否かは、第2の許容の範囲内であるか否かとして判定し、色合いがOKでない場合の色合いの違いが大きいか否かは、第1の許容の範囲内であるか否かとして判定する。
【0041】
あるいは、ゲラのLabをスキャナー等で実測して、模擬印刷ツールのLab出力をデータで確認或いは実測して、ゲラのLabと模擬印刷ツールのLabとの差を数値(色差△E)化して比較することもできる。この場合、色差△Eの閾値△ESを設け、色差△Eが閾値△ESを超えなければ色合いがOK、閾値△ESを超えたら色合いがOKでないと判定することができる。特に、上述のように、第1の許容の範囲と第2の許容の範囲との2段階に判定する場合には、色合いの違いが大きいか否かの閾値(第1の許容の範囲の閾値)△ES1と、色合いがOKであるか否かの閾値(第2の許容の範囲の閾値)△ES2(ただし、△ES1>△ES2)を設定し、これらに基づき判定すればよい。
【0042】
なお、これらの許容の範囲は、模擬印刷ツール(モニタ又はプリンタ)のLab出力とゲラLabを比較して色差閾値として設けて、出力Labとゲラの色差△E*比較して、取得して、出力Labが第2の許容の範囲を規定する第2の閾値内(例えば全画素の平均色差△E*<3、画素:センサ検出面積相当の大きさ)にあれば判定1とし、出力R,G,Bが第2の閾値内にないが第1の許容の範囲を規定する第1の閾値内(例えば全画素の平均色差△E*<6)にあれば判定2とし、出力R,G,Bが第1の閾値内になければ判定3とするように構成すれば、機械的に判定を行なう判定手段を構成することができる。
【0043】
(B)目標混色網濃度変更にかかる第1実施形態
上記の印刷前確認技術並びに製版技術を適用する印刷機(ここでは、基準輪転機)では、後述する絵柄色調制御を行ないながら印刷を行なうが、この絵柄色調制御では、発色濃度の目標値(目標混色網濃度)Io,Ro,Go,Boを設定し、実際の印刷結果の発色濃度(混色網濃度)I,R,G,Bがこの目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boに近づくように、インキ供給量を制御する。具体的には、設定した目標混色網濃度Io,Ro,Go,Bo及び検出した実混色網濃度I,R,G,Bをそれぞれのデバイスプロファイルを用いて単色網点面積率(単に、網点面積率という)の目標値(目標網点面積率)に変換し、さらに、既知の対応関係に基づいて、目標網点面積率を目標単色網濃度に変換して、単色レベルで、実濃度と目標濃度と偏差を取って、この偏差が0になるように、インキ供給量を制御する。
【0044】
なお、前述の模擬印刷ツールの目標混色網濃度については、製版データ各画素(具体的には、1200dpi,50dpi相当の画素)の目標混色網濃度を計算してLabに変換、更に模擬印刷ツールのデバイスプロファイルに作用させて製版データ各画素の出力データ(RGB又はcmyk)としたものであるが、本実施形態の場合、印刷機の制御段落における目標混色網濃度は、後述するように、製版データから選択された制御点(注目画素)の平均濃度を表している。
【0045】
目標混色網濃度変更にかかる第1の手法としては、目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boについての変更比率ra1を設定して、この変更比率ra1を標混色網濃度Io,Ro,Go,Boに乗算して、目標混色網濃度を変更することができるが、上述のように、絵柄色調制御において、目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boから目標網点面積率を求める点に着目して、目標混色網濃度変更にかかる第2の手法として、目標網点面積率を変更することにより目標混色網濃度を変更することもできる。
【0046】
なお、一般に、印刷オペレータは藍を強くしたいとか墨を弱くしたいとか、インキ単色の濃度の強さを想定するが、現実には藍を強くすれば、センサのRGB濃度が強くなり、墨を弱くすればIRGB濃度が弱くなる、このため、直接に目標混色網濃度を変更してもオペレータの意思通りとならない場合が想定され、この点を考慮すれば、目標網点面積率に着目した第2の手法の方が有利と言える。
【0047】
つまり、目標混色濃度を変更したい場合には、オペレータ又はクライアント側により、この濃度変更にかかる変更比率raを設定してPC12に入力する(変更比率設定ステップ、図7のステップS06参照)。このステップS06の変更比率raの設定は、オペレータ又はクライアント側が模擬印刷ツール(モニタ又はプリンタ)の出力を見ながら必要に応じて行なう。
【0048】
目標網点面積率演算ステップにより演算された各インキ色の目標網点面積率ko´,co´,mo´,yo´に、ステップS06によって設定された変更比率raを乗算して、目標網点面積率ko,co,mo,yoを変更する(目標網点面積率変更ステップ、ステップS08参照)。
このように、各インキ色の目標網点面積率ko´,co´,mo´,yo´を変更した場合には、上記の図1のステップB90において、目標網点面積率ko´,co´,mo´,yo´を印刷機のデバイスプロファイルに作用させて、製版データ各画素の色座標値(L***)を取得することになる。この場合も、以後は、ステップB30に戻って、上記と同様の処理を行なう。
【0049】
以下、上記目標混色網濃度変更にかかる印刷前確認技術を用いた印刷機の絵柄色調制御について説明する。
(C)印刷機の絵柄色調制御方法及び装置にかかる第1実施形態
図5は本発明の印刷機の絵柄色調制御方法及び装置にかかる第1実施形態にかかる新聞用オフセット輪転機の概略構成を示す図である。本実施形態の新聞用オフセット輪転機は多色刷りの両面印刷機であり、印刷シート8の搬送経路に沿って、インキ色〔墨(k)、藍(c)、紅(m)、黄(y)〕毎に印刷ユニット2a,2b,2c,2dが設置されている。本実施形態では、印刷ユニット2a,2b,2c,2dは、インキキー7とインキ元ローラ6からなるインキキー式のインキ供給装置を備えている。この形式のインキ供給装置では、インキキー7のインキ元ローラ6に対する隙間量(以下、この隙間量をインキキー開度という)によりインキ供給量を調整することができる。また、インキキー7は印刷幅方向に複数並置されており、インキキー7の幅単位(以下、インキキー7によるインキ供給単位幅をキーゾーンという)でインキ供給量を調整することができる。インキキー7により供給量を調整されたインキは、インキローラ群5内で適度に練られ、薄膜を形成した後に版胴4の版面に供給され、版面に付着したインキがブランケット胴3を介して絵柄として印刷シート8に転写される。なお、図5中では省略しているが、本実施形態の新聞用オフセット輪転機は両面刷りなので、各印刷ユニット2a,2b,2c,2dには、印刷シート8の搬送経路を挟むようにして一対のブランケット胴3,3が備えられ、各ブランケット胴3に対して版胴4やインキ供給装置が設けられている。
