説明

圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置

【課題】受圧膜体に起因する弁体の不安定な開閉動作を防止することができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することである。
【解決手段】バルブハウジング71内の1次室75と2次室76とを連通する連通流路78に設けた弁体84を、2次室76の1の面を構成する受圧膜体73により大気圧基準で開閉し、機能液供給装置41から1次室75に供給された機能液を、圧力調整し2次室76を介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド14に供給する圧力調整弁27であって、受圧膜体73が、円形の金属フィルムで構成された膜体本体91と、膜体本体91の中心部に同心上に接着した円形の受圧板92と、を有しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を減圧供給する圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サブタンクの機能液を、所定の圧力に減圧して機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁が知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、バルブハウジング内に形成されたサブタンクに連通する1次室および機能液滴吐出ヘッドに連通する2次室と、1次室と2次室との間の隔壁に貫通形成した連通流路と、1次室側の連通流路開口縁部を弁座として連通流路を1次室側から開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に、弁体を大気圧基準で開閉する樹脂フィルム製のダイヤフラム(受圧膜体)と、弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備えている。
この場合、機能液滴吐出ヘッドの液滴吐出により2次室の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧膜体が凹変形してゆき、受圧板が弁体を1次室側に押圧することで開弁して、機能液が連通流路を介して2次室に流れ込む。機能液の流入がすすむと、やがて2次室の圧力が高まってゆき、受圧膜体が外部に向かって凸変形すると共に、受圧板が弁体から離れるように前進し、同時に弁体ばねにより弁体が前進して閉弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−163733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような圧力調整弁では、受圧膜体が、剛性の低い樹脂製の薄膜フィルムで構成されているため、重力や気流により不均一に変形したり、バルブハウジングへの組付け時にしわやたるみが生じやすいという問題があった。このため、弁体が適切且つ円滑に開閉せず、良好な減圧特性が得られない問題があった。
【0005】
本発明は、受圧膜体に起因する弁体の不安定な開閉動作を防止することができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁は、バルブハウジング内の1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を、2次室の1の面を構成する受圧膜体により大気圧基準で開閉し、機能液供給手段から1次室に供給された機能液を、圧力調整し2次室を介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、受圧膜体が、円形の金属フィルムで構成された膜体本体と、膜体本体の中心部に同心上に接着した円形の受圧板と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、膜体本体が、樹脂フィルムと比較して、剛性の高い金属フィルムで構成されているため、重力や気流の影響を受け難く均一に変形する。また、膜体本体をバルブハウジングに取り付ける場合に、しわなどが生じることがない。このため、受圧膜体による押圧力が、弁体に対して適切に伝達され、受圧膜体の凹凸変化に対応して、安定して精度良く弁体を開閉動作させることができる。なお、使用する金属フィルムは、ステンレスやアルミニウムなどの素材で構成された機能液に対し耐薬品性のものであることが好ましい。
【0008】
この場合、弁体は、1次室に配設され直接開閉動作する弁体本体と、弁体本体を保持する保持部と、保持部から連通流路を挿通して延び受圧膜体に当接する作動軸部と、を有し、作動軸部は、受圧板の中心位置に当接することが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、作動軸部が受圧板の中心位置に当接し、受圧膜体から直接押圧を受けるため、受圧膜体の動きに対応して、さらに精度良く適切に開閉動作させることができる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置は、上記の圧力調整弁と、機能液供給手段と、機能液滴吐出ヘッドと、を備え、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を適正圧力で安定して供給することができ、機能液滴吐出ヘッドのワークへの描画品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】キャリッジの外観斜視図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の模式図である。
【図7】圧力調整弁の平面図である。
【図8】第1実施形態に係る圧力調整弁のA−A断面図である。
【図9】第2実施形態に係る圧力調整弁のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力調整弁を備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。また、圧力調整弁は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を一定圧力で減圧供給するものである。
