説明

反り測定システム、成膜システム、及び反り測定方法

【課題】In−situで安定した測定を行うことのできる反り測定システム、反り測定方法、及び成膜システムを提供する。
【解決手段】鉛直上下方向に移動可能であり、成膜用ホルダに載置されたウエハの外周部を支持して持ち上げるウエハ持ち上げ機構と、持ち上げられた前記ウエハの所定位置の高さを検出する高さ測定機構と、制御部とを具備する。前記ウエハ持ち上げ機構は、成膜チャンバ内で前記ウエハを支持する。前記制御部は、前記ウエハの成膜前後に、前記ウエハを支持した状態で前記ウエハ持ち上げ機構を測定用高さに位置させ、持ち上げられた前記ウエハの高さを測定し、成膜前後の前記ウエハの高さデータに基いて、成膜前後での前記ウエハの反り変化量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ上に成膜を行う成膜機構、成膜されたウエハの反り量を測定する反り測定システム、及び反り測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハでは、ウエハ上に、素子形成のための絶縁薄膜や、金属配線薄膜が成膜される。ウエハ上に薄膜を成膜する成膜機構としては、例えば、PVD装置、CVD装置、及び真空蒸着装置などが挙げられる。このような装置により、ウエハ上に成膜された薄膜は、その膜種に応じた膜応力を持っている。その膜応力は、膜厚、プロセス圧力、温度等の諸条件により、大きく変化する。
【0003】
その膜応力は、ウエハに反りを生じさせることがある。この反り(ウエハストレス)は、デバイス性能・信頼性において重要な項目である。また、この反りによって、半導体製造装置内でウエハを搬送する際に、うまく搬送できなくなることもある。
【0004】
ウエハの反りは、ウエハが大口径化していくにつれ顕著となる。大口径化が進む近年の半導体ウエハでは、ウエハの反りは重要な課題である。従って、デバイス性能を保証する意味でも、量産中にウエハの反りを定量的に監視、測定する技術が望まれている。
【0005】
かかる要求を解決するための手法が、特許文献1に記載されている。図1を参照して、特許文献1に記載された応力測定方法を説明する。
【0006】
図1に示すように測定システム100は、一次レーザビームを発生するレーザ源105を含む。少なくとも1つのビームスプリッタ104a〜104cが前記一次レーザビームを第1ビームと第2ビームとに分割し、前記第1ビームは半導体ウェーハ10表面の第1点103へ指向させられ、かつ前記第2ビームはウェーハ101表面の第2点102a、102bへ指向させられる。前記少なくとも1つのビームスプリッタ104a〜104cは、ウェーハ101表面の第1点103からの反射後の前記第1ビームの部分とウェーハ表面の第2点102a、102bからの反射後の前記第2ビームの部分とを干渉じまパターン分析用の少なくとも1つの干渉ビームBEAM1〜BEAM3に合成するように更に動作可能である。前記干渉じまパターン分析により、各種半導体製造機器内で半導体ウェーハ内の反り、薄膜応力、及びすべり転位を測定する、というシステムである。
【0007】
一方、特許文献2には、基板上に膜を形成する成膜機構において、成膜中の基板応力を随時検出する膜応力検出手段を有し、その膜応力検出手段の検出結果と目標値とに基いて、成膜条件を制御することが記載されている。そして、その膜応力検出手段として、応力センサーが開示されている。応力センサーは、基板の成膜面と反対側の面に触針式のプローブを有しており、膜が成膜されるにつれて膜応力によって生じる基板の反りを検出し、その値を応力に換算する、というものである。
【0008】
【特許文献1】特開平7−235574号 公報
【特許文献2】特許第2529267号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示す測定方法では、レーザー、及び干渉じま分析システム等、高額な部品を必要とするので、コスト面で不利である。また、光学系を形成するにあたり、占有面積がどうしても大きくなってしまうので、量産装置のチャンバ内に取付けづらい。さらに、非接触式反射測定であるため、ウエハ裏面の状態(裏面の反射率/膜種/粗さ)に測定結果が影響され、反り量のみを安定して測定することは困難である。
【0010】