【0050】
本実施形態の新聞用オフセット輪転機は、最下流の印刷ユニット2dのさらに下流にラインセンサ型IRGB濃度計1を備えている。ラインセンサ型IRGB濃度計1は印刷シート8上の絵柄の色を印刷幅方向ライン上にI(赤外光)、R(赤)、G(緑)、B(青)の反射濃度(混色網濃度)として計測する計測器であり、印刷シート8全体の反射濃度を計測したり、任意の位置の反射濃度を計測したりすることが可能である。本実施形態の新聞用オフセット輪転機は両面刷りなので、ラインセンサ型IRGB濃度計1は印刷シート8の搬送経路を挟むようにして表裏両側に配置され、表裏両面の反射濃度を計測できるようになっている。
【0051】
ラインセンサ型IRGB濃度計1により計測された反射濃度は演算装置10に送信される。演算装置10はインキ供給量の制御データを演算する装置であり、ラインセンサ型IRGB濃度計1で計測された反射濃度に基づいて演算を行い、印刷シート8の絵柄の色を目標色に一致させるためのインキキー7の開度を演算している。ここで、図6は本発明の一実施形態にかかる新聞用オフセット輪転機の絵柄色調制御装置の概略構成を示す図であると同時に、演算装置10の色調制御機能に着目した機能ブロック図である。
【0052】
演算装置10は、印刷機とは離れて設置されたDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)11とPC(パソコン)12とから構成され、PC12には色変換部14,インキ供給量演算部15,オンライン制御部16及びキー開度リミッタ演算部17としての機能が割り当てられている。なお、パソコン性能が十分にあれば、DSPを使わなくてもよく、この演算装置10全てをパソコンで構成しても良い。もちろん、早い処理を行なうためには、DSPを適宜使用すればよい。演算装置10の入力側には、ラインセンサ型IRGB濃度計1が接続され、出力側には印刷機内蔵の制御装置20が接続されている。制御装置20は、インキキー7のキーゾーン毎にインキ供給量を調整するインキ供給量調整手段として機能するものであり、インキキー7を開閉させる図示しない開閉装置を制御しており、各印刷ユニット2a,2b,2c,2dのインキキー7毎に独立してキー開度を調整することができる。また、演算装置10には表示装置としてのタッチパネル30が接続されている。タッチパネル30にはラインセンサ型IRGB濃度計1で撮像された印刷シート8の印刷面或いは製版データから発色された印刷面が表示され、印刷面上の任意の領域を指で指定できるようになっている。
【0053】
図7は演算装置10による色調制御の処理フローを示す図である。以下、図7を中心に演算装置10による色調制御の処理内容について説明する。
なお、色調制御に先立って、I(赤外光),R(赤),G(緑),B(青)の各色における各波長λのベタ濃度値Di(λ)を、予め基準濃度でJapanColor(ISO12642)等のカラースケールを印刷して得られたデータから取得しておく。つまり、予め、使用する印刷機を用いて基準濃度でJapanColor(ISO12642)等のカラースケールを印刷して、このカラースケールの印刷結果をIRGB濃度計により濃度検出する。これによって、各波長λの各色(各単色,及び2色,3色又は4色の混色)のベタ濃度値Di(λ)を取得することができる。これらのベタ濃度値Di(λ)の値は、一度求めれば、経時劣化等により印刷機の特性が変化しない限り利用することができる。
【0054】
また、演算装置10には、予め製版データが入力されており、演算装置10ではこの製版データから予め各画素のk,c,m,yデータを取得している。
色調制御では、図7に示すステップS02,S04の処理を実施した後、この処理結果に基づいて印刷を開始して、ステップS10〜S110のうちステップS40A,S50Aを除く各ステップの処理について予め設定された周期で繰り返し実施するようになっている。ステップS06,S08の処理は、基本的には、印刷開始後に、オペレータ等が印刷した印刷物を確認しながら必要に応じて必要なインキ色に対して適宜割り込みで実施するようになっているが、例えば、毎回墨が強くなるという現象が把握されていれば、印刷前に変更しておくということも行われる。また、ステップS40Aの処理については、印刷開始時の最初の制御周期に実施するのみでよく、その後は最初の制御周期で得られた値を流用する。ステップS50Aの処理については、印刷開始時の最初の制御周期及びステップS06,S08の処理が実施された際に実施するのみでよく、その後は得られた値を流用する。
【0055】
まず、注目画素領域(単に、注目点ともいう)を設定し(ステップS02)、設定された注目画素領域に基づいて、色調制御の処理を行なうようになっている。
注目画素領域の自動設定について説明すると、演算装置10のDSP11では、製版データに基づいて得られるkcmy網点面積率データから、各インキ色について自己相関が高い領域を選定し、この選定領域を、各インキ色に対応する注目画素領域としてそれぞれのインキ色毎に自動設定するようになっている。
【0056】
なお、製版データは、ビットマップデータとして与えられるが、注目画素領域の設定に当たっては、ビットマップデータを印刷機のフォーマットに応じたCIP4データ相当の低解像度データに変換した上で、且つ、以下のようなセンサの画素単位で処理を行なう。
つまり、各インキ色について自己相関が高い領域とは、具体的には、自己相関感度Hが予め設定された所定値以上の領域であり、センサ(IRGB濃度計)1の画素単位の領域とする。センサの画素単位とは、センサ(IRGB濃度計)1の解像度の最小単位である。具体的には、製版データの画素を多数集めたものがセンサ画素単位の1画素(1ブロック)に相当することになる。例えば、CIP4の低解像度データが50.8dpiで、センサ1ブロックの解像度が25.4dpiなら製版データの縦2画素分,横2画素分の領域(製版データの画素単位でで、2×2=4画素分)がセンサ画素単位の1画素単位となる。
