説明

可搬型医療機器の充電池管理装置、方法、及びプログラム

【課題】電気自動車により可搬型医療機器を持ち出して使用する際に、可搬型医療機器を駆動する充電池の残量不足により可搬型医療機器が使用不能となるのを防ぐ。
【解決手段】電子カセッテ及び可搬型X線源の充電池管理装置は、入力された撮影予定日の撮影予約情報を取得し(ステップS10、S12)、撮影予約情報にから電子カセッテ及び可搬型X線源の撮影電力量を算出し(ステップS14)、撮影場所の住所から電気自動車の走行距離を算出し(ステップS16)、走行距離から電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出し(ステップS18)、電気自動車のバッテリー残量を取得し(ステップS20)、電気自動車のバッテリー残量及び走行電力量に基づいて回診可能か否か判断し(ステップS22)、回診不可能な場合は警告し(ステップS26)、回診不可能な場合は電子カセッテ10及び可搬型X線源70の充電池の必要個数を算出する(ステップS24)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型医療機器の充電池管理装置、方法、及びプログラムに係り、特に、充電池によって駆動される可搬型医療機器の充電池管理装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可搬型放射線撮影装置(電子カセッテ)が記載されており、この電子カセッテは充電池によって駆動される。このような電子カセッテを用いて在宅医療において放射線撮影したり、企業の健康診断や介護施設等で放射線撮影したりする場合、すなわち、医療機関以外で放射線撮影を行う場合、電子カセッテやX線を放射するX線源を駆動するバッテリーの残量が不足して撮影不可能になってしまうことが考えられる。
【0003】
ここで、特許文献2には、放射線画像情報や医事情報を管理するシステムと接続され、これらの情報に基づいて次の撮影に必要な電子カセッテの電力量を算出することが記載されている。
【0004】
電子カセッテやX線源をエンジン駆動の車両で搬送する場合には、車両のバッテリーから充電することも可能である。エンジン駆動の車両の場合、そのバッテリーはエンジン駆動によって発電される電力によって充電されるため、走行によってバッテリーが減り続けることはなく、車両のバッテリーから電子カセッテやX線源のバッテリーを充電しても車両のバッテリーが不足することはないためである。
【0005】
ところで、近年では、環境問題によりハイブリッド車や電気自動車の開発が活発であり、医療機関で用いる車両も将来的に電気自動車が採用されることが十分に考えられる。
【0006】
ここで、特許文献3には、電気自動車の走行距離に基づいて必要な電力量を算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−16977号公報
【特許文献2】特開2010−75454号公報
【特許文献3】特開2009−136109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電気自動車により電子カセッテやX線源を搬送する場合には、電気自動車のバッテリーから電子カセッテやX線源のバッテリーを充電すると、その分電気自動車のバッテリー残量が減り、走行可能距離が減ってしまう。このため、医療機関を出発して、予定されたコースにより訪問先を訪問して撮影し、医療機関に戻ることができなくなる虞がある、という問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、電気自動車により可搬型医療機器を持ち出して使用する際に、可搬型医療機器を駆動する充電池の残量不足により可搬型医療機器の使用ができなくなるのを防ぐことができる可搬型医療機器の充電池管理装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明の可搬型医療機器の充電池管理装置は、予め設定された出発地から可搬型医療機器を使用して回診する回診場所を経由して目的地へ至るまでの電気自動車の予定走行距離に基づいて、当該電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出する走行電力量算出手段と、前記可搬型医療機器の使用予定情報に基づいて、前記可搬型医療機器の使用に必要な使用電力量を算出する使用電力量算出手段と、前記電気自動車を駆動する車両バッテリーの車両バッテリー残量を取得する取得手段と、前記走行電力量算出手段により算出した前記走行電力量、前記使用電力量算出手段により算出した前記使用電力量、及び前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、算出した走行電力量、算出した使用電力量、及び取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定するので、電気自動車により可搬型医療機器を持ち出して使用する際に、可搬型医療機器を駆動する充電池の残量不足により可搬型医療機器の使用ができなくなるのを防ぐことができる。
