説明

圧電振動子およびその製造方法並びに電子機器

【課題】振動部の材質の選択の幅が広くかつ信頼性の高い圧電振動子を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる圧電振動子300は、基板10と、基板10の上方に形成された酸化シリコン層20と、酸化シリコン層20の上方に形成されたシリコン層30と、シリコン層30の上に接して形成された振動部形成層40と、振動部形成層40を貫通する第1開口部H1内に片持ち梁状に形成され、振動部形成層40に固定されたビーム結合部110とビーム結合部110から延びる複数本のビーム部120とを有する振動部100と、シリコン層30を貫通し、第1開口部H1と振動部100の下に形成された第2開口部H2と、ビーム部120の上方に形成された、圧電素子75を備えた駆動部200と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子およびその製造方法並びに該振動子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
時計やコンピュータのクロックモジュールには、一般に32kHzを基本周波数として発振する振動子が用いられている。従来の振動子としては、水晶などの圧電性を有する材料で構成した梁を、その圧電性を利用して振動させるものが普及している。このような振動子は、小型化することが難しく、シリコンのMEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いた振動子によって小型化を図ることが検討されている。
【0003】
シリコンのMEMSを用いた振動子は、半導体の製造に用いられる精密な製造プロセスによって製造される。たとえば特開2006−030062号公報には、SOI(Silicon On Insulater)基板のシリコン活性層を音叉型の振動部(片持ち梁)として、その下の酸化シリコン層をフッ化水素水を用いたウエットエッチングによって除去した振動子が開示されている。このようなSOI基板を用いて振動子を形成する場合は、振動子の片持ち梁の材質は、シリコンに制限される。したがって梁に圧電性がないため、振動部を駆動するための圧電素子がさらに設けられる。このような方法は、圧電素子が形成された状態でフッ化水素水によるウエットエッチングを行うため、圧電素子がエッチングされないように圧電素子を保護する工夫がさらに必要となる。
【0004】
また、大気中で振動子を駆動すると、大気中の水分による圧電素子の劣化や、空気抵抗による振動部への過負荷などにより、振動子の特性が劣化して信頼性が損なわれることがあった。これを防止するための封止構造については、たとえば特開2005−123561号公報に、封止層に貫通孔を開け、その下の犠牲層を除去する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−030062号公報
【特許文献2】特開2005−123561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
振動子の片持ち梁の下の部材をウエットエッチングで除去する方法では、スティッキングと呼ばれる現象が生じ歩留まりを悪化させることがあった。すなわち片持ち梁状の構造の下に入り込んだエッチャントを洗浄、乾燥などして除去するとき、液体の表面張力の影響で片持ち梁の自由端が、他の部材に付着してしまうスティッキングと呼ばれる現象が生じる。スティッキングを起こした梁は、片持ち梁の状態に戻すことができなかった。
【0006】
また、封止構造を形成する場合、封止層に開けた貫通孔を塞ぐ際に、貫通孔の開けられた位置が内部の振動板の近傍にあると、当該振動板に、貫通孔を塞ぐための材料が堆積することがあり、重量変化による振動周波数のずれを生じることがあった。
【0007】
本発明の目的は、振動部の材質の選択の幅が広くかつ信頼性の高い圧電振動子を提供すること、および該圧電振動子を備えた電子機器を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、スティッキングを起こさないとともに内包する振動部に影響を与えない封止構造が形成された圧電振動子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる圧電振動子は、
基板と、
前記基板の上方に形成された酸化シリコン層と、
前記酸化シリコン層の上方に形成されたシリコン層と、
前記シリコン層の上に接して形成された振動部形成層と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部内に片持ち梁状に形成され、前記振動部形成層に固定されたビーム結合部と前記ビーム結合部から延びる複数本のビーム部とを有する振動部と、
前記シリコン層を貫通し、前記第1開口部と前記振動部の下に形成された第2開口部と、
前記ビーム部の上方に形成された、圧電素子を備えた駆動部と、
を有する。
【0010】
このような圧電振動子は、振動部をシリコン以外の材質で形成することができるため振動部の材質の選択の幅が広い。
【0011】
なお、本発明において、特定のA層(以下、「A層」という。)の上方に設けられた特定のB層(以下、「B層」という。)というとき、A層の上に直接B層が設けられた場合と、A層の上に他の層を介してB層が設けられた場合とを含む意味である。
【0012】
本発明にかかる圧電振動子において、
さらに、前記振動部を空隙部を介して覆う蓋状部を含み、前記蓋状部は、前記空隙部に通じる通気孔を有することができる。
【0013】
このような圧電振動子は、信頼性が高い。
【0014】
本発明にかかる圧電振動子において、
さらに、少なくとも前記通気孔を塞ぐように形成された封止層を有することができる。
【0015】
本発明にかかる圧電振動子において、
前記振動部形成層は、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および窒化シリコンから選ばれる物質の単層または多層構造であることができる。
【0016】
本発明にかかる圧電振動子において、
前記ビーム部の本数は、偶数であることができる。
【0017】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法は、
基板と、前記基板の上方に形成された酸化シリコン層と、前記酸化シリコン層の上方に形成されたシリコン層と、を有する基体を準備する工程と、
前記シリコン層の上に接して振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上方に圧電素子を備えた駆動部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定されたビーム結合部と前記ビーム結合部から延びる複数本のビーム部とを有する片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる。
【0018】
このようにすれば、ドライエッチングにより振動部の下部のシリコン層が除去されるため、スティッキングを起こさずに圧電振動子を製造することができる。
