圧電振動片、圧電振動子、電子デバイス
【課題】実装時の振動部への応力を緩和させた圧電振動片、及びこれを用いた圧電振動子、電子デバイスの提供。
【解決手段】水晶の結晶軸の、X軸とZ′軸に平行な面でY′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶で形成され、振動部22を有する薄肉部21と、薄肉部21より厚い厚肉部17とを備えた圧電振動片10であって、圧電振動片10は、+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向への回転を正の回転角とし、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転して得られるZ′′軸と、X軸をY′軸回りにZ′軸と共に回転し得られるX′軸と、に各々平行な縁辺を有し、厚肉部17には、縁辺の方向に緩衝部14を介してマウント部12が横並びに接続され、緩衝部14は、マウント部12と厚肉部17間にスリット16を有し、マウント部12は、マウント部12と緩衝部14と厚肉部17との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部12aを有する。
【解決手段】水晶の結晶軸の、X軸とZ′軸に平行な面でY′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶で形成され、振動部22を有する薄肉部21と、薄肉部21より厚い厚肉部17とを備えた圧電振動片10であって、圧電振動片10は、+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向への回転を正の回転角とし、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転して得られるZ′′軸と、X軸をY′軸回りにZ′軸と共に回転し得られるX′軸と、に各々平行な縁辺を有し、厚肉部17には、縁辺の方向に緩衝部14を介してマウント部12が横並びに接続され、緩衝部14は、マウント部12と厚肉部17間にスリット16を有し、マウント部12は、マウント部12と緩衝部14と厚肉部17との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部12aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、およびこれを用いた圧電振動子、電子デバイスに関し、特に実装後に発生するマウント位置での応力の振動部への影響を緩和させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動片の実装形態には、導電性接着剤を塗布してパッケージに固着する形態がある。このように、導電性接着剤を硬化させるための乾燥等の熱処理工程では、圧電振動片、パッケージ、導電性接着剤のそれぞれの線膨張係数の違いによる歪みが、冷却したのちの導電性接着剤の固着部分に残ってしまい、固着部分からの振動部への応力、すなわちマウント歪みが振動領域に悪影響を与えてしまうという問題があった。
【0003】
また、圧電振動片の小型化を図ろうとすると、圧電振動片の支持部に塗布された接着剤の硬化により生じた残留応力によって圧電振動片の共振周波数に経年変化が生じたり、あるいは励振電極の面積を小さくしなければならず、それによって圧電振動片としての電気的特性が劣化する問題が顕著に表れるという問題がある。例えばインピーダンスが大きくなり、良好な特性を得られなくなるという問題が顕著に表れてくる。
【0004】
そこで、このような問題に鑑みて、特許文献12においては、矩形のフラットな形状をしたATカット水晶基板等の厚みすべり圧電振動子に関し、支持部と振動部との間に切欠きやスリットを設けた構造について提案されている。
図16に、特許文献12に係る圧電振動子の模式図を示す。図16(a)は圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図、図16(b)は圧電振動子を構成する圧電振動片の下面図、図16(c)は圧電振動片を容器の内部に搭載した圧電振動子の上面図、図16(d)は図16(c)のA−A′線断面図である。
【0005】
図16においては、支持部602と振動部604とを有する矩形状の圧電振動子600が示されている。前記圧電振動子600の振動部604の上面と下面にそれぞれ形成した励振電極部606A、606Bと、前記励振電極部606A、606Bから前記(圧電振動子600の)支持部602の縁に引き出された入出力端子部608A、608Bとの間の圧電振動子600の主面上にスリット610が配置形成されている。これにより、前記励振電極部606A、606Bと前記入出力端子部608A、608Bとを物理的に隔離する構造としたものである。
【0006】
上記構成において、圧電振動子600の支持部602と、圧電振動子600を収容する容器612内の底部の電極端子(不図示)とを固着並びに電気的に接続するための接着剤616が硬化すると、図16(c)の二点鎖線で示す方向、範囲にわたって、圧電振動子600に対する残留応力が発生することになる。しかし、このような構造においては、スリット610によってこの残留応力が振動部604に伝播しないように構成しており、スリット610の長手方向長を最適な長さに設定することによって、残留応力の伝搬方向を上述の二点鎖線で示した領域の外側に制限することができる。
【0007】
これにより、圧電振動子600の電気的な特性を損なうことなく、かつ圧電振動子の共振周波数の経年変化が小さい小型の圧電振動子600を製造することができるとされている。なお、類似の技術として、導電性接着剤を塗布する箇所と振動部の間にスリット(特許文献1乃至5参照)や切欠き(特許文献1、2、3、4、6、7、8参照)を設ける構成が開示されている。また、強度確保等のために、圧電振動片の中央部に窪みを形成して逆メサ型とすることが行われている(特許文献9乃至11参照)。
【0008】
上記特許文献においては、圧電振動片のマウント側で発生した応力の振動部側への伝播を構造的に低減するものであるが、振動部側に伝播する応力を物性的な観点から低減させる技術も提案されている。すなわち特許文献13、特許文献14においては、いわゆるATカットの水晶基板を用いた圧電振動片の長辺や短辺の面方位を、その応力感度が小さくなる方向に設計したものを採用している。
【0009】
特許文献13においては、ATカット水晶基板のカット面上のZ′軸とX軸をY′軸回りに+X軸方向に30度程度回転して得られるZ′′軸とX′軸にそれぞれ平行な縁辺を有する圧電振動片を採用している。
【0010】
ここで、非特許文献1には、ATカット水晶基板に関する応力感度についての説明があり、ATカット水晶基板では、X軸をY′軸周りに−X軸から−Z′軸へ向かう方向へ60°または120°回転させることにより、Z′軸を回転して得られるZ′′軸方向が最も応力感度が鈍くなることが記載されている。
【0011】
そこで、特許文献14においては、振動片(ATカット水晶基板)の基板に起因したマウント歪み(応力感度)に関する非特許文献1の研究成果を根拠に、更に、量産性に優れ、振動片に対する振動部、即ち薄肉部の占有割合を高めることを目的として、前述のZ′軸とX軸をY′軸回りに+X軸方向に−120°〜+60°の範囲で回転して得られるZ′′軸とX′軸にそれぞれ平行な縁辺を有する前記薄肉部の長辺の方向を前記Z′′軸に合わせてなる圧電振動片を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−040715号公報
【特許文献2】実開昭61−187116号公報
【特許文献3】特開2004−165798号公報
【特許文献4】特開2009−158999号公報
【特許文献5】特開2005−136705号公報
【特許文献6】特許第4087186号公報
【特許文献7】特開2009−188483号公報
【特許文献8】特開2010−130123号公報
【特許文献9】特開2000−332571号公報
【特許文献10】特開2009−164824号公報
【特許文献11】特開2002−246869号公報
【特許文献12】特開平9−326667号公報
【特許文献13】特許第4310838号公報
【特許文献14】特開2009−164824号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.M.Ratajski, “The Force Sensitivity of AT−Cut Quartz Crystals”,20th Annual Symposium on Frequency Control,(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、近年このような圧電振動片を用いたデバイスの小型化並びに高性能化が加速した状況においては、前述のごとき上記いずれの構成であっても、マウント歪みを十分に取り除くことは困難であることが、以下に示すように本願発明者らにより見出された。
【0015】
図17に圧電振動片のマウント部と振動部との間にスリットを形成した場合の応力分布を示し、図17(a)は圧電振動片のスリットのZ′軸方向の幅を150μmとした場合の応力分布、図17(b)は圧電振動片のスリットのZ′軸方向の幅を250μmとした場合の応力分布を示す。また、図18、図19に、圧電振動片の幅方向の両側でマウント部と振動部との間となる位置に切欠きを形成して、マウント部と振動部との間を連結する連結部を形成した場合の応力分布を示し、図18(a)は連結部のX軸方向の幅を400μmとした場合の応力分布、図18(b)は連結部のX軸方向の幅を300μmとした場合の応力分布、図19(a)は連結部のX軸方向の幅を200μmとした場合の応力分布、図19(b)は連結部のX軸方向の幅を100μmとした場合の応力分布を示す。
【0016】
図17、図18、図19は、図中の導電性接着剤が塗布されるマウント部702のY′軸側の面上の円の中心の2点を基点として圧電振動片700に対して圧縮応力或いは引張応力を印加した場合の応力分布のシミュレーション結果を示したものである。この圧縮応力或いは引張応力(残留応力)は、圧電振動片、導電性接着剤、基板の熱膨張係数の違いにより、圧電振動片に印加される熱歪みにより発生する。
【0017】
図17、図18、図19において、X軸、Y′軸、Z′軸は互いに直交するものとし、圧電振動片700は、Y′軸に平行な方向を法線とする主面を有し、Z′軸に平行な方向及びX軸に平行な方向にそれぞれ縁辺を有する板状の外形を有している。また圧電振動片700の主面を貫通する貫通孔としてスリット704が形成されている。よって、圧電振動片700において、マウント部702、スリット704、振動部706が横並びに配置された形となる。図17において、圧電振動片700は、マウント部702、スリット704、振動部706が並ぶ方向(Z′軸方向)の長さが1500μm、X軸方向の幅が1000μmの外形を有している。またスリット704のX軸方向(長辺)の長さは650μmである。そしてマウント部702側のスリット704の長辺からマウント部702の端部までのZ′軸方向の幅は、図17(a)において350μm、図17(b)においては250μmとしている。またスリット704のZ′軸方向の幅は、図17(a)において150μm、図17(b)において250μmとしている。すなわち、図17(a)と図17(b)では、スリット704のZ′軸方向の位置と幅を変化させている。
【0018】
そして、図17、図18、図19の図中の左に縦一列に並べられた複数の模様は、それぞれ圧電振動片700が受ける応力の強度を示し、上の模様に行くほど応力が大きいことを示し、下の模様に行くほど応力が小さいことを示す。そして圧電振動片700が受ける応力の強度の分布を、上述の模様を用いて表している。
【0019】
図17に示すように、このように小さな圧電振動片700においては、スリット16を形成しても、さらにスリット16の位置や幅を変化させても、マウント部12で発生した熱歪みに起因する応力を解消しきれずに、強い応力が圧電振動片700の振動部706にまで達していることがわかる。よって圧電振動片700の共振周波数の安定性等の電気的特性に悪影響を与えるという問題がある。
【0020】
図18、図19に示す圧電振動片700は、特許文献6、7のような従来技術に係るマウント部702と振動部706との間において圧電振動片700の幅方向の両端に切欠き708を形成した、所謂切欠き構造となっている。この構造では、切欠き708により形成された連結部710の幅を狭くしていくことにより、マウント部702で発生した応力の振動部706への伝播が緩和されていく様子が観察される。しかし、連結部710のみで振動部706を支持する構造では耐落下衝撃等の強度面で不利となり実用性に乏しいという問題がある。
【0021】
そこで本発明は上記問題点に着目し、マウント部から振動領域への応力の伝播を十分に緩和することを可能とした圧電振動片、圧電振動子、電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0023】
[適用例1]水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を回転軸として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ回転させた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ回転させた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶により形成され、振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、前記薄肉部より厚い厚肉部とを備えた圧電振動片であって、前記圧電振動片は、前記+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、前記Z′軸を前記Y′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ′′軸と、前記X軸を前記Y′軸回りに前記Z′軸とともに回転させて得られるX′軸と、にそれぞれ平行な縁辺を有し、前記厚肉部には、前記縁辺の方向に緩衝部を介してマウント部が横並びで接続され、前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、前記マウント部は、前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部を有していることを特徴とする圧電振動片。
【0024】
圧電振動片はマウント部に導電性接着剤を塗布することにより基板に接続される。しかし、これによりマウント部と導電性接着剤との間に熱歪みが生じ、これが圧電振動片全体に応力として伝播することになる。しかし、マウント部の幅方向の両端部に形成された切欠き部によりマウント部の幅が狭くなる。これにより、マウント部に接着される導電性接着剤同士の距離が短くなるため、導電性接着剤とマウント部との間で発生する応力そのものを小さくすることができる。またマウント部と導電性接着剤との間で発生し振動部側に伝播する応力のうち振動部側に向かって直進的に伝播する成分が最も大きなものとなる。しかし、応力が最も強く伝播する直進的な経路上にスリットが配置された形となるので、その直進的な経路は遮断され、スリットを迂回する応力の成分のみが振動部側に伝播可能となる。しかし、その応力は、振動部側に進行するたびに曲げられることになるので大きな割合で応力が緩和される。よって応力が振動部に伝播する前に十分に緩和され、振動部への応力の影響を緩和することが可能な圧電振動片となる。
