説明

圧電発振器

【課題】周波数可変感度が高い1チップタイプの圧電発振器を提供する。
【解決手段】水晶発振器20は、水晶振動片10と、その水晶振動片10を発振させるための発振回路を含む半導体回路素子としてのICチップ50と、水晶振動片10とICチップ50との間に配置され、少なくとも一方の主面にインダクタ回路パターン5aが形成された中間基板2と、中間基板2に水晶振動片10が積層された積層体1およびICチップ50が収容されるパッケージ30と、を含む。パッケージ30内に、積層体1およびICチップが封止された水晶発振器20において、中間基板2のインダクタ回路パターンは、水晶振動片10に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電振動片をパッケージ内に気密封止して構成された表面実装型の圧電デバイスが広く用いられている。ここで、圧電振動片は、水晶などの圧電体基板を所定の角度及び厚さに切り出した薄板が固有の共振周波数を有する特性を利用するもので、例えば、圧電体基板を所謂ATカットと呼ばれるカット角にて切り出した薄板を用いた厚み滑り振動をするATカット水晶振動片などが利用される。
このような水晶振動片を用いた圧電デバイスとして、例えば、水晶振動片と、その水晶振動片を発振させる発振回路を含む半導体回路素子などの電子部品とを同一パッケージ内に接合して封止した表面実装型の水晶振動子を用いた圧電発振器としての水晶発振器が、周波数や時間などの基準源として広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図7は、従来の電圧制御型の水晶発振器の一例を示す回路図であり、X1は水晶振動子、A1は増幅器、Ca及びCbはコンデンサー、D1は可変容量ダイオード、INは制御電圧入力端子、Rdは制御電圧印加用抵抗、OUTは電圧制御型水晶発振器の周波数出力端子をそれぞれ表す。
また、水晶振動子X1の一般的な等価回路は図8のように表される。図8において、L1は等価直列インダクタンス、C1は等価直列容量、R1は等価直列抵抗、C0は並列容量である。
水晶振動子X1からみた増幅器A1を含む回路側の負荷容量(合成容量)をCLとし、容量比をγ(C0/C1)とすると、この負荷容量CLによる共振周波数f0の変化量Δf/f0は周知の次式で表される。
Δf/f0=C0/(2γ(C0+CL))
即ち、電圧制御型水晶発振器の周波数は、発振ループ中の負荷容量の変化によりその共振周波数が変化する。
また、可変容量ダイオードD1は、その2端子間に印加する逆電圧に応じて容量値が変化するダーオードである。したがって、可変容量ダイオードD1を発振ループ中に挿入し、その印加電圧を変化させることによって発振周波数を制御することができる。
【0004】
このような周波数可変範囲の調整が行える圧電振動子として、容器本体(パッケージ)にインダクタ回路パターンを設けて、パッケージ内に収容する水晶振動片にインダクタンスLを接続した構成の水晶振動子が、例えば特許文献2に開示されている。このような目的で発振ループに挿入するインダクタンスLを一般的に伸長コイル(あるいは、単に「コイル」)と称する。これは、水晶振動子X1に直列にインダクタンスLを接続すると、共振周波数はインダクタンスLを挿入する以前の周波数よりも低くなるが、反共振周波数は変化しないため、共振・反共振周波数間隔が広がるという原理に基づくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−271029号公報
【特許文献2】特開平2−226905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている水晶振動子では、水晶振動片を発振させるための発振回路を含む回路素子(例えば、半導体回路素子)は外付けとなるため、水晶発振器(圧電発振器)全体の小型化が困難という課題があった。仮に、パッケージ内に水晶振動片とともに回路素子を収容した場合、パッケージ(容器本体)にインダクタ回路パターンが設けられた構成となっていることから、回路素子と水晶振動片との電極間の浮遊容量が水晶発振器の発振特性に悪影響を及ぼす虞があった。
さらに、インダクタ回路パターンが設けられた専用パッケージが必要となるために、パッケージの汎用性がないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
〔適用例1〕本適用例にかかる圧電発振器は、振動部を有する圧電振動片と、前記振動部に形成された励振電極と、前記圧電振動片を発振させるための発振回路を含む半導体回路素子と、前記振動部との間に隙間を設けた状態で前記圧電振動片に重ねられた中間基板と、前記中間基板の少なくとも一方の主面の前記振動部と平面視で重なる領域に形成されたインダクタ回路パターンと、前記圧電振動片が重ねられた前記中間基板および前記半導体回路素子を搭載するパッケージと、を含み、前記インダクタ回路パターンが、前記励振電極に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、発振回路を含む半導体回路素子と、圧電振動片に接続されたインダクタ回路パターンとを有しているので、ワンシール構造のため信頼性が高く、周波数可変幅が大きい圧電発振器を提供することができる。
