説明

圧電発振器とその製造方法

【課題】ガラスあるいはシリコンウエハ状態で製造工程から一貫して処理する表面実装可能な圧電発振器を小型化しても所望の発振周波数信号を安定して出力できる構造と製造方法の実現。
【解決手段】枠部1と電極が形成された振動部2とが一体となった圧電素子3と発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハ5と、圧電素子ウエハの上面に蓋体4となるウエハとを接合して一体化した圧電発振器の製造工程として、枠部1と電極が形成された振動部2とが一体となった圧電素子3をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハと、シリコン基板上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハとを接合する工程と、圧電素子の周波数調整を行う工程と、圧電素子ウエハ上に蓋体4となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハを直接接合あるいは、陽極接合する工程から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスウエハあるいはシリコンウエハを用いた、ウエハ状態で製造工程から一貫して処理する表面実装可能な圧電発振器の構成とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から広く使用される水晶振動子は、水晶素板が短冊形状あるいは、丸板形状に切断した後、励振主面に電極膜を形成し、導電性接着剤などでベースに固定と導通をとり、セラミックパッケージや金属ベースなどに収納され気密封止した形状が水晶振動子となるパッケージに形成する外部との接続端子から、水晶素板の電極に電荷を印加することにより水晶振動子を振動させ、水晶素板の厚みに規定する周波数信号を得ることができる。
【0003】
また、前述する水晶振動子と半導体部品を組み合わせた水晶発振器は、水晶素板の正確なクロック信号を半導体集積回路やトランジスタ回路と組み合わせることにより、安定した発振出力を持った水晶発振器を得ることができる。水晶振動子はユーザ側で発振回路を別途用意することで、回路基板設計の自由度があるが水晶振動子と発振回路との組み合わせるには、回路検討などを必要とすることから、水晶振動子の充分な所望特性を得るには専門的技術を必要とする場合がある。
【0004】
その一方で、水晶発振器は水晶振動子を駆動する発振回路と一体となっていることから、発振回路を駆動する電源を供給することにより、所望の発振出力を発振器から得ることができるため、非常に安易に正確で安定したクロック信号を入手することができる。
【0005】
上述する水晶振動子や水晶発振器は、昨今の搭載部品の小型化に伴い日進月歩の勢いで小型化への強い要求がなされている。外形寸法では3.2mm×2.5mm、2.5mm×2.0mm、3.2mm×1.6mmと更にこれ以上の小型化へと外形寸法が小さくなっている。そのため、半導体部品を用いた水晶発振器は、水晶素板を収納する容器内に半導体部品を収納する場合と、水晶振動子(容器)に半導体部品(発振回路)を実装する場合との水晶発振器の形態がある。
【0006】
しかし、上述するいずれの形態にあっても、昨今の外形寸法の小型化に対して、水晶発振器を構成する水晶振動子を個片で加工し扱うには困難な状態になってきており、かつ水晶素板を個片単体で加工するコストも大きいため、圧電ウエハーの状態でエッチング処理により水晶振動子の輪郭形状を作り、輪郭枠部を保持部とし保持部を水晶振動子と一体的に構成するランナー(タイバー部分)で水晶振動子の振動領域を支持することで小型化を実現した水晶振動子の製品化がなされている現状にある。(特許文献1)
【特許文献1】公開2000−068780号公報 なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述する従来技術の記載する圧電ウエハーの状態でエッチング処理により水晶振動子の輪郭形状を作り、輪郭枠部を保持部とし保持部を水晶振動子と一体的に構成するランナー(タイバー部分)で水晶振動子の振動領域を支持することで小型化を実現した水晶振動子は、保持部により主振動が阻害され温度特性が安定しないという症状が、その要因として考えられるのは保持部の応力が影響すると考えられている。
【0008】
そのため温度特性を確保するため、保持部の形状や水晶振動子の励振領域の形状を改善するなどで対応する一方で、水晶振動子の外形寸法が小型化20MHz以下の周波数では製作が困難な状況でもある。
【0009】
また、発振周波数の安定した高安定発振器を得るには、振動子の周波数調整や、半導体回路により周波数温度特性を可変したりするなど、個々の部品での周波数調整を行っているが、根本的には水晶振動子の動作環境温度で周波数が変動することから、発振器の周波数安定度を高める手法として、高温に保持した恒温槽内に振動子、発振回路を収納し温度変化による周波数変動を極力押さえる方法なども考慮した圧電ウエハーの状態でエッチング処理により水晶振動子の輪郭形状を製作する水晶振動子やそれを用いた水晶発振器への展開が必要と言う課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述する現状の課題を改善するため本発明は、枠部と電極が形成された振動部とが一体となった圧電素子をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハと、シリコン基板上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハと、少なくとも前記圧電素子ウエハの上面に蓋体となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハとを接合して一体化した水晶発振器である。
【0011】
そして、本発明の水晶発振器の製造工程として、枠部と電極が形成された振動部とが一体となった圧電素子をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハと、シリコン基板上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハとを接合する工程と、前記圧電素子の周波数調整を行う工程と、前記圧電素子ウエハ上に蓋体となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハを接合する工程から成り、前述の接合方法には直接接合あるいは、陽極接合を用いた水晶発振器の製造方法である。
【0012】
要するに、圧電ウエハの状態でエッチング処理により圧電振動子の輪郭形状を作り、輪郭枠部を保持部とし保持部を圧電振動子と一体的に構成するランナー(タイバー部分)で圧電振動子の振動領域を支持することで小型化を実現した圧電振動子と、シリコンウエハ基板上に発振動作機能と温度補償機能を形成したシリコンウエハとを一体化し、課題に挙げる圧電振動子の外形を小型にして保持部の影響に関係なく周波数出力が安定した水晶発振器を得ることができる。
【0013】