【0012】
なお、請求項2に記載したように、前記決定手段は、前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量が前記走行電力量より多い場合には、その差分の電力量により減らすことができる前記可搬型医療機器の充電池の個数を算出する算出手段を含む構成としてもよい。
【0013】
これにより、持ち出す可搬型医療機器を必要最小限の個数とすることができる。
【0014】
また、請求項3に記載したように、前記可搬型医療機器は、可搬型放射線撮影装置及び可搬型放射線源を含み、前記決定手段は、前記可搬型放射線撮影装置を駆動する充電池の必要個数及び前記可搬型放射線源を駆動する充電池の必要個数を各々決定するようにしてもよい。
【0015】
また、請求項4に記載したように、前記走行電力量算出手段により算出した前記走行電力量、前記使用電力量算出手段により算出した前記使用電力量、及び前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記回診が可能か否かを報知する報知手段を備えた構成としてもよい。
【0016】
これにより、電気自動車により可搬型医療機器を持ち出して使用する際に、車両バッテリー残量や可搬型医療機器を駆動する充電池の残量不足により可搬型医療機器の使用ができなくなるのを事前に知ることができ、可搬型医療機器の使用ができなくなるのを未然に防ぐことができる。
【0017】
請求項5記載の発明の可搬型医療機器の充電池管理方法は、予め設定された出発地から可搬型医療機器を使用して回診する回診場所を経由して目的地へ至るまでの電気自動車の予定走行距離に基づいて、当該電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出し、前記可搬型医療機器の使用予定情報に基づいて、前記可搬型医療機器の使用に必要な使用電力量を算出し、前記電気自動車を駆動する車両バッテリーの車両バッテリー残量を取得し、算出した前記走行電力量、算出した前記使用電力量、及び取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項6記載の発明の可搬型医療機器の充電池管理プログラムは、コンピュータを、予め設定された出発地から可搬型医療機器を使用して回診する回診場所を経由して目的地へ至るまでの電気自動車の予定走行距離に基づいて、当該電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出する走行電力量算出手段、前記可搬型医療機器の使用予定情報に基づいて、前記可搬型医療機器の使用に必要な使用電力量を算出する使用電力量算出手段、前記電気自動車を駆動する車両バッテリーの車両バッテリー残量を取得する取得手段、前記走行電力量算出手段により算出した前記走行電力量、前記使用電力量算出手段により算出した前記使用電力量、及び前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定する決定手段、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可搬型医療機器を駆動する充電池の残量不足により可搬型医療機器の使用ができなくなるのを防ぐことができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】放射線情報システムの全体構成を示す図である。
【図2】電子カセッテの回路図である。
【図3】電子カセッテの平面図である。
【図4】電子カセッテの断面図である。
【図5】電子カセッテの斜視図である。
【図6】可搬型X線源の斜視図である。
【図7】電子カセッテ及び可搬型X線源の使用状況を示した斜視図である。
【図8】充電池管理装置の概略ブロック図である。
【図9】充電池管理装置で実行される処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態では、可搬型放射線撮影装置(電子カセッテ)を病院等の医療機関から持ち出して、電気自動車により訪問先(個人宅や企業、介護施設等)を訪問して放射線撮影する場合等を想定し、電子カセッテやX線を放射するX線源を駆動する充電池の残量が不足して撮影不可能になってしまうのを防ぐために、電子カセッテ等に必要な充電池の個数を決定する場合について説明する。
【0023】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」と称する。)100の構成について説明する。
【0024】
RIS100は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS(Hospital Information System)」と称する。)の一部を構成する。
