説明

圧電発振器

【課題】本発明は、パッケージ内に圧電振動子と電子回路素子とを収納した圧電発振器を提供する。
【解決手段】 所定の振動数で振動する圧電振動片(11)と、複数の電極パッド(121)を有し圧電振動片(11)を発振させる電子回路素子(12)とを備える箱形状のパッケージ(20)と、パッケージを密封するリッド(13)とを有する圧電発振器(100)であって、複数の電極パッド(121)に対応してパッケージ(20)の内面に形成された開口(172)と底面(173)とを含む複数の溝部(17)と、溝部の底面(173)に形成され、電極パッド(121)が接合材(122)を介して接合する接続電極(162)とを備え、溝部の開口(171)の面積が、溝部における底面から所定の高さの断面の面積より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ内に圧電振動子と電子回路素子とを収納した圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器の小型化が進む中で、コンデンサー、ICなどの電子回路素子を圧電発振器のパッケージ内に面実装(フェースダウンボンディング)することが多くなってきている。また、圧電発振器の小型化に対応して、圧電発振器の背の高さを低くすることも求められている。たとえば、特許文献1または特許文献2に開示される圧電発振器は、パッケージ内部に溝部を形成して、電子回路素子の金属バンプが溝部に入るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−177055号公報
【特許文献2】特開2009−038532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子回路素子がパッケージ内部に実装される際に、金属バンプの大きさに変動があったりすると、溝部から金属バンプが漏れ出るおそれがある。さらに圧電発振器の小型化が進む中で、電子回路素子に形成される複数の金属バンプの間隔は狭くなり、また、パッケージの内側底面などに形成される内部配線又は端子の間隔も狭くなってきている。そのため、溝部から漏れ出た金属バンプが隣り合う金属バンプまたは配線と短絡(ショート)することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様に係る圧電発振器は、所定の振動数で振動する圧電振動片と、複数の電極パッドを有し圧電振動片を発振させる電子回路素子とを備える箱形状のパッケージと、パッケージを密封するリッドとを有する圧電発振器であって、複数の電極パッドに対応してパッケージの内面に形成された開口と底面とを含む複数の溝部と、溝部の底面に形成され、電極パッドが接合材を介して接合する接続電極と、を備え、溝部の開口の面積が、溝部における底面から所定の高さの断面の面積より小さい。
【0006】
第二態様に係る圧電発振器は、第一態様において、所定の高さがゼロであり、底面が最大面積を有する。
【0007】
第三態様に係る圧電発振器は、接合材は電極パッドに形成された金属バンプである。
【0008】
第四態様に係る圧電発振器は、溝部の開口の直径がφ100μm以上φ120μm以下である。
【0009】
第五態様に係る圧電発振器は、溝部の開口から底面までの深さが、10μm以上20μm以下である。
【0010】
第六態様に係る圧電発振器は、第一態様において、接合材は電極パッドに塗布された導電性接着剤である。
【0011】
第七態様に係る圧電発振器は、パッケージは側面部及びベースからなり、該ベースが平行平面板の第1基板部材と平行平面板の第2基板部材とにより構成され、第1基板部材は溝部の開口が形成され、第2基板部材は溝部の底面及び接続電極が形成されている。
【0012】
第八態様に係る圧電発振器は、パッケージは側面部及びベースからなり、該ベースが第1基板部材と、第2基板部材と、第3基板部材とにより構成され、第1基板部材は溝部の開口が形成され、第2基板部材は前記溝部の開口よりも広い面積の断面を有する孔部が形成され、第3基板部材は前記溝部の底面となり接続電極が形成される。
第九態様に係る圧電発振器は、溝部がエッチング又は機械加工により設けられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電発振器は、パッケージの内面に形成された溝部から金属バンプが漏れ出ることを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】圧電発振器100の分解斜視図である。