また、特許文献2に示される技術では、成膜中に、裏面に常に応力センサーを接触させているものと認められる。成膜中には、基板の温度を高めるために、基板を支持するホルダなどにヒータを埋め込むことが有る。このような場合には、応力センサがヒータによる熱によって悪影響を受けたり、機構が複雑になるなどの問題点が生じるものと考えられる。即ち、In−situでの測定では有るが、安定して膜応力の測定を行うことは困難である。
【0011】
即ち、本発明の目的は、In−situにおいて、安定して反りの評価を行うことのできる反り測定システム、反り測定方法、及び成膜システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その課題を解決するための手段が、下記のように表現される。その表現中に現れる技術的事項には、括弧()つきで、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、本発明の実施の複数の形態又は複数の実施例のうちの少なくとも1つの実施の形態又は複数の実施例を構成する技術的事項、特に、その実施の形態又は実施例に対応する図面に表現されている技術的事項に付せられている参照番号、参照記号等に一致している。このような参照番号、参照記号は、請求項記載の技術的事項と実施の形態又は実施例の技術的事項との対応・橋渡しを明確にしている。このような対応・橋渡しは、請求項記載の技術的事項が実施の形態又は実施例の技術的事項に限定されて解釈されることを意味しない。
【0013】
本発明にかかる反り測定システム(10)は、鉛直上下方向に移動可能であり、成膜用ホルダ(60)に載置されたウエハ(1)の外周部を支持して持ち上げるウエハ持ち上げ機構(20)と、持ち上げられたウエハ(1)の所定位置の高さを検出する高さ測定機構(30)と、制御部(40)と、を具備する。ウエハ持ち上げ機構(20)は、成膜チャンバ(80)内でウエハ(1)を支持する。制御部(40)は、ウエハ(1)の成膜前後に、ウエハ持ち上げ機構(20)をウエハ(1)を支持した状態で測定用高さに位置させて、ウエハ(1)の高さを測定し、成膜前後におけるウエハ(1)の高さデータに基いて、成膜前後でのウエハ(1)の反り変化量を算出する。
【0014】
このような構成に依れば、ウエハ持ち上げ機構(20)がウエハを支持して持ち上げることで、成膜時における位置とは異なる位置でウエハ(1)の反りを測定することができる。成膜時の位置では、ヒータによる熱の影響を受けたりしてウエハ(1)の形状を正確に測定することは困難であるのに対して、ウエハ(1)を持ち上げて反り測定を行うことにより、熱などの影響を受けずに安定して反りを測定することができる。また、ウエハ(1)を持ち上げるにあたっては、上下方向に移動可能でさえあればよく、大掛かりな装置を必要としない。従って、成膜チャンバ(80)内、即ちin−situで、安定した測定を行う事ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に依れば、In−situで安定した反りの評価を行うことのできる反り測定システム、反り測定方法、及び成膜システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図面を参照して、第1の実施形態にかかる成膜システムについて説明する。図2は、本実施形態に係る成膜システム70の概略構成図である。
【0017】
(構成)
成膜システム70は、ホルダ60と、成膜機構50と、反り測定システム10と、成膜チャンバ80と、装置制御系とを有している。装置制御系は、コンピュータなどに例示されるものであり、インストールされたプログラムによって成膜システム70全体の動作を制御する機能を実現する。
【0018】
ホルダ60は成膜時にウエハ1を載置するものである。ホルダ60は、成膜チャンバ80内に配置されている。ホルダ60には、必要に応じて、ウエハ1を加熱する加熱機構や、ウエハ1を吸着する吸着機構が取りつけられている。
【0019】
ホルダ60の中央部には、反り測定時に測定部材を通す為の貫通口61が設けられている。反り測定システム10の構成の一部(後述する駆動ピン及び圧電素子)が、その貫通口61を介してホルダ60の上下に移動可能となっている。
【0020】
また、ホルダ60のウエハ載置面62は、ウエハ1よりも狭く形成されている。ホルダ60に載置されたウエハ1の外周部は、ホルダ60からはみ出るようになっている。反り測定時において、ウエハ1は、ホルダ60からはみ出た外周部で下方向から支持されながら、上方向に持ち上げられる。尚、ホルダ60上に載置されたウエハ1が、下方向から支持されながら持ち上げられることができれば、必ずしもホルダ60がウエハ1よりも狭く形成されている必要はない。例えば、ウエハ1を持ち上げる為に、ホルダ60に開口や切り欠きが形成されていてもよい。