【0025】
RIS100は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」と称する。)102、RISサーバ104、および病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」と称する。)106、充電池管理装置108を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク110に各々接続されて構成されている。なお、RIS100は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク110には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0026】
端末装置102は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置102を介して行われる。各端末装置102は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ104と病院内ネットワーク110を介して相互通信が可能とされている。
【0027】
一方、RISサーバ104は、各端末装置102からの撮影依頼を受け付け、撮影システム106における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース104Aを含んで構成されている。
【0028】
データベース104Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、住所、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、後述する撮影予約情報、撮影システム106で用いられる、電子カセッテ10の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用可能な撮影部位(対応可能な撮影依頼の内容)、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ10に関する情報を含んで構成されている。
【0029】
撮影予約情報(使用予定情報)は、撮影する患者の患者ID、患者の氏名、撮影予定日、撮影場所(住所)、撮影部位、撮影枚数等を含む情報であり、RISサーバ104により生成される。撮影予約情報は、端末装置102によって入力された撮影予約に関する情報と、データベース104Aに記憶された患者の属性情報と、に基づいて生成される。例えば、端末装置102により患者ID、撮影予定日、撮影部位、撮影枚数等が入力されると、これらの情報がRISサーバ104に送信される。そして、RISサーバ104では、端末装置102から送信された患者IDに対応する患者の氏名、住所(撮影場所)等をデータベース104Aに記憶された患者の属性情報から抽出し、この情報と端末装置102から送信された情報とを関連付けて、撮影予約情報としてデータベース104Aに記憶させる。
【0030】
撮影システム106は、RISサーバ104からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム106は、図示しない放射線源から曝射条件に従った線量とされた放射線を被検者に照射する放射線発生装置112と、被検者の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器を内蔵する電子カセッテ10と、電子カセッテ10に内蔵されている充電池を充電するクレードル114と、電子カセッテ10、放射線発生装置112、及びクレードル114を制御するコンソール116と、を備えている。
【0031】
コンソール116は、RISサーバ104からデータベース104Aに含まれる各種情報を取得して図示しないHDD(ハードディスクドライブ)に記憶し、当該情報に基づいて、電子カセッテ10、放射線発生装置112、及びクレードル114の制御を行う。
【0032】
電子カセッテ10は、持ち運び可能な可搬型X線源と共に病院から持ち出して、個人宅や企業、介護施設等で撮影を行うことが可能である。
【0033】
ここで、訪問先で使用される電子カセッテ10について説明する。
【0034】
図2に示されるように、電子カセッテ10の筐体18の内部には、放射線撮像素子12が設けられている。この放射線撮像素子12は、上部電極と半導体層と下部電極を備え、放射線撮像素子12には、光を受けて電荷を蓄積するセンサ部14と、センサ部14に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ16と、を含んで構成される画素20が2次元状に多数設けられている。
【0035】
