回転機の制御装置
【課題】高周波電圧信号を小さくすると、電気角の推定精度が低下すること。
【解決手段】高周波電圧信号設定部50では、高周波電圧指令信号を設定する。操作信号生成部22では、これに基づきインバータの操作信号g*#(*=u,v,w;#=n,p)を設定する。一方、ハイパスフィルタ58は、モータジェネレータを流れる電流id,iqから高周波電流信号idh,iqhを抽出する。外積演算部60は、高周波電圧指令信号と高周波電流信号との外積値を算出する。これがゼロとなるように回転角度θが操作される。高周波電圧指令信号と指令電流とが直交する設定を採用する。
【解決手段】高周波電圧信号設定部50では、高周波電圧指令信号を設定する。操作信号生成部22では、これに基づきインバータの操作信号g*#(*=u,v,w;#=n,p)を設定する。一方、ハイパスフィルタ58は、モータジェネレータを流れる電流id,iqから高周波電流信号idh,iqhを抽出する。外積演算部60は、高周波電圧指令信号と高周波電流信号との外積値を算出する。これがゼロとなるように回転角度θが操作される。高周波電圧指令信号と指令電流とが直交する設定を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、3相電動機の推定d軸の正方向および負方向に振動する高周波電圧信号を印加した際に電動機に実際に伝播する高周波電流信号に基づき電動機の電気角を推定するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3312472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記高周波電圧信号の周波数は、通常、可聴周波数帯域内のものとなるため、電気角の推定に際して人に知覚されるノイズが生じるおそれがある。このノイズを低減するためには、高周波電圧信号を小さくすることが有効である。ただし、この場合、電気角の推定精度が低下することが発明者らによって見出された。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を直流交流変換回路の出力電圧に重畳することで検出される高周波電流信号の検出値に基づき、回転機の回転角度を推定することのできる新たな回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、前記重畳手段は、前記高周波電流信号の検出値と対応付けられる前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段を備え、前記指令値のベクトルノルムを所与とした場合に、前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に起因して前記指令値設定手段によって設定される指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線との平行からの乖離を低減すべく、前記直流交流変換回路および前記直流電圧源の少なくとも一方を操作する低減手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記直流交流変換回路を用いる場合、デッドタイム期間において回転機の端子に印加される電圧は、その端子に流れる電流の極性に依存する。そして、この間に回転機の端子に印加される電圧は、重畳手段によって重畳することが意図された高周波電圧信号に対して誤差となりうる。この誤差電圧が上記高周波電圧信号に占める割合は、高周波電圧信号を小さくするほど大きくなる。このため、高周波電圧信号が小さくなるほど、実際に重畳される高周波電圧信号が意図したものに対して大きな誤差を有することとなる。
【0009】
そこで、上記発明では、低減手段によって、指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線との平行からの乖離を低減することで、デッドタイム電圧が回転角度の推定に与える影響を好適に低減することができる。
【0010】
なお、上記指令値の方向は、制御装置が指令値によって意図する方向、すなわち制御装置の認識する回転角度が正しい場合に指令値によって規定される方向とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低減手段は、前記指令値設定手段に、前記デッドタイム電圧の方向を有する直線と前記指令値の方向を有する直線とが平行となるように前記指令値を設定させる平行設定手段を備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、デッドタイム電圧の方向を有する直線と指令値の方向を有する直線とが平行となるため、指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線とのなす角度をゼロとすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、前記平行設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を設定させることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。このため、制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を設定することで、相電流がゼロクロスする場合に生じるデッドタイム電圧の方向を有する直線と指令値の方向を有する直線とを平行にすることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記平行設定手段は、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする期間を含む所定期間となることで、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を切り替えることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、上記所定期間以外においては、指令値の設定に際して、上記直交する旨の制約から解放することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記平行設定手段は、前記デッドタイム電圧のベクトルの方向と前記指令値の方向とが一致するように前記指令値の方向を定める方向設定手段を備えることを特徴とする。
【0018】
デッドタイム電圧の方向を有する直線と前記指令値の方向を有する直線とが平行となったとしてもデッドタイム電圧の方向と指令値の方向とが逆の場合、実際に重畳される高周波電圧信号のベクトルノルムが小さくなり、最悪、方向の反転を招くおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、方向設定手段を備えた。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、前記指令値設定手段は、前記回転機の制御量を制御するために前記回転機の端子に印加する電圧の指令値についての更新周期の間に、前記指令値の方向を互いに逆方向となる2つの方向のそれぞれに1度ずつ設定するものであり、前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。そして、ゼロクロスする場合、その相に印加される電圧が他の相の電圧と比較して進角側にずれる。そしてこれは、更新周期の前半における高周波電圧信号の符号に応じて、高周波電圧信号のベクトルノルムを増加させるものにも減少させるものにもなりうる。上記発明では、この点に鑑み、方向設定手段によって、更新周期の前半における指令値の方向を設定することで、高周波電圧信号のベクトルノルムをデッドタイム電圧によって増加させる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記回転機は、多相回転機であり、前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を前記回転機の電気角の所定角度毎に反転させることを特徴とする。
【0022】
N個の固定子が中性点で連結された回転機の場合、電気角の1周期においてゼロクロスに対応する回転角度が2N個ある。このため、「360÷2N°」またはこれを整数で除算した角度毎に指令値の方向を反転させることで、各ゼロクロス期間において指令値の方向を適切なものとすることができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記方向設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に基づき前記指令値の方向を定めることを特徴とする。
【0024】
上記回転機の制御量を制御するための電流の方向は、デッドタイム電圧の方向を知るうえで利用可能なパラメータである。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記方向設定手段は、前記高周波電流信号の大きさに基づき、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする。
【0026】
上記発明では、高周波電流信号の大きさに基づき、更新周期の前半における高周波電圧信号の現在の符号が、実際に重畳される高周波電圧信号のベクトルノルムを減少させるものであるか否かを判断することができ、ひいては現在の符号を反転させるべきか否かを判断することができる。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記直流電圧源は、その出力電圧を可変制御するものであり、前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記直流電圧源の出力電圧を低下させることを特徴とする。
【0028】
直流電圧源の出力電圧が低い場合、直流交流変換回路の入力電圧が低くなるため、高周波電圧信号の大きさが同一であったとしても操作信号のパルス幅の変化は大きくなる。このため、デッドタイム期間に対する上記パルス幅の変化の比を大きくすることができ、ひいてはデッドタイム誤差の影響を低減することができる。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記デッドタイム期間を短縮することを特徴とする。
【0030】
上記発明では、デッドタイム期間を短縮することで、高周波電圧信号に起因した操作信号のパルス幅の変化を大きくすることができ、ひいてはデッドタイム誤差の影響を低減することができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、請求項10または11記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下が、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする状況下であることを特徴とする。
【0032】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。
【0033】
請求項13記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記重畳手段は、前記デッドタイム電圧を打ち消すための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段とをさらに備え、前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする。
【0034】
上記発明では、補正電圧にて指令値を補正することで、実際に重畳される高周波電圧信号を補正前の指令値とすることができる。
【0035】
請求項14記載の発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、前記重畳手段は、前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段と、前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に基づき、前記回転機に実際に重畳される高周波電圧信号に前記デッドタイム電圧が及ぼす影響を低減するための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段と、を備えることを特徴とする。
【0036】
上記直流交流変換回路を用いる場合、デッドタイム期間において回転機の端子に印加される電圧は、その端子に流れる電流の極性に依存する。そして、この間に回転機の端子に印加される電圧は、重畳手段によって重畳することが意図された高周波電圧信号に対して誤差となりうる。この誤差電圧が上記高周波電圧信号に占める割合は、高周波電圧信号を小さくするほど大きくなる。このため、高周波電圧信号が小さくなるほど、実際に重畳される高周波電圧信号が意図したものに対して大きな誤差を有することとなる。
【0037】
そこで、上記発明では、上記補正電圧によって指令値を補正することで、実際に重畳される高周波電圧信号と指令値とのずれを低減することができ、ひいてはデッドタイム電圧が回転角度の推定に与える影響を好適に低減することができる。
【0038】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明において、前記補正電圧は、前記デッドタイム電圧を打ち消す電圧に設定され、前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする。
【0039】
上記発明では、補正電圧にて指令値を補正することで、実際に重畳される高周波電圧信号を補正前の指令値とすることができる。
【0040】
請求項16記載の発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、前記重畳手段は、前記高周波電圧信号の指令値であって且つ極性を周期的に反転させる指令値を設定する指令値設定手段と、前記デッドタイム期間に前記回転機に印加されるデッドタイム電圧に起因して実際に重畳される高周波電圧が前記指令値からずれるのを抑制すべく前記指令値の極性の反転タイミングを設定する方向設定手段とを備えることを特徴とする。
【0041】
デッドタイム電圧が高周波電圧信号の指令値の方向と鈍角をなす場合には、実際に重畳される高周波電圧信号の指令値方向の成分がデッドタイム電圧によって打ち消される側となる。このため、デッドタイム電圧が高周波電圧信号の指令値の方向と鈍角をなす場合には鋭角をなす場合と比較して実際に重畳される高周波電圧信号に生じる誤差が回転角度の推定にとって障害となりやすい。上記発明では、この点に鑑み、デッドタイム電圧が高周波電圧信号の指令値の方向と鈍角をなす事態を回避するように上記極性の反転タイミングを設定する。
【0042】
請求項17記載の発明は、請求項14〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有することを特徴とする。
【0043】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図3】同実施形態にかかるPWM処理を示すタイムチャート。
【図4】同実施形態にかかるデッドタイム補償処理を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる高周波電圧信号に生じる誤差を説明するタイムチャート。
