説明

地図更新データ供給装置、地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法

【課題】更新データファイルによる更新後の前記地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立することを防止し、当該一部の道路を含む経路の探索が可能な状態を保証できる地図データ供給装置等を提供する。
【解決手段】対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を更新用地図データMaに基づいて更新することにより、前記対象地図データの道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態の有無を検出する孤立検出手段8と、孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の更新用地図データMaの区画を、更新必要区画として抽出する抽出手段9と、更新用地図データMaに基づいて前記更新対象区画及び前記更新必要区画についての更新データファイルfaを生成する更新データファイル生成手段10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも道路ネットワークの情報を含み、複数の区画に分割された対象地図データの各区画についての更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置、この地図更新データ供給装置を用いた地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでにも、ナビゲーション装置に使用される道路地図等の地図データの内容を部分的に更新する技術が知られている。例えば、下記の特許文献1に記載の装置では、新たに造られた道路について、当該新設道路が既存の幹線道路と繋がる部分までを1つのデータ群として保持するために、当該新設道路を構成する一連のリンク番号を格納したデータ群テーブルを備えている。そして、ナビゲーション装置から、複数の区画に分割された地図データの一部の区画の更新要求があった場合であって、前記データ群テーブルに格納された新設道路が当該更新要求のあった区画以外にも延びている場合には、前記データ群テーブルを参照して当該新設道路の全体の更新情報をナビゲーション装置に提供する構成となっている。
【0003】
これにより、ナビゲーション装置から指定された地図データの一部の区画について更新情報を提供した場合であっても、隣接する区画との間で前記新設道路が途切れることを防止し、前記新設道路が既存の幹線道路に接続することを保証できる。したがって、一部の区画についての更新後にも、当該新設道路を通る経路の探索が可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−178248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一部の区画の更新により生じる地図データの不具合は上記のような新設道路に関するものに限られず、例えば、新設道路以外の既存の道路が、他の道路から孤立した状態となる場合がある。具体的には、一例として、地図更新データ供給装置側の地図データについて、ある道路(「道路A」とする)に唯一接続する道路(「道路B」とする)が削除され、当該削除された道路Bを含む区画とは異なる区画に道路Aに接続する道路(「道路C」とする)が追加される更新が行われた場合について説明する。このような場合に、ナビゲーション装置側の地図データの一部の区画の更新を行う際、削除された道路Bを含む区画が更新対象区画とされ、追加された道路Cの全体が更新対象区画でない場合には、地図データの更新後に、道路Aはいずれの道路にも接続しない孤立状態となる。地図データが更新によりこのような状態となった場合には、当該孤立した道路を出発地や目的地に設定した際に、経路探索を適切に行うことができないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、更新対象の地図データの一部の区画についての更新データファイルを供給する場合に、当該更新データファイルによる更新後の前記地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立することを防止し、当該一部の道路を含む経路の探索が可能な状態を保証できる地図データ供給装置、この地図更新データ供給装置を用いた地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る、少なくとも道路ネットワークの情報を含み、複数の区画に分割された対象地図データの各区画についての更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置の特徴構成は、前記対象地図データと同じく複数の区画に分割された更新用地図データが格納された更新用地図データベースと、前記対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新することにより、前記対象地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態の有無を検出する孤立検出手段と、前記孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を、更新必要区画として抽出する抽出手段と、前記更新用地図データに基づいて、前記更新対象区画及び前記更新必要区画についての更新データファイルを生成する更新データファイル生成手段と、を備える点にある。
【0008】
なお、本願において「一部の道路が他の道路から孤立した状態(孤立状態)」とは、前記一部の道路としての一の道路又は閉じた経路を形成する二以上の道路が、周囲の他の道路に接続していない状態のことである。
【0009】
この特徴構成によれば、前記対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新することにより、前記対象地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる場合には、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を更新必要区画として抽出する。そして、前記対象地図データの前記更新対象区画に加えて前記更新必要区画についても前記更新用地図データに基づいて更新データファイルを生成することになる。したがって、この更新データファイルによる更新後の前記対象地図データの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となることを防止することができる。これにより、当該一部の道路を含む経路の探索が可能な状態を保証することができる。
【0010】
ここで、前記孤立検出手段は、前記更新対象区画について、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の削除があった場合に、当該削除された道路に接続していた道路に関して前記孤立状態の有無の検出を行う構成とすると好適である。
【0011】
通常、前記対象地図データの更新による一部の道路の孤立状態は、前記対象地図データの更新により削除された道路に接続していた道路及び当該道路と共に閉じた経路を形成する一又は二以上の道路に関して生じる。したがって、この構成によれば、このような前記対象地図データの更新による前記一部の道路の孤立状態の有無を、効率的に検出することが可能となる。
【0012】
また、この際、前記孤立検出手段による前記孤立状態の検出は、前記対象地図データの前記更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、当該経路が存在しない場合に前記孤立状態が有ることを検出する構成とすると好適である。
【0013】
この構成によれば、前記対象地図データの更新により削除された道路に接続していた道路に関する孤立状態の有無を、確実に検出することができる。
【0014】
また、前記抽出手段は、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の追加があった場合に、当該追加された道路を含む区画の中から前記更新必要区画を抽出する構成とすると好適である。
【0015】
通常、現実の道路の状態を反映している更新用地図データにおいて、道路ネットワークの中の一部の道路が孤立状態となることはなく、当該一部の道路に接続する道路の削除がされた場合には、それに代わる道路が新たに追加されているはずである。そのため、前記対象地図データの更新対象区画の更新により一部の道路の孤立状態が生じる場合には、前記更新対象区画以外の区画に前記孤立した道路に接続する道路が新たに追加されている可能性が高い。この構成によれば、前記孤立状態が有ることが検出された場合に、新たに追加された道路を含む一又は二以上の区画の中から更新必要区画を抽出するので、前記孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を効率的に抽出することが可能となる。