【0021】
成膜機構50は、ホルダ60上に載置されたウエハ1に対して成膜を行うものである。成膜機構50によって、ウエハ1の上面に薄膜2が成膜される。成膜機構50としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やPVD(Physical Vapor Deposition )装置が例示される。
【0022】
続いて、反り測定システム10について説明する。反り測定システム10は、ウエハ持ち上げ機構20と、高さ測定機構30と、制御部40とを有している。制御部40は、コンピュータなどに例示され、反り測定システム10の動作を制御する機能を実現する。なお、本実施形態では、装置制御系に制御部40が含まれている。
【0023】
ウエハ持ち上げ機構20は、ウエハ1を支持する時にウエハ1の外周部下面に当設する支持面22と、ウエハ1が水平方向にずれないように支えるガイド23と、を有している。支持面22は、ウエハ1がホルダ60からはみ出した部分を、下側から支持できるように設けられている。支持面22の数は限定されるものではない。但し、ウエハ1を安定して支えるために、少なくとも4ヶ所に設けられていることが好ましい。
【0024】
ウエハ持ち上げ機構20は、鉛直上下方向に、ホルダ60の載置面62を挟む範囲で移動可能となっている。従って、ウエハ1がホルダ60に載置されている状態で、ウエハ持ち上げ機構20を上方向に移動させると、ウエハ1は自動的にウエハ持ち上げ機構20の支持面22により支持される。そして支持されたウエハ1はホルダ60から浮く。また、ウエハ1がホルダ60から浮いているときに、ウエハ持ち上げ機構20を下方向に移動させると、ウエハ1は自動的にホルダ60に載置される。
【0025】
高さ測定機構30は、駆動ピン32と、圧電素子31と、モータ33と、駆動ピン32と、エンコーダ34と、電圧値/エンコーダモニタ35とを有している。
【0026】
圧電素子31は、駆動ピン32の先端に取りつけられている。駆動ピン32は、モータ33に接続されている。駆動ピン32は、貫通口61内を通るように設けられており、モータ33によって鉛直上下方向に移動する。駆動ピン32が上方向に移動する事で、圧電素子31がウエハ1に接触するようになっている。ここで、圧電素子31は、ウエハ1の下面中央部に接触する。
【0027】
エンコーダ34は、モータ34及び電圧値/エンコーダモニタ35に接続されている。エンコーダ34は、モータ33を介して駆動ピン32の移動量をパルス値として検知して、電圧値/エンコーダモニタ7に通知する。電圧値/エンコーダモニタ35は、圧電素子31からの電圧出力値及びエンコーダ34からのパルス値を記録できる機能を持ち、各値を個別に演算し、その結果を制御部40へ伝達する。
【0028】
この高さ測定機構30の各構成のうち、モータ33、エンコーダ34、は電圧値/エンコーダモニタ35は、成膜チャンバ80外に配置されている。駆動ピン32は一端で成膜チャンバ80外のモータ33に接続されているが、他端は成膜チャンバ80の下壁をつきぬけて成膜チャンバ80内に配置されている。駆動ピン32の先端に取りつけられた圧電素子31も、当然ながら成膜チャンバ80内に配置されている。
【0029】
上述のような構成により、高さ測定機構30は、圧電素子31の電圧変動を検出して、圧電素子31がウエハ1に接触しているか否かを検出することができる。そして、圧電素子31がウエハ1に接触するまでの駆動ピン32の移動量を読み取ることで、ウエハ1の高さを検出することができる。
【0030】
(動作方法)
続いて、上述の反り測定システムの動作方法について説明する。図7は、本実施形態に係る反り測定方法のフローチャートである。その反り測定方法は、ウエハを受け取るステップ(ステップS10)、高さを測定するステップ(ステップS20、21)、ウエハをホルダ上に載置するステップ(ステップS30)、成膜するステップ(ステップS40)、ウエハを持ち上げるステップ(ステップS50)、高さを測定するステップ(ステップS60)、及び反り量を算出するステップ(ステップS70)を有している。各ステップにおける動作の詳細について、図3を参照して以下に説明する。尚、図3において、成膜機構50及び成膜チャンバ80は図示が省略されている。