【0025】
またATカットの水晶基板を用いることにより、厚みすべり振動が効率的に発振可能な圧電振動片となる。そして圧電振動片の縁辺の方向を上述のように設計することにより、圧電振動片全体の応力感度を抑制して振動部側へ伝達する応力を小さくすることができ、振動部への応力の影響が低減された圧電振動片となる。
【0026】
[適用例2]前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記Z′′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動片。
【0027】
圧電振動片における熱歪みに起因する応力は、マウント部に塗布された導電性接着剤を起点としてマウント部の幅方向に発生し、これが振動部側に伝播する。しかし上記構成とすることにより、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、マウント部で発生した応力のうち振動部側に伝播する成分を低減することができる。したがって、振動部への応力の影響が低減された圧電振動片となる。
【0028】
[適用例3]前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記X′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動片。
【0029】
圧電振動片における熱歪みに起因する応力は、マウント部に塗布された導電性接着剤を起点としてマウント部の幅方向に発生し、これが振動部側に伝播する。しかし上記構成とすることにより、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、マウント部で発生する応力そのものを低減させることができる。したがって、振動部への応力の影響が低減された圧電振動片となる。
【0030】
[適用例4]前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に第2切欠き部を有することを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片においてスリットの周縁及び緩衝部にまで伝播した応力が振動部へ直線的に伝播することを第2切欠き部により遮断することができるので、振動部への応力の影響を緩和することができる。
【0031】
[適用例5]前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、前記厚肉部の幅は、前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする適用例1乃至4のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0032】
[適用例6]前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至5のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0033】
[適用例7]前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電振動片。
【0034】
上記構成により、薄肉部と厚肉部との実装面側の境界には厚み方向に段差が形成される。よって、引出電極に塗布される導電性接着剤と振動部との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0035】
[適用例8]前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、厚みすべり振動を振動部に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0036】
[適用例9]基板を有し、適用例1乃至8のうちいずれか1例に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた圧電振動子となる。
【0037】
[適用例10]前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする適用例9に記載の圧電振動子。
上記構成により、振動部への応力をさらに緩和させた圧電振動子となる。
【0038】
[適用例11]基板を有し、適用例1乃至8のうちいずれか1例に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた電子デバイスとなる。
【0039】
[適用例12]前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする適用例11に記載の電子デバイス。
上記構成により、振動部への応力をさらに緩和させた電子デバイスとなる。
【0040】
[適用例13]適用例11または12に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイス。
上記構成により、圧電振動片を発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は下面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す図である。
【図2】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図2(a)は第1側面図、図2(b)は第2側面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図、図2(d)は図1(a)のB−B線断面図である。
【図3】圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示す模式図である。
【図4】圧電振動片の製造工程(外形形成工程)の模式図である。
【図5】圧電振動片の製造工程(電極形成工程)の模式図である。
【図6】第2実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図6(a)のB−B線断面図である。
【図7】第1実施形態の圧電振動片の変形例であり、図7(a)は上面図、図7(b)は下面図、図7(c)は側面図である。
【図8】第2実施形態の圧電振動片の第1変形例であり、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は側面図である。
【図9】第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例の模式図であり、図9(a)は上面図、図9(b)は下面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図9(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
【図10】本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す図である。
【図11】本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示し、図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の上面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。
【図12】図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図である。
【図13】本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示し、図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。
【図14】本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す図である。
【図15】本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示し、図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の上面図である。
【図16】特許文献12に係る圧電振動子の模式図を示し、図16(a)は圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図、図16(b)は圧電振動子を構成する圧電振動片の下面図、図16(c)は圧電振動片を容器の内部に搭載した圧電振動子の上面図、図16(d)は図16(c)のA−A′線断面図である。
【図17】圧電振動片のマウント部と振動部との間にスリットを形成した場合の応力分布を示し、図17(a)は圧電振動片のスリットの幅を150μmとした場合の応力分布、図17(b)は圧電振動片のスリットの幅を250μmとした場合の応力分布である。
【図18】圧電振動片の幅方向の両側のマウント部と振動部との間となる位置に切欠きを形成して、マウント部と振動部との間を連結する連結部を形成した場合の応力分布を示し、図18(a)は連結部の幅を400μmとした場合の応力分布、図18(b)は連結部の幅を300μmとした場合の応力分布である。
【図19】圧電振動片の幅方向の両側のマウント部と振動部との間となる位置に切欠きを形成して、マウント部と振動部との間を連結する連結部を形成した場合の応力分布を示し、図19(a)は連結部の幅を200μmとした場合の応力分布、図19(b)は連結部の幅を100μmとした場合の応力分布である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。なお以下の説明に用いられる図において、X′軸、Y′軸、Z′′軸は互いに直交するものとする。
【0043】
第1実施形態に係る圧電振動片を図1、図2に示す。図1(a)は上面図、図1(b)は下面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す模式図、図2(a)は第1側面図、図2(b)は第2側面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図、図2(d)は図1(a)のB−B線断面図である。本実施形態に係る圧電振動片10は、圧電素板として、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板11aを採用している。
【0044】
さらに本実施形態の圧電振動片10は、このATカット水晶基板11aにおいて、+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに角度ψ(−120°から+60°)の範囲で回転させて得られるZ′′軸に平行な方向を長辺(縁辺)とし、X軸をY′軸回りにZ′軸とともに回転させて得られるX′軸に平行な方向を短辺(縁辺)とする矩形形状の外形の圧電素板11を用いている。即ちATカット水晶基板11aの面内方位を角度ψだけ回転させたものが圧電振動片10の外形を形成する圧電素板11となる。
【0045】
また、圧電振動片10は、周縁に厚肉部17(補強部)を残したウエットエッチングにより、厚肉部17よりも厚みが薄く形成された薄肉部21(振動部22)を有する逆メサ型の振動部22を有した構造となっている。さらに、圧電振動片10は、長辺方向(Z′′軸方向)に並んでマウント部12、緩衝部14、厚肉部17(振動部22)が順に横並びで接続された形態を有している。すなわち、緩衝部14がマウント部12と厚肉部17の間に配置されている。また圧電振動片10は、図1(a)のA−A線を中心線として線対称な形状を有している。そして圧電振動片10はマウント部12側を固定端とし、振動部22側を自由端として片持ち支持状態で、実装先の基板34に導電性接着剤32により固定される。
【0046】
マウント部12は、圧電振動片10の+Z′′軸側の端部に配置されるとともに、X′軸方向の両端には切欠き部12aが形成されている。切欠き部12aは、矩形形状を有する圧電振動片10の4つの角のうち、平面視してマウント部12に含まれる2つの角をそれぞれ包含し、Z′′軸方向に平行な辺とX′軸に平行な辺を有する矩形(またはL字型)の輪郭を切断面として、前記2つの角をそれぞれ断裁する態様で形成される。
【0047】
そして実装面となるマウント部12の一主面(−Y′軸側の面)には後述の励振電極24、28に引出電極26、30を介して電気的に接続するパッド電極26a、30aが配置されている。パッド電極26a、30aには接合部材となる導電性接着剤32が塗布され、パッド電極26a、30aは実装側の基板34上の部位(例えば接続電極)と接着する。したがって導電性接着剤32を用いて基板34に接着することにより圧電振動子が形成される。またマウント部12において導電性接着剤32が塗布される位置が一対の接続部となり、この接続部の並ぶ方向がX′軸に平行な方向となる。
【0048】
緩衝部14は、マウント部12と厚肉部17との間に配置され、マウント部12で発生して振動部22側に伝播する応力を緩和させる領域である。これを実現するため、緩衝部14にはスリット16が設けられている。スリット16はX′軸方向を長手方向とし、圧電振動片10の厚み方向(Y′軸方向)に貫通する矩形の貫通孔として形成されている。これにより、緩衝部14のX′軸方向の両端には、厚肉部17とマウント部12とを連結する連結部15が形成される。なおマウント部12の緩衝部14側と緩衝部14のマウント部12側は一体的に形成されている。そして、図1(a)、図1(b)に示す如く、緩衝部14(連結部15)にも上述の引出電極26、30が形成されている。
【0049】
第2切欠き部18は、緩衝部14と厚肉部17との連結部に形成され、圧電振動片10の短辺方向(X′軸方向)の両側を矩形に切り欠くように形成されている。よって緩衝部14の第2切欠き部18に挟まれた領域には括れ部20が形成される。
【0050】
薄肉部21は、厚肉部17の一部の領域を薄肉に形成したものであり、マウント部12の実装面(−Y′軸側の面)から掘り込む態様で形成される。これにより薄肉部21は、厚肉部17の+Y′軸側の面に偏在して厚肉部17に接続するととともに、薄肉部21と厚肉部17は、圧電振動片10の−Y′軸側の面で段差を形成する。また、薄肉部21の±X′軸側、および+Z′′軸側は厚肉部17に接することになるが、薄肉部21の−Z′′軸側は圧電振動片10の−Z′′軸側の端部の一部となっている。
【0051】