【0016】
また、この際、前記抽出手段による前記更新必要区画の抽出は、前記対象地図データの前記更新対象区画と前記追加された道路を含む少なくとも一つの区画とを前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、前記追加された道路を通る前記経路が存在する場合には、前記経路を構成する前記追加された道路を含む区画を更新必要区画として抽出する構成とすると好適である。
【0017】
この構成によれば、前記孤立した一部の道路に接続する道路を有する更新必要区画を、確実に検出することができる。
【0018】
また、本発明に係る地図データ更新システムの特徴構成は、上記特徴構成を備えた地図更新データ供給装置と、ナビゲーション装置とを有して構成され、前記ナビゲーション装置は、前記対象地図データとしてのナビゲーション用地図データが格納されたナビゲーション用地図データベースと、前記更新対象区画についての更新要求データファイルを生成する更新要求生成手段と、前記地図更新データ供給装置から供給された前記更新データファイルを取得する更新データファイル取得手段と、前記更新データファイルに基づいて、前記ナビゲーション用地図データの更新を行う地図データ更新手段と、を備える点にある。
【0019】
この特徴構成によれば、前記ナビゲーション装置側からナビゲーション用地図データの更新が必要な更新対象区画についての更新要求データを送信し、それに基づいて前記地図データ供給装置から供給される更新データファイルにより前記ナビゲーション用地図データの更新を行うことができる。それにより、ナビゲーション装置側では、前記更新対象区画と、当該更新対象区画の更新に伴い一部の道路が他の道路から孤立した状態となることを防止するために更新が必要となる更新必要区画とについての更新データファイルを受信し、ナビゲーション用地図データの一部の区画について更新することができる。したがって、ナビゲーション用地図データの必要最小限の区画を更新することが可能となり、前記ナビゲーション用地図データの全体を更新する場合と比較して、前記更新データファイルを送受信する際の通信データ量及び通信コストを低く抑えることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る、少なくとも道路ネットワークの情報を含み、複数の区画に分割された対象地図データの各区画についての更新データファイルを供給する地図更新データ供給方法の特徴構成は、前記対象地図データと同じく複数の区画に分割された更新用地図データを用い、前記対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新することにより、前記対象地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態の有無を検出する孤立検出ステップと、前記孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を、更新必要区画として抽出する抽出ステップと、前記更新用地図データに基づいて、前記更新対象区画及び前記更新必要区画についての更新データファイルを生成する更新データファイル生成ステップと、を実行する点にある。
【0021】
この特徴構成によれば、前記対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新することにより、前記対象地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる場合には、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を更新必要区画として抽出する。そして、前記対象地図データの前記更新対象区画に加えて前記更新必要区画についても前記更新用地図データに基づいて更新データファイルを生成することになる。したがって、この更新データファイルによる更新後の前記対象地図データの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となることを防止することができる。これにより、当該一部の道路を含む経路の探索が可能な状態を保証することができる。
【0022】
ここで、前記孤立検出ステップとして、前記更新対象区画について、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の削除があった場合に、前記対象地図データの前記更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、当該経路が存在しない場合に前記孤立状態が有ることを検出する構成とすると好適である。
【0023】
この構成によれば、このような前記対象地図データの更新による前記一部の道路の孤立状態の有無を、効率的且つ確実に検出することが可能となる。
【0024】
また、前記抽出ステップとして、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の追加があった場合に、前記対象地図データの前記更新対象区画と前記追加された道路を含む少なくとも一つの区画とを前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、前記追加された道路を通る前記経路が存在する場合には、前記経路を構成する前記追加された道路を含む区画を更新必要区画として抽出する構成とすると好適である。
【0025】
この構成によれば、前記孤立状態が有ることが検出された場合に、新たに追加された道路を含む一又は二以上の区画の中から更新必要区画を抽出するので、前記孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を効率的且つ確実に抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1の構成を模式的に示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係るナビゲーション装置2の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態では、地図更新データ供給装置1とナビゲーション装置2とは、それぞれに通信装置6、26を備え、各種の通信ネットワークを介してデータの送受信が可能に構成されており、全体として地図データ更新システムを構成している。そして、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2に対して、ナビゲーション用地図データMbの更新用の更新データファイルfaを供給する。更新データファイルfaの供給を受けたナビゲーション装置2は、この更新データファイルfaに基づいてナビゲーション用地図データMbの更新を行う。すなわち、本実施形態においては、ナビゲーション装置2のナビゲーション用地図データMbが本発明における「対象地図データ」に相当する。以下、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1及びナビゲーション装置2の構成について詳細に説明する。
【0027】
1.地図更新データ供給装置1
図1に示すように、地図更新データ供給装置1は、更新用地図データベースDB1、制御装置3、入力装置4、表示装置5、及び通信装置6を備えている。また、制御装置3は、データベース更新手段7、孤立検出手段8、抽出手段9、更新データファイル生成手段10、及び通信制御手段11を備えている。ここで、制御装置3は、CPU等の演算処理装置、及びソフトウエア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、制御装置3が備える各手段7〜11は、この制御装置3の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア或いはその両方により実装されて構成されている。また、更新用地図データベースDB1は、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶媒体に格納されている。以下、地図更新データ供給装置1の各部の構成について順に説明する。
【0028】
1−1.更新用地図データベースDB1
図3は、更新用地図データベースDB1内に格納された更新用地図データMaの構成を説明するための説明図である。この図に示すように、更新用地図データベースDB1には、複数の区画pに分割された更新用地図データMaが複数の更新バージョンを有して格納されている。本例では、最初に作成された最も古い更新用地図データMaをバージョン1とし、新たな情報に基づいて更新用地図データMaを更新する毎にバージョン2、バージョン3と順にバージョンアップし、現時点で3つの更新バージョンの更新用地図データMaが更新用地図データベースDB1に格納されている。なお、本願の実施形態の説明において、各バージョン1〜3の更新用地図データMaを区別する場合には、例えば「バージョン1の更新用地図データMa1」のように、更新用地図データの符号として、バージョン番号を付したMa1〜Ma3の符号を用いる。一方、単に「更新用地図データMa」というときは、各バージョンの更新用地図データMa1〜Ma3を総称するものとする。また、本願の実施形態の説明において、「区画p」というときは、更新用地図データMa及び後述するナビゲーション用地図データMbの複数の区画を総称するものとし、個別の区画を指定する場合には、区画1、区画2、・・・等(図5〜8参照)のような区画番号を用いることとする。また、後述するように、複数の区画pの中から特に選択された区画が「更新対象区画pa」又は「更新必要区画pb」となる。
