説明

圧力検知スイッチ

【課題】耐久性の向上を図ることができる圧力検知スイッチの提供。
【解決手段】外側電極51内に外側導線54a〜54cを設け、各外側導線54a〜54cの両端側に各外側導線接続部56a,56bを設け、外側導線接続部56aと内側導線55との間に検出用抵抗57を設けた。外側電極51内に各外側導線54a〜54cを並列に設けることができ、各外側導線54a〜54cのうちの1本が断線しても断線していない他の外側導線が導通状態にあるので、このときの電流値(通常電流値)の低下を抑制できる。よって、圧力検知スイッチ50を引き続き利用でき、圧力検知スイッチ50の耐久性を向上させることができる。各外側導線54a〜54cの全てが断線した場合には大きな電流値の低下が生じ、制御装置30によりフェイルセーフモードへ移行させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル状に形成されて被検出物の接触を検出する圧力検知スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、当該車両に設けられるスライドドアやサンルーフ等の開閉体を自動的に開閉するようにした自動開閉装置を備えたものがある。自動開閉装置は、車室内等に設けられる操作スイッチにより駆動される電動モータを備えており、操作スイッチにより電動モータを回転駆動することで開閉体を開閉駆動するようになっている。
【0003】
自動開閉装置には、自動で開閉動作する開閉体により障害物(被検出物)が挟み込まれるのを防止するために、挟み込み防止機能が設けられている。自動開閉装置には、障害物の接触を検出する圧力検知スイッチが設けられており、圧力検知スイッチによって圧力を検出、つまり障害物の接触を検出した場合に、電動モータの回転駆動を停止あるいは反転するようにしている。これにより、開閉体により障害物が挟み込まれることを未然に防止することができる。
【0004】
圧力検知スイッチは、ケーブル状に形成されて開閉体の端部や開口部の端部に取り付けられるようになっている。このような圧力検知スイッチを備えた技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0005】
特許文献1に記載された圧力検知スイッチは、導体により管状に形成され内部に外側導線を有する外側電極と、導体により線状に形成され内部に内側導線を有する内側電極と、絶縁体により形成され各電極間に配置されるスペーサ部材と、外側導線と内側導線との間に設けられる検出用抵抗とを備えている。外側電極の内部には1本の外側導線が設けられており、この外側導線は外側電極の両端側で2回折り返されている。このように、外側導線を2回折り返すことにより、1本の外側導線における3箇所が外側電極の内部に設けられている。
【0006】
そして、外側電極に障害物が接触する等して外側電極が弾性変形すると、外側電極が内側電極に接触され、これにより、各電極の内部に設けられた外側導線および内側導線が外側電極および内側電極を介して短絡される。このときの検出用抵抗を通らない短絡電流を制御装置に検出させることで、障害物の接触を検出するようにしている。
【特許文献1】特開2007−335266号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動開閉装置は、挟み込み防止機能を確実に機能させるために、圧力検知スイッチの動作状態を監視し、圧力検知スイッチに異常が見つかった場合には、フェイルセーフモードに移行、つまり自動開閉装置の停止等を実行するようにしている。ここで、圧力検知スイッチの異常状態としては、外側電極が繰り返し弾性変形されることに起因する外側導線の断線等があり、外側導線が断線した場合には、比較的大きな内部抵抗を有する外側電極を介して外側導線に電流が流れるようになり、このときの大きな電流値の低下(抵抗値の増加)を検出することで外側導線の断線を検知することができる。
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された圧力検知スイッチを上述のようなフェイルセーフモードを有する自動開閉装置に適用した場合には、1本の外側導線を折り返して外側導線の3箇所を外側電極の内部に設けているため、例えば、外側電極内の3本の外側導線のうちの1本が断線した場合であってもフェイルセーフモードに移行することになる。そして、このようなフェイルセーフモードが実行された場合には、圧力検知スイッチを新品に交換する必要が生じる。このように、特許文献1に記載された圧力検知スイッチにおいては、耐久性向上の観点からその構造を見直す必要が生じていた。