また、インダクタ回路パターンが形成された中間基板に圧電振動片が重ねられた構成としているので、汎用パッケージを用いて、発振特性が安定した圧電発振器を提供することができる。
また、インダクタ回路パターンが形成された中間基板に圧電振動片が重ねられた構成を有しているので、中間基板がシールド効果を奏して、半導体回路素子と圧電振動片との電極間の浮遊容量による発振特性への悪影響を抑えることができる。
【0010】
〔適用例2〕上記適用例にかかる圧電発振器において、前記インダクタ回路パターンと前記圧電振動片とが直列接続された構成を有し、該直列接続された構成が前記半導体回路素子に接続されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、圧電発振器の発振ループ中にインダクタンスを挿入することによる周波数可変幅を大きくする効果をより顕著に奏する。
【0012】
〔適用例3〕上記適用例にかかる圧電発振器において、前記インダクタ回路パターンと前記圧電振動片とが並列接続された構成を有し、該並列接続された構成が前記半導体回路素子に接続されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、圧電発振器における各電極間の浮遊容量などの不要な容量の影響を抑制することができる。
【0014】
〔適用例4〕上記適用例にかかる圧電発振器において、前記インダクタ回路パターンが、前記中間基板の両主面に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、中間基板の一方の面にのみインダクタ回路パターンを設けた場合に比して、中間基板のサイズを増大させることなくインダクタ回路パターンによる周波数可変幅を広げる効果を大きくすることができる。
【0016】
〔適用例5〕上記適用例にかかる圧電発振器において、前記両主面に形成された前記インダクタ回路パターン同士が直列接続されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、インダクタ回路パターンの長さが長くなることにより、周波数可変幅をより効果的に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、圧電発振器の一実施形態を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図。
【図2】(a)は、本発明の圧電発振器にかかる圧電振動片としての水晶振動片の一例を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のB−B線断面図、(c)は、下側からみた概略平面図。
【図3】(a)は、本発明の圧電発振器にかかる中間基板の一実施形態を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のC−C線概略断面図、(c)は、下側からみた概略平面図。
【図4】水晶振動片と中間基板とが接合された積層体の一例を示す概略断面図。
【図5】圧電発振器の回路の一例を示す回路図。
【図6】(a)は、中間基板の変形例を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のD−D線概略断面図、(c)は、下側からみた概略平面図。
【図7】従来の圧電発振器としての電圧制御型水晶発振器の一例を説明する回路図。
【図8】水晶振動子の等価回路の一例を説明する回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の圧電発振器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1(a)は、圧電発振器としての水晶発振器の一実施形態を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。なお、図1(a)において、水晶発振器の内部の構成を説明する便宜上、蓋体としてのリッドを取り外した状態を図示している。
【0021】
図1に示すように、水晶発振器20は、段差を有する凹部が形成されたパッケージ30と、パッケージ30の凹部の凹底部分に接合された半導体回路素子としてのICチップ50と、そのICチップ50の上方に配置された中間基板2および水晶振動片10からなる積層体1と、を有している。パッケージ30上にはリッド40が接合され、パッケージ30内に接合されたICチップ50、および中間基板2と水晶振動片10とが重ねられた積層体1が封止されている。なお、パッケージ30は、平板形状のものでもよく、この場合リッド40は、凹部が形成されたキャップ状のものであることが好ましい。