【図2】(a)は、図1のA−Aにおける圧電発振器100の断面図である。 (b)は、図2(a)の点線部におけるベース15の拡大断面図である。
【図3】(a)は、第1基板部材151の平面図である。 (b)は、図3(a)のB−Bにおける第1基板部材151の断面図である。
【図4】(a)は、第2基板部材152の平面図である。 (b)は、図4(a)のC−Cにおける第2基板部材152の断面図である。 (c)は、第2基板部材152の第1変形例1521の図4(a)のC−Cにおける断面図である。 (d)は、第2基板部材152の第2変形例1522の図4(a)のC−Cにおける断面図である。
【図5】電極パッド121上に接合材122の形成方法を説明するための図である。 (a)は、金ワイヤの先端を放電溶融させてボール状にした状態の図である。 (b)は、電子回路素子上の電極パッドに金バンプを接合している状態の図である。 (c)は、金ワイヤを切断した状態の図である。
【図6】フリップチップ実装法による電子回路素子12とベース15との接合方法を説明するための図である。
【図7】(a)は、圧電発振器200の断面図である。 (b)は、ベース15Bの断面図である。 (c)は、ベース15Bに電子回路素子12を接合した状態の図である。
【図8】(a)は、ベース15Cの断面図である。 (b)は、ベース15Cに電子回路素子12を接合した状態の断面図である。 (c)は、ベース15Dの断面図である。 (d)は、ベース15Dに電子回路素子12を接合した状態の断面図である。
【図9】圧電発振器300の断面図である。
【図10】圧電発振器400の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)
図1は、圧電発振器100の分解斜視図である。図1を参照して、圧電発振器100の構成を説明する。
【0016】
以下、圧電発振器100の上方を+Z軸方向、圧電振動片11を固定している2つの導電性接着材18を結ぶ方向をX軸方向、X軸方向とZ軸方向とに直交する方向をY軸方向として説明する。
【0017】
<圧電発振器100の構成>
圧電発振器100は、パッケージ20と、電子回路素子12と、所定の振動数で振動する圧電振動片11と、リッド3とから構成されている。パッケージ20は、セラミックなどからなる側面部14とベース15とから構成される凹型の箱形状であり、側面部14は第1側面部141と第2側面部142とから構成されている。
【0018】
電子回路素子12の電極パッド121に形成された接合材122は、電極パッド121を介して電子回路素子12内の回路と電気的に接続されている。電子回路素子12は6カ所にある接合材122によってベース15に実装され、圧電振動片11は2つの導電性接着材18によって第2側面部142に実装される。パッケージ20はリッド13によって封止される。
【0019】
導電性接着材18は圧電振動片11を固定するとともに、第2側面部内に形成されている導通部(図示せず)とベース15の圧電振動片用電極161とを通して電子回路素子12と圧電振動片11を電気的に接続する。
【0020】
圧電振動片11として、たとえば、音叉型の振動片、AT振動片、または弾性表面波(SAW)振動片が使用される。圧電振動片11の素材には、主に水晶が用いられる。しかし、水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電セラミックス等を用いることも可能である。圧電振動片11が配置されるキャビティ(空間)内は真空または不活性ガスで満たす。これは、圧電振動片11の周波数振動特性が経時変化しないようにするためである。
【0021】
ベース15は、圧電発振器100の最下部に配置される。ベース15には、+Z軸側表面の2カ所に圧電振動片11の圧電振動片用電極161を有する。また、開口が円形である溝部17が6カ所に形成されている。各溝部17の底面にはそれぞれ接続電極162が形成されている。
【0022】
第2側面部142は、ベース15上に配置されている。第1側面部141は、第2側面部142の上部に配置されている。リッド13は、第1側面部141の上部に配置され圧電振動片11及び電子回路素子12をパッケージ20のキャビティ内に密封する。
【0023】
電子回路素子12は、リッド13でパッケージ20のキャビティ内が密封される前に、ベース15の上に実装される。電子回路素子12は、−Z軸側の面にたとえば6枚の電極パッド121を有しており、各電極パッド121には金属バンプ122が形成される。電子回路素子12は、各接合材122が溝部17に入り接続電極162と電気的に接続される。電子回路素子12は、圧電振動片11と電気的に接続して発振回路を形成する。