振動部22は、薄肉部21の一部を構成するとともに、圧電振動片10において厚みすべり振動を発生させる領域である。振動部22の中央の両主面(表裏面)には互いに対向するように励振電極24、28が形成されている。+Y′軸側の面に形成された励振電極28は引出電極30に接続され、−Y′軸側の面に形成された励振電極24は、引出電極26と電気的に接続される。引出電極26は薄肉部21、厚肉部17、緩衝部14(連結部15)の表面を経由してマウント部12に配置されたパッド電極26aに接続される。また引出電極30は、薄肉部21の表面、厚肉部17の表面及び端面、緩衝部14(連結部15)の表面を経由してマウント部12に配置されたパッド電極30aに接続される。したがって、パッド電極26a、30aに交流電圧を印加することにより振動部22は所定の周波数で厚みすべり振動を行なうことができる。
【0052】
ところで、導電性接着剤32を用いた圧電振動片10の接着工程では導電性接着剤32を硬化させるために圧電振動片10を高温に曝す必要がある。よって接着後温度が低下するとマウント部12の導電性接着剤32が塗布されている2点の間を結ぶ領域で、圧電振動片10、基板34、導電性接着剤32の熱膨張係数の違いによる熱歪みが発生し、これに起因する応力が圧電振動片10全体に伝播することになる。
【0053】
しかし、マウント部12に形成された切欠き部12aにより、マウント部12はX′軸方向の幅が狭くなる。これにより、マウント部12に接着される導電性接着剤32同士の距離が短くなるため、導電性接着剤32とマウント部12との間で発生する応力そのものを小さくすることができる。またマウント部12と導電性接着剤32との間で発生し振動部22側に伝播する応力のうち振動部22側に向かって直進的に伝播する成分(−Z′′軸方向に伝播する成分)が最も大きなものとなる。しかし、応力が最も強く伝播する直進的な経路上にスリット16が配置された形となるので、その直進的な経路は遮断され、スリット16を迂回して連結部15を伝播する応力の成分のみが振動部22側に伝播可能となる。
【0054】
さらに連結部15にまで伝播した応力は、第2切欠き部18により振動部22側に直線的に伝播する経路が遮断され、スリット16の周囲及び括れ部20に迂回して振動部22側に伝播することになる。しかし、その応力は、振動部22側に進行するたびに曲げられることになるので大きな割合で応力が緩和される。このように、マウント部12で発生した応力の振動部22側に伝播する成分をスリット16、第2切欠き部18により遮断することができるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。
【0055】
したがって、応力が振動部22に伝播する前に十分に緩和され、振動部22への応力の影響を緩和することが可能な圧電振動片10となる。なお、連結部15から振動部22への応力の直線的な伝播経路を遮断する趣旨から、緩衝部14において第2切欠き部18により形成される括れ部20のX′軸方向の幅は、スリット16のX′軸方向の幅以下となることが望ましい。
【0056】
また、振動部22に外部から応力が印加されると、振動部22の見かけ上の剛性が変化するため、共振周波数が変動する。そしてマウント部12におけるマウント状態は実装状態に依存して個々に異なるため、振動部22に伝播する応力にもバラつきが生じ、共振周波数にバラつきが生じることになる。しかし上述のように、マウント部12で発生した熱歪みに起因する応力をスリット16、第2切欠き部18において緩和させることにより、周波数変動を抑制し、これを用いた圧電振動子の歩留を高めることができる。
【0057】
さらに、振動部22は、緩衝部14より薄肉に形成されている。これにより、振動部22が緩衝部14から受ける応力が小さくなるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。また、図1に示すように、薄肉部21(振動部22)は、厚肉部17との接続位置を圧電振動片10のパッド電極26a、30aが配置された面(−Y′軸側の面)の反対側の面(+Y′軸側の面)に偏在させ、厚肉部17との間で−Y′軸側に段差を形成することになる。したがって、振動部22と、パッド電極26a、30aに塗布される導電性接着剤32との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部22に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0058】
また、圧電振動片10における熱歪みに起因する応力は、マウント部12の導電性接着剤32が塗布された一対の部位(一対の接続部)を起点としてマウント部12の幅方向(X′軸方向)に発生し、これが振動部22側に伝播する。しかし、本実施形態においては、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、圧電振動片10の長辺をZ′′軸方向とし、短辺をX′軸方向とすることで、マウント部12(接続部間)で発生した応力のうち振動部22側に伝播する成分を低減することができる。したがって、振動部22への応力の影響が低減された圧電振動片10となる。
【0059】
本実施形態の圧電振動片10では、短辺方向をX′軸方向、長辺方向をZ′′軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片10とした。しかし、これに限らず、圧電振動片10の短辺方向をZ′′軸方向、長辺方向をX′軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片10とすることができる。この場合、圧電振動片10における熱歪みに起因する応力は、マウント部12の導電性接着剤32が塗布された一対の部位(一対の接続部)を起点としてマウント部12の幅方向(Z′′軸方向)に発生し、これが振動部22側に伝播する。しかし、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、マウント部12で発生する応力そのものを低減させることができる。したがって、振動部22への応力の影響が低減された圧電振動片10となる。
【0060】
次に第1実施形態の圧電振動片10の製造工程について説明する。
図3に、圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示し、図4に圧電振動片の製造工程(外形形成工程)を示し、図5に圧電振動片の製造工程(電極形成工程)を示す。大まかな手順としては、圧電振動片10の材料となる水晶基板36において、薄肉部21(振動部22)に相当する位置をハーフエッチングし、圧電振動片10の外形に倣ってエッチングし、励振電極24、28、引出電極26、30、パッド電極26a、30aの形成を行なう。
【0061】
図3に示すように、最初に圧電振動片10を構成する薄肉部21(振動部22)の外形を形成する。まず図3(a)に示すように、圧電素板としてATカットの水晶基板36を用意し、水晶基板36においてレジスト膜38を塗布する。そして図3(b)に示すように、薄肉部21の形状に対応したフォトマスク40を用いてレジスト膜38を露光し、図3(c)に示すように感光したレジスト膜38aを除去する。そして図3(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が薄肉部21の厚みとなるまでハーフエッチングし、図3(e)に示すようにレジスト膜38を除去する。このとき水晶基板36には薄肉部21に対応する凹部21aが形成される。
【0062】
次に圧電振動片10の外形を形成する。図4(a)に示すように、凹部21aが形成された水晶基板36にレジスト膜42を塗布する。そして図4(b)に示すように圧電振動片10、切欠き部12a、スリット16、第2切欠き部18の形状に対応したフォトマスク44を用いてレジスト膜42を露光し、図4(c)に示すように感光したレジスト膜42aを除去する。そして図4(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が貫通するまでエッチングし、図4(e)に示すようにレジスト膜42を除去する。これにより圧電振動片10の外形を有する圧電素板10aが形成される。
【0063】
そして圧電素板10aに電極を形成する。まず図5(a)に示すように、スパッタ等により圧電素板10aの全面にCrやAu等による金属膜46を蒸着する。このとき圧電素板10aの端面にも金属膜46が蒸着する。そして図5(b)に示すように金属膜46が蒸着した圧電素板10aの全面にレジスト膜48を塗布する。このとき圧電素板10aの端面にもレジスト膜48が塗布される。次に図5(c)に示すように圧電振動片10の両面の励振電極24、28、引出電極26、30、パッド電極26a、30aの形状に対応したフォトマスク50を用いレジスト膜を露光する。このとき引出電極30の端面を通過する部分のレジスト膜48は感光しない。次に図5(d)に示すように感光したレジスト膜48aを除去し、図5(e)に示すように励振電極24、28、引出電極26、30に対応する部分以外の金属膜46を露出させエッチングを行なう。このとき、端面に蒸着した金属膜46は感光せずに残ったレジスト膜42により保護されている。よって引出電極30の端面を通過する部分の金属膜46は残り、パッド電極30aは引出電極30を介してその反対面にある励振電極28と電気的に接続される。そして図5(f)に示すようにレジスト膜48を除去することにより圧電振動片10が形成される。
【0064】
第2実施形態の圧電振動片を図6に示し、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図6(a)のB−B線断面図である。第2実施形態の圧電振動片60は、基本的には第1実施形態と類似するが、前記マウント部62と緩衝部64と厚肉部70との並ぶ方向に対して直交方向(X′軸方向)に関し、厚肉部70の幅は、緩衝部64の幅よりも狭く形成された点で相違する(特徴1)。また、振動部(メサ部72)は、薄肉部71より厚肉に形成され、励振電極74、76はメサ部72の両面に形成された点で相違する(特徴2)構造としてよい。そうすることにより、メサ部72に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。なお、圧電振動片60の−Y′軸側の面に配置された励振電極76には引出電極26が接続され、+Y′軸側の面に配置された励振電極74には引出電極30が接続されている。励振電極76に接続された引出電極26は、薄肉部71、厚肉部70、連結部15の表面を経由して、マウント部62の−Y′軸側の面に配置されたパッド電極26aに接続する。励振電極74に接続された引出電極30は、薄肉部71、厚肉部70、連結部15の表面を経由するとともに厚肉部70で圧電振動片60の−Y′軸側の面に引き回され、マウント部62の−Y′軸側の面に配置されたパッド電極30aに接続する。
【0065】
第2実施形態の圧電振動片60の製造工程は、ハーフエッチングの工程で、厚肉部70を周囲に有する薄肉部71を形成する点と、薄肉部71の中央に薄肉部より厚肉となるメサ部72を形成する点と、で相違するが、それ以外では第1実施形態と共通である。
【0066】
また厚肉部70の薄肉部71が形成された部分のX′軸方向の幅は、マウント部62のX′軸方向の幅と同じであっても良いし、短く/長くなっても良いが、圧電振動片60が図7(a)のA−A線を中心線とした線対称な形状を有することが好ましい。また第2切欠き部66により形成される括れ部68は、厚肉部70まで形成され、括れ部68と厚肉部70のX′軸方向の幅が一致している。
【0067】
上述の特徴1を有することにより、圧電振動片60の自由端側(−Z′′軸側)を軽量化して実装の安定性を高めることができる。さらに特徴2を有することにより、厚みすべり振動の振動領域を振動部(メサ部72)に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0068】
図7に第1実施形態の変形例、図8に第2実施形態の第1変形例を示す。ここで、図7(a)は上面図、図7(b)は下面図、図7(c)は側面図である。また、図8(a)は上面図、図8(b)は下面図、図8(c)は側面図である。
【0069】
図7、図8に示すように、厚肉部17、70を緩衝部14、64と連結する部分を残して薄肉に形成する、すなわち薄肉部21、71をX′軸方向の両端まで形成することも好適である。これにより、圧電振動片10、60の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0070】
図9に、第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例を示し、図9(a)は上面図、図9(b)は下面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図7(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
【0071】
図9に示すように第2実施形態の第2変形例おいては、メサ部80を薄肉部78の両面に設けることも好適である。このとき薄肉部78は水晶基板36(図3参照)の両面からメサ部80の形状を残してハーフエッチングすることにより形成される。このようにメサ部80を両面に形成することにより、厚みすべり振動の閉じ込め効果を高めた圧電振動片61とすることができる。なお、第2実施形態において、励振電極74、76はメサ部80全面に矩形に形成されているが、メサ部80における実際の振動領域に対応して例えば円形状、楕円形状としてもよい。そうすることにより、メサ部に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。
【0072】
図10に本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す。本願発明者は、本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布についてシミュレーションを行った。シミュレーションの対象となる圧電振動片は、第2実施形態のものとほぼ同様の形態を有している(図6参照)。そして、図10に示すように、マウント部の実装面上に描かれた2つの円の中心の2点の位置において、2点間で互いに引き合う力若しくは互いに押し合う力を印加したときの、圧電振動片の応力の分布のシミュレーションを行った。
【0073】
図10において、それぞれ左側に縦一列に並べてある模様は、マウント部で発生した応力により、各タイプの圧電振動片が受ける応力の強度(レベル1〜レベル9)を示している。ここで、レベル9が最も大きな応力を受ける領域を示し、レベル9からレベル1に行くにつれて受ける応力は小さくなり、レベル1は受ける応力が最小若しくは応力の検出限界以下となる領域を示している。そしてこれらの模様は、各タイプの圧電振動片上において圧電振動片が受ける応力の強度分布に対応して描かれている。以下、図10におけるシミュレーション結果を図6に示す圧電振動片60の構成要素に対応させて説明する。
【0074】
