説明

地図情報処理装置

【課題】この発明は、地図データのバージョンの違い応じてナビゲーション機能を変更することができる地図情報処理装置を提供する。
【解決手段】所定範囲の地図を複数のメッシュに分割して得られた単位地図毎に作成された地図データであって、新バージョンの単位地図と旧バージョンの単位地図とが混在した地図データを記憶する地図データ記憶部102と、自車位置を算出する自車位置算出部106と、自車位置算出部で算出された自車位置に基づき旧バージョンの単位地図に存在しない道路を走行していることを判断した場合に、該算出された自車位置に基づき走行軌跡を作成する制御部100と、制御部で作成された走行軌跡に基づき道路データを作成して地図データ記憶部に追加する道路データ追加部109を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地図情報を処理する地図情報処理装置に関し、特に古い地図情報と新しい地図情報とが混在している場合に、古い地図情報に基づく地図上に新道を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、道路データを含む地図データを保持しており、この地図データを用いて自車位置の算出および表示、ならびに、目的地までの経路探索および経路案内などの機能を実現している。
【0003】
このようなナビゲーション装置で用いられる地図データは、地図の詳細さに応じた階層構造を有し、例えば最も詳細な地図がレベル0、最も粗い地図がレベルn−1(nは2以上の整数)となる。各レベルの地図は、例えば日本全体といった作成範囲を複数のメッシュに分割した単位地図から成り、単位地図を表す地図データをメッシュデータという。地図を複数のメッシュに分割して各々をメッシュデータで表すのは、複数のメッシュに分割することによって、取り扱うデータサイズを小さくし、ナビゲーション装置で扱いやすくするためである。メッシュデータは、道路データ、背景データおよび文字データなどから成る。
【0004】
道路データは、道路を表すリンクを定義するリンクデータと、交差点などを表すノードを定義するノードデータとから成る。リンクデータは、リンクの両端のノードを表すノードレコード番号を含み、ノードデータは、ノードに接続されるリンクのリンクレコード番号を含み、これらによって道路の接続関係が表される。
【0005】
メッシュ境界上のノード(以下、「境界ノード」という)は、隣接情報として、接続される隣のメッシュのノードレコード番号を含み、これにより、メッシュ間での道路データの接続が実現されている。
【0006】
また、実際の道路の拡張、改修または廃止などが行われた場合は、バージョンアップされた地図データがナビゲーション装置のメーカーまたは地図メーカーから提供されるが、この場合、同じ道路であってもリンクレコード番号またはノードレコード番号が変更される場合がある。このため、一部地域のみがバージョンアップされた場合は、新旧バージョンの地図データ間で隣接情報が正しく設定されない場合が発生し、その結果、新旧バージョンを混在して使用することはできない。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献1および特許文献2は、接続関係を示す専用データを設け、バージョンアップ時に専用データをも更新することによって新旧バージョンの地図データ間の接続関係を保証する技術を開示している。
【0008】
【特許文献1】特開2007−101865号公報
【特許文献2】特開2004−212456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1および特許文献2に開示された技術によれば、新旧バージョンの地図データが混在する地図を使用することは可能であるが、地図データのバージョンの違いに応じて、例えば旧バージョンの地図に新道を追加したり、新バージョンの地図と旧バージョンの地図との間を跨って走行した旨の通知したり、旧バージョンの地図上においてはマップマッチングを弱めたりするといったナビゲーション機能を変更することはできない。
【0010】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、地図データのバージョンの違い応じてナビゲーション機能を変更することができる地図情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明に係る地図情報処理装置は、所定範囲の地図を複数のメッシュに分割して得られた単位地図毎に作成された地図データであって、新バージョンの単位地図と旧バージョンの単位地図とが混在した地図データを記憶する地図データ記憶部と、自車位置を算出する自車位置算出部と、自車位置算出部で算出された自車位置に基づき旧バージョンの単位地図に存在しない道路を走行していることを判断した場合に、該算出された自車位置に基づき走行軌跡を作成する制御部と、制御部で作成された走行軌跡に基づき道路データを作成して地図データ記憶部に追加する道路データ追加部を備えている。