説明

反射型光電スイッチおよび物体検出方法

【課題】自己結合型のレーザ計測器を利用して、簡単かつ安価な構成で精度の良い反射型光電スイッチを実現する。
【解決手段】反射型光電スイッチは、半導体レーザ1と、半導体レーザ1から放射されたレーザ光と物体10からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段(フォトダイオード2、電流−電圧変換増幅部5)と、物体10が基準距離の位置にあるときの干渉波形の周期を基準周期としたときに、干渉波形の周期の度数を基準周期に基づく値で分別する周期分別部7と、周期分別部7の測定結果から物体10が基準距離よりも近距離にあるか遠距離にあるかを判定する判定部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型光電スイッチに係り、特に物体までの距離が所定の基準距離より遠いか近いかを検出する反射型光電スイッチおよび物体検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、反射型光電スイッチの1つとして、光電スイッチから物体までの距離が所定の基準距離より遠いか近いかを検知する距離設定反射型(Background Suppression、以下、BGSと略する)光電スイッチが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このようなBGS光電スイッチによれば、背景を検出せずに物体のみを検出することができる。
【0003】
一方、レーザによる光の干渉を利用した距離計として、レーザの出力光と測定対象からの戻り光との半導体レーザ内部での干渉(自己結合効果)を利用したレーザ計測器が提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。FP型(ファブリペロー型)半導体レーザの複合共振器モデルを図12に示す。図12において、101は半導体レーザ、102は半導体結晶の壁開面、103はフォトダイオード、104は測定対象である。
【0004】
レーザの発振波長をλ、測定対象104に近い方の壁開面102から測定対象104までの距離をLとすると、以下の共振条件を満足するとき、測定対象104からの戻り光と共振器101内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、測定対象104からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザの共振器101内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。
【0005】
半導体レーザは、注入電流の大きさに応じて周波数の異なるレーザ光を放射するので、発振周波数を変調する際に、外部変調器を必要とせず、注入電流によって直接変調が可能である。図13は、半導体レーザの発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード103の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と共振器101内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と共振器101内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と共振器101内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザの発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力を共振器101に設けられたフォトダイオード103で検出すると、図13に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。
【0006】
この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つをモードポップパルス(以下、MHP)と呼ぶ。MHPはモードホッピング現象とは異なる現象である。例えば、測定対象104までの距離がL1のとき、MHPの数が10個であったとすれば、半分の距離L2では、MHPの数は5個になる。すなわち、ある一定時間において半導体レーザの発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変わる。したがって、MHPをフォトダイオード103で検出し、MHPの周波数を測定すれば、容易に距離計測が可能となる。
【0007】
以上のような自己結合型のレーザ計測器を利用すれば、BGS光電スイッチを実現することができる。BGS光電スイッチは、所定の基準距離と比較して物体が近距離にあるか遠距離にあるかでオン/オフ判定すればよい。そこで、自己結合型のレーザ計測器をBGS光電スイッチとして用いる場合には、物体が基準距離の位置にあるときのMHPの既知の基準周期に対して、測定したMHPの平均周期が長いか短いかを判断すればよい。物体が基準距離の位置にあるときのMHPの既知の基準周期に対して、測定したMHPの平均周期が長い場合には、物体が基準距離よりも近距離に存在するとしてオン判定とし、また測定したMHPの周期が短い場合には、物体が基準距離よりも遠距離に存在するとしてオフ判定とする。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−102135号公報
【特許文献2】特開昭63−187237号公報
【非特許文献1】上田正,山田諄,紫藤進,「半導体レーザの自己結合効果を利用した距離計」,1994年度電気関係学会東海支部連合大会講演論文集,1994年
【非特許文献2】山田諄,紫藤進,津田紀生,上田正,「半導体レーザの自己結合効果を利用した小型距離計に関する研究」,愛知工業大学研究報告,第31号B,p.35−42,1996年
【非特許文献3】Guido Giuliani,Michele Norgia,Silvano Donati and Thierry Bosch,「Laser diode self-mixing technique for sensing applications」,JOURNAL OF OPTICS A:PURE AND APPLIED OPTICS,p.283−294,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、自己結合型のレーザ計測器を利用すれば、BGS光電スイッチを実現することができる。ただし、MHPの平均周期を単純に求めて基準周期と比較するだけでは判定精度が悪くなる。そこで、発明者が特願2007−015020号で提案した手法を用い、MHPの周期の度数分布を求めて、中央値または最頻値等の分布の代表値を求め、この周期の分布の代表値と周期の度数分布に基づいて物体までの距離を算出し、この算出した距離を基準距離と比較すれば、判定精度を向上させることができる。しかしながら、このような方法では、メモリおよびコンピュータが必要になり、BGS光電スイッチのコストが上昇するという問題点があった。
【0010】