図10に示すように、マウント部62全体及び緩衝部64のマウント部62側に強い応力(レベル9)が発生していることがわかる。そしてマウント部62で発生した応力は、スリット16のマウント部62側に伝播するが、スリット16のX′軸側の両端側で受ける応力はレベル9以下となる領域が存在する。これはマウント部62に形成された切欠き部12aにより、マウント部62のX′軸方向の長さが短くなるため、導電性接着剤32同士の距離が小さくなり、マウント部62で発生する応力そのものが小さくなったからと考えられる。
【0075】
そしてマウント部62側で発生した応力は、スリット16の周囲、すなわち連結部15を伝播して厚肉部70に伝播するものの括れ部68(厚肉部70)の手前までである程度緩和され、この厚肉部70でうける応力はレベル5とレベル4が支配的になっていることがわかる。これは、連結部15を伝播する応力がその伝播途中で大きな割合で緩和されるためと考えられる。
【0076】
さらに第2切欠き部66により応力の薄肉部71(メサ部72)への直線的な伝播経路が遮断され、応力の伝播経路が括れ部の中央に向くように曲げられ、この伝播経路の伝播途中でも大きな割合で応力が緩和されたと考えられる。
【0077】
スリット16に隣接する厚肉部70(括れ部68)においては、スリット16側ではレベル4の応力を受ける領域が支配的であるが、薄肉部71側ではレベル5の応力を受ける領域が支配的となっている。これは、連結部15から厚肉部70のスリット16側への応力の経路の曲げられる角度が、連結部15から厚肉部70の薄肉部71側への応力の経路の曲げられる角度より大きく、経路の曲げられる角度が大きくなるほど応力の緩和が促進されるからと考えられる。よって厚肉部70において、スリット16側よりも薄肉部71側が受ける応力のレベルが高くなったものと考えられる。
【0078】
そして厚肉部70と薄肉部71との境界の厚肉部70側では受ける応力はレベル5となっているが、薄肉部71側ではレベル2となっており、この境界において受ける応力のレベルに段差が生じている。ここで、圧電振動片60の上述の応力が印加された−Y′軸側の面(実装面)において薄肉部71と厚肉部70との間には段差が形成されている。よって薄肉部71に残る応力は、厚肉部70の+Y′軸側の面の応力を引き継いだものである。このことから、応力は上述の印加された−Y′軸側の面(実装面)から+Y′軸側の面にかけて圧電振動片60の厚み方向にも緩和し、厚肉部70と薄肉部71との境界で、応力のレベルにも段差が生じたものと考えられる。
【0079】
そして薄肉部71の中央部においては、受ける応力はレベル1が支配的となっており、この領域を振動部とする(メサ部72を形成する)ことにより、応力の影響を殆ど受けずに良好な周波数特性を有する圧電振動片を構築することができる。
【0080】
図11に本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示す。図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の上面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。圧電振動子100は圧電振動片60を収容する凹部を有するパッケージ102(基板)と、凹部104を封止するリッド112により形成される。またパッケージ102の下面には外部電極106が形成され、凹部104の底面には貫通電極108を介して外部電極106と電気的に接続された接続電極110が配置されている。そしてこの接続電極110とマウント部62に配置されたパッド電極26a、30aとが導電性接着剤32により接合される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージ102に接続される。さらに外部電極106と引出電極26、30とが電気的に接続される。上記構成により、圧電振動片60の振動部への応力を緩和させた圧電振動子100となる。
【0081】
図12、図13に本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示す。図12は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図を示し。また図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。本実施形態の電子デバイス200は、パッケージ202(基板)、圧電振動片60、61(圧電振動片10でもよい)、圧電振動片60、61(図9参照)を駆動させる集積回路(IC210)、リッドにより構成されている。
【0082】
パッケージ202は、図13の破線で示すように3層構造で形成されている。パッケージ202の下面には外部電極214が形成されている。またパッケージ202の凹部204の下段部206には複数の接続電極216が配置されている。接続電極216は、IC210に形成された複数のパッド電極220に対向する配置で複数形成され、各接続電極216は対応するパッド電極220に接着剤222により接続する。またパッケージ202の凹部204の上段部208には、圧電振動片60、61のパッド電極26a、30aと導電性接着剤32を介して接続する接続電極218が形成されている。
【0083】
上述のように、パッケージ202の凹部204の下段部206に形成された接続電極216は、パッド電極220と接続するものであるが、接続電極218と電気的に接続するものと、外部電極214に接続するものがある。よってIC210は接続電極216及び外部電極214を介して外部と電気的に接続され、圧電振動片60、61のパッド電極26a、30aは接続電極218及び接続電極216を介してIC210と電気的に接続される。したがってIC210は、外部電極214を介して電力が供給されると、圧電振動片60、61を駆動させることができる。本実施形態の電子デバイス200においては、圧電振動片60、61とIC210とが共に凹部204においてリッド212によりシングルシールにて封止された構造を有している。上記構成により、圧電振動片60、61(圧電振動片10でもよい)の振動部への応力を緩和させた電子デバイス200となる。
【0084】
図14に本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す。図14においては、パッケージ302(基板)の両面に凹部304、306を形成し、一方の凹部304に圧電振動片60を搭載するとともにリッド308で封止し、他方の凹部306には集積回路(IC316)を取り付けた構成を有した電子デバイス300となっている。そしてパッケージ302の下端には外部電極310が形成され、また凹部306には外部電極310または凹部304に配置された接続電極320と電気的に接続するとともに、ワイヤー314を介してIC316のパッド電極318と電気的に接続する接続電極312が配置されている。
【0085】
一方、凹部304に配置された接続電極320は、圧電振動片60のパッド電極26a、30aと導電性接着剤32を介して接続される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージに接続される。このように圧電振動片60とIC316とを隔離することによって、圧電振動片60のIC316からの熱の影響を低減することができる。
【0086】
図15に本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示す。図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の上面図である。第2変形例においては、例えば図11に示す圧電振動子100を用いて電子デバイス400を形成している。すなわち、第2実施形態においては、圧電振動子100を駆動する集積回路(IC404)を搭載した基板402上にIC404(パッド電極406)と電気的に接続する電極球412を配置し、この電極球412により圧電振動子100を支持するとともに、電極球412と圧電振動子100の外部電極106とを電気的に接続し、基板402、IC404、電極球412、圧電振動子100を樹脂等のモールド剤416により一体形成している。ここで、基板402の下面には外部電極410が形成され、基板402の上面には外部電極410と貫通電極418を介して電気的に接続する接続電極408が形成されている。そしてIC404に形成されたパッド電極406のうち、一部は電極球412にワイヤー414を介して接続され、残りは接続電極408にワイヤー414を介して接続されている。
【0087】
上記構成とすることにより、既存の圧電振動子100の規格に対応して基板IC、電極球等の配置をして電子デバイス400を形成することができるのでコストを抑制することができる。なお、いずれの実施形態においてもICと各電極との接続はフェイスダウンボンディングでもよい。またいずれの圧電振動子、電子デバイスの実施形態においても、上述のいずれの実施形態の圧電振動片も適用できる。
【0088】
なお、上述の電子デバイスにおいては、圧電振動子に半導体素子(IC)に代表される電子部品を備えた構成として説明したが、少なくとも一以上の電子部品を備えることが好適である。そして前記電子部品としては、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子等を適用することができ、圧電振動片を発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。また圧電振動片の長辺がZ′′軸方向であるときは、導電性接着剤32の2つの塗布位置(接続部)を結ぶ線の方向がX′軸方向となるように導電性接着剤32を塗布する(図1参照)。これによりマウント部12で発生した応力のうち振動部側に伝播する成分を低減し、振動部への応力の影響が低減された電子デバイス(圧電振動子)を構築することができる。そして、圧電振動片の長辺がX′軸方向であるときは、導電性接着剤32の2つの塗布位置(接続部)を結ぶ線の方向がZ′′軸方向となるように導電性接着剤32を塗布する。これによりマウント部12で発生する応力そのものを低減し、振動部への応力の影響が低減された電子デバイス(圧電振動子)を構築することができる。
【符号の説明】
【0089】
10………圧電振動片、10a………圧電素板、11………圧電素板、11a………ATカット水晶基板、12………マウント部、12a………切欠き部、14………緩衝部、15………連結部、16………スリット、17………厚肉部、18………第2切欠き部、20………括れ部、21………薄肉部、21a………凹部、22………振動部、24………励振電極、26………引出電極、26a………パッド電極、28………励振電極、30………引出電極、30a………パッド電極、32………導電性接着剤(接続部)、34………基板、36………水晶基板、38………レジスト膜、38a………レジスト膜、40………フォトマスク、42………レジスト膜、42a………レジスト膜、44………フォトマスク、46………金属膜、48………レジスト膜、48a………レジスト膜、50………フォトマスク、60………圧電振動片、61………圧電振動片、62………マウント部、64………緩衝部、66………第2切欠き部、68………括れ部、70………厚肉部、71………薄肉部、72………メサ部、74………励振電極、76………励振電極、78………薄肉部、80………メサ部、100………圧電振動子、102………パッケージ、104………凹部、106………外部電極、108………貫通電極、110………接続電極、112………リッド、200………電子デバイス、202………パッケージ、204………凹部、206………下段部、208………上段部、210………IC、212………リッド、214………外部電極、216………接続電極、218………接続電極、220………パッド電極、222………接着剤、300………電子デバイス、302………パッケージ、304………凹部、306………凹部、308………リッド、310………外部電極、312………接続電極、314………ワイヤー、316………IC、318………パッド電極、320………接続電極、400………電子デバイス、402………基板、404………IC、406………パッド電極、408………接続電極、410………外部電極、412………電極球、414………ワイヤー、416………モールド剤、418………貫通電極、600………圧電振動子、602………支持部、604………振動部、606A………励振電極部、606B………励振電極部、608A………入出力端子部、608B………入出力端子部、610………スリット、612………容器、614………底部、616………接着剤、700………圧電振動片、702………マウント部、704………スリット、706………振動部、708………切欠き、710………連結部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、およびこれを用いた圧電振動子、電子デバイスに関し、特に実装後に発生するマウント位置での応力の振動部への影響を緩和させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動片の実装形態には、導電性接着剤を塗布してパッケージに固着する形態がある。このように、導電性接着剤を硬化させるための乾燥等の熱処理工程では、圧電振動片、パッケージ、導電性接着剤のそれぞれの線膨張係数の違いによる歪みが、冷却したのちの導電性接着剤の固着部分に残ってしまい、固着部分からの振動部への応力、すなわちマウント歪みが振動領域に悪影響を与えてしまうという問題があった。
【0003】
また、圧電振動片の小型化を図ろうとすると、圧電振動片の支持部に塗布された接着剤の硬化により生じた残留応力によって圧電振動片の共振周波数に経年変化が生じたり、あるいは励振電極の面積を小さくしなければならず、それによって圧電振動片としての電気的特性が劣化する問題が顕著に表れるという問題がある。例えばインピーダンスが大きくなり、良好な特性を得られなくなるという問題が顕著に表れてくる。
【0004】
そこで、このような問題に鑑みて、特許文献12においては、矩形のフラットな形状をしたATカット水晶基板等の厚みすべり圧電振動子に関し、支持部と振動部との間に切欠きやスリットを設けた構造について提案されている。
図16に、特許文献12に係る圧電振動子の模式図を示す。図16(a)は圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図、図16(b)は圧電振動子を構成する圧電振動片の下面図、図16(c)は圧電振動片を容器の内部に搭載した圧電振動子の上面図、図16(d)は図16(c)のA−A′線断面図である。
【0005】
図16においては、支持部602と振動部604とを有する矩形状の圧電振動子600が示されている。前記圧電振動子600の振動部604の上面と下面にそれぞれ形成した励振電極部606A、606Bと、前記励振電極部606A、606Bから前記(圧電振動子600の)支持部602の縁に引き出された入出力端子部608A、608Bとの間の圧電振動子600の主面上にスリット610が配置形成されている。これにより、前記励振電極部606A、606Bと前記入出力端子部608A、608Bとを物理的に隔離する構造としたものである。
【0006】