【0057】
自己相関感度Hは、例えば、シアンの自己相関感度Hcは、画素面積率データ(c,m,y,k)を用いて、“Hc=cn/(c+m+y+k)”で表すことができ、この自己
相関感度Hcの値を、予め設定された基準自己相関感度値(所定値)H0と比較して、自
己相関感度Hcが基準自己相関感度値H0以上ならシアンについて自己相関が高い領域と
なる。他の色のインキについても同様に、自己相関感度Hの値を演算し、それぞれ予め設定された基準自己相関感度値(所定値)H0と比較する。この場合の指数値nの値は例え
ば1.3くらいを選ぶ。
【0058】
なお、基準自己相関感度値H0は、オペレータの入力操作により設定できるようになっ
ている。このため、基準自己相関感度値H0を高めに設定して、自己相関がかなり高い領
域に絞って注目画素領域を設定することで、注目画素領域は減少するが該当するインキの単色で且つトーンが強い点から濃度検出感度を上げて色調制御の精度の上げるようにしたり、基準自己相関感度値H0を低めに設定して、自己相関があまり高くない領域も含んで注目画素領域を設定することで、濃度検出感度は低下するが注目画素領域を広げることで色調制御の精度の上げるようにしたり、することができる。もちろん、基準自己相関感度値H0の推奨値(例えば絵柄全体の自己相関平均値)が予め入力されており、慣れないオ
ペレータは、この推奨値を用いるようにすることができる。また、原則的には、基準自己相関感度値H0は各インキ色に対し共通の値とするが、インキ色によって、基準自己相関
感度値H0を変えることも考えられる。
【0059】
次に、設定された各インキの注目画素領域毎に、目標混色網濃度を設定する(ステップS04)。つまり、演算装置10では、この製版データに基づいて、キーゾーン単位の注目画素領域の各画素網点面積率(又は、キーゾーン平均画線率)Ak,Ac,Am,Ayデータが取得されている。また、PC12の色変換部14は、各インキ色の網点面積率と混色網濃度とを関連付けるデータベース141を備えている。データベース141は、ISO/TC130国内委員会が制定した新聞印刷JapanColor(ISO12642)基準の印刷物を印刷し、IRGB濃度計で実測したデータ〔標準色の網点面積率(k,c,m,y)と混色網濃度(I,R,G,B)と色座標値(L,a,b)の対応関係を規定した変換テーブル〕を基準にして作成されている。色変換部14は、このデータベース141を用いて、入力されたキーゾーン単位の注目画素領域の各画素網点面積率(又は、キーゾーン平均画線率)Ak,Ac,Am,Ayに対応するキーゾーン平均混色網濃度をキーゾーン毎に求め、目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boとして設定する。
【0060】
なお、同じキーゾーン平均画線率Ak,Ac,Am,Ayの印刷絵柄であっても、ドットゲインを考慮すると印刷絵柄を構成する網の密度(50%平網,80%平網,ベタ等)により発色する濃度値は異なってくる。そこで、色変換部14は、網の密度毎にドットゲインを可変可能するとともに、ドットゲインを関数とするパラメータを画線率Ak,Ac,Am,Ayを混色網濃度Io,Ro,Go,Boに変換する際のパラメータとしており、ドットゲインを考慮した目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boの設定も可能になっている。なお、製版データの各画素網点面積率に対してドットゲインを考慮して目標混色網濃度を設定するためのドットゲイン補正については、後述の第2実施形態で説明する。
【0061】
以上のように目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boが設定されたら、印刷を開始してステップS10以降の処理を繰り返し実行する。まず、ステップS10として、ラインセンサ型IRGB濃度計1が印刷シート8全面の一画素毎の反射光量i’,r’,g’,b’を計測する。IRGB濃度計1で計測された各画素の反射光量i’,r’,g’,b’はDSP11に入力される。
【0062】
DSP11は、ステップS20として、各画素の反射光量i’,r’,g’,b’について所定の印刷枚数単位で移動平均を行なうことで、ノイズ成分を除去した各画素の反射光量i,r,g,bを演算する。そして、ステップS30として、注目画素領域の反射光量i,r,g,bをキーゾーン毎に平均処理し、白紙部分の反射光量を基準とする混色網濃度(実混色網濃度)I,R,G,Bを演算する。インキキーゾーンの平均画線率しかない場合は、キーゾーンの反射光量i,r,g,bをキーゾーン毎に平均処理し、白紙部分の反射光量を基準とする混色網濃度(実混色網濃度)I,R,G,Bを演算する。例えば、白紙部分の赤外光の反射光量をipとし、キーゾーン内の赤外光の平均反射光量をikとすると、赤外光の実混色網濃度IはI=log10(ip/ik)として求められる。DSP11で演算された注目画素領域毎の実混色網濃度I,R,G,Bは、PC12の色変換部14に入力される。
【0063】
色変換部14は、ステップS40A,S40B,S50A,S50B及びS60の処理を行なう。まず、ステップS40Aとして、ステップS04で設定された目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boをそれぞれ演算し、ステップS40Bとして、ステップS30で演算された実混色網濃度I,R,G,Bに対応する各インキ色の網点面積率をそれぞれ演算する。これらの演算にはデータベース141を用い、データベース141に記憶された対応関係に基づき、目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boに対応する各インキ色の網点面積率を目標網点面積率ko,co,mo,yoとして演算し、実混色網濃度I,R,G,Bに対応する各インキ色の網点面積率を実網点面積率k,c,m,yとして演算する。
【0064】