【0022】
〔振動片〕
まず、水晶発振器20にかかる水晶振動片10について図面に沿って説明する。
図2(a)は、本発明の圧電発振器にかかる圧電振動片としての水晶振動片の一例を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のB−B線断面図、(c)は、下側からみた概略平面図である。
水晶を用いて形成される水晶振動片10は、例えば、人工水晶原石の一部を結晶軸(光軸)を明確にしてブロック状に成形した水晶ランバードから所定の切断角度で切り出された単結晶基板としての水晶ウェハを用いて形成される。ここで、所定の切断角度とは、水晶の結晶軸に対して狙った角度だけ傾けたカット角を指し、本実施形態では、結晶軸から35°15′傾けた切断角度で切り出された所謂ATカット水晶を用いて形成された厚み滑り振動モードを呈する水晶振動片10として説明する。このようなATカット水晶を用いた水晶振動片10は、広範囲な温度領域において安定した周波数が得られる優れた温度特性を有する圧電振動片である。
【0023】
水晶振動片10は、図2(a)に示すように、固定端(水晶振動片10の固定される側の一端(図2における水晶振動片10の左端))となる支持部12と、自由端(水晶振動片10の固定されない側の一端(図2における水晶振動片10の右端))となる振動部14とを有している。ここで、本実施形態の振動部14は、水晶基板の一方の面に形成された凹部18の内底面と凹部18が形成されていない側の主面との間に挟まれた領域をいう。また、支持部12は、水晶基板の両主面に挟まれた厚肉の部分で、且つ、図2において、振動部14と水晶振動片10の固定端(左端)との間の領域をいう。振動部14の両主面上には一対の励振電極15a,15bが対向させて設けられている。また、支持部12の両主面上には、各励振電極15a,15bとそれぞれ対応する外部接続端子16a,16bが設けられ、対応する各励振電極15a,15bおよび外部接続端子16a,16b同士が、各励振電極15a,15bから引き出された端子間配線を介して電気的に接続されている。
このような電極や端子あるいは配線などの電極パターンは、水晶ウェハをエッチングして水晶振動片10の外形および凹部18を形成した後で、蒸着またはスパッタリングにより、例えばニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層として、その上に例えば金(Au)による金属膜を成膜し、その後フォトリソグラフィーを用いてパターニングすることにより形成できる。
【0024】
〔中間基板〕
次に、水晶発振器20にかかる中間基板2について説明する。
図3(a)は、本発明の圧電発振器にかかる中間基板の一実施形態を上側からみた概略平面図、(b)は、(a)のC−C線概略断面図、(c)は、下側からみた概略平面図である。
中間基板2は、図3に示すように、基部3と、基部3から延びるインダクタ形成領域(インダクタ回路パターン5aが形成される領域)とが、絶縁性の同一材料により例えば平面内に並んだ状態で一体形成されたものである。基部3は、上記の水晶振動片10の支持部12と接合される部分であるとともに、水晶振動片10と中間基板2とが重ねられた積層体1をパッケージ30に接合する際の固定部分となる部分であり(図1および図4を参照)、水晶振動片10およびパッケージ30との電気的な接続に供する接続端子7a,7bが設けられている。
【0025】
図3(a)に示すように、中間基板2の一方の主面において、基部3の一端部には接続端子7aが設けられている。この中間基板2の一方の主面は、本実施形態の水晶発振器20において水晶振動片10が搭載される面となる(図1および図4を参照)。接続端子7aからインダクタ形成領域に向けて配線4aが引き出され、その配線4aがインダクタ形成領域に引き回されてインダクタ回路パターン5aが形成されている。インダクタ回路パターン5aは、パッケージ30に形成された水晶発振器20の発振回路の発振ループに挿入されるインダクタンスであり、一般に伸長コイルあるいは単にコイルと称される。本実施形態のインダクタ回路パターン5aは、中間基板2の一方の主面上のインダクタ形成領域に、細長い配線4aが外周から内周に向けて矩形の渦巻き形状のコイルとして形成されている。なお、インダクタ回路パターン5aの形状はこれに限らず、配線4aによるインダクタ回路パターンの始端から終端までの長さがなるべく長くなる形状であればよく、例えば、円弧を有する通常の渦巻き形状であってもよいし、一端部から他端部側へ多数回折り返された形状のコイルとして形成されていてもよい。
【0026】