また、放射線撮像素子12には、前述したTFTスイッチ16をON/OFFするための複数の走査配線22と、センサ部14に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線24と、が互いに交差して設けられている。
【0036】
本実施形態に係る放射線撮像素子12は、表面にGOS又はCsI等からなるシンチレータ30(図3及び図4参照)が貼り付けられている。シンチレータ30は、発生した光の外部への漏れだしを防止するため、貼り付けられた放射線撮像素子12に対する反対側の面に発生した光を遮光する遮光体30A(図4参照)を有している。
【0037】
放射線撮像素子12では、照射されたX線などの放射線はシンチレータ30で光に変換され、センサ部14に照射される。センサ部14は、シンチレータ30から照射された光を受けて電荷を蓄積するようになっている。
【0038】
そして、各信号配線24には、信号配線24に接続された何れかのTFTスイッチ16がONされることによりセンサ部14に蓄積された電荷量に応じて放射線画像を示す電気信号(画像信号)が流れるようになっている。
【0039】
また、放射線撮像素子12の信号配線方向の一端側には、結線用のコネクタ32が複数個並んで設けられ、走査配線方向の一端側には、コネクタ34が複数個並んで設けられている。そして、各信号配線24はコネクタ32に接続され、各走査配線22はコネクタ34に接続されている。
【0040】
さらに、本実施の形態では、放射線撮像素子12による放射線検出の制御、及び各信号配線24に流れる電気信号に対する信号処理の制御を行う制御部36が設けられ、制御部36は、信号検出回路42と、スキャン信号制御回路40と、を備えている。
【0041】
また、信号検出回路42には、複数個のコネクタ46が設けられており、このコネクタ46には、フレキシブルケーブル44の一端が電気的に接続されている。さらに、このフレキシブルケーブル44の他端は、コネクタ32に接続されており、信号配線24毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。この構成により、信号検出回路42は、各信号配線24より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することで、画像を構成する各画素20の情報として、各センサ部14に蓄積された電荷量を検出するようになっている。
【0042】
一方、スキャン信号制御回路40には、コネクタ48が設けられており、このコネクタ48には、フレキシブルケーブル52の一端が電気的に接続されている。さらに、このフレキシブルケーブル52の他端は、コネクタ34に接続されており、スキャン信号制御回路40は各走査配線22にTFTスイッチ16をON/OFFするための制御信号を出力するようになっている。
【0043】
また、図4に示されるように、本実施の形態に係る電子カセッテ10は、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する撮影部60を有している。この撮影部60は、平板状に形成された支持基板62の一方の面に放射線撮像素子12が配置され(図3参照)、支持基板62の他方の面に放射線撮像素子12に対応する信号検出回路42及びスキャン信号制御回路40が配置されている。
【0044】
また、図5に示されるように、電子カセッテ10には、電子カセッテ10を稼動させる充電池54が設けられており、この充電池54は、電子カセッテ10の側面に設けられた収納部56に着脱自在とされている。
【0045】
これに対し、図6に示されるように、電子カセッテ10に放射線を照射する可搬型X線源70には、X線を照射する照射窓72と、可搬型X線源70のコリメータを調整する調整ダイヤル74と、可搬型X線源70を持ち運ぶときに把持する把持部76とが設けられている。
【0046】
さらに、可搬型X線源70には、可搬型X線源70を稼動させる充電池58が設けられており、この充電池58は、可搬型X線源70の側面に設けられた収納部68に着脱自在とされている。
【0047】
電子カセッテ10及び可搬型X線源70は、これらを収納する図示しない収納ケースに収納されて持ち運ぶことができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る電子カセッテ10及び可搬型X線源70の動作について説明する。
【0049】
図7に示されるように、図示しない収納ケースに収納されて個人宅や介護施設に持ち運ばれた電子カセッテ10は、放射線画像の撮影時において、放射線を発生させる可搬型X線源70と間隔を空けて配置される。詳細には、可搬型X線源70の把持部76を、個人宅又は介護施設にて簡易に組み立てられたアングル78の引掛け部80に引っ掛けることで、電子カセッテ10と可搬型X線源70とは垂直方向に間隔を空けて配置される。
【0050】