【0019】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法は、
基板と、前記基板の上方に形成された酸化シリコン層と、前記酸化シリコン層の上方に形成されたシリコン層と、を有する基体を準備する工程と、
前記シリコン層の上に接して振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上方に圧電素子を備えた駆動部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定されたビーム結合部と前記ビーム結合部から延びる複数本のビーム部とを有する片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記第1開口部を塞ぐとともに、前記振動部形成層の上に少なくとも前記振動部および前記駆動部を覆うように犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層の上に蓋状部を形成する工程と、
前記蓋状部に前記犠牲層に通じる通気孔を形成する工程と、
前記犠牲層をエッチングして除去して空隙部を形成するとともに、前記第1開口部を塞ぐ犠牲層をエッチングして除去する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記空隙部および前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる。
【0020】
このようにすれば、ドライエッチングにより振動部の下のシリコン層が除去されるため、スティッキングを起こさずにかつ信頼性の高い圧電振動子を製造することができる。
【0021】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法において、
さらに、少なくとも前記通気孔を塞ぐように封止層を形成する工程を有することができる。
【0022】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法において、
前記通気孔は、平面的に見て、前記第1開口部よりも外側の前記犠牲層の上の領域に形成されることができる。
【0023】
このようにすれば、内包する振動部に影響を与えないように封止構造が形成された圧電振動子を製造することができる。
【0024】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法において、
前記空隙部を形成するとともに前記第1開口部を塞ぐ犠牲層を除去する工程は、ドライエッチングにより行われることができる。
【0025】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法において、
前記ドライエッチングは、エッチングガスとして、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種を用いることができる。
【0026】
本発明にかかる電子機器の一例である発振器は、
発振回路を含み、
前記発振回路は、
電気信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器の入出力間に接続された帰還回路と、
を有し、
前記帰還回路は、上述のいずれかの圧電振動子を備える。
【0027】
本発明にかかる電子機器の一例であるリアルタイムクロックは、
上述した発振器と、
前記発振器から出力されるクロックパルスを分周する分周回路と、
前記分周回路から出力される計時パルスが入力される計時カウンタと、
前記計時カウンタの計時ビットの書き換えおよび読み出しを行う制御部と、を含む。
【0028】
本発明にかかる電子機器の一例である電波時計受信モジュールは、
電波を受信する受信部と、
上述のいずれかの圧電振動子を有し受信された電気信号を濾波する周波数フィルタと、
濾波された前記電気信号からタイムコードを読み出す周辺回路と、
上述したリアルタイムクロックと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。
【0030】
1.第1実施形態
1.1.圧電振動子300
図1は、本実施形態にかかる圧電振動子300を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態にかかる圧電振動子300の第1開口部H1および振動部100を模式的に示す平面図である。図3は、本実施形態にかかる圧電振動子300を模式的に示す断面図である。図1のA−A線に沿った断面は、図3に相当する。
【0031】
圧電振動子300は、基板10と、酸化シリコン層20と、シリコン層30と、振動部形成層40と、第1開口部H1と、振動部100と、第2開口部H2と、駆動部200と、を有する。
【0032】
基板10は、図3に示すように、圧電振動子300の基体となる。基板10は、たとえばシリコン基板、石英基板などを用いることができる。基板10には、各種の半導体回路を作り込んでもよい。基板10の厚みは、10μmないし2mmとすることができる。
【0033】
酸化シリコン層20は、基板10の上方に形成される。酸化シリコン層20は、基板10の間に他の層を介して形成されてもよい。酸化シリコン層20は、上方に形成されるシリコン層30をエッチングする際のストッパ層としての機能を有する。酸化シリコン層20は、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)等による酸化シリコンで構成することができる。また、酸化シリコン層20は、基板10をシリコン基板とした場合に熱酸化等でその表面に得られる酸化シリコンで構成してもよい。酸化シリコン層20の厚みは、前述のストッパ層として機能する程度であればよく、たとえば10nmないし1μmとすることができる。
【0034】
シリコン層30は、酸化シリコン層20の上方に形成される。シリコン層30は、酸化シリコン層20との間に他の層を介して形成されてもよい。シリコン層30には、その一部に第2開口部H2が形成される。シリコン層30の第2開口部H2以外の部分は、振動部形成層40を下から支持する機能を有する。第2開口部H2の詳細な説明は後述する。シリコン層30の厚みは、たとえば100nmないし20μmとすることができる。シリコン層30の材質は、特定のエッチングの際のエッチングレートが下方の酸化シリコン層20のそれと異なるように選ばれる。たとえば、シリコン層30の材質としては、アモルファスシリコン、多結晶シリコンおよび単結晶シリコンの少なくとも1種を選択することができる。
【0035】
上述の基板10、酸化シリコン層20およびシリコン層30は、それぞれ個別に形成してもよいが、たとえばSOI(Silicon On Insulater)基板を用いることもできる。この場合の基板10、酸化シリコン層20およびシリコン層30は、それぞれSOI基板の基板、ボックス(絶縁)層、単結晶シリコン層に相当する。
【0036】