また、図3(c)に示すように、中間基板2の他方の主面において、基部3の他端部(上記接続端子7aの反対側の端部)には、接続端子7bが設けられている。この中間基板2の他方の主面は、本実施形態の水晶発振器20においてパッケージ30と接合される側の面(ICチップ50と対向する面)となる(図1および図4を参照)。接続端子7bからインダクタ形成領域側に向けて配線4bが引き出され、一方の主面に設けられたインダクタ回路パターン5aの中央の端部の真下まで引き回されて、スルーホールなどの層内配線9によりインダクタ回路パターン5aに電気的に接続されている。これにより、中間基板2の基部3において一方の主面に設けられた接続端子7aと、他方の主面に設けられた接続端子7bとの間に、インダクタ回路パターン5aによる一つのインダクタが形成される。
【0027】
なお、中間基板2の基部3には、図示はしないが、接続端子7a,7bの他にも、内層配線や側面配線を含む端子や電極を形成することができる。例えば、パッケージ30と水晶振動片10との電気的な接続に供する端子や電極、あるいは配線を、中間基板2に適宜に設けることができる。
【0028】
〔積層体〕
次に、本実施形態の水晶振動片10と中間基板2とを積層させて接合した積層体について図面に沿って説明する。
図4は、水晶振動片と中間基板とが接合された積層体の一例を示す概略断面図である。
図4に示すように、積層体1は、中間基板2上に水晶振動片10が搭載されたものである。中間基板2の基部3の一方の主面に設けられた接続端子7a(または、その他の端子や電極)と、水晶振動片10の対応する外部接続端子16a,16b(または、その他の端子や電極)とが位置合わせされ、図示しない接合部材を介して接合されている。接合部材は、例えば導電性接着剤や半田などの導電性の接合部材を用いることにより、電気的な接続を図るとともに機械的な接合を行うことができる。また、中間基板2の基部3と水晶振動片10の支持部12との接合部の反対側の端部どうしの接合部分(中間基板2と水晶振動片10との図中右側の接合部分)には、電気的な接続は必要でないため、樹脂系の接着剤など非導電性の接合部材を用いることができる。
積層体1において、水晶振動片10の振動部14は、振動部14に設けられた凹部18により、中間基板2のインダクタ回路パターン5aが形成された一方の主面との間に隙間を設けて配置される。
【0029】
〔水晶発振器〕
次に、図1に戻り、上記水晶振動片10および中間基板2の積層体1を用いた水晶発振器について説明する。
図1に示すように、水晶発振器20は、パッケージ30と、水晶振動片10および中間基板2が積層された積層体1と、水晶振動片10を駆動させる駆動回路を含む半導体回路素子としてのICチップ50と、を有している。本実施形態の水晶発振器20は、水晶振動片10と発振回路を含むICチップ50とがパッケージ30の凹部内に接合されて封止された、表面実装が可能な所謂SMD(Surface Mount Device)タイプの1チップの水晶発振器である。このようなSMDタイプの水晶発振器20は、小型、薄型化を図るのに有利である。また、表面実装部品として規格化されているSMDタイプの水晶発振器20は、例えば、基板に接合した水晶振動片を筒状のキャップで覆うことにより封止するタイプの水晶振動子のように、外部接続用のリード線を外部基板の接続端子形状に合わせて切断したり成形したりする必要がなく、外部基板への搭載の自動化も図りやすいので、実装工程の簡略化や低コスト化に有利である。
【0030】
パッケージ30は、略矩形平板状の第1層基板31と、略矩形フレーム状の第2層基板32、及び第3層基板33とがこの順に積層され、さらに、第3層基板33上には、略矩形フレーム状のシールリング39が配置される。このような構成において、略矩形フレーム状の第2層基板32、及び第3層基板33の開口部の大きさが上方にいくに従って大きく形成されており、これにより、パッケージ30には、第1層基板31の上面側を凹底部分とし、第2層基板32および第3層基板33側に開口した段差を有する凹部が形成されている。
【0031】
このようなパッケージ30の凹部において、凹部の凹底部分となる第1層基板31の上面には、ICチップ50が接続されるIC接続端子35が設けられている。また、パッケージ30の外底面となる第1層基板31の下面には、外部基板との接合に供する図示しない外部実装端子が設けられている。
また、第2層基板32によりICチップ50載置領域を平面視で囲むように形成される段差上には、中間基板2と水晶振動片10との積層体1が接続される振動片接続端子36が設けられている。
これらの振動片接続端子36やIC接続端子35、あるいは外部実装端子などの各端子は、第1層基板31〜第3層基板33に形成された図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により、それぞれ対応する端子どうしが接続されて回路配線を形成している。
【0032】