【0009】
本発明の目的は、耐久性の向上を図ることができる圧力検知スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧力検知スイッチは、ケーブル状に形成され、被検出物の接触を検出する圧力検知スイッチであって、可撓性を有する導体により形成される第1電極および第2電極と、絶縁体により形成され、前記第1電極と前記第2電極との間に隙間を形成するための隙間形成部材と、前記第1電極の軸方向に沿うよう前記第1電極の内部に設けられ、前記第1電極に電気的に接続される第1導線と、前記第2電極の軸方向に沿うよう前記第2電極の内部に設けられ、前記第2電極に電気的に接続される第2導線とを備え、前記第1導線および前記第2導線のうちの少なくともいずれか一方を複数設け、当該一方の各導線の両端側に、前記一方の各導線を電気的に接続する一対の導線接続部を設け、前記各導線接続部のうちの一方と、前記第1導線および前記第2導線のうちの他方の導線の端部との間に、検出用抵抗を電気的に接続することを特徴とする。
【0011】
本発明の圧力検知スイッチは、前記第1導線および第2導線のうちの他方の導線を複数設け、当該他方の各導線の両端側に、前記他方の各導線を電気的に接続する一対の導線接続部を設け、前記一方の各導線に対応する導線接続部の一方と、前記他方の各導線に対応する導線接続部の一方との間に、前記検出用抵抗を電気的に接続することを特徴とする。
【0012】
本発明の圧力検知スイッチは、前記第1電極および前記第2電極のうちのいずれか一方を管状の電極とし、前記第1電極および前記第2電極のうちのいずれか他方を前記管状の電極の内側に配置される線状の電極とし、前記隙間形成部材を、前記管状の電極の内側と前記線状の電極の外側との間に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1導線および第2導線のうちの少なくともいずれか一方を複数設け、当該一方の各導線の両端側に、一方の各導線を電気的に接続する一対の導線接続部を設け、各導線接続部のうちの一方と、第1導線および前記第2導線のうちの他方の導線の端部との間に、検出用抵抗を電気的に接続するので、一方の各導線を電極の内部に並列に設けることができる。一方の各導線のうちの1本が断線したとしても断線していない他の導線が導通状態にあるので、このときの電流値の低下を抑制することができる。したがって、圧力検知スイッチを引き続き利用することができ、ひいては、圧力検知スイッチの耐久性を向上させることができる。一方の各導線の全てが断線した場合には大きな電流値の低下が生じ、制御装置によりフェイルセーフモードへ移行させることができる。
【0014】
本発明によれば、第1導線および第2導線のうちの他方の導線を複数設け、当該他方の各導線の両端側に、他方の各導線を電気的に接続する一対の導線接続部を設け、一方の各導線に対応する導線接続部の一方と、他方の各導線に対応する導線接続部の一方との間に、検出用抵抗を電気的に接続するので、他方の各導線についても電極の内部に並列に設けることができる。
【0015】
本発明によれば、第1電極および第2電極のうちのいずれか一方を管状の電極とし、第1電極および第2電極のうちのいずれか他方を管状の電極の内側に配置される線状の電極とし、隙間形成部材を、管状の電極の内側と線状の電極の外側との間に配置するので、管状の電極の略全周囲から被検出物の接触を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1はワンボックスタイプの車両を示す側面図を、図2は本発明に係る圧力検知スイッチを備えた自動開閉装置を示す平面図を、図3は図2の自動開閉装置の制御体系を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0017】
図1に示すように、車両10はワンボックスタイプの乗用車であり、車両10を形成する車体11の側部12には、開口部12aが設けられている。開口部12aは、図中二点鎖線矢印に示すように、車体11の前後方向にスライドする開閉体としてのスライドドア13により開閉されるようになっている。
【0018】