振動部形成層40は、シリコン層30の上に接して形成される。振動部形成層40には、振動部100と第1開口部H1とが形成される(図2参照)。振動部形成層40は、単層構造であっても多層構造であってもよい。振動部形成層40の一部が振動部100となるため、振動部形成層40の材質は、振動部100として機能し、かつ、シリコン層30とエッチングレートが異なるように選ばれる。振動部形成層40の厚みは、100nmないし20μmとすることができる。振動部形成層40の材質は、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムおよび窒化シリコンなどから選択することができる。
【0037】
第1開口部H1は、振動部形成層40を貫通している。第1開口部H1の形状は、振動部100の形状と相補的である。第1開口部H1および振動部100は、図2に示すように、振動部100の形状が第1開口部H1の形状によって形成される関係にある。図1ないし図3に示した例では、振動部100の形状は、第1開口部H1に一部を残して囲まれた片持ち梁状である。第1開口部H1は、片持ち梁状の振動部100を形成するとともに、第2開口部H2と連続している。そのため、片持ち梁状の振動部100の先端は、自由に運動できる。
【0038】
振動部100は、振動部形成層40の一部からなる。振動部100は、ビーム結合部110とビーム結合部110から延びる複数本のビーム部120とを有する。図2の例では、ビーム結合部110から2本のビーム部120が延びる形状となっている。ビーム結合部110は、片持ち梁状の振動部100の固定端となる。ビーム結合部110が振動部形成層40と連続している付近の振動部形成層40の領域である基部42は、振動部100の動作には直接的には関与せず、振動部100を支える機能を有する。基部42は、図2の一点鎖線で囲んだ部分であり振動部100の動作に直接関与しない部分である。ビーム部120は、ビーム結合部110から複数本延びるように形成される。ビーム部120は、たとえば図示の例のように2本であってもよいし、いわゆるH型となるように4本形成されてもよい。ビーム部120の本数は、偶数であることが望ましい。ビーム部120は、振動部100の動作部分であり、目的に応じて種々の方向に振動することができる。たとえば、ビーム部120は、振動部形成層40の面内すなわち横方向の振動をすることも、振動部形成層40の面に垂直方向すなわち縦方向に振動することもできる。
【0039】
ビーム部120の本数、振動方向および形状は、振動のエネルギーのロスができるだけ小さくなるように設計されることができる。たとえば図2の例では、2本のビーム部120は、振動部形成層40の面内で振動し、2本のビーム部120の先端が近づいたり離れたりするように振動する。すなわち図2の例のような音叉型の振動部100の場合は、音叉の先端が開閉するように振動する。このようにすると、ビーム結合部110で振動のエネルギーが打ち消しあい、基部42に漏れ出す振動のエネルギーを小さく抑えることができる。この例で2本のビーム部120の振動を縦方向とすると、エネルギーが打ち消し合うことが無く、基部42に振動のエネルギーが散逸してしまうことがある。ビーム部120が3本以上設けられる場合にも、このことを考慮して設計されることができる。したがってビーム部120の本数、振動方向および形状は、圧電振動子300の目的に応じて任意に設計することができる。
【0040】
第2開口部H2は、シリコン層30を貫通して設けられる。第2開口部H2は、第1開口部H1と連続している。第2開口部H2は、第1開口部H1と振動部100の下に形成される。第2開口部H2は、振動部100を片持ち梁状となるように、その下のシリコン層30を除去して形成される。第2開口部H2は、第1開口部H1の外側や、振動部100のビーム結合部110の外側に及んで形成されてもよい。すなわち第2開口部H2、第1開口部H1および振動部100は、平面視(図3)において一体的に見ると、第2開口部H2の外周がはみ出していてもよい。この様子は図3等にアンダーカット部32として描かれている。第2開口部H2の下面は、酸化シリコン層20である。第2開口部H2は、振動部100が動作できるようにする空間である。
【0041】
駆動部200は、ビーム部120の上方に形成される。駆動部200は、圧電素子75を備える。駆動部200には、複数の圧電素子75が備えられてもよい。駆動部200は、圧電素子75の動作によってビーム部120を振動させる機能を有する。図1および図3の例では、各ビーム部120に2つずつ圧電素子75が設けられている。この例の圧電素子75は、それぞれビーム部120の長手方向に伸縮するように設けられ、1本のビーム部120の一方の圧電素子75が伸びたとき他方の圧電素子75が縮むように動作して、振動部形成層40の面内で振動するようになっている。また駆動部200が複数の圧電素子75が備えられる場合には、圧電素子75は、ビーム部120を振動させるためのものと、ビーム部120の振動を検出するためのものとに機能を分担することができる。たとえば、駆動部200には、1本のビーム部120に振動を与えるための圧電素子75と、振動方向のずれや振動数を検出するための圧電素子75とが備えられることができる。
【0042】
圧電素子75は、下部電極50、圧電体層60、上部電極70の積層構造を有する。下部電極50は、ビーム部120の上方に形成される。下部電極50は、ビーム部120との間に下地となる層などを有して形成されてもよい。下部電極50は、たとえば白金などの金属材料やリチウムとニッケルの複合酸化物(LNO)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。下部電極50の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。圧電体層60は、圧電性を有し、下部電極50および上部電極70によって電圧が印加されると伸縮することができ、下方のビーム部120を動作させることができる。また逆に圧電体層60は、伸縮されると下部電極50および上部電極70の間に電圧を発生することができ、下方のビーム部120の動作を検知することができる。圧電体層60は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O:PZTN)などの圧電材料から形成される。圧電体層60の伸縮方向は、ビーム部120の振動方向に応じて適切に選ぶことができる。その方法としては、たとえば、圧電体層60を構成する材料の結晶の方位を目的に応じて変化させて行うことができる。圧電体層60の厚さは、たとえば0.1μmないし20μmとすることができる。上部電極70は、たとえば白金などの金属材料やリチウムとニッケルの複合酸化物(LNO)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。上部電極70の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。
【0043】
