説明

含フッ素重合性単量体、含フッ素重合体、レジスト材料及びパターン形成方法

【課題】液浸露光や、液浸のダブルパターンニングプロセスで行われる微細加工に適するレジスト用の含フッ素重合性単量体および含フッ素重合体、それらを使ったレジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素重合性単量体である含フッ素(メタ)アクリレート化合物、これを用いて重合又は共重合された含フッ素重合体、レジスト材料及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のマイクロプロセッサー製造技術の進歩は目覚しく、高度に集積化されたIC上には6億個を超えるトランジスタが形成されている。この急速な進歩は、電子回路パターンの最小線幅の微細化によってなされており、ArFエキシマレーザ(193nm)を用いたリソグラフィーが本格的に導入されつつある。これまで、紫外線やレーザー光(フッ化アルゴン、フッ化クリプトンなどのエキシマレーザ)が使用されてきており、今後はさらに波長の短いEUV(超紫外線)の実用化を目指して研究が進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいては、0.13μm以下のデザインルールの加工が行われてきているが、KrFエキシマレーザ光に使用されていたノボラックやポリビニルフェノール系樹脂は193nmに強い吸収があるためArFレジスト用樹脂としては用いることができない。そこで、透明性向上のために芳香族系から脂肪族系に替え、エッチング耐性を確保するために環状化合物を導入したアクリル系樹脂やシクロオレフィン系樹脂が開発されている(特許文献1〜4)。
【0004】
アクリル系樹脂は製造が容易であり、また、様々な側鎖を有するモノマーが製造されていることから、分子設計の自由度が非常に大きいといった特徴を有している。しかしながら、アルカリ溶解性基として主にカルボキシル基が用いられており、従来のKrFレジストに用いられてきたフェノール性水酸基に比べて酸性度が高く、アルカリ現像液への溶解速度の制御や膨潤によるパターンの乱れを完全に抑えることは困難であった。このような背景のもと、フッ素アルコール系のアルカリ溶解性基を含むモノマーが提案されている(特許文献5〜7)。フッ素アルコール系のモノマーを共重合成分として含む高分子化合物を用いたレジスト材料が、高解像性で膨潤抑止効果に優れ、微細加工を目的とした短波長光源を利用したリソグラフィーに非常に有用であることが報告されている。
【0005】
一方で、ステッパー(縮小投影型露光装置)は縮小投影レンズの性能向上、光学系設計の改良によって解像度も大きく向上してきている。ステッパーに使用されるレンズの性能は、NA(開口数)で表されるが、空気中では0.9程度の値が物理的な限界とされており、現在すでに達成されている。そこで、レンズとウェハーの間の空間を空気よりも屈折率の高い媒体で満たすことによってNAを1.0以上に引き上げる試みがなされており、特に純水を使った液浸方式による露光技術が注目されてきている。
【0006】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、レジスト膜が水と接触することから様々な問題点が指摘されてきた。特に、露光によって膜中に発生した酸や、クエンチャーとして加えたアミン化合物が水に溶解することによるパターン形状の変化、膨潤によるパターン倒れなどが問題となる。そこで、レジスト膜と水とを分離すべく、レジスト上にトップコート層を設けることが有効であるとの報告がなされている。
【0007】
トップコートは、ステッパーのスループット(処理能力)を向上させるためにも重要な役割を担っている。即ち、液浸露光工程をより短時間で処理する為には、レジスト上に水が残らないようにする必要があり、欠陥数とも関連して表面の撥水性を高めることが必要となる。しかしながら、現像時にレジストの露光部と共にトップコート層を溶解させようとした場合、撥水性の高いトップコートは必ずしも現像液溶解性が高いとは限らない。むしろ殆どの場合において撥水性と現像液溶解性は相反する。現在、現像液可溶型のトップコートの撥水性を如何に向上するかが大きな課題となっており、様々な試みがなされている(特許文献8)。
【0008】
また、ArF液浸リソグラフィーを用いて更に微細なパターンを形成させようとする試みも精力的に行われている。その一つがダブルパターンニングによる方法であり、幾つかの方式が提案されている。
【0009】
第一のレジストパターンの性状を変化させて第二のレジスト溶液に溶解しないようにするフリージングの手法を用いたダブルパターンニングプロセスの公知例としては、例えば、特許文献9が挙げられる。この例では、第一のレジストパターンを形成した後に真空紫外線を照射し、フリージングしている。しかしこの方法では、第一のレジストパターンの寸法が真空紫外線照射前後で変化してしまうことが示されており、その対策として真空紫外線照射による寸法変動を考慮に入れて第一のレジストパターンの寸法を補正することが行われている。しかし、実際に半導体を製造する際には、様々な寸法や形が存在するため、補正したマスクをそれぞれ設計することは現実的でない。
【0010】
フリージングプロセスに要求される基本特性として、まず、第一のレジストパターンが第二のレジスト溶液に溶解しないことが重要であり、また、第一のレジストパターンの寸法が変化しないことが必要である。特許文献10には、化学的フリージングプロセス用の表面処理剤およびそれを用いたパターン形成方法が開示されている。しかしながらこの方法は、第一のレジストパターンを形成した後に処理剤を浸透させ、次に浸透した処理剤とレジストパターン中に存在する樹脂との間に化学反応を起こさせ、基板上に残存する余剰の処理剤をリンスにより除去し、レジストパターン中に浸透したリンス液を除去する操作が必要であり、工程数が増加して操作が非常に煩雑になることから、生産性の観点から満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平9−73173号公報
【特許文献2】特開平10−282671号公報
【特許文献3】特開平9−230595号公報
【特許文献4】特開平9−325498号公報
【特許文献5】特開2002−072484号公報
【特許文献6】特開2004−083900号公報
【特許文献7】特開2007−204385号公報
【特許文献8】特開2005−316352号公報
【特許文献9】特開2005−197349号公報
【特許文献10】特開2008−203536号公報
【非特許文献1】2nd Immersion Work Shop, July 11,2003,Resist and Cover MaterialInvestigation for Immersion Lithography)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の背景の下、本発明は、微細なパターン形成を可能とするレジスト樹脂用のモノマー、特に液浸露光や、液浸のダブルパターンニングプロセスで行われる微細加工に適するレジスト樹脂用のモノマーを提供する。また、そのモノマーを使った樹脂からなるレジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行ったところ、重合性基、脂環式構造、環に1個のヘキサフルオロイソプロピル水酸基と特定の数の水酸基を有する(ヘキサフルオロイソプロピル水酸基もしくは環に結合した水酸基の一部又は全部が保護基で保護されてもよい。)モノマーをレジスト用樹脂の共重合成分として用いた場合、露光前には適度な撥水性を示し、露光後には現像液に速やかに溶解することから良好なレジストパターンを形成し得ることを見出した。
【0013】
なお、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、下記の構造で表され、高いフッ素含有量を有し、且つ極性基であるヒドロキシル基を含む。レジストにおいては酸性基として働き、アルカリ現像液に対して溶解性を示す。
【0014】
【化5】