図2に示すように、スライドドア13にはローラアッシー14が設けられており、ローラアッシー14が車体11の側部12に固定されたガイドレール15に案内されることにより、スライドドア13は、図中実線で示す全開位置と二点鎖線で示す全閉位置との間でスライドするようになっている。ガイドレール15の車体前方側には、車室内側(図中上側)に湾曲する曲部15aが設けられており、ローラアッシー14が曲部15aに案内されることにより、スライドドア13は車体11の側部12と同一面に収まるよう、車体11の内側に引き込まれた状態で閉じられるようになっている。
【0019】
ここで、図示はしないが、ローラアッシー14は、図示する部位以外にスライドドア13の前端部の上下部分にもそれぞれ設けられ、これらに対応して車体11の開口部12aの上下部分にもそれぞれガイドレールが設けられている。このように、スライドドア13は計3カ所において車体11に支持されており、よって、スライドドア13は安定したスライド動作が可能となっている。
【0020】
図2に示すように、車体11にはスライドドア13を自動的に開閉する自動開閉装置20が搭載されている。自動開閉装置20は、ガイドレール15の車体前後方向の略中央部に隣接して車体11に固定される駆動ユニット21を備えている。駆動ユニット21からは、車体前方側と後方側とに向けてケーブル22a,22bが引き出されている。駆動ユニット21から車体前方側に引き出されたケーブル22aは、ガイドレール15の前端側に設けられた反転プーリ23aを介して車体前方側からローラアッシー14に接続され、車体後方側に引き出されたケーブル22bは、ガイドレール15の後端側に設けられた反転プーリ23bを介して車体後方側からローラアッシー14に接続されている。
【0021】
駆動ユニット21は、ケーブル22a,22bを駆動するようになっており、駆動ユニット21によりケーブル22a,22bが駆動されると、スライドドア13は車体前方側または後方側のケーブル22a,22bに引っ張られて自動的に開閉動作するようになっている。つまり、自動開閉装置20は、所謂ケーブル式となっている。
【0022】
図3に示すように、駆動ユニット21は、駆動源としての電動モータ24と、電動モータ24に固定される減速機25とを有しており、電動モータ24の回転は、減速機25により所定の回転数にまで減速されて出力軸26から出力されるようになっている。ここで、電動モータ24としては、たとえばブラシ付き直流モータやブラシレス直流モータ等、正逆両方向に回転可能なものが用いられる。
【0023】
出力軸26には、円筒状に形成されたドラム27が固定されており、ドラム27の外周面には、各ケーブル22a,22bが複数回巻き付けられている。これにより、電動モータ24が正転すると、ドラム27が図中時計回り方向に回転して閉側のケーブル22aがドラム27に巻き取られ、スライドドア13はケーブル22aに引っ張られて閉動作する。これとは逆に、電動モータ24が逆転すると、ドラム27が図中反時計回り方向に回転して開側のケーブル22bがドラム27に巻き取られ、スライドドア13はケーブル22bに引っ張られて開動作する。
【0024】
減速機25の内部には、電磁クラッチ(図示せず)が設けられている。電磁クラッチは、スライドドア13を手動で開閉操作する際に、電動モータ24と出力軸26との間の動力伝達経路を遮断して、スライドドア13の開閉操作力を低減するようになっている。ドラム27とスライドドア13との間には、各ケーブル22a,22bに所定の張力を付与するテンショナ機構(図示せず)が設けられており、テンショナ機構は、自動開閉装置20の長期使用に起因する各ケーブル22a,22bの伸びを吸収するようになっている。
【0025】
出力軸26には、周方向に多数の磁極が着磁された多極着磁磁石28が固定されており、多極着磁磁石28の近傍には互いに所定の位相差を設けて2つのホールIC29a,29bが配置されている。出力軸26が回転すると、各ホールIC29a,29bからは、出力軸26の回転数に比例した周期のパルス信号が出力されるようになっている。
【0026】
自動開閉装置20は、電動モータ24の回転駆動を制御する制御装置30を備えている。制御装置30は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)やROM,RAMなどのメモリ等を備えた所謂マイクロコンピュータとしての機能を有しており、配線を介して電動モータ24に電気的に接続されている。
【0027】