ここで、データベース141には、前述のように、基準濃度でJapan Color(ISO12642)等のカラースケールを印刷して、この印刷結果に基づいて作成された変換テーブル[ルックアップテーブル(LUT)ともいう]が入力されているが、この一方で、この印刷結果に基づいて作成された、ニールセン係数(ユールニールセンの係数)nを網点面積率と混色網濃度値との関係がほぼ線形となるような所定値n(nは,例えばn≧100程度に設定する)とした公知の拡張Neugebauer式も入力されている。
【0065】
【数1】

【0066】
なお、式(A)におけるc,m,y,k,kc,km,ky,cm,cy,my,kcm,kcy,kmy,cmy,kcmyは、各色(単色又は混色)の網点面積率を示す。混色について、例えば、kcは墨(k)とシアン(c)との網点面積率の積を示し、例えば、kcmyは墨(k)とシアン(c)とマゼンタ(m)とイエロー(y)の各網点面積率の積を示す。
【0067】
また、式(A)のDkc(λ),Dkm(λ),・・・,Dkcmy(λ)[各色iにおける波長λのベタ濃度値Di(λ)]は、各混色の目標濃度値における波長λのベタ重ね濃度値を示す。例えば、Dkc(λ)は墨(k)とシアン(c)との重ねの各色目標濃度値における波長λの濃度値を示し、例えば、Dkcmy(λ)は墨(k)とシアン(c)とマゼンタ(m)とイエロー(y)との重ねの各色目標濃度値における波長λの濃度値を示す。但し、λはI,R,G,Bの各波長である。これらのDi(λ)は、前述のように予め求められている。
【0068】
公知のノイゲバウアー式、或いは、拡張ノイゲバウアー式であってもニールセン係数nを適切に設定しないと、網点面積率と混色網濃度との関係は、通常は図8に破線で示すように、曲線的なものになる。なお、図8の例は、一例として、網点面積率c=m=y=0でFIXして、kの単色網点面積率と混色網濃度との関係をプロットした一断面であるが、多次元空間においてもこのような非線形な関係になっている。一方、このように、ニールセン係数nを例えば1000程度に設定した公知の拡張ノイゲバウアー式(A)の場合、網点面積率と混色網濃度との関係は、図8に実線で示すように線形の関係になる。多次元空間においてもこのような線形な関係になる。
【0069】
したがって、図9に一点鎖線で領域限界を示すように、基準濃度に応じて想定された色空間領域内の網点面積率と混色網濃度との関係を、図9に二点鎖線で示すように、色空間の外側領域まで簡単に延長して適用することができる。つまり、図9に実線円で示す色空間領域の外部空間に対しても網点面積率と混色網濃度との関係を適用でき、網点面積率と混色網濃度との関係を基準濃度に応じて設定しながら、図9に二点鎖線円で示すように、色空間を実質的に拡大することができるのである。なお、網点面積率が100%を越える領域は仮想網点領域となる。つまり、公知の拡張ノイゲバウアー式(A)により、製版データ上ではありえない網点面積率を仮想網点面積率として定義する。
【0070】
次に、色変換部14は、ステップS50Aとして、目標網点面積率ko,co,mo,yoに対応する各インキ色の目標単色網濃度をそれぞれ演算し、ステップS50Bとして、実網点面積率k,c,m,yに対応する各インキ色の実単色網濃度をそれぞれ演算する。これらの演算には、図10に示すようなマップを用いる。図10は網点面積率を変化させた場合に実測される単色網濃度を特性曲線としてプロットしたマップの一例であり、事前に測定されたデータにより作成されている(データベース141の値よりピックアップする)。図10に示す例では、墨色の目標網点面積率ko、実網点面積率kをマップに照らし合わせることで、マップ中の特性曲線からそれぞれ目標単色網濃度Dakoと実単色網濃度Dakとが求められている。このようにして、色変換部14は、各インキ色の目標単色網濃度Dako,Daco,Damo,Dayoと実単色網濃度Dak,Dac,Dam,Dayとを求める。
【0071】
次に、色変換部14は、ステップS60として、目標単色網濃度Dako,Daco,Damo,Dayoと実単色網濃度Dak,Dac,Dam,Dayとの偏差に対応する各インキ色のベタ濃度偏差ΔDsk,ΔDsc,ΔDsm,ΔDsyを演算する。なお、ベタ濃度は網点面積率にも依存しており、同単色網濃度に対しては、網点面積率が高いほどベタ濃度は低くなる。そこで、色変換部14は、図11に示すようなマップを用いて演算を行なう。図11は単色ベタ濃度を変化させた場合に実測される単色網濃度を網点面積率毎に特性曲線としてプロットしたマップの一例であり、事前に測定されたデータにより作成されている。色変換部14は、各インキ色について目標網点面積率ko,co,mo,yoに対応する特性曲線を図11に示すマップから選択し、選択した特性曲線に目標単色網濃度Dako,Daco,Damo,Dayoと実単色網濃度Dak,Dac,Dam,Dayとを対応させることにより、ベタ濃度偏差ΔDsk,ΔDsc,ΔDsm,ΔDsyを求める。図11に示す例では、墨色の目標網点面積率koが75%の場合に、目標単色網濃度Dako、実単色網濃度Dakをマップに照らし合わせることで、マップ中の75%特性曲線から墨色のベタ濃度偏差ΔDskが求められている。
【0072】
色変換部14で演算された各インキ色のベタ濃度偏差ΔDsk,ΔDsc,ΔDsm,ΔDsyは、インキ供給量演算部15に入力される。インキ供給量演算部15は、ステップS70として、ベタ濃度偏差ΔDsk,ΔDsc,ΔDsm,ΔDsyに対応するキー開度偏差量ΔKk,ΔKc,ΔKm,ΔKyを演算する。キー開度偏差量ΔKk,ΔKc,ΔKm,ΔKyは、各インキキー7の現在のキー開度Kk0,Kc0,Km0,Ky0(前回のステップS100の処理で印刷機の制御装置20に出力したキー開度Kk,Kc,Km,Ky)に対する増減量であり、インキ供給量演算部15は、公知のAPI関数(オートプリセットインキング関数)を用いて演算を行なう。API関数は基準濃度にするため各キーゾーンの画線率A(Ak,Ac,Am,Ay)とキー開度K(Kk,Kc,Km,Ky)との対応関係を示した関数である。画線率Aは、ステップS04で用いたもの、即ち、網点面積率をキーゾーンで平均化処理したものを用いることができる。具体的には、基準濃度Ds(Dsk,Dsc,Dsm,Dsy)に対するベタ濃度偏差ΔDs(ΔDsk,ΔDsc,ΔDsm,ΔDsy)の比率kd(kd=ΔDs/Ds)を求めるとともに、画線率Aに対する基準濃度にするためのキー開度Kを、API関数を使って求め、これらの積としてベタ濃度偏差ΔDsをゼロにするためのキー開度偏差量ΔK(ΔK=kd×K)を求める。