また、基準距離よりも近いところに物体が存在する場合、MHPの周期の分布は図14の分布40のように、基準周期Thよりも長い方にシフトする。反対に、基準距離よりも遠いところに物体が存在する場合、MHPの周期の分布は図14の分布41のように、基準周期Thよりも短い方にシフトする。そこで、基準周期Thよりも周期が長いMHPの数Nlongと基準周期Thよりも周期が短いMHPの数Nshortとを比較すれば、簡単かつ安価な構成で物体の遠近を判定することができる。この判定方法では、Nlong>Nshortが成立する場合、物体が基準距離よりも近距離に存在すると判定し、Nlong<Nshortが成立する場合、物体が基準距離よりも遠距離に存在すると判定すればよい。
【0011】
しかしながら、基準周期Thよりも周期が長いMHPの数Nlongと基準周期Thよりも周期が短いMHPの数Nshortとを比較する判定方法では、例えば外乱光などのノイズをMHPとして数えたり、信号の歯抜けのために数えられないMHPがあったりして、測定するMHPの周期に誤差が生じることがあるので、物体が基準距離近傍の位置にあるときに判定を誤る可能性があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、自己結合型のレーザ計測器を利用して、簡単かつ安価な構成で精度の良い反射型光電スイッチを実現することを目的とする。
また、本発明は、周期の測定誤差を補正し、物体の遠近を精度良く判定することができる反射型光電スイッチを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の反射型光電スイッチは、レーザ光を放射する半導体レーザと、この半導体レーザを動作させるレーザドライバと、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記半導体レーザの前方に存在する物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、前記物体が基準距離の位置にあるときの前記干渉波形の周期を基準周期としたときに、前記周期測定手段によって測定された干渉波形の周期の度数を、前記基準周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記基準周期の第1の所定数倍以上かつ基準周期未満の周期の度数N2と、前記基準周期以上かつ基準周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記基準周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する計数手段と、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定する判定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の反射型光電スイッチの1構成例は、さらに、さらに、前記度数N2の補正値N2’をN2’=N2−N1により算出する度数補正手段を備え、前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定するものである。
また、本発明の反射型光電スイッチの1構成例は、さらに、前記度数N3の補正値N3’をN3’=N3+N1により算出する度数補正手段を備え、前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定するものである。
【0015】
また、本発明の反射型光電スイッチの1構成例において、前記レーザドライバは、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるものであり、さらに、前記計数手段が求めた度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間と第2の発振期間の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める正規化手段と、前記度数N2”の補正値N2’をN2’=N2”−N1”により算出する度数補正手段とを備え、前記判定手段は、前記度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)の大小を比較し、前記度数N1”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3”の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3”が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定するものである。
また、本発明の反射型光電スイッチの1構成例において、前記レーザドライバは、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるものであり、さらに、前記計数手段が求めた度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間と第2の発振期間の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める正規化手段と、前記度数N3”の補正値N3’をN3’=N3”+N1”により算出する度数補正手段とを備え、前記判定手段は、前記度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)の大小を比較し、前記度数N1”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合は、前記度数N2”と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2”が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定するものである。
また、本発明の反射型光電スイッチの1構成例において、前記第1の所定数は0.5であり、前記第2の所定数は1.5である。
【0016】
また、本発明の物体検出方法は、駆動電流を半導体レーザに供給して前記半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記半導体レーザの前方に存在する物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、前記物体が前記基準距離の位置にあるときの前記干渉波形の周期を基準周期としたときに、前記周期測定手順によって測定された干渉波形の周期の度数を、前記基準周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記基準周期の第1の所定数倍以上かつ基準周期未満の周期の度数N2と、前記基準周期以上かつ基準周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記基準周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する計数手順と、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定する判定手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周期測定時のモードホップパルスの欠落や過剰なノイズ検出の影響を除去し、反射型光電スイッチから物体までの距離が基準距離より遠いか近いかを正しく判定することができる。また、本発明では、周期測定手段と計数手段と判定手段とを簡単な構成で実現することができ、簡単かつ安価な構成で精度の良い反射型光電スイッチを実現することができる。