【0014】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース11上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱12を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド14が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、を備えている。また、チャンバ5の側壁の一部には、機能液を貯留するメインタンク51等を収納するタンクキャビネット7が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して、機能液滴吐出ヘッド14を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された機能液を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンを描画する。
【0015】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置8を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド14の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置8(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を行う。
【0016】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記したフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。
【0017】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート24と、各ブリッジプレート24を両持ちで支持する13組のY軸スライダー(図示省略)と、一対のY軸支持ベース13上に設置され、ブリッジプレート24をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド14を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド14を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。
【0018】
図4に示すように、各キャリッジユニット4は、R・G・Bの3色、各4個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド14と、12個の機能液滴吐出ヘッド14を6個ずつ2群に分けて、各機能液滴吐出ヘッド14が同一の水平面内に配設されるように支持するヘッドプレート25と、から成るヘッドユニット26を備えている。また、各キャリッジユニット4は、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を大気圧基準で減圧供給する圧力調整弁27(詳細は後述する。)と、ヘッドユニット26をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構28と、θ回転機構28を介して、ヘッドユニット26をブリッジプレート24に支持させる吊設部材29(共に図3参照)と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、機能液を一時的に貯留するサブタンク46(図1参照)が配設されており(実際には、ブリッジプレート24上に配設)、このサブタンク46および圧力調整弁27により、各機能液滴吐出ヘッド14に対して一定圧力で機能液が供給されるようになっている。
【0019】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド14は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体33と、を備えている(図5(a)参照)。機能液導入部31は、ノズル列39の数に対応した2連の接続針34を有しており、サブタンク46からの機能液を、機能液供給システム48(図6参照)を介して供給されるようになっている。また、ヘッド本体33は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部35と、複数の吐出ノズル37が形成されたノズル面38を有するノズルプレート36と、を有している。ノズルプレート36のノズル面38に形成された多数の吐出ノズル37は、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列39を構成しており、各ノズル列39は、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル37で構成されている(図5(b)参照)。そして、この制御装置から出力された駆動波形が各ポンプ部35(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル37から機能液が吐出される。
【0020】
次に、図6を参照して、機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、上記した3色に対応した3組の機能液供給装置(機能液供給手段)41と、メインタンク51およびサブタンク46等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備42と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備43と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備44と、を備えている。3組の機能液供給装置41は、それぞれ3色に対応した機能液滴吐出ヘッド14に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド14には、対応する色の機能液が供給される。
【0021】
各機能液供給装置41は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク51,51を有するメインタンクユニット45と、各キャリッジユニット4に対応した13個のサブタンク46と、メインタンクユニット45および各サブタンク46を接続する上流側機能液流路47と、サブタンク46からの機能液を機能液滴吐出ヘッド14に減圧供給する圧力調整弁27と、各サブタンク46および各圧力調整弁27を接続する13組の下流側機能液流路49と、を備えている。各メインタンク51内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備42からの圧縮窒素ガスにより加圧され、ガス排気設備44を介して大気開放された13個のサブタンク46に上流側機能液流路47を介して選択的に供給される。そして、サブタンク46の機能液は、下流側機能液流路49および圧力調整弁27を介して、各機能液滴吐出ヘッド14に一定圧力で供給される。