また、このときの可搬型X線源70と電子カセッテ10との間は、被写体82が位置するための撮影位置とされており、放射線画像の撮影が指示されると、可搬型X線源70は予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線を射出する。そして、可搬型X線源70から射出された放射線は、撮影位置に位置している被写体82を透過することで画像情報を担持した後に電子カセッテ10に照射される。
【0051】
図4に示されるように、放射線撮像素子12では、照射されたX線などの放射線はシンチレータ30で光に変換され、センサ部14(図2参照)に照射される。センサ部14は、シンチレータ30から照射された光を受けて電荷を蓄積する。
【0052】
図2に示されるように、画像読出時には、スキャン信号制御回路40から放射線撮像素子12のTFTスイッチ16のゲート電極に走査配線22を介して順次ON信号(+10〜20V)が印加される。これにより、放射線撮像素子12のTFTスイッチ16が順次ONされることによりセンサ部14に蓄積された電荷量に応じた電気信号が信号配線24に流れ出す。信号検出回路42は、放射線撮像素子12の信号配線24に流れ出した電気信号に基づいて各センサ部14に蓄積された電荷量を、画像を構成する各画素20の情報として検出する。これにより、放射線撮像素子12に照射された放射線により示される画像を示す画像情報を得る。
【0053】
本実施形態においては、電気自動車により電子カセッテ10及び可搬型X線源を搭載して予定された訪問先を訪問し、訪問先で撮影を行って病院に戻る場合を想定している。モータ駆動の電気自動車では、エンジン駆動の自動車と異なり、ブレーキ動作時における回生電力により多少の充電はできるものの、走行中するに従ってバッテリーは減り続ける。このため、電子カセッテ10及び可搬型X線源70の充電池の残量が無くなった場合に電気自動車のバッテリーから頻繁に充電するのは好ましくなく、一方で、持ち運ぶ充電池の個数が多すぎるのも好ましくない。従って、電子カセッテ10及び可搬型X線源の充電池の残量が無くならないように、予め必要最小限の充電池の個数を決定しておくことが好ましい。
【0054】
そこで、本実施形態に係る充電池管理装置108では、電気自動車の予定走行距離や電気自動車のバッテリー残量等に基づいて電子カセッテ10及び可搬型X線源70の充電池の個数を決定する。
【0055】
図8には、充電池管理装置108の概略構成を示した。同図に示すように、充電池管理装置108は、一般的なコンピュータの構成であり、コントローラ120を含んで構成されている。
【0056】
コントローラ120は、CPU(Central Processing Unit)120A、ROM(Read Only Memory)120B、RAM(Random Access Memory)120C、不揮発性メモリ120D、及び入出力インターフェース(I/O)120Eがバス120Fを介して各々接続された構成となっている。
【0057】
I/O120Eには、表示部122、操作部124、ハードディスク126、及び病院内ネットワーク110を介してRISサーバ104等の他の装置と通信するための通信インターフェース(I/F)128が接続されている。
【0058】
ハードディスク126には、後述する処理の処理プログラムや、放射線画像の撮影の際に電子カセッテ10及び可搬型X線源70で消費される撮影1枚当たりの撮影部位毎の消費電力量を電子カセッテ10及び可搬型X線源70の各々について予め定めた撮影電力情報、電子カセッテ10及び可搬型X線源70を搬送する電気自動車の走行による単位距離当たりの消費電力量について予め定めた走行電力情報、電子カセッテ10の充電池54の1個当たりの容量(満充電時の電力量)及び可搬型X線源70の充電池58の1個当たりの容量(満充電時の電力量)等の各種データが記憶されている。
【0059】
また、ハードディスク126には、病院から撮影場所を訪問して病院へ戻ってくるまでのルート探索し、走行距離等を算出するためのルート探索アプリケーションソフトがインストールされている。このルート探索アプリケーションは、地図データベースを含み、出発地点及び目的地、経由地の住所を設定することにより、出発点から経由地を経由して目的地(本実施形態では出発地と同一)に至るまでの走行ルートを探索すると共に、その予定走行距離を算出することが可能である。
【0060】
次に、本実施形態の作用として、コントローラ120のCPU120Aで実行される処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図9に示す処理の処理プログラムは、例えばハードディスク126に予め記憶され、このハードディスク126から処理プログラムが読み込まれてCPU120Aにより実行される。
【0061】
まず、ステップS10では、撮影予定日が入力されたか否かを判断する。オペレータが操作部124を操作して撮影予定日を入力すると、ステップS10で肯定判断され、ステップS12へ移行する。撮影予定日が入力されていない場合には、撮影予定日が入力されるまで待機する。