以上、説明したパッケージ30の第1層基板31〜第3層基板33は、セラミックス絶縁材料などからなる。また、パッケージ30に設けられた各電極、端子、あるいはそれらを電気的に接続する配線パターンや層内配線パターンなどは、一般に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属配線材料をセラミックス絶縁材料上にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(Ni)、金(Au)などのめっきを施すことにより形成される。
【0033】
図1(b)において、水晶振動片10を駆動振動させるための駆動回路を含む半導体回路素子としてのICチップ50は、パッケージ30の凹部の凹底部分に設けられたIC接続端子35に、例えばろう材あるいは接着剤(図示せず)によって接着・固定される。本実施形態では、ICチップ50の電極パッド(図示せず)に予め設けられた金属あるいは半田などからなるバンプ98により、IC接続端子35上にICチップ50がフェースダウン接合されている。フェースダウン接合によるICチップ50の接合は、水晶発振器20の薄型化(低背化)に有利である。なお、バンプ98によりICチップ50をフェースダウン接合した後に、ICチップ50とパッケージ30の凹部の凹底部分との間にアンダーフィル材を充填して硬化させることにより、ICチップ50の接合強度をより高めることができる。
なお、パッケージ30へのICチップ50の接合はフェースダウン接合に限らず、ワイヤーボンディングなどの他のIC実装技術を用いて行うことができる。
【0034】
中間基板2上に水晶振動片10が接合された積層体1は、パッケージ30の凹部内において振動片接続端子36と、対応する接続端子とを位置合わせした状態で、例えば導電性接着剤などの導電性の接合部材95および接合部材96により接合されている。なお、振動片接続端子36の位置や個数については図1に示す態様に限定されるものではなく、水晶振動片10とインダクタ回路パターン5aとの接続関係、及び積層体1とICチップ50との接続関係に応じて適宜変更してもよい。また、中間基板2は水晶振動片10よりも大きいサイズを有しても良い。また、積層体1(水晶振動片10又は中間基板2)と振動片接続端子36との接続についてもフェースダウン接合に限らず、ワイヤーボンディングによる接続を行ってもよいし、或いは、フェースダウン接合とワイヤーボンディングの組み合わせによる接続でもよい。例えば、中間基板2の水晶振動片10と平面視で重なりがない領域に電極を設け、この電極と振動片接続端子36との間をワイヤーボンディングしても良いし、或いは水晶振動片10上の露出した電極と振動片接続端子36との間を直接ワイヤーボンディングする構成としてもよい。
これにより、水晶振動片10を発振させる発振回路を含むICチップ50と、水晶振動片10とは、間に中間基板2のインダクタ回路パターン5aを介して直列接続させることができる。図5は、圧電発振器における水晶振動片10とICチップ50とのインダクタ回路パターン5aを介した回路の一例を示す回路図である。図5に示すように、圧電発振器において、ICチップ50は端子50a,50bを備えており、これら二つの端子間に水晶振動片10とインダクタ回路パターン5aとの直列回路が接続された構成を有することができる。なお、水晶振動片10とインダクタ回路パターン5aとの直列回路は、端子50aに水晶振動片10が接続され、端子50bにインダクタ回路パターン5aが接続されるように構成してもよい。
【0035】
また、水晶振動片10は、ICチップ50との間に、インダクタ回路パターン5aが設けられた中間基板2を介してパッケージ30内に配置される。
なお、積層体1とパッケージ30との接合に用いる接合部材95および接合部材96のうち、導電性の接合部材95は、例えば、ポリイミド、シリコン系、またはエポキシ系などの樹脂に、銀(Ag)フィラメント、またはニッケル(Ni)粉を混入した導電性接着剤などを用いることができる。また、積層体1を接合する導電性の接合部材95は、導電性接着剤に限らず、半田などの他の接合部材を用いることもできる。
【0036】
ICチップ50、水晶振動片10および中間基板2が積層された積層体1が接合されたパッケージ30の第3層基板33上には、蓋体としてのリッド40が接合されている。具体的には、例えば、42アロイ(鉄にニッケルが42%含有された合金)やコバール(鉄、ニッケル及びコバルトの合金)等の金属製のリッド40が、鉄−ニッケル(Fe−Ni)合金などをフレーム状に型抜きして形成されたシールリング39を介してシーム溶接されている。なお、リッド40には、上記した金属以外に、セラミックス、あるいはガラスなどを用いることができ、例えばガラス製のリッド40を用いた場合には、低融点ガラスを接合部材として用いるなど、リッド40の材料に応じて適宜に接合部材を選定し、パッケージ30とリッド40との接合を行うことができる。
【0037】