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る地図情報処理装置によれば、実際には存在するが、古い地図上では存在しない道路を新道として古い地図に追加して使用するといった、地図データのバージョンの違い応じてナビゲーション機能を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、この発明に係る地図情報処理装置が、ナビゲーション装置に適用されている場合を例に挙げて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置の構成を示すブロック図である。この地図情報処理装置は、ナビゲーション制御部100、地図データ入力部101、地図データ記憶部102、GPS(Global Positioning System)受信機103、自立センサ104および道路データ追加部109を備えている。
【0014】
ナビゲーション制御部100は、この発明の「制御部」に対応し、走行軌跡データを作成する他、ナビゲーション機能を実現するための各種処理を実行する。このナビゲーション制御部100の詳細は後述する。
【0015】
地図データ入力部101は、例えば、バージョンアップディスクまたはメモリカードといった記録メディア、あるいは、図示しないセンタから通信により地図データを取得する携帯電話などから構成され、新バージョンの地図の地図データを入力する。なお、以下においては、新バージョンの単位地図の集まりを「新バージョンの地図」といい、旧バージョンの単位地図の集まりを「旧バージョンの地図」という。この地図データ入力部101から入力された地図データは、地図データ記憶部102に送られる。
【0016】
地図データ記憶部102は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などといった書き換え可能な記憶装置から構成されており、地図データを記憶する。この地図データ記憶部102には、ナビゲーション装置の出荷時に記憶された地図データの他、地図データ入力部101で入力された新バージョンの地図の地図データが記憶される。この地図データ記憶部102に記憶されている地図データは、ナビゲーション制御部100によって読み出される。
【0017】
GPS受信機103は、GPS衛星から送信される電波を受信し、自己の現在位置を検出する。このGPS受信機103で検出された自己の現在位置は、現在位置データとしてナビゲーション制御部100に送られる。
【0018】
自立センサ104は、速度センサおよび方位センサ(いずれも図示を省略する)を含む。速度センサで検出された自己の移動速度は、速度データとしてナビゲーション制御部100に送られる。また、方位センサで検出された自己の進行方位は、方位データとしてナビゲーション制御部100に送られる。
【0019】
道路データ追加部109は、ナビゲーション制御部100から送られてくる走行軌跡データに基づき道路データを生成して地図データ記憶部102に記憶されている地図データに追加する。
【0020】
次に、ナビゲーション制御部100の詳細を説明する。ナビゲーション制御部100は、表示制御部105、自車位置算出部106、経路探索・案内部107および操作制御部108を備えている。表示制御部105は、図示しないモニタに地図、推奨経路または各種メッセージなどを表示するための処理を実行する。
【0021】
自車位置算出部106は、GPS受信機103から送られてくる現在位置データ、または、自立センサ104から送られてくる速度データと方位データとに基づき自律航法により算出した自車位置データによって示される自車位置の座標を算出し、さらに、地図データ記憶部102から読み出した地図データによって示される道路に対応させるマップマッチングを行うことにより、自車が存在する地図上の道路を算出する。この自車位置算出部106で算出された自車位置は、経路探索・案内部107における出発地として使用される他、表示制御部105で地図上に自車位置マークを表示するために使用される。
【0022】
経路探索・案内部107は、自車位置算出部106で算出された現在位置(出発地)から、操作制御部108の制御により入力された目的地までの経路探索を行って推奨経路を表す経路データを算出するとともに、この算出した経路データによって示される推奨経路に沿って経路案内を行うための処理を実行する。
【0023】
操作制御部108は、例えば、操作パネル、リモートコントローラ(リモコン)、タッチパネルまたは音声入力装置(いずれも図示は省略する)を制御することにより、これらの操作に応じた各種情報(例えば、目的地)を入力するための処理を実行する。
【0024】
次に、地図データ記憶部102に記憶される地図データについて説明する。図2は、各階層の地図データのフォーマットを示す図である。この地図データのフォーマットは、後述する道路データのフォーマットを除き、従来の地図データのフォーマットと同じである。すなわち、地図データは、データヘッダ、階層レベル数:nおよびレベル0〜n−1のレベルデータ(以下、「レベル0〜n−1データ」という)から成る。
【0025】
データヘッダは、データバージョン、データサイズおよび作成範囲を表すデータから成る。作成範囲は、作成区域左端Xs、作成区域上端Ys、作成区域右端Xeおよび作成区域下端Yeを表すデータから成る。