以上のように本発明では、圧電ウエハの状態でエッチング処理により圧電振動子の輪郭形状を作り、輪郭枠部を保持部とし保持部を圧電振動子と一体的に構成する圧電振動子と、半導体回路との組合せにより半導体回路の中にペルチェ素子などの加熱と冷却を行う素子を一緒に組込むことで温度制御機能を実現し、更にランダムアクセスメモリ(RAM)を搭載して圧電振動子の本来持つ温度特性を平坦にする温度プロファイルを半導体回路の中に組込み、この温度プロファイル設定条件を書き換える機能も合わせて1チップの発振回路機能と一体的な構造となるようにモジュール化することで課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、温度変化に伴い発振周波数の変動を改善し、安定して精度の高い周波数出力信号を得ることができる水晶発振器が得られる。更に、RAM機能を備えることで温度特性に沿った情報を書き換えることにより、多種の温度特性にも対応できる。
【0015】
また、圧電振動子が小型化し製造工程での取り扱いが難しくなっている現状に対しても、圧電ウエハの状態でエッチング処理により圧電振動子の輪郭形状を作り、輪郭枠部を保持部とし保持部を圧電振動子と一体的に構成する圧電振動子を用い、シリコンウエハ状態の半導体部品と共に一体的に組立、封止を行うことで飛躍的に生産性が向上し、生産コストを低減する。また、半導体部品には加熱冷却機能、温度補償機能、発振回路機能などを集積することで1チップ化を可能とし水晶発振器全体の外形寸法の小型化を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の概要を示す概念図である。実際には枠部1と電極が形成された振動部2とが一体となった圧電素子をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハとした概念であるが、図1では個片にした状態を描画している。また、圧電振動子と半導体部品との電気的接続についての詳細は図示していない。
【0017】
枠部1と電極が形成された振動部2とが一体となった圧電素子3がひとつの圧電振動子の単位であり、この圧電振動子にシリコン基板5上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハとを電気的に接続して一体化した圧電発振器6である。そして、少なくとも圧電素子3ウエハの上面に蓋体4となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハとを接合することで、圧電振動子を被い気密容器環境を実現することができる。なお、図2は図1の保持部7位置を変えたもので、機能としては同様に作用する。また、蓋体4の励振部分には凹状のへこみがあっても構わない。
【0018】
そして、図3と図4に示すように本発明の製造工程の流れとしては、枠部1と電極が形成された振動部2とが一体となった圧電素子をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハと、シリコン基板上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハとを接合する工程と、前記圧電素子の周波数調整を行う工程と、前記圧電素子ウエハ上に蓋体4となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハを接合する工程から成る。接合については直接接合(図3)でも、陽極接合(図4)でも構わない。
【0019】
図5は図3と図4に示すフローに基づいて、対比した状態を示す図である。図5に示すように、製造工程では一貫してウエハ状態で処理を行い、全てを接合後に分割して圧電発振器6を得る。図3と図4に示す(A)〜(C)に対応した状態を示したものである。
【0020】
また、圧電ウエハの状態でエッチング処理により圧電振動子の輪郭形状を作り、輪郭枠部1を保持部7とし保持部7を圧電振動子と一体的に構成する圧電振動子と半導体回路との組合せでは、圧電発振器6として動作する半導体部品には発振動作機能と温度補償機能を組み込んでいるが、温度補償機能の中にはペルチェ素子などの加熱と冷却を行う素子を一緒に組込むことで温度制御機能を実現し、更にランダムアクセスメモリ(RAM)を搭載して圧電振動子の本来持つ温度特性を平坦にする温度プロファイルを半導体回路の中に組込み、この温度プロファイル設定条件を書き換える機能も合わせて1チップの発振回路機能と一体的な構造となるようにモジュール化したことも特徴にある。
【0021】
なお、圧電ウエハ上の所望の振動子をエッチングで形成する場合の処理方法には、ウェットあるいは、ドライエッチング処理方法を用いるほか、サンドブラストや超音波加工処理によって行われる。また、圧電振動子への電極形成や、接合のための電極形成には、スパッタ法や蒸着法などを用いて形成する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の概念を示す概念図である。
【図2】本発明の概念を示すもので、図1の保持部位置を変えた概念図である。
【図3】本発明の圧電発振器の製造フローを示すフロー図である。
【図4】本発明の圧電発振器の他の製造フローを示すフロー図である。
【図5】本発明の製造フローに対比した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 枠部
2 振動部
3 圧電素子
4 蓋体
5 シリコン基板
6 圧電発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠部と電極が形成された振動部とが一体となった圧電素子をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハと、シリコン基板上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハと、少なくとも前記圧電素子ウエハの上面に蓋体となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハとを接合して一体化したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
枠部と電極が形成された振動部とが一体となった圧電素子をマトリクス状に設けた圧電素子ウエハと、シリコン基板上に発振動作機能と温度補償機能を構成したシリコンウエハとを接合する工程と、前記圧電素子の周波数調整を行う工程と、前記圧電素子ウエハ上に蓋体となる圧電ウエハあるいはシリコンウエハを接合する工程から成る圧電発振器の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接合方法には、直接接合あるいは陽極接合を用いることを特徴とする圧電発振器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−158457(P2007−158457A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347086(P2005−347086)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】