説明

原子層成長法を用いた成膜方法及びその成膜装置

【課題】酸化剤である水を噴射弁により直接噴射する際の不具合を解消した成膜方法及びその成膜装置を提供する。
【解決手段】基板Wを内部に保持し、ポンプ71により減圧されている成膜室2内に、有機金属化合物を含む液体原料を噴射弁41により直接噴射して減圧沸騰現象により前記液体原料を気化させて、基板表面に有機金属化合物を吸着させる吸着工程と、成膜室2内に、酸化剤である水と水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒との混合溶液を噴射弁51により直接噴射して減圧沸騰現象により前記混合溶液を気化させて、基板表面上に吸着した有機金属化合物を酸化する酸化工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子層成長(ALD:Atomic Layer Deposition)法を用いた成膜方法及び成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子層成長(ALD)法を用いた成膜装置としては、例えば特許文献1に示すように、高い蒸気圧の成膜原料を気化して成膜室内に供給し、基板表面に吸着させ、その次に酸化剤ガスを供給し、基板表面に吸着した成膜原料を酸化させ、それを繰り返すことによって原子を積み重ねていく成膜するものがある。
【0003】
そして、成膜室内への供給される酸化剤として水(HO)を用いる場合には、バブリングによって気化した水蒸気を供給配管を介して成膜室内に供給する方法が考えられている。
【0004】
ところが、バブリングにより気化では、高濃度の水蒸気を得ることが困難であり、十分な供給量を得るためには、供給時間を長くする必要があり、ALD法を用いた成膜の高速化の阻害要因となっている。なお、バブリングにより高濃度の水蒸気を供給できたとしても、水蒸気が供給配管内で結露してしまい、依然として高濃度の水蒸気を供給することは困難であり、結露を防止するためにはある程度の希釈が必要となる。
【0005】
このようなことから、本願発明者は、特許文献2に示すように、酸化剤である水を成膜室に設けられた噴射弁により、水を成膜室内に直接噴射する減圧沸騰噴霧気化方式により供給する方法を提案している。
【0006】
しかしながら、水を減圧沸騰噴霧気化方式により供給すると、噴射弁から出た水が気化するときの気化潜熱により気化していない水が凍って氷になってしまい、噴射弁の噴射口を閉塞する又は噴射口近傍に付着するなどして気化効率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
なお、噴射弁をヒータを用いて100度以上に加熱して、水が気化する際の気化潜熱をヒータから供給することが考えられるが、噴射弁の駆動部は加熱によって劣化するため駆動変位量が安定せず、噴射量(酸化剤の供給量)の再現性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−347446号公報
【特許文献2】特開2008−182183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、酸化剤である水を噴射弁により直接噴射する際の不具合を解消することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る原子層成長法を用いた成膜方法は、基板を内部に保持し、ポンプにより減圧されている成膜室内に、有機金属化合物を含む液体原料を噴射弁により直接噴射して減圧沸騰現象により前記液体原料を気化させて、前記基板表面に有機金属化合物を吸着させる液体原料供給工程と、前記成膜室内に、酸化剤である水と当該水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒との混合溶液を噴射弁により直接噴射して減圧沸騰現象により前記混合溶液を気化させて、前記基板表面上に吸着した有機金属化合物を酸化する混合溶液供給工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
有機溶媒としては、炭素数1〜5の低級アルコール、炭素数3〜5の低級ケトン又はテトラヒドロフランが考えられる。
【0012】