【0026】
レベルmデータは、X方向データ数:Xm、Y方向データ数:Ym、メッシュデータ(0,0)〜メッシュデータ(Xm−1,Ym−1)から成る。なお、0≦m≦n−1の整数である。メッシュデータ(Xm−1,0)は、メッシュ座標(Xm−1,0)、データバージョン、ヘッダ、道路データ、背景データおよび文字データから成る。
【0027】
図3は、上記のように定義された地図データのレベルmデータによって表されるメッシュの例を示す図である。1つのメッシュに対応する地図を、この明細書では「単位地図」と呼ぶ。
【0028】
図4は、図2に示した道路データのフォーマットを示す。道路データは、図4(a)に示すように、交差点などのノードを表すノードデータとノード間の道路であるリンクを表すリンクデータとから成る。
【0029】
ノードデータは、図4(b)に示すように、ノードレコード数と複数のノードレコード#0〜#n−1とから成る。ノードレコード#0〜#n−1の各々は、ノードの位置を示すノード座標、ノードが交差点であるか境界ノードであるかなどを示すノード属性、隣接する単位地図(以下、単に「隣接地図」という)へ接続するための隣接情報、ノードに接続されるリンクの本数を示す接続リンク数、および、接続リンク数分のリンクレコード番号から成る。隣接情報は、ノード属性が境界ノードであることを表している場合にのみ有効な情報である。なお、隣接情報は、ノード属性が境界ノードでない場合は、道路データ中に隣接情報を保持しないように構成できる。この構成によれば、道路データの全体の量を減らすことができる。
【0030】
リンクデータは、図4(c)に示すように、リンクレコード数と複数のリンクレコード#0〜#n−1から成る。リンクレコード#0〜#n−1の各々は、リンクの始点および終点のノードをそれぞれ示す始点ノードレコード番号および終点ノードレコード番号、リンクの種別を表すリンク種別、リンクの属性を表すリンク属性、すべてのリンクにユニークな値として付加されるリンクID番号、リンクの長さを表すリンク長、および、リンクの形を現すリンク形状から成る。リンク形状は、形状座標数と形状座標#0〜#n−1から成る。隣接情報は、図4(d)に示すように、リンクID番号から成る。
【0031】
図5は、走行軌跡データのフォーマットを示す図である。自車位置算出部106は、当該地図情報処理装置が搭載された車両が道路外を走行したことを検出した場合に、その検出時点の座標を順次記憶して走行軌跡データを生成する。この走行軌跡データは、リンクID番号1、リンクID番号2、走行軌跡座標数および走行軌跡座標#0〜#nから成る。
【0032】
上述した道路データを用いて、地図上の道路は、以下のように表される。図6は、単位地図Map1およびMap2が、両方とも旧バージョン(Ver.1)である場合を示している。図7は、Map1とMap2との接続関係を説明するための図であり、Map1とMap2との境界ノードの隣接情報は、破線で示すように、それぞれ相手側の単位地図のリンクID番号から成り、これにより接続関係が保たれている。この点において、境界ノードの隣接情報として、相手側の単位地図のノードレコード番号を用いる従来の道路データとは異なる。
【0033】
具体的には、図7に示す例においては、Map1の境界ノード501の隣接情報は、Map2のリンク504のリンクID番号「20」であり、Map2の境界ノード502の隣接情報は、Map1のリンク503のリンクID番号「10」である。
【0034】
図8は、Map2のみがVer.2へバージョンアップされた場合の地図を示している。境界ノード601の隣接情報は、バージョンアップ前の境界ノード502の隣接情報と同じものが用いられ、リンク602のリンクID番号は、バージョンアップ前のリンク504のリンクID番号と同じになる。また、図8に示す例では、リンク604が追加されているが、Map1はバージョンアップされていないため、境界ノード603の隣接情報で示されるリンクは存在しない。
【0035】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置の動作を、図9および図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下では、境界ノードから隣接地図のリンクを取得する処理を中心に説明する。この処理は、表示制御部105、自車位置算出部106または経路探索・案内部107からの地図データの取得要求に応じて、ナビゲーション制御部100において実行される。
【0036】
境界ノードから隣接地図のリンクを取得する処理では、まず、ノード属性が取得される(ステップST11)。すなわち、ナビゲーション制御部100は、要求された地図データを地図データ記憶部102から読み込み、この読み込んだ地図データに含まれる道路データのノードデータからノード属性を取得する。
【0037】
次いで、ステップST11で取得したノード属性が境界ノードであるかどうかが調べられる(ステップST12)。このステップST12において、ノード属性が境界ノードでないことが判断されると、境界ノードから隣接地図のリンクを取得する処理は終了する。一方、ステップST12において、ノード属性が境界ノードであることが判断されると、次いで、隣接情報が取得される(ステップST13)。すなわち、ノードデータのノードレコードの中から、隣接情報として格納されている隣接地図のリンクID番号が取得される。