【0029】
また、本例では、更新用地図データMaを構成する複数の区画pは、各区画pが同じ大きさの矩形となるように分割されている。例えば、日本全土の地図データを対象とする場合、更新用地図データMaは、全体として日本全土を含む範囲を有し、それをm×n(m、nは自然数)分割して各区画pを構成する。この更新用地図データMaの各区画pは、後述するナビゲーション用地図データMbの最下位のレイヤ1の区画pに対応して設けられている。図4は、更新用地図データMaが有する情報の内容を説明するための説明図である。この図に示すように、更新用地図データMaは、各区画p内及び複数の区画p間にわたって存在する多数の道路に相当するリンクや交差点に相当するノード等によって道路の接続関係を表す道路ネットワークRnの情報を有している。また、図示は省略するが、更新用地図データMaは、道路ネットワークRnの情報以外にも、道路に沿って設けられる標識や信号機等、建築物(家屋やビル等)や橋梁やトンネル等の建造物、河川や海岸線等の自然物、及び行政区域等の各種の地物の配置及び形状等の情報を有している。但し、以下では説明の簡略化のため、更新用地図データMa、及びナビゲーション用地図データMbが有する地図としての情報の中で、特に重要な道路ネットワークRnの情報に関して説明を行う。
【0030】
1−2.入力装置4、表示装置5、及び通信装置6
次に、図1に戻り、地図更新データ供給装置1の入力装置4、表示装置5、及び通信装置6について説明する。入力装置4は、キーボード、マウス、タッチパネル、スキャナ等の各種の入力用機器を有して構成されている。そして、作業者が、この入力装置4を用いて、更新用地図データMaのバージョンアップのための地図情報の追加、変更、削除といった更新入力等を行うことができるようになっている。表示装置5は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等を有して構成されている。そして、作業者が、入力装置4を用いた作業を行う場合等に、更新用地図データMaの状態やその更新作業の内容等の表示を行うことができるようになっている。通信装置6は、有線又は無線の公知の各種の通信ネットワークを介して、ナビゲーション装置2の通信装置26との間で通信してデータの送受信を行うことができる構成となっている。このような通信ネットワークとしては、例えば、インターネット、有線又は無線の公衆電話網、有線又は無線LAN(Local Area Network)、専用回線等を用いることができる。
【0031】
1−3.制御装置3
上記のとおり、制御装置3は、データベース更新手段7、孤立検出手段8、抽出手段9、更新データファイル生成手段10、及び通信制御手段11を備えている。ここで、データベース更新手段7は、入力装置4を用いた更新用地図データMaのバージョンアップのための地図情報の追加、変更、削除といった更新入力の処理、及び当該更新入力に基づいた新しいバージョンの更新用地図データMaの生成及びその更新用地図データベースDB1への格納の処理を行う手段である。このデータベース更新手段7の処理により、更新用地図データベースDB1内の更新用地図データMaは、現実の状況に追従して適宜更新される。そして、このデータベース更新手段7による更新用地図データMaの更新の度に、更新用地図データベースDB1には、各区画pについての新たなバージョンの更新用地図データMaが格納される。
【0032】
孤立検出手段8は、後述する更新データファイル生成手段による更新データファイルfaの生成の前に、ナビゲーション用地図データMbの一又は二以上の更新対象区画paを更新用地図データMaに基づいて更新することにより生じる孤立状態の有無を検出する手段である。ここで、孤立状態とは、道路ネットワークRn(図4参照)の中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となることであり、当該一部の道路としての一の道路又は閉じた経路を形成する二以上の道路(一部の道路)が、周囲の他の道路に接続していない状態のことである。換言すれば、孤立状態がない状態とは、道路ネットワークRnの中のいずれの位置に出発点と目的点とを設定したとしても、当該出発点と目的点とを結ぶ経路が存在する状態のことである。なお、更新対象区画paとは、後述するナビゲーション装置2からの更新要求データファイルfbにより指定されるナビゲーション用地図データMbの更新対象となる区画pである。
【0033】
ここで、図5〜7の地図データに示す道路ネットワークRnの例を用いて、一部の道路の孤立状態について説明する。これらの図5〜7は、更新用地図データベースDB1に格納されている複数の更新バージョンの更新用地図データMaに基づく地図データの、区画1〜4の道路ネットワークRnの各種の状態を示している。具体的には、図5は、区画1〜4の全てがバージョン2である場合の道路ネットワークRnの例を示し、図6は、区画1〜4の全てがバージョン3である場合の道路ネットワークRnの例を示している。また、図7は、区画1及び2のみがバージョン3に更新され、区画3及び4がバージョン2のままである場合の道路ネットワークRnの例を示している。なお、これらの図において、四角形で囲んだ数字は各区画pの更新バージョンを示している。これらの図に示す道路ネットワークRnにおいて、道路r4〜r7で構成される周回路r4〜7は、図5に示すバージョン2の道路ネットワークRnでは道路r1により、図6に示すバージョン3の道路ネットワークRnでは道路r2により、それぞれ他の道路に接続されており、孤立状態とはなっていない。一方、図7に示す道路ネットワークRnでは、周回路r4〜7は、閉じた経路を形成し、周囲の他の道路に接続していない孤立状態となる。孤立検出手段8は、このような孤立状態を検出する処理を行う。
【0034】
通常、ナビゲーション用地図データMbの更新による一部の道路の孤立状態は、ナビゲーション用地図データMbの更新により削除された道路に接続していた道路及び当該道路と共に閉じた経路を形成する一又は二以上の道路に関して生じる。そこで、孤立検出手段8は、更新対象区画paについて、ナビゲーション用地図データMbに対する最新バージョンの更新用地図データMaの更新内容に道路の削除があった場合に、当該削除された道路に接続していた道路に関して孤立状態の有無の検出を行う。この際、孤立検出手段8は、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paを最新バージョンの更新用地図データMaに基づいて更新した後に相当する状態で、削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路(以下「接続経路k」(図8参照)という。)の探索を行い、当該接続経路kが存在しない場合に孤立状態が有ることを検出する。なお、この孤立検出手段8による孤立状態の検出処理方法については、後に図11に示すフローチャートにより詳細に説明する。
【0035】
抽出手段9は、孤立検出手段8により孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する更新対象区画pa以外の更新用地図データMaの区画pを、更新必要区画pbとして抽出する手段である。すなわち、抽出手段9は、ビゲーション装置2からの更新要求データファイルfbにより指定される更新対象区画paの更新に伴い生じる一部の道路の孤立状態を防止するために更新を行う必要がある区画pとして、更新必要区画pbを抽出する処理を行う。
【0036】
通常、現実の道路の状態を反映している更新用地図データMaにおいて、道路ネットワークRnの中の一部の道路が孤立状態となることはなく、当該一部の道路に接続する道路の削除がされた場合には、それに代わる道路が新たに追加されているはずである。そのため、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paの更新により一部の道路の孤立状態が生じる場合には、更新対象区画pa以外の区画pに孤立した道路に接続する道路が新たに追加されている可能性が高い。そこで抽出手段9は、孤立検出手段8により孤立状態が有ることが検出された場合であって、ナビゲーション用地図データMbに対する最新バージョンの更新用地図データMaの更新内容に道路の追加があった場合には、当該追加された道路を含む区画pの中から更新必要区画pbを抽出する処理を行う。
【0037】