【0018】
また、本発明では、度数補正手段を設けることにより、周期測定時の過剰なノイズ検出の影響をより効果的に除去することができ、物体の遠近の判定精度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るBGS光電スイッチの構成を示すブロック図である。
図1のBGS光電スイッチは、レーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、物体10からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動するレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの周期を測定し、MHPの周期の度数を基準周期に基づく値で分別する周期分別部7と、周期分別部7の分別結果から物体10が所定の基準距離よりも近距離にあるか遠距離にあるかを判定する判定部8と、判定部8の判定結果を表示する表示部9とを有する。
【0020】
フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0021】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図2は、半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図2において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Ttは三角波の周期である。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0022】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、物体10に入射する。物体10で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0023】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図3(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図3(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図3(A)の波形(変調波)から、図2の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図3(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0024】
周期分別部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの周期を測定し、物体10が所定の基準距離の位置にあるときのMHPの既知の周期(以下、基準周期Thと呼ぶ)に基づく値によりMHPの周期の度数を分別する。
図4は周期分別部7の構成を示すブロック図である。周期分別部7は、周期測定部70と、計数部71とから構成される。周期測定部70は、立ち上がり検出部72と、時間測定部73とから構成される。
【0025】
図5は周期測定部70の動作を説明するための図であり、フィルタ部6の出力電圧波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図である。図5において、H1はMHPの立ち上がりを検出するためのしきい値である。
【0026】
立ち上がり検出部72は、フィルタ部6の出力電圧をしきい値H1と比較することにより、MHPの立ち上がりを検出する。時間測定部73は、立ち上がり検出部72の検出結果に基づいて、MHPの立ち上がりから次の立ち上がりまでの時間tuu(すなわち、MHPの周期)を測定する。時間測定部72は、このような測定をMHPの立ち上がりが検出される度に行う。
【0027】
計数部71は、周期測定部70によって測定されたMHPの周期Tの度数を、基準周期Thの0.5倍未満(0.5Th>T)の周期の度数N1と、基準周期Thの0.5倍以上かつ基準周期Th未満(0.5Th≦T<Th)の周期の度数N2と、基準周期Th以上かつ基準周期Thの1.5倍未満(Th≦T<1.5Th)の周期の度数N3と、基準周期Thの1.5倍以上(1.5Th≦T)の周期の度数N4の4つに分別する。
【0028】
以上のようにして、周期分別部7は、MHPの周期の度数を分別する。周期分別部7は、測定期間(本実施の形態では、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々)ごとにMHPの周期を測定し、周期の度数を分別する。
【0029】
次に、判定部8は、周期分別部7の測定結果から物体10が基準距離よりも近距離にあるか遠距離にあるかを判定する。判定部8は、MHPの周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N4が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、判定部8は、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、度数N2とN3の大小を比較し、度数N3よりも度数N2が大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N2よりも度数N3が大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。
【0030】
判定部8は、このような判定を、周期分別部7がMHPの周期を測定して分別する測定期間(本実施の形態では第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々)ごとに行う。
表示部9は、判定部8の判定結果を表示する。
【0031】
図6、図7は本実施の形態の判定原理を説明するための図であり、図6は波形に欠落が生じた場合のMHPの周期の度数分布を示す図、図7はノイズによって周期が2分割された場合のMHPの周期の度数分布を示す図である。図6、図7において、T0はMHPの本来の周期の度数分布aの代表値(中央値または最頻値等)である。
【0032】
例えばMHPの強度が小さいために周期の測定時にMHPの欠落(検出漏れ)が発生すると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期は、本来の周期のおよそ2倍になり、この欠落によって生じたMHPの周期の度数分布は、2T0を中心とした正規分布(図6のb)になる。この度数分布bは、MHPの本来の周期の度数分布aの相似形である。