【0038】
次いで、隣接地図が読み込まれる(ステップST14)。すなわち、当該メッシュの隣のメッシュの地図データが読み込まれる。次いで、隣接地図のリンク(以下、「隣接リンク」という)を取得する隣接リンク取得処理が実行される(ステップST15)。この隣接リンク取得処理では、隣接地図から隣接情報に一致するリンクID番号を取得する処理が行われる。この隣接リンク取得処理の詳細は、後述する。
【0039】
次いで、隣接リンクの取得が成功したがどうかが調べられる(ステップST16)。このステップST16において、隣接リンクの取得が成功したことが判断されると、境界ノードから隣接地図のリンクを取得する処理は終了する。一方、ステップST16において、隣接リンクの取得に成功しなかったことが判断されると、行き止まりノードであると判定され、その旨が設定される(ステップST17)。これにより、バージョンの違いによって道路データが接続されていない場合であっても、正しくナビゲーション動作を行うことができる。その後、境界ノードから隣接地図のリンクを取得する処理は終了する。
【0040】
隣接リンク取得処理においては、まず、リンクデータの中の先頭リンクレコードが取得される(ステップST21)。次いで、ステップST21で取得されたリンクレコードの中からリンクID番号が取得される(ステップST22)。次いで、ステップST22で取得されたリンクID番号が、上述したステップST13で取得された隣接情報と一致するかどうかが調べられる(ステップST23)。このステップST23において、隣接情報と一致することが判断されると、取得成功であることが認識され、その旨が設定される(ステップST24)。その後、隣接リンク取得処理は終了し、図9に示す処理にリターンする。
【0041】
上記ステップST23において、隣接情報と一致しないことが判断されると、次いで、最後尾のリンクレコードであるかどうかが調べられる(ステップST25)。このステップST25において、最後尾のリンクレコードでないことが判断されると、次のリンクレコードが取得される(ステップST26)。その後、シーケンスはステップST22に戻り、上述した処理が繰り返される。上記ステップST25において、最後尾のリンクレコードであることが判断されると、取得失敗であることが認識され、その旨が設定される(ステップST27)。その後、隣接リンク取得処理は終了し、図9に示す処理にリターンする。
【0042】
以上の処理により、例えば図8に示す例においては、境界ノード501および601から隣接リンク602および503をそれぞれ取得できるので、各単位地図(メッシュ)のバージョンが変更されても接続関係は保たれる。また、境界ノード603は、行き止まりノードとして処理されるので、隣接情報から不正なデータを取得することなく、ナビゲーション装置として正常動作を実現できる。
【0043】
次に、旧バージョンの地図上を走行した際の走行軌跡データに基づき道路データを生成して旧バージョンの地図に追加する機能について説明する。図11は、道路データを追加する動作を説明するための図であり、Map1は旧バージョンの単位地図、Map2は新バージョンの単位地図をそれぞれ示している。図11において、符号701は、バージョンアップによって新設されたリンクを示しており、符号702は、Map1から新設リンク701へ向かって自車702が走行している様子を示している。
【0044】
次に、旧バージョンの地図上を走行した際の走行軌跡データに基づき道路データを生成して旧バージョンの地図に追加する道路データ追加処理を、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
道路データ追加処理では、まず、自車位置が算出される(ステップST31)。すなわち、自車位置算出部106は、GPS受信機103から送られてくる現在位置データ、または、自立センサ104から送られてくる速度データと方位データとに基づき自律航法により算出した自車位置データによって示される自車位置の座標を算出する。
【0046】
次いで、道路上を走行しているかどうかが調べられる(ステップST32)。すなわち、自車位置算出部106は、ステップST31で算出された自車位置の座標と地図データ記憶部102から読み出した地図データを用いてマップマッチングを行うことにより、自車位置が存在する地図上の道路を算出し、自車位置が道路上であるかどうかを調べる。このステップST32において、道路上を走行していることが判断されると、シーケンスはステップST31に戻り、道路から逸脱するまで上述した処理が繰り返される。
【0047】
一方、ステップST32において、道路上を走行していない、つまり道路外を走行していることが判断されると、自車位置が存在する地図のバージョンが取得される(ステップST33)。すなわち、ステップST31で算出された自車位置の座標が属するメッシュに対応するメッシュデータの中のデータバージョン(図2参照)が取得される。
【0048】