本実施形態の圧電振動子300は、振動部100をシリコン以外の材質で形成することができるため振動部100の材質の選択の幅が広い。そのため、圧電振動子300は、小型化が容易かつ電子機器等への応用範囲が広い。また、圧電振動子300は、SOI基板を用いて形成した場合においても、振動部100をシリコン以外の材料で形成できるため、小型化が容易かつ応用範囲が広い。
【0044】
1.2.圧電振動子300の製造方法
第1実施形態に係る圧電振動子300の製造方法の一例について図面を参照しながら説明する。図4ないし図9は、本実施形態にかかる圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0045】
本実施形態の圧電振動子300の製造方法は、基体を準備する工程と、振動部形成層40aを形成する工程と、駆動部200を形成する工程と、第1開口部H1を形成するとともに、振動部100を形成する工程と、第2開口部H2を形成する工程と、を有する。
【0046】
まず図4に示すように、基体としては、基板10の上方に酸化シリコン層20と、酸化シリコン層20の上方にシリコン層30aが積層された構造を有するものを準備する。基板10の上に、蒸着、スパッタ、CVDなどの方法により、酸化シリコン層20およびシリコン層30aをそれぞれ形成したものを準備してもよいが、前述したように基体としてSOI基板を準備してもよい。
【0047】
次に、振動部形成層40aをシリコン層30aの上に接して形成する工程を行う。振動部形成層40aは、シリコン層30aの熱酸化によって形成することができる。この場合のシリコン層30aの厚みは、振動部形成層40aを形成するために消費される厚みを見込んだ厚みに形成されている。たとえば、振動部形成層40aの厚みを1μmとしたい場合、シリコン層30aが単結晶シリコンであるとき、約0.3μmの厚みを消費することになる。そのためシリコン層30aの厚みは、約0.4μmよりも厚く形成しておくことが必要である。振動部形成層40をシリコン層30aの熱酸化以外で形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法などの方法を用いることができる。振動部形成層40aを多層構造とする場合も、それぞれの層を例示した方法などで形成することができる。
【0048】
次に、振動部形成層40aの上方に駆動部200を形成する工程を行う。この工程は、まず振動部形成層40aの上方に下部電極層50a、圧電体層60aおよび上部電極層70aを順に積層したあと、パターニングして行われる。下部電極層50aは、蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、ゾル−ゲル法などにより形成することができる。圧電体層60aは、ゾル−ゲル法、MOD(Metallo−Organic Decomposition)法、スパッタ法、レーザーアブレーション法などによって形成することができる。上部電極層70aは、蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、ゾル−ゲル法などにより形成することができる。次いで、このように積層された3つの層を図7および図8に示すようにパターニングして圧電素子75を形成する。パターニングの方法は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて行うことができる。パターニングは、複数回行われてもよい。このように圧電素子75を備えた駆動部200が形成される。
【0049】
次に、図9に示すように、第1開口部H1を形成するとともに、振動部100を形成する工程を行う。第1開口部H1の形成は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて行うことができる。第1開口部H1のエッチングは、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずれで行ってもよい。またエッチャントとしては、異方性であっても等方性であってもよい。振動部100の形状の設計に依存するが、振動部100の断面を矩形とするならば異方性の高いエッチャントを選択するとよい。たとえば、第1開口部H1をドライエッチングによって形成する場合は、エッチングガスは、CF、SF、CHF、Cl、BCl、CHClから選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。またこのエッチングは複数回行ってもよい。このエッチングのストッパ層はシリコン層30aであるが、第2開口部H2を形成する工程で第1開口部H1の下のシリコン層30aは除去されるため、ある程度であればシリコン層30aをエッチングしても構わない。このようにして第1開口部H1が形成されると、同時に振動部100が形成される。第1開口部H1は、振動部100のビーム部120の上方に所定数の圧電素子75が配置されるように形成される。
【0050】
次に、図1および図3に示すような第2開口部H2を形成する工程を行う。第2開口部H2は、シリコン層30aをドライエッチングして形成される。本工程のドライエッチングのエッチングガスは、第1開口部H1を介して、シリコン層30aに供給される。そしてエッチングが進むと、振動部100の下のシリコン層30aが除去される。そのため、振動部100の下に回り込んでエッチングすることができるように、本工程のエッチングガスは、等方的なエッチングが行われるものが選択される。また、本工程のエッチングガスには、他の層よりもシリコン層30aに対してエッチング作用が大きいガスが選ばれる。本工程のエッチングガスとしては、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種が好ましい。シリコン層30aの下方に酸化シリコン層20を有するため、酸化シリコン層20がエッチングストッパ層として機能する。そのため、第2開口部H1が厚くエッチングされすぎることがないため、エッチングガスを節約することができる。本工程のドライエッチングは、振動部100の下部のシリコン層30aが除去されると停止される。したがって第1開口部H1の外側および振動部100のビーム結合部110の外側あるいは基部42の下のシリコン層30a(アンダーカット部32に相当)も除去される場合がある。
【0051】
以上のようにして圧電振動子300が製造される。本実施形態の圧電振動子300の製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0052】
本実施形態の製造方法においては、ドライエッチングにより振動部100の下のシリコン層30aが除去されるため、ウエットエッチングにおいて問題となったスティッキングを起こさずに圧電振動子300を製造することができる。これにより圧電振動子300の製造における歩留まりが向上する。
【0053】
2.第2実施形態
本実施形態の圧電振動子400は、蓋状部90が形成され、これによって空隙部H3、通気孔H4が形成されること、圧電素子75の電極が外部機器との電気的接続のために蓋状部90の外側まで形成されること以外は、第1実施形態の圧電振動子300と同様である。したがって第1実施形態における圧電振動子300の部材と実質的に同一の部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