上記構成において、圧電振動子600の支持部602と、圧電振動子600を収容する容器612内の底部の電極端子(不図示)とを固着並びに電気的に接続するための接着剤616が硬化すると、図16(c)の二点鎖線で示す方向、範囲にわたって、圧電振動子600に対する残留応力が発生することになる。しかし、このような構造においては、スリット610によってこの残留応力が振動部604に伝播しないように構成しており、スリット610の長手方向長を最適な長さに設定することによって、残留応力の伝搬方向を上述の二点鎖線で示した領域の外側に制限することができる。
【0007】
これにより、圧電振動子600の電気的な特性を損なうことなく、かつ圧電振動子の共振周波数の経年変化が小さい小型の圧電振動子600を製造することができるとされている。なお、類似の技術として、導電性接着剤を塗布する箇所と振動部の間にスリット(特許文献1乃至5参照)や切欠き(特許文献1、2、3、4、6、7、8参照)を設ける構成が開示されている。また、強度確保等のために、圧電振動片の中央部に窪みを形成して逆メサ型とすることが行われている(特許文献9乃至11参照)。
【0008】
上記特許文献においては、圧電振動片のマウント側で発生した応力の振動部側への伝播を構造的に低減するものであるが、振動部側に伝播する応力を物性的な観点から低減させる技術も提案されている。すなわち特許文献13、特許文献14においては、いわゆるATカットの水晶基板を用いた圧電振動片の長辺や短辺の面方位を、その応力感度が小さくなる方向に設計したものを採用している。
【0009】
特許文献13においては、ATカット水晶基板のカット面上のZ′軸とX軸をY′軸回りに+X軸方向に30度程度回転して得られるZ′′軸とX′軸にそれぞれ平行な縁辺を有する圧電振動片を採用している。
【0010】
ここで、非特許文献1には、ATカット水晶基板に関する応力感度についての説明があり、ATカット水晶基板では、X軸をY′軸周りに−X軸から−Z′軸へ向かう方向へ60°または120°回転させることにより、Z′軸を回転して得られるZ′′軸方向が最も応力感度が鈍くなることが記載されている。
【0011】
そこで、特許文献14においては、振動片(ATカット水晶基板)の基板に起因したマウント歪み(応力感度)に関する非特許文献1の研究成果を根拠に、更に、量産性に優れ、振動片に対する振動部、即ち薄肉部の占有割合を高めることを目的として、前述のZ′軸とX軸をY′軸回りに+X軸方向に−120°〜+60°の範囲で回転して得られるZ′′軸とX′軸にそれぞれ平行な縁辺を有する前記薄肉部の長辺の方向を前記Z′′軸に合わせてなる圧電振動片を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−040715号公報
【特許文献2】実開昭61−187116号公報
【特許文献3】特開2004−165798号公報
【特許文献4】特開2009−158999号公報
【特許文献5】特開2005−136705号公報
【特許文献6】特許第4087186号公報
【特許文献7】特開2009−188483号公報
【特許文献8】特開2010−130123号公報
【特許文献9】特開2000−332571号公報
【特許文献10】特開2009−164824号公報
【特許文献11】特開2002−246869号公報
【特許文献12】特開平9−326667号公報
【特許文献13】特許第4310838号公報
【特許文献14】特開2009−164824号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.M.Ratajski, “The Force Sensitivity of AT−Cut Quartz Crystals”,20th Annual Symposium on Frequency Control,(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、近年このような圧電振動片を用いたデバイスの小型化並びに高性能化が加速した状況においては、前述のごとき上記いずれの構成であっても、マウント歪みを十分に取り除くことは困難であることが、以下に示すように本願発明者らにより見出された。
【0015】
図17に圧電振動片のマウント部と振動部との間にスリットを形成した場合の応力分布を示し、図17(a)は圧電振動片のスリットのZ′軸方向の幅を150μmとした場合の応力分布、図17(b)は圧電振動片のスリットのZ′軸方向の幅を250μmとした場合の応力分布を示す。また、図18、図19に、圧電振動片の幅方向の両側でマウント部と振動部との間となる位置に切欠きを形成して、マウント部と振動部との間を連結する連結部を形成した場合の応力分布を示し、図18(a)は連結部のX軸方向の幅を400μmとした場合の応力分布、図18(b)は連結部のX軸方向の幅を300μmとした場合の応力分布、図19(a)は連結部のX軸方向の幅を200μmとした場合の応力分布、図19(b)は連結部のX軸方向の幅を100μmとした場合の応力分布を示す。
【0016】
図17、図18、図19は、図中の導電性接着剤が塗布されるマウント部702のY′軸側の面上の円の中心の2点を基点として圧電振動片700に対して圧縮応力或いは引張応力を印加した場合の応力分布のシミュレーション結果を示したものである。この圧縮応力或いは引張応力(残留応力)は、圧電振動片、導電性接着剤、基板の熱膨張係数の違いにより、圧電振動片に印加される熱歪みにより発生する。
【0017】
図17、図18、図19において、X軸、Y′軸、Z′軸は互いに直交するものとし、圧電振動片700は、Y′軸に平行な方向を法線とする主面を有し、Z′軸に平行な方向及びX軸に平行な方向にそれぞれ縁辺を有する板状の外形を有している。また圧電振動片700の主面を貫通する貫通孔としてスリット704が形成されている。よって、圧電振動片700において、マウント部702、スリット704、振動部706が横並びに配置された形となる。図17において、圧電振動片700は、マウント部702、スリット704、振動部706が並ぶ方向(Z′軸方向)の長さが1500μm、X軸方向の幅が1000μmの外形を有している。またスリット704のX軸方向(長辺)の長さは650μmである。そしてマウント部702側のスリット704の長辺からマウント部702の端部までのZ′軸方向の幅は、図17(a)において350μm、図17(b)においては250μmとしている。またスリット704のZ′軸方向の幅は、図17(a)において150μm、図17(b)において250μmとしている。すなわち、図17(a)と図17(b)では、スリット704のZ′軸方向の位置と幅を変化させている。
【0018】
そして、図17、図18、図19の図中の左に縦一列に並べられた複数の模様は、それぞれ圧電振動片700が受ける応力の強度を示し、上の模様に行くほど応力が大きいことを示し、下の模様に行くほど応力が小さいことを示す。そして圧電振動片700が受ける応力の強度の分布を、上述の模様を用いて表している。
【0019】
図17に示すように、このように小さな圧電振動片700においては、スリット16を形成しても、さらにスリット16の位置や幅を変化させても、マウント部12で発生した熱歪みに起因する応力を解消しきれずに、強い応力が圧電振動片700の振動部706にまで達していることがわかる。よって圧電振動片700の共振周波数の安定性等の電気的特性に悪影響を与えるという問題がある。
【0020】
図18、図19に示す圧電振動片700は、特許文献6、7のような従来技術に係るマウント部702と振動部706との間において圧電振動片700の幅方向の両端に切欠き708を形成した、所謂切欠き構造となっている。この構造では、切欠き708により形成された連結部710の幅を狭くしていくことにより、マウント部702で発生した応力の振動部706への伝播が緩和されていく様子が観察される。しかし、連結部710のみで振動部706を支持する構造では耐落下衝撃等の強度面で不利となり実用性に乏しいという問題がある。
【0021】
そこで本発明は上記問題点に着目し、マウント部から振動領域への応力の伝播を十分に緩和することを可能とした圧電振動片、圧電振動子、電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0023】
[適用例1]水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を回転軸として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ回転させた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ回転させた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶により形成され、振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、前記薄肉部より厚い厚肉部とを備えた圧電振動片であって、前記圧電振動片は、前記+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、前記Z′軸を前記Y′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ′′軸と、前記X軸を前記Y′軸回りに前記Z′軸とともに回転させて得られるX′軸と、にそれぞれ平行な縁辺を有し、前記厚肉部には、前記縁辺の方向に緩衝部を介してマウント部が横並びで接続され、前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、前記マウント部は、前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部を有していることを特徴とする圧電振動片。
【0024】
圧電振動片はマウント部に導電性接着剤を塗布することにより基板に接続される。しかし、これによりマウント部と導電性接着剤との間に熱歪みが生じ、これが圧電振動片全体に応力として伝播することになる。しかし、マウント部の幅方向の両端部に形成された切欠き部によりマウント部の幅が狭くなる。これにより、マウント部に接着される導電性接着剤同士の距離が短くなるため、導電性接着剤とマウント部との間で発生する応力そのものを小さくすることができる。またマウント部と導電性接着剤との間で発生し振動部側に伝播する応力のうち振動部側に向かって直進的に伝播する成分が最も大きなものとなる。しかし、応力が最も強く伝播する直進的な経路上にスリットが配置された形となるので、その直進的な経路は遮断され、スリットを迂回する応力の成分のみが振動部側に伝播可能となる。しかし、その応力は、振動部側に進行するたびに曲げられることになるので大きな割合で応力が緩和される。よって応力が振動部に伝播する前に十分に緩和され、振動部への応力の影響を緩和することが可能な圧電振動片となる。
【0025】
またATカットの水晶基板を用いることにより、厚みすべり振動が効率的に発振可能な圧電振動片となる。そして圧電振動片の縁辺の方向を上述のように設計することにより、圧電振動片全体の応力感度を抑制して振動部側へ伝達する応力を小さくすることができ、振動部への応力の影響が低減された圧電振動片となる。
【0026】
[適用例2]前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記Z′′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動片。
【0027】
圧電振動片における熱歪みに起因する応力は、マウント部に塗布された導電性接着剤を起点としてマウント部の幅方向に発生し、これが振動部側に伝播する。しかし上記構成とすることにより、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、マウント部で発生した応力のうち振動部側に伝播する成分を低減することができる。したがって、振動部への応力の影響が低減された圧電振動片となる。
【0028】
[適用例3]前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記X′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動片。
【0029】
圧電振動片における熱歪みに起因する応力は、マウント部に塗布された導電性接着剤を起点としてマウント部の幅方向に発生し、これが振動部側に伝播する。しかし上記構成とすることにより、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、マウント部で発生する応力そのものを低減させることができる。したがって、振動部への応力の影響が低減された圧電振動片となる。
【0030】
[適用例4]前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に第2切欠き部を有することを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片においてスリットの周縁及び緩衝部にまで伝播した応力が振動部へ直線的に伝播することを第2切欠き部により遮断することができるので、振動部への応力の影響を緩和することができる。
【0031】
[適用例5]前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、前記厚肉部の幅は、前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする適用例1乃至4のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0032】
[適用例6]前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至5のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0033】
[適用例7]前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電振動片。
【0034】
上記構成により、薄肉部と厚肉部との実装面側の境界には厚み方向に段差が形成される。よって、引出電極に塗布される導電性接着剤と振動部との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0035】
[適用例8]前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、厚みすべり振動を振動部に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0036】
[適用例9]基板を有し、適用例1乃至8のうちいずれか1例に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた圧電振動子となる。
【0037】
[適用例10]前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする適用例9に記載の圧電振動子。
上記構成により、振動部への応力をさらに緩和させた圧電振動子となる。
【0038】