この際、抽出手段9は、例えば図8に示すように、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paと追加された道路を含む少なくとも一つの区画pとを最新バージョンの更新用地図データMaに基づいて更新した後に相当する状態の地図データの道路ネットワークRnにおいて、削除された道路の一端と他端とを結ぶ接続経路kの探索を行う。ここで、図8は、図7に示すように更新対象区画paとしての区画1及び2をバージョン3に更新した状態から更に、追加された道路r2を含む区画4についてもバージョン3に更新した状態の道路ネットワークRnを示している。そして、追加された道路を通る接続経路kが存在する場合には、抽出手段9は、当該接続経路kを構成する追加された道路(図8の例では道路r2)を含む区画p(図8の例では区画4)を更新必要区画pbとして抽出する。なお、この抽出手段9による更新必要区画pbの抽出処理方法については、後に図12に示すフローチャートにより詳細に説明する。
【0038】
更新データファイル生成手段10は、更新用地図データベースDB1に格納された更新用地図データMaに基づいて、更新対象区画pa及び抽出手段9により抽出された更新必要区画pbについての更新データファイルfaを生成する手段である。この際、更新データファイル生成手段10は、更新対象区画pa及び更新必要区画pbに相当する全ての区画pについて、最新の更新バージョン(本例ではバージョン3)の更新データファイルfaを生成する。本例では、各更新データファイルfaは、更新対象区画pa及び更新必要区画pbについての最新の更新バージョンの地図データ、及び当該更新データファイルfaに含まれる地図データの区画p(更新対象区画pa及び更新必要区画pbに相当する全ての区画p)を特定するための情報、例えばナビゲーション装置2のナビゲーション用地図データMbと共通で使用する区画ID情報等を含んだデータファイルとして生成される。
【0039】
通信制御手段11は、通信装置6の動作制御を行う手段である。具体的には、通信制御手段11は、通信装置6による地図更新データ供給装置1とナビゲーション装置2との通信を制御し、ナビゲーション装置2から送信される更新要求データファイルfbの受信、及びナビゲーション装置2への更新データファイルfaの送信等のための動作を通信装置6に行わせる。よって、本実施形態においては、この通信制御手段11及び通信装置6が、ナビゲーション装置2に更新データファイルfaを供給する「更新データファイル供給手段」を構成する。
【0040】
2.ナビゲーション装置2
図2に示すように、ナビゲーション装置2は、ナビゲーション用地図データベースDB2、制御装置21、自位置検出装置22、表示装置23、音声出力装置24、入力装置25、及び通信装置26を備えている。また、制御装置21は、ナビゲーション用演算手段27、更新要求生成手段28、地図データ更新手段29、及び通信制御手段30を備えている。ここで、ナビゲーション用演算手段27は、ナビゲーション装置2としての基本的なナビゲーション機能を実現するための演算手段である。このナビゲーション装置2のナビゲーション機能としては、例えば、自位置や指定した位置の周辺の地図表示、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路誘導、自位置を道路上に補正するマップマッチング、目的地の検索等の機能がある。このナビゲーション装置2の制御装置21は、CPU等の演算処理装置、及びソフトウエア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、制御装置21が備える各手段27〜30は、この制御装置21の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア或いはその両方により実装されて構成されている。また、ナビゲーション用地図データベースDB2は、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶媒体に格納されている。以下、ナビゲーション装置2の各部の構成について順に説明する。
【0041】
2−1.ナビゲーション用地図データベースDB2
ナビゲーション用地図データベースDB2には、ナビゲーション装置2のナビゲーション機能を実現するために、ナビゲーション用演算手段27により参照される地図データであるナビゲーション用地図データMbが格納されている。図9は、ナビゲーション用地図データベースDB2に格納されたナビゲーション用地図データMbの構成を説明するための説明図である。この図に示すように、ナビゲーション用地図データMbは、主要地図データMb1、経路探索データMb2、及び経路誘導データMb3を備えている。ここで、主要地図データMb1は、格納される道路等の地物の情報の詳細度に応じて複数のレイヤ(階層)に分けられている。本例では、主要地図データMb1は、下位から上位に向かって順に、レイヤ1、レイヤ2、レイヤ3の3つのレイヤを有している。ここで、下位のレイヤほど詳細な道路等の地物の情報を含んでいる。また、主要地図データMb1の各レイヤは、複数の区画pに分割されている。この際、上位のレイヤほど、広い領域に対応した区画pが設定されている。したがって、上位のレイヤの一つの区画pには、それより下位のレイヤの複数の区画pに対応する領域が含まれる。主要地図データMb1の各レイヤには、道路に相当するリンクや交差点に相当するノード等によって道路の接続関係を表す道路ネットワークRnの情報が含まれる。この主要地図データMb1は、自位置や指定した位置の周辺の地図表示や、自位置を道路上に補正するマップマッチング等に際して、ナビゲーション用演算手段27により参照される。
【0042】
経路探索データMb2は、主要地図データMb1に関連付けられており、前記道路ネットワークRnを構成する各リンクのコスト、通行条件、上位レイヤとの間でのノードの対応関係等の情報を有して構成されている。この経路探索データMb2は、出発地から目的地までの経路探索に際して、ナビゲーション用演算手段27により参照される。経路誘導データMb3は、主要地図データMb1に関連付けられており、目的地までの経路誘導に際して必要となる画像や音声等の情報を有して構成されている。したがって、この経路誘導データMb3は、目的地までの経路誘導に際して、ナビゲーション用演算手段27により参照される。
【0043】
以上のように、ナビゲーション用地図データMbの主要地図データMb1では、各レイヤより一つの区画pに対応する現実世界の領域の大きさが異なっている。本例では、主要地図データMb1の最下位のレイヤ1の各区画pに含まれる領域の大きさが、更新用地図データMaの各区画pの領域の大きさに対応している。したがって、地図更新データ供給装置1から供給される更新データファイルfaは、主要地図データMb1のレイヤ1の区画pに対応する区画単位のデータファイルとなる。そして、主要地図データMb1のレイヤ2及びレイヤ3、並びに経路探索データMb2及び経路誘導データMb3は、この更新データファイルfaによる更新後の主要地図データMb1のレイヤ1のデータに基づいて、地図データ更新手段により生成されて更新される。
【0044】
2−2.自位置検出装置22
自位置検出装置22は、ナビゲーション装置2の現在位置を検出するための装置である。そのため、自位置検出装置22は、図示は省略するが、例えば、GPS受信機、方位センサ、及び距離センサ等を有して構成されている。そして、これらにより取得された情報に基づいて現在の位置を示す座標や進行方位等の情報を取得して、制御装置21に出力する。制御装置21では、ナビゲーション用演算手段27が、この自位置検出装置22により検出された自位置情報とナビゲーション用地図データMbとに基づいて、自位置表示やマップマッチング等の処理を行う。
【0045】
2−3.表示装置23、音声出力装置24、入力装置25、及び通信装置26
表示装置23は、液晶ディスプレイ等を有して構成されている。音声出力装置24は、スピーカ及びアンプ等を備えて構成される。これらの表示装置23及び音声出力装置24は、ナビゲーション用演算手段27により制御されて動作し、自位置表示、2地点間の経路探索、進路案内、目的地検索等のための表示や音声出力等を行う。入力装置25は、表示装置23と一体的に配置されたタッチパネル、操作スイッチ、リモートコントローラ等を備えて構成されている。この入力装置25は、ユーザによる操作入力を受け付け、その内容を制御装置21へ出力する。通信装置6は、有線又は無線の公知の各種の通信ネットワークを介して、地図更新データ供給装置1の通信装置6との間で通信してデータの送受信を行うことができる構成となっている。
【0046】
2−4.制御装置21