制御装置30には、各ホールIC29a,29bが接続されており、制御装置30は、各ホールIC29a,29bから入力されるパルス信号の周期に基づいて出力軸26の回転数つまりスライドドア13の移動速度を検出できるようになっている。また、制御装置30は、これらのパルス信号の出現タイミングに基づいて出力軸26の回転方向つまりスライドドア13の移動方向を検出し、さらには、スライドドア13が基準位置(例えば、全閉位置)にあるときを起点としてパルス信号をカウントすることより、スライドドア13の開閉位置を検出できるようになっている。
【0028】
スライドドア13にはドアハンドル31が設けられており、ドアハンドル31は、スライドドア13を開閉させる開閉スイッチとしての機能を備えている。操作者によってドアハンドル31が操作されると、ドアハンドル31から制御装置30に開閉指令信号が入力され、制御装置30は入力された開閉指令信号やスライドドア13の開閉位置,開閉速度等をメモリ内に格納された制御プログラムに従って演算し、この演算結果に基づいて電動モータ24の回転駆動制御を実行する。例えば、ドアハンドル31が閉操作されて制御装置30にスライドドア13を閉じる旨の指令信号が入力されると、制御装置30により電動モータ24が正転されてスライドドア13は閉動作する。これとは逆に、ドアハンドル31が開操作されて制御装置30にスライドドア13を開く旨の指令信号が入力されると、制御装置30により電動モータ24が逆転されてスライドドア13は開動作する。
【0029】
スライドドア13の車体前方側、つまりスライドドア13が閉じる際に進行方向側となる端部には、センサユニット40が取り付けられている。センサユニット40は、スライドドア13と被検出物としての障害物DA(図1参照)との接触や、当該接触に伴うスライドドア13による障害物DAの挟み込みを検出するようになっている。
【0030】
図4(a),(b)はセンサユニットの取り付け状態を説明する説明図を、図5(a),(b)は圧力検知スイッチの詳細構造を説明する断面図を、図6は図5の圧力検知スイッチの回路図をそれぞれ表している。
【0031】
図4(a)に示すように、センサユニット40は、可撓性を有する絶縁体であるゴムにより形成されたセンサホルダ41を備えている。センサホルダ41は、スライドドア13に設けられたブラケット42をセンサホルダ41で挟み込むようにして固定され、その先端部はスライドドア13の端部よりも車体前方側に突出されている。
【0032】
センサホルダ41のスライドドア13の端部よりも車体前方側に突出した部分には、車体上下方向に貫通する装着孔41aが形成されている。装着孔41aには、長尺のケーブル状に形成された圧力検知スイッチ50が装着されている。ただし、センサユニット40のスライドドア13への取り付け方としては、図4(b)に示すように、センサホルダ41をスライドドア13の先端側に直接固定するようにしても良い。
【0033】
図5に示すように、圧力検知スイッチ50は、第1電極としての外側電極51と第2電極としての内側電極52とを有している。外側電極51は、例えば、導電性ゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM))等の可撓性を有する導体により管状(チューブ状)に形成されており、その内部は中空となっている。内側電極52は、外側電極51と同様に導電性ゴムなどの可撓性を有する導体により中実の線状に形成されており、外側電極51の内側(中空部分)に外側電極51と同軸となるよう配置されている。
【0034】
外側電極51と内側電極52との間には、隙間形成部材としての1本のスペーサ部材53が設けられている。スペーサ部材53は、例えば、ゴム等の絶縁体により形成されており、外側電極51の内周面(内側)と内側電極52の外周面(外側)との間に螺旋状に配置されることで外側電極51と内側電極52との間に隙間Oを形成するようになっている。このように、スペーサ部材53を外側電極51と内側電極52との間に螺旋状に配置することで、圧力検知スイッチ50の長手方向および周方向の各位置において、隙間Oの径方向寸法を略均一化するようにしている。よって、外側電極51に外力Fが加えられない通常状態においては、外側電極51と内側電極52とはスペーサ部材53により互いに電気的に絶縁された状態となっている。
【0035】