パッケージ30及びリッド40によって形成されるキャビティーは、水晶振動片10が動作するための空間となる。このキャビティーは、本実施形態の水晶発振器20において、減圧空間または不活性ガス雰囲気に密閉・封止することができる。例えば、キャビティー内を減圧空間にして密閉封止する場合には、パッケージ30の図示しない封止孔に固形の封止材を配置させた状態で真空チャンバー内に入れ、所定の真空度まで減圧させて水晶発振器20の内側から出るガスを封止孔から排出させた後、固形の封止材を溶融してから固化させることにより封止孔を閉塞させて封止する。これにより、パッケージ30の凹部内に接合された水晶振動片10及びICチップ50を気密封止することができる。
なお、封止材の材料としては、完成した水晶発振器20を外部実装基板に実装する際のリフロー温度よりも高い温度を融点として有したものが望ましく、例えば、金と錫(Sn)との合金、あるいは、金とゲルマニウム(Ge)との合金などを用いることができる。
【0038】
上記実施形態の水晶発振器20によれば、パッケージ30内に、発振回路を含む半導体回路素子としてのICチップ50と、圧電振動片としての水晶振動片10に接続されたインダクタ回路パターン5aとを有しているので、ワンシール構造のため信頼性が高く、周波数可変幅が大きいワンチップの圧電発振器としての水晶発振器20を提供することができる。
特に、上記実施形態の水晶発振器20では、インダクタ回路パターン5aが水晶振動片10に直列接続されているので、水晶発振器20の発振ループ中にインダクタンスを挿入することによる周波数可変幅を大きくする効果をより顕著に奏することができる。
【0039】
また、インダクタ回路パターン5aが形成された中間基板2に水晶振動片10を搭載する構成としているので、汎用のパッケージ30を用いて、発振特性が安定したワンチップの水晶発振器20を提供することができる。
また、ICチップ50と水晶振動片10との間にインダクタ回路パターン5aが形成された中間基板2を配置しているので、中間基板2がシールド効果を奏して、ICチップ50と水晶振動片10との電極間の浮遊容量による発振特性への悪影響を抑えることができる。
【0040】
(変形例)
上記実施形態では、中間基板2の一方の主面にのみインダクタ回路パターン5aを形成した構成を説明した。これに限らず、中間基板の両主面にインダクタ回路パターンを設ける構成とすることにより、周波数可変感度をさらに高くするなどの効果を得ることができる。
図6は、中間基板の変形例を説明するものであり、(a)は上側からみた概略平面図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は下側からみた概略平面図である。なお、図6に示す中間基板の変形例において、上記実施形態の中間基板2と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6(a)に示すように、本変形例の中間基板72の一方の主面側の構成は、上記実施形態の中間基板2の構成と全く同一である。即ち、中間基板72の一方の主面において、基部3の一端部に設けられた接続端子7aから引き出された配線4aが、インダクタ形成領域に引き回されてインダクタ回路パターン5aが形成されている。
また、図6(c)に示すように、中間基板72の他方の主面において、基部3の接続端子7aの反対側の端部に設けられた接続端子7bから配線74bが引き出され、その配線74bがインダクタ形成領域に引き回されてインダクタ回路パターン5bが形成されている。
【0042】
他方の主面に形成されたインダクタ回路パターン5bは、一方の主面に形成されたインダクタ回路パターン5aと平面視で重なるように同一の形状および配置にて形成されている。このようにすることにより、両主面のインダクタ回路パターン5a,5bの形状や配置のずれた場合、例えば、矩形の渦巻き形状の巻き方向が逆だった場合に、インダクタ回路パターンどうしのインダクタンスの打ち消しあいが起こることによる周波数可変感度の低下などの不具合を抑えることができる。
中間基板72の両主面に形成されたインダクタ回路パターン5aとインダクタ回路パターン5bとは、インダクタ形成領域の中央部で、スルーホールなどの内層配線79により電気的に接続されている。これにより、一方の主面に設けられた接続端子7aから、他方の主面に設けられた接続端子7bまでの間に、2つのインダクタ回路パターン5a,5bが直列接続された中間基板72を提供することができる。
【0043】
本変形例の中間基板72によれば、中間基板72の両主面に2つのインダクタ回路パターン5a,5bが直列接続された状態で形成されていることにより、中間基板の一方の面にのみインダクタ回路パターンを設けた場合に比して、中間基板のサイズを増大させることなくインダクタ回路パターン5a,5bによる周波数可変幅を広げる効果を大きくすることができる。