【0024】
圧電振動片11は、リッド13でパッケージ20のキャビティ内が密封される前に、第2側面部142の上部に実装される。圧電振動片11は、導電性接着材18によって第2側面部142に2カ所で固定されるとともに、ベース15上の圧電振動片用電極161を通して電子回路素子12と電気的に接続される。
【0025】
さらに、図2を参照して圧電発振器100の詳細な説明をする。
図2(a)は、図1のA−Aにおける圧電発振器100の断面図であり、図2(b)は、図2(a)の点線部におけるベース15の拡大断面図である。
【0026】
ベース15は、平行平面板の第1基板部材151と平行平面板の第2基板部材152とにより構成されている。第1基板部材151は、ベース15の下面を形成する。第1基板部材151の−Z軸側の面には外部端子163が形成されており、第1基板部材151の+Z軸側の面には接続電極162が形成されている。接続電極162と外部端子163とは第1基板部材151の内部に形成されている導通部164によって電気的に接続されている。第2基板部材152は、ベース15の上面を形成する。第2基板部材152には、6カ所に孔部171が形成されており、この孔部171はベース15の溝部17(図2(b)参照)を形成している。
【0027】
ベース15に形成された複数の溝部17は、開口172と底面173とを有し、底面173には接続電極162が形成されている。また、溝部17は開口172より底面173の方が広くテーパー状になっている。
【0028】
また、第2基板部材152の表面には、圧電振動片用電極161(図1参照)が形成されている。圧電振動片用電極161は第1基板部材151を通して圧電振動片11を外部と電気的に接続する。
【0029】
第2側面部142は、第2基板部材152上に形成される枠であり、電子回路素子12を囲むように配置される。第2側面部142の上部には圧電振動片11が実装される。そのため、第2側面部142の内部には、圧電振動片11を電子回路素子12に電気的に接続するための導通部(図示せず)が形成されている。
【0030】
第1側面部141は、第2基板部材142の上に形成される枠であり、圧電振動片11を囲むように配置される。
【0031】
リッド13は、第1側面部141の上部に配置され、封止材(図示しない)によって第1側面部141に接着される。
【0032】
側面部14とベース15とからなるパッケージ20は、グリーンシートを積層して焼成することにより作製される。焼成される前のセラミックスのシートはグリーンシートと呼ばれる。例えば、第1基板部材151の作製においては、まずグリーンシートに導通部164の穴がパンチングにより開けられる。そして、銅などを含む導体ペーストが接続電極162と外部端子163と導通部164とに印刷される。また、第2基板部材152の作製においては、まずグリーンシートに孔部171のテーパー穴がパンチングにより開けられる。
【0033】
さらに第1側面部141および第2側面部142も、グリーンシートのパンチングにより形成される。このようにして形成された第1基板部材151、第2基板部材152、第1側面部141および第2側面部142のグリーンシートは重ね合わされ焼成される。これにより、パッケージ20が形成される。
【0034】
パッケージ20は、パッケージ20の内側が窒素雰囲気や真空に保たれ、内側に実装される圧電振動片11と電子回路素子12とをホコリ等の異物や油等の汚れから保護している。また、パッケージ20は強度的に優れ、電気絶縁性が高い。
【0035】
<第1基板部材の構成>
図3(a)は、第1基板部材151の+Z側の平面図である。接続電極162は、X軸方向に2列、Y軸方向に3列に並んでおり、計6本の接続電極162が形成されている。また、第1基板部材151の+Z軸側の面の+Y軸側には2つの圧電振動片用電極161がX軸方向に並んで配置されている。図3(a)には、電子回路素子12(一点鎖線)と接合材122(点線)とが実装される位置を記載してある。電子回路素子12は、6カ所に存在する接合材122が第1基板部材151上の6本の接続電極162とそれぞれ重なる位置に配置される。
【0036】
図3(b)は、図3(a)のB−Bにおける第1基板部材151の断面図である。第1基板部材151の上面には接続電極162が、下面には外部端子163が印刷される。接続電極162と外部端子163とは導通部164によって電気的に接続されている。接続電極162上には接合材122が接続される。