外側電極51の内部には、第1導線としての3本の外側導線(一方の各導線)54a〜54cが設けられている。各外側導線54a〜54cは、外側電極51の軸方向に沿うようそれぞれ等間隔で、かつ、スペーサ部材53の螺旋の巻き方向と同じ巻き方向となっており、各外側導線54a〜54cは外側電極51に電気的に接続されている。ただし、スペーサ部材53の螺旋の巻き方向および各外側導線54a〜54cの螺旋の巻き方向は、それぞれ逆方向となるよう異ならせることもできる。
【0036】
内側電極52の内部には、その軸方向に沿うよう第2導線としての1本の内側導線(他方の導線)55が設けられており、この内側導線55は内側電極52に電気的に接続されている。ただし、内側導線55は内側電極52の内部に螺旋状に設けても良く、この場合には、内側電極52の軸方向に向けて外力が加わったとしても、内側導線55の断線を確実に防止できるようになる。
【0037】
各外側導線54a〜54cは、図6に示すように外側電極51の内部に並列に設けられており、各外側導線54a〜54cの両端側は、外側電極51の両端部から外部に延出されている。各外側導線54a〜54cの両端側には、外側電極51の外部で各外側導線54a〜54cのそれぞれを電気的に接続する一対の外側導線接続部(導線接続部)56a,56bが設けられている。各外側導線接続部56a,56bは、例えば、半田付け等の導電材料を用いた接続手段により形成されている。
【0038】
各外側導線接続部56a,56bのうちの一方(図中上側)の外側導線接続部56aと内側導線55の一方の端部との間には、所定の抵抗値(例えば5Ω)に設定された検出用抵抗57が電気的に接続されている。各外側導線接続部56a,56bのうちの他方(図中下側)の外側導線接続部56bは、配線58を介して車体11に電気的に接続(接地)され、内側導線55の他方の端部は、配線59を介して制御装置30に電気的に接続されている。
【0039】
各外側導線54a〜54cと内側導線55とが短絡していない通常状態においては、制御装置30は、検出用抵抗57を通る通常電流(小電流)を検出しており、これにより障害物DA(図1参照)の接触が無いと判断するようになっている。一方、各外側導線54a〜54cと内側導線55とが短絡した場合においては、制御装置30は短絡電流(大電流)を検出することとなり、これにより障害物DAの接触が有ると判断するようになっている。
【0040】
このように、制御装置30は、通常電流および短絡電流を検出することにより障害物DAの接触を判断するようになっており、通常電流を検出した場合には、電動モータ24を通常通りに回転駆動してスライドドア13を開閉させ、短絡電流を検出した場合には、電動モータ24を停止させるか反転駆動させて、スライドドア13による障害物DAの挟み込みを回避するようになっている。
【0041】
次に、各外側導線54a〜54cの断線状態について、図6を参照しつつ詳細に説明する。
【0042】
例えば、外側電極51の繰り返しの弾性変形により、各外側導線54a〜54cのうちの1本(外側導線54a)が断線した場合には、断線していない他の2本の外側導線54b,54cは導通状態となっている。このため、外側電極51と内側電極52とが接触していない通常状態において、制御装置30は、検出用抵抗57を通る通常電流を検出することができ、これにより圧力検知スイッチ50を引き続き使用することができる。このとき、各外側導線54a〜54cの全てが断線していない正常時に比して通常電流の大きさには微小差が生じ、したがって、制御装置30側でこの通常電流の微少差を検出できるよう判断閾値を細かく複数設定しておくことにより、各外側導線54a〜54cのうちの何本が断線したかを制御装置30に判定させることができる。また、この断線の判定結果を用いることにより、車両10の運転者等に「要点検」あるいは「要交換」等の警告を発生させることもできる。
【0043】
各外側導線54a〜54cの全てが断線した場合、または内側導線55が断線した場合には、外側電極51または内側電極52の比較的大きな内部抵抗値(例えば10Ω)によって、外側電極51と内側電極52とが接触していない通常状態の通常電流の大きさは微小値になる。これにより、従前と同様に、電流値の大幅な減少を制御装置30に検出させることで、フェイルセーフモードへ移行させることができる。