【0015】
すなわち、本発明は、重合性基、六員環もしくは五員環の脂環式構造、六員環の場合は環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基1個および水酸基1個〜4個(ヘキサフルオロイソプロピル水酸基もしくは環に結合した水酸基の一部又は全部が保護基で保護されてもよい。)を有する繰返し構造を、五員環の場合は環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基1個および水酸基1個〜3個(ヘキサフルオロイソプロピル水酸基もしくは環に結合した水酸基の一部又は全部が保護基で保護されてもよい。)を有する繰返し単位を含む新規な含フッ素重合性単量体である含フッ素(メタ)アクリレート化合物、これを用いて重合又は共重合された含フッ素重合体、それを用いたレジスト材料及びパターン形成方法である。本明細書において、「レジスト材料」は露光により現像液に対する溶解性の変化する所謂ベース樹脂に溶剤その他の成分が加えられた組成物であって、「レジスト組成物」または単に「レジスト」ということがあり、また、溶剤を含む場合にはレジスト溶液ということがある。
【0016】
また、本発明のレジスト材料は、ダブルパターンニング法(後述)における第二層目の材料として使用することができ、かかるパターン形成方法を提供する。すなわち、本発明は、
[発明1] 下記一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体。
【0017】
【化6】

【0018】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。]
[発明2]R2およびR3がともに水素原子である発明1に記載の含フッ素重合性単量体。
[発明3] 含フッ素重合性単量体が、以下の一般式(2)〜一般式(4)で表される含フッ素重合体の群より選ばれる発明2に記載の含フッ素重合性単量体。
【0019】
【化7】

【0020】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
[発明4] 下記一般式(5)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする含フッ素重合体。
【0021】
【化8】

【0022】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2またはR3は、それぞれ独立に、水素原子もしくは保護基を表す。]
[発明5]R2およびR3がともに水素原子である発明4に記載の含フッ素重合体。
[発明6] 含フッ素重合体が、以下の一般式(6)〜一般式(8)で表される繰返し単位のいずれかを有する発明5に記載の含フッ素重合体。
【0023】
【化9】

【0024】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
[発明7] 発明4から6のいずれか1項に記載の含フッ素重合体が、さらに酸不安定基または密着性基を有する繰返し単位を含むことを特徴とする発明4から6のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
[発明8] 発明4から7のいずれか1項に記載の含フッ素重合体を含有することを特徴とするレジスト材料。
[発明9] 酸発生剤、塩基性化合物、有機溶剤のうち少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする発明8に記載のレジスト材料。
[発明10] 有機溶剤が、炭素数5〜20のアルコール系溶剤である発明9に記載のレジスト材料。
[発明11] 発明8から10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
[発明12] 波長193nmのArFエキシマレーザを用い、ウェハーと投影レンズの間に水を挿入する液浸リソグラフィー法であることを特徴とする発明11に記載のパターン形成方法。
[発明13] レジスト材料を予めレジストパターンが形成された基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を含むパターン形成方法であって、当該レジスト材料として発明8〜10のいずれか1項に記載のレジスト材料を用いることを特徴とする発明12に記載のパターン形成方法。
[発明14] レジスト材料の溶剤が炭素数5〜20のアルコール系溶剤であることを特徴とする発明13に記載のパターン形成方法。
[発明15]
発明11から発明14のいずれかのパターン形成方法により製造された半導体装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明の含フッ素重合性単量体を用いて重合又は共重合された含フッ素重合体を用いたレジスト材料は、露光前は水に対する適度な撥水性を有し、露光後には現像液に対する速やかな溶解性を示すので、ドライ露光のみならず液浸露光においても焦点深度やマスクエラーファクター、ラインエッジラフネスの点で優れた解像性のパターン形成が可能である。また、本発明のレジスト材料は、一般的なレジスト材料を溶解できない炭素数5〜20のアルコール系溶剤などで溶液化することが可能である。これにより、ダブルパターニングプロセス用の上層レジストとして使用できる。更に、本発明の含フッ素重合性単量体は重合反応性が良好であり、レジスト材料に有用な含フッ素重合体を比較的安価に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の含フッ素重合性単量体は、下記一般式(1)で表される。
【0027】
【化10】

【0028】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。] 一般式(1)において、n=0のときは5員環を、n=1のときは6員環を表す。本発明においては、5員環でも6員環でもとりうるが、入手、コストおよび合成のが容易であるので6員環の方が好ましい。
【0029】
また、(R2O)−の置換基の数mは、1〜(3+n)で表され、5員環場合は、1〜3、6員環の場合は、1〜4をとりうる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物においては、脂環構造を構成する個々の炭素原子に水素原子以外の置換基が同時に2個結合する構造も含みうるが、当該炭素原子に置換基が結合する場合は、当該置換基1個と水素原子が1個ずつ結合した構造が入手容易であるので好ましい。したがって、一般式(1)で表される化合物には、脂環構造を構成するすべての炭素原子に、少なくとも1個の水素原子が結合している構造である含フッ素単量体が好適に用いられる。
【0031】
2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。後述のように、保護基は、水や現像液に対する親和性または撥水性、もしくは溶剤への溶解性を調整するなどの必要性がある場合に有用であるが、通常はR2およびR3はともに水素原子であるものが好適に用いられる。
【0032】
一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体であって、R2およびR3が水素原子であるものを次に具体的に例示する。
【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
上記のように、環に直接結合する水酸基の数は5員環で1〜3、6員環で1〜4の範囲をとりうる。当該水酸基は、現像液への溶解性を促進するのに効果的であるが、数が増えるにしたがって現像時に膨潤を引き起こす可能性が大きくなる。溶解性と膨潤の性能のバランスに依存するところもあるが、当該水酸基の数は1〜2である方が、3以上の場合よりも好ましい。
【0037】
また、エステル基が結合している炭素に隣接する環炭素にヘキサフルオロイソプロピル水酸基が結合した場合は、重合性が低下するため、それ以外の環炭素に結合した構造が好ましい。
【0038】
また、原料の入手、コストおよび合成のし易さの関係で、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基と水酸基は隣接するのが望ましい。
【0039】
以上のことより、上記に例示した化合物の中でも、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)
【0040】
【化14】

【0041】
[式中、R1は一般式(1)と同じ意味]に示される含フッ素重合性単量体のいずれかが好適に用いられる。
【0042】
水や現像液に対する親和性もしくは撥水性または溶剤への溶解性の調整が必要な場合は、保護基を用いことができ、上に例示した一般式(1)で表される、含フッ素重合性単量体であってR2およびR3が水素原子である化合物は、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基または環に結合した水酸基の一部又は全部が保護基で保護されていてもよい(一般式(1)のR2またはR3が保護基である場合に相当する)。また、保護基として、酸不安定性の保護基を用いた場合は、露光時に光酸発生剤の作用によって脱離し、現像液に対する溶解性を向上させることも可能である。
【0043】
保護基としては、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基等を挙げることができる。炭化水素基としては、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示でき、上記官能基の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。また、アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基の鎖状のエーテル基やテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテル基が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。さらに、上記置換基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0044】
一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体の中間体となるヘキサフルオロイソプロピル水酸基を導入された芳香族化合物は、例えば下記非特許文献2に記載の方法により、相当するヒドロキシ置換芳香族化合物とヘキサフルオロアセトンとを反応させて得られる。
「非特許文献2」Basil S.Farah,Everett E.Gilbert,Morton Litt,Julian A.Otto,John P.SibiliaJ.Org.Chem.,1965,30(4),pp 1003-1005
次いで、この中間体に対する環水素添加反応によって対応する脂環式化合物(アルコール体)に誘導し、更にこれを(メタ)アクリル酸またはその反応性誘導体でエステル化することによって合成することができる。
【0045】
一例として、以下に一般式(3)の場合の重合性単量体の製造ルートを例示した。レゾルシノールを原料とし、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を導入後、環水素添加で対応するアルコール体に誘導し、エステル化により製造できる。
【0046】
【化15】