【0037】
<第2基板部材の構成>
図4(a)は、第2基板部材152の平面図であり、図4(b)は、図4(a)のC−Cにおける第2基板部材152の断面図である。第2基板部材152は電子回路素子12の接合部122のXY面の位置に合わせて6つの孔部171が形成される。孔部171はテーパー状に開けられており、孔部171の+Z軸側の開口の直径DAは−Z軸側の開口の直径DBよりも小さい。
【0038】
孔部171は、第2基板部材152にパンチングもしくは切削機械加工を行うことにより形成することができる。
【0039】
(フリップチップ実装法)
圧電振動器100の電子回路素子12とベース15との接合には、フリップチップ実装法が用いられる。フリップチップ実装法は、電子回路素子12の電極パッド121上に形成した接合材122を、ベース15の接続電極162上に熱圧着によって接合する実装方法である。図5及び図6を参照して、フリップチップ実装法による電子回路素子12とベース15との接合方法の説明をする。
【0040】
<金属バンプの形成>
図5は、電極パッド121上に接合材122の形成方法を説明するための図である。フリップチップ実装法では接合材122に金属バンプが用いられる。ここでは接合材122を金属バンプ122とし、金属バンプの素材が金(Au)である場合について説明する。
【0041】
図5(a)は、キャピラリ19にセットされた金ワイヤ16を示した図である。まず、金ワイヤ16は、細いガラス管であるキャピラリ19にセットされる。そして、金ワイヤ16の先端は、放電溶融されてボール状にされる。ボール状の金ワイヤ16Aの直径BSは、放電溶融を行う際の印加電圧を変化させることによってコントロールすることができる。
【0042】
図5(b)は、電子回路素子12上の電極パッド121にボール状の金ワイヤ16Aを接合している状態を示した図である。金ワイヤ16の先端をボール状にした後、ボール状の金ワイヤ16Aを電極パッド121上に押し当て、超音波を使用して熱圧着する。
【0043】
図5(c)は、金ワイヤ16を切断した状態の図である。ボール状の金ワイヤ16Aを電子回路素子12上の電極パッド121に接合した後、金ワイヤ16を切断して金属バンプ122が形成される。その後、金属バンプ122のレベリングを行い、電子回路素子12上の全ての金属バンプ122の高さをBTBに揃える。金属バンプ122の直径BHBはボール状の金ワイヤ16Aの直径BSよりも大きくなる。
【0044】
<電子回路素子12とベース15との接合>
図6(a)は、電子回路素子12がベース15に取り付けられる前の図である。電子回路素子12の位置は、金属バンプ122がベース15の溝部17の真上にくるように調整される。電子回路素子12がベース15に取り付けるためには、電子回路素子12がベース15に取り付けられる前の金属バンプ122の高さBTBが溝部17の深さDEよりも大きくなければならない。また、金属バンプ122の直径BHBは、ベース15の溝部17の開口172の直径DA(外周部174)よりも小さくなければならない。
【0045】
図6(b)は、金属バンプ122を接続電極162に接触させた状態の図である。図6(b)の状態で、超音波ホーン21を用いて金属バンプ122に超音波振動と荷重とが与えられる。超音波振動により金属バンプ122が塑性変形し、固相拡散によって金属バンプ122が接続電極162に接合する。
【0046】
図6(c)は、電子回路素子12がベース15に取り付けられた状態の図である。電子回路素子12がベース15に取り付けられている状態での金属バンプ122の高さをBTA、直径をBHAとする。金属バンプ122の高さBTAは、電子回路素子12がベース15に取り付けられる前の金属バンプ122の高さBTBより低く、また溝部17の開口172の深さDEより高い。圧電発振器100の背を低くするためにはBTAの高さは低い方が好ましい。
【0047】
溝部17の深さDEについて説明する。接続電極162の厚さEAは約10μmである。また、電子回路素子12がベース15に取り付けられている状態での金属バンプ122の高さBTAは、圧電発振器100の背を低くすることを考慮すると20μm程度とすることが良い。そのため、溝部17の深さDEは0μmから約20μmの範囲にすることが好ましい。一方、金属バンプ122が電子回路素子12の回路面まで流出することを防ぐため、溝部17の開口172の位置は金属バンプ122の高さの半分よりも高い位置にあることが好ましい。そのため、溝部17の深さDEは10μmから20μmの範囲にあることが望ましい。