【0031】
図3(a)を参照しつつ、ステップS10、20の動作について説明する。
【0032】
ステップS10;ウエハの受け取り
まず、成膜システム70内に、ウエハ1が搬入される。ウエハ1が搬入される際に、制御部40は、ウエハ持ち上げ機構20を測定用高さに位置させる。この時、ウエハ持ち上げ機構20の支持面22の高さは、高さHである。この状態で、ウエハ1の搬送を行う搬送装置(図示せず)から、ウエハ持ち上げ機構20にウエハ1が受け渡される。
【0033】
ステップS20、21;高さ検出、データの格納
制御部40は、駆動ピン32を鉛直上方向に移動させる。駆動ピン32の移動は、圧電素子31がウエハ1の鉛直下面に接触するまで行われる(S20)。そして、電圧値/エンコーダモニタ35が、駆動ピン32の移動量を読み取り、「(A)パルス」として記憶する(S21)。
【0034】
続いて、図3(b)を参照しつつ、ステップS30、40の動作について説明する。
【0035】
ステップS30;ウエハをホルダ上に載置
制御部40は、駆動ピン32及びウエハ持ち上げ機構20を下降させる。これにより、圧電素子31の上端、及びウエハ持ち上げ機構20の支持面22は、ホルダ60のウエハ載置面62よりも下まで下降する。この時、ウエハ1は、自動的にウエハ持ち上げ機構20からホルダ60に乗り移る。
【0036】
ステップS40;成膜
続いて、装置制御系は、成膜機構50によって、ウエハ1の上面に薄膜2を成膜する。このとき、成膜条件によっては、ホルダ60などに設けられた加熱機構によって、ウエハ1に熱が加えられることもある。成膜されたウエハ1は、反りが発生することが有る。通常、その反りは、膜応力によって下に凸の反りとなる。
【0037】
続いて、図3(c)を参照しつつ、ステップS50、60の動作について説明する。
【0038】
ステップS50;ウエハの持ち上げ
成膜が終了すると、制御部40は、ウエハ持ち上げ機構20を再び上昇させて、測定用高さに位置させる。ここで、ウエハ持ち上げ機構20がホルダ60の載置面62を通り過ぎる際に、ウエハ1が自動的にホルダ60からウエハ持ち上げ機構20に乗り移る。ウエハ持ち上げ機構20の支持面22の高さは、ステップS10と同様に、高さHとなる。
【0039】
ステップS60;高さ検出
制御部40は、ステップS20と同様に、駆動ピン31を上昇させて、圧電素子31がウエハ1に接触するまでの駆動ピン31の移動量を求める。即ち、そして、電圧値/エンコーダモニタ35が、駆動ピン32の移動量を読み取り、「(A)’パルス」として記憶する。
【0040】
ステップS70;反り量の算出
電圧値/エンコーダモニタ35は、(A)と(A)’とを用いて、(A)−(A)’=「a」の演算を実施する。この結果の「a」は、薄膜形成前後における反り量の変化を示している。
【0041】
以上のステップS10〜70の動作により、反り量の変化を示す「a」が算出される。このようにして求められた「a」は、電圧値/エンコーダモニタ35から装置制御系へ通知される。そして、装置制御系にて必要に応じた処理が為される。例えば、予め設定された規格幅と比較して監視し、規格幅を超えた時には装置を停止させることで、異常品の流出を防止する。また、成膜前後における反り量の変化は、成膜された膜の膜応力に依存している。従って、「a」に基いて、膜応力を算出することもできる。このように、膜応力を算出して、膜質判定を行ってもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に依れば、成膜前後で反り量を測定することで、成膜前後における反り量の変化を求めることができる。反り量の変化を求めるにあたり、成膜時にはウエハの形状を測定する必要は無く、成膜時の熱の影響などを排除して反り測定を行うことができる。
【0043】
また、ウエハ持ち上げ機構20によって、ウエハをホルダから持ち上げた状態で反りの測定を行うので、熱の影響をより受け難い位置で測定を行うことができる。熱がウエハの反り量に与える影響を、より排除して反りの評価を行う事ができる。
【0044】
また、ウエハ持ち上げ機構20は、成膜チャンバー80内でウエハ1を支持するので、In−situで反り測定を行うことができる。
【0045】