【0047】
環水素添加の方法は特に限定されず、既知の方法を用いればよく、有機溶媒と共にRu/C触媒を用いて水素添加を行う方法が好ましく採用される。
【0048】
また、対応するアルコールからメタクリル酸エステル等の重合性単量体を得る方法としては、特に限定されず、既知のエステル化方法を用いればよい。具体的にアクリル酸誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、トリフルオロメチルアクリル酸クロライド、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、トリフルオロメチルアクリル酸無水物などが例示できる。
【0049】
エステル化において、触媒は用いても用いなくても良いが、適当な反応温度と反応速度を得る目的で触媒を用いることができる。代表的例では、原料としてアクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸などのカルボン酸を用いる場合には酸触媒の存在下で反応することができる。また、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、トリフルオロメチルアクリル酸クロライドなどの酸クロライド、あるいはアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、トリフルオロメチルアクリル酸無水物などの無水物を用いる場合には酸触媒または塩基触媒の存在下で反応することができる。中でも無水物を用いる場合に適度な反応速度が得られることから好適に採用される。
【0050】
前記アクリル酸誘導体の使用量は、原料となる含フッ素アルコール1モルに対して1倍モル以上使用すればよく、反応速度と目的とする含フッ素重合性単量体の収率の観点から1.0倍モルから5倍モルの量が好ましい。更に、1.05倍モルから2倍モルがより好ましい。
【0051】
使用できる酸触媒としてはプロトン酸とルイス酸があり、例示するならば、フッ化水素、硫酸、燐酸、塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などのプロトン酸と、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、塩化第二鉄(FeCl3)、塩化亜鉛、塩化アンチモン、四塩化チタン、四塩化錫、三フッ化ホウ素、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(OC494、Ti(OCH(CH324、Zn(CH3COO)2・2H2Oなどのルイス酸が挙げられる。この中で、プロトン酸を用いた場合に収率よく目的物が得られることから、好ましく採用される。より好ましくは、反応が速やかに進行し、入手も容易なメタンスルホン酸が採用される。
【0052】
酸触媒の量としては、原料となる含フッ素アルコール1モルに対して0.01〜10倍モルの量が使用できる。0.01倍モルより少ない場合には反応速度が遅すぎることと目的の含フッ素重合性単量体の収率が非常に小さいことから現実的ではなく、また10倍モル以上の酸を加えても収率向上の効果は期待できず、副生成物も増加する。より好ましくは基質に対して0.1〜1.5倍モルの酸が使用され、適当な反応速度と良好な収率が達成される。
【0053】
原料として無水物あるいは酸クロライドを用いる場合、反応で発生する酸(カルボン酸あるいは塩化水素)を捕捉するために塩基を用いることが有効である。塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどの無機塩基の他、ピリジン、ルチジン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどの有機塩基を用いることができる。好ましくは、有機塩基が用いられ、特にルチジンが用いられる。
【0054】
用いられる塩基の量としては、含フッ素アルコール1モルに対して、1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルが用いられる。
【0055】
エステル化反応で使用する溶媒としては、反応中安定で原料となる含フッ素アルコールを溶解するものであれば特に制限はない。例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が例示でき、これらを単独で又は2種類以上混合して使用してもよい。
【0056】
エステル化の反応温度は特に限定されないが、通常、室温から200℃の範囲で反応が可能である。反応時間は前述のアクリル酸誘導体、酸触媒、塩基の種類や量、反応温度などによって反応速度が変わることから、これに合わせて適宜変更される。実際には、反応中に反応溶液を逐次分析しながら反応を行い、原料が消費されるまで反応することが可能である。反応後の処理は特に限定されないが、反応溶液を水又は氷水に加えた後、有機溶媒による抽出操作で目的物を取り出す方法や、蒸留によって目的物を取り出す方法が可能である。
【0057】
次に、本発明による含フッ素重合体について説明する。本発明の含フッ素重合体とは、一般式(5)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする重合体のことであり、前述の一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体の有する二重結合が開裂して単独で、またはそれ以外の単量体と共重合することにより製造できる。
【0058】
【化16】

【0059】
[式中、R1、n、m、R2またはR3は、一般式(1)と同じ意味。]
一般式(5)で表される繰り返し単位は、一般式(1)で表される含フッ素単量体の重合性二重結合が開裂して形成され、その他の構造は維持される。したがって、R1、R2、R3、m、nについての説明およびそれらの組み合わせの具体例は一般式(1)で表される含フッ素単量体についての開示がそのまま適用できる。
【0060】
前述の含フッ素重合性単量体を用いて得られた繰り返し単位の中でも、一般式(6)、(7)、(8)で示される繰返し単位を有する含フッ素重合体の少なくとも一つを含む含フッ素重合体が、特に好適に用いられる。
【0061】
【化17】

【0062】
[式中、R1は一般式(1)と同じ意味。]
本発明の含フッ素重合性単量体と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルから選ばれた一種類以上のが挙げられる。
【0063】
上記、共重合可能なアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、エステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸又はメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレート又はメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。さらにα位にシアノ基を有する前記アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルや、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0064】
また、上記の含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子又はフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、又はエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が採用される。
【0065】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレートなどが挙げられる。
【0066】
また、共重合で使用できるヘキサフルオロイソプロピル水酸基を有する重合性単量体を具体的に例示するならば、下記に示す化合物をあげることができる。
【0067】
【化18】

【0068】
これらの式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。また、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、その一部又は全部が前述の保護基で保護されていても良い。
【0069】
さらに、本発明に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としては、スチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどが使用できる。より具体的には、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビストリフルオロメチルスチレンなどのフッ素原子又はトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレン、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基やその水酸基を保護した官能基で芳香環の水素を置換したスチレンが使用できる。また、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが使用できる。
【0070】
また、共重合に使用できるビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシル基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルなどが使用できる。また、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。
【0071】
なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やその他の重合性不飽和結合を含有した化合物も本発明で特に制限なく使用することが可能である。
【0072】
上記、共重合で使用できるオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0073】
上記、共重合で使用できるノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は一核又は複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル又は含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。
【0074】
本発明の含フッ素重合体に酸不安定基を導入する場合、酸不安定基を有する重合性単量体を使用することができる。酸不安定基を有する単量体としては、前述の一般式(1)〜(4)で示した含フッ素重合性単量体のヘキサフルオロイソプロピル水酸基または環に結合した水酸基を、保護基として酸不安定性の保護基で保護したものを用いることも可能であるが、一般的には、それ以外の酸不安定基を有する重合性単量体と共重合させる方法が好適に用いられる。
【0075】
さらに、酸不安定基を有する重合体またはレジスト材料を得る別の方法として、先に得た重合体に後から高分子反応によって酸不安定基を導入する方法や、酸不安定基の機能を有する単量体や重合体を混合することも可能である。
【0076】
酸不安定基を使用する目的は、ポジ型感光性を付与し、波長300nm以下の紫外線、エキシマレーザ、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ現像液への溶解性を発現させることである。
【0077】
本発明に使用できる、一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体以外の酸不安定基を有する重合性単量体は、酸不安定基が光酸発生剤から発生した酸により加水分解して脱離するものであれば特に制限なく使用でき、重合性基としてはアルケニル基またはシクロアルケニル基であればよく、ビニル基、1−メチルビニル基または1−トリフルオロメチルビニルビニル基であるものが好ましい。例示するならば、下記の一般式(9)〜(11)に示す基を有する単量体が好ましく使用できる。
【0078】
【化19】