次いで、ステップST33で取得されたデータバージョンが新バージョンを示しているかどうかが調べられる(ステップST34)。このステップST34において、データバージョンが新バージョンを示していることが判断されると、シーケンスはステップST31に戻り、旧バージョンの地図上に移動するまで、上述した処理が繰り返される。
【0049】
一方、ステップST34において、データバージョンが新バージョンを示していないことが判断されると、次いで、走行軌跡データが生成される(ステップST35)。すなわち、ナビゲーション制御部100は、自車位置算出部106によって算出された自車位置の座標に基づき、図5に示すフォーマットを有する走行軌跡データを生成し、道路データ追加部109に送る。道路データ追加部109は、ナビゲーション制御部100から受け取った走行軌跡データを自己の内部に記憶する。
【0050】
次いで、自車位置が算出される(ステップST36)。このステップST36の処理は、上述したステップST31の処理と同じである。次いで、道路上を走行しているかどうかが調べられる(ステップST37)。このステップST37の処理は、上述したステップST32の処理と同じである。このステップST37において、道路上を走行していないことが判断されると、道路外の走行が継続されている旨が認識され、シーケンスはステップST35に戻り、道路上の走行に戻るまで上述した処理が繰り返される。この繰り返しにより、走行軌跡データが、道路データ追加部109の内部に順次に蓄積される。
【0051】
一方、ステップST37において、道路上を走行していることが判断されると、走行軌跡が道路データとして追加される(ステップST38)。すなわち、道路データ追加部109は、自己の内部に蓄積している走行軌跡データに基づき道路データを生成し、地図データ記憶部102の地図データに追加する。以上により、道路データ追加処理は終了する。
【0052】
以上の処理によって、図11に破線で示すように自車702が走行した場合、図13に示すように、走行軌跡を表すリンク801が、旧バージョンの地図に道路データとして追加される。なお、上述した例では、Map2は新バージョンの地図として説明したが、Map2は旧バージョンの地図であってもよい。
【0053】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置によれば、実際には存在するが、古い地図上では存在しない道路を、新道として古い地図に追加して使用するといった、地図データのバージョンの違い応じてナビゲーション機能を変更することができる。
【0054】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る地図情報処理装置は、新バージョンの地図上の道路から旧バージョンの地図上の道路に向かって走行した後に、旧バージョンの地図上を走行した場合に、走行軌跡データに基づき道路データを生成して旧バージョンの地図に追加するようにしたものである。この実施の形態2に係る地図情報処理装置の構成は、上述した実施の形態1に係る地図情報処理装置の構成(図1参照)と同じである。
【0055】
図14は、実施の形態2に係る地図情報処理装置の動作を説明するための図であり、Map1は旧バージョンの地図、Map2は新バージョンの地図をそれぞれ示している。図14において、符号902は、新設リンク701からMap1内へ自車902が走行している様子を示している。
【0056】
次に、新バージョンの地図上の道路から旧バージョンの地図上の道路に向かって走行した後に、旧バージョンの地図上を走行した場合に、走行軌跡データに基づき道路データを生成して旧バージョンの地図に追加する道路データ追加処理を、図15に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
道路データ追加処理では、まず、自車位置が算出される(ステップST41)。すなわち、自車位置算出部106は、GPS受信機103から送られてくる現在位置データ、または、自立センサ104から送られてくる速度データと方位データとに基づき自律航法により算出した自車位置データによって示される自車位置の座標を算出する。
【0058】
次いで、自車位置の地図のバージョンが取得される(ステップST42)。すなわち、ステップST41で算出された自車位置の座標が属するメッシュに対応するメッシュデータの中のデータバージョン(図2参照)が取得される。次いで、ステップST42で取得されたデータバージョンが新バージョンを示しているかどうかが調べられる(ステップST43)。このステップST43において、新バージョンを示していないことが判断されると、シーケンスはステップST41に戻り、新バージョンの地図上を走行するようになるまで、上述した処理が繰り返される。
【0059】
上記ステップST43において、新バージョンを示していることが判断されると、次いで、道路上を走行しているかどうかが調べられる(ステップST44)。すなわち、自車位置算出部106は、ステップST31で算出された自車位置の座標と地図データ記憶部102から読み出した地図データによって示される道路に対応させるマップマッチングを行うことにより、自車位置が存在する地図上の道路を算出し、自車位置が道路上であるかどうかを調べる。このステップST44において、道路上を走行していないことが判断されると、次いで、自車位置の地図のバージョンが取得される(ステップST45)。このステップST45の処理は、上述したステップST42の処理と同じである。