【0062】
ステップS12では、入力された撮影予定日の撮影予約情報を取得する。具体的には、まず、入力された撮影予定日をRISサーバ104へ送信する。RISサーバ104では、充電池管理装置108から送信された撮影予定日の撮影予約情報をデータベース104Aから抽出し、これを充電池管理装置108に送信する。
【0063】
ステップS14では、取得した撮影予約情報及びハードディスク126に予め記憶された撮影電力情報に基づいて、撮影に必要な電子カセッテ10及び可搬型X線源70の電力量(W・h)を算出する。前述したように、撮影予約情報には、撮影する患者の撮影部位及び撮影枚数が含まれている。また、撮影電力情報には、撮影1枚当たりの撮影部位毎の消費電力量が電子カセッテ10及び可搬型X線源70の各々について定義されている。
【0064】
例えば、ある患者Fの撮影部位a(例えば胸)の撮影枚数がNa枚、撮影部位bの撮影枚数がNb枚で、撮影部位aの撮影1枚当たりの電子カセッテ10の消費電力量がPa1、撮影部位bの撮影1枚当たりの電子カセッテ10の消費電力量がPb1の場合、その患者の撮影に必要な電子カセッテ10の撮影電力量(使用電力量)Pxは次式で表される。
【0065】
Px=Pa1×Na+Pb1×Nb ・・・(1)
【0066】
このような電子カセッテ10の必要電力量Pxを指定された撮影予定日に撮影予定の患者毎に算出して積算することにより、指定された撮影予定日の撮影に必要な電子カセッテ10の撮影電力量PXを求めることができる。
【0067】
同様に、患者Fの撮影部位aの撮影1枚当たりの可搬型X線源70の消費電力量がPa、撮影部位bの撮影1枚当たりの電子カセッテ10の消費電力量がPbの場合、その患者の撮影に必要な電子カセッテ10の撮影電力量(使用電力量)Pyは次式で表される。
【0068】
Py=Pa2×Na+Pb2×Nb ・・・(2)
【0069】
このような可搬型X線源70の必要電力量Pyを指定された撮影予定日に撮影予定の患者毎に算出して積算することにより、指定された撮影予定日の撮影に必要な可搬型X線源70の撮影電力量PYを求めることができる。
【0070】
ステップS16では、撮影予約情報に含まれる撮影場所の住所に基づいて、電子カセッテ10及び可搬型X線源70を搬送する電気自動車の走行距離をルート探索アプリケーションにより算出する。具体的には、電子カセッテ10及び可搬型X線源70を電気自動車に搭載して出発する病院を出発点及び最終目的地とすると共に、撮影予定の各撮影場所を経由地として、これらの住所をルート探索アプリケーションに設定する。これにより、ルート探索アプリケーションでは、病院を出発し、各撮影場所を経由して病院に戻るまでの走行ルートを探索し、その走行ルートの走行距離を算出する。探索されたルート及び走行距離は、例えば表示部122に表示される。
【0071】
ステップS18では、ステップS16で算出した走行距離及びハードディスク126に予め記憶された走行電力情報に基づいて、ステップS16で算出した走行距離を電気自動車が走行するのに必要な走行電力量Psを算出する。具体的には、ステップS16で算出した走行距離(km)をD、走行電力情報に定義された電気自動車の走行による単位距離(km)当たりの消費電力量をPc(W・h)とすると、電気自動車の走行に必要な走行電力量Psは次式で表される。
【0072】
Ps=D×Pc ・・・(3)
【0073】
ステップS20では、電気自動車のバッテリー残量(電力量)Ptを取得する。具体的には、例えば電気自動車にバッテリー残量を電気自動車のパネル等に表示する機能がある場合には、そのパネルに表示されたバッテリー残量をオペレータが確認し、これを操作部124を操作して入力するようにしてもよい。また、電気自動車と無線通信等により情報の授受が可能な場合には、電気自動車に対してバッテリー残量の送信を要求し、これを受信することでバッテリー残量を取得するようにしてもよい。また、例えば本プログラムを撮影当日の出発直前に実行する場合には、前日に病院に戻ってきた時点における電気自動車のバッテリー残量に基づいて現時点の電気自動車のバッテリー残量の予測値を算出して入力するようにしてもよい。
【0074】
ステップS22では、回診可能か否か、すなわち全ての撮影場所を回って撮影することが可能か否かを判断する。具体的には、ステップS20で取得したバッテリー残量Ptが、ステップS18で求めた電気自動車の走行に必要な走行電力量Ps未満であるか否かを判断する。そして、バッテリー残量Ptが走行電力量Ps以上である場合には、回診可能、すなわち予定された走行ルートを走行可能であるものとして、ステップS24へ移行する。
【0075】
一方、バッテリー残量Ptが走行電力量Ps未満である場合には、回診不可能、すなわち予定された走行ルートを走行できないものとして、ステップS26へ移行する。
【0076】
ステップS26では、電気自動車のバッテリー残量が足りず、走行ルートを走行できない旨を表示部122に表示する等して警告する。