【0079】
ここで、R4、R5、R6、R7、R8は同じであっても良い炭素数1〜25の直鎖状、分岐状、または、環状のアルキル基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ヒドロキシル基を含んでもよい。R4、R5、R6のうち2つは結合して環を形成してもよい。
【0080】
一般式(9)〜(11)に示す基の具体例として、特に限定されないが下記に示すものを例示することができる。ここで破線は結合手である。
【0081】
【化20】

【0082】
【化21】

【0083】
本発明の含フッ素重合体において、基板との密着性の向上を目的にラクトン構造を含むユニット(密着性基)を導入することができる。かかるユニットの導入においては、ラクトン構造含有の重合性単量体が好適に用いられる。かかるラクトン構造としては、γ−ブチロラクトンやメバロニックラクトンから水素原子1つを除いた基などの単環式のラクトン構造、ノルボルナンラクトンから水素原子1つを除いた基などの多環式のラクトン構造などを例示することができる。このようなラクトン構造基のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを共重合して、ラクトン構造をレジストに含有させることによって、基板との密着性を向上させるばかりでなく、現像液との親和性を高めたりすることが可能である。
【0084】
なお、以上の本発明で使用できる共重合可能な単量体は、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0085】
本発明の含フッ素重合体は、複数の単量体からなる繰り返し単位で構成されていてもよい。その割合は特に制限なく設定されるが、例えば以下に示す範囲は好ましく採用される。
【0086】
本発明の含フッ素重合体は、一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体からなる繰り返し単位を1〜100mol%、より好ましくは5〜90mol%含有する。また、本発明の含フッ素重合体は、酸不安定基を有する繰り返し単位を1〜100mol%、好ましくは5〜80mol%、より好ましくは10〜60mol%含有することができる。さらに、他の重合性単量体により酸不安定基を有しない繰り返し単位を含むこともでき、全繰り返し単位の1〜80mol%、より好ましくは5〜50mol%含有することもできる。一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体が開裂して形成した繰り返し単位が1mol%よりも小さい場合には、本発明の単量体を用いたことによる明確な効果が期待できない。また、酸不安定性基を有する繰り返し単位が1mol%よりも小さい場合には、露光によるアルカリ現像液に対する溶解性の変化が小さすぎてパターニングのためのコントラストが期待できない。このときに、酸不安定基を有する繰り返し単位として形成に一般式(1)〜(4)で表される単量体ではない一般的な単量体を用いてもよいし、一般式(1)〜(4)で表される単量体を酸不安定基を有する単量体に誘導したものを用いてもよい。あるいは、重合後に酸不安定基を高分子反応により導入したものであってもよい。酸不安定基を含まない他の重合性単量体に由来する繰り返し単位は、含フッ素重合体の有機溶媒への溶解性、膜の耐エッチング性、機械的強度などを改良するために用いるが、1mol%未満ではその効果が発現せず、80mol%を超えると一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体が開裂して形成した繰り返し単位の含有量が少なくなりその効果が十分に発揮できないので好ましくない。
【0087】
本発明の含フッ素重合体の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合などを使用することも可能である。
【0088】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0089】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0090】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0091】
一方、開環メタセシス重合は、共触媒存在下、IV、V、VI、VII属の遷移金属触媒を用いれば良く、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0092】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例としてTi系、V系、Mo系、W系触媒が挙げられ、特に、塩化チタン(IV)、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、塩化モリブデン(VI)、塩化タングステン(VI)などが好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0093】
共触媒としては、アルキルアルミニウム、アルキルすずなどが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などのアルミニウム系や、テトラ−n−ブチルすず、テトラフェニルすず、トリフェニルクロロすずなどが例示できる。共触媒量は、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0094】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければ良く、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−30〜60℃が好ましい。
【0095】
ビニレン重合は、共触媒存在下、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金などのVIII属の遷移金属触媒や、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステンなどのIVBからVIB属の金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0096】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例として特に、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトナート、フェロセン、ニッケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルラクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナートジハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトナートテトラハイドレート、塩化ロジウム(III)、ロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライド、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)ビス(アセチルアセトナート)、パラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムビス(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキサイド)ジクロライド、プラチニウムビス(トリエチルホスフィン)ハイドロブロマイドなどのVIII属の遷移金属類や、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、トリメトキシ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのIVBからVIB属の遷移金属類が好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0097】
共触媒としては、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウムなどが挙げられ、特に、メチルアルミノキサン(MAO)や、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などが例示できる。共触媒量は、メチルアルミノキサンの場合、Al換算で50から500当量、その他アルキルアルミニウムの場合、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0098】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければ良く、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ノナノール、オクタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールなどのアルコール系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグリム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル(EL)ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドンなどが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−40〜80℃が好ましい。
【0099】
このようにして得られる本発明にかかる含フッ素重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0100】
本発明の含フッ素重合体の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。分子量分散は1〜4であり、1〜2.5が好ましい。
【0101】
レジストとしての使用において、分子量により、溶解性およびキャスティングの特性が変わり得る。分子量が高いポリマーは現像液への溶解速度が遅くなり、分子量が低い場合は溶解速度が速くなる可能性があるが、分子量はこの技術分野の常識に基づいて重合条件を適宜調整することにより制御可能である。
(レジスト配合について)
本発明の含フッ素重合体は、特に光増感ポジ型レジスト材料として好適に用いられ、本発明は、上記含フッ素重合体を含有するレジスト材料、とりわけポジ型レジスト材料を提供する。この場合、レジスト材料としては、(A)ベース樹脂として上記含フッ素重合体(B)光酸発生剤(C)塩基性化合物(D)溶剤を含有するものが望ましい。また、必要により(E)界面活性剤を含有してもよい。
【0102】
(A)光酸発生剤 本発明のレジスト材料に用いる光酸発生剤には、特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ヨードニウムスルホネート、スルホニウムスルホネート等のオニウムスルホネート、スルホン酸エステル、N−イミドスルホネート、N−オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネート、ピロガロールのトリスメタンスルホネート等をあげることができる。
【0103】
これらの光酸発生剤から光の作用で発生する酸は、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、部分的にまたは完全にフッ素化されたアリールスルホン酸、アルカンスルホン酸等であるが、部分的にまたは完全にフッ素化されたアルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤は、脱保護しにくい保護基に対しても十分な酸強度を有することから有効である。具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホナート等があげられる。
【0104】
(C)塩基性化合物 本発明のレジスト材料に塩基性化合物を配合することができる。当該塩基性化合物は、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制する働きがあり、これにより、酸拡散距離を調整してレジストパターン形状の改善や、引き置き時の安定性を向上する効果が期待される。塩基性化合物を例示するならば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、脂肪族多環式アミン等があげられる。第二級や第3級の脂肪族アミンが好ましく、アルキルアルコールアミンがより好ましく採用される。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデカニルアミン、トリドデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデカニルアミン、ジドデシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デカニルアミン、ドデシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジオクタノールアミン、トリオクタノールアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ビピリジン、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、インドール、ヘキサメチレンテトラミン等があげられる。これらは単独でも2種以上組み合わせてもよい。また、その配合量は、好ましくは重合体100重量部に対して0.001〜2重量部、より好ましくは重合体100重量部に対して0.01〜1重量部である。配合量が0.001重量部よりも少ないと添加剤としての効果が十分得られず、2重量部を超えると解像性が感度が低下する場合がある。(D)溶剤 本発明のレジスト材料に用いる溶剤としては、配合する各成分を溶解して均一な溶液にできればよく、従来のレジスト用溶剤の中から選択して用いることができる。また、2種類以上の溶剤を混合して用いることも可能である。溶剤を具体的に例示するならば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、n−ヘキシサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等の多価アルコールおよびその誘導体、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、アニソール、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール等のフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。