【0060】
次いで、ステップST45で取得されたデータバージョンが新バージョンを示しているかどうかが調べられる(ステップST46)。このステップST46において、新バージョンを示していることが判断されると、シーケンスはステップST41に戻り、上述した処理が繰り返される。一方、ステップST46において、新バージョンを示していないことが判断されると、新バージョンの地図上の走行から旧バージョンの地図上の走行に移った旨が認識され、シーケンスはステップST50に進む。
【0061】
上記ステップST44において、道路上を走行していることが判断されると、次いで、自車位置の地図のバージョンが取得される(ステップST47)。このステップST47の処理は、上述したステップST42の処理と同じである。次いで、ステップST47で取得されたデータバージョンが新バージョンを示しているかどうかが調べられる(ステップST48)。このステップST48において、新バージョンを示していないことが判断されると、シーケンスはステップST41に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0062】
一方、ステップST48において、新バージョンを示していることが判断されると、次いで、自車位置が算出される(ステップST49)。このステップST49の処理は、上述したステップST41の処理と同じである。その後、シーケンスはステップST44に進み、上述した処理が繰り返される。
【0063】
ステップST50においては、走行軌跡データが生成される。すなわち、ナビゲーション制御部100は、自車位置算出部106によって算出された自車位置の座標に基づき、図5に示すフォーマットを有する走行軌跡データを生成し、道路データ追加部109に送る。道路データ追加部109は、ナビゲーション制御部100から受け取った走行軌跡データを自己の内部に記憶する。
【0064】
次いで、自車位置が算出される(ステップST51)。このステップST51の処理は、上述したステップST41の処理と同じである。次いで、道路上を走行しているかどうかが調べられる(ステップST52)。このステップST52の処理は、上述したステップST44の処理と同じである。このステップST52において、道路上を走行していないことが判断されると、道路外の走行が継続している旨が認識され、シーケンスはステップST50に戻り、上述した処理が繰り返される。この繰り返しにより、走行軌跡データが、道路データ追加部109の内部に順次に蓄積される。
【0065】
一方、ステップST52において、道路上を走行していることが判断されると、走行軌跡が道路データとして追加される(ステップST53)。すなわち、道路データ追加部109は、自己の内部に蓄積している走行軌跡データに基づき道路データを生成し、地図データ記憶部102の地図データに追加する。以上により、走行軌跡データに基づき生成された道路データを旧バージョンの地図に追加する処理は終了する。
【0066】
以上の処理によって、図14に破線で示すように自車702が走行した場合、図13に示すように、走行軌跡を表すリンク801が、旧バージョンの地図に道路データとして追加される。なお、上述した例では、Map2は新バージョンの地図として説明したが、Map2は旧バージョンの地図であってもよい。
【0067】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る地図情報処理装置によれば、新バージョンの地図に存在する道路を走行した後に、旧バージョンの地図上を走行したことが判断された場合に、旧バージョンの地図に存在しない道路を走行している可能性が高いので、この場合に走行軌跡を作成し、道路データとして追加するように構成したので、精度良く、旧バージョンの地図に新道を追加することができる。
【0068】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る地図情報処理装置は、走行している位置の地図のバージョンが変化した旨を通知するようにしたものである。この実施の形態3に係る地図情報処理装置の構成は、上述した実施の形態1に係る地図情報処理装置の構成(図1参照)と同じである。
【0069】
次に、実施の形態3に係る地図情報処理装置の動作を、走行している位置の地図のバージョンが変化した旨を通知するバージョン変化通知処理を中心に、図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0070】
バージョン変化通知処理では、まず、自車位置が算出される(ステップST61)。すなわち、自車位置算出部106は、GPS受信機103から送られてくる現在位置データ、または、自立センサ104から送られてくる速度データと方位データとに基づき自律航法により算出した自車位置データによって示される自車位置の座標を算出する。
【0071】