また、本発明に係る成膜装置は、基板を内部に保持する成膜室と、前記成膜室内を減圧する調圧機構と、有機金属化合物を含む液体原料を前記成膜室内に直接噴射する第1供給機構と、酸化剤である水と当該水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒との混合溶液を前記成膜室内に供給する第2供給機構と、前記成膜室内をパージするためのパージガスを供給するパージガス供給機構と、前記第1供給機構、第2供給機構及びパージガス供給機構を、前記基板上に原子層成長による膜が形成されるように制御する制御装置と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、酸化剤である水に水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒を混合させた混合溶液を用いることにより、混合溶液全体の気化潜熱を水単体で用いた場合に比べて下げることができる。その結果、水が凍って生じた氷が噴射弁の噴射口を閉塞する又は噴射口近傍に付着することがなく、気化効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の全体構成図である。
【図2】同実施形態における噴射弁の模式断面図である。
【図3】水単体を噴射した場合の噴霧状態を示す図である。
【図4】水及び水と各種有機溶媒との混合溶液の噴霧状態を示す図である。
【図5】同実施形態における成膜方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る成膜装置100は、加工対象基板であるシリコン基板W(例えば、厚さ0.5mm)上に酸化ハフニウム(HfO)膜を成膜するための原子層成長法を用いた成膜装置である。
【0017】
具体的にこのものは、図1に示すように、基板Wを内部に保持する成膜室2と、前記成膜室2内に設けられ、シリコン基板Wの温度を調節する温調機構3と、第1の前駆体として、有機金属化合物からなる液体原料を前記成膜室2内に直接噴射する第1供給機構(以下、液体原料供給機構という。)4と、第2の前駆体として、混合溶液を前記成膜室2内に直接噴射する第2供給機構(以下、混合溶液供給機構という。)5と、前記成膜室2内をパージするためのパージガスを供給するパージガス供給機構6と、成膜室2内の圧力を調節する調圧機構7と、液体原料供給機構4、混合溶液供給機構5及びパージガス供給機構6等を、前記シリコン基板W上に原子層成長による膜が形成されるように制御する制御装置8と、を備えている。
【0018】
本実施形態においては、液体原料として例えばテトラキスメチルエチルアミノハフニウム(Hf[N(CH)(C)]、TEMAHf)を用い、混合溶液として酸化剤である水(HO)と水よりも気化潜熱が小さく水に対して相互溶解性を示す有機溶媒との混合溶液を用いている。この有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3〜5の低級ケトン、又はテトラヒドロフラン等を用いることができる。本実施形態では、水316mlとエタノール683mlとを混合してモル比で4:6(水:エタノール)の混合溶液を用いている。
【0019】
以下に各部2〜8について説明する。
成膜室2は、保持機構(図示しない)により内部に加工対象基板となるシリコン基板Wを例えば水平に保持するものであり、シリコン基板Wの温度を調節するための基板ヒータ等の温調機構3を備えている。そして、成膜室2は、調圧機構7の真空ポンプ71によって所定圧力(例えば10〜20Pa)に減圧されている。
【0020】
温調機構である基板ヒータ3は、シリコン基板Wの温度が約200℃〜約300℃の高温で一定に保たれるように、制御装置8により制御されている。このように、シリコン基板Wが約200〜300℃に保たれているので、シリコン基板Wに吸着した原料((Hf[N(CH)(C)])は分解させることなく、あるいは液体状態の原料を再蒸発させ余剰な前駆体をパージガスでもって排出させうる。
【0021】
液体原料供給機構(第1供給機構)4は、液体原料噴射弁(第1噴射弁)41と、当該噴射弁41に液体原料((Hf[N(CH)(C)])を供給するための液体原料供給管42と、液体原料容器43と、を備えている。
【0022】
液体原料噴射弁41は、成膜室2の壁(例えば上壁)にシリコン基板Wに対向して取り付けられて、成膜室2内に液体原料を直接噴射するものである。
【0023】
ここで、「直接噴射」とは、噴射弁から射出された液体原料が、成膜室2内の空間に直接射出されることをいう。
【0024】
噴射弁41の構成は、図2に示すように、前記液体原料が内部空間に充填されるものであって、先端部に噴射孔Hを貫通させてなるボディ411、そのボディ411内に進退可能に配置された弁体413、弁体413に互いに逆向きの軸方向に沿った進退力を付与する電磁コイル412及びバネ414を備えてなるピボットタイプのものである。