【0077】
一方、ステップS24では、回診可能である旨を表示部122に表示すると共に、ステップS14で求めた撮影予定日の全撮影に必要な電子カセッテ10の撮影電力量PX、可搬型X線源70の撮影電力量PY、ステップS18で求めた電気自動車の走行電力量Psと、ステップS20で求めた電気自動車のバッテリー残量Ptと、ハードディスク126に記憶された電子カセッテ10の充電池54の1個当たりの満充電時の電力量及び可搬型X線源70の充電池58の1個あたりの満充電時の電力量と、に基づいて、電子カセッテ10の充電池54及び可搬型X線源70の充電池58の必要個数を各々算出する。
【0078】
具体的には、電子カセッテ10の充電池54の1個当たりの満充電時の電力量をPd及び可搬型X線源70の充電池58の1個あたりの満充電時の電力量をPeとすると、電子カセッテ10の充電池54の必要個数N1、可搬型X線源70の充電池58の必要個数N2は次式を満たすように決定される。
【0079】
(Pd×N1)≧PX ・・・(4)
【0080】
(Pe×N2)≧PY ・・・(5)
【0081】
そして、上記(4)、(5)式により決定された電子カセッテ10の充電池54の必要個数N1、可搬型X線源70の充電池58の必要個数N2を、表示部122に表示する。
【0082】
ところで、上記(4)式、(5)式を満たさない場合でも、電気自動車のバッテリー残量Ptが、走行ルートの走行に必要な走行電力量Psよりも多く、その余裕分のバッテリー残量が電子カセッテ10の充電池54又は可搬型X線源70の充電池58の1個当たりの満充電時の電力量を上回る場合には、電気自動車のバッテリーから充電ケーブル等を介して電子カセッテ10の充電池54又は可搬型X線源70の充電池58に充電することにより、充電池の必要個数を減らすことができる。
【0083】
具体的には、以下に示す(6)式を満たすような1以上のNa又はNbが存在する場合には、Na個分の電子カセッテ10の充電池54を必要個数N1から減らす又はNb個分の可搬型X線源70の充電池58を必要個数N2から減らすことができる。
【0084】
Pt−Ps≧(Pd×Na)+(Pe×Nb) ・・・(6)
【0085】
この場合、電子カセッテ10の必要個数N1、可搬型X線源70の充電池58の必要個数N2と共に、電子カセッテ10の充電池54を減らすことができる個数Na、可搬型X線源70の充電池58を減らすことができる個数Nbを、表示部122に表示するようにしてもよい。また、必要個数N1から、減らすことができる個数Naを減算して表示するようにすると共に、必要個数N2から、減らすことができる個数Nbを減算して表示するようにしてもよい。
【0086】
なお、ステップS22において、バッテリー残量Ptが走行電力量Ps未満であっても、保有する電子カセッテ10の充電池54、保有する可搬型X線源70の充電池58の個数に余裕があり、充電池54の必要個数N1及び充電池58の必要個数N2より多い数の充電池54、充電池58を持ち出し可能な場合には、充電池54及び充電池58から電気自動車のバッテリーに充電することも可能である。このような場合には、バッテリー残量Ptが走行電力量Ps未満であっても、回診可能と判断するようにしてもよい。
【0087】
このように、本実施形態では、撮影予定日の全撮影に必要な電子カセッテ10の撮影電力量PX、可搬型X線源70の撮影電力量PY、電気自動車の走行電力量Psを求めると共に、電気自動車のバッテリー残量Ptを取得し、これらに基づいて電子カセッテ10の充電池54及び可搬型X線源70の充電池58の必要個数を各々算出する。これにより、電子カセッテ10及び可搬型X線源70を電気自動車に搭載して個人宅や企業、介護施設等を訪問し、訪問先で撮影を行って病院へ戻る場合でも、電子カセッテ10の充電池54や可搬型X線源70の充電池58の電池切れにより撮影が行えなくなるのを回避することができる。
【0088】
また、バッテリー残量Ptに余裕がある場合には、電子カセッテ10の充電池54又は可搬型X線源70の充電池58を電気自動車のバッテリーから充電することを想定して、電子カセッテ10の充電池54及び可搬型X線源70の充電池58を減らすことができる個数を算出して提示するので、持ち出す電子カセッテ10の充電池54、可搬型X線源70の充電池58を必要最小限の個数にすることができる。
【0089】
また、電気自動車のバッテリー残量Ptを取得し、これが電気自動車の走行に必要な走行電力量Ps未満の場合には警告をするので、走行ルートの途中で電気自動車のバッテリーが残量不足となって撮影が行えなくなる可能性があることを事前に知ることができ、電気自動車のバッテリー残量不足を未然に防ぐことができる。