【0048】
次に、溝部17の開口172の直径DAについて説明する。電子回路素子12の実装前の金属バンプ122の大きさBHBは約90μmから100μm、実装後の金属バンプ122の大きさBHAは約100μmから120μmとすることが良い。これらの金属バンプ122の直径の寸法は、電子回路素子12とベース15との接着強度を考慮すると、これ以上小さくすることは難しい。そのため、溝部17の開口172の直径DAは実装時の位置精度を考慮すると、最低としてφ100μm以上は必要である。また、電子回路素子12の実装後の金属バンプ122の最大直径は約φ120μmであることから、圧電発振器100の大きさをできる限り小さくするために、溝部17の開口172の直径DAはφ120μm以下であることが望ましい。すなわち、溝部17の開口172の直径DAはφ100μmからφ120μmの範囲にあることが望ましい。
【0049】
一方、溝部17の底面173の直径DBはできる限り大きい方が好ましい。金属バンプ122が大きい場合であっても、電子回路素子12の回路面まで流出することを防ぐことができるためである。
【0050】
電子回路素子12は、接合材122を溝部17の中に入れて実装される。そのため、ベース15と電子回路素子12との間隔を狭くすることができる。これにより、圧電発振器100を低背化できる。また、電子回路素子12をベース15にフリップチップ実装するとき、接合材122(金バンプ)の一部が突出した形状に塑性変形して、接合材122に突出部が形成される場合がある。しかし、溝部17における開口172の外周部174が壁となり、接合材122の突出部が、電子回路素子12や他の接合材122等まで延出することを防止する。したがって電子回路素子12の損傷や電気的な短絡を回避できる。
【0051】
孔部171の断面のテーパーは曲線状でも直線状でもよい。図4(c)と図4(d)とに第2基板部材152の変形例を示す。
【0052】
図4(c)は、第2基板部材152の第1変形例1521の図4(a)のC−Cにおける断面図である。第2基板部材152の第1変形例1521では、孔部171の断面のテーパーが孔部171を外側に膨らませるような曲線なっており、孔部171の内部体積が第2基板部材152の孔部171に比べて増大している。そのため、第2基板部材の第1変形例1521は接合材122が溝部17よりあふれ出るおそれを第2基板部材152に比べて低減することができる。
【0053】
図4(d)は、第2基板部材152の第2変形例1522の図4(a)のC−Cにおける断面図である。第2基板部材152の第2変形例1522では、孔部171の断面のテーパーが孔部171を内側に膨らませるような曲線なっている。孔部171の内部体積は第2基板部材152の孔部171に比べて減少しているものの、孔部171が円筒状の第2基板部材(不図示)に比べ孔部171の体積は増大しており、接合材122が溝部17よりあふれ出る可能性を低減する効果は得ることができる。
【0054】
(第2実施例)
図7を参照して、第1実施例のベース15とは異なる形状を有するベース15Bが用いられた圧電発振器200について説明する。
【0055】
図7(a)は、圧電発振器200の断面図である。図7(b)は、ベース15Bの断面図である。図7(c)は、ベース15Bに電子回路素子12を接合した状態の断面図である。圧電発振器200のベース15Bは、圧電発振器100のベース15とは異なる形状を有している。ベース15Bが3つの部材により構成されている。圧電発振器200のその他の構成に関しては圧電発振器100と同様である。
【0056】
ベース15Bは、第1基板部材151と、第3基板部材153と、第4基板部材154とにより構成されている。第4基板部材154は複数の孔部171Bを有しており、ベース部材15Bの最上面に配置される平行平面板である。第3基板部材153は、複数の孔部171Aを有しており、第1基板部材151と第4基板部材154との間に配置される平行平面板である。孔部171Aと孔部171Bとが、ベース15Bの溝部17aを形成している。第1基板部材151はベース15Bの最下部であり、第3基板部材153の下部に配置される。孔部171Aと孔部171Bとの形状はたとえば円筒形であり、第3基板部材153と第4基板部材154とは孔部171Aの中心軸と孔部171Bの中心軸が重なるように配置される。第4基板部材154の孔部171Bの直径DAaは、金属バンプ122の直径BHAより大きいが第3基板部材153の孔部171Aの直径DBよりも小さい。