【図6】同実施形態にかかる高周波電圧信号に生じる誤差を示すベクトル図。
【図7】高周波電圧の大小と回転角度の推定精度との関係を示すタイムチャート。
【図8】上記実施形態にかかる高周波電圧指令信号の設定を示す図。
【図9】同実施形態の効果を示す図。
【図10】上記第1の実施形態の問題点を示す図。
【図11】上記問題点の原因を説明する図。
【図12】第2の実施形態における回転角度の推定精度の低下の抑制原理を示す図。
【図13】同実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図14】同実施形態の効果を示す図。
【図15】第3の実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図16】第4の実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図17】第5の実施形態にかかる高周波電圧指令信号の設定処理の手順を示す流れ図。
【図18】第6の実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図19】同実施形態にかかる補正電圧の算出手法を示す図。
【図20】第7の実施形態にかかる回転角度の推定精度の低下の抑制処理の手順を示す流れ図。
【図21】第8の実施形態にかかる回転角度の推定精度の低下の抑制処理の手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を車載主機としての回転機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0047】
モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。
【0048】
モータジェネレータ10は、インバータIVおよびコンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、インバータIVは、スイッチング素子S*p,S*n(*=u,v,w)の直列接続体を3組備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S*p,S*nとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*p,D*nが逆並列に接続されている。
【0049】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16,17,18を備えている。また、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ19を備えている。
【0050】
上記各種センサの検出値は、インターフェース13を介して低圧システムを構成する制御装置14に取り込まれる。制御装置14では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVおよびコンバータCVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子S*p,S*nを操作する信号が、操作信号g*p,g*nである。また、コンバータCVを操作する信号が、操作信号gcp、gcnである。
【0051】
図2に、制御装置14の行う処理を示す。以下では、まず「制御量の制御」について説明した後、「回転角度の推定処理」について説明する。
【0052】
「制御量の制御」
指令電流設定部20は、要求トルクTrに基づき、回転2相座標系の電流の指令値であるd軸上の指令電流idrおよびq軸上の指令電流iqrを設定する。一方、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwは、dq変換部22において、回転2相座標系の実電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換される。偏差算出部24は、d軸の指令電流idrと実電流idとの差を算出し、偏差算出部26は、q軸の指令電流iqrと実電流iqとの差を算出する。電流制御器28は、d軸上の実電流idを指令電流idrにフィードバック制御するための操作量としてのd軸上の指令電圧vdrと、q軸上の実電流iqを指令電流iqrにフィードバック制御するための操作量としてのq軸上の指令電圧vqrとを算出する。ここでは、比例要素の出力と積分要素の出力とを加算することで上記算出を行う。
【0053】
3相変換部30では、回転2相座標系の指令電圧vdr、vqrを、3相の指令電圧vur,vvr,vwrに変換して且つ、これを電源電圧VDCによって規格化することでデューティ信号Du,Dv,Dwを算出する。デッドタイム補償部34では、デューティ信号Du,Dv,Dwのそれぞれを、該当する相電流iu,iv,iwに基づきフィードフォワード補正するためのデッドタイム補正量Δvu,Δvv,Δvwを算出する。そして、補正部36,38,40のそれぞれでは、デッドタイム補正量Δvu,Δvv,Δvwのそれぞれに基づきデューティ信号Du,Dv,Dwのそれぞれを補正する。操作信号生成部32では、デューティ信号Du,Dv,Dwとキャリアとの大小比較に基づくPWM処理によって、操作信号g*#を生成する。
【0054】
図3に、操作信号生成部32による処理の詳細を示す。本実施形態では、漸増速度と漸減速度とが同一であって且つ漸増期間と漸減期間とが同一となる三角波形状のキャリアCSと各相のデューティ信号Du,Dv,Dwとの大小比較に基づき、PWM信号gu,gv,gwを生成する。そして、PWM信号g*(*=u,v,w)に基づき、上側アームの操作信号g*pと下側アームの操作信号g*nとを生成する。この際、デッドタイム生成処理を行うことで、操作信号g*#(*=u,v,w;#=p,n)は、その立上りタイミングがPWM信号g*に対してデッドタイムDTだけ遅延したものとなる。なお、デューティ信号Du,Dv,Dw(指令電圧vur,vvr,vwr)の更新周期は、キャリアCSの更新周期と一致させる。より詳しくは、本実施形態では、キャリアCSがピークとなるタイミングにおいてデューティ信号Du,Dv,Dwを更新する。
【0055】
図4に、デッドタイム補償部34の処理の詳細を示す。
【0056】
図4(a)に示すように、相電流i*(*=u,v,w)が正である場合、デッドタイム期間の間、下側アームのダイオードD*nを介して電流が流れるため、操作信号g*pのオン期間は、PWM信号g*のオン期間と比較してデッドタイムDTだけ短くなり、且つその立上りエッジはデッドタイムDTだけ遅延する。このため、デッドタイム補償部34では、デューティ信号D*をデッドタイム補正量Δv*によって増加補正することで、PWM信号g*の立上りエッジおよび立ち下がりエッジの双方をデッドタイムDTの「1/2」ずつ補正する。これにより、操作信号g*pのオン期間を、補正前のPWM信号g*のオン期間と一致させることができ、また立上りエッジの遅延量を半減させることもできる。
【0057】
図4(b)に示すように、相電流i*(*=u,v,w)が負である場合、デッドタイム期間の間、上側アームのダイオードD*pを介して電流が流れるため、操作信号g*pのオン期間は、PWM信号g*のオン期間と比較してデッドタイムDTだけ長くなる。このため、デッドタイム補償部34では、デューティ信号D*をデッドタイム補正量Δv*によって減少補正することで、PWM信号g*の立上りエッジおよび立ち下がりエッジの双方をデッドタイムDTの「1/2」ずつ補正する。これにより、操作信号g*pのオン期間を、補正前のPWM信号g*のオン期間と一致させることができる。ただし、この際、操作信号g*pの立上りエッジは、補正前のPWM信号g*の立上りエッジに対してデッドタイムDTの「1/2」だけ遅延する。
【0058】
図4(c)に示すように、PWM信号g*の立上りから立下りまでの期間において相電流i*(*=u,v,w)が負から正に反転する場合、立上りに対応するデッドタイム期間の間、上側アームのダイオードD*pを介して電流が流れ、立下りに対応するデッドタイム期間の間、下側アームのダイオードD*nを介して電流が流れる。このため、操作信号g*pのオン期間は、PWM信号g*のオン期間に一致する。したがって、この場合には、デッドタイム補正量Δv*をゼロとする。
【0059】
「回転角度の推定処理」
先の図2に示す高周波電圧信号設定部50では、高周波電圧指令信号Vhr=(vdhr,vqhr)を設定する。ここで、本実施形態では、vqhr=0として且つ、vdhrを、PWM処理の半周期毎にその極性を反転させる信号とする。重畳部52では、電流制御器28の出力するd軸の指令電圧vdrを、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrで補正して3相変換部30に出力する。
【0060】
一方、ハイパスフィルタ58は、実電流id,iqから高調波成分(高周波電流信号idh,iqh)を抽出する。ここで、高周波成分とは、基本波成分よりも周波数の高い成分のことである。特に、ここでは、高周波電圧指令信号Vhrと同一の周波数成分を抽出する。このハイパスフィルタ58としては、たとえば実電流id,iqについてのPWM信号の半周期前後の値の差を出力する手段とすればよい。
【0061】
外積演算部60では、高周波電圧指令信号Vhrと、高周波電流信号idh,iqhとの外積値を算出する。この外積値は、高周波電圧信号と高周波電流信号idh,iqhとのベクトル同士のなす角度と相関を有するものであり、ひいてはモータジェネレータ10の回転角度と相関を有するパラメータ(角度相関量)である。特に本実施形態では、回転角度θの誤差と相関を有する誤差相関量である。この誤差相関量としての外積値は、速度算出部66に入力される。速度算出部66では、上記外積値を入力とする比例要素および積分要素の和として電気角速度ωを算出する。そして、角度算出部68では、電気角速度ωの時間積分値として回転角度θを算出する。これにより、回転角度θは、外積値をその目標値であるゼロにフィードバック制御するための操作量となる。
【0062】
上記外積値の目標値がゼロであるのは、モータジェネレータ10がIPMSMであるため、d軸のインダクタンスLdがq軸のインダクタンスLqよりも小さいためである。すなわちこの場合、インバータIVの出力電圧として、制御量の制御のための電圧にd軸方向の高周波電圧が重畳されるなら、高周波電流信号もd軸方向となり、外積値はゼロとなる。そして、外積値がゼロでない場合には、外積値がゼロとなるように回転角度θが操作され、回転角度θは、正しい角度に一致することとなる。
【0063】
ただし、高周波電圧信号を小さくしていくことで、これを重畳したことによる操作信号g*#のオン時間やオフ時間の変化量についてのデッドタイムDTに対する比が小さくなる場合、実際に重畳される高周波電圧信号のデッドタイムDTに起因する誤差が大きくなり、ひいては回転角度θの推定精度を低下させる要因となる。こうした誤差は、上記デッドタイム補償部34を備えることで、PWM信号g*の立上りから立下りまでの期間において相電流i*(*=u,v,w)が負から正に反転する場合以外においては回避することができる。なぜなら、先の図4に示すように、デッドタイム補償部34による補償によって操作信号g*#のオン期間がPWM信号g*によって規定されたものとなって且つ、位相が「DT/2」だけ遅延するため、線間電圧は、補正前のPWM信号g*によって規定されたものに一致するからである。すなわち、この場合には、キャリアCSの位相を「DT/2」だけ遅角させてPWM処理を行なった場合と等価となり、線間電圧に誤差を生じないのである。
【0064】
ただし、PWM信号g*の立上りから立下りまでの期間において相電流i*(*=u,v,w)が負から正に反転する場合には、その相の操作信号g*nの位相は遅れないため、その相のみ他の相と比較して「DT/2」だけ進角したのと等価となる。このためこの場合には、線間電圧が、補正前のPWM信号g*によって規定されたものからずれることとなり、ひいては高周波電圧信号に誤差が生じる。図5に、デッドタイム補償部34による処理の後のPWM信号g*を示す。図示される例では、U相がゼロクロス期間となっており、この場合、U相のみ電圧が「DT/2」だけ進角したのと同じ状態となる。換言すれば、キャリアCSの位相を「DT/2」だけ遅角させてPWM処理を行なうに際し、U相のみ電圧が「DT/2」だけ進角したのと等価となる。そしてこれにより、図中上方に一点鎖線にて示すように、高周波電圧信号(vdh)がPWMの半周期毎にそれぞれU軸の正および負の方向の信号に重畳されるとすると、図中下方に2点鎖線にて示すように、実際に重畳される高周波電圧信号はその振幅が増大する。なお、図5に一点鎖線にて示すものは、正確には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrが電源電圧VDCによって規格化されたものである。
【0065】
このため、図6に示すように、相電流がゼロクロスする場合には、高周波電圧指令信号Vhrに対して実際に重畳される高周波電圧信号Vhは誤差を有することとなる。そして、この誤差は、図7に示すように、高周波電圧信号を小さくするほど大きくなる。図7の右側の図は、回転角度θが正しい場合において回転角度θ(電気角)と外積値(誤差と表記)との関係を示すものである。図示されるように、高周波電圧信号を小さくすることで、外積値は、相電流のゼロクロス近傍で大きく変動し、正しい値からずれる。
【0066】
そこで本実施形態では、図8に示すように、デッドタイムに起因した誤差電圧ベクトルと高周波電圧指令信号Vhrとを平行に設定する。詳しくは、制御量を制御するための主電流の指令値Ir=(指令電流idr,iqr)をq軸方向とする。これにより、ゼロクロス期間においては、d軸がゼロクロスする相の電圧ベクトルと平行となるため、高周波電圧指令信号Vhrとデッドタイムに起因した誤差電圧ベクトルとを平行にすることができる。
【0067】
図9に、本実施形態の効果を示す。図の右側に示される図は、回転角度θを正しく設定した場合についての回転角度θと外積値との関係を示す。図示されるように、主電流を最小電流最大トルク制御を実現するものとするなどしてd軸に直交する設定としない場合(主電流非直交)には、ゼロクロス近傍で誤差(外積値)が大きく変動する。これに対し、本実施形態の場合(主電流直交)には、外積値の変動を好適に抑制することができる。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0069】
(1)デッドタイムに起因した誤差電圧の方向を有する直線と高周波電圧指令信号の方向を有する直線とを平行に設定した。これにより、高周波電圧指令信号の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線とのなす角度をゼロとすることができる。
【0070】