また、本実施形態の圧電振動子400の製造方法は、犠牲層80を形成する工程と、蓋状部90、通気孔H4および空隙部H3を形成するための工程とを有する以外は、第1実施形態の圧電振動子300の製造方法と同様である。したがって第1実施形態において説明した工程と実質的に同一の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0055】
2.1.圧電振動子400
図10は、圧電振動子400を模式的に示す平面図である。図11は、圧電振動子400を模式的に示す断面図である。図10のA−A線の断面図は、図11に相当する。図15は、圧電振動子400の変形例を模式的に示す断面図である。
【0056】
圧電振動子400は、基板10と、酸化シリコン層20と、シリコン層30と、振動部形成層40と、第1開口部H1と、振動部100と、第2開口部H2と、駆動部200と、蓋状部90と、空隙部H3と、通気孔H4と、を有する。
【0057】
蓋状部90は、空隙部H3を介して振動部100を覆うように形成される。蓋状部90は、図11に示すように、駆動部200の上の部分をも覆うように形成される。蓋状部90は、振動部100を覆い第1開口部H1よりも外側の振動部形成層40に接して形成される。また、蓋状部90は、振動部100のビーム結合部110よりも外側の振動部形成層40に接して形成される。この様子は、図11等に空隙部H3の端部82として描かれている。蓋状部90で振動部100が覆われるため、圧電振動子400においては、圧電素子75の各電極は蓋状部90の外側まで延長される。蓋状部90は、振動部100より外側の電極の上に形成されるため、蓋状部90によって振動部100の動作が阻害されることはない。このような配線としては、図10および図11のように、圧電素子75を外部まで延長して、各電極を取り出すことができる。また、圧電体層60の一部を絶縁体で形成することによって、各電極を蓋状部90の外側まで延長してもよい。このような引き出し配線は、蓋状部90の外側で他の回路との接続ができれば、その他の方法によって設置されてもよい。
【0058】
蓋状部90には、空隙部H3に通じる通気孔H4が形成される(図10および図11参照)。蓋状部90は、単層構造であっても多層構造であってもよい。蓋状部90は、振動部100が外部から振動等の影響を受けないように、あるいは、外部の物体が振動部100に物理的に接触しないように保護する機能を有する。また、通気孔H4を塞ぎ(図15参照)、空隙部H3が減圧状態となる場合には、蓋状部90は、圧力隔壁となる機能を有する。蓋状部90の厚みは、1μmないし10μmとすることができる。蓋状部90の材質としては、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムおよび窒化シリコンから選択することができる。また、蓋状部90の材質および層構成は、振動部形成層40と同じでも異なってもよい。
【0059】
空隙部H3は、蓋状部90によって覆われた空間である。空隙部H3は、第1開口部H1と連続している。空隙部H3は、片持ち梁状の振動部100が自由に運動できる程度の容積を有する。空隙部H3は、適宜気体を満たすことができる他、減圧状態にすることもできる。
【0060】
通気孔H4は、図10および図11に示すように、蓋状部90に形成される。通気孔H4の形状は、蓋状部90の強度を低下させない限り特に限定されない。通気孔H4は、1つだけ形成されても、蓋状部90の強度を低下させない限り複数形成されてもよい。通気孔H4が形成される位置は、振動部100に外部の振動などの影響が及ばないように振動部100よりも外側が好ましい。特に通気孔H4を塞ぐなどの変形を行う場合には、通気孔H4を塞ぐ際に、振動部100の部材に封止のための部材が堆積して重量を変化させ振動周波数のずれを生じてしまうためこのようにすることが望ましい。さらに、図10および図11に示すように、第1開口部H1よりも外側のアンダーカット部82に形成されることが好ましい(後述する)。通気孔H4は、圧電振動子400を製造する際のドライエッチングのエッチングガスを内部に供給する機能を有する。また、通気孔H4は、圧電振動子400の内部の各空間にガスを導入したり、圧電振動子400の内部の各空間を減圧するために利用することができる。
【0061】
本実施形態の圧電振動子400は、外部から振動等の影響を受けないように、あるいは、外部の物体が振動部100に物理的に接触しないように、振動部100を保護する蓋状部90を有するため、信頼性が高い。
【0062】
圧電振動子400の変形例としては、図15に示すように、通気孔H4を塞ぐような封止層94をさらに有することができる。封止層94は、通気孔H4を塞ぐ機能の他、蓋状部90の機械的強度を高める機能を有してもよい。封止層94の厚みは、1μmないし10μmとすることができる。封止層94の材質は、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムおよび窒化シリコンのいずれかとすることができる。封止層94の材質は、蓋状部90の材質と同じでも異なってもよい。封止層94は、蒸着法、スパッタ法などの回り込みの少ない方法によって形成されることができる。図15に示すように、このような方法で通気孔H4を塞ぐには、通気孔H4の下に深い空間があると、封止層94を厚く形成しなければならない。このようなことをあらかじめ避けるために、アンダーカット部82に通気孔H4が形成されることが好ましい。
【0063】
圧電振動子400は、このような変形により、空隙部H3に不活性気体を封止したり、空隙部H3を減圧空間とすることができる。このため、大気中の水分による圧電素子75の劣化や、空気抵抗による振動部100への過負荷などによる特性の劣化を抑制することができ、圧電振動子400の信頼性をさらに高めることができる。
【0064】
2.2.圧電振動子400の製造方法
本実施形態の圧電振動子400の製造方法は、第1実施形態の工程の他に、犠牲層80を形成する工程と、蓋状部90、通気孔H4および空隙部H3を形成するための工程とを有する。これらの工程は、振動部100を形成した後すなわち図9に示す工程の後に行われる。
【0065】
図12ないし図14は、本実施形態の圧電振動子400の製造工程を模式的に示す断面図である。図12ないし図14は、図10のA−A線の断面に対応する。
【0066】
本実施形態においては、駆動部200を形成する工程は、図12に示すような形状に圧電素子75をパターニングして行われる。各圧電素子75の電極は、蓋状部90の外側まで延設されるようにパターニングされる。
【0067】