【0057】
第4基板部材154の溝部17の開口の直径DAaは、金属バンプ122が電子回路素子12上に流れ出すことを防いでいる。また、第3基板部材153の孔部171Aの直径DBが金属バンプ122の直径BHAより大きいため、余分な金属バンプ122は第3基板部材153の孔部171A内に逃すことができる。これらのことにより、金属バンプ122が電子回路素子12上に流れ出ることを防ぐことができる。
【0058】
また、溝部17aの深さDEaは圧電発振器100のベース15と同様に、10μmから20μmの範囲にあることが望ましく、溝部17aの開口の直径DAaはφ100μmからφ120μmの範囲にあることが望ましい。
【0059】
図8を参照して、ベース15Bの変形例であるベース15C及びベース15Dについて説明する。
【0060】
図8(a)は、ベース15Cの断面図である。ベース15Cは、第1基板部材151と、第5基板部材155と、第6基板部材156とにより構成されている。第1基板部材151はベース15Cの最下部に配置されている。第6基板部材156は複数の孔部171Dを有しており、ベース部材15Cの最上面に配置される平行平面板である。第5基板部材155は、複数の孔部171Cを有しており、第1基板部材151と第6基板部材156との間に配置される平行平面板である。孔部171Cと孔部171Dとが、ベース15Cの溝部17bを形成している。孔部171C及び孔部171Dはテーパー状に開けられている。孔部171Dの−Z軸側の開口面の直径DCbは+Z軸側の開口面の直径DAbよりも大きい。また、直径DCbは孔部171Cの+Z軸側の開口面の直径でもあり、直径DAbは孔部171Cの−Z軸側の開口面の直径でもある。直径DCbは溝部17bの最大内径となっている。つまり、溝部17bの開口面の面積は、溝部17bの直径DCbを有する断面の面積よりも小さい。第5基板部材155と第6基板部材156とは孔部171Cの中心軸と孔部171Dの中心軸が重なるように配置される。
【0061】
図8(b)は、ベース15Cに電子回路素子12を接合した状態の断面図である。第6基板部材156の溝部17Dの開口の直径DAbは、金属バンプ122が電子回路素子12上に流れ出すことを防いでいる。また、溝部17bの最大内径である直径DCbは金属バンプ122の直径BHAよりも大きく、余分な金属バンプ122を溝部17b内に逃すことができる。
【0062】
図8(c)は、ベース15Dの断面図である。ベース15Dは、第1基板部材151と、第7基板部材157と、第8基板部材158とにより構成されており、第1基板部材151はベース15Dの最下部に、第8基板部材158は最上部に、第7基板部材157は第1基板部材151と第8基板部材158との間に配置される。第7基板部材157と、第8基板部材158とは複数の孔部171E及び孔部171Fを有しており、これらの孔部はベース15Cの孔部171C及び孔部171Dの直線状のテーパー部が曲線状になった形状をしている。孔部171Eと孔部171Fとで溝部17cを形成しており、溝部17cの最大内径が直径DCcとなっている。つまり、溝部17cの開口面の面積は、溝部17cの直径DCcを有する断面の面積よりも小さい。
【0063】
図8(d)は、ベース15Dに電子回路素子12を接合した状態の断面図である。ベース15Dもベース15Cと同様に、第8基板部材158の溝部17Eの開口の直径DAcは、金属バンプ122が電子回路素子12上に流れ出すことを防いでいる。また、溝部17cの最大内径である直径DCcは金属バンプ122の直径BHAよりも大きく、余分な金属バンプ122を溝部17c内に逃すことができる。
【0064】
ベース15Cまたはベース15Dは、溝部17bまたは溝部17cにおける最大内径DCbまたは最大内径DCcが、溝部17bまたは溝部17cの底面から所定の高さにあれば、金属バンプ122が電子回路素子12上に流れ出すことを防ぐ効果と余分な金属バンプ122を溝部17bまたは17c内に逃すことができる効果とを有することができる。
【0065】
溝部17b及び溝部17cの深さDEb及び深さDEcも圧電発振器100のベース15と同様に、10μmから20μmの範囲にあることが望ましく、溝部17b及び溝部17cの開口の直径DAb及び直径DAcはφ100μmからφ120μmの範囲にあることが望ましい。
【0066】
(第3実施例)