また、ウエハの反り量を算出するにあたって、ビームを用いた時のような非接触式の測定では、実際の製造工程でのウエハ下面状態のばらつきによる散乱光の影響を受けてしまう可能性が有る。これに対して、本実施の形態では、高さデータを用いているので、ウエハ1の表面状態に依存しないで反りの評価を行うことができる。
【0046】
また、光学的に反り量を求める時に必要な、占有スペースが大きく、高価な装置は必要ない。高さ測定機構30としては、圧電素子31、駆動ピン32、モータ33、エンコーダ34、電圧/エンコーダモニタ35といった安価な機械部品で構成することができるので、コスト的に有利である。ここで、成膜チャンバ80内には圧電素子31の取りつけられた駆動ピン32を設置するのみでよく、成膜チャンバ80外への設置部品も、光学的に反り量を求める装置と比較して大きなシステムは必要としない。従って、設置スペース面で実装置への取付に適している。
【0047】
また、ウエハ持ち上げ機構20は、ウエハ1の外周部を下側から支持して持ち上げるので、ウエハ持ち上げ機構20がウエハ1へ加える力を最小限に留めることができる。即ち、横方向や上方向からウエハ1を支持した場合には、ウエハ1に圧力がかかってしまうことがある。このような圧力は、ウエハ1の形状を変化させてしまう事があり、正確な反り測定の妨げになる事がある。これに対して、本実施形態では、ウエハ持ち上げ機構20が鉛直下方向からウエハ1を支持して持ち上げるので、ウエハ1に加わる力を最小限とする事ができる。よって、より正確に反り変化量を求める事ができる。
【0048】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態と比較して、高さ測定機構30の構成について工夫が為されている。その他の構成は第1の実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0049】
図4は、本実施形態に係る成膜システム70の構成図である。尚、成膜チャンバ80や成膜機構50など、一部の構成は図示が省略されている。本実施形態では、圧電素子31、駆動ピン32、モータ33、及びエンコーダ34が、夫々5個づつ設けられている。即ち、圧電素子31a〜e、駆動ピン32a〜e、モータ33a〜e、及びエンコーダ35a〜eが設けられている。これらは、符号の後に付した英数字に対応して組を形成しており、各組内で電気的に接続されている。即ち、圧電素子31a、駆動ピン32a、モータ33a、及びエンコーダ35aで一組を形成し、圧電素子31b、駆動ピン32b、モータ33b、及びエンコーダ35bで別の一組が形成されている。これらの各組は、一の電圧値/エンコーダモニタ35に電気的に接続されている。
【0050】
これらの5組は、夫々が第1の実施形態と同様に、高さ検出ステップ(S20、60)においてウエハ1の高さを測定する。これらの5組は、個々に動作可能であり、駆動距離も個々に測定可能となっている。即ち、各組によって、ウエハ1の鉛直下面の異なる位置の高さが測定される。電圧値/エンコーダモニタ35は、各組によって測定されたウエハ1の高さデータを記憶する。
【0051】
このように、圧電素子31〜エンコーダ35までを複数組用意し、ウエハ1の下面の複数位置の高さを測定することにより、ウエハ1の反り量をより精度高く測定することができる。また、ウエハ1上の反り形状分布をマッピングすることも可能になる。
【0052】
尚、これらの組の数は、5組のみでなく、成膜チャンバ80の形状が許す限り多数にしてもよい。
【0053】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る成膜システム70の構成図である。
【0054】
本実施形態では、既述の第1、2の実施形態と比較して、上面固定機構21が追加されている。また、反り測定を行うにあたり、既述の実施形態の各ステップに対して、反発力を測定するステップ(ステップS22、61)が追加される。また、既述の高さ測定機構30は、ウエハの反発力を検出する反発力測定機構としても機能する。尚、既述の実施形態と同様の構成、動作については、その説明を省略する。
【0055】
反発力測定機構30は、圧電素子31、駆動ピン32、モータ33、エンコーダ34、及び電圧値/エンコーダモニタ35を有しており、高さ測定機構30と兼用される。即ち、圧電素子31、駆動ピン32、モータ33、エンコーダ34、及び電圧値/エンコーダモニタ35は、制御部40の指示により、高さ測定機構30としても機能し、反発力測定機構30としても機能するようになっている。
【0056】