【0073】
次に、オンライン制御部16は、ステップS80として、色変換部14で演算されたキー開度偏差量ΔKk,ΔKc,ΔKm,ΔKyを、各印刷ユニット2a,2b,2c,2dからラインセンサ型IRGB濃度計1までの無駄時間、時間あたりのインキキー7の反応時間、及び印刷速度を考慮して補正する。この補正は、キー開度信号が入力されてからインキキー7が動き、キー開度が変更されて印刷シートに供給されるインキ量が変化し、IRGB濃度計1に反射光量の変化として検出されるまでの時間遅れを考慮したものである。このようなむだ時間の大きいオンラインフィードバック制御系としては、例えばむだ時間補償付PI制御、ファジー制御、ロバスト制御等が最適である。オンライン制御部16は、補正後のキー開度偏差量(オンライン制御用キー開度偏差量)ΔKk,ΔKc,ΔKm,ΔKyに現在のキー開度Kk0,Kc0,Km0,Ky0を加算したオンライン制御用キー開度Kk1,Kc1,Km1,Ky1をキー開度リミッタ演算部17に入力する。
【0074】
キー開度リミッタ演算部17は、ステップS90として、オンライン制御部16で演算されたオンライン制御用キー開度Kk1,Kc1,Km1,Ky1に対して上限値を規制する補正を行なう。これは、特に低画線部における色変換アルゴリズム(ステップSS40,S50,S60の処理)の推定誤差によりキー開度が異常に増大することを規制するための処理である。そして、キー開度リミッタ演算部17は、ステップS100として、上限値を規制したキー開度Kk,Kc,Km,Kyをキー開度信号として印刷機の制御装置20に送信する。
【0075】
印刷機の制御装置20は、ステップS110として、演算装置10から送信されたキー開度信号Kk,Kc,Km,Kyに基づき各印刷ユニット2a,2b,2c,2dの各インキキー7の開度を調節する。これにより、各インキ色のインキ供給量は、キーゾーン毎に目標とする色調に見あったものにコントロールされることとなる。
なお、前述のように目標混色濃度が変更された場合には、変更比率raが設定され(ステップS06,変更比率設定ステップ)。ステップS40の目標網点面積率演算ステップにより演算された各インキ色の目標網点面積率ko´,co´,mo´,yo´に、ステップS06によって設定された変更比率raを乗算して、目標網点面積率ko,co,mo,yoが変更されることになる(ステップS08,目標網点面積率変更ステップ)。
【0076】
もちろん、この変更比率raが特に入力されなければ、ステップS40で演算された各インキ色の目標網点面積率ko´,co´,mo´,yo´をそのまま次ステップで用いる目標網点面積率ko,co,mo,yoに設定する(或いは、変更比率raを基準値1として目標網点面積率ko,co,mo,yoを演算するというロジックでも良い)。
このようにして、変更比率raが設定されると、その後は、ステップS08で変更された目標網点面積率ko,co,mo,yoが、ステップS50Aにおける各インキ色の目標単色網濃度Dako,Daco,Damo,Dayoの演算、及び、その後のステップS60におけるベタ濃度偏差ΔDsk,ΔDsc,ΔDsm,ΔDsyの演算、さらに、ステップS70におけるキー開度偏差量ΔKk,ΔKc,ΔKm,ΔKyの演算及びステップS80におけるオンライン制御用キー開度Kk1,Kc1,Km1,Ky1の演算に反映され、変更された目標濃度に色調が制御される。
【0077】
本実施形態にかかる色調制御方法および装置は、上述のように構成されるので、印刷機の立ち上がり直後(OKシート後)から色調制御を実施することができる。そして、注目画素領域(注目点)をそれぞれ設定して、注目点の混色網濃度を目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boとして設定するとともに、対応する本刷りシートの注目点の実混色網濃度I,R,G,Bを計測してフィードバック制御するので、1bit−Tiff或いはCIP4データのような製版データがない場合でも、絵柄の特定の注目点について色調制御を行なうことができる。
【0078】
また、計測値をキーゾーン全体で平均化しないので、キーゾーン内の絵柄の画線率が低くても(例えば、キーゾーン内に1ポイントの小さな絵柄が存在しても)、ラインセンサ型IRBG濃度計1の計測誤差が少なく、安定した色調制御を行なうことができる。特に、インキ色毎に最も濃度感度の高い画素を演算して自動抽出して注目画素領域として設定することで、キーゾーン内の絵柄の画線率が低い場合において、さらに安定した色調制御を行なうことができる。具体的には、例えば、シアンの濃度感度Hdcは、計測濃度デー
タ(R,G,B,I)を用いて、“Hdc=Rn/(R+G+B+I)”で定義すること
ができ(n:自己相関べき乗で例えば1.3とする)、この濃度感度Hdcの値が最も高い画素がシアンの注目点となる。同様に他のインキ色についても濃度感度が最も高い画素を演算し、その画素を注目点として設定する。
【0079】
そして、目標濃度(目標網点面積率)に対する変更比率(=変更係数)raの値が必要に応じて適切に設定され目標網点面積率が変更されることによって、より客先の要求にあった色調に印刷することができ、色調調整によってより商品性の高い印刷を実現することができる。
特に、目標混色網濃度を直接変更するように構成した場合、あるインキ色に最も感度の高い波長の目標混色網濃度を変更すると他のインキ色の濃度にも影響が出てしまうが、各インキの単色の目標網点面積率を変更することによって、目標濃度(目標混色網濃度)を変更するように構成しているので、あるインキ色の目標濃度を変更しても他のインキ色の濃度には影響を少なくすることができ、濃度変更に混乱を招くことなく適切に行なうことができる。
【0080】