【0044】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態および変形例では、中間基板2のインダクタ回路パターン5aや、中間基板72に直列接続された状態で形成された2つのインダクタ回路パターン5a,5bを、圧電振動片としての水晶振動片10に直列接続した例を説明した。これに限らず、水晶発振器(圧電発振器)において、インダクタ回路パターンを、水晶振動片(圧電振動片)に並列接続する構成としてもよい。すなわち、図5において、端子50aと端子50bとの端子間に、水晶振動片10とインダクタ回路パターン5aの並列回路が接続された構成を備えても良い。
このように、インダクタ回路パターンを水晶振動片に並列接続することにより、水晶発振器における各電極間の浮遊容量などの不要な容量の悪影響を回避することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、水晶振動片10にATカット水晶からなり厚み滑り振動モードを呈する平板状の水晶振動片10を用いた例を示した。これに限らず、例えば、BTカット水晶を用いることにより、振動片の高周波数化や高速化を図ることが可能となり、また、SCカット水晶を用いることにより、耐応力性の高い振動片とすることができる。
また、この他の振動片として、例えば、基部と、基部から平行に延出された一対の振動腕とを有する音叉型の振動片や、平行に配置された一対の振動腕の両端部が2つの基部にそれぞれ接続された双音叉型の振動片などの、屈曲振動モードの振動片を用いてもよい。このような音叉型振動片や双音叉型振動片を用いることにより、フォトリソグラフィー技術とエッチング手法を用いた従来の製造ラインが適用できるので、振動片の低コスト化が図られるという利点がある。また、屈曲振動は気体の粘性の影響を受けやすいので、CI値の変化がおおきく、力の検出感度が良くなるという効果がある。
【0047】
また、上記実施形態で説明した水晶発振器20では、水晶からなる水晶振動片10(圧電振動片)を用いた例について説明した。これに限らず、水晶以外に、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウム、五酸化タンタル(Ta25)などの薄膜圧電材料を積層させて構成された圧電材料からなる圧電振動片を用いることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1…積層体、2,72…中間基板、3…基部、4a,4b,74b…配線、5a,5b…インダクタ回路パターン、7a,7b…接続端子、9,79…内層配線、10…圧電振動片としての水晶振動片、12…支持部、14…振動部、15a,15b…励振電極、16a,16b…外部接続端子、18…凹部、20…圧電発振器としての水晶発振器、30…パッケージ、31…第1層基板、32…第2層基板、33…第3層基板、35…IC接続端子、36…振動片接続端子、39…シールリング、40…リッド、50…半導体回路素子としてのICチップ、50a,50b…端子、72…中間基板、95…導電性の接合部材、96…接合部材、98…バンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部を有する圧電振動片と、
前記振動部に形成された励振電極と、
前記圧電振動片を発振させるための発振回路を含む半導体回路素子と、
前記振動部との間に隙間を設けた状態で前記圧電振動片に重ねられた中間基板と、
前記中間基板の少なくとも一方の主面の前記振動部と平面視で重なる領域に形成されたインダクタ回路パターンと、
前記圧電振動片が重ねられた前記中間基板および前記半導体回路素子を搭載するパッケージと、を含み、
前記インダクタ回路パターンが、前記励振電極に電気的に接続されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器において、
前記インダクタ回路パターンと前記圧電振動片とが直列接続された構成を有し、該直列接続された構成が前記半導体回路素子に接続されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電発振器において、
前記インダクタ回路パターンと前記圧電振動片とが並列接続された構成を有し、該並列接続された構成が前記半導体回路素子に接続されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電発振器において、
前記インダクタ回路パターンが、前記中間基板の両主面に形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電発振器において、
前記両主面に形成された前記インダクタ回路パターン同士が直列接続されていることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129679(P2012−129679A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277756(P2010−277756)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】