一方、周期の測定時にノイズをMHPとして誤って検出してしまうと、MHPの周期はランダムな割合で2分割される。このとき、ノイズを過剰に数えた結果として2分割されたMHPの周期の度数分布は、0.5T0に対して対称な分布になる(図7のc)。
【0033】
本実施の形態では、上記のとおりMHPの周期の度数を4つに分け、基準周期Thの0.5倍未満の周期の度数N1が最も大きい場合は、この度数N1がノイズによるものではなく、MHPの本来の周期であると見なして、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定する。また、基準周期Thの1.5倍以上の周期の度数N4が最も大きい場合は、この度数N4がMHPの欠落によるものではなく、MHPの本来の周期であると見なして、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、度数N1またはN4で物体10の遠近を判断できない場合は、度数N1とN4を無視して、基準周期Thの0.5倍以上かつ基準周期Th未満の周期の度数N2と基準周期Th以上かつ基準周期Thの1.5倍未満の周期の度数N3の大小比較で、物体10の遠近を判定する。
【0034】
こうして、本実施の形態では、周期測定時のMHPの欠落や過剰なノイズ検出の影響を除去し、BGS光電スイッチから物体10までの距離(より正確には半導体レーザ1から物体10までの距離)が基準距離より遠いか近いかを正しく判定することができる。
周期分別部7と判定部8とは、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータと、記憶装置に格納されたプログラムとによって実現してもよいし、ハードウェアで実現してもよい。本実施の形態では、MHPの周期の測定と周期の分別と度数の大小比較だけで済むので、周期分別部7と判定部8を簡単な構成で実現することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態においても、BGS光電スイッチ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
図8は本発明の第2の実施の形態に係るBGS光電スイッチの周期分別部7の構成を示すブロック図である。本実施の形態の周期分別部7は、第1の実施の形態の構成に対して、度数補正部74を追加したものである。周期測定部70と計数部71の動作は、第1の実施の形態と同じである。
【0036】
度数補正部74は、基準周期Thの0.5倍以上かつ基準周期Th未満の周期の度数N2の補正値N2’と、基準周期Th以上かつ基準周期Thの1.5倍未満の周期の度数N3の補正値N3’を以下のように算出する。
N2’=N2−N1 ・・・(2)
N3’=N3+N1 ・・・(3)
【0037】
そして、度数補正部74は、計数部71が求めた度数N1,N2,N3,N4と自身が求めた補正値N2’,N3’とを判定部8に通知する。第1の実施の形態と同様に、周期分別部7は、測定期間ごとにMHPの周期の度数を分別し、度数の補正値を算出する。なお、度数補正部74は、補正値N2’とN3’のどちらか一方を算出すればよい。
【0038】
次に、本実施の形態の判定部8は、MHPの周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N4が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、判定部8は、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、度数N3よりも補正値N2’が大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、補正値N2’よりも度数N3が大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。判定部8は、このような判定を測定期間ごとに行う。
【0039】
また、度数補正部74が補正値N3’を算出する場合には判定部8は以下のような判定を行う。すなわち、判定部8は、MHPの周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N4が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、判定部8は、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、度数の補正値N3’よりも度数N2が大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N2よりも度数の補正値N3’が大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。
BGS光電スイッチのその他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0040】
周期の測定時にノイズを過剰に数えた結果として2分割されたMHPの周期の度数分布cは、図7に示すように、MHPの本来の周期の度数分布aに重なることが多い。そこで、本実施の形態では、基準周期Thの0.5倍以上かつ基準周期Th未満の周期の度数N2を式(2)のように補正し、基準周期Th以上かつ基準周期Thの1.5倍未満の周期の度数N3を式(3)のように補正する。
【0041】
こうして、本実施の形態では、周期測定時の過剰なノイズ検出の影響をより効果的に除去することができ、第1の実施の形態に比べて物体10の遠近の判定精度をさらに向上させることができる。
【0042】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においても、BGS光電スイッチの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図4の符号を用いて説明する。
周期分別部7の周期測定部70の動作は、第1の実施の形態と同じである。
【0043】
本実施の形態の計数部71は、第1の実施の形態と同様に、周期測定部70によって測定されたMHPの周期Tの度数を、基準周期Thの0.5倍未満(0.5Th>T)の周期の度数N1と、基準周期Thの0.5倍以上かつ基準周期Th未満(0.5Th≦T<Th)の周期の度数N2と、基準周期Th以上かつ基準周期Thの1.5倍未満(Th≦T<1.5Th)の周期の度数N3と、基準周期Thの1.5倍以上(1.5Th≦T)の周期の度数N4の4つに分別する。
【0044】