既述の実施形態において、高さ測定機構30は圧電素子31をウエハ1に接触させる事で、ウエハ1の高さを測定する。これに対して、本実施形態において、反発力測定機構30は、圧電素子31がウエハ1に接触した状態から、更に駆動ピン32を駆動させて、ウエハ1の反りが無くなるまでウエハ1を押し上げる。そして、電圧値/エンコーダモニタ35が、反りが無くなった時の圧電素子31に加わっている圧力を、反発力として読み取り記憶する。
【0057】
上面固定機構21は、ウエハ持ち上げ機構20がウエハ1を支持して測定用高さに位置するときに、ウエハ1の上面外周端部に当接する位置に設けられている。ここで、上面固定機構21は、高さ測定機構30によってウエハ1が押し上げられない限り、上面固定機構21からウエハ1に対して力が加わらないように設けられている事が好ましい。これは、第1の実施形態の欄にて説明したように、ウエハ1の反りを測定する際に上面固定機構21からウエハ1へ加わる圧力によって、ウエハ1が変形してしまわないようにするためである。
【0058】
尚、上面固定機構21は、反発力の測定時に、ウエハ1が上方向へ移動しないように固定するものである。従って、ウエハ持ち上げ機構20に一体に形成されていても良いし、ウエハ持ち上げ機構20とは別に形成されていてもよい。
【0059】
続いて、本実施形態にかかる反り測定方法の動作について説明する。図8は、本実施形態に係る反り測定方法のフローチャートである。既述の実施形態に対して、高さを検出するステップ(S20)とウエハをホルダ上に載置ステップ(S30)との間に、反発力を測定するステップ(S22)が追加されている。また、高さを検出するステップ(S60)と反り量を算出するステップ(S70)との間に、反発力を測定するステップ(S61)が追加されている。ステップS22、61の動作について、以下に説明する。
【0060】
図6(a)は、ステップS22の動作を説明する説明図である。図6A(a)に示されるように、制御部40が、駆動ピン32を上方向に駆動させる。制御部40は、圧電素子31がウエハ1に接触した位置から、更に駆動ピン32を駆動させてウエハ1を押し上げる。ここで、上面固定機構21によって、ウエハ1の上面外周部が固定されるので、ウエハ1は上面固定機構21より上側には移動せず、反りだけが解消される。制御部40は、このようにして、ウエハ1の反りが完全に無くなる位置まで駆動ピン32を駆動させる(図6A(b))。ウエハ1の反りが完全に無くなる位置は、測定用高さにおける支持面の高さHが、圧電素子31の上端の高さと一致する高さである。よって、駆動ピン32の移動量を予め設定しておく事で、ウエハ1の反りを完全に無くす位置まで駆動ピン32を駆動させる事ができる。
【0061】
ウエハ1の反りが無くなった状態において、電圧値/エンコーダモニタ35が圧電素子31の圧力を読み取る。そして、電圧値/エンコーダモニタ35は、圧電素子31の電圧出力値を成膜前の電圧出力値(Bx)mVとして記録する。この電圧出力値(Bx)は、成膜前のウエハ1の反発力を示している。
【0062】
一方、ステップS61においても、図6B(a)及び(b)に示されるように、ステップS22と同様の動作が行われる。電圧値/エンコーダ35は、圧電素子31の電圧出力値を成膜後の電圧出力値(B’x)mVとして記録する。この電圧出力値(B’x)は、成膜後のウエハ1の反発力を示している。
【0063】
さらに、反り量を算出するステップ(S70)において、電圧値/エンコーダモニタ35は、(Bx)、(B’x)を用い、(Bx)−(B’x)=「b」mVの演算を実施する。この結果「b」は、薄膜形成前後の反発力の差に比例した値となっており、ウエハ上の膜応力に依存している。
【0064】
このように、既述の実施形態で実施されたように、ウエハの反り量の変化「a」に基いた監視に加えて、この電圧値「b」をも監視するパラメータに加えることで、更に精度よくウエハの反り状態を評価することができる。
【0065】
以上、第1〜3の実施形態について説明したが、これらの実施形態において為された工夫は、矛盾の無い範囲内で組み合わせて使用できる事は、当業者にとっては自明的であろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来例の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる成膜システムの構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる反り測定方法の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる成膜システムの構成図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる成膜システムの構成図である。