次いで、自車位置の地図のバージョンV1が取得される(ステップST62)。すなわち、ステップST61で算出された自車位置の座標が属するメッシュに対応するメッシュデータの中のデータバージョン(図2参照)V1が取得される。
【0072】
次いで、自車位置が算出される(ステップST63)。このステップST63の処理は、上述したステップST61の処理と同じである。次いで、自車位置の地図のバージョンV2が取得される(ステップST64)。このステップST64の処理は、上述したステップST62の処理と同じである。
【0073】
次いで、バージョンV1とバージョンV2とが比較される(ステップST65)。このステップST65において、バージョンV1とバージョンV2とが同一であることが判断されると、バージョンが変化した旨の通知は不要であることが認識され、シーケンスはステップST63に戻って上述した処理が繰り返される。
【0074】
上記ステップST65において、バージョンV1がバージョンV2より新しいことが判断されると、新バージョンの地図から旧バージョンの地図に入った旨が認識され、その旨が通知される(ステップST66)。その後、バージョン変化通知処理は終了する。
【0075】
上記ステップST65において、バージョンV2がバージョンV1より新しいことが判断されると、旧バージョンの地図から新バージョンの地図に入った旨が認識され、その旨が通知される(ステップST67)。その後、バージョン変化通知処理は終了する。以上の処理により、走行によって自車位置が存在する地図のバージョンが変わった場合に、その旨を通知することができる。
【0076】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係る地図情報処理装置によれば、ユーザは、新バージョンの単位地図または旧バージョンの単位地図のどちらを走行中であるかを把握できるので、例えば旧バージョンの単位地図を走行中は、実際には存在するが地図上では道路が存在しない可能性を認識できる。その結果、旧バージョンの単位地図上の走行が容易になる。
【0077】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る地図情報処理装置は、旧バージョンの地図上を走行中は、マップマッチングのマッチング強度を弱めるようにしたものである。この実施の形態4に係る地図情報処理装置の構成は、上述した実施の形態1に係る地図情報処理装置の構成(図1参照)と同じである。
【0078】
次に、実施の形態4に係る地図情報処理装置の動作を、旧バージョンの地図上を走行中はマッチング強度を弱めるマッチング強度制御処理を中心に、図17に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0079】
このマッチング強度制御処理では、まず、自車位置が算出される(ステップST71)。すなわち、自車位置算出部106は、GPS受信機103から送られてくる現在位置データ、または、自立センサ104から送られてくる速度データと方位データとに基づき自律航法により算出した自車位置データによって示される自車位置の座標を算出する。
【0080】
次いで、自車位置の地図のバージョンが取得される(ステップST72)。すなわち、ステップST71で算出された自車位置の座標が属するメッシュに対応するメッシュデータの中のデータバージョン(図2参照)が取得される。
【0081】
次いで、ステップST72で取得されたデータバージョンが新バージョンを示しているかどうかが調べられる(ステップST73)。このステップST73において、新バージョンを示していることが判断されると、次いで、マッチング強度が「通常」に設定される(ステップST74)。その後、シーケンスはステップST76に進む。
【0082】
一方、ステップST73において、新バージョンを示していないことが判断されると、次いで、マッチング強度が「弱」に設定される(ステップST75)。その後、シーケンスはステップST76に進む。
【0083】
ステップST76においては、ステップST74またはステップST75において設定されたマッチング強度に応じてマップマッチングが行われる。すなわち、自車位置算出部106は、GPS受信機103から送られてくる現在位置データ、または、自立センサ104から送られてくる速度データと方位データとに基づき自律航法により算出した自車位置データによって示される自車位置の座標を算出し、この算出した座標を、地図データ記憶部102から読み出した地図データによって示される道路に対応させるマップマッチング処理を実行する。この際、マップマッチングは、ステップST74またはステップST75において設定されたマッチング強度に応じて行われる。
【0084】