第1の実施の形態と同様に、判定部8は、MHPの周期の度数N1とN4と度数の和(N2+N3)との大小を比較し、度数N1が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N4が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、判定部8は、度数の和(N2+N3)が最も大きい場合、基準周期Thの整数倍の周期nTh(nは2以上の整数)を基準として、周期nThの近傍であってかつ周期nTh未満である周期Tの度数を度数N2に加え、周期nThの近傍であってかつ周期nTh以上である周期Tの度数を度数N3に加える。例えば判定部8は、基準周期Thの1.5倍以上2倍未満の周期の度数を度数N2に加え、基準周期Thの2倍以上2.5倍未満の周期の度数を度数N3に加える。そして、判定部8は、この加算後の度数N2とN3の大小を比較し、度数N3よりも度数N2が大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N2よりも度数N3が大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。
BGS光電スイッチのその他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0045】
本実施の形態は、MHPの周期の測定時にMHPの欠落が発生する場合の補正方法を示すものであり、周期測定部70の測定結果においてN3<N2<(N3+N4)が成立するときに有効である。
なお、本実施の形態を第2の実施の形態と併用する場合には、補正値N2’を使う必要がある。この補正値N2’と度数N3に対して前記加算を行う。
【0046】
[第4の実施の形態]
第1〜第3の実施の形態では、物体10が静止していないと判定を誤る可能性がある。その理由は、半導体レーザの前方に存在する物体10が発振期間中にBGS光電スイッチに接近する方向に動いていると、第1の発振期間P1ではMHPの数が増加する(MHPの周期が短くなる)と共に、第2の発振期間P2ではMHPの数が減少する(MHPの周期が長くなる)からである。
【0047】
図9に、ノイズによるMHPの周期の分割や波形の欠落があり、かつ物体10が静止していない場合のMHPの周期の度数分布を示す。ノイズによるMHPの周期の分割や波形の欠落の頻度割合が第1の発振期間P1と第2の発振期間P2とでほぼ同じと仮定すると、度数を正規化した上で、判定することにより、物体10が移動したとしても、BGS光電スイッチから物体10までの距離(より正確には半導体レーザ1から物体10までの距離)が基準距離より遠いか近いかを正しく判定することができる。
【0048】
本実施の形態においても、BGS光電スイッチ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
図10は本発明の第4の実施の形態に係るBGS光電スイッチの周期分別部7の構成を示すブロック図である。本実施の形態の周期分別部7は、第1の実施の形態の構成に対して、正規化部75と、度数補正部76とを追加したものである。周期測定部70と計数部71の動作は、第1の実施の形態と同じである。
【0049】
本実施の形態では、第1の発振期間P1において計数部71が求めた度数N1,N2,N3,N4をそれぞれN1(P1),N2(P1),N3(P1),N4(P1)とし、第2の発振期間P2において計数部71が求めた度数N1,N2,N3,N4をそれぞれN1(P2),N2(P2),N3(P2),N4(P2)とする。
【0050】
正規化部75は、以下の式のように、度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める。
N1”={N1(P1)
/(N1(P1)+N2(P1)+N3(P1)+N4(P1))}
+{N1(P2)
/(N1(P2)+N2(P2)+N3(P2)+N4(P2))}
・・・(4)
N2”={N2(P1)
/(N1(P1)+N2(P1)+N3(P1)+N4(P1))}
+{N2(P2)
/(N1(P2)+N2(P2)+N3(P2)+N4(P2))}
・・・(5)
N3”={N3(P1)
/(N1(P1)+N2(P1)+N3(P1)+N4(P1))}
+{N3(P2)
/(N1(P2)+N2(P2)+N3(P2)+N4(P2))}
・・・(6)
N4”={N4(P1)
/(N1(P1)+N2(P1)+N3(P1)+N4(P1))}
+{N4(P2)
/(N1(P2)+N2(P2)+N3(P2)+N4(P2))}
・・・(7)
【0051】
度数補正部76は、度数N2”の補正値N2’と、度数N3”の補正値N3’を以下のように算出する。
N2’=N2”−N1” ・・・(8)
N3’=N3”+N1” ・・・(9)
【0052】
そして、度数補正部76は、正規化部75が求めた度数N1”,N2”,N3”,N4”と自身が求めた補正値N2’,N3’とを判定部8に通知する。本実施の形態では、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の和を求めるため、周期分別部7は、発振周期(三角波の周期)ごとに動作する。なお、度数補正部76は、補正値N2’とN3’のどちらか一方を算出すればよい。
【0053】
次に、本実施の形態の判定部8は、MHPの周期の度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)との大小を比較し、度数N1”が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N4”が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、判定部8は、度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合、度数の補正値N2’と度数N3”の大小を比較し、度数N3”よりも補正値N2’が大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、補正値N2’よりも度数N3”が大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。判定部8は、このような判定を発振周期(三角波の周期)ごとに行う。
【0054】
また、度数補正部76が補正値N3’を算出する場合には判定部8は以下のような判定を行う。すなわち、判定部8は、MHPの周期の度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)との大小を比較し、度数N1”が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N4”が最も大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。また、判定部8は、度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合、度数N2”と度数の補正値N3’の大小を比較し、度数の補正値N3’よりも度数N2”が大きい場合、物体10が基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、度数N2”よりも度数の補正値N3’が大きい場合、物体10が基準距離よりも近距離に存在すると判定する。
BGS光電スイッチのその他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0055】