【図6A】本発明の第3の実施形態にかかる反り測定方法の動作を説明する説明図である。
【図6B】本発明の第3の実施形態にかかる反り測定方法の動作を説明する説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる反り測定方法の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる反り測定方法の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 ウエハ
2 薄膜
10 反り測定システム
20 ウエハ持ち上げ機構
21 上面固定機構
22 支持面
23 ガイド
30 高さ測定機構、反発力測定機構
31 圧電素子
32 駆動ピン
33 モータ
34 エンコーダ
35 電圧値/エンコーダモニタ
40 制御部
50 成膜機構
60 ホルダ
61 貫通口
62 ウエハ載置面
70 成膜システム
80 成膜チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直上下方向に移動可能であり、成膜用ホルダに載置されたウエハの外周部を支持して持ち上げるウエハ持ち上げ機構と、
持ち上げられた前記ウエハの所定位置の高さを検出する高さ測定機構と、
制御部と、
を具備し、
前記ウエハ持ち上げ機構は、成膜チャンバ内で前記ウエハを支持し、
前記制御部は、
前記ウエハの成膜前後に、前記ウエハ持ち上げ機構を前記ウエハを支持した状態で測定用高さに位置させ、持ち上げられた前記ウエハの高さを測定し、成膜前後における前記ウエハの高さデータに基いて、成膜前後での前記ウエハの反り変化量を算出する
反り測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載された反り測定システムであって、
前記高さ測定機構は、前記ウエハに接触する接触用部材を有しており、前記接触用部材が前記ウエハに接触しているか否かにより、前記ウエハの高さを測定する
反り測定システム。
【請求項3】
請求項2に記載された反り測定システムであって、
前記高さ測定機構は、更に、
前記接触用部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を上下方向に移動させる駆動機構と、
前記支持部材の移動量を検出する移動量検出器と、
前記高さ測定機構は、前記接触用部材が前記ウェハに接触するまでの前記支持部材の移動量に基いて、前記ウエハの高さを測定する
反り測定システム。
【請求項4】
請求項3に記載された反り測定システムであって、
前記接触用部材は、圧電素子である
反り測定システム。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載された反り測定システムであって、
前記接触用部材は、複数個設けられており、
前記高さ測定機構は、前記ウエハの鉛直下面内の複数位置の高さを測定する
反り測定システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された反り測定システムであって、
前記ウエハ持ち上げ機構は、前記ウエハを鉛直下面側から支持して持ち上げる
反り測定システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載された反り測定システムであって、
更に、
前記ウエハの反発力をする反発力測定機構と、
上面固定機構と、
を具備し、
前記反発力測定機構は、
前記上面固定機構によって固定された前記ウエハを、反りが無くなるまで下側から上側に力を加えて押し上げ、反りを無くすのに要した力を前記反発力として測定し、
前記上面固定機構は、反発力測定時に前記ウエハの上面側を抑えるように設けられている
反り測定システム。
【請求項8】
請求項7に記載された反り測定システムであって、
前記制御部は、前記反発力測定機構によって、成膜前後での前記ウエハの反発力を検出し、
成膜前後での前記ウエハの反発力データに基いて、前記ウエハに成膜された膜の膜応力を算出する