【0105】
これらの中でも特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)が好ましく採用される。
【0106】
レジストに配合する溶剤の量は特に限定されないが、好ましくはレジストの固形分濃度が3〜25%、より好ましくは5〜15%となる様に用いられる。レジストの固形分濃度を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することが可能である。
【0107】
さらに本発明の含フッ素重合体は、幅広い溶剤に対する溶解性に優れており、上記のアルコール系溶剤の中でも、炭素数5〜20のアルコール系溶剤に溶解することは特筆すべきことである。かかるアルコールの具体例としては、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、n−ヘキシサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0108】
汎用的に用いられているレジスト材料は、このような炭素原子5以上有するアルコール系溶剤には溶解しないことを考え合わせると、本発明のレジスト材料は通常のレジストパターン形成方法において幅広い溶剤の使用を可能にするばかりでなく、後述するダブルパターンニング法によるパターン形成方法のレジスト材料として有用であり、新たな用途に展開できる。
【0109】
(E)界面活性剤 本発明のレジスト組成物においては、必要により界面活性剤を添加してもよい。かかる界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤、あるいはフッ素原子とケイ素原子の両方を有する界面活性剤のいずれか、あるいは2種以上を含有することができる。
【0110】
(パターン形成方法)
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成する方法は、基板上に該レジスト材料を塗布する工程、加熱処理後にフォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程、加熱処理後にアルカリ現像液で現像してパターンを形成する工程から成っており、何れも公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。
【0111】
例えば、まず、シリコンウェハー上にスピンコートの手法によってレジスト材料を塗布して薄膜を形成し、これをホットプレート上で60〜200℃、10秒〜10分間、好ましくは80〜150℃、30秒〜2分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを設置し、紫外線、エキシマレーザ、X線等の高エネルギー線もしくは電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射した後、加熱処理、すなわちホットプレート上で60〜150℃、10秒〜5分間、好ましくは80〜130℃、30秒〜3分間ポストエクスポーザーベーク(PEB)を行う。さらに、0.1〜5%、好ましくは2〜3%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、10秒〜3分間、好ましくは30秒〜2分間、dip法、パドル法、スプレー法等の既存の方法で現像することによって目的のパターンが形成される。なお、上記ポストエクスポーザーベーク(PEB)は、必要に応じて行えばよい。
【0112】
本発明で用いられる基板は、シリコンウェハーの他にも金属やガラスの基板を用いることが可能である。また、基板上には有機系あるいは無機系の膜が設けられていてもよい。例えば、反射防止膜、多層レジストの下層があってもよく、パターンが形成されていても良い。
【0113】
なお、本発明のレジスト材料は、露光に用いる波長は限定されないが、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ、EUV、EB、X線による微細パターニングに好適に使用でき、特には、ArFエキシマレーザに好ましく採用される。
【0114】
また、本発明のレジスト材料は、液浸露光用のレジスト材料として好適に使用できる。すなわち、レジストとレンズの間を水等の空気よりも屈折率の大きい媒体で満たして露光する方法において、耐水性が高く、適度な撥水性を有しながら現像液親和性があることから微細なパターン形成が可能である。液浸露光によるフォトリソグラフィーにおいては、レジストの保護膜であるトップコートを用いる場合と用いない場合があるが、本発明のレジスト材料はいずれの場合にも組成と配合を調整することによって適用することができる。
【0115】
液浸媒体としては、水の他にもフッ素系溶剤、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤、含硫黄溶剤等があげられ、本発明のレジスト材料は広く適用できる。
(ダブルパターンニング法によるパターン形成方法に関して)
本発明のレジスト材料は、ダブルパターンニング法の2層目のレジスト材料として使用することが可能である。本発明の別の態様として、ダブルパターニング法によるパターン形成方法を提示する。
【0116】
なお、本明細書でいう「第一のレジスト膜」とは、以下に示すパターン形成プロセスにおいて、まず最初に形成されるレジスト膜をいい、露光、現像等の処理によりそのレジスト膜に形成されるレジストパターンを「第一のレジストパターン」という。同様に、「第二のレジスト膜」とは、「第一のレジストパターン」の表面に形成される2層目のレジスト膜であり、「第二のレジストパターン」とはそのレジスト膜に形成されるレジストパターンを表す用語である。
【0117】
また、後述する説明において、第一のレジスト膜を与えるレジスト材料を便宜上「第一のレジスト材料」といい、第二のレジスト膜を与えるレジスト材料を便宜上「第二のレジスト材料」ということもある。
【0118】
ダブルパターンニング法の一形態として、シリコンウェハ上に形成した第一のレジスト膜を露光、熱処理後に現像してパターンを形成後、次いでその上に第二のレジスト膜を形成し、第一のレジスト膜とは異なるパターンで第二のレジスト膜を露光し、次いでに現像処理する方法が挙げられる。この操作により、従来のレジストパターンよりも微細なパターンを形成することができる。なお、第二のレジスト膜の塗布前に、第一のレジスト膜に形成したパターンの保持を目的にフリージング処理をすることもある。
【0119】
以下にダブルパターンニング法によるパターン形成方法について、さらに説明する。なお、各工程の塗布、熱処理、露光、現像プロセスについては、前述の「パターン形成方法」と同様の手法で行うことができる。
【0120】
まず、第一のレジスト材料を用い、スピンコート法によりシリコンウェハに塗布後、加熱処理をすることにより第一のレジスト膜を形成する。次いで、フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線の照射による露光、現像処理をすることにより第一のレジスト膜に第一のレジストパターンが形成される。
【0121】
次に、第一のレジストパターン上に、溶媒に溶解した第二のレジスト材料をスピンコート法により塗布後、加熱処理をして第二のレジスト膜を形成する。このとき、前記溶剤は第一のレジストパターンを侵さないことが要求される。
【0122】
さらに、上記第二のレジスト膜にフォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する。このとき、第一のレジスト膜とは異なるパターンのフォトマスクを使用することにより、微細なパターン形成のための露光がなされる。
【0123】
その後、必要に応じて加熱処理(ポストエクスポーザーベーク;PEB)を行い、次いで現像液で現像するプロセスを経て第二のレジストパターンが形成される。現像液としては、上記のようにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液が好適に用いられる。
【0124】
上記のダブルパターニング法によるパターン形成方法においては、第一のレジスト材料、および溶剤、第二のレジスト材料および溶剤の組合せについて、最適化を図る必要がある。
【0125】
本発明のダブルパターニングによるパターン形成方法は、本発明の特定の繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むレジスト材料を特定の溶剤を用いて調製して第二のレジスト材料として使用することを提唱するものであるが、以下に適当な組合せについて説明する。
【0126】
本発明のダブルパターニング法によるパターン形成方法においては、第二のレジスト材料に用いる溶剤は第一のレジストパターンを侵さない溶剤であれば特に限定されないが、第一のレジスト組成物として、汎用のレジスト組成物を用いた場合は、炭素数5〜20のアルコール系溶媒を好適に用いることができる。
【0127】
ここでいう汎用のレジスト組成物とは、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基等の特別なユニットを導入した繰返し単位を含むようなレジスト樹脂ではなく、カルボン酸等の溶解基をアダマンタン環、シクロペンタン環等の脂環式炭化水素系のユニットで保護した繰返し単位を有する樹脂を用いたレジスト組成物をいい、フッ素原子を含んでいなくてもよい。そのようなレジスト組成物として、例えば、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート(MA−HAD)、エチルアダマンチルメタクリレート(MA−EAD)、γブチロラクトンメタクリレート(MA−GBL)よりなる共重合体を成分とするレジスト組成物が好適に用いられる。このような共重合体は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)のような多価アルコール誘導体、または乳酸エチル(EL)等のエステル類には可溶であるものの、炭素数5〜20のアルコール系溶媒には不溶であり、例えば、炭素数6の4−メチル−2−ペンタノールには不溶である(参考例2)。
【0128】
一方、前述のように本発明の含フッ素重合体は、幅広い溶剤に対する溶解性に優れており、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)等の炭素数5〜20のアルコール系溶剤に可溶である。
【0129】
上記炭素数5〜20のアルコール系溶剤としては、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、n−ヘキシサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。特にtert−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノールが好ましい。
【0130】
すなわち、本発明の含フッ素重合体を炭素数5〜20のアルコール系溶剤を用いて調製したレジスト組成物は、ダブルパターンニング法の二層目に塗布するレジスト組成物(上記、第二のレジスト組成物)として有用である。
【0131】
上記ダブルパターンニング法において、基板として第一のレジスト材料を予め塗布してパターン形成したものを使用することも可能である。この場合、その後に続くプロセスは上記の第二レジスト材料を塗布するプロセス以降の操作を行えばよく、予めレジストパターンが形成された基板上にレジスト材料を塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を行うことにより、パターンが形成できる。このとき使用するレジスト材料としては本発明のレジスト材料を用いることができ、当該レジスト材料を調製する際の溶剤として、上記の炭素数5〜20のアルコール系溶剤が好適に用いられる。なお、ここでいう予めパターンを形成してある基板とは、必ずしも現像したものである必要はなく、フリージング処理等でパターンの保持がなされていればよい。
【0132】
本発明のパターン形成方法によりデバイス(半導体装置)を製造することができる。デバイスとしては、特に限定されないが、シリコンウェハー、化合物半導体基板、絶縁性基板などに形成されるCPU、SRAM、DRAMなどの微細加工により製造される半導体装置が挙げれる。
【実施例】
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[単量体合成例1] 化合物−4(MA3−4OH)の合成
(1)化合物−2: 1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンの合成
【0134】
【化22】