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、周期測定時の過剰なノイズ検出の影響を効果的に除去することができ、また物体10が移動したとしても、物体10の遠近を正しく判定することができる。
【0056】
[第5の実施の形態]
第1〜第4の実施の形態では、受光器であるフォトダイオードの出力信号からMHP波形を抽出していたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図11は本発明の第5の実施の形態に係るBGS光電スイッチの構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態のBGS光電スイッチは、第1〜第4の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、電圧検出部11を用いるものである。
【0057】
電圧検出部11は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光と物体10からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0058】
フィルタ部6は、第1〜第4の実施の形態と同様に、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものであり、電圧検出部11の出力電圧からMHP波形を抽出する。
半導体レーザ1、レーザドライバ4、周期分別部7、判定部8および表示部9の動作は、第1〜第4の実施の形態と同じである。
【0059】
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第4の実施の形態と比較してBGS光電スイッチの部品を削減することができ、BGS光電スイッチのコストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、反射型光電スイッチに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るBGS光電スイッチの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るBGS光電スイッチの周期分別部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るBGS光電スイッチのフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態において波形に欠落が生じた場合のモードポップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態においてノイズによって周期が2分割された場合のモードポップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るBGS光電スイッチの周期分別部の構成を示すブロック図である。
【図9】ノイズによるモードホップパルスの周期の分割や波形の欠落があり、かつ物体が静止していない場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係るBGS光電スイッチの周期分別部の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係るBGS光電スイッチの構成を示すブロック図である。
【図12】従来のレーザ計測器における半導体レーザの複合共振器モデルを示す図である。
【図13】半導体レーザの発振波長と内蔵フォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図14】物体の距離とモードポップパルスの周期の度数分布との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…周期分別部、8…判定部、9…表示部、10…物体、11…電圧検出部、70…周期測定部、71…計数部、72…立ち上がり検出部、73…時間測定部、74…度数補正部、75…正規化部、76…度数補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を放射する半導体レーザと、
この半導体レーザを動作させるレーザドライバと、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記半導体レーザの前方に存在する物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、
前記物体が基準距離の位置にあるときの前記干渉波形の周期を基準周期としたときに、前記周期測定手段によって測定された干渉波形の周期の度数を、前記基準周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記基準周期の第1の所定数倍以上かつ基準周期未満の周期の度数N2と、前記基準周期以上かつ基準周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記基準周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する計数手段と、
前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定する判定手段とを備えることを特徴とする反射型光電スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の反射型光電スイッチにおいて、
さらに、前記度数N2の補正値N2’をN2’=N2−N1により算出する度数補正手段を備え、
前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする反射型光電スイッチ。
【請求項3】
請求項1記載の反射型光電スイッチにおいて、
さらに、前記度数N3の補正値N3’をN3’=N3+N1により算出する度数補正手段を備え、
前記判定手段は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする反射型光電スイッチ。
【請求項4】
請求項1記載の反射型光電スイッチにおいて、
前記レーザドライバは、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるものであり、
さらに、前記計数手段が求めた度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間と第2の発振期間の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める正規化手段と、
前記度数N2”の補正値N2’をN2’=N2”−N1”により算出する度数補正手段とを備え、
前記判定手段は、前記度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)の大小を比較し、前記度数N1”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3”の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3”が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする反射型光電スイッチ。