犠牲層80は、図12に示すように、第1開口部H1を塞ぐように形成されるとともに、振動部形成層40の上に少なくとも振動部100および駆動部200を覆うように形成される。犠牲層80は、空隙部H3を形成するための層であり、空隙部H3が形成されるときに除去されて残らない。犠牲層80は、蒸着法、スパッタ法、CVD法などにより形成することができる。また、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によってパターニングされることができる。犠牲層80の形状は、図12に示すように、振動部100および第1開口部H1の上の領域よりも外側に端を有するようにすることができる。図12は、この部分に符号82を付して示している。また、犠牲層80の第1開口部H1を塞ぐ部分は、図12に示すように、必ずしも第1開口部H1の全てを埋める必要はない。犠牲層80は、蓋状部90および振動部形成層40とエッチングレートが異なる材料で形成される。犠牲層80の材質としては、アモルファスシリコン、多結晶シリコンおよび単結晶シリコンの少なくとも1種を選択することができる。このような材質であれば、第2開口部H2を形成する際に同時に犠牲層80をドライエッチングすることができる。
【0068】
次に、図13に示すように、犠牲層80の上に蓋状部90を形成する工程を行う。この工程は、蒸着法、スパッタ法、CVD法などにより行うことができる。次いで、図14に示すように蓋状部90に犠牲層80に通じる通気孔H4を形成する工程を行う。この工程は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて行うことができる。
【0069】
次に、犠牲層80をエッチングして除去して空隙部H3を形成するとともに、第1開口部H1内の犠牲層80を除去する工程を行う。この工程は、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずれで行ってもよい。またエッチャントとしては、異方性であっても等方性であってもよい。その他の部材をエッチングしないように選択性の高いエッチャントを選択することが好ましい。
【0070】
そして通気孔H4および第1開口部H1を介してエッチングガスを供給して、第1実施形態と同様に第2開口部H2を形成する工程を行って、圧電振動子400が製造される。ここで、犠牲層80をシリコンで形成し、かつ犠牲層80をエッチングして除去して空隙部H3を形成するとともに、第1開口部H1内の犠牲層80を除去する工程を、ドライエッチングで行い、エッチングガスとして、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種を選択することができる。このようにすれば、通気孔H4を形成した後、通気孔H4を介してエッチングガスを供給して一貫して第2開口部H2まで形成することができる。
【0071】
本実施形態の圧電振動子400の製造方法は、さらに、通気孔H4を塞ぐように封止層94を形成する工程を有することができる。この工程は、上述したように蒸着法、スパッタ法などの回り込みの少ない方法によって形成されることができる。このような方法によれば、空隙部H3内を減圧空間とすることが容易である。
【0072】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【0073】
3.発振器500
次に本発明にかかる電子機器の一例として発振器500を説明する。
【0074】
図16は、上述した圧電振動子300を有する発振器500の基本的構成を示す回路図である。発振器500は、この回路(発振回路)を含むことができる。発振回路は、電気信号を増幅する増幅器401と、増幅器401の入出力間に接続された帰還回路410と、を有する。増幅器401は、例えばCMOSインバータからなる。帰還回路410は、例えば、圧電振動子300と、抵抗403と、2つのコンデンサ404,405と、を備える。増幅器401には、直流電源から電圧Eが印加されている。電源電圧Eを増大させていき発振開始電圧になると、電流Iが急激に増加して発振が開始される。さらに電源電圧Eを増大させると、発振状態を保ちながら電流Iがほぼ比例して増加する。
【0075】
図17は、本実施形態に係る発振器500を概略的に示す平面図であり、図18は、発振器500を概略的に示す断面図である。なお、図18は、図17のX−X線断面図である。また、図16および図17では便宜上、圧電振動子300を簡略化して示している。
【0076】
発振器500は、封止材502により封止されている。IC(集積回路)503は、金線などのボンディングワイヤ504により外部端子570に接続されている。外部端子570は、リードフレーム505および接合材506を介して、実装端子541と電気的に接続されている。実装端子541は、配線(図示せず)などにより、圧電振動子300の各電極と電気的に接続されている。圧電振動子300は、蓋部材539やシール部材540などにより封止されている。
【0077】
図19は、本実施形態に係る発振器500の製造工程例を概略的に示す図である。
【0078】
まず、ICウェハに対してテープ貼りおよびダイシングを行う。次に、IC503のチップをリードフレーム505に搭載する。次に、ボンディングワイヤ504を用いてIC503に対してワイヤボンディングを行う。
【0079】
次に、圧電振動子300の実装端子541を、半田などの接合材506を用いてリードフレーム505に接合して、圧電振動子300をマウントする。次に、封止材(モールド材)502を用いて、圧電振動子300、IC503などを樹脂封止する。その後、特性検査、マーキングを行い、テーピング、梱包し、出荷される。
【0080】
また、図示はしないが、例えば、圧電振動子300が形成される基板10(図3参照)に対して半導体プロセスを用いて圧電振動子300に平面的に隣接するICを形成し、本実施形態に係る発振器を形成することもできる。これにより、パッケージを省略することができ、ワンチップ型の発振器を形成することができる。
【0081】
4.リアルタイムクロック600
次に、本発明にかかる電子機器の一例としてリアルタイムクロック600を説明する。
【0082】
図20は、上述した発振器(OSC)500を有するリアルタイムクロック600を概略的に示す回路ブロック図である。リアルタイムクロック600の集積回路部は、単一の基板601に集積され、マイクロプロセッサ(図示せず)と接続されている。
【0083】
計時用接続端子602,603に接続されている発振器500からは高周波(例えば32kHz)のクロックパルスが出力される。クロックパルスは分周回路605で分周され、1Hzの計時パルスが計時カウンタ606に入力される。計時カウンタ606は、例えば、秒計時ビットsと、分計時ビットmと、時計時ビットhと、曜日計時ビットdと、日計時ビットDと、月計時ビットMと、年計時ビットYとから構成されている。所定数の計時パルスが計時カウンタ606に入力されると、それぞれの計時ビットは繰り上がることができる。計時カウンタ606には、計時ビットの書き換えおよび読み出しを行う制御部620が接続されている。制御部620は、例えば、コマンドデコーダ612と、シフトレジスタ609,610と、を有することができる。
【0084】