【0025】
ボディ411は、筒状のボディ本体411Aと、そのボディ本体411Aの先端に連続して設けられた噴射孔形成部411Bとからなり、ボディ本体411Aの先端部には内面が逆円錐形状に構成された弁座4111が形成してある。噴射孔形成部411Bは、前記弁座4111からさらに先端側に設けられた中空部分球状のものであり、その壁体に前記噴射孔Hが貫通させてある。
【0026】
前記弁体413は、前記弁座4111に着座する閉止位置と、弁座4111から離間する開成位置との間で、電磁コイル力とバネ力との大小関係によって、この噴射弁41の軸方向に進退移動するものである。より具体的には、前記制御装置8から閉止信号が出力されたときには、電磁コイル412が励磁されず、前記弁体413がバネ力で閉止位置に保持されて、前記噴射孔Hは、ボディ411の内部空間から遮断される。この状態では液体原料は噴出しない。また、前記制御装置8から開成信号が出力されると、電磁コイル412に電流が流れ、前記弁体413が開成位置に保持されて、前記噴射孔Hがボディ411の内部空間と連通する。この状態になって、当該噴射孔Hから液体原料が、成膜室2内に霧状に噴出し、減圧沸騰噴霧作用によって気化する。
【0027】
このように噴射弁41として電磁弁を用いているので、噴射される液体原料の噴射量などの制御を正確に行うことが容易になる。
【0028】
そして、この液体原料供給機構4により、液体原料は、液体原料容器43に圧入された加圧Heガスにより液体原料供給管42を通り圧送され、液体原料噴射弁41を介して成膜室2内部に供給される。さらに、液体原料は、液体原料噴射弁41から成膜室2内に直接噴射されると同時に、減圧沸騰現象が起きて、気化されて成膜室2内に充満する。なお、「減圧沸騰現象」とは、開放された液体の外圧がその蒸気圧よりも小さくなるときに液体が沸騰して気化する現象をいい、本実施形態の成膜装置1は、この減圧沸騰現象を利用して、加圧状態の液体原料を真空ポンプ71によって減圧した成膜室2内に噴射することにより、必要最低限の熱量で所定量の液体原料を瞬時に気化する。
【0029】
混合溶液供給機構(第2供給機構)5は、混合溶液噴射弁(第2噴射弁)51と、当該噴射弁51に混合溶液を供給するための混合溶液供給管52と、混合溶液容器53と、を備えている。
【0030】
混合溶液噴射弁51は、前記液体原料噴射弁41と同様に、成膜室2の壁(例えば上壁)にシリコン基板Wに対向して取り付けられて、成膜室2内に混合溶液(例えば水+エタノール)を直接噴射するものである。混合溶液噴射弁51の構成は、前記液体原料噴射弁41と同じ電磁弁である。
【0031】
そして、この混合溶液供給機構5により、混合溶液は、混合溶液容器53に圧入された加圧Heガスにより混合溶液供給管52を通り圧送され、混合溶液噴射弁51を介して成膜室2内部に供給される。さらに、混合溶液は、混合溶液噴射弁51から成膜室2内に直接噴射されると同時に、減圧沸騰現象が起きて、気化されて成膜室2内に充満する。
【0032】
ここで、噴射弁により水単体を噴射した場合と、混合溶液を噴射した場合とについて説明する。図3は噴射弁により水単体を噴射した場合の噴霧状態を示す図(画像)であり、図4は水及び水と各種有機溶媒との混合溶液の噴霧状態を示す図(画像)である。なお図3及び図4の各画像における上部の半円状部分は噴射弁の噴射口である。また、図4中(a)〜(e)は噴射弁の温度を約60度としている。
【0033】
図3中(A)は噴霧中の画像であり、(B)は噴霧終了後約1秒経過後の画像である。光を当てて撮影しているので、液体状態(噴霧の液滴)は黒く見える。ガス化して気体になると透明になり画像では白く見える。図3(A)から、噴射直後の水は液体状態であり噴霧の液滴は大きく、十分に気化していないことが分かる。また、図3(B)から水の気化潜熱により氷が形成され、噴射口に氷が付着していることが確認される。
【0034】
一方で、図4に示されるように、水と各種有機溶媒(エタノール、イソプロパノール(IPA)、アセトン及びテトラヒドロフラン(THF))との混合溶液の噴霧画像(図4中(b)〜(e))は、噴射弁の温度が約60度であっても、図4中(f)に示す水単体を100度の噴射弁で噴射する場合と同じような噴霧画像を示し、混合溶液が気化していることが分かる。つまり、混合溶液とすることによって、混合溶液全体の気化潜熱を低下させることができ、約40度の低温化が可能になり、この温度であれば、噴射弁の駆動部の劣化を防ぐことができる。したがって、噴射弁の駆動変位量を安定させることができ、噴射量(酸化剤の供給量)の再現性を向上させることができる。