上記のとおり、制御装置21は、ナビゲーション用演算手段27、更新要求生成手段28、地図データ更新手段29、及び通信制御手段30を備えている。ナビゲーション用演算手段27は、上記のとおり、例えば、自位置や指定した位置の周辺の地図表示、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路誘導、自位置を道路上に補正するマップマッチング、目的地の検索等のナビゲーション装置2としての基本的なナビゲーション機能を実現するための演算手段である。本例では、ナビゲーション用演算手段27は、図示は省略するが、ナビゲーション用の動作プログラムとして、表示プログラム、マップマッチングプログラム、経路探索プログラム、経路誘導プログラム、及び検索プログラムの5つのアプリケーションプログラムを有している。ここで、表示プログラムは、表示装置23の表示画面に自位置や目的地等の周辺の地図表示や当該地図上への自位置表示等を行うためのプログラムである。マップマッチングプログラム、自位置検出装置22により検出された自位置を地図の道路上に合わせるマップマッチング処理を行うためのプログラムである。経路探索プログラムは、例えば自位置等の出発地から入力装置25により入力された目的地までの案内経路等を探索する経路探索を行うためのプログラムである。経路誘導プログラムは、経路探索プログラムにより決定された目的地までの経路に従って、表示装置23の表示画面による案内表示や音声出力装置24による音声案内等により、ユーザに対して適切な経路を案内して誘導する処理を行うためのプログラムである。検索プログラムは、目的地や地図表示のための地点等を、住所、電話番号、施設名称、ジャンル等に基づいて検索するためのプログラムである。またその他の各アプリケーションプログラムによるナビゲーション装置2の動作処理は公知であるので詳細な説明は省略する。そして、これらの各アプリケーションプログラムにおいて、ナビゲーション用地図データMbが参照されて用いられる。
【0047】
更新要求生成手段28は、更新対象区画paについての更新要求データファイルfbを生成する手段である。ここでは、更新要求生成手段28は、更新対象区画paを決定し、当該更新対象区画paについての更新データファイルfaを地図更新データ供給装置1に要求するための更新要求データファイルfbを生成する。本例では、更新対象区画paは、ナビゲーション装置2のナビゲーション用演算手段27が参照するために必要なナビゲーション用地図データMbの区画pであり、主要地図データMb1のレイヤ1の区画pの中から一又は二以上が選択される。ここで、ナビゲーション用演算手段27が参照するために必要な区画pとしては、現に必要な区画p及び将来必要となる可能性が高い区画が含まれる。したがって、更新対象区画paとしては、例えば、自宅として登録している位置周辺、自位置検出装置22により検出される現在の自位置周辺、目的地周辺、設定された目的地までの経路周辺等を含む区画pが該当する。また、このような更新対象区画paを決定するに際して、例えば、自宅位置周辺については更新する領域を広くして多くの区画pを選択し、目的地までの経路周辺については更新する領域を狭くして必要最小限の区画pを選択する構成としても好適である。また、ナビゲーション装置2の使用者による地域を指定した地図更新処理の要求を受け付ける場合には、その際に指定された地域に含まれる区画pを更新対象区画paとする。そして、更新要求データファイルfbは、決定された一又は二以上の更新対象区画paを特定するための情報、並びに、更新対象区画pa及び少なくとも更新対象区画paの周辺の所定範囲内の区画pについてのナビゲーション用地図データMbの各区画pの更新状態を特定するための情報等を含んだデータファイルとして生成される。ここで、更新対象区画paを特定するための情報としては、例えば地図更新データ供給装置1の更新用地図データMaと共通で使用する区画ID情報が用いられる。また、各区画pの更新状態を特定するための更新状態情報としては、例えば各区画pの更新バージョン情報が用いられる。本例では、上記のとおり、区画1〜4について更新バージョンがバージョン2であることを示す情報が、更新要求データファイルfbに含まれた状態で地図更新データ供給装置1へ送信される。
【0048】
地図データ更新手段29は、地図更新データ供給装置1から供給された更新データファイルfaに基づいて、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う手段である。上記のとおり、本例では、各更新データファイルfaは、更新対象区画pa又は更新必要区画pbについての地図データを含むファイルとなっている。したがって、地図データ更新手段29は、ナビゲーション用地図データMbの主要地図データMb1のレイヤ1における、更新対象区画pa及び更新必要区画pbに対応する区画pの地図データを、更新データファイルfaに含まれる更新対象区画pa及び更新必要区画pbの地図データに変更することにより、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う。
【0049】
通信制御手段30は、通信装置26の動作制御を行う手段である。具体的には、通信制御手段30は、通信装置26による地図更新データ供給装置1とナビゲーション装置2との通信を制御し、地図更新データ供給装置1への更新要求データファイルfbの送信、及び地図更新データ供給装置1から送信される更新データファイルfaの受信等のための動作を通信装置26に行わせる。したがって、本実施形態においては、この通信制御手段30及び通信装置26が、地図更新データ供給装置から供給された前記更新データファイルを取得する「更新データファイル取得手段」を構成する。
【0050】
3.地図更新データ供給装置1の動作処理
次に、地図更新データ供給装置1の動作処理について図10〜12に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。また、この際、孤立検出手段8による孤立状態の検出処理及び抽出手段9による更新必要区画pbの抽出処理について、図5〜8に示す道路ネットワークRnの例を用いて具体的に説明する。これらの図5〜8は、更新用地図データベースDB1に格納されている複数の更新バージョンの更新用地図データMaに基づく地図データの、区画1〜4の道路ネットワークRnの各種の状態を示している。これらの図において、四角形で囲んだ数字は各区画pの更新バージョンを示している。また、これらの図において、r1〜r15はそれぞれの道路を区別する符号であり、各道路r1〜r15はそれぞれ交差点で区切られている。なお、これらの図5〜8では、説明の簡略化のために一部の区画p(区画1〜4)のみを示しているが、実際にはこれより多数の区画pが処理対象として取り扱われる場合が多い。
【0051】
3−1.地図更新データ供給方法の全体の処理
この地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2からの更新要求に基づいて更新対象区画pa及び必要に応じて更新必要区画pbについての更新データファイルfaを生成し、送信する処理を行う。図10は、このような地図更新データ供給装置1による地図更新データ供給方法の全体の処理を示すフローチャートである。この図に示すように、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2からの更新要求があった場合、すなわち更新要求データファイルfbを受信した場合には(ステップ#01:Yes)、制御装置3は、更新要求データファイルfbから更新対象区画pa及びナビゲーション用地図データMbの更新状態の情報を取得する(ステップ#02)。
【0052】
次に、制御装置3は、孤立検出手段8により、ナビゲーション用地図データMbのステップ#02で取得した更新対象区画paを更新用地図データMaに基づいて更新することで生じる孤立状態の有無を検出する(ステップ#03)。この孤立検出手段8による孤立状態検出処理については、後に図11のフローチャートに基づいて詳細に説明する。そして、孤立状態が有ることが検出された場合には(ステップ#04:Yes)、制御装置3は、抽出手段9により、当該孤立状態を防止するための更新必要区画pbを抽出する(ステップ#05)。一方、孤立状態が無いことが検出された場合には(ステップ#04:No)、ステップ#05の処理は行わない。
【0053】
その後、制御装置3は、更新データファイル生成手段10により、更新データファイルfaを生成する(ステップ#06)。この際、更新データファイル生成手段10は、ステップ#04で孤立状態が無いことが検出されたために(ステップ#04:No)、ステップ#05で更新必要区画pbが抽出されなかった場合には、ステップ#02で取得された更新対象区画paのみについて更新データファイルfaを生成し、ステップ#05で更新必要区画pbが抽出された場合には、ステップ#02で取得された更新対象区画pa及びステップ#05で抽出された更新必要区画pbのそれぞれについて更新データファイルfaを生成する。そして、制御装置3は、通信制御手段11により、通信装置6を制御して、ステップ#06で生成された更新データファイルfaをナビゲーション装置2に送信する(ステップ#07)。以上の処理により、更新データファイルfaがナビゲーション装置2(対象地図データ側)に供給される。
【0054】
3−2.孤立状態の検出処理方法