[適用例11]基板を有し、適用例1乃至8のうちいずれか1例に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた電子デバイスとなる。
【0039】
[適用例12]前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする適用例11に記載の電子デバイス。
上記構成により、振動部への応力をさらに緩和させた電子デバイスとなる。
【0040】
[適用例13]適用例11または12に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイス。
上記構成により、圧電振動片を発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は下面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す図である。
【図2】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図2(a)は第1側面図、図2(b)は第2側面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図、図2(d)は図1(a)のB−B線断面図である。
【図3】圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示す模式図である。
【図4】圧電振動片の製造工程(外形形成工程)の模式図である。
【図5】圧電振動片の製造工程(電極形成工程)の模式図である。
【図6】第2実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図6(a)のB−B線断面図である。
【図7】第1実施形態の圧電振動片の変形例であり、図7(a)は上面図、図7(b)は下面図、図7(c)は側面図である。
【図8】第2実施形態の圧電振動片の第1変形例であり、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は側面図である。
【図9】第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例の模式図であり、図9(a)は上面図、図9(b)は下面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図9(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
【図10】本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す図である。
【図11】本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示し、図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の上面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。
【図12】図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図である。
【図13】本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示し、図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。
【図14】本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す図である。
【図15】本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示し、図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の上面図である。
【図16】特許文献12に係る圧電振動子の模式図を示し、図16(a)は圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図、図16(b)は圧電振動子を構成する圧電振動片の下面図、図16(c)は圧電振動片を容器の内部に搭載した圧電振動子の上面図、図16(d)は図16(c)のA−A′線断面図である。
【図17】圧電振動片のマウント部と振動部との間にスリットを形成した場合の応力分布を示し、図17(a)は圧電振動片のスリットの幅を150μmとした場合の応力分布、図17(b)は圧電振動片のスリットの幅を250μmとした場合の応力分布である。
【図18】圧電振動片の幅方向の両側のマウント部と振動部との間となる位置に切欠きを形成して、マウント部と振動部との間を連結する連結部を形成した場合の応力分布を示し、図18(a)は連結部の幅を400μmとした場合の応力分布、図18(b)は連結部の幅を300μmとした場合の応力分布である。
【図19】圧電振動片の幅方向の両側のマウント部と振動部との間となる位置に切欠きを形成して、マウント部と振動部との間を連結する連結部を形成した場合の応力分布を示し、図19(a)は連結部の幅を200μmとした場合の応力分布、図19(b)は連結部の幅を100μmとした場合の応力分布である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。なお以下の説明に用いられる図において、X′軸、Y′軸、Z′′軸は互いに直交するものとする。
【0043】
第1実施形態に係る圧電振動片を図1、図2に示す。図1(a)は上面図、図1(b)は下面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す模式図、図2(a)は第1側面図、図2(b)は第2側面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図、図2(d)は図1(a)のB−B線断面図である。本実施形態に係る圧電振動片10は、圧電素板として、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板11aを採用している。
【0044】
さらに本実施形態の圧電振動片10は、このATカット水晶基板11aにおいて、+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに角度ψ(−120°から+60°)の範囲で回転させて得られるZ′′軸に平行な方向を長辺(縁辺)とし、X軸をY′軸回りにZ′軸とともに回転させて得られるX′軸に平行な方向を短辺(縁辺)とする矩形形状の外形の圧電素板11を用いている。即ちATカット水晶基板11aの面内方位を角度ψだけ回転させたものが圧電振動片10の外形を形成する圧電素板11となる。
【0045】
また、圧電振動片10は、周縁に厚肉部17(補強部)を残したウエットエッチングにより、厚肉部17よりも厚みが薄く形成された薄肉部21(振動部22)を有する逆メサ型の振動部22を有した構造となっている。さらに、圧電振動片10は、長辺方向(Z′′軸方向)に並んでマウント部12、緩衝部14、厚肉部17(振動部22)が順に横並びで接続された形態を有している。すなわち、緩衝部14がマウント部12と厚肉部17の間に配置されている。また圧電振動片10は、図1(a)のA−A線を中心線として線対称な形状を有している。そして圧電振動片10はマウント部12側を固定端とし、振動部22側を自由端として片持ち支持状態で、実装先の基板34に導電性接着剤32により固定される。
【0046】
マウント部12は、圧電振動片10の+Z′′軸側の端部に配置されるとともに、X′軸方向の両端には切欠き部12aが形成されている。切欠き部12aは、矩形形状を有する圧電振動片10の4つの角のうち、平面視してマウント部12に含まれる2つの角をそれぞれ包含し、Z′′軸方向に平行な辺とX′軸に平行な辺を有する矩形(またはL字型)の輪郭を切断面として、前記2つの角をそれぞれ断裁する態様で形成される。
【0047】
そして実装面となるマウント部12の一主面(−Y′軸側の面)には後述の励振電極24、28に引出電極26、30を介して電気的に接続するパッド電極26a、30aが配置されている。パッド電極26a、30aには接合部材となる導電性接着剤32が塗布され、パッド電極26a、30aは実装側の基板34上の部位(例えば接続電極)と接着する。したがって導電性接着剤32を用いて基板34に接着することにより圧電振動子が形成される。またマウント部12において導電性接着剤32が塗布される位置が一対の接続部となり、この接続部の並ぶ方向がX′軸に平行な方向となる。
【0048】
緩衝部14は、マウント部12と厚肉部17との間に配置され、マウント部12で発生して振動部22側に伝播する応力を緩和させる領域である。これを実現するため、緩衝部14にはスリット16が設けられている。スリット16はX′軸方向を長手方向とし、圧電振動片10の厚み方向(Y′軸方向)に貫通する矩形の貫通孔として形成されている。これにより、緩衝部14のX′軸方向の両端には、厚肉部17とマウント部12とを連結する連結部15が形成される。なおマウント部12の緩衝部14側と緩衝部14のマウント部12側は一体的に形成されている。そして、図1(a)、図1(b)に示す如く、緩衝部14(連結部15)にも上述の引出電極26、30が形成されている。
【0049】
第2切欠き部18は、緩衝部14と厚肉部17との連結部に形成され、圧電振動片10の短辺方向(X′軸方向)の両側を矩形に切り欠くように形成されている。よって緩衝部14の第2切欠き部18に挟まれた領域には括れ部20が形成される。
【0050】
薄肉部21は、厚肉部17の一部の領域を薄肉に形成したものであり、マウント部12の実装面(−Y′軸側の面)から掘り込む態様で形成される。これにより薄肉部21は、厚肉部17の+Y′軸側の面に偏在して厚肉部17に接続するととともに、薄肉部21と厚肉部17は、圧電振動片10の−Y′軸側の面で段差を形成する。また、薄肉部21の±X′軸側、および+Z′′軸側は厚肉部17に接することになるが、薄肉部21の−Z′′軸側は圧電振動片10の−Z′′軸側の端部の一部となっている。
【0051】
振動部22は、薄肉部21の一部を構成するとともに、圧電振動片10において厚みすべり振動を発生させる領域である。振動部22の中央の両主面(表裏面)には互いに対向するように励振電極24、28が形成されている。+Y′軸側の面に形成された励振電極28は引出電極30に接続され、−Y′軸側の面に形成された励振電極24は、引出電極26と電気的に接続される。引出電極26は薄肉部21、厚肉部17、緩衝部14(連結部15)の表面を経由してマウント部12に配置されたパッド電極26aに接続される。また引出電極30は、薄肉部21の表面、厚肉部17の表面及び端面、緩衝部14(連結部15)の表面を経由してマウント部12に配置されたパッド電極30aに接続される。したがって、パッド電極26a、30aに交流電圧を印加することにより振動部22は所定の周波数で厚みすべり振動を行なうことができる。
【0052】
ところで、導電性接着剤32を用いた圧電振動片10の接着工程では導電性接着剤32を硬化させるために圧電振動片10を高温に曝す必要がある。よって接着後温度が低下するとマウント部12の導電性接着剤32が塗布されている2点の間を結ぶ領域で、圧電振動片10、基板34、導電性接着剤32の熱膨張係数の違いによる熱歪みが発生し、これに起因する応力が圧電振動片10全体に伝播することになる。
【0053】
しかし、マウント部12に形成された切欠き部12aにより、マウント部12はX′軸方向の幅が狭くなる。これにより、マウント部12に接着される導電性接着剤32同士の距離が短くなるため、導電性接着剤32とマウント部12との間で発生する応力そのものを小さくすることができる。またマウント部12と導電性接着剤32との間で発生し振動部22側に伝播する応力のうち振動部22側に向かって直進的に伝播する成分(−Z′′軸方向に伝播する成分)が最も大きなものとなる。しかし、応力が最も強く伝播する直進的な経路上にスリット16が配置された形となるので、その直進的な経路は遮断され、スリット16を迂回して連結部15を伝播する応力の成分のみが振動部22側に伝播可能となる。
【0054】
さらに連結部15にまで伝播した応力は、第2切欠き部18により振動部22側に直線的に伝播する経路が遮断され、スリット16の周囲及び括れ部20に迂回して振動部22側に伝播することになる。しかし、その応力は、振動部22側に進行するたびに曲げられることになるので大きな割合で応力が緩和される。このように、マウント部12で発生した応力の振動部22側に伝播する成分をスリット16、第2切欠き部18により遮断することができるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。
【0055】
したがって、応力が振動部22に伝播する前に十分に緩和され、振動部22への応力の影響を緩和することが可能な圧電振動片10となる。なお、連結部15から振動部22への応力の直線的な伝播経路を遮断する趣旨から、緩衝部14において第2切欠き部18により形成される括れ部20のX′軸方向の幅は、スリット16のX′軸方向の幅以下となることが望ましい。
【0056】
また、振動部22に外部から応力が印加されると、振動部22の見かけ上の剛性が変化するため、共振周波数が変動する。そしてマウント部12におけるマウント状態は実装状態に依存して個々に異なるため、振動部22に伝播する応力にもバラつきが生じ、共振周波数にバラつきが生じることになる。しかし上述のように、マウント部12で発生した熱歪みに起因する応力をスリット16、第2切欠き部18において緩和させることにより、周波数変動を抑制し、これを用いた圧電振動子の歩留を高めることができる。
【0057】
さらに、振動部22は、緩衝部14より薄肉に形成されている。これにより、振動部22が緩衝部14から受ける応力が小さくなるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。また、図1に示すように、薄肉部21(振動部22)は、厚肉部17との接続位置を圧電振動片10のパッド電極26a、30aが配置された面(−Y′軸側の面)の反対側の面(+Y′軸側の面)に偏在させ、厚肉部17との間で−Y′軸側に段差を形成することになる。したがって、振動部22と、パッド電極26a、30aに塗布される導電性接着剤32との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部22に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0058】
また、圧電振動片10における熱歪みに起因する応力は、マウント部12の導電性接着剤32が塗布された一対の部位(一対の接続部)を起点としてマウント部12の幅方向(X′軸方向)に発生し、これが振動部22側に伝播する。しかし、本実施形態においては、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、圧電振動片10の長辺をZ′′軸方向とし、短辺をX′軸方向とすることで、マウント部12(接続部間)で発生した応力のうち振動部22側に伝播する成分を低減することができる。したがって、振動部22への応力の影響が低減された圧電振動片10となる。