【0044】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る圧力検知スイッチ50によれば、外側電極51の内部に3本の外側導線54a〜54cを設け、各外側導線54a〜54cの両端側に各外側導線接続部56a,56bを設け、外側導線接続部56aと内側導線55の一端側との間に検出用抵抗57を設けたので、外側電極51の内部に各外側導線54a〜54cを並列に設けることができる。各外側導線54a〜54cのうちの1本が断線したとしても断線していない他の外側導線が導通状態にあるので、このときの電流値(通常電流値)の低下を抑制することができる。したがって、圧力検知スイッチ50を引き続き利用することができ、ひいては、圧力検知スイッチ50の耐久性を向上させることができる。各外側導線54a〜54cの全てが断線した場合には大きな電流値(通常電流値)の低下が生じ、制御装置30によりフェイルセーフモードへ移行させることができる。
【0045】
また、第1実施の形態に係る圧力検知スイッチ50によれば、外側電極51を管状の電極とし、内側電極52を外側電極51の内側に配置される線状の電極とし、スペーサ部材53を、外側電極51の内周面と内側電極52の外周面との間に配置したので、外側電極51の略全周囲から障害物DAの接触を検出することが可能となる。したがって、センサホルダ41(図4参照)への組み付け方向性を無くすことができ、圧力検知スイッチの組み付け作業性を簡素化することができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図7(a),(b)は第2実施の形態に係る圧力検知スイッチの詳細構造を説明する断面図を表している。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分には同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
第2実施の形態に係る圧力検知スイッチ60は、第1実施の形態に比して、各外側導線54a〜54cに合わせて3本のスペーサ部材61a〜61cを設けた点と、外側電極51の内周面と内側電極52の外周面との間の寸法、つまり、隙間Oの径方向に対する寸法を小さくした点とが異なっている。
【0048】
各外側導線54a〜54cと各スペーサ部材61a〜61cとの螺旋ピッチは、いずれも同じ寸法に設定されており、図7(b)に示すように、各スペーサ部材61a〜61cの間隔の略中央部分に各外側導線54a〜54cを配置するようにしている。
【0049】
以上のように構成した第2実施の形態に係る圧力検知スイッチ60においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態においては、3本のスペーサ部材61a〜61cを設けて、隙間Oの径方向に対する寸法を小さくしたので、圧力検知スイッチの検出感度を低下させること無く外側電極51の弾性変形量を抑えることができ、したがって、圧力検知スイッチの耐久性をより向上させることができる。
【0050】
次に、本発明の第3実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図8は第3実施の形態に係る圧力検知スイッチの詳細構造を説明する断面図を、図9は図8の圧力検知スイッチの回路図を、図10(a),(b)は図8の圧力検知スイッチの動作状態を説明する説明図をそれぞれ表している。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分には同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
第3実施の形態に係る圧力検知スイッチ70は、図8に示すように、第1電極としての第1平板状電極71と第2電極としての第2平板状電極72とを有している。各平板状電極71,72は、第1実施の形態と同様に可撓性を有する導体により形成されており、何れも同じ形状となっている。各平板状電極71,72は、外皮ケース73の内部にそれぞれ対向するよう固定されている。外皮ケース73は、可撓性を有する絶縁体により形成され、断面が略四角形形状の中空となっており、外皮ケース73は、本発明における隙間形成部材を構成している。つまり、外皮ケース73は、当該外皮ケース73の自然状態(非変形状態)において、各平板状電極71,72間に隙間O(図10(a)参照)を形成し、各平板状電極71,72を互いに電気的に絶縁した状態とするものである。
【0052】
第1平板状電極71の内部には、3本の第1導線(一方の各導線)74a〜74cが並列に設けられており、各第1導線74a〜74cは、互いに所定隙間を介して第1平板状電極71に電気的に接続されている。第2平板状電極72の内部には、3本の第2導線(他方の各導線)75a〜75cが並列に設けられており、各第2導線75a〜75cは、互いに所定隙間を介して第2平板状電極72に電気的に接続されている。