次に、上記ステップ#03の孤立検出手段8による孤立状態の検出処理方法について説明する。図11は、この孤立検出手段8による孤立状態の検出処理方法を示すフローチャートである。この図に示すように、孤立検出手段8は、まず、ステップ#02で取得したナビゲーション用地図データMbの更新状態に基づいて、ナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データを生成する(ステップ#11)。すなわち、孤立検出手段8は、更新要求データファイルfbに含まれる、更新対象区画pa及び少なくともその周辺の所定範囲内の区画pについてのナビゲーション用地図データMbの各区画pの更新状態の情報に基づいて、ナビゲーション用地図データMbと同じ更新バージョンの更新用地図データMaを更新用地図データベースDB1から読み出して、更新データファイルfaによる更新前のナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データを生成する。本例では、ステップ#02において、更新要求データファイルfbから、更新対象区画paとして区画1及び2、ナビゲーション用地図データMbの更新状態として区画1〜4の全てがバージョン2であることを示す情報を取得したものとする。図5は、この情報に基づいて生成したナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態、すなわち区画1〜4の全てがバージョン2である地図データにおける道路ネットワークRnの状態を示している。また、図6は、本例における最新バージョンの更新用地図データMa、すなわち区画1〜4の全てがバージョン3である地図データにおける道路ネットワークRnの状態を示している。
【0055】
次に、孤立検出手段8は、ステップ#02で取得した更新対象区画paについて、ナビゲーション用地図データMbに対する最新バージョンの更新用地図データMaの更新内容に道路の削除が有るか否かの判定を行う(ステップ#12)。この判定は、ステップ#11で生成したナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データ(図5)と、最新バージョンの更新用地図データMa(図6)とを、更新対象区画paについて比較することにより行う。すなわち、孤立検出手段8は、更新対象区画paについて、ナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データ(図5)の道路ネットワークRnに対する、最新バージョンの更新用地図データMa(図6)の道路ネットワークRnの更新内容(変更点)を抽出し、当該更新内容に道路の削除があるか否かを判定する。本例では、図5に示すナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データの道路ネットワークRnに対して、図6に示す最新バージョンの更新用地図データMaの道路ネットワークRnでは、区画1及び2にまたがる道路r1が削除され、区画4に道路r2が追加され、区画3に道路r3が追加されている。また、道路r3の追加により、バージョン3の道路ネットワークRnでは、道路r8が道路r8とr14に分けられ、道路r12が道路r12とr15に分けられている。そして、上記のとおり、本例では更新対象区画paは区画1及び2であり、これらの区画1及び2では、道路r1が削除されている。したがって、本例では、孤立検出手段8は、更新対象区画paに道路の削除が有ると判定する(ステップ#12:Yes)。
【0056】
このように、更新対象区画paに道路の削除が有ると判定した場合には(ステップ#12:Yes)、孤立検出手段8は、次に、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paを最新バージョンの更新用地図データMaにより更新した後に相当する状態の地図データを生成する(ステップ#13)。すなわち、孤立検出手段8は、ステップ#11で生成したナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データ(図5)に対して、更新対象区画paを最新バージョンの更新用地図データMa(図6)に置き換えることにより、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paの更新後に相当する状態の地図データを生成する。本例では、更新対象区画paが区画1及び2であるので、図5に示す地図データの区画1及び2を、図6に示す最新バージョンの更新用地図データMaの区画1及び2に置き換える。図7は、このナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paの更新後に相当する状態の地図データにおける道路ネットワークRnの状態を示している。
【0057】
次に、孤立検出手段8は、ステップ#13で生成した、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paを最新バージョンの更新用地図データMaにより更新した後に相当する状態の地図データにおいて、更新対象区画paについての削除された道路の一端と他端とを結ぶ接続経路kを探索する処理を行う(ステップ#14)。この処理により、孤立検出手段8は、ステップ#12で、更新対象区画paについてナビゲーション用地図データMbに対する最新バージョンの更新用地図データMaの更新内容に道路の削除が有ると判定した場合における、当該削除された道路に接続していた道路に関して孤立状態の有無の検出を行う。本例では、孤立検出手段8は、図7に示すナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paの更新後に相当する状態の地図データの道路ネットワークRnにおいて、更新対象区画paである区画1及び2内の削除された道路r1(図5及び6参照)の一端の交差点c1と他端の交差点c2とを結ぶ接続経路kの探索を行う。ここでは、孤立検出手段8は、図7に細線矢印で示すように、一端の交差点c1と他端の交差点c2とのそれぞれから互いに他方へ向かう接続経路k(図8参照)の探索を行う。
【0058】
その後、孤立検出手段8は、ステップ#14の探索の結果、接続経路kが有るか否かについて判定する(ステップ#15)。そして、例えば図8に示すように、接続経路kが有る場合には(ステップ#15:Yes)、孤立検出手段8は、道路ネットワークRnの中に、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態が無いことを検出し、その検出結果を出力する(ステップ#16)。また、上述のステップ#12において、更新対象区画paに道路の削除が無いと判定した場合にも(ステップ#12:No)、孤立検出手段8は、道路ネットワークRnの中に孤立状態が無いことを検出する(ステップ#16)。一方、ステップ#14の探索の結果、接続経路kが無い場合には(ステップ#15:No)、孤立検出手段8は、前記孤立状態が有ることを検出し、その検出結果を出力する(ステップ#17)。図7に示す例では、道路r4〜r7は閉じた周回路r4〜7を形成しているため、一端の交差点c1と他端の交差点c2とを結ぶ接続経路kは存在しない(ステップ#15:No)。よって、本例では、孤立検出手段8は、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paである区画1及び2の更新後に相当する状態の地図データの道路ネットワークRnの中に、孤立状態が有ることを検出する。
【0059】
3−3.更新必要区画pbの抽出処理方法
次に、上記ステップ#05の抽出手段9による更新必要区画pbの抽出処理方法について説明する。図12は、この抽出手段9による更新必要区画pbの抽出処理方法を示すフローチャートである。この図に示すように、抽出手段9は、まず、更新対象区画paの周辺の追加された道路を含む区画pを、更新必要区画pbの候補区画として選択する(ステップ#21)。本実施形態においては、抽出手段9は、候補区画として一つの区画pを選択する。この候補区画としては、更新対象区画paに隣接する区画の中から選択すると好適である。具体的には、本例では、図5に示すナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データの道路ネットワークRnに対して、図6に示す最新バージョンの更新用地図データMaの道路ネットワークRnでは、区画4に道路r2が追加され、区画3に道路r3が追加されている。そこで、抽出手段9は、追加された道路r2又はr3を含む区画3及び4の中から一つの候補区画を選択する。以下では、まず区画4を候補区画として選択した場合の例について説明する。
【0060】
抽出手段9は、候補区画を選択した後(ステップ#21)、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paと、ステップ#21で選択した候補区画とを、最新バージョンの更新用地図データMaにより更新した後に相当する状態の地図データを生成する(ステップ#22)。すなわち、抽出手段9は、図11のステップ#11で生成したナビゲーション用地図データMbと同じ更新状態の地図データ(図5)に対して、更新対象区画pa及びステップ#21で選択した候補区画を最新バージョンの更新用地図データMa(図6)に置き換えることにより、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画pa及び候補区画の更新後に相当する状態の地図データを生成する。本例では、上記のとおり、更新対象区画paが区画1及び2であり候補区画が区画4であるので、図5に示す地図データの区画1、2、及び4を、図6に示す最新バージョンの更新用地図データMaの区画1、2、及び4に置き換える。図8は、このナビゲーション用地図データMbの更新対象区画pa及び候補区画の更新後に相当する状態の地図データにおける道路ネットワークRnの状態を示している。