図9は、圧電発振器300の断面図である。圧電発振器300は、圧電振動片11と電子回路素子12との間に仕切り基板22を配置し、別々のキャビティ内に圧電振動片11と電子回路素子12とが配置されている。圧電振動片11は、仕切り基板22上に実装され、仕切り基板22と第1側面部141とリッド13とに囲まれたキャビティに設置される。仕切り基板22の下部には第3側面部143が配置され、第3側面部143の下部にはベース15が配置される。電子回路素子12は、第1実施例の圧電発振器100と同じくベース15上に実装される。そのため、電子回路素子12は、ベース15と第3側面部143と仕切り基板22とに囲まれたキャビティに設置される。
【0067】
ベース15と仕切り基板22と第1側面部141と第3側面部143とによりパッケージ20Cが形成される。パッケージ20Cはグリーンシートを基材として形成される。その他の構成は圧電発振器100と同じである。
【0068】
圧電振動片11は、温度変化によって周波数が変動する。一方、電子回路素子12は駆動によって温度が上昇するため、圧電振動片11の正確な周波数発振のためには電子回路素子12と同じキャビティ内に設置しない方が望ましいことがある。圧電発振器300は、圧電振動片11と電子回路素子12との間に仕切り基板22を設置し、一つのキャビティに圧電振動片11のみが設置されている。
【0069】
(第4実施例)
図10は、圧電発振器400の断面図である。圧電発振器400は、圧電振動片11と電子回路素子12との間にベース15Eを配置している。ベース15Eの+Z軸側の面には圧電振動片11が実装される。ベース15Eの上部には第1側面部141が配置され、第1側面部の上部にはリッド13が配置される。そのため、圧電振動片11はベース15Eと第1側面部141とリッド13とに囲まれる。ベース15Eの−Z軸側の面には電子回路素子12が実装される。また、ベース15Eの下部には第4側面部144が配置される。第4側面部144で囲まれた電子回路素子12は、樹脂(不図示)などで封止される。
【0070】
ベース15Eは第9基板部材159と第10基板部材160とにより構成される。第9基板部材159は+Z軸側の面に圧電振動片11用の2つの電極を有し、−Z軸側の面に接続電極162が形成されている。第10基板部材160は第9基板部材159の下部に位置し、第2基板部材152(図4参照)と同様のテーパー状の孔部171が形成されている。
【0071】
ベース15Eと第1側面部141と第4側面部144とによりパッケージ20Dが構成され、パッケージ20Dはグリーンシートを基材として形成される。その他の構成は第1実施例の圧電発振器100と同じである。
【0072】
第3実施例の圧電発振器300は仕切り基板22(図9参照)を配置することにより圧電振動片11のみがユニットとして実装されるキャビティを形成した。しかし圧電発振器400は、圧電発振器100に仕切り基板22を付け加えた構成になり、圧電発振器100よりも背が高くなっている。圧電発振器400は、ベース15Eに仕切り基板22の役割を持たせることにより、背の高さを低くしている。
【0073】
第1実施例から第4実施例は、接合材122が金属バンプでありフリップチップ実装法を使用して電子回路素子12をベースに実装する例であった。しかし、電子回路素子12は導電性接着剤を用いてベースに実装しても良い。ベース15、15B、15C、15Dで説明した溝部17、17a、17b、17cの形状の有用性は、導電性接着剤を用いた場合にも適用できる。そのため、導電性接着剤が多く塗布された場合であっても、余分な導電性接着剤が溝部17、17a、17b、17cより流れ出ることを防ぐことができる。さらに、半田バンプを用いた場合にも適用でき、半田バンプを溶融して電極同士を接合する場合に、半田バンプが電子回路素子12の回路面まで流出することを防ぐことができる。
【0074】
以上実施形態に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、種々の変更、置換、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。たとえば、実施例では金属バンプの形状を円形だとして説明し、孔部の開口の形状も円形として説明したが、これらの形状は円形に限らず、正方形等の他の形状でもかまわない。そのため、実施例では溝部をなす断面の円の直径で溝部の形状を説明したが、溝部の断面の円の直径は溝部の断面の面積で言い換えることができる。
【符号の説明】
【0075】
11 圧電振動片、 12 電子回路素子
13 リッド
14 側面部
15、15B、15C、15D、15E ベース