以上説明したように、この発明の実施の形態4に係る地図情報処理装置によれば、旧バージョンの地図上を走行中はマップマッチングのマッチング強度を弱めることができるので、間違った道路へマッチングする可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置で使用される各階層の地図データのフォーマットを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置で使用される各階層の地図データのレベルデータで表されるメッシュの例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置で使用される道路データのフォーマットを示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置で使用される走行軌跡データのフォーマットを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置において取り扱われる2つの地図が両方とも旧バージョンの地図である場合の例を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置において取り扱われる2つの地図の接続関係を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置において取り扱われる2つの地図の一方がバージョンアップされた場合の例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置で行われる境界ノードから隣接地図のリンクを取得する処理を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置で行われる隣接リンク取得処理を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置において道路データを追加する動作を説明するための図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置において行われる道路データ追加処理を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態1に係る地図情報処理装置において追加された道路データを説明するための図である。
【図14】この発明の実施の形態2に係る地図情報処理装置において道路データを追加する動作を説明するための図である。
【図15】この発明の実施の形態2に係る地図情報処理装置において行われる道路データ追加処理を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態3に係る地図情報処理装置において行われるバージョン変化通知処理を示すフローチャートである。
【図17】この発明の実施の形態4に係る地図情報処理装置において行われるマッチング強度制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
100 ナビゲーション制御部、101 地図データ入力部、102 地図データ記憶部、103 GPS受信機、104 自立センサ、105 表示制御部、106 自車位置算出部、107 経路探索・案内部、108 操作制御部、109 道路データ追加部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の地図を複数のメッシュに分割して得られた単位地図毎に作成された地図データであって、新バージョンの単位地図と旧バージョンの単位地図とが混在した地図データを記憶する地図データ記憶部と、
自車位置を算出する自車位置算出部と、
前記自車位置算出部で算出された自車位置に基づき旧バージョンの単位地図に存在しない道路を走行していることを判断した場合に、該算出された自車位置に基づき走行軌跡を作成する制御部と、
前記制御部で作成された走行軌跡に基づき道路データを作成して前記地図データ記憶部に追加する道路データ追加部
とを備えた地図情報処理装置。
【請求項2】
制御部は、自車位置算出部で算出された自車位置に基づき、新バージョンの単位地図に存在する道路を走行した後に、旧バージョンの単位地図上を走行したことを判断した場合に、旧バージョンの単位地図に存在しない道路を走行していると判断して、前記自車位置算出部で算出された自車位置に基づき走行軌跡を作成する
ことを特徴とする請求項1記載の地図情報処理装置。
【請求項3】
制御部は、自車位置算出部で算出された自車位置に基づき、旧バージョンの単位地図から新バージョンの単位地図または新バージョンの単位地図から旧バージョンの単位地図に入ったことを判断した場合に、その旨を通知する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の地図情報処理装置。
【請求項4】
自車位置算出部は、自車位置算出部で算出された自車位置に基づき、旧バージョンの単位地図上を走行中であることが判断された場合は、マッチングを弱めて自車位置を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の地図情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−14658(P2010−14658A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176835(P2008−176835)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】