【0035】
パージガス供給機構6は、パージガスである窒素(N)ガスを成膜室2内に供給するパージガス供給管61と、その供給管61上に設けられたパージガス導入バルブ62(以下、「導入バルブ62」と略す。)と、パージガスバイパスバルブ63(以下、「バイパスバルブ63」と略す。)と、パージガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ(MFC)64と、を備えている。マスフローコントローラ64は、制御装置8により、その流量が例えば500ml/minとなるように制御されている。
【0036】
制御装置8は、上記各機構3〜7の動作を制御して、シリコン基板W上に原子層成長による薄膜が形成されるようにするものであり、その機器構成は、CPU、内部メモリ、入出力インタフェイス、AD変換器などを備えた汎用乃至専用のコンピュータである。より詳細には、制御装置8は、液体原料噴射弁41、混合溶液噴射弁51、導入バルブ62、バイパスバルブ63、基板ヒータ3、真空ポンプ71等を制御するものである。
【0037】
以下に、制御装置8の制御機能を、成膜方法とともに説明する。
【0038】
まず、成膜開始前の状態においては、図5に示すように、液体原料噴射弁41と混合溶液噴射弁51は「閉(close)」であり、バイパスバルブ63は「開(open)」であり、導入バルブ62は「閉(close)」である。
【0039】
<液体原料供給工程>
制御装置8は、図5に示すように、液体原料噴射弁41を約5msec開いて閉じる。このとき、液体原料は、成膜室2内に供給される。液体原料の一部あるいは全てを気化して、シリコン基板W表面に吸着し、吸着反応又は置換反応によって単一原子層を形成する。
【0040】
ミスト状態(つまり液体状体)の原料は、シリコン基板Wに付着する。ここで、成膜室2内が減圧下であること及び基板温度が約200〜300℃であることから、基板W表面に接している有機金属化合物である成膜原料以外は蒸発又は再蒸発し、基板W表面に残った成膜原料は、吸着反応又は置換反応によって単一原子層を形成する。また、このとき蒸発した成膜原料は、再び基板W表面に吸着し、吸着反応又は置換反応によって単一原子層を形成する。
【0041】
最終的に、成膜原料(Hf[N(CH)(C)])の分子は、シリコン基板Wの最表面に均一な単一原子層を形成する。
【0042】
<過剰原料排出工程>
次に、制御装置8は、基板Wを加熱しつつ液体原料の再蒸発を促すとともに、図5に示すように、バイパスバルブ63を閉じて、導入バルブ62を一定時間(約2sec)開けて、Nなどの不活性なガスからなるパージガスを導入して、成膜室2内に残留している余分な液体原料のガスを排出する。
【0043】
<混合溶液供給工程>
次に、制御装置8は、図5に示すように、導入バルブ62を閉じた後、バイパスバルブ63を開けて、混合溶液噴射弁51から混合溶液を約2.5〜7msec導入する。これにより、基板W表面に吸着している成膜原料の分子は加水分解されて、酸化される。
【0044】
<過剰酸化剤排出工程>
次に、制御装置8は、図5に示すように、バイパスバルブ63を閉じて、導入バルブ62を一定時間(約2sec)開けて、パージガスを導入して成膜室2内に残留している余分な酸化剤ガス(混合溶液)等を排出する。
【0045】
以上の第1の前駆体/パージガス/第2の前駆体/パージガスをそれぞれ供給する1サイクルの工程により、分子層一層分の成膜がなされる。そして、上記一連の工程を繰り返し、所望の膜厚にあるまで成膜を行う。このように成膜されたHfO膜はゲート絶縁膜に用いられる。
【0046】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る成膜装置1によれば、酸化剤である水に水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒を混合させた混合溶液を用いることにより、混合溶液全体の気化潜熱を水単体で用いた場合に比べて下げることができる。その結果、水が凍って生じた氷が噴射弁51の噴射口511Aを閉塞する又は噴射口511A近傍に付着することがなく、気化効率の低下を防止することができる。
【0047】