【0061】
次に、抽出手段9は、ステップ#22で生成した、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画pa及び候補区画を最新バージョンの更新用地図データMaにより更新した後に相当する状態の地図データにおいて、孤立検出手段8による孤立状態の検出の際と同様に、更新対象区画paについての削除された道路の一端と他端とを結ぶ接続経路kを探索する処理を行う(ステップ#23)。すなわち、本例では、抽出手段9は、図8に示すナビゲーション用地図データMbの更新対象区画pa及び候補区画の更新後に相当する状態の地図データの道路ネットワークRnにおいて、削除された道路r1(図5及び6参照)の一端の交差点c1と他端の交差点c2とを結ぶ接続経路kの探索を行う。ここでは、抽出手段9は、図8の細線矢印で示すように、一端の交差点c1と他端の交差点c2とのそれぞれから互いに他方へ向かう接続経路kの探索を行う。
【0062】
その後、抽出手段9は、ステップ#23の探索の結果、接続経路kが有るか否かについて判定する(ステップ#24)。そして、接続経路kが有る場合には(ステップ#24:Yes)、抽出手段9は、この接続経路kが存在するときのステップ#21で選択した候補区画を更新必要区画pbとして抽出する(ステップ#25)。本例では、図8に示すように、一端の交差点c1から、道路r8、r9、r10、r2、r6、及びr7を通り、他端の交差点c2に到達する接続経路kが存在する。したがって、抽出手段9は、追加された道路r2を含む区画4を更新必要区画pbとして抽出する。
【0063】
一方、ステップ#23の探索の結果、接続経路kが無い場合には(ステップ#24:No)、当該候補区画は更新必要区画pbとはしない。そして、処理はステップ#21へ戻り、抽出手段9は、他の候補区画を選択し、上記と同様の処理を行う。例えば、図示は省略するが、追加された道路r3を含む区画3を更新必要区画pbの候補区画として選択した(ステップ#21)場合には、抽出手段9は、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paと、ステップ#21で選択した候補区画とを、最新バージョンの更新用地図データMaにより更新した後に相当する状態の地図データとして、図5に示す地図データの区画1、2、及び3を、図6に示す最新バージョンの更新用地図データMaの区画1、2、及び3に置き換えた地図データを生成する。この場合、削除された道路r1の一端の交差点c1と他端の交差点c2とを結ぶ接続経路kは存在しない(ステップ#24:No)。よって、抽出手段9は、この場合の候補区画である区画3は、更新必要区画pbとはしない。なお、抽出手段9は、更新必要区画pbが少なくとも一つ抽出されるまで、追加された道路を含む区画pを候補区画として順次同様の処理を行う。
【0064】
4.ナビゲーション装置2における地図更新のための動作処理方法
次に、ナビゲーション装置2における地図更新のための動作処理方法について図13に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。この図に示すように、ナビゲーション装置2は、ナビゲーション用地図データMbの更新に際して、更新要求生成手段28による更新要求データファイルfbを生成して地図更新データ供給装置1へ送信し、当該更新要求データファイルfbを受けた地図更新データ供給装置1により生成された更新データファイルfaを取得し、当該更新データファイルfaに基づいて、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う。
【0065】
具体的には、図13に示すように、ナビゲーション装置2は、まず、地図更新処理が開始されたか否かを判定する(ステップ#31)。この地図更新処理の開始は、例えば、ナビゲーション装置2が予め定められた期間で定期的に地図更新処理を行う場合、ナビゲーション用演算手段27により所定の条件を満たす形態でのナビゲーション用地図データMbの参照があった場合、或いは、ナビゲーション装置2の使用者による地図更新処理の開始要求操作があった場合等に開始される。
【0066】
そして、地図更新処理が開始された場合には(ステップ#31:Yes)、ナビゲーション装置2は、更新要求生成手段28により、更新対象区画paを決定する(ステップ#32)。ここで、更新対象区画paとしては、上記のとおり、ナビゲーション用演算手段27による処理のために現に必要な区画p及び将来必要となる可能性が高い区画が含まれる。本例では、更新対象区画paは、主要地図データMb1のレイヤ1の区画pの中から一又は二以上が選択される。
【0067】
次に、ナビゲーション装置2は、更新要求生成手段28により、更新要求データファイルfbを生成する(ステップ#33)。ここで、更新要求データファイルfbは、上記のとおり、決定された一又は二以上の更新対象区画paを特定するための情報、並びに、更新対象区画pa及び少なくとも更新対象区画paの周辺の所定範囲内の区画pについてのナビゲーション用地図データMbの各区画pの更新状態を特定するための情報等を含んだデータファイルとして生成される。そして、ナビゲーション装置2は、通信制御手段30により通信装置26を制御して、ステップ#33で生成された更新要求データファイルfbを地図更新データ供給装置1に送信する(ステップ#34)。この更新要求データファイルfbを受信した地図更新データ供給装置1では、上記のとおり、更新データファイルfaを生成してナビゲーション装置2に送信する処理が行われる。ナビゲーション装置2は、所定の時間を経過しても地図更新データ供給装置1からの更新データファイルfaを受信できない場合には(ステップ#35:No)、通信異常と判断して更新要求データファイルfbの送信(ステップ#34)を再度行う。
【0068】
そして、ナビゲーション装置2は、地図更新データ供給装置1からの更新データファイルfaを受信した場合には(ステップ#35:Yes)、更新データファイルfaを取得し(ステップ#36)、地図データ更新手段29により、当該更新データファイルfaに基づいて、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う(ステップ#37)。本例では、上記のとおり、各更新データファイルfaは、更新対象区画pa及び抽出手段9により更新必要区画pbが抽出された場合には当該更新必要区画pbについての最新バージョンの地図データを含むファイルとなっている。したがって、地図データ更新手段29は、ナビゲーション用地図データMbの主要地図データMb1のレイヤ1における、更新対象区画pa及び更新必要区画pbに対応する区画pの地図データを、更新データファイルfaに含まれる更新対象区画pa及び更新必要区画pbの地図データに変更することにより、ステップ#37のナビゲーション用地図データMbの更新を行う。以上により、ナビゲーション装置2における地図更新のための動作処理が終了する。
【0069】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、孤立検出手段8が、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paを更新用地図データMaに基づいて更新した後に相当する状態で、削除された道路の一端と他端とを結ぶ接続経路kの探索を行い、当該接続経路kが存在しない場合に孤立状態が有ることを検出する構成である場合について説明した。しかし、孤立検出手段8の構成はこれに限定されない。すなわち、孤立検出手段8は、道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態の有無を検出することができる構成であれば良く、例えば、道路形状等に基づいて、一部の道路が他の道路から孤立した状態となっていることを検出する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0070】
(2)上記の実施形態では、抽出手段9が、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paと追加された道路を含む少なくとも一つの区画pとを最新バージョンの更新用地図データMaに基づいて更新した後に相当する状態で、削除された道路の一端と他端とを結ぶ接続経路kの探索を行い、当該接続経路kが有る場合に、当該接続経路kを構成する追加された道路を含む区画pを更新必要区画pbとして抽出する構成である場合について説明した。しかし、抽出手段9の構成はこれに限定されない。すなわち、抽出手段9は、孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する更新対象区画pa以外の更新用地図データMaの区画pを、更新必要区画pbとして抽出する構成であれば良く、例えば、道路形状等に基づいて、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する区画pを抽出する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0071】