(2)デッドタイム補償部34を備えた。これにより、相電流にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図10に、上記第1の実施形態において、回転角度θの誤差Δθを「−Δ°:Δ>0」,「0°」,「+Δ°」のそれぞれとした場合の誤差(外積値)と真の回転角度(電気角と表記)との関係を示す。図示されるように、誤差Δθを有する場合には、主電流を高周波電圧信号に直交させたとしてもゼロクロス近傍で外積値が大きく変動することがある。これは、デッドタイムに起因した誤差電圧と高周波電圧指令信号とが逆方向となる場合に生じるものである。すなわち、図11(b)に示す例では、デッドタイムに起因した誤差電圧と高周波電圧指令信号とが同方向であるため、実際に重畳される高周波電圧信号は高周波電圧指令信号よりも振幅値が大きくなるに過ぎない。これに対し、図11(c)に示す例では、デッドタイムに起因した誤差電圧と高周波電圧指令信号とが逆方向となるため、実際に重畳される高周波電圧信号は、高周波電圧指令信号よりも振幅値が小さくなる。そして、特にこの振幅の縮小量が大きくなる場合、実際に重畳される高周波指令信号は高周波電圧指令信号とは逆方向の電圧信号となる。これが外積値が大きく変動する理由である。ちなみに、誤差Δθを有する場合に主電流を高周波電圧信号に直交させてもゼロクロス近傍で外積値が大きく変動し正しい値からずれるのは、高周波電圧指令信号を重畳しようとする方向がd軸からずれるため、d軸成分がデッドタイムに起因した誤差電圧よりも小さくなりやすいためである。
【0072】
そこで本実施形態では、図12に示すように、モータジェネレータ10の固定子によって規定される電圧ベクトルによって区画される6つの領域A〜Fを主電流I(id,iq)が移動するに際し、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrがPWM処理の周期Tcの前半において正となるか負となるかを交互に切り替える。これは、主電流Iの方向が回転することで、d軸の正方向および各相の正方向が一致する現象とd軸の正方向および各相の負方向が一致する現象との双方の現象が生じることに鑑みたものである。すなわち、d軸の正方向が特定の相の正方向となる場合には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをPWM処理の周期Tcの前半において正とすることで、先の図11(b)に示したケースとなる。これに対し、d軸の正方向が特定の相の負方向となる場合には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをPWM処理の周期Tcの前半において正とすることで、先の図11(c)に示したケースとなる。このため、この場合には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをPWM処理の周期Tcの前半において負とすることで、先の図11(b)に示したケースとする。
【0073】
図13に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図13において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0074】
図示されるように、本実施形態では、高周波電圧信号設定部50が、実電流id,iqを取り込むことで、高周波電圧指令信号のd軸成分の極性を設定する。
【0075】
図14に、本実施形態の効果を示す。図示されるように、本実施形態の場合(直交+60°切替)には、回転角度θが誤差Δθを有した場合であっても、外積値の変動を好適に抑制することができる。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0077】
(3)デッドタイムに起因した誤差電圧のベクトルの方向と高周波電圧指令信号のベクトルの方向とが一致するように高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を切り替えた。これにより、高周波電圧指令信号がデッドタイムに起因した誤差電圧によって打ち消される事態を好適に回避することができる。
【0078】
(4)高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を、電気角の60°毎に反転させた。これにより、ゼロクロス期間となるに先立って適切な極性とすることが容易となる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
図15に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図15において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0080】
図示されるように、本実施形態にかかる高周波電圧信号設定部50では、高周波電流信号idh,iqhに基づき、これらのベクトルノルムが規定値以下となる場合に、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を切り替える。これは、高周波指令電圧信号の意図する方向を有する直線と固定子の方向を有する直線とが平行となる期間よりも相電流のゼロクロス期間が長い場合に有効な処理である。
【0081】
すなわち、高周波指令電圧信号の意図する方向を有する直線と固定子の方向を有する直線とが平行となる前にゼロクロス期間となることでデッドタイムに起因した誤差電圧が生じると、デッドタイムに起因した誤差電圧のうちの高周波指令電圧信号の成分は、上記一対の直線が平行であるときよりの小さくなる。このためこの場合には、高周波電圧指令信号の極性が先の第2の実施形態において規定されるものとは逆であったとしても、一対の直線が平行である場合ほどには高周波指令電圧信号がデッドタイムに起因した誤差電圧によって打ち消されない。ただし、この場合には、高周波電流信号idh,iqhのベクトルノルムが小さくなると考えられる。したがって、高周波電流信号idh,iqhのベクトルノルムが小さくなることで、高周波電圧指令信号の極性が先の第2の実施形態において規定されるものとは逆であることを把握することができる。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(2)の効果や先の第2の実施形態の上記(3)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0083】
(5)高周波電流信号idh,iqhのベクトルノルムに基づき、デューティ信号Du,Dv,Dwの更新周期の前半における高周波電圧指令信号のベクトルの方向を定めた。これにより、ベクトルの方向を反転させるべきか否かを適切に判断することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0084】
図16に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図16において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0085】
本実施形態では、最小電流最大トルク制御を行うように指令電流idr,iqrを設定する。そして、高周波電圧指令信号(vdhr、vqhr)については、指令電流idr,iqrに直交させる。この場合、回転角度θに誤差が無くても外積値はゼロとはならない。そこで、本実施形態では、目標値設定部70を備え、外積値が目標値設定部70によって設定される目標値となるように回転角度θを操作する。ここで、目標値設定部70では、高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)を入力として目標値を設定する。なお、本実施形態では、高周波電圧指令信号のq軸成分vqhrがゼロではないため、3相変換部30に入力されるq軸の電圧は、重畳部53において、電流制御器28の出力するq軸の指令電圧vqrが上記q軸成分vqhrによって補正されたものとなる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0087】
(6)高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)を、指令電流idr,iqrを基準としてこれに直交するように設定した。これにより、モータジェネレータ10の制御量の制御からの要求事項にしたがって指令電流idr,iqrを設定することができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0088】
図17に、本実施形態にかかる高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)の設定処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0089】
この一連の処理では、まずステップS10において、ゼロクロス領域であるか否かを判断する。そしてゼロクロス領域であると判断される場合、ステップS12において、高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)を指令電流idr,iqrに直交するように設定する一方、ゼロクロス領域でないと判断される場合には、ステップS14において、高周波電圧指令信号のq軸成分vqhrをゼロとする。この処理は、ゼロクロス領域以外においては、デッドタイムに起因した誤差が生じないことに鑑みたものである。
【0090】
なお、上記ステップS12,S14の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、先の第4の実施形態の上記効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0092】
(7)相電流がゼロクロスする期間において、高周波電圧指令信号の方向を変更してモータジェネレータ10の制御量を制御するための電流の方向に直交させた。これにより、ゼロクロス期間以外においては、d軸方向に高周波電圧指令信号を設定することができる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0093】
図18に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図18において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0094】
図示されるように、本実施形態では、デッドタイムに起因した誤差電圧を打ち消すように高周波電圧信号設定部50によって設定される高周波電圧指令信号を補正し、これに基づきインバータIVを操作する。すなわち、誤差電圧算出部72では、電源電圧VDCと、回転角度θと、相電流iu,iv,iwとに基づき、誤差電圧を算出する。ここで、相電流iu,iv,iwは、ゼロクロス期間を検出するためのものである。ここで、算出される誤差電圧は、図19に示すものとなる。すなわちたとえば、U相のゼロクロス期間において、操作信号gupのオン期間の立上りが他の相との関係で「DT/2」だけ進角側にずれた場合には、インバータIVの出力電圧のU相成分は、「0V」から「VDC」に変化したこととなる。このため、誤差電圧は、{α・VDC・√(2/3)}・(−cosθ,sinθ)となる。ここで、比αは、「DT/Tc」である。
【0095】
そして、誤差補正部74,76では、高周波電圧信号設定部50によって設定された高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)から、誤差電圧算出部72において算出された誤差電圧を減算する。そして、重畳部52,53では、誤差補正部74,76の出力によって指令電圧vdr、vqrを補正して3相変換部30に出力する。なお、外積演算部60には、誤差補正部74,76による補正前の高周波電圧指令信号が入力される。これは、誤差補正部74,76が、インバータIVの出力電圧に含まれる実際の高周波電圧信号を高周波電圧指令信号とするための補正を行うものであることによる。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0097】
(8)デッドタイムに起因した誤差電圧を打ち消すための補正電圧によって高周波電圧指令信号を補正したものに基づき、インバータIVを操作した。これにより、実際に重畳される高周波電圧信号を高周波電圧指令信号に開ループ制御するに際し、デッドタイムに起因した誤差電圧をフィードフォワード補償することができる。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
図20に、本実施形態にかかる回転角度の推定精度低下の抑制処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0099】
この一連の処理では、まずステップS20において、ゼロクロス領域であるか否かを判断する。そしてゼロクロス領域であると判断される場合、ステップS22において、コンバータCVの出力電圧を低下させる。この処理は、デッドタイムに起因した誤差電圧に対する高周波電圧指令信号の実効値を拡大するためのものである。すなわち、コンバータCVの出力電圧(インバータIVの入力電圧)を低下させることで、高周波電圧指令信号のベクトルノルムが同一であったとしても、電源電圧VDCによって規格化された高周波電圧指令信号が大きくなる。このため、指令電圧vdr,vqrに高周波電圧指令信号を重畳することによるPWM信号g*のパルス幅の変化量が大きくなり、ひいてはデッドタイムに起因した誤差電圧による影響を希釈することができる。
【0100】
なお、上記ステップS22の処理が完了する場合や、ステップS20において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0101】
図21に、本実施形態にかかる回転角度の推定精度低下の抑制処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0102】
この一連の処理では、まずステップS30において、ゼロクロス領域であるか否かを判断する。そしてゼロクロス領域であると判断される場合、ステップS32において、デッドタイム期間を短縮する処理を行う。この処理は、デッドタイムに起因した誤差電圧に対する高周波電圧指令信号の実効値の比を拡大するためのものである。
【0103】
なお、上記ステップS32の処理が完了する場合や、ステップS30において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0104】
「平行設定手段について」
デッドタイム補償部34を利用しつつ制御量を制御する際に適用されるものに限らない。ただし、デッドタイム補償部34を利用しない場合には、先の図4からもわかるように、デッドタイム誤差電圧がゼロクロス期間以外にも生じえ、しかも3相のそれぞれの電流の極性に応じて変化するものとなる。このため、都度のデッドタイム電圧のベクトルの方向に基づき、高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)を設定する。なお、都度のデッドタイム電圧は、先の図19に示す関係を利用することで算出することができる。
【0105】
なお、たとえば上記第1の実施形態等において、要求トルクTrがゼロである場合、指令電流iqr=0にできるため、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをゼロとしてもよい。
【0106】
「方向設定手段について」
上記第2の実施形態において、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を60°毎に反転させる代わりに、30°毎に反転させたり15°毎に反転させたりする等、「60°/n;n=2,3,…」毎に反転させてもよい。ただし、ここでの整数nは、極性を維持する領域が相電流のゼロクロス領域よりも広い領域となるように設定する。
【0107】