【0135】
攪拌機および温度計を備えた内容積2,000mlのSUS316製耐圧反応器に、ハイドロキノン(化合物−1)200g(1.82mol)、p−トルエンスルホン酸17.3g(0.091mol)、トルエン600mlを入れ、反応器を閉止した。次に、真空ポンプで反応器を脱気した後、攪拌しながら1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロアセトン332g(2.00mol)を導入した。反応器を昇温し、100℃で30時間攪拌を続けた。
【0136】
反応終了後、内容物を抜き出し、ジイソプロピルエーテル400mlおよび水400mlを加えて攪拌した。静置して有機層を分離し、飽和食塩水200mlで2回洗浄した。得られた溶液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒800mlを加えて80℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシベンゼン(化合物−2)370gを得た。収率72%。
1H−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:TMS);δ(ppm)6.82−7.05(3H,m),8.87(3H,bs)
19F−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−75.05 (6F,s)
(2)化合物−3:(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシシクロヘキサンの合成
【0137】
【化23】

【0138】
攪拌機および温度計を備えた内容積2,000mlのSUS316製耐圧反応器に、ジイソプロピルエーテルを800ml、化合物−2を350g(1.27mol)、5%Ru/C(50%含水品、エヌ・イーケムキャット製)を17.5g入れ、反応器を閉止した。攪拌を開始し、反応器内を水素で置換した後、水素圧を3.0MPaとした。反応器を昇温し、130℃ で20時間攪拌を続けた。
【0139】
反応終了後、内容物を抜き出し、セライトを使用して触媒を濾別した。得られた濾液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒800mlを加えて80℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシシクロヘキサン(化合物−3)を283gを得た。収率79%。化合物−3は、主に2種類の異性体の混合物(化合物−3A:化合物−3B=64:36)として得られた。
化合物−3A:
1H−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:TMS);δ(ppm)1.20−2.80(7H,m),3.82(1H,s),4.17(1H,s),4.61(1H,s),5.20(1H,s),7.29(1H,s) 19F−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−71.25 (3F,q,J=12Hz),−73.86 (3F,q,J=12Hz)
化合物−3B:
1H−NMR(溶媒:重アセトン, 基準物質:TMS);δ(ppm)1.20−2.80(7H,m),3.63(1H,s),3.95(1H,s),4.54(1H,s),5.24(1H,s),7.29(1H,s)
19F−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−71.25 (3F,q,J=12Hz),−73.86 (3F,q,J=12Hz)
(3)化合物−4(MA3−4OH):(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−5−イル メタクリレートの合成
【0140】
【化24】