【0059】
本実施形態の圧電振動片10では、短辺方向をX′軸方向、長辺方向をZ′′軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片10とした。しかし、これに限らず、圧電振動片10の短辺方向をZ′′軸方向、長辺方向をX′軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片10とすることができる。この場合、圧電振動片10における熱歪みに起因する応力は、マウント部12の導電性接着剤32が塗布された一対の部位(一対の接続部)を起点としてマウント部12の幅方向(Z′′軸方向)に発生し、これが振動部22側に伝播する。しかし、Z′′軸方向に伝播する応力に対する応力感度は低減されるので、マウント部12で発生する応力そのものを低減させることができる。したがって、振動部22への応力の影響が低減された圧電振動片10となる。
【0060】
次に第1実施形態の圧電振動片10の製造工程について説明する。
図3に、圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示し、図4に圧電振動片の製造工程(外形形成工程)を示し、図5に圧電振動片の製造工程(電極形成工程)を示す。大まかな手順としては、圧電振動片10の材料となる水晶基板36において、薄肉部21(振動部22)に相当する位置をハーフエッチングし、圧電振動片10の外形に倣ってエッチングし、励振電極24、28、引出電極26、30、パッド電極26a、30aの形成を行なう。
【0061】
図3に示すように、最初に圧電振動片10を構成する薄肉部21(振動部22)の外形を形成する。まず図3(a)に示すように、圧電素板としてATカットの水晶基板36を用意し、水晶基板36においてレジスト膜38を塗布する。そして図3(b)に示すように、薄肉部21の形状に対応したフォトマスク40を用いてレジスト膜38を露光し、図3(c)に示すように感光したレジスト膜38aを除去する。そして図3(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が薄肉部21の厚みとなるまでハーフエッチングし、図3(e)に示すようにレジスト膜38を除去する。このとき水晶基板36には薄肉部21に対応する凹部21aが形成される。
【0062】
次に圧電振動片10の外形を形成する。図4(a)に示すように、凹部21aが形成された水晶基板36にレジスト膜42を塗布する。そして図4(b)に示すように圧電振動片10、切欠き部12a、スリット16、第2切欠き部18の形状に対応したフォトマスク44を用いてレジスト膜42を露光し、図4(c)に示すように感光したレジスト膜42aを除去する。そして図4(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が貫通するまでエッチングし、図4(e)に示すようにレジスト膜42を除去する。これにより圧電振動片10の外形を有する圧電素板10aが形成される。
【0063】
そして圧電素板10aに電極を形成する。まず図5(a)に示すように、スパッタ等により圧電素板10aの全面にCrやAu等による金属膜46を蒸着する。このとき圧電素板10aの端面にも金属膜46が蒸着する。そして図5(b)に示すように金属膜46が蒸着した圧電素板10aの全面にレジスト膜48を塗布する。このとき圧電素板10aの端面にもレジスト膜48が塗布される。次に図5(c)に示すように圧電振動片10の両面の励振電極24、28、引出電極26、30、パッド電極26a、30aの形状に対応したフォトマスク50を用いレジスト膜を露光する。このとき引出電極30の端面を通過する部分のレジスト膜48は感光しない。次に図5(d)に示すように感光したレジスト膜48aを除去し、図5(e)に示すように励振電極24、28、引出電極26、30に対応する部分以外の金属膜46を露出させエッチングを行なう。このとき、端面に蒸着した金属膜46は感光せずに残ったレジスト膜42により保護されている。よって引出電極30の端面を通過する部分の金属膜46は残り、パッド電極30aは引出電極30を介してその反対面にある励振電極28と電気的に接続される。そして図5(f)に示すようにレジスト膜48を除去することにより圧電振動片10が形成される。
【0064】
第2実施形態の圧電振動片を図6に示し、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図6(a)のB−B線断面図である。第2実施形態の圧電振動片60は、基本的には第1実施形態と類似するが、前記マウント部62と緩衝部64と厚肉部70との並ぶ方向に対して直交方向(X′軸方向)に関し、厚肉部70の幅は、緩衝部64の幅よりも狭く形成された点で相違する(特徴1)。また、振動部(メサ部72)は、薄肉部71より厚肉に形成され、励振電極74、76はメサ部72の両面に形成された点で相違する(特徴2)構造としてよい。そうすることにより、メサ部72に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。なお、圧電振動片60の−Y′軸側の面に配置された励振電極76には引出電極26が接続され、+Y′軸側の面に配置された励振電極74には引出電極30が接続されている。励振電極76に接続された引出電極26は、薄肉部71、厚肉部70、連結部15の表面を経由して、マウント部62の−Y′軸側の面に配置されたパッド電極26aに接続する。励振電極74に接続された引出電極30は、薄肉部71、厚肉部70、連結部15の表面を経由するとともに厚肉部70で圧電振動片60の−Y′軸側の面に引き回され、マウント部62の−Y′軸側の面に配置されたパッド電極30aに接続する。
【0065】
第2実施形態の圧電振動片60の製造工程は、ハーフエッチングの工程で、厚肉部70を周囲に有する薄肉部71を形成する点と、薄肉部71の中央に薄肉部より厚肉となるメサ部72を形成する点と、で相違するが、それ以外では第1実施形態と共通である。
【0066】
また厚肉部70の薄肉部71が形成された部分のX′軸方向の幅は、マウント部62のX′軸方向の幅と同じであっても良いし、短く/長くなっても良いが、圧電振動片60が図7(a)のA−A線を中心線とした線対称な形状を有することが好ましい。また第2切欠き部66により形成される括れ部68は、厚肉部70まで形成され、括れ部68と厚肉部70のX′軸方向の幅が一致している。
【0067】
上述の特徴1を有することにより、圧電振動片60の自由端側(−Z′′軸側)を軽量化して実装の安定性を高めることができる。さらに特徴2を有することにより、厚みすべり振動の振動領域を振動部(メサ部72)に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0068】
図7に第1実施形態の変形例、図8に第2実施形態の第1変形例を示す。ここで、図7(a)は上面図、図7(b)は下面図、図7(c)は側面図である。また、図8(a)は上面図、図8(b)は下面図、図8(c)は側面図である。
【0069】
図7、図8に示すように、厚肉部17、70を緩衝部14、64と連結する部分を残して薄肉に形成する、すなわち薄肉部21、71をX′軸方向の両端まで形成することも好適である。これにより、圧電振動片10、60の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0070】
図9に、第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例を示し、図9(a)は上面図、図9(b)は下面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図7(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
【0071】
図9に示すように第2実施形態の第2変形例おいては、メサ部80を薄肉部78の両面に設けることも好適である。このとき薄肉部78は水晶基板36(図3参照)の両面からメサ部80の形状を残してハーフエッチングすることにより形成される。このようにメサ部80を両面に形成することにより、厚みすべり振動の閉じ込め効果を高めた圧電振動片61とすることができる。なお、第2実施形態において、励振電極74、76はメサ部80全面に矩形に形成されているが、メサ部80における実際の振動領域に対応して例えば円形状、楕円形状としてもよい。そうすることにより、メサ部に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。
【0072】
図10に本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す。本願発明者は、本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布についてシミュレーションを行った。シミュレーションの対象となる圧電振動片は、第2実施形態のものとほぼ同様の形態を有している(図6参照)。そして、図10に示すように、マウント部の実装面上に描かれた2つの円の中心の2点の位置において、2点間で互いに引き合う力若しくは互いに押し合う力を印加したときの、圧電振動片の応力の分布のシミュレーションを行った。
【0073】
図10において、それぞれ左側に縦一列に並べてある模様は、マウント部で発生した応力により、各タイプの圧電振動片が受ける応力の強度(レベル1〜レベル9)を示している。ここで、レベル9が最も大きな応力を受ける領域を示し、レベル9からレベル1に行くにつれて受ける応力は小さくなり、レベル1は受ける応力が最小若しくは応力の検出限界以下となる領域を示している。そしてこれらの模様は、各タイプの圧電振動片上において圧電振動片が受ける応力の強度分布に対応して描かれている。以下、図10におけるシミュレーション結果を図6に示す圧電振動片60の構成要素に対応させて説明する。
【0074】
図10に示すように、マウント部62全体及び緩衝部64のマウント部62側に強い応力(レベル9)が発生していることがわかる。そしてマウント部62で発生した応力は、スリット16のマウント部62側に伝播するが、スリット16のX′軸側の両端側で受ける応力はレベル9以下となる領域が存在する。これはマウント部62に形成された切欠き部12aにより、マウント部62のX′軸方向の長さが短くなるため、導電性接着剤32同士の距離が小さくなり、マウント部62で発生する応力そのものが小さくなったからと考えられる。
【0075】
そしてマウント部62側で発生した応力は、スリット16の周囲、すなわち連結部15を伝播して厚肉部70に伝播するものの括れ部68(厚肉部70)の手前までである程度緩和され、この厚肉部70でうける応力はレベル5とレベル4が支配的になっていることがわかる。これは、連結部15を伝播する応力がその伝播途中で大きな割合で緩和されるためと考えられる。
【0076】
さらに第2切欠き部66により応力の薄肉部71(メサ部72)への直線的な伝播経路が遮断され、応力の伝播経路が括れ部の中央に向くように曲げられ、この伝播経路の伝播途中でも大きな割合で応力が緩和されたと考えられる。
【0077】
スリット16に隣接する厚肉部70(括れ部68)においては、スリット16側ではレベル4の応力を受ける領域が支配的であるが、薄肉部71側ではレベル5の応力を受ける領域が支配的となっている。これは、連結部15から厚肉部70のスリット16側への応力の経路の曲げられる角度が、連結部15から厚肉部70の薄肉部71側への応力の経路の曲げられる角度より大きく、経路の曲げられる角度が大きくなるほど応力の緩和が促進されるからと考えられる。よって厚肉部70において、スリット16側よりも薄肉部71側が受ける応力のレベルが高くなったものと考えられる。
【0078】
そして厚肉部70と薄肉部71との境界の厚肉部70側では受ける応力はレベル5となっているが、薄肉部71側ではレベル2となっており、この境界において受ける応力のレベルに段差が生じている。ここで、圧電振動片60の上述の応力が印加された−Y′軸側の面(実装面)において薄肉部71と厚肉部70との間には段差が形成されている。よって薄肉部71に残る応力は、厚肉部70の+Y′軸側の面の応力を引き継いだものである。このことから、応力は上述の印加された−Y′軸側の面(実装面)から+Y′軸側の面にかけて圧電振動片60の厚み方向にも緩和し、厚肉部70と薄肉部71との境界で、応力のレベルにも段差が生じたものと考えられる。
【0079】
そして薄肉部71の中央部においては、受ける応力はレベル1が支配的となっており、この領域を振動部とする(メサ部72を形成する)ことにより、応力の影響を殆ど受けずに良好な周波数特性を有する圧電振動片を構築することができる。
【0080】
図11に本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示す。図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の上面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。圧電振動子100は圧電振動片60を収容する凹部を有するパッケージ102(基板)と、凹部104を封止するリッド112により形成される。またパッケージ102の下面には外部電極106が形成され、凹部104の底面には貫通電極108を介して外部電極106と電気的に接続された接続電極110が配置されている。そしてこの接続電極110とマウント部62に配置されたパッド電極26a、30aとが導電性接着剤32により接合される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージ102に接続される。さらに外部電極106と引出電極26、30とが電気的に接続される。上記構成により、圧電振動片60の振動部への応力を緩和させた圧電振動子100となる。
【0081】
図12、図13に本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示す。図12は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図を示し。また図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。本実施形態の電子デバイス200は、パッケージ202(基板)、圧電振動片60、61(圧電振動片10でもよい)、圧電振動片60、61(図9参照)を駆動させる集積回路(IC210)、リッドにより構成されている。
【0082】
パッケージ202は、図13の破線で示すように3層構造で形成されている。パッケージ202の下面には外部電極214が形成されている。またパッケージ202の凹部204の下段部206には複数の接続電極216が配置されている。接続電極216は、IC210に形成された複数のパッド電極220に対向する配置で複数形成され、各接続電極216は対応するパッド電極220に接着剤222により接続する。またパッケージ202の凹部204の上段部208には、圧電振動片60、61のパッド電極26a、30aと導電性接着剤32を介して接続する接続電極218が形成されている。