【0090】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、電気自動車に電子カセッテ10及び可搬型X線源70を搭載して個人宅等を訪問して撮影する場合を想定し、電子カセッテ10の充電池54及び可搬型X線源70の充電池58の必要個数を求める場合について説明したが、放射線画像を撮影するための電子カセッテ10及び可搬型X線源70に限らず、可搬型の医療機器であり且つ充電池によって駆動されるものであれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 電子カセッテ(可搬型医療機器、可搬型放射線撮影装置)
54 充電池
58 充電池
70 可搬型X線源(可搬型医療機器、可搬型放射線源)
102 端末装置
104 RISサーバ
104A RISデータベース
106 撮影システム
108 充電池管理装置
110 病院内ネットワーク
112 放射線発生装置
114 クレードル
116 コンソール
120 コントローラ
122 表示部
124 操作部
126 ハードディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された出発地から可搬型医療機器を使用して回診する回診場所を経由して目的地へ至るまでの電気自動車の予定走行距離に基づいて、当該電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出する走行電力量算出手段と、
前記可搬型医療機器の使用予定情報に基づいて、前記可搬型医療機器の使用に必要な使用電力量を算出する使用電力量算出手段と、
前記電気自動車を駆動する車両バッテリーの車両バッテリー残量を取得する取得手段と、
前記走行電力量算出手段により算出した前記走行電力量、前記使用電力量算出手段により算出した前記使用電力量、及び前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定する決定手段と、
を備えた可搬型医療機器の充電池管理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量が前記走行電力量より多い場合には、その差分の電力量により減らすことができる前記可搬型医療機器の充電池の個数を算出する算出手段を含む
請求項1記載の可搬型医療機器の充電池管理装置。
【請求項3】
前記可搬型医療機器は、可搬型放射線撮影装置及び可搬型放射線源を含み、前記決定手段は、前記可搬型放射線撮影装置を駆動する充電池の必要個数及び前記可搬型放射線源を駆動する充電池の必要個数を各々決定する
請求項2記載の可搬型医療機器の充電池管理装置。
【請求項4】
前記走行電力量算出手段により算出した前記走行電力量、前記使用電力量算出手段により算出した前記使用電力量、及び前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記回診が可能か否かを報知する報知手段
を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の可搬型医療機器の充電池管理装置。
【請求項5】
予め設定された出発地から可搬型医療機器を使用して回診する回診場所を経由して目的地へ至るまでの電気自動車の予定走行距離に基づいて、当該電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出し、
前記可搬型医療機器の使用予定情報に基づいて、前記可搬型医療機器の使用に必要な使用電力量を算出し、
前記電気自動車を駆動する車両バッテリーの車両バッテリー残量を取得し、
算出した前記走行電力量、算出した前記使用電力量、及び取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定する
可搬型医療機器の充電池管理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
予め設定された出発地から可搬型医療機器を使用して回診する回診場所を経由して目的地へ至るまでの電気自動車の予定走行距離に基づいて、当該電気自動車の走行に必要な走行電力量を算出する走行電力量算出手段、
前記可搬型医療機器の使用予定情報に基づいて、前記可搬型医療機器の使用に必要な使用電力量を算出する使用電力量算出手段、
前記電気自動車を駆動する車両バッテリーの車両バッテリー残量を取得する取得手段、
前記走行電力量算出手段により算出した前記走行電力量、前記使用電力量算出手段により算出した前記使用電力量、及び前記取得手段により取得した前記車両バッテリー残量に基づいて、前記可搬型医療機器を駆動する充電池の必要個数を決定する決定手段、
として機能させるための可搬型医療機器の充電池管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251005(P2011−251005A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127064(P2010−127064)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】