制御量の制御用の電流(主電流I)の固定座標系における方向に基づきPWM周期Tcの前半における高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)の符号を定めるものとしては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。たとえばPWM周期Tcの前半における高周波電圧指令信号のd軸成分(vdhr)の符号を原則的に正として且つ、主電流Iの方向に基づき相電流のゼロクロス期間と判断される場合に限って、適宜符号を反転させるものであってもよい。
【0108】
たとえば、高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)を、PWM周期Tcの間にゼロおよび特定の符号を有する値を繰り返す場合には、特定の符号を特定するものとすればよい。
【0109】
なお、PWM周期Tcの前半における高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)の符号を定めるうえで参照するパラメータとしては、主電流I(検出値)に限らず、指令値(Ir)であってもよい。また、指令電流idr,iqrの位相情報と回転角度θとであってもよい。
【0110】
ちなみに、方向設定手段は、平行設定手段とは独立に設けることもできる。すなわちたとえば、上記第2の実施形態において、主電流の指令値Irを最大トルク最小電流制御を実現するためのもの(idr<0)として且つ高周波電圧指令信号をd軸に平行とする場合に、上記第2の実施形態の要領で極性を反転してもよい。この場合であっても、高周波電圧指令信号とデッドタイム電圧とが鈍角をなす場合の方が鋭角をなす場合と比較して実際に重畳される高周波電圧信号のうちの高周波電圧指令信号と同一の成分が小さくなることに鑑み、極性反転によって鈍角となる事態を解消することは有効である。
【0111】
「補正電圧算出手段について」
補正電圧としては、デッドタイム誤差電圧と同じ大きさであって且つ方向が逆となるものに限らない。たとえば、方向が逆であるなら、大きさがデッドタイム誤差電圧と一致しなくてもデッドタイム誤差電圧の影響を低減することはできる。
【0112】
さらに、補正電圧しては、デッドタイム誤差電圧と方向が逆となるものにも限らない。たとえば高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)と同一の方向を有するものであってもよい。この場合であっても、デッドタイム誤差電圧の影響を低減することはできる。ただし、この場合、高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)を補正電圧によって補正したものに基づき、回転角度を推定することが望ましい。
【0113】
さらに、高周波電圧指令信号のベクトルノルムを変えることなく、周期的に変化する極性を反転させる補正電圧を算出してもよい。この場合であっても、高周波電圧指令信号とデッドタイム電圧とが鈍角をなす場合の方が鋭角をなす場合と比較して実際に重畳される高周波電圧信号のうちの高周波電圧指令信号と同一の成分が小さくなることに鑑み、極性反転によって鈍角となる事態を解消することは有効である。
【0114】
デッドタイム補償部34を利用しつつ制御量を制御する際に適用されるものに限らない。ただし、デッドタイム補償部34を利用しない場合には、先の図4からもわかるように、デッドタイム誤差電圧がゼロクロス期間以外にも生じえ、しかも3相のそれぞれの電流の極性に応じて変化するものとなる。このため、都度のデッドタイム電圧に基づき、誤差電圧を算出する。なお、都度のデッドタイム電圧は、先の図19に示す関係を利用することで算出することができる。
【0115】
「推定手段について」
高周波電圧指令信号と高周波電流信号の検出値との外積値に基づき角度相関量を算出するものに限らない。たとえば特開2008−220289号公報に記載されているように、高周波電圧指令信号をd軸方向の電圧およびq軸方向の電圧のそれぞれとした場合の各高周波電流信号のベクトルノルム同士の積であってもよい。
【0116】
角度相関量をその目標値にフィードバック制御すべく回転角度θを操作する手段としては、角度相関量をその目標値に制御すべくまず第1に電気角速度ωを操作するものに限らず、回転角度θを直接操作してもよい。
【0117】
「デッドタイム補償機能について」
デッドタイム補償手段としては、相電流の極性に基づき指令電圧(Duty信号)をフィードフォワード補正するものに限らない。たとえば、インバータの各相の出力電圧の検出値を指令値にフィードバック制御するものであってもよい。この場合であっても、オン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすような補正を行うなら、ゼロクロス期間以外において高周波電圧信号に誤差が生じることを好適に回避することができる。
【0118】
また、デッドタイムに起因した線間平均電圧の誤差を直接の制御量としてこれをゼロに制御するデッドタイム補償手段を備えなくても、たとえば先の図2に示した電流フィードバック制御によっても、相電流がゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因する線間電圧のずれは完全に補償される。このため、この場合であっても、フィードバック制御が追従するまでの期間を除けば、ゼロクロスするものがある場合に限って実際に重畳する高周波電圧に誤差が生じることとなる。ちなみに、ゼロクロスする相がある場合、その相におけるデッドタイムに起因する誤差は、先の図5の記載からもわかるように、高周波成分を有するもののPWM処理の1周期Tcにおける平均電圧の誤差としては寄与しない。このため、フィードバック制御によるデッドタイム補償機能によってもゼロクロス期間においては高周波電圧信号に誤差が生じる。
【0119】
なお、必ずしもデッドタイム補償機能を備えるものに限らないことについては、「平行設定手段について」の欄等に記載したとおりである。
【0120】
「キャリアCSについて」
キャリアCSが谷となるタイミングを、指令電圧vur,vvr,vwrの更新タイミングとしてもよい。ただし、この場合、先の第2の実施形態に示した手法を適用するに際しては、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を先の図12に示したものとは逆とする。
【0121】
キャリアCSとしては、三角波に限らず、漸増速度および漸減速度が互いに等しくて且つ漸増期間および漸減期間が互いに等しい設定とすることで、漸増期間と漸減期間とが対称性を有するものであればよい。この場合、デッドタイム補償機能によって、操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらす補正がなされる設定とすることが容易となる。
【0122】
もっとも、これに限らず、たとえば鋸波であってもよい。この場合、制御量をフィードバック制御したとしても、ゼロクロス期間以外においても高周波電圧信号にデッドタイムに起因した誤差が生じうるため、上述した要領でデッドタイムによる誤差の影響を回避または低減することが望ましい。
【0123】
「回転機について」
回転機としては、互いに中性点で連結された3つの固定子を有する3相回転機に限らず、たとえば互いに中性点で連結された5つの固定子を有する5相回転機であってもよい。ただし、この場合、先の第2の実施形態に示した手法を適用するに際しては、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を、「(360°÷5)/n=72/n°:n=1,2,3…」毎に反転させることが望ましい。
【0124】
「そのほか」
・モータジェネレータ10の最終的な制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度等であってもよい。また、電流ベクトル制御を行うものにも限らず、例えばトルクフィードバック制御を行うものであってもよい。この際、制御量の制御のための操作量として指令電圧を設定し、対称性を有するキャリアと指令電圧との大小比較に基づき操作信号を設定するものであるなら、制御量のフィードバック制御によってデッドタイム補償機能をもたせることができる。
【0125】
・構造上、突極性を有する回転機としては、上記モータジェネレータ10に限らない。例えば同期リラクタンスモータ(SynRM)でもよい。
【0126】
・回転機としては、車載主機に限らない。例えば車載パワーステアリングに搭載される電動機であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
10…モータジェネレータ、14…制御装置、50…高周波電圧信号設定部、60…外積演算部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、3相電動機の推定d軸の正方向および負方向に振動する高周波電圧信号を印加した際に電動機に実際に伝播する高周波電流信号に基づき電動機の電気角を推定するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3312472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記高周波電圧信号の周波数は、通常、可聴周波数帯域内のものとなるため、電気角の推定に際して人に知覚されるノイズが生じるおそれがある。このノイズを低減するためには、高周波電圧信号を小さくすることが有効である。ただし、この場合、電気角の推定精度が低下することが発明者らによって見出された。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を直流交流変換回路の出力電圧に重畳することで検出される高周波電流信号の検出値に基づき、回転機の回転角度を推定することのできる新たな回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、前記重畳手段は、前記高周波電流信号の検出値と対応付けられる前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段を備え、前記指令値のベクトルノルムを所与とした場合に、前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に起因して前記指令値設定手段によって設定される指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線との平行からの乖離を低減すべく、前記直流交流変換回路および前記直流電圧源の少なくとも一方を操作する低減手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記直流交流変換回路を用いる場合、デッドタイム期間において回転機の端子に印加される電圧は、その端子に流れる電流の極性に依存する。そして、この間に回転機の端子に印加される電圧は、重畳手段によって重畳することが意図された高周波電圧信号に対して誤差となりうる。この誤差電圧が上記高周波電圧信号に占める割合は、高周波電圧信号を小さくするほど大きくなる。このため、高周波電圧信号が小さくなるほど、実際に重畳される高周波電圧信号が意図したものに対して大きな誤差を有することとなる。
【0009】
そこで、上記発明では、低減手段によって、指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線との平行からの乖離を低減することで、デッドタイム電圧が回転角度の推定に与える影響を好適に低減することができる。
【0010】
なお、上記指令値の方向は、制御装置が指令値によって意図する方向、すなわち制御装置の認識する回転角度が正しい場合に指令値によって規定される方向とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低減手段は、前記指令値設定手段に、前記デッドタイム電圧の方向を有する直線と前記指令値の方向を有する直線とが平行となるように前記指令値を設定させる平行設定手段を備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、デッドタイム電圧の方向を有する直線と指令値の方向を有する直線とが平行となるため、指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線とのなす角度をゼロとすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、前記平行設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を設定させることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。このため、制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を設定することで、相電流がゼロクロスする場合に生じるデッドタイム電圧の方向を有する直線と指令値の方向を有する直線とを平行にすることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記平行設定手段は、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする期間を含む所定期間となることで、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を切り替えることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、上記所定期間以外においては、指令値の設定に際して、上記直交する旨の制約から解放することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記平行設定手段は、前記デッドタイム電圧のベクトルの方向と前記指令値の方向とが一致するように前記指令値の方向を定める方向設定手段を備えることを特徴とする。
【0018】
デッドタイム電圧の方向を有する直線と前記指令値の方向を有する直線とが平行となったとしてもデッドタイム電圧の方向と指令値の方向とが逆の場合、実際に重畳される高周波電圧信号のベクトルノルムが小さくなり、最悪、方向の反転を招くおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、方向設定手段を備えた。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、前記指令値設定手段は、前記回転機の制御量を制御するために前記回転機の端子に印加する電圧の指令値についての更新周期の間に、前記指令値の方向を互いに逆方向となる2つの方向のそれぞれに1度ずつ設定するものであり、前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。そして、ゼロクロスする場合、その相に印加される電圧が他の相の電圧と比較して進角側にずれる。そしてこれは、更新周期の前半における高周波電圧信号の符号に応じて、高周波電圧信号のベクトルノルムを増加させるものにも減少させるものにもなりうる。上記発明では、この点に鑑み、方向設定手段によって、更新周期の前半における指令値の方向を設定することで、高周波電圧信号のベクトルノルムをデッドタイム電圧によって増加させる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記回転機は、多相回転機であり、前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を前記回転機の電気角の所定角度毎に反転させることを特徴とする。