【0053】
各第1導線74a〜74cの両端側は、第1平板状電極71の両端部から外部に延出されており、各第1導線74a〜74cの両端側には、図9に示すように第1平板状電極71の外部で各第1導線74a〜74cのそれぞれを電気的に接続する一対の第1導線接続部(導線接続部)76a,76bが設けられている。各第2導線75a〜75cの両端側は、第2平板状電極72の両端部から外部に延出されており、各第2導線75a〜75cの両端側には、図9に示すように第2平板状電極72の外部で各第2導線75a〜75cのそれぞれを電気的に接続する一対の第2導線接続部(導線接続部)77a,77bが設けられている。各第1導線接続部76a,76bおよび各第2導線接続部77a,77bにおいても、第1実施の形態と同様に半田付け等の導電材料を用いた接続手段により形成されている。
【0054】
図9に示すように、各第1導線74a〜74cに対応する一方の第1導線接続部76aと、各第2導線75a〜75cに対応する一方の第2導線接続部77aとの間には、所定の抵抗値(例えば5Ω)に設定された検出用抵抗57が電気的に接続されている。また、各第1導線74a〜74cに対応する他方の第1導線接続部76bは、配線58を介して車体11に電気的に接続(接地)され、各第2導線75a〜75cに対応する他方の第2導線接続部77bは、配線59を介して制御装置30に電気的に接続されている。
【0055】
図8および図10(b)に示すように、圧力検知スイッチ70に障害物DAが接触する等して外皮ケース73に外力Fが加わると、外皮ケース73が弾性変形し、各平板状電極71,72が互いに近接するよう移動される。その後、各平板状電極71,72が互いに電気的に接触した状態となり、第1実施の形態と同様に制御装置30に障害物DAの接触が有ると判断させることができる。なお、各第1導線74a〜74cおよび各第2導線75a〜75cの断線状態についても第1実施の形態と同様である。
【0056】
以上のように構成した第3実施の形態に係る圧力検知スイッチ70によれば、図8および図10に示すように、障害物DAの接触を検出できる方向が図中上下方向に限定されるものの、断面が略四角形形状の外皮ケース73の内部に、同一形状の一対の平板状電極71,72をそれぞれ対向するよう配置するので、圧力検知スイッチ70の構造を大幅に簡素化することが可能となる。
【0057】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態においては、外側電極51,第1平板状電極71および第2平板状電極72の内部に、それぞれ3本の導線(第1導線)を設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、2本または4本以上の導線を設けることもできる。導線の本数を増やすことで圧力検知スイッチの検出感度を向上させることができる。
【0058】
また、上記第1および第2実施の形態においては、内側電極52の内部に、第2導線としての内側導線55を1本設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、第3実施の形態と同様に、第2導線を複数本(2本以上)設けるようにしても良い。
【0059】
さらに、上記各実施の形態においては、車体11の側部12に設けられたスライドドア13の端部に圧力検知スイッチを取り付けたものを示したが、本発明はこれに限らず、開口部12aの端部(図1に示すピラーPL)に圧力検知スイッチを取り付けることもできる。
【0060】
また、上記各実施の形態においては、圧力検知スイッチを、自動開閉装置20により開閉されるスライドドア13の挟み込み防止機能に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、自動開閉装置により開閉されるヒンジ式ドア,バックドア,ウインドガラス,サンルーフ,トランクリッド等の挟み込み防止機能にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ワンボックスタイプの車両を示す側面図である。
【図2】本発明に係る圧力検知スイッチを備えた自動開閉装置を示す平面図である。
【図3】図2の自動開閉装置の制御体系を説明する説明図である。