また、実混色網濃度から実網点面積率を求める際、及び、目標混色網濃度から目標網点面積率を求める際に、網点面積率と混色網濃度との対応関係として、I(赤外光),R(赤),G(緑),B(青)の各色における各波長λのベタ濃度値Di(λ)を予め取得するとともにユールニールセンの係数を網点面積率と混色網濃度値との関係がほぼ線形となるような所定値nに設定した公知の拡張ノイゲバウアー式(A)を用いるので、色空間内の対応関係を色空間外に容易に延長させることができる。
【0081】
つまり、ニールセン係数nを網点面積率と混色網濃度値の関係がほぼ線形となるような値に設定した公知の拡張ノイゲバウアー式(A)の場合、網点面積率と混色網濃度との関係は、図9に実線で示すように線形の関係になるので、図8に黒丸で示すように、実際の印刷物の濃度(現在濃度)が基準濃度に応じた色空間(実線円)内の領域を逸脱するような場合にも、基準濃度に応じて想定された色空間領域内の網点面積率と混色網濃度との関係を容易に拡張させて用いることができる。
【0082】
このため、基準濃度により規定される色空間の外側の領域に対しても、混色網濃度から網点面積率への変換を確実に行なうことができ(この場合、網点面積率が100%を越えてしまうので仮想網点面積率となる)、例えば、変更比率が目標網点面積率の増大側に設定されて、変更比率に応じて変更された目標網点面積率に対応した目標混色網濃度が基準濃度により規定される色空間を超える濃度に設定され、実混色網濃度印刷が基準濃度により規定される色空間を超える濃度になっても、実網点面積率を確実に求めることができ、変更比率に対応した色調制御を実施することができる。
【0083】
(D)目標混色網濃度変更にかかる第2実施形態
目標混色網濃度変更は、ドットゲイン補正係数を変えることによっても行なうことができる。
つまり、次式(D)により、ドットゲイン補正係数kc,km,ky,kkにより補正して、版データの単色網点面積率が50%時の各色ドットゲイン量(補正後値)DGc〜DGkを算出する。
DGc=kc×DGc´
DGm=km×DGm´
DGy=ky×DGy´
DGk=kk×DGk´ (D)
但し、kc,km,ky,kkはドットゲイン補正係数で、通常は1とする。
【0084】
なお、DGc´、DGm´、DGy´、DGk´は、予め基準濃度でJapanColor(ISO12642)等のカラースケールを印刷して得られた単色50%網濃度D50と単色100%ベタ濃度D100の値を使って計算される。
DG=(1−10-D50)/(1−10-D100)−0.5
そして、製版網点面積率データc´〜k´を、次式(E)によりドットゲイン補正して、補正した網点面積率データk,c,m,yを得ることができる。
c=−DGc/0.25×(c´−0.5)2+DGc+c´
m=−DGm/0.25×(m´−0.5)2+DGm+m´
y=−DGy/0.25×(y´−0.5)2+DGy+y´
k=−DGk/0.25×(k´−0.5)2+DGk+k´ (E)
但し、c〜k:ドットゲイン補正された網点面積率データ
c´〜k´'製版網点面積率データ
このような、ドットゲイン補正係数を変えることによって、目標濃度を変更することができる。例えば、印刷機械のローラやブランケット等が劣化してドットゲインが増えた場合、ドットゲイン補正係数を1より増やせば正確な目標値の計算が可能となる。
【0085】
以下、上記目標混色網濃度変更にかかる印刷前確認技術を用いた印刷機の絵柄色調制御について説明する。
(E)印刷機の絵柄色調制御方法及び装置にかかる第2実施形態
本発明の印刷機の絵柄色調制御にかかる第2実施形態について説明する。本実施形態は、上記の各実施形態の変換テーブルに代えて、ドットゲイン補正された公知のノイゲバウアー式(B)を用いるものである。
【0086】
つまり、第1実施形態の予め基準濃度でJapanColor(ISO12642)等のカラースケールを印刷して得られた対応関係に基づいて作成された変換テーブルに代えて、I(赤外光),R(赤),G(緑),B(青)の各色における各波長λのベタ濃度値Di(λ)を予め基準濃度でJapanColor(ISO12642)等のカラースケールを印刷して得られたデータから取得し、これとともに、ドットゲイン補正を施した公知のノイゲバウアー式(B)として以下のように規定して、この式(B)を用いて混色網濃度を求める。
【0087】
【数2】

【0088】
なお、上式は、前記の公知の拡張ノイゲバウアー式(A)からニールセン係数nを除いたものである。
このようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、公知のノイゲバウアー式(B)のドットゲイン補正を説明すると、式(B)の網点面積率データk,c,m,yは、以下のようにドットゲイン補正される。
【0089】
まず、カラースケール濃度値データから抜粋することにより、製版データの網点面積率が50%時の単色網濃度Dc50〜Dk50、及び、製版データの網点面積率がベタ(1
00%)時の単色ベタ濃度(単色ベタ網濃度)Dc100〜Dk100を得て、これらの値に基づいて、次式(C)によって、製版データの単色網点面積率が50%時の各色ドットゲイン量(補正前値)DGc´〜DGk´を算出する。
DGc´=(1−10-Dc50)/(1−10-Dc100)−0.5
DGm´=(1−10-Dm50)/(1−10-Dm100)−0.5
DGy´=(1−10-Dy50)/(1−10-Dy100)−0.5
DGk´=(1−10-Dk50)/(1−10-Dk100)−0.5 (C)
但し、
DGc〜DGk:製版データの単色網点面積率が50%時の各色ドットゲイン量Dc50〜Dk50:製版データの網点面積率が50%時の単色網濃度(カラースケール濃度値データから抜粋)
Dc100〜Dk100:製版データの網点面積率がベタ(100%)時の単色ベタ濃度(カラースケール濃度値データから抜粋)
次に、上式(D)により、ドットゲイン補正係数kc,km,ky,kkにより補正して、版データの単色網点面積率が50%時の各色ドットゲイン量(補正後値)DGc〜DGkを算出する。
【0090】
そして、製版網点面積率データc´〜k´を、上式(E)によりドットゲイン補正して、補正した網点面積率データk,c,m,yを得る。
(F)印刷機の絵柄色調制御方法及び装置にかかる第3実施形態