【0022】
上流側機能液流路47は、上流端がメインタンクユニット45に接続されており、13分岐流路52を介して、下流端がサブタンク46にそれぞれ接続されている。また、上流側機能液流路47には、上流側から、機能液中の気泡を除去する気泡除去ユニット53と、上流側の上流側機能液流路47内に混入した気泡を除去するエアー抜きユニット54と、が介設されている。メインタンクユニット45から供給された機能液は、13分岐流路52により13個に分流して各サブタンク46に供給される。
【0023】
次に、図7および図8を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体61と、調整弁本体61の流入側に差込み接合した流入コネクター62と、調整弁本体61の流出側に差込み接合した流出コネクター63と、を備えている。そして、流入コネクター62には、流入側押えナット64を介して、サブタンク46に接続した下流側機能液流路49が接続され、流出コネクター63には、流出側押えナット65を介して、機能液滴吐出ヘッド14に連なるヘッド接続チューブ100が接続されている。
【0024】
調整弁本体61(圧力調整弁27)は、前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング71と、バルブハウジング71と共に1次室75を画成する蓋体72と、バルブハウジング71に受圧膜体73を固定することでバルブハウジング71と共に2次室76を画成する膜体押え部材74と、で構成されている。すなわち、圧力調整弁27は、受圧膜体73が垂直方向に配設されて使用する縦型のものである。また、1次室75および2次室76は、バルブハウジング71の一部を構成する隔壁77を隔てて同軸上に配設されており、隔壁77の中心部(軸心)には、1次室75および2次室76を連通する連通流路78がストレート形状に貫通形成されている。蓋体72および膜体押え部材74は、バルブハウジング71に対し、前後方向から挟み込むようにねじ止めして組み込まれており(図示省略)、いずれも円形の受圧膜体73の中心を通る軸線と同心円となる円形の外形を有している。
【0025】
バルブハウジング71は、その後面周縁部である後リング状端面101は、平坦に形成されており、後シールリング103を装着した蓋体72で覆うようになっている。一方、バルブハウジング71の前面周縁部である前リング状端面104には、断面矩形の前環状溝105が形成されており、その前環状溝105には、前リング状端面104と受圧膜体73との間をシールする前シールリング106が装着されている。
【0026】
蓋体72は、後リング状端面101を覆うように円形の板状に形成され、その内面中央部には、弁体ばね84が係合する蓋垂直段部が形成されており、さらにその周縁部には、蓋垂直段部を囲うように断面矩形の後環状溝102が形成されている。そして、後環状溝102には、後リング状端面101と蓋体72との間をシールする後シールリング103が装着されている。すなわち、蓋体72は、後シールリング103を介してバルブハウジング71に対し相互に液密に突合せ接合さており、1次室75を液密に保持している。一方、膜体押え部材74は、前リング状端面104を押さえるように円形の環状に形成されており、バルブハウジング71に前シールリング106をセットし、受圧膜体73を位置合わせした状態でねじ止めされている。すなわち、膜体押え部材74は、前シールリング106および受圧膜体73を介してバルブハウジング71に対し相互に液密に突合せ接合されており、2次室76を液密に保持している。なお、詳細は後述するが、受圧膜体73(膜体本体91)は、剛性の高い金属フィルムで構成されているため、張りを与えた状態でバルブハウジング71に固定することが、好ましい。
【0027】
1次室75は、隔壁77を主体とするバルブハウジング71の後面および蓋体72により形成されている。また、1次室75の上部には、1次室75から径方向斜めに延びる流入ポート81が形成され、中心部には、連通流路78に連なる1次室側開口部82が開口している。そして、この1次室側開口部82には、1次室75側から連通流路78を開閉する弁体84が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部82の周縁部により、弁体84が離接する弁座83が構成されている。なお、弁体84は、係合した弁体ばね85によって、閉弁方向(2次室76側)に弱い力で付勢されている。
【0028】
2次室76は、バルブハウジング71の前面および受圧膜体73により形成されている。また、2次室76の下部には、真下に延びる流出ポート86が形成され、中心部には、上記の連通流路78に連なる2次室側開口部87が開口している。そして、この2次室側開口部87の周縁部と受圧膜体73との間には、受圧膜体73を前方向に向かって付勢する膜体ばね88が介設されている。
【0029】
詳細は後述するが、受圧膜体73は、本体を為す膜体本体91と、膜体本体91の中央部に接着した小円板状の受圧板92と、から構成されている。また、受圧板92の中央に弁体84が離接するようになっている(図8参照)。
【0030】
弁体84は、弁機能を奏する弁体本体94と、弁体本体94を保持する弁ホルダー95と、を備えている。弁体84は、受圧膜体73による大気圧基準で、弁座83となる1次室側開口部82の周縁部に離接することで開閉し、この開閉を繰り返すことにより、機能液が1次室75から2次室76に間欠的に流入する。
【0031】
弁体本体94は、耐薬品性のパーフルオロゴムの素材で構成された、いわゆるОリングであり、通常に用いられるシリコンゴム製の弁体本体94に比して硬質なものとなっている。そして、弁ホルダー95に装着した弁体本体94の前端部分が、弁座83に離接して弁の機能を奏するようになっている。
【0032】
弁ホルダー95は、断面略「T」字状に形成されており、同軸上において軸線方向の後方から、弁体ばね85が係合する厚肉円板状のホルダーベース96と、ホルダーベース96に連なり、弁体本体94を直接保持する保持部97と、保持部97に連なり、弁体本体94を抜止め状態に保持する抜止め部98と、抜止め部98の先端から延在した作動軸部99と、から構成されている。そして、弁体本体94は、作動軸部99側から抜止め部98を乗り越えて装着されている。また、作動軸部99(弁ホルダー95)は、上記の連通流路78に挿通して、その先端が受圧板92(受圧膜体73)に当接している。
【0033】