【図4】(a),(b)は、センサユニットの取り付け状態を説明する説明図である。
【図5】(a),(b)は、圧力検知スイッチの詳細構造を説明する断面図である。
【図6】図5の圧力検知スイッチの回路図である。
【図7】(a),(b)は、第2実施の形態に係る圧力検知スイッチの詳細構造を説明する断面図である。
【図8】第3実施の形態に係る圧力検知スイッチの詳細構造を説明する断面図である。
【図9】図8の圧力検知スイッチの回路図である。
【図10】(a),(b)は、図8の圧力検知スイッチの動作状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 車両
11 車体
12 側部
12a 開口部
13 スライドドア
14 ローラアッシー
15 ガイドレール
15a 曲部
20 自動開閉装置
21 駆動ユニット
22a,22b ケーブル
23a,23b 反転プーリ
24 電動モータ
25 減速機
26 出力軸
27 ドラム
28 多極着磁磁石
29a,29b ホールIC
30 制御装置
31 ドアハンドル
40 センサユニット
41 センサホルダ
41a 装着孔
42 ブラケット
50 圧力検知スイッチ(第1実施の形態)
51 外側電極(第1電極)
52 内側電極(第2電極)
53 スペーサ部材(隙間形成部材)
54a〜54c 外側導線(第1導線,一方の各導線)
55 内側導線(第2導線,他方の導線)
56a,56b 外側導線接続部(導線接続部)
57 検出用抵抗
58,59 配線
60 圧力検知スイッチ(第2実施の形態)
61a〜61c スペーサ部材(隙間形成部材)
70 圧力検知スイッチ(第3実施の形態)
71 第1平板状電極(第1電極)
72 第2平板状電極(第2電極)
73 外皮ケース(隙間形成部材)
74a〜74c 第1導線(一方の各導線)
75a〜75c 第2導線(他方の各導線)
76a,76b 第1導線接続部(導線接続部)
77a,77b 第2導線接続部(導線接続部)
DA 障害物(被検出物)
F 外力
O 隙間
PL ピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル状に形成され、被検出物の接触を検出する圧力検知スイッチであって、
可撓性を有する導体により形成される第1電極および第2電極と、
絶縁体により形成され、前記第1電極と前記第2電極との間に隙間を形成するための隙間形成部材と、
前記第1電極の軸方向に沿うよう前記第1電極の内部に設けられ、前記第1電極に電気的に接続される第1導線と、
前記第2電極の軸方向に沿うよう前記第2電極の内部に設けられ、前記第2電極に電気的に接続される第2導線とを備え、
前記第1導線および前記第2導線のうちの少なくともいずれか一方を複数設け、当該一方の各導線の両端側に、前記一方の各導線を電気的に接続する一対の導線接続部を設け、前記各導線接続部のうちの一方と、前記第1導線および前記第2導線のうちの他方の導線の端部との間に、検出用抵抗を電気的に接続することを特徴とする圧力検知スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力検知スイッチにおいて、前記第1導線および第2導線のうちの他方の導線を複数設け、当該他方の各導線の両端側に、前記他方の各導線を電気的に接続する一対の導線接続部を設け、前記一方の各導線に対応する導線接続部の一方と、前記他方の各導線に対応する導線接続部の一方との間に、前記検出用抵抗を電気的に接続することを特徴とする圧力検知スイッチ。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧力検知スイッチにおいて、前記第1電極および前記第2電極のうちのいずれか一方を管状の電極とし、前記第1電極および前記第2電極のうちのいずれか他方を前記管状の電極の内側に配置される線状の電極とし、前記隙間形成部材を、前記管状の電極の内側と前記線状の電極の外側との間に配置することを特徴とする圧力検知スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−277455(P2009−277455A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126601(P2008−126601)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】