【0141】
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた3,000mlの四つ口フラスコに、化合物−3を270g(0.96mol)、トルエン(1,200ml)、メタンスルホン酸18.4g(0.191mol)、メタクリル酸無水物155g(1.01mol)を加え、70℃で4時間攪拌を続けた。
【0142】
反応終了後、反応液を抜き出し、ジイソプロピルエーテルを800ml加えて重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。得られた溶液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒600mlを加えて70℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−5−イル メタクリレート(化合物−4;MA3−4OH、113g)を得た。収率34%。
1H−NMR(溶媒:CDCl3,基準物質:TMS);δ(ppm)1.95(3H,s),1.55−2.60(8H,m),4.71(1H,s),5.27(1H,s),5.58(1H,s),5.94(1H,s),6.08(1H,s).
19F−NMR(溶媒:CDCl3,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−72.42(3F,q,J=12Hz),−74.72(3F,q,J=12Hz)
[単量体合成例2] 化合物−8(MA4−3OH)の合成
(1)化合物−6:1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシベンゼンの合成
【0143】
【化25】

【0144】
化合物−5(レゾルシノール)を原料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロアセトンと反応させることにより、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシベンゼン(化合物−6)を合成した。なお、合成においては、下記の非特許文献2に記載の方法で行った。
「非特許文献2」Basil S.Farah,Everett E.Gilbert,Morton Litt,Julian A.Otto,John P.SibiliaJ.Org.Chem.,1965,30(4),pp1003-1005
(2)化合物−7: 1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシシクロヘキサンの合成
【0145】
【化26】

【0146】
攪拌機および温度計を備えた内容積2,000mlのSUS316製耐圧反応器に、ジイソプロピルエーテルを800ml、化合物−6を350g(1.27mol)、5%Ru/C(50%含水品、エヌ・イーケムキャット製)を17.5g入れ、反応器を閉止した。攪拌を開始し、反応器内を水素で置換した後、水素圧を3.0MPaとした。反応器を昇温し、130℃で20時間攪拌を続けた。
【0147】
反応終了後、内容物を抜き出し、セライトを使用して触媒を濾別した。得られた濾液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒800mlを加えて80℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシシクロヘキサン(化合物−7)を315gを得た。収率88%。
【0148】
(3)化合物−8(MA4−3OH): 1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−4−イル メタクリレートの合成
【0149】
【化27】

【0150】
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた3,000mlの四つ口フラスコに、化合物−7を270g(0.96mol)、トルエン(1,200ml)、メタンスルホン酸18.4g(0.191mol)、メタクリル酸無水物155g(1.01mol)を加え、70℃で4時間攪拌を続けた。
【0151】
反応終了後、反応液を抜き出し、ジイソプロピルエーテルを800ml加えて重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。得られた溶液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒600mlを加えて70℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−4−イル メタクリレート(化合物−8;MA4−3OH)を131gを得た。収率39%。
1H−NMR(溶媒:CDCl3,基準物質:TMS);δ(ppm)1.98(3H,s),1.65−2.29(7H,m),3.53(1H,bs),4.68(1H,s),5.29(1H,s),5.66(1H,s),6.07(1H,s),6.50(1H,bs).
19F−NMR(溶媒:CDCl3 ,基準物質:C66);δ(ppm)87.12 (3F,q,J=11.3Hz),89.70 (3F,q,J=11.3Hz)
IR(ATR法):ν=3387,1685,1269,1200,1151,1136,1107,1095,979,952cm-1
GC−MS(FI+法):m/e 350(M+
[重合体合成例1] 重合体−1の合成
重合体の分子量(数平均分子量Mn)と分子量分散(Mnと重量平均分子量Mwの比Mw/Mn)は、東ソー製HLC−8320GPCを使用し、東ソー製ALPHA−MカラムとALPHA−2500カラムを1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定した。検出器は屈折率差検出器を用いた。結果を表1に示した。また、重合体の組成は1H−NMRおよび19F−NMRにより決定し、結果は表1の「組成(繰り返し単位)」の欄に示した。他の重合体において同じ。
【0152】
【化28】

【0153】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン82.8gへ化合物−4(MA3−4OH)を17.5g、メタクリル酸1−エチル−1−シクロペンタン(MA−ECp)を10.9g、5−メタクリロリロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(MNLA)を13.0gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.67g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.7g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を620.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い40.0gの白色固体(重合体−1)を得た。GPC測定結果;Mn=8,500、Mw/Mn=2.1

[重合体合成例2] 重合体−2の合成
【0154】
【化29】

【0155】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン82.2gへ化合物−4(MA3−4OH)を17.5g、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル(MA−MAD)を13.7g、メタクリル酸γ−ブチロラクトン−2−イル(MA−GBL)を9.9gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.67g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.6g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を620.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い38.0gの白色固体(重合体−2)を得た。
GPC測定結果;Mn=7,800、Mw/Mn=2.1
[重合体合成例3] 重合体−3の合成
【0156】
【化30】

【0157】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン64.6gへ化合物−8(MA−4−3OH)を25.1g 、MA−ECpを7.2gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.45g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.3g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を500.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い23.0gの白色固体(重合体−3)を得た。
GPC測定結果;Mn=11,200、Mw/Mn=2.2
[重合体比較合成例1] 比較重合体−1の合成
重合体合成例1の化合物−4(MA3−4OH)の変わりにMA−HADを用い、比較重合体−1を合成した。MA−HADはヘキサフルオロイソプロピル水酸基を含まない。
【0158】
【化31】

【0159】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン71.3gへメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(MA−HAD)を11.8g 、MA−ECpを10.9g、MNLAを13.0gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.67g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.4g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を620.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い33.0gの白色固体(比較重合体ー1)を得た。
GPC測定結果;Mn=8,000、Mw/Mn=2.1
[重合体比較合成例2] 比較重合体−2の合成
重合体合成例1の化合物−4(MA3−4OH)の代わりに、化合物−9(MA4)を用いて比較重合体−2を合成した。化合物−9は環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基を1個有するが、水酸基は結合していない。
【0160】
【化32】

【0161】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン24.4gへ1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)シクロヘクス−4−イル メタクリレート(化合物−9;MA−4と略すこともある)を5.0g、MA−ECpを3.3g、MNLAを3.9gを5.0gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.20g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を0.49g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を180.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い12.0gの白色固体(比較重合体−2)を得た。
GPC測定結果;Mn=10,400、Mw/Mn=2.2
[重合体比較合成例3] 比較重合体−3の合成
重合体合成例1の化合物−4(MA3−4OH)の代わりに、化合物−10(MA35)を用いて比較重合体−3を合成した。化合物−10は環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基を2個有するが、水酸基は結合していない。
【0162】
【化33】

【0163】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン(溶媒)97.7gへ1,3−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2-ヒドロキシ−2プロピル)シクロヘキシ−4−イルメタクリレート(化合物−10:MA35)を25.0g 、MA−ECpを10.9g、MNLAを13.0gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.67g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を2.0g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を620.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い44.0gの白色固体(比較重合体−3)を得た。
GPC測定結果;Mn=9,300、Mw/Mn=1.8
[重合体参考合成例1] 参考重合体1の合成: 汎用レジスト重合体の合成
汎用レジスト重合体として、下記のモノマーを参考重合体1を合成した。
【0164】
【化34】

【0165】
ガラス製フラスコ中にて、溶媒の2−ブタノン65.8gへ、モノマーとしてメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル(MA−EAD)を10.8g、MA−GBLを10.1g、MA−HADを12.0g、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.54g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.35g添加後、撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を500.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い29.6gの白色固体(レジスト用重合体)を得た(収率90%)。
GPC測定結果;Mn=11,500、Mw/Mn=2.1
【0166】
【表1】