16 金ワイヤ
16A ボール状の金ワイヤ
17、17a、17b、17c 溝部
18 導電性接着材、 19 キャピラリ
20、20B、20C、20D パッケージ
21 超音波ホーン、 22 仕切り基板
100、200、300、400 圧電発振器
121 電極パッド
122 接合材
141 第1側面部、 142 第2側面部
143 第3側面部、 144 第4側面部
151 第1基板部材、 152 第2基板部材
153 第3基板部材、 154 第4基板部材
155 第5基板部材、 156 第6基板部材
157 第7基板部材、 158 第8基板部材
159 第9基板部材、 160 第10基板部材
161 圧電振動片用電極
162 接続電極、 163 外部端子
164 導通部
171、171A、171B 孔部
172 溝部17の開口
173 溝部17の底面
174 溝部17の開口172の外周部
1521 第2基板部材152の第1変形例
1522 第2基板部材152の第2変形例
BHA 電子回路素子12がベース15に取り付けられている状態での金属バンプ122の直径
BHB 電子回路素子12がベース15に取り付けられる前の金属バンプ122の直径
BTA 電子回路素子12がベース15に取り付けられている状態での金属バンプ122の高さ
BTB 電子回路素子12がベース15に取り付けられる前の金属バンプ122の高さ
BS ボール状の金ワイヤ16Aの直径
DA 溝部17の開口の直径
DAa 溝部17aの開口の直径
DAb 溝部17bの開口の直径
DAc 溝部17cの開口の直径
DB 第3基板部材153の孔部171Aの直径
DCb 溝部17bの最大内径
DCc 溝部17cの最大内径
DE 溝部17の深さ
DEa 溝部17aの深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の振動数で振動する圧電振動片と、複数の電極パッドを有し前記圧電振動片を発振させる電子回路素子とを備える箱形状のパッケージと、前記パッケージを密封するリッドとを有する圧電発振器であって、
複数の前記電極パッドに対応して前記パッケージの内面に形成された開口と底面とを含む複数の溝部と、
前記溝部の底面に形成され、前記電極パッドが接合材を介して接合する接続電極と、を備え、
前記溝部の開口の面積が、前記溝部における前記底面から所定の高さの断面の面積より小さい圧電発振器。
【請求項2】
前記所定の高さがゼロであり、前記底面が最大面積を有する請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記接合材は前記電極パッドに形成された金属バンプである請求項1又は請求項2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記溝部の開口の直径がφ100μm以上φ120μm以下である請求項3に記載の圧電発振器。
【請求項5】
前記溝部の開口から底面までの深さが、10μm以上20μm以下である請求項3又は請求項4に記載の圧電発振器。
【請求項6】
前記接合材は前記電極パッドに塗布された導電性接着剤とする請求項1又は請求項2に記載の圧電発振器。
【請求項7】
前記パッケージは側面部及びベースからなり、該ベースが平行平面板の第1基板部材と平行平面板の第2基板部材とにより構成され、
前記第1基板部材は前記溝部の開口が形成され、前記第2基板部材は前記溝部の底面及び接続電極が形成されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項8】
前記パッケージは側面部及びベースからなり、該ベースが第1基板部材と、第2基板部材と、第3基板部材とにより構成され、
前記第1基板部材は前記溝部の開口が形成され、前記第2基板部材は前記溝部の開口よりも広い面積の断面を有する孔部が形成され、前記第3基板部材は前記溝部の底面となり接続電極が形成されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項9】
前記溝部が、エッチング又は機械加工により設けられた請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−151432(P2011−151432A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8638(P2010−8638)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】