計時カウンタ606の計時ビットを書き換える場合には、まず、マイクロプロセッサからセレクト入力端子607にセレクト信号を供給する。次に、マイクロプロセッサからデータ入力端子608に、書き換えるべき情報を表すデータビットと、計時ビットのアドレスを表すアドレスビットと、計時カウンタ606への書き込み動作を表す操作ビットとから構成される外部情報を供給する。その結果、外部情報は、直列に接続されたシフトレジスタ609,610に記憶される。そして、コマンドデコーダ612は、シフトレジスタ610に記憶された操作ビットとアドレスビットに基づき、ライトイネーブル信号を計時カウンタ606に送出するとともに、計時ビットを指定するアドレス信号を出力する。その結果、シフトレジスタ609に記憶されたデータビットが計時カウンタ606の計時ビットに書き込まれ、リアルタイムデータの書き換えが行われる。
【0085】
また、計時カウンタ606からリアルタイムデータを読み出す場合には、マイクロプロセッサから、読み出し動作を表す操作ビットを有する外部情報を送出させる。そして、コマンドデコーダ612は、計時カウンタ606へのライトイネーブル信号をインアクティブ状態にする。その結果、インバータ613がアクティブ状態のライトイネーブル信号をシフトレジスタ609に供給し、シフトレジスタ609が読み込み可能状態になり、計時カウンタ606の内容はシフトレジスタ609に読み出される。シフトレジスタ609に読み出されたリアルタイムデータは、クロック入力端子614に印加されるクロック信号に同期して、データ出力端子615に転送され、例えばマイクロプロセッサのレジスタなどに送出される。
【0086】
なお、例えば計算結果などのデータは、ランダムアクセスメモリ(RAM)616に記憶させることができる。
【0087】
図21は、本実施形態に係るリアルタイムクロック600を概略的に示す上面透視図であり、図22は、リアルタイムクロック600を概略的に示す側面透視図である。なお、図22は、図21の矢印XIVの方向に見た図である。
【0088】
発振回路などを有するICチップ651は、リードフレーム652のアイランド部653に導電性接着剤などで接着固定されている。ICチップ651の上面に設けられた各電極パッド654は、ボンディングワイヤ655により、パッケージの外周部に配置された入出力用リード端子656と電気的に接続されている。平面視において、ICチップ651の隣には、圧電振動子300を内部に収めている振動子用筐体657が配置されている。振動子用筐体657内には、例えば図1ないし図3に示す圧電振動子300が気密状態で封止されている。圧電振動子300の各電極に電気的に接続されたリード658は、振動子用筐体657内から外に突出している。リード658は、リードフレーム652の接続パッド659に導電性接着剤などで接着固定されている。ICチップ651、リードフレーム652および振動子用筐体657は、樹脂660により一体成形されてパッケージ化されている。
【0089】
また、図示はしないが、例えば、圧電振動子300が形成される基体10(図3参照)に対して半導体プロセスを用いて圧電振動子300に平面的に隣接するICを形成し、本実施形態に係るリアルタイムクロックを形成することもできる。これにより、パッケージを省略することができ、ワンチップ型のリアルタイムクロックを形成することができる。
【0090】
5.電波時計受信モジュール800
次に、本発明の電子機器の一例である電波時計受信モジュール800を説明する。
【0091】
図23は、本実施形態に係る電波時計受信モジュール800を概略的に示す回路ブロック図である。
【0092】
電波時計受信モジュール800は、受信部801と、周波数フィルタ805と、周辺回路810と、上述したリアルタイムクロック(RTC)600と、を含む。周波数フィルタ805は、例えば図10および図11に示す圧電振動子400(400A,400B)を有する。周辺回路810は、例えば、検波・整流回路806と、波形整形回路807と、中央演算処理装置(CPU)808と、を有することができる。
【0093】
電波時計は、時刻情報を含む標準電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)に標準電波を送信する送信所がある。
【0094】
受信部(例えばアンテナ)801は、40kHzまたは60kHzの長波の標準電波を受信する。標準電波は、40kHzまたは60kHzの搬送波に振幅変調(AM)をかけて時刻情報(タイムコード)を乗せたものである。
【0095】
受信された電気信号は、アンプ802によって増幅され、搬送周波数と同一の共振周波数を有する圧電振動子400A,400Bを有する周波数フィルタ805によって、濾波、同調される。濾波された電気信号からは、周辺回路810により、タイムコードを読み出すことができる。具体的には、まず、濾波された所定周波数の信号は、検波・整流回路806により検波復調される。そして、波形整形回路807を介してタイムコードが取り出され、CPU808でカウントされる。CPU808では、例えば、現在の年、積算日、曜日、時刻などの情報が読み取られる。読み取られた情報は、RTC600に反映されて、正確な時刻情報が表示される。
【0096】
搬送波は40kHzまたは60kHzであるから、周波数フィルタ805の圧電振動子400A,400Bには、本発明に係る圧電振動子が好適である。
【0097】
また、図示はしないが、例えば、圧電振動子400が形成される基体10(図11参照)に対して半導体プロセスを用いて圧電振動子400に平面的に隣接するICを形成し、本実施形態に係る電波時計受信モジュールを形成することもできる。これにより、パッケージを省略することができ、ワンチップ型の電波時計受信モジュールを形成することができる。
【0098】
また本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明にかかる圧電振動子300を模式的に示す平面図。
【図2】本発明にかかる圧電振動子300を模式的に示す平面図。
【図3】本発明にかかる圧電振動子300を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本発明にかかる圧電振動子400を模式的に示す平面図。
【図11】本発明にかかる圧電振動子400を模式的に示す断面図。
【図12】本発明の圧電振動子400の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】本発明の圧電振動子400の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】本発明の圧電振動子400の製造工程を模式的に示す断面図。
【図15】本発明の圧電振動子400の変形例を模式的に示す断面図。
【図16】本発明の発振器500の基本的構成を示す回路図。
【図17】本発明の発振器500を概略的に示す平面図。
【図18】本発明の発振器500を概略的に示す断面図。
【図19】本発明の発振器500の製造工程例を概略的に示す図。
【図20】本発明のリアルタイムクロック600を概略的に示す回路ブロック図。
【図21】本発明のリアルタイムクロック600を概略的に示す上面透視図。
【図22】本発明のリアルタイムクロック600を概略的に示す側面透視図。