【0022】
N個の固定子が中性点で連結された回転機の場合、電気角の1周期においてゼロクロスに対応する回転角度が2N個ある。このため、「360÷2N°」またはこれを整数で除算した角度毎に指令値の方向を反転させることで、各ゼロクロス期間において指令値の方向を適切なものとすることができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記方向設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に基づき前記指令値の方向を定めることを特徴とする。
【0024】
上記回転機の制御量を制御するための電流の方向は、デッドタイム電圧の方向を知るうえで利用可能なパラメータである。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記方向設定手段は、前記高周波電流信号の大きさに基づき、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする。
【0026】
上記発明では、高周波電流信号の大きさに基づき、更新周期の前半における高周波電圧信号の現在の符号が、実際に重畳される高周波電圧信号のベクトルノルムを減少させるものであるか否かを判断することができ、ひいては現在の符号を反転させるべきか否かを判断することができる。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記直流電圧源は、その出力電圧を可変制御するものであり、前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記直流電圧源の出力電圧を低下させることを特徴とする。
【0028】
直流電圧源の出力電圧が低い場合、直流交流変換回路の入力電圧が低くなるため、高周波電圧信号の大きさが同一であったとしても操作信号のパルス幅の変化は大きくなる。このため、デッドタイム期間に対する上記パルス幅の変化の比を大きくすることができ、ひいてはデッドタイム誤差の影響を低減することができる。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記デッドタイム期間を短縮することを特徴とする。
【0030】
上記発明では、デッドタイム期間を短縮することで、高周波電圧信号に起因した操作信号のパルス幅の変化を大きくすることができ、ひいてはデッドタイム誤差の影響を低減することができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、請求項10または11記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下が、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする状況下であることを特徴とする。
【0032】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。
【0033】
請求項13記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記重畳手段は、前記デッドタイム電圧を打ち消すための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段とをさらに備え、前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする。
【0034】
上記発明では、補正電圧にて指令値を補正することで、実際に重畳される高周波電圧信号を補正前の指令値とすることができる。
【0035】
請求項14記載の発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、前記重畳手段は、前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段と、前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に基づき、前記回転機に実際に重畳される高周波電圧信号に前記デッドタイム電圧が及ぼす影響を低減するための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段と、を備えることを特徴とする。
【0036】
上記直流交流変換回路を用いる場合、デッドタイム期間において回転機の端子に印加される電圧は、その端子に流れる電流の極性に依存する。そして、この間に回転機の端子に印加される電圧は、重畳手段によって重畳することが意図された高周波電圧信号に対して誤差となりうる。この誤差電圧が上記高周波電圧信号に占める割合は、高周波電圧信号を小さくするほど大きくなる。このため、高周波電圧信号が小さくなるほど、実際に重畳される高周波電圧信号が意図したものに対して大きな誤差を有することとなる。
【0037】
そこで、上記発明では、上記補正電圧によって指令値を補正することで、実際に重畳される高周波電圧信号と指令値とのずれを低減することができ、ひいてはデッドタイム電圧が回転角度の推定に与える影響を好適に低減することができる。
【0038】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明において、前記補正電圧は、前記デッドタイム電圧を打ち消す電圧に設定され、前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする。
【0039】
上記発明では、補正電圧にて指令値を補正することで、実際に重畳される高周波電圧信号を補正前の指令値とすることができる。
【0040】
請求項16記載の発明は、突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、前記重畳手段は、前記高周波電圧信号の指令値であって且つ極性を周期的に反転させる指令値を設定する指令値設定手段と、前記デッドタイム期間に前記回転機に印加されるデッドタイム電圧に起因して実際に重畳される高周波電圧が前記指令値からずれるのを抑制すべく前記指令値の極性の反転タイミングを設定する方向設定手段とを備えることを特徴とする。
【0041】
デッドタイム電圧が高周波電圧信号の指令値の方向と鈍角をなす場合には、実際に重畳される高周波電圧信号の指令値方向の成分がデッドタイム電圧によって打ち消される側となる。このため、デッドタイム電圧が高周波電圧信号の指令値の方向と鈍角をなす場合には鋭角をなす場合と比較して実際に重畳される高周波電圧信号に生じる誤差が回転角度の推定にとって障害となりやすい。上記発明では、この点に鑑み、デッドタイム電圧が高周波電圧信号の指令値の方向と鈍角をなす事態を回避するように上記極性の反転タイミングを設定する。
【0042】
請求項17記載の発明は、請求項14〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有することを特徴とする。
【0043】
上記発明では、デッドタイム補償機能を有することで、端子を流れる電流(相電流)にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図3】同実施形態にかかるPWM処理を示すタイムチャート。
【図4】同実施形態にかかるデッドタイム補償処理を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる高周波電圧信号に生じる誤差を説明するタイムチャート。
【図6】同実施形態にかかる高周波電圧信号に生じる誤差を示すベクトル図。
【図7】高周波電圧の大小と回転角度の推定精度との関係を示すタイムチャート。
【図8】上記実施形態にかかる高周波電圧指令信号の設定を示す図。
【図9】同実施形態の効果を示す図。
【図10】上記第1の実施形態の問題点を示す図。
【図11】上記問題点の原因を説明する図。
【図12】第2の実施形態における回転角度の推定精度の低下の抑制原理を示す図。
【図13】同実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図14】同実施形態の効果を示す図。
【図15】第3の実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図16】第4の実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図17】第5の実施形態にかかる高周波電圧指令信号の設定処理の手順を示す流れ図。
【図18】第6の実施形態にかかる回転角度の推定処理を示すブロック図。
【図19】同実施形態にかかる補正電圧の算出手法を示す図。
【図20】第7の実施形態にかかる回転角度の推定精度の低下の抑制処理の手順を示す流れ図。
【図21】第8の実施形態にかかる回転角度の推定精度の低下の抑制処理の手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を車載主機としての回転機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0047】
モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。
【0048】
モータジェネレータ10は、インバータIVおよびコンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、インバータIVは、スイッチング素子S*p,S*n(*=u,v,w)の直列接続体を3組備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S*p,S*nとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*p,D*nが逆並列に接続されている。
【0049】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16,17,18を備えている。また、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ19を備えている。
【0050】
上記各種センサの検出値は、インターフェース13を介して低圧システムを構成する制御装置14に取り込まれる。制御装置14では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVおよびコンバータCVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子S*p,S*nを操作する信号が、操作信号g*p,g*nである。また、コンバータCVを操作する信号が、操作信号gcp、gcnである。
【0051】
図2に、制御装置14の行う処理を示す。以下では、まず「制御量の制御」について説明した後、「回転角度の推定処理」について説明する。
【0052】
「制御量の制御」
指令電流設定部20は、要求トルクTrに基づき、回転2相座標系の電流の指令値であるd軸上の指令電流idrおよびq軸上の指令電流iqrを設定する。一方、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwは、dq変換部22において、回転2相座標系の実電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換される。偏差算出部24は、d軸の指令電流idrと実電流idとの差を算出し、偏差算出部26は、q軸の指令電流iqrと実電流iqとの差を算出する。電流制御器28は、d軸上の実電流idを指令電流idrにフィードバック制御するための操作量としてのd軸上の指令電圧vdrと、q軸上の実電流iqを指令電流iqrにフィードバック制御するための操作量としてのq軸上の指令電圧vqrとを算出する。ここでは、比例要素の出力と積分要素の出力とを加算することで上記算出を行う。
【0053】
3相変換部30では、回転2相座標系の指令電圧vdr、vqrを、3相の指令電圧vur,vvr,vwrに変換して且つ、これを電源電圧VDCによって規格化することでデューティ信号Du,Dv,Dwを算出する。デッドタイム補償部34では、デューティ信号Du,Dv,Dwのそれぞれを、該当する相電流iu,iv,iwに基づきフィードフォワード補正するためのデッドタイム補正量Δvu,Δvv,Δvwを算出する。そして、補正部36,38,40のそれぞれでは、デッドタイム補正量Δvu,Δvv,Δvwのそれぞれに基づきデューティ信号Du,Dv,Dwのそれぞれを補正する。操作信号生成部32では、デューティ信号Du,Dv,Dwとキャリアとの大小比較に基づくPWM処理によって、操作信号g*#を生成する。
【0054】
図3に、操作信号生成部32による処理の詳細を示す。本実施形態では、漸増速度と漸減速度とが同一であって且つ漸増期間と漸減期間とが同一となる三角波形状のキャリアCSと各相のデューティ信号Du,Dv,Dwとの大小比較に基づき、PWM信号gu,gv,gwを生成する。そして、PWM信号g*(*=u,v,w)に基づき、上側アームの操作信号g*pと下側アームの操作信号g*nとを生成する。この際、デッドタイム生成処理を行うことで、操作信号g*#(*=u,v,w;#=p,n)は、その立上りタイミングがPWM信号g*に対してデッドタイムDTだけ遅延したものとなる。なお、デューティ信号Du,Dv,Dw(指令電圧vur,vvr,vwr)の更新周期は、キャリアCSの更新周期と一致させる。より詳しくは、本実施形態では、キャリアCSがピークとなるタイミングにおいてデューティ信号Du,Dv,Dwを更新する。
【0055】
図4に、デッドタイム補償部34の処理の詳細を示す。
【0056】
図4(a)に示すように、相電流i*(*=u,v,w)が正である場合、デッドタイム期間の間、下側アームのダイオードD*nを介して電流が流れるため、操作信号g*pのオン期間は、PWM信号g*のオン期間と比較してデッドタイムDTだけ短くなり、且つその立上りエッジはデッドタイムDTだけ遅延する。このため、デッドタイム補償部34では、デューティ信号D*をデッドタイム補正量Δv*によって増加補正することで、PWM信号g*の立上りエッジおよび立ち下がりエッジの双方をデッドタイムDTの「1/2」ずつ補正する。これにより、操作信号g*pのオン期間を、補正前のPWM信号g*のオン期間と一致させることができ、また立上りエッジの遅延量を半減させることもできる。
【0057】
図4(b)に示すように、相電流i*(*=u,v,w)が負である場合、デッドタイム期間の間、上側アームのダイオードD*pを介して電流が流れるため、操作信号g*pのオン期間は、PWM信号g*のオン期間と比較してデッドタイムDTだけ長くなる。このため、デッドタイム補償部34では、デューティ信号D*をデッドタイム補正量Δv*によって減少補正することで、PWM信号g*の立上りエッジおよび立ち下がりエッジの双方をデッドタイムDTの「1/2」ずつ補正する。これにより、操作信号g*pのオン期間を、補正前のPWM信号g*のオン期間と一致させることができる。ただし、この際、操作信号g*pの立上りエッジは、補正前のPWM信号g*の立上りエッジに対してデッドタイムDTの「1/2」だけ遅延する。
【0058】
図4(c)に示すように、PWM信号g*の立上りから立下りまでの期間において相電流i*(*=u,v,w)が負から正に反転する場合、立上りに対応するデッドタイム期間の間、上側アームのダイオードD*pを介して電流が流れ、立下りに対応するデッドタイム期間の間、下側アームのダイオードD*nを介して電流が流れる。このため、操作信号g*pのオン期間は、PWM信号g*のオン期間に一致する。したがって、この場合には、デッドタイム補正量Δv*をゼロとする。