反り測定システム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載された反り測定システムであって、
前記反発力測定機構は、前記高さ測定機構を兼ねている
反り測定システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された反り測定システムと、
成膜時にウエハを載置する成膜用ホルダと、
前記ホルダ上に載置されたウエハに成膜する成膜機構と、
を具備する
成膜システム。
【請求項11】
成膜チャンバ内において、成膜用ホルダに載置されたウエハの外周部を支持して、測定用高さまで持ち上げる持ち上げステップと、
持ち上げられた前記ウエハの所定位置の高さを検出する高さ測定ステップと、
前記ウエハの成膜前後での反り変化量を算出する反り量算出ステップと、
を具備し、
前記高さ測定ステップは、前記ウエハの成膜前後に実施され、
前記反り量算出ステップにおいて、成膜前後の前記ウエハの高さデータに基いて、反り変化量を算出する
反り測定方法。
【請求項12】
請求項11に記載された反り測定方法であって、
前記高さ測定ステップにおいて、接触しているか否かを検出することで、前記ウエハの高さを測定する
反り測定方法。
【請求項13】
請求項12に記載された反り測定方法であって、
前記高さ測定ステップは、
接触用部材を、前記ウエハに接触するまで上下方向に移動させるステップと、
前記ウエハに接触するまでの前記接触用部材の移動量を検出するステップと、
前記接触用部材の移動量に基いて、前記ウエハの高さを測定するステップと、
を有している
反り測定方法。
【請求項14】
請求項13に記載された反り測定方法であって、
前記接触用部材は、圧電素子である
反り測定方法。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれかに記載された反り測定方法であって、
前記高さ測定ステップにおいて、前記鉛直下面内の複数位置における高さを測定する
反り測定方法。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれかに記載された反り測定方法であって、
前記ウエハ持ち上げステップにおいて、前記ウエハを鉛直下面側から支持して持ち上げる
反り測定方法。
【請求項17】
請求項10乃至15のいずれかに記載された反り測定方法であって、
更に、
ウエハの反発力を測定する反発力測定ステップ
を具備し、
前記反発力測定ステップは、
前記ウエハに対して下側から上側に力を加えて、反りが無くなるまで押し上げる押し上げステップと、
前記押し上げステップの後に、反りを無くすのに要する力を前記反発力として測定するステップと、を有している
反り測定方法。
【請求項18】
請求項17に記載された反り測定方法であって、
前記反発力測定ステップは、前記ウエハの成膜前後で実行され、
前記反り量算出ステップにおいて、前記高さ測定ステップの測定結果に加え、前記反発力測定ステップの測定結果に基いて、前記ウエハの反り量を算出する
反り測定方法。
【請求項19】
請求項11乃至18のいずれかに記載された反り測定方法と、
前記ウエハに成膜する工程と、
を具備する
成膜方法。
【請求項20】
鉛直上下方向に移動可能であり、成膜用ホルダに載置されたウエハの外周部を支持して持ち上げるウエハ持ち上げ機構と、
前記ウエハを、反りが無くなるまで下側から上側に力を加えて押し上げて、反りを無くすのに要した力を反発力として測定する反発力測定機構と、
前記ウエハ持ち上げ機構が前記ウエハを支持した状態で測定用高さに位置するときに、前記ウエハが上方向に移動しないように前記ウエハの上面側を固定する上面固定機構と、
制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記ウエハの成膜前後で、前記反発力測定機構に前記ウエハの反発力を測定させ、成膜前後における反発力データに基いて、前記ウエハに成膜された膜の膜応力を算出する
反り測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−116354(P2008−116354A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300513(P2006−300513)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】