【図23】本発明の電波時計受信モジュール800を概略的に示す回路ブロック図。
【符号の説明】
【0100】
10 基板、20 酸化シリコン層、30,30a シリコン層、
32 アンダーカット部、40,40a 振動部形成層、42 基部、50 下部電極、
50a 下部電極層、60,60a 圧電体層、70 上部電極、70a 上部電極層、
75 圧電素子、80 犠牲層、82 アンダーカット部、90 蓋状部、
94 封止層、100 振動部、110 ビーム結合部、120 ビーム部、
200 駆動部、H1 第1開口部、H2 第2開口部、H3 空隙部、
H4 通気孔、300,400 圧電振動子、401 増幅器、403 抵抗、
404,405 コンデンサ、410 帰還回路、500 発振器、502 封止材、
503 IC、504 ボンディングワイヤ、505 リードフレーム、
506 接合材、539 蓋部材、540 シール部材、541 実装端子、
570 外部端子、600 リアルタイムクロック、601 基板、
602,603 計時用接続端子、605 分周回路、606 計時カウンタ、
607 セレクト入力端子、608 データ入力端子、
609,610 シフトレジスタ、612 コマンドデコーダ、613 インバータ、
614 クロック入力端子、615 データ出力端子、620 制御部、
651 ICチップ、652 リードフレーム、653 アイランド部、
654 電極パッド、655 ボンディングワイヤ、656 入出力用リード端子、
657 振動子用筐体、658 リード、659 接続パッド、660 樹脂、
800 電波時計受信モジュール、801 受信部、802 アンプ、
805 周波数フィルタ、806 検波・整流回路、807 波形整形回路、
808 CPU、810 周辺回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された酸化シリコン層と、
前記酸化シリコン層の上方に形成されたシリコン層と、
前記シリコン層の上に接して形成された振動部形成層と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部内に片持ち梁状に形成され、前記振動部形成層に固定されたビーム結合部と前記ビーム結合部から延びる複数本のビーム部とを有する振動部と、
前記シリコン層を貫通し、前記第1開口部と前記振動部の下に形成された第2開口部と、
前記ビーム部の上方に形成された、圧電素子を備えた駆動部と、
を有する、圧電振動子。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記振動部を空隙部を介して覆う蓋状部を含み、
前記蓋状部は、前記空隙部に通じる通気孔を有する、圧電振動子。
【請求項3】
請求項2において、
さらに、少なくとも前記通気孔を塞ぐように形成された封止層を有する、圧電振動子。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
前記振動部形成層は、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および窒化シリコンから選ばれる物質の単層または多層構造である、圧電振動子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記ビーム部の本数は、偶数である、圧電振動子。
【請求項6】
基板と、前記基板の上方に形成された酸化シリコン層と、前記酸化シリコン層の上方に形成されたシリコン層と、を有する基体を準備する工程と、
前記シリコン層の上に接して振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上方に圧電素子を備えた駆動部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定されたビーム結合部と前記ビーム結合部から延びる複数本のビーム部とを有する片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる、圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
基板と、前記基板の上方に形成された酸化シリコン層と、前記酸化シリコン層の上方に形成されたシリコン層と、を有する基体を準備する工程と、
前記シリコン層の上に接して振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上方に圧電素子を備えた駆動部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定されたビーム結合部と前記ビーム結合部から延びる複数本のビーム部とを有する片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記第1開口部を塞ぐとともに、前記振動部形成層の上に少なくとも前記振動部および前記駆動部を覆うように犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層の上に蓋状部を形成する工程と、
前記蓋状部に前記犠牲層に通じる通気孔を形成する工程と、
前記犠牲層をエッチングして除去して空隙部を形成するとともに、前記第1開口部を塞ぐ犠牲層をエッチングして除去する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記空隙部および前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる、圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
さらに、少なくとも前記通気孔を塞ぐように封止層を形成する工程を有する、圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記通気孔は、平面的に見て、前記第1開口部よりも外側に形成された前記犠牲層の上の領域に形成される、圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれかにおいて、
前記空隙部を形成するとともに前記第1開口部を塞ぐ犠牲層を除去する工程は、ドライエッチングにより行われる、圧電振動子の製造方法。
【請求項11】
請求項6ないし請求項10のいずれかにおいて、
前記ドライエッチングは、エッチングガスとして、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種を用いる、圧電振動子の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の圧電振動子を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−236363(P2008−236363A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72962(P2007−72962)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】