(3)上記の実施形態では、抽出手段9が、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画paと追加された道路を含む一つの区画p(上記例では区画4)とを最新バージョンの更新用地図データMaに基づいて更新した後に相当する状態で、接続経路kの探索を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、抽出手段9が、ナビゲーション用地図データMbの更新対象区画pa(上記例では区画1及び2)と追加された道路を含む複数の区画p(上記例では区画3及び4)とを最新バージョンの更新用地図データMaに基づいて更新した後に相当する状態で、接続経路kの探索を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0072】
(4)上記の実施形態では、更新対象区画paを、ナビゲーション装置2からの更新要求データファイルfbにより指定される区画pとする場合を例として説明した。しかし、更新対象区画paの決定方法はこれに限定されるものではなく、例えば地図更新データ供給装置1が決定する構成とすることも可能である。
【0073】
(5)上記の実施形態では、更新用地図データベースDB1内の更新用地図データMaは、図3に示すように、各更新バージョンについて、更新用地図データMaを構成する全ての区画pの地図データが格納される場合を例として説明した。しかし、更新用地図データMaの構成はこれに限定されない。すなわち、例えば、区画p毎に更新があったものをバージョンアップし、内容に変更がない区画については新たな更新バージョンのデータを生成しない構成とすることにより、区画p毎に最新の更新バージョンが異なる構成とすることも好適な実施形態の一つである。このように構成すれば、更新用地図データベースDB1の全体のデータ量を少なく抑えることが可能となる。
【0074】
(6)上記の実施形態では、更新データファイルfaは、区画p毎の地図データのファイルとする場合を例として説明した。しかし、更新データファイルfaの構成はこれに限定されない。例えば、この更新データファイルfaを、更新前のナビゲーション用地図データMbの内容に対して変更すべき内容を表す区画p毎の差分データとすることも好適な実施形態の一つである。このような構成とすれば、更新データファイルfaとして各区画pの地図データを全て含む場合と比較して、ファイルのデータ量を少なくすることができる。
【0075】
(7)また、上記の実施形態では、更新データファイルfaを、更新対象区画pa又は更新必要区画pbの区画p毎に、それぞれ生成する場合を例として説明した。しかし、更新データファイルfaの構成はこれに限定されるものではなく、一つのナビゲーション装置2に対して送信する複数の区画pについての更新データを一つのファイルにまとめた構成とすることも好適な実施形態の一つである。
【0076】
(8)上記の実施形態では、地図更新データ供給装置1は、更新データファイルfaを通信ネットワークを介してナビゲーション装置2に送信する場合の例について説明した。しかし、更新データファイルfaの供給方法はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、地図更新データ供給装置1は、更新データファイルfaを、通信手段を介さず、記録媒体記録手段を用いて所定の記録媒体に更新データファイルfaを記録し、郵送等によりナビゲーション装置2の使用者に提供する構成とすることも好適な実施形態の一つである。この場合、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2からの更新要求を、上記の各実施形態と同様の通信の他、郵送等の他の手段を用いて取得する構成とできる。
【0077】
(9)上記の実施形態では、地図更新データ供給装置1により供給される更新データファイルfaが、ナビゲーション装置2のナビゲーション用地図データMbを更新対象とする場合を例として説明した。しかし、更新データファイルfaが更新対象とする対象地図データは、ナビゲーション用地図データMbに限定されるものではなく、複数の区画に分割された地図データであれば、各種の用途の地図データを更新対象とすることができる。また、対象地図データは、上記の実施形態のように、地図更新データ供給装置1から離れた装置に備えられるものに限られず、例えば、地図更新データ供給装置1と一体的に設けられた装置が対象地図データを備える構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、少なくとも道路ネットワークの情報を含み、複数の区画に分割された対象地図データの各区画についての更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置、この地図更新データ供給装置を用いた地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法等に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る地図更新データ供給装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図
【図3】更新用地図データの構成を説明するための説明図
【図4】更新用地図データが有する情報の内容を説明するための説明図
【図5】ナビゲーション用地図データと同じ更新状態の地図データにおける道路ネットワークの状態を示す図
【図6】最新バージョンの更新用地図データにおける道路ネットワークの状態を示す図
【図7】ナビゲーション用地図データの更新対象区画の更新後に相当する状態の地図データにおける道路ネットワークの状態を示す図
【図8】ナビゲーション用地図データの更新対象区画及び候補区画の更新後に相当する状態の地図データにおける道路ネットワークの状態を示す図
【図9】ナビゲーション用地図データの構成を説明するための説明図
【図10】本発明の実施形態に係る地図更新データ供給装置による地図更新データ供給方法の全体の処理を示すフローチャート
【図11】孤立検出手段による孤立状態の検出処理方法を示すフローチャート
【図12】抽出手段による更新必要区画の抽出処理方法を示すフローチャート
【図13】ナビゲーション装置における地図更新のための動作処理方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0080】
1:地図更新データ供給装置
2:ナビゲーション装置
8:孤立検出手段
9:抽出手段
10:更新データファイル生成手段
26:通信装置(更新データファイル取得手段)
28:更新要求生成手段
29:地図データ更新手段
30:通信制御手段(更新データファイル取得手段)
Rn:道路ネットワーク
p:区画
DB1:更新用地図データベース
Ma:更新用地図データ
DB2:ナビゲーション用地図データベース
Mb:ナビゲーション用地図データ(対象地図データ)
fa:更新データファイル
pa:更新対象区画
pb:更新必要区画
fb:更新要求データファイル
k:接続経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも道路ネットワークの情報を含み、複数の区画に分割された対象地図データの各区画についての更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置であって、
前記対象地図データと同じく複数の区画に分割された更新用地図データが格納された更新用地図データベースと、
前記対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新することにより、前記対象地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態の有無を検出する孤立検出手段と、
前記孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を、更新必要区画として抽出する抽出手段と、
前記更新用地図データに基づいて、前記更新対象区画及び前記更新必要区画についての更新データファイルを生成する更新データファイル生成手段と、
を備える地図更新データ供給装置。
【請求項2】
前記孤立検出手段は、前記更新対象区画について、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の削除があった場合に、当該削除された道路に接続していた道路に関して前記孤立状態の有無の検出を行う請