上記のように構成された圧力調整弁27では、例えば機能液滴吐出ヘッド14の液滴吐出により2次室76の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧膜体73が凹変形してゆき、受圧板92が弁体84を押す(開弁動作)。これにより、弁体84が開弁し、連通流路78を介して1次室75から2次室76に機能液が流入する。機能液の流入がすすむと、やがて2次室76の圧力が高まってゆき、受圧膜体73が外部に向かって凸変形してゆく。これにより、受圧板92が弁体84から離れるように前進し、同時に弁体84が前進して閉弁する(閉弁動作)。
【0034】
このように、圧力調整弁27は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド14に連なる2次室76との内部圧力のバランスにより受圧膜体73が変形することで連通流路78を開閉する。その際、弁体ばね85および膜体ばね88に力が分散して作用し、且つ弁体本体94の弾性力により、弁体84は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体84の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド14の吐出駆動に影響を与えないようになっている。
【0035】
ここで、受圧膜体73について詳細に説明する。受圧膜体73は、上記したように膜体本体91と、受圧板92と、から構成されている。受圧板92は、機能液に対し耐薬品性の樹脂製の素材で構成されており、膜体本体91の中心部に同心となるように接着されている。また、受圧板92は、膜体本体91と同心の円板状に、且つ膜体本体91に対し十分に小さい径に形成されており、その周縁部に膜体ばね88を位置決めするばね位置決め凸部107が形成されている。そして、受圧膜体73の中心に上記した作動軸部99が離接することで、受圧膜体73の凹凸変化を弁体84に伝達するようになっている。なお、受圧板92は、その表面が機能液に対し耐薬品性を有すればよく、例えば、汎用されている樹脂で形成した受圧板様部材に耐薬品性を有するコーティング剤をコーティングして形成してもよい。
【0036】
膜体本体91は、ステンレスやアルミニウムなどの機能液に対して耐薬品性の金属製素材で、円形の薄膜フィルム形状に形成されており、中央部に上記の受圧板92が接着されている。膜体本体91は、樹脂フィルムに対し十分に剛性の高い金属フィルムで構成されているため、大気圧による律動(挙動)動作において、受圧板92に加わる重力や、周囲の気流(大気)の影響を受け難く、受圧板92を中心として均一に凹凸変形する。なお、膜体本体91の素材は、機能液の溶媒によって決定されるものであり、とくに限定されるものではなく、その製法も任意のものである。
【0037】
次に図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る圧力調整弁27について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。上述のように、受圧膜体73(膜体本体91)は、張りを与えた状態でバルブハウジング71に取り付けることが好ましい。そこで、この実施形態では、バルブハウジング71の前リング状端面104と膜体押え部材74との接合部分の形状を工夫し、膜体押え部材74を前リング状端面104に接合したときに、受圧膜体73に自動的に張りが生ずるようにしている。
【0038】
すなわち、バルブハウジング71の前リング状端面104において、上記の前環状溝105の外側に、環状の傾斜段部111を介して凹となる環状受け面112が形成され、これに対応して、膜体押え部材74の裏面(接合面)には、環状の傾斜段部111を介して凸となる環状当接面113が形成されている。受圧膜体73を前リング状端面104に位置合わせした状態で、膜体押え部材74を押し込んで行くと、相互の傾斜段部111により、受圧膜体73が径方向の外側に引っぱられ、受圧膜体73に張りを与えた状態で取り付けることができる。なお、環状受け面112側を凸とし、環状当接面113側を凹としてもよい。
【0039】
以上の構成によれば、膜体本体91が、剛性の高い金属フィルムで構成されているため、重力や気流の影響を受け難く均一に変形する。また、組立時において、しわなどが生じることがないため、受圧膜体73による押圧力が、弁体84に適切に伝達され、受圧膜体73の凹凸変化に対応して、安定して精度良く弁体84を開閉動作させることができる。また、紫外線等により変質する機能液を導入する場合、受圧膜体73は光を遮蔽するため、機能液の変質等を防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…液滴吐出装置 14…機能液滴吐出ヘッド 27…圧力調整弁 41…機能液供給装置 71…バルブハウジング 73…受圧膜体 75…1次室 76…2次室 78…連通流路 84…弁体 92…受圧板 94…弁体本体 97…保持部 99…作動軸部 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジング内の1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を、前記2次室の1の面を構成する受圧膜体により大気圧基準で開閉し、機能液供給手段から前記1次室に供給された機能液を、圧力調整し前記2次室を介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、
前記受圧膜体が、円形の金属フィルムで構成された膜体本体と、
前記膜体本体の中心部に同心上に接着した円形の受圧板と、を有していることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記弁体は、前記1次室に配設され直接開閉動作する弁体本体と、前記弁体本体を保持する保持部と、前記保持部から前記連通流路を挿通して延び前記受圧膜体に当接する作動軸部と、を有し、
前記作動軸部は、前記受圧板の中心位置に当接することを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力調整弁と、
前記機能液供給手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドと、を備え、
ワークに対し前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−194476(P2010−194476A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43776(P2009−43776)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】