【0059】
「回転角度の推定処理」
先の図2に示す高周波電圧信号設定部50では、高周波電圧指令信号Vhr=(vdhr,vqhr)を設定する。ここで、本実施形態では、vqhr=0として且つ、vdhrを、PWM処理の半周期毎にその極性を反転させる信号とする。重畳部52では、電流制御器28の出力するd軸の指令電圧vdrを、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrで補正して3相変換部30に出力する。
【0060】
一方、ハイパスフィルタ58は、実電流id,iqから高調波成分(高周波電流信号idh,iqh)を抽出する。ここで、高周波成分とは、基本波成分よりも周波数の高い成分のことである。特に、ここでは、高周波電圧指令信号Vhrと同一の周波数成分を抽出する。このハイパスフィルタ58としては、たとえば実電流id,iqについてのPWM信号の半周期前後の値の差を出力する手段とすればよい。
【0061】
外積演算部60では、高周波電圧指令信号Vhrと、高周波電流信号idh,iqhとの外積値を算出する。この外積値は、高周波電圧信号と高周波電流信号idh,iqhとのベクトル同士のなす角度と相関を有するものであり、ひいてはモータジェネレータ10の回転角度と相関を有するパラメータ(角度相関量)である。特に本実施形態では、回転角度θの誤差と相関を有する誤差相関量である。この誤差相関量としての外積値は、速度算出部66に入力される。速度算出部66では、上記外積値を入力とする比例要素および積分要素の和として電気角速度ωを算出する。そして、角度算出部68では、電気角速度ωの時間積分値として回転角度θを算出する。これにより、回転角度θは、外積値をその目標値であるゼロにフィードバック制御するための操作量となる。
【0062】
上記外積値の目標値がゼロであるのは、モータジェネレータ10がIPMSMであるため、d軸のインダクタンスLdがq軸のインダクタンスLqよりも小さいためである。すなわちこの場合、インバータIVの出力電圧として、制御量の制御のための電圧にd軸方向の高周波電圧が重畳されるなら、高周波電流信号もd軸方向となり、外積値はゼロとなる。そして、外積値がゼロでない場合には、外積値がゼロとなるように回転角度θが操作され、回転角度θは、正しい角度に一致することとなる。
【0063】
ただし、高周波電圧信号を小さくしていくことで、これを重畳したことによる操作信号g*#のオン時間やオフ時間の変化量についてのデッドタイムDTに対する比が小さくなる場合、実際に重畳される高周波電圧信号のデッドタイムDTに起因する誤差が大きくなり、ひいては回転角度θの推定精度を低下させる要因となる。こうした誤差は、上記デッドタイム補償部34を備えることで、PWM信号g*の立上りから立下りまでの期間において相電流i*(*=u,v,w)が負から正に反転する場合以外においては回避することができる。なぜなら、先の図4に示すように、デッドタイム補償部34による補償によって操作信号g*#のオン期間がPWM信号g*によって規定されたものとなって且つ、位相が「DT/2」だけ遅延するため、線間電圧は、補正前のPWM信号g*によって規定されたものに一致するからである。すなわち、この場合には、キャリアCSの位相を「DT/2」だけ遅角させてPWM処理を行なった場合と等価となり、線間電圧に誤差を生じないのである。
【0064】
ただし、PWM信号g*の立上りから立下りまでの期間において相電流i*(*=u,v,w)が負から正に反転する場合には、その相の操作信号g*nの位相は遅れないため、その相のみ他の相と比較して「DT/2」だけ進角したのと等価となる。このためこの場合には、線間電圧が、補正前のPWM信号g*によって規定されたものからずれることとなり、ひいては高周波電圧信号に誤差が生じる。図5に、デッドタイム補償部34による処理の後のPWM信号g*を示す。図示される例では、U相がゼロクロス期間となっており、この場合、U相のみ電圧が「DT/2」だけ進角したのと同じ状態となる。換言すれば、キャリアCSの位相を「DT/2」だけ遅角させてPWM処理を行なうに際し、U相のみ電圧が「DT/2」だけ進角したのと等価となる。そしてこれにより、図中上方に一点鎖線にて示すように、高周波電圧信号(vdh)がPWMの半周期毎にそれぞれU軸の正および負の方向の信号に重畳されるとすると、図中下方に2点鎖線にて示すように、実際に重畳される高周波電圧信号はその振幅が増大する。なお、図5に一点鎖線にて示すものは、正確には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrが電源電圧VDCによって規格化されたものである。
【0065】
このため、図6に示すように、相電流がゼロクロスする場合には、高周波電圧指令信号Vhrに対して実際に重畳される高周波電圧信号Vhは誤差を有することとなる。そして、この誤差は、図7に示すように、高周波電圧信号を小さくするほど大きくなる。図7の右側の図は、回転角度θが正しい場合において回転角度θ(電気角)と外積値(誤差と表記)との関係を示すものである。図示されるように、高周波電圧信号を小さくすることで、外積値は、相電流のゼロクロス近傍で大きく変動し、正しい値からずれる。
【0066】
そこで本実施形態では、図8に示すように、デッドタイムに起因した誤差電圧ベクトルと高周波電圧指令信号Vhrとを平行に設定する。詳しくは、制御量を制御するための主電流の指令値Ir=(指令電流idr,iqr)をq軸方向とする。これにより、ゼロクロス期間においては、d軸がゼロクロスする相の電圧ベクトルと平行となるため、高周波電圧指令信号Vhrとデッドタイムに起因した誤差電圧ベクトルとを平行にすることができる。
【0067】
図9に、本実施形態の効果を示す。図の右側に示される図は、回転角度θを正しく設定した場合についての回転角度θと外積値との関係を示す。図示されるように、主電流を最小電流最大トルク制御を実現するものとするなどしてd軸に直交する設定としない場合(主電流非直交)には、ゼロクロス近傍で誤差(外積値)が大きく変動する。これに対し、本実施形態の場合(主電流直交)には、外積値の変動を好適に抑制することができる。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0069】
(1)デッドタイムに起因した誤差電圧の方向を有する直線と高周波電圧指令信号の方向を有する直線とを平行に設定した。これにより、高周波電圧指令信号の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線とのなす角度をゼロとすることができる。
【0070】
(2)デッドタイム補償部34を備えた。これにより、相電流にゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因した高周波電圧信号の誤差が生じることを回避することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図10に、上記第1の実施形態において、回転角度θの誤差Δθを「−Δ°:Δ>0」,「0°」,「+Δ°」のそれぞれとした場合の誤差(外積値)と真の回転角度(電気角と表記)との関係を示す。図示されるように、誤差Δθを有する場合には、主電流を高周波電圧信号に直交させたとしてもゼロクロス近傍で外積値が大きく変動することがある。これは、デッドタイムに起因した誤差電圧と高周波電圧指令信号とが逆方向となる場合に生じるものである。すなわち、図11(b)に示す例では、デッドタイムに起因した誤差電圧と高周波電圧指令信号とが同方向であるため、実際に重畳される高周波電圧信号は高周波電圧指令信号よりも振幅値が大きくなるに過ぎない。これに対し、図11(c)に示す例では、デッドタイムに起因した誤差電圧と高周波電圧指令信号とが逆方向となるため、実際に重畳される高周波電圧信号は、高周波電圧指令信号よりも振幅値が小さくなる。そして、特にこの振幅の縮小量が大きくなる場合、実際に重畳される高周波指令信号は高周波電圧指令信号とは逆方向の電圧信号となる。これが外積値が大きく変動する理由である。ちなみに、誤差Δθを有する場合に主電流を高周波電圧信号に直交させてもゼロクロス近傍で外積値が大きく変動し正しい値からずれるのは、高周波電圧指令信号を重畳しようとする方向がd軸からずれるため、d軸成分がデッドタイムに起因した誤差電圧よりも小さくなりやすいためである。
【0072】
そこで本実施形態では、図12に示すように、モータジェネレータ10の固定子によって規定される電圧ベクトルによって区画される6つの領域A〜Fを主電流I(id,iq)が移動するに際し、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrがPWM処理の周期Tcの前半において正となるか負となるかを交互に切り替える。これは、主電流Iの方向が回転することで、d軸の正方向および各相の正方向が一致する現象とd軸の正方向および各相の負方向が一致する現象との双方の現象が生じることに鑑みたものである。すなわち、d軸の正方向が特定の相の正方向となる場合には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをPWM処理の周期Tcの前半において正とすることで、先の図11(b)に示したケースとなる。これに対し、d軸の正方向が特定の相の負方向となる場合には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをPWM処理の周期Tcの前半において正とすることで、先の図11(c)に示したケースとなる。このため、この場合には、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをPWM処理の周期Tcの前半において負とすることで、先の図11(b)に示したケースとする。
【0073】
図13に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図13において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0074】
図示されるように、本実施形態では、高周波電圧信号設定部50が、実電流id,iqを取り込むことで、高周波電圧指令信号のd軸成分の極性を設定する。
【0075】
図14に、本実施形態の効果を示す。図示されるように、本実施形態の場合(直交+60°切替)には、回転角度θが誤差Δθを有した場合であっても、外積値の変動を好適に抑制することができる。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0077】
(3)デッドタイムに起因した誤差電圧のベクトルの方向と高周波電圧指令信号のベクトルの方向とが一致するように高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を切り替えた。これにより、高周波電圧指令信号がデッドタイムに起因した誤差電圧によって打ち消される事態を好適に回避することができる。
【0078】
(4)高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を、電気角の60°毎に反転させた。これにより、ゼロクロス期間となるに先立って適切な極性とすることが容易となる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
図15に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図15において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0080】
図示されるように、本実施形態にかかる高周波電圧信号設定部50では、高周波電流信号idh,iqhに基づき、これらのベクトルノルムが規定値以下となる場合に、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を切り替える。これは、高周波指令電圧信号の意図する方向を有する直線と固定子の方向を有する直線とが平行となる期間よりも相電流のゼロクロス期間が長い場合に有効な処理である。
【0081】
すなわち、高周波指令電圧信号の意図する方向を有する直線と固定子の方向を有する直線とが平行となる前にゼロクロス期間となることでデッドタイムに起因した誤差電圧が生じると、デッドタイムに起因した誤差電圧のうちの高周波指令電圧信号の成分は、上記一対の直線が平行であるときよりの小さくなる。このためこの場合には、高周波電圧指令信号の極性が先の第2の実施形態において規定されるものとは逆であったとしても、一対の直線が平行である場合ほどには高周波指令電圧信号がデッドタイムに起因した誤差電圧によって打ち消されない。ただし、この場合には、高周波電流信号idh,iqhのベクトルノルムが小さくなると考えられる。したがって、高周波電流信号idh,iqhのベクトルノルムが小さくなることで、高周波電圧指令信号の極性が先の第2の実施形態において規定されるものとは逆であることを把握することができる。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(2)の効果や先の第2の実施形態の上記(3)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0083】
(5)高周波電流信号idh,iqhのベクトルノルムに基づき、デューティ信号Du,Dv,Dwの更新周期の前半における高周波電圧指令信号のベクトルの方向を定めた。これにより、ベクトルの方向を反転させるべきか否かを適切に判断することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0084】
図16に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図16において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0085】
本実施形態では、最小電流最大トルク制御を行うように指令電流idr,iqrを設定する。そして、高周波電圧指令信号(vdhr、vqhr)については、指令電流idr,iqrに直交させる。この場合、回転角度θに誤差が無くても外積値はゼロとはならない。そこで、本実施形態では、目標値設定部70を備え、外積値が目標値設定部70によって設定される目標値となるように回転角度θを操作する。ここで、目標値設定部70では、高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)を入力として目標値を設定する。なお、本実施形態では、高周波電圧指令信号のq軸成分vqhrがゼロではないため、3相変換部30に入力されるq軸の電圧は、重畳部53において、電流制御器28の出力するq軸の指令電圧vqrが上記q軸成分vqhrによって補正されたものとなる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0087】
(6)高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)を、指令電流idr,iqrを基準としてこれに直交するように設定した。これにより、モータジェネレータ10の制御量の制御からの要求事項にしたがって指令電流idr,iqrを設定することができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0088】