本発明の第3実施形態について図12を用いて説明する。本実施形態は、注目画素領域(注目点)の目標濃度(目標混色網濃度)の設定方法に特徴があり、図12に示すフローチャートは、本実施形態における処理内容(図7のステップS04に相当する処理内容)を詳細に示している。絵柄色調制御のための他の処理内容については図7を用いて説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0091】
本実施形態も上記第1実施形態と同様、新聞社の本社から新聞紙の紙面情報がビットマップデータの形式で印刷工場に送信されてくるものとする。ただし、本実施形態では、第2実施形態との相違点として、紙面情報のビットマップデータに加え、紙面の色情報を作成した入力装置のICCプロファイルも送信されてくるものとする。ステップS321では、ビットマップデータを印刷機のフォーマットに応じたCIP4データ相当の低解像度データに変換し、ステップS322では、インキ供給単位幅毎に各インキ色に対応する注目点をそれぞれ設定する。これらステップS321,S322の処理内容は、第2実施形態に係るステップS311,S312の処理内容と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0092】
ステップS323では、新聞社本社から送信されたICCプロファイルを用いて注目点の網点面積率ki,ci,mi,yiを色座標値L,a,bに変換する。そして、ステップS324では、データベース141に記憶された変換テーブルを用いてステップS323で求めた色座標値L,a,bを混色網濃度に変換する。しかしながら、色座標値は3次元情報であるのに混色網濃度は4次元情報であるので、色座標値に対応する混色網濃度は一意には定まらない。混色網濃度を一意には定めるには、何らかの追加情報が必要になるが、ICCプロファイルからは色座標値という3次元情報しか得ることができない。
【0093】
そこで、本実施形態では以下のステップで説明するように、印刷絵柄の網点面積率データ、すなわち、色座標値L,a,bに対応する網点面積率ki,ci,mi,yiを利用することによって、このような3次元情報から4次元情報への展開において、候補となる無数の4次元情報の中から最も適当な4次元情報を選出することを行なう。
まず、ステップS325において、データベース141に記憶された変換テーブルを用いて注目点の網点面積率ki,ci,mi,yiを色座標値L’,a’,b’に変換する。ステップS326では、ステップS323で求めた色座標値L,a,bとステップS325で求めた色座標値L’,a’,b’との色差ΔL’,Δa’,Δb’を演算し、ステップS327において、この色差ΔL’,Δa’,Δb’に対応する網点面積率の変化量Δk’,Δc’,Δm’,Δy’を演算する。網点面積率の各変化量は、色座標値の各変化量を用いて下式で近似することができる。但し、下式におけるa,bは線形近似係数である。
【0094】
Δc’=a11×ΔL’+a12×Δa’+a13×Δb’+bc ・・・(1)
Δm’=a21×ΔL’+a22×Δa’+a23×Δb’+bm ・・・(2)
Δy’=a31×ΔL’+a32×Δa’+a33×Δb’+by ・・・(3)
Δk’=a41×ΔL’+a42×Δa’+a43×Δb’+bk ・・・(4)
ステップS328では、注目点の網点面積率ki,ci,mi,yiにステップS327で求めた変化量Δk’,Δc’,Δm’,Δy’を加算し、その値を仮想網点面積率k’,c’,m’,y’として設定する。ステップS329では、この仮想網点面積率k’,c’,m’,y’をデータベース141に記録された変換テーブルに照合し、ステップS324で求めた複数の混色網濃度候補の中から仮想網点面積率k’,c’,m’,y’に最も対応するものを選択する。選択された混色網濃度は目標混色網濃度Io,Ro,Go,Boとして設定され、ステップS330で演算される注目点の実混色網濃度I,R,G,Bとともに、ステップS40以降の処理で用いられる。
【0095】
本方法によれば、印刷依頼元等から得たICCプロファイルを用いて色調を制御することができるので、従来行われている校正刷りと比較しながらの色合わせに比較して、印刷依頼元等が所望する色調に正確、且つ容易に色合わせすることができる。したがって、本方法によれば、OKシートが得られるまでの損紙の発生量を大幅に低減することもできる。
【0096】
(G)その他
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は上述のものに限定されない。
例えば、図1に示す印刷機の絵柄色調の印刷前確認にかかる実施形態では、色調(色合い)の許容の範囲を、第1の許容の範囲及び第1の閾値と第2の許容範囲及び第2の閾値との2段階に設定し、色合いの違いが大きい(判定3)場合には、刷版そのものを補正することにより対応し、色合いがやや違う(判定2)の場合には、色調制御の目標値を補正することにより対応しているが、色合いの許容の範囲を、一段階のみ(第1の許容の範囲及び第1の閾値のみ、或いは、単なる許容の範囲及び単なる閾値のみ)として、刷版そのものを補正することと、色合いの不良に対して効率的に対応することとのいずれかで対応しても良い。
【0097】
また、色調制御に関しては、例えば、上記の各実施形態では、ラインセンサ型のIRGB濃度計を用いているが、スポット型のIRGB濃度計を用いて印刷シート上を2次元的に走査するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置並びに製版方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置の一実施形態を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法の一実施形態を説明するもので、印刷前の印刷関連データの流れを示す図である。
【図4】本発明の印刷機の絵柄色調の印刷前確認方法及び装置並びに製版方法の一実施形態を説明する図であり、(a)は印刷前確認方法及び装置について示し、(b)は製版方法について示す。
【図5】本発明の絵柄色調制御の第1実施形態にかかる新聞用オフセット輪転機の概略構成を示す図である。
【図6】図5の演算装置の色調制御機能に着目した機能ブロック図である。
【図7】図5の演算装置による色調制御の処理フローを示すフローチャートである。
【図8】本発明の絵柄色調制御の第1実施形態にかかる色空間の拡張を説明する図である。