【請求項5】
請求項1記載の反射型光電スイッチにおいて、
前記レーザドライバは、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるものであり、
さらに、前記計数手段が求めた度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間と第2の発振期間の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める正規化手段と、
前記度数N3”の補正値N3’をN3’=N3”+N1”により算出する度数補正手段とを備え、
前記判定手段は、前記度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)の大小を比較し、前記度数N1”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合は、前記度数N2”と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2”が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする反射型光電スイッチ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の反射型光電スイッチにおいて、
前記第1の所定数は0.5であり、前記第2の所定数は1.5であることを特徴とする反射型光電スイッチ。
【請求項7】
物体までの距離が所定の基準距離より遠いか近いかを検出する物体検出方法において、
駆動電流を半導体レーザに供給して前記半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記半導体レーザの前方に存在する物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、
前記物体が前記基準距離の位置にあるときの前記干渉波形の周期を基準周期としたときに、前記周期測定手順によって測定された干渉波形の周期の度数を、前記基準周期の第1の所定数倍未満の周期の度数N1と、前記基準周期の第1の所定数倍以上かつ基準周期未満の周期の度数N2と、前記基準周期以上かつ基準周期の第2の所定数倍未満(第1の所定数<第2の所定数)の周期の度数N3と、前記基準周期の第2の所定数倍以上の周期の度数N4の4つに分別する計数手順と、
前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2とN3の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定する判定手順とを備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項8】
請求項7記載の物体検出方法において、
さらに、前記度数N2の補正値N2’をN2’=N2−N1により算出する度数補正手順を備え、
前記判定手順は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項9】
請求項7記載の物体検出方法において、
さらに、前記度数N3の補正値N3’をN3’=N3+N1により算出する度数補正手順を備え、
前記判定手順は、前記度数N1とN4と度数の和(N2+N3)の大小を比較し、前記度数N1が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2+N3)が最も大きい場合は、前記度数N2と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項10】
請求項7記載の物体検出方法において、
前記発振手順は、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるものであり、
さらに、前記計数手順で得られた度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間と第2の発振期間の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める正規化手順と、
前記度数N2”の補正値N2’をN2’=N2”−N1”により算出する度数補正手順とを備え、
前記判定手順は、前記度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)の大小を比較し、前記度数N1”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合は、前記度数の補正値N2’と度数N3”の大小を比較し、前記補正値N2’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N3”が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項11】
請求項7記載の物体検出方法において、
前記発振手順は、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるものであり、
さらに、前記計数手順で得られた度数N1,N2,N3,N4を発振期間別に各発振期間の度数で正規化した後、正規化した度数N1,N2,N3,N4毎に第1の発振期間と第2の発振期間の度数の和N1”,N2”,N3”,N4”を求める正規化手順と、
前記度数N3”の補正値N3’をN3’=N3”+N1”により算出する度数補正手順とを備え、
前記判定手順は、前記度数N1”とN4”と度数の和(N2”+N3”)の大小を比較し、前記度数N1”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記度数N4”が最も大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定し、前記度数の和(N2”+N3”)が最も大きい場合は、前記度数N2”と度数の補正値N3’の大小を比較し、前記度数N2”が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも遠距離に存在すると判定し、前記補正値N3’が大きい場合は、前記物体が前記基準距離よりも近距離に存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1項に記載の物体検出方法において、
前記第1の所定数は0.5であり、前記第2の所定数は1.5であることを特徴とする物体検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−244218(P2009−244218A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93807(P2008−93807)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】