図17に、本実施形態にかかる高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)の設定処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0089】
この一連の処理では、まずステップS10において、ゼロクロス領域であるか否かを判断する。そしてゼロクロス領域であると判断される場合、ステップS12において、高周波電圧指令電信号(vdhr、vqhr)を指令電流idr,iqrに直交するように設定する一方、ゼロクロス領域でないと判断される場合には、ステップS14において、高周波電圧指令信号のq軸成分vqhrをゼロとする。この処理は、ゼロクロス領域以外においては、デッドタイムに起因した誤差が生じないことに鑑みたものである。
【0090】
なお、上記ステップS12,S14の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、先の第4の実施形態の上記効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0092】
(7)相電流がゼロクロスする期間において、高周波電圧指令信号の方向を変更してモータジェネレータ10の制御量を制御するための電流の方向に直交させた。これにより、ゼロクロス期間以外においては、d軸方向に高周波電圧指令信号を設定することができる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0093】
図18に、本実施形態にかかる制御装置14の処理に関するブロック図を示す。なお、図18において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
【0094】
図示されるように、本実施形態では、デッドタイムに起因した誤差電圧を打ち消すように高周波電圧信号設定部50によって設定される高周波電圧指令信号を補正し、これに基づきインバータIVを操作する。すなわち、誤差電圧算出部72では、電源電圧VDCと、回転角度θと、相電流iu,iv,iwとに基づき、誤差電圧を算出する。ここで、相電流iu,iv,iwは、ゼロクロス期間を検出するためのものである。ここで、算出される誤差電圧は、図19に示すものとなる。すなわちたとえば、U相のゼロクロス期間において、操作信号gupのオン期間の立上りが他の相との関係で「DT/2」だけ進角側にずれた場合には、インバータIVの出力電圧のU相成分は、「0V」から「VDC」に変化したこととなる。このため、誤差電圧は、{α・VDC・√(2/3)}・(−cosθ,sinθ)となる。ここで、比αは、「DT/Tc」である。
【0095】
そして、誤差補正部74,76では、高周波電圧信号設定部50によって設定された高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)から、誤差電圧算出部72において算出された誤差電圧を減算する。そして、重畳部52,53では、誤差補正部74,76の出力によって指令電圧vdr、vqrを補正して3相変換部30に出力する。なお、外積演算部60には、誤差補正部74,76による補正前の高周波電圧指令信号が入力される。これは、誤差補正部74,76が、インバータIVの出力電圧に含まれる実際の高周波電圧信号を高周波電圧指令信号とするための補正を行うものであることによる。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0097】
(8)デッドタイムに起因した誤差電圧を打ち消すための補正電圧によって高周波電圧指令信号を補正したものに基づき、インバータIVを操作した。これにより、実際に重畳される高周波電圧信号を高周波電圧指令信号に開ループ制御するに際し、デッドタイムに起因した誤差電圧をフィードフォワード補償することができる。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
図20に、本実施形態にかかる回転角度の推定精度低下の抑制処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0099】
この一連の処理では、まずステップS20において、ゼロクロス領域であるか否かを判断する。そしてゼロクロス領域であると判断される場合、ステップS22において、コンバータCVの出力電圧を低下させる。この処理は、デッドタイムに起因した誤差電圧に対する高周波電圧指令信号の実効値を拡大するためのものである。すなわち、コンバータCVの出力電圧(インバータIVの入力電圧)を低下させることで、高周波電圧指令信号のベクトルノルムが同一であったとしても、電源電圧VDCによって規格化された高周波電圧指令信号が大きくなる。このため、指令電圧vdr,vqrに高周波電圧指令信号を重畳することによるPWM信号g*のパルス幅の変化量が大きくなり、ひいてはデッドタイムに起因した誤差電圧による影響を希釈することができる。
【0100】
なお、上記ステップS22の処理が完了する場合や、ステップS20において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0101】
図21に、本実施形態にかかる回転角度の推定精度低下の抑制処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0102】
この一連の処理では、まずステップS30において、ゼロクロス領域であるか否かを判断する。そしてゼロクロス領域であると判断される場合、ステップS32において、デッドタイム期間を短縮する処理を行う。この処理は、デッドタイムに起因した誤差電圧に対する高周波電圧指令信号の実効値の比を拡大するためのものである。
【0103】
なお、上記ステップS32の処理が完了する場合や、ステップS30において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0104】
「平行設定手段について」
デッドタイム補償部34を利用しつつ制御量を制御する際に適用されるものに限らない。ただし、デッドタイム補償部34を利用しない場合には、先の図4からもわかるように、デッドタイム誤差電圧がゼロクロス期間以外にも生じえ、しかも3相のそれぞれの電流の極性に応じて変化するものとなる。このため、都度のデッドタイム電圧のベクトルの方向に基づき、高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)を設定する。なお、都度のデッドタイム電圧は、先の図19に示す関係を利用することで算出することができる。
【0105】
なお、たとえば上記第1の実施形態等において、要求トルクTrがゼロである場合、指令電流iqr=0にできるため、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrをゼロとしてもよい。
【0106】
「方向設定手段について」
上記第2の実施形態において、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を60°毎に反転させる代わりに、30°毎に反転させたり15°毎に反転させたりする等、「60°/n;n=2,3,…」毎に反転させてもよい。ただし、ここでの整数nは、極性を維持する領域が相電流のゼロクロス領域よりも広い領域となるように設定する。
【0107】
制御量の制御用の電流(主電流I)の固定座標系における方向に基づきPWM周期Tcの前半における高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)の符号を定めるものとしては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。たとえばPWM周期Tcの前半における高周波電圧指令信号のd軸成分(vdhr)の符号を原則的に正として且つ、主電流Iの方向に基づき相電流のゼロクロス期間と判断される場合に限って、適宜符号を反転させるものであってもよい。
【0108】
たとえば、高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)を、PWM周期Tcの間にゼロおよび特定の符号を有する値を繰り返す場合には、特定の符号を特定するものとすればよい。
【0109】
なお、PWM周期Tcの前半における高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)の符号を定めるうえで参照するパラメータとしては、主電流I(検出値)に限らず、指令値(Ir)であってもよい。また、指令電流idr,iqrの位相情報と回転角度θとであってもよい。
【0110】
ちなみに、方向設定手段は、平行設定手段とは独立に設けることもできる。すなわちたとえば、上記第2の実施形態において、主電流の指令値Irを最大トルク最小電流制御を実現するためのもの(idr<0)として且つ高周波電圧指令信号をd軸に平行とする場合に、上記第2の実施形態の要領で極性を反転してもよい。この場合であっても、高周波電圧指令信号とデッドタイム電圧とが鈍角をなす場合の方が鋭角をなす場合と比較して実際に重畳される高周波電圧信号のうちの高周波電圧指令信号と同一の成分が小さくなることに鑑み、極性反転によって鈍角となる事態を解消することは有効である。
【0111】
「補正電圧算出手段について」
補正電圧としては、デッドタイム誤差電圧と同じ大きさであって且つ方向が逆となるものに限らない。たとえば、方向が逆であるなら、大きさがデッドタイム誤差電圧と一致しなくてもデッドタイム誤差電圧の影響を低減することはできる。
【0112】
さらに、補正電圧しては、デッドタイム誤差電圧と方向が逆となるものにも限らない。たとえば高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)と同一の方向を有するものであってもよい。この場合であっても、デッドタイム誤差電圧の影響を低減することはできる。ただし、この場合、高周波電圧指令信号(vdhr,vqhr)を補正電圧によって補正したものに基づき、回転角度を推定することが望ましい。
【0113】
さらに、高周波電圧指令信号のベクトルノルムを変えることなく、周期的に変化する極性を反転させる補正電圧を算出してもよい。この場合であっても、高周波電圧指令信号とデッドタイム電圧とが鈍角をなす場合の方が鋭角をなす場合と比較して実際に重畳される高周波電圧信号のうちの高周波電圧指令信号と同一の成分が小さくなることに鑑み、極性反転によって鈍角となる事態を解消することは有効である。
【0114】
デッドタイム補償部34を利用しつつ制御量を制御する際に適用されるものに限らない。ただし、デッドタイム補償部34を利用しない場合には、先の図4からもわかるように、デッドタイム誤差電圧がゼロクロス期間以外にも生じえ、しかも3相のそれぞれの電流の極性に応じて変化するものとなる。このため、都度のデッドタイム電圧に基づき、誤差電圧を算出する。なお、都度のデッドタイム電圧は、先の図19に示す関係を利用することで算出することができる。
【0115】
「推定手段について」
高周波電圧指令信号と高周波電流信号の検出値との外積値に基づき角度相関量を算出するものに限らない。たとえば特開2008−220289号公報に記載されているように、高周波電圧指令信号をd軸方向の電圧およびq軸方向の電圧のそれぞれとした場合の各高周波電流信号のベクトルノルム同士の積であってもよい。
【0116】
角度相関量をその目標値にフィードバック制御すべく回転角度θを操作する手段としては、角度相関量をその目標値に制御すべくまず第1に電気角速度ωを操作するものに限らず、回転角度θを直接操作してもよい。
【0117】
「デッドタイム補償機能について」
デッドタイム補償手段としては、相電流の極性に基づき指令電圧(Duty信号)をフィードフォワード補正するものに限らない。たとえば、インバータの各相の出力電圧の検出値を指令値にフィードバック制御するものであってもよい。この場合であっても、オン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすような補正を行うなら、ゼロクロス期間以外において高周波電圧信号に誤差が生じることを好適に回避することができる。
【0118】
また、デッドタイムに起因した線間平均電圧の誤差を直接の制御量としてこれをゼロに制御するデッドタイム補償手段を備えなくても、たとえば先の図2に示した電流フィードバック制御によっても、相電流がゼロクロスするものがない場合には、デッドタイムに起因する線間電圧のずれは完全に補償される。このため、この場合であっても、フィードバック制御が追従するまでの期間を除けば、ゼロクロスするものがある場合に限って実際に重畳する高周波電圧に誤差が生じることとなる。ちなみに、ゼロクロスする相がある場合、その相におけるデッドタイムに起因する誤差は、先の図5の記載からもわかるように、高周波成分を有するもののPWM処理の1周期Tcにおける平均電圧の誤差としては寄与しない。このため、フィードバック制御によるデッドタイム補償機能によってもゼロクロス期間においては高周波電圧信号に誤差が生じる。
【0119】
なお、必ずしもデッドタイム補償機能を備えるものに限らないことについては、「平行設定手段について」の欄等に記載したとおりである。
【0120】
「キャリアCSについて」
キャリアCSが谷となるタイミングを、指令電圧vur,vvr,vwrの更新タイミングとしてもよい。ただし、この場合、先の第2の実施形態に示した手法を適用するに際しては、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を先の図12に示したものとは逆とする。
【0121】
キャリアCSとしては、三角波に限らず、漸増速度および漸減速度が互いに等しくて且つ漸増期間および漸減期間が互いに等しい設定とすることで、漸増期間と漸減期間とが対称性を有するものであればよい。この場合、デッドタイム補償機能によって、操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらす補正がなされる設定とすることが容易となる。
【0122】
もっとも、これに限らず、たとえば鋸波であってもよい。この場合、制御量をフィードバック制御したとしても、ゼロクロス期間以外においても高周波電圧信号にデッドタイムに起因した誤差が生じうるため、上述した要領でデッドタイムによる誤差の影響を回避または低減することが望ましい。
【0123】
「回転機について」
回転機としては、互いに中性点で連結された3つの固定子を有する3相回転機に限らず、たとえば互いに中性点で連結された5つの固定子を有する5相回転機であってもよい。ただし、この場合、先の第2の実施形態に示した手法を適用するに際しては、高周波電圧指令信号のd軸成分vdhrの極性を、「(360°÷5)/n=72/n°:n=1,2,3…」毎に反転させることが望ましい。
【0124】
「そのほか」
・モータジェネレータ10の最終的な制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度等であってもよい。また、電流ベクトル制御を行うものにも限らず、例えばトルクフィードバック制御を行うものであってもよい。この際、制御量の制御のための操作量として指令電圧を設定し、対称性を有するキャリアと指令電圧との大小比較に基づき操作信号を設定するものであるなら、制御量のフィードバック制御によってデッドタイム補償機能をもたせることができる。
【0125】
・構造上、突極性を有する回転機としては、上記モータジェネレータ10に限らない。例えば同期リラクタンスモータ(SynRM)でもよい。