【図9】本発明の絵柄色調制御の第1実施形態にかかる網点面積率と混色網濃度との対応関係を示す図である。
【図10】単色網濃度を網点面積率に対応づけるマップである。
【図11】ベタ濃度を網点面積率と単色網濃度とに対応づけるマップである。
【図12】本発明の絵柄色調制御の第3実施形態にかかる色調制御の処理フローを示すフローチャートである。
【図13】製版カーブを説明する図である。
【符号の説明】
【0099】
1 ラインセンサ型IRGB濃度計
2a,2b,2c,2d 印刷ユニット
3 ブランケット胴
4 版胴
5 インキローラ群
6 インキ元ローラ
7 インキキー
8 印刷シート
10 演算装置
11 DSP
12 PC
14 色変換部
15 インキ供給量演算部
16 オンライン制御部
17 キー開度リミッタ演算部
20 印刷機内蔵の制御装置
30 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力ステップと、
前記出力ステップにおいて前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の発色状態の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、をそなえ、
前記判定ステップにより、
前記色調が前記許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、
前記色調が前記許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定ステップを再び実施する
ことを特徴とする、印刷機の印刷前の色調確認方法。
【請求項2】
印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力ステップと、
前記出力ステップにおいて前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、をそなえ、
前記判定ステップにより、
前記色調が第1の許容の範囲内とされたら、基準の製版カーブを用いて製版を行ない、前記色調が前記第1の許容の範囲内でないとされたら、前記の印刷機のデバイスプロファイルを用いて前記モニタ又はプリンタで確認しながら前記印刷機の製版カーブとなるように製版カーブを修正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定ステップを再び実施するとともに、
前記色調が前記第1の許容の範囲よりも狭い範囲として前記第1の許容の範囲内に設定された第2の許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、
前記色調が前記第2の許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記第2の許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定ステップを再び実施する
ことを特徴とする、印刷機の印刷前の色調確認方法。
【請求項3】
印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力手段と、
前記出力手段において前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、をそなえ、
前記判定手段により、
前記色調が前記許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、
前記色調が前記許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定手段による判定を再び実施する
ことを特徴とする、印刷機の印刷前の色調確認装置。
【請求項4】
印刷に使用する印刷機のデバイスプロファイルと、モニタ又はプリンタのデバイスプロファイルとを用いて、印刷に使用する製版データを前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態に変換し、前記製版データに対応して前記印刷機で印刷する場合の印刷絵柄の発色状態を画像又は印刷物として出力する出力手段と、
前記出力手段において前記モニタに出力された画像又は前記プリンタに出力された印刷物の色調が許容の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、をそなえ、
前記判定手段により、
前記色調が第1の許容の範囲内とされたら、基準の製版カーブを用いて製版を行ない、前記色調が前記第1の許容の範囲内でないとされたら、前記の印刷機のデバイスプロファイルを用いて前記モニタ又はプリンタで確認しながら前記印刷機の製版カーブとなるように製版カーブを修正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定手段を再び実施するとともに、
前記色調が前記第1の許容の範囲よりも狭い範囲として前記第1の許容の範囲内に設定された第2の許容の範囲内であるとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記製版データに対応した基準の目標濃度のままとし、
前記色調が前記第2の許容の範囲内でないとされたら、印刷前の前記目標濃度を、前記基準の目標濃度に対して前記色調が前記第2の許容の範囲内になるように前記モニタ又はプリンタで確認しながら補正し、前記モニタ又は前記プリンタに前記補正した発色状態を画像又は印刷物として出力して前記判定手段による判定を再び実施する
ことを特徴とする、印刷機の印刷前の色調確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−312220(P2008−312220A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177278(P2008−177278)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2006−23324(P2006−23324)の分割
【原出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】