【0083】
上述のように、パッケージ202の凹部204の下段部206に形成された接続電極216は、パッド電極220と接続するものであるが、接続電極218と電気的に接続するものと、外部電極214に接続するものがある。よってIC210は接続電極216及び外部電極214を介して外部と電気的に接続され、圧電振動片60、61のパッド電極26a、30aは接続電極218及び接続電極216を介してIC210と電気的に接続される。したがってIC210は、外部電極214を介して電力が供給されると、圧電振動片60、61を駆動させることができる。本実施形態の電子デバイス200においては、圧電振動片60、61とIC210とが共に凹部204においてリッド212によりシングルシールにて封止された構造を有している。上記構成により、圧電振動片60、61(圧電振動片10でもよい)の振動部への応力を緩和させた電子デバイス200となる。
【0084】
図14に本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す。図14においては、パッケージ302(基板)の両面に凹部304、306を形成し、一方の凹部304に圧電振動片60を搭載するとともにリッド308で封止し、他方の凹部306には集積回路(IC316)を取り付けた構成を有した電子デバイス300となっている。そしてパッケージ302の下端には外部電極310が形成され、また凹部306には外部電極310または凹部304に配置された接続電極320と電気的に接続するとともに、ワイヤー314を介してIC316のパッド電極318と電気的に接続する接続電極312が配置されている。
【0085】
一方、凹部304に配置された接続電極320は、圧電振動片60のパッド電極26a、30aと導電性接着剤32を介して接続される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージに接続される。このように圧電振動片60とIC316とを隔離することによって、圧電振動片60のIC316からの熱の影響を低減することができる。
【0086】
図15に本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示す。図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の上面図である。第2変形例においては、例えば図11に示す圧電振動子100を用いて電子デバイス400を形成している。すなわち、第2実施形態においては、圧電振動子100を駆動する集積回路(IC404)を搭載した基板402上にIC404(パッド電極406)と電気的に接続する電極球412を配置し、この電極球412により圧電振動子100を支持するとともに、電極球412と圧電振動子100の外部電極106とを電気的に接続し、基板402、IC404、電極球412、圧電振動子100を樹脂等のモールド剤416により一体形成している。ここで、基板402の下面には外部電極410が形成され、基板402の上面には外部電極410と貫通電極418を介して電気的に接続する接続電極408が形成されている。そしてIC404に形成されたパッド電極406のうち、一部は電極球412にワイヤー414を介して接続され、残りは接続電極408にワイヤー414を介して接続されている。
【0087】
上記構成とすることにより、既存の圧電振動子100の規格に対応して基板IC、電極球等の配置をして電子デバイス400を形成することができるのでコストを抑制することができる。なお、いずれの実施形態においてもICと各電極との接続はフェイスダウンボンディングでもよい。またいずれの圧電振動子、電子デバイスの実施形態においても、上述のいずれの実施形態の圧電振動片も適用できる。
【0088】
なお、上述の電子デバイスにおいては、圧電振動子に半導体素子(IC)に代表される電子部品を備えた構成として説明したが、少なくとも一以上の電子部品を備えることが好適である。そして前記電子部品としては、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子等を適用することができ、圧電振動片を発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。また圧電振動片の長辺がZ′′軸方向であるときは、導電性接着剤32の2つの塗布位置(接続部)を結ぶ線の方向がX′軸方向となるように導電性接着剤32を塗布する(図1参照)。これによりマウント部12で発生した応力のうち振動部側に伝播する成分を低減し、振動部への応力の影響が低減された電子デバイス(圧電振動子)を構築することができる。そして、圧電振動片の長辺がX′軸方向であるときは、導電性接着剤32の2つの塗布位置(接続部)を結ぶ線の方向がZ′′軸方向となるように導電性接着剤32を塗布する。これによりマウント部12で発生する応力そのものを低減し、振動部への応力の影響が低減された電子デバイス(圧電振動子)を構築することができる。
【符号の説明】
【0089】
10………圧電振動片、10a………圧電素板、11………圧電素板、11a………ATカット水晶基板、12………マウント部、12a………切欠き部、14………緩衝部、15………連結部、16………スリット、17………厚肉部、18………第2切欠き部、20………括れ部、21………薄肉部、21a………凹部、22………振動部、24………励振電極、26………引出電極、26a………パッド電極、28………励振電極、30………引出電極、30a………パッド電極、32………導電性接着剤(接続部)、34………基板、36………水晶基板、38………レジスト膜、38a………レジスト膜、40………フォトマスク、42………レジスト膜、42a………レジスト膜、44………フォトマスク、46………金属膜、48………レジスト膜、48a………レジスト膜、50………フォトマスク、60………圧電振動片、61………圧電振動片、62………マウント部、64………緩衝部、66………第2切欠き部、68………括れ部、70………厚肉部、71………薄肉部、72………メサ部、74………励振電極、76………励振電極、78………薄肉部、80………メサ部、100………圧電振動子、102………パッケージ、104………凹部、106………外部電極、108………貫通電極、110………接続電極、112………リッド、200………電子デバイス、202………パッケージ、204………凹部、206………下段部、208………上段部、210………IC、212………リッド、214………外部電極、216………接続電極、218………接続電極、220………パッド電極、222………接着剤、300………電子デバイス、302………パッケージ、304………凹部、306………凹部、308………リッド、310………外部電極、312………接続電極、314………ワイヤー、316………IC、318………パッド電極、320………接続電極、400………電子デバイス、402………基板、404………IC、406………パッド電極、408………接続電極、410………外部電極、412………電極球、414………ワイヤー、416………モールド剤、418………貫通電極、600………圧電振動子、602………支持部、604………振動部、606A………励振電極部、606B………励振電極部、608A………入出力端子部、608B………入出力端子部、610………スリット、612………容器、614………底部、616………接着剤、700………圧電振動片、702………マウント部、704………スリット、706………振動部、708………切欠き、710………連結部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を回転軸として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ回転させた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ回転させた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶により形成され、振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、前記薄肉部より厚い厚肉部とを備えた圧電振動片であって、
前記圧電振動片は、
前記+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、前記Z′軸を前記Y′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ′′軸と、前記X軸を前記Y′軸回りに前記Z′軸とともに回転させて得られるX′軸と、にそれぞれ平行な縁辺を有し、
前記厚肉部には、前記縁辺の方向に緩衝部を介してマウント部が横並びで接続され、
前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、
前記マウント部は、
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部を有している
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記Z′′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記X′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に第2切欠き部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、
前記厚肉部の幅は、
前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項6】
前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項7】
前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、
前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、
前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項8】
前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項9】
基板を有し、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする請求項9に記載の圧電振動子。
【請求項11】
基板を有し、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
請求項11または12に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイス。
【請求項1】
水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を回転軸として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ回転させた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ回転させた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶により形成され、振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、前記薄肉部より厚い厚肉部とを備えた圧電振動片であって、
前記圧電振動片は、
前記+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、前記Z′軸を前記Y′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ′′軸と、前記X軸を前記Y′軸回りに前記Z′軸とともに回転させて得られるX′軸と、にそれぞれ平行な縁辺を有し、
前記厚肉部には、前記縁辺の方向に緩衝部を介してマウント部が横並びで接続され、
前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、
前記マウント部は、
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部を有している
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記Z′′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記厚肉部、前記緩衝部、前記マウント部の並ぶ方向は、前記X′軸に平行な縁辺の方向であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に第2切欠き部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、
前記厚肉部の幅は、
前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項6】
前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項7】
前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、
前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、
前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項8】
前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項9】
基板を有し、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする請求項9に記載の圧電振動子。
【請求項11】
基板を有し、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を前記基板側に向け、前記マウント部の一対の接続部と、前記一対の接続部に対向する前記基板の一対の部位とを接合部材を用いて接合することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
前記一対の接続部を結ぶ方向が、前記X′軸若しくは前記Z′′軸に平行であることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
請求項11または12に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−186637(P2012−186637A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48056(P2011−48056)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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