【0126】
・回転機としては、車載主機に限らない。例えば車載パワーステアリングに搭載される電動機であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
10…モータジェネレータ、14…制御装置、50…高周波電圧信号設定部、60…外積演算部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、
前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、
前記重畳手段は、前記高周波電流信号の検出値と対応付けられる前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段を備え、
前記指令値のベクトルノルムを所与とした場合に、前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に起因して前記指令値設定手段によって設定される指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線との平行からの乖離を低減すべく、前記直流交流変換回路および前記直流電圧源の少なくとも一方を操作する低減手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記低減手段は、前記指令値設定手段に、前記デッドタイム電圧の方向を有する直線と前記指令値の方向を有する直線とが平行となるように前記指令値を設定させる平行設定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、
前記平行設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を設定させることを特徴とする請求項2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記平行設定手段は、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする期間を含む所定期間となることで、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を切り替えることを特徴とする請求項3記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記平行設定手段は、前記デッドタイム電圧のベクトルの方向と前記指令値の方向とが一致するように前記指令値の方向を定める方向設定手段を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、
前記指令値設定手段は、前記回転機の制御量を制御するために前記回転機の端子に印加する電圧の指令値についての更新周期の間に、前記指令値の方向を互いに逆方向となる2つの方向のそれぞれに1度ずつ設定するものであり、
前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする請求項5記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記回転機は、多相回転機であり、
前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を前記回転機の電気角の所定角度毎に反転させることを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記方向設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に基づき前記指令値の方向を定めることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記方向設定手段は、前記高周波電流信号の大きさに基づき、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記直流電圧源は、その出力電圧を可変制御するものであり、
前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記直流電圧源の出力電圧を低下させることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記デッドタイム期間を短縮することを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、
前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下が、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする状況下であることを特徴とする請求項10または11記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記重畳手段は、前記デッドタイム電圧を打ち消すための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段とをさらに備え、
前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、
前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、
前記重畳手段は、
前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段と、
前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に基づき、前記回転機に実際に重畳される高周波電圧信号に前記デッドタイム電圧が及ぼす影響を低減するための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、
前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段と、
を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項15】
前記補正電圧は、前記デッドタイム電圧を打ち消す電圧に設定され、
前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする請求項14記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、
前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、
前記重畳手段は、
前記高周波電圧信号の指令値であって且つ極性を周期的に反転させる指令値を設定する指令値設定手段と、
前記デッドタイム期間に前記回転機に印加されるデッドタイム電圧に起因して実際に重畳される高周波電圧が前記指令値からずれるのを抑制すべく前記指令値の極性の反転タイミングを設定する方向設定手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項17】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項1】
突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、
前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、
前記重畳手段は、前記高周波電流信号の検出値と対応付けられる前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段を備え、
前記指令値のベクトルノルムを所与とした場合に、前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に起因して前記指令値設定手段によって設定される指令値の方向を有する直線と実際に重畳される高周波電圧信号の方向を有する直線との平行からの乖離を低減すべく、前記直流交流変換回路および前記直流電圧源の少なくとも一方を操作する低減手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記低減手段は、前記指令値設定手段に、前記デッドタイム電圧の方向を有する直線と前記指令値の方向を有する直線とが平行となるように前記指令値を設定させる平行設定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、
前記平行設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を設定させることを特徴とする請求項2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記平行設定手段は、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする期間を含む所定期間となることで、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に直交するように前記指令値の方向を切り替えることを特徴とする請求項3記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記平行設定手段は、前記デッドタイム電圧のベクトルの方向と前記指令値の方向とが一致するように前記指令値の方向を定める方向設定手段を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、
前記指令値設定手段は、前記回転機の制御量を制御するために前記回転機の端子に印加する電圧の指令値についての更新周期の間に、前記指令値の方向を互いに逆方向となる2つの方向のそれぞれに1度ずつ設定するものであり、
前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする請求項5記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記回転機は、多相回転機であり、
前記方向設定手段は、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を前記回転機の電気角の所定角度毎に反転させることを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記方向設定手段は、前記回転機の制御量を制御するための電流の方向に基づき前記指令値の方向を定めることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記方向設定手段は、前記高周波電流信号の大きさに基づき、前記更新周期の前半における前記指令値の方向を定めることを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記直流電圧源は、その出力電圧を可変制御するものであり、
前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記直流電圧源の出力電圧を低下させることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記低減手段は、前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下、前記デッドタイム期間を短縮することを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有し、
前記なす角度のゼロからのずれが大きくなると想定される状況下が、前記回転機の端子を流れる電流がゼロクロスする状況下であることを特徴とする請求項10または11記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記重畳手段は、前記デッドタイム電圧を打ち消すための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段とをさらに備え、
前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、
前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、
前記重畳手段は、
前記高周波電圧信号の指令値を設定する指令値設定手段と、
前記デッドタイム期間において前記直流交流変換回路によって前記回転機の端子に印加されるデッドタイム電圧に基づき、前記回転機に実際に重畳される高周波電圧信号に前記デッドタイム電圧が及ぼす影響を低減するための補正電圧を定める補正電圧算出手段と、
前記指令値設定手段によって設定される前記指令値を、前記補正電圧によって補正したものに基づき前記直流交流変換回路を操作する操作手段と、
を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項15】
前記補正電圧は、前記デッドタイム電圧を打ち消す電圧に設定され、
前記推定手段は、前記補正電圧による補正のなされる前の前記指令値と前記高周波電流信号とに基づき前記回転角度を推定することを特徴とする請求項14記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
突極性を有する回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子および該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを備える直流交流変換回路の操作によって前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機の電気角周波数よりも高い周波数を有する高周波電圧信号を前記直流交流変換回路の出力電圧に重畳する重畳手段と、該重畳された高周波電圧信号に応じて前記回転機に流れる高周波電流信号の検出値に基づき前記回転機の回転角度を推定する推定手段と、を備える回転機の制御装置において、
前記正極に接続するスイッチング素子と前記負極に接続するスイッチング素子とのいずれか一方および他方がそれぞれオンおよびオフとなる状態からいずれか一方および他方がそれぞれオフおよびオンとなる状態に切り替えるに際し、双方がオフ状態となるデッドタイム期間が設けられ、
前記重畳手段は、
前記高周波電圧信号の指令値であって且つ極性を周期的に反転させる指令値を設定する指令値設定手段と、
前記デッドタイム期間に前記回転機に印加されるデッドタイム電圧に起因して実際に重畳される高周波電圧が前記指令値からずれるのを抑制すべく前記指令値の極性の反転タイミングを設定する方向設定手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項17】
前記直流交流変換回路の操作信号のオン操作指令期間の始点および終点を同一時間ずつずらすことで、前記デッドタイムに起因した誤差を補償するデッドタイム補償機能をさらに有することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−170210(P2012−170210A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28352(P2011−28352)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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