また、成膜室2内に液体原料及び酸化剤を噴射弁41、51で直接噴射して、液体原料及び酸化剤を減圧沸騰により気化しているので、蒸気圧の大きな成膜原料に限られず、種々の成膜原料を用いて、ALD法により成膜することができる。また、噴射弁41、51を用いて瞬間的に気化しているので、成膜のスループットを向上させることができる。さらに、原料供給管を加熱するヒータを必要とせず、成膜装置1の小型化を実現することができる。さらに、液体原料を必要最小限の加熱によって気化供給することができることも、装置1の小型化に寄与することができる。加えて、短い時間内で多くの液体原料及び酸化剤を速やかに気化できるだけでなく、気化する液体原料酸化剤の量及び加工時間を正確に制御することができる。したがって、原子層成長法を用いて、高速で再現性良く成膜することができるようになる。
【0048】
特に、液体原料を直接噴霧する方式では、噴霧した液体原料が、ミスト状のまま気化せず基板Wまで到達する場合があり、歩留まりが下がることがあるが、自己組織化された単一原子層を成膜するALD法においては、不活性ガスを導入することにより、余分な前駆体がパージされ、問題を生じること無く高速かつ再現性の良い成膜を行いうる。
【0049】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0050】
例えば、前記実施形態では、酸化剤である水に有機溶媒を混合させているが、液体原料を有機金属化合物及び低沸点有機溶媒の混合溶液としても良い。このようなものであれば、液体原料を有機金属化合物のみの溶液に比べて飽和蒸気圧を数十倍に上昇させることができる。したがって、飽和蒸気圧が低く(TEMAHfは83℃(356K)において飽和蒸気圧が133Pa)、安定したガス供給が困難であるTEMAHf等のアミン系有機金属化合物を安定して気化させることができ、HfO膜又はHfOを含有する薄膜の成膜の再現性を向上させることができる。このHfO膜は、High−k材料として次世代の高集積LSIの電界効果型トランジスタ(FET)のゲート絶縁膜や、DRAMのキャパシタ用絶縁膜として用いられるものであり、成膜装置1によって高集積LSI及びDRAMを再現性良く安定して生産することができるようになる。
【0051】
また、前記実施形態の各噴射弁は成膜室の上壁に取り付けているが、その他、成膜室の側壁などでもよい。
【0052】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
W ・・・基板
1 ・・・成膜装置
2 ・・・成膜室
3 ・・・調温機構(基板ヒータ)
4 ・・・液体原料供給機構(第1供給機構)
41・・・液体原料噴射弁(第1噴射弁)
5 ・・・混合溶液供給機構(第2供給機構)
51・・・混合溶液噴射弁(第2噴射弁)
6 ・・・パージガス供給機構
7 ・・・調圧機構
8 ・・・制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を内部に保持し、ポンプにより減圧されている成膜室内に、有機金属化合物を含む液体原料を噴射弁により直接噴射して減圧沸騰現象により前記液体原料を気化させて、前記基板表面に有機金属化合物を吸着させる液体原料供給工程と、
前記成膜室内に、酸化剤である水と当該水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒との混合溶液を噴射弁により直接噴射して減圧沸騰現象により前記混合溶液を気化させて、前記基板表面上に吸着した有機金属化合物を酸化する混合溶液供給工程と、を具備する成膜方法。
【請求項2】
基板を内部に保持する成膜室と、
前記成膜室内を減圧する調圧機構と、
有機金属化合物を含む液体原料を前記成膜室内に直接噴射する第1供給機構と、
酸化剤である水と当該水よりも気化潜熱の小さい有機溶媒との混合溶液を前記成膜室内に供給する第2供給機構と、
前記成膜室内をパージするためのパージガスを供給するパージガス供給機構と、
前記第1供給機構、第2供給機構及びパージガス供給機構を、前記基板上に原子層成長による膜が形成されるように制御する制御装置と、を備えている成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−23596(P2011−23596A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168041(P2009−168041)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、科学技術振興機構、委託開発(減圧沸騰噴霧による気化供給装置)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】