【0167】
以下に、レジスト材料としての評価を示す。
【0168】
[実施例1〜4、比較例1〜3、参考例1]
・レジスト配合
重合体合成例1〜3、重合体比較合成例1〜3、および重合体参考合成例で合成した重合体を用い、それぞれに光酸発生剤、塩基性化合物、溶剤を表2に示す割合で配合してレジスト溶液(レジスト−1〜4、比較レジスト−1〜3、参考レジスト−1)を調製した。
【0169】
レジスト膜は、調製した各レジスト溶液を0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、反射防止膜用溶液(日産化学工業製ARC29A、78nm)を塗布した後200℃で60秒間焼成して乾燥した表面処理シリコンウェハー上にスピナーを用いて回転数1,500rpmで塗布し、次いで、ホットプレート上で100℃で90秒間乾燥して形成した。
【0170】
・接触角測定
得られたシリコンウェハー上の各レジスト膜は、接触角計(協和界面科学社製)を用いて水滴の接触角を測定した。結果を表2に示した。
【0171】
含フッ素重合体を配合したレジスト−1〜4、比較レジスト−2および比較レジスト−3から得られたレジスト膜は、比較レジスト−1から得られたレジスト膜よりも接触角が高いことが示された。比較レジスト−1に含まれる重合体以外はヘキサフルオロイソプロピル水酸基を含有しており、かかる含フッ素重合体を配合することによる撥水性の向上は、液浸露光装置によるリソグラフィーにおいて、レジストへの水の浸入を防いでウォーターマーク欠陥の発生を抑制する。
【0172】
【表2】

【0173】
[実施例5〜8、比較例4〜6、参考例2]
・現像液溶解性試験
前述と同様に各レジストを塗布してレジスト膜を形成したシリコンウェハーを、室温で60秒間アルカリ現像液(2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)に浸漬し溶解性を試験した。樹脂の溶解性は、浸漬後の膜の残存を光干渉型の膜厚計で測定することによって判定した。結果を表3に示した。膜が完全に消失した場合を「可溶」、一部残存した場合を「一部残存」、殆ど変化が見られない場合を「不溶」とした。
【0174】
レジスト−1〜4、および比較レジスト−1〜3は、いずれも未露光の状態ではアルカリ現像液に不溶であり、露光後は可溶となった。このことから、試験したレジスト全てが感光性樹脂としての溶解コントラストを有していることが示された。
【0175】
・露光解像試験
前述と同様にレジストを塗布してレジスト膜を形成したシリコンウェハーを、100℃で60秒間プリベークを行った後、フォトマスクを介して193nmで露光した。露光後のウェハーを回転させながら純水を2分間滴下した。その後、120℃で60秒間ポストエクスポーザーベークを行い、アルカリ現像液で現像した。
【0176】
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、解像性の評価を行った。結果を表3に示した。
【0177】
レジスト−1〜4を用いた実施例5〜8の場合には、矩形形状のパターンが形成され、良好な解像性を示した。これに対して、比較レジスト−1を用いた比較例4では膨潤によると思われるライン同士の癒着が発生して乱れた形状のパターンとなり、比較レジスト−2を用いた比較例5では溶解性不良とみられる頭はり形状で残渣のあるパターンが得られ、比較レジスト−3を用いた比較例6では溶解性過剰とみられる未露光部の膜べりと、頭が丸くなった形状のパターンが観測された。
【0178】
また、非フッ素樹脂の汎用レジストから調製した参考レジスト−1を用いた参考例2では、頭はりが強くパターン形成不良であった。
【0179】
【表3】

【0180】
・4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)への溶剤溶解性試験
前述の各レジストを塗布してレジスト膜を形成したシリコンウェハーを4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)に室温で60秒間浸漬し溶解性を試験したところ、レジスト−1〜4、および比較レジスト−3が可溶性を示した。特に含フッ素重合体のフッ素含有量が多いレジスト3および4および比較レジスト3で顕著な溶解性が観測された。結果を表3に示した。膜が完全に消失した場合を「可溶」、一部残存した場合を「一部残存」、殆ど変化が見られない場合を「不溶」とした。
【0181】
一方、参考例1に示した汎用レジスト組成物(MA−EAD/MA−GBL/MA−HAD系)で形成したレジスト膜(参考レジスト−1)について、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)への溶剤溶解性試験を行ったところ、不溶であることが判った。
【0182】
これらの実験結果より、第一のレジスト膜にパターン形成後に第二のレジスト膜を塗布して露光処理するダブルパターニングにおいて、例えば第一のレジスト膜に上記汎用レジスト組成物を用いた場合、第二のレジスト膜形成用のレジスト材料として、レジスト1〜4および比較レジスト−3で使用した含フッ素重合体をMIBCに溶解して調製したレジスト材料を使用できることが示唆された。
【0183】
すなわち、第二のレジスト材料に用いる溶媒(この場合、MIBC)は、第一のレジスト膜に形成されたレジストパターンを侵さないので、当該第一のレジストパターンに影響を与えることなく第二のレジスト膜を形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の含フッ素重合体を使ったレジスト材料は、ドライ露光のみならず液浸露光においても焦点深度やマスクエラーファクター、ラインエッジラフネスの点で優れた解像性のパターン形成が可能である。また、本発明のレジスト材料は、ダブルパターニングプロセス用の上層レジストとしても有用である。更に、本発明の含フッ素重合性単量体はこれらの含フッ素重合体を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体。
【化1】

[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。]
【請求項2】
2およびR3がともに水素原子である請求項1に記載の含フッ素重合性単量体。
【請求項3】
含フッ素重合性単量体が、以下の一般式(2)〜一般式(4)で表される含フッ素単量体の群より選ばれる請求項2に記載の含フッ素重合性単量体。
【化2】

[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
【請求項4】
下記一般式(5)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする含フッ素重合体。
【化3】

[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2またはR3は、それぞれ独立に、水素原子もしくは保護基を表す。]
【請求項5】
2およびR3がともに水素原子である請求項4に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
含フッ素重合体が、以下の一般式(6)〜一般式(8)で表される繰返し単位のいずれかを有する請求項5に記載の含フッ素重合体。
【化4】

[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の含フッ素重合体が、さらに酸不安定基または密着性基を有する繰返し単位を含むことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の含フッ素重合体を含有することを特徴とするレジスト材料。
【請求項9】
酸発生剤、塩基性化合物、有機溶剤のうち少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のレジスト材料。
【請求項10】
有機溶剤が、炭素数5〜20のアルコール系溶剤である請求項9に記載のレジスト材料。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
波長193nmのArFエキシマレーザを用い、ウェハーと投影レンズの間に水を挿入する液浸リソグラフィー法であることを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
予めレジストパターンが形成された基板上にレジスト材料を塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を含むパターン形成方法であって、当該レジスト材料として請求項8〜10のいずれか1項に記載のレジスト材料を用いることを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
レジスト材料の溶剤が炭素数5〜20のアルコール系溶剤であることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載のパターン形成方法により製造された半導体装置。

【公開番号】特開2010−163604(P2010−163604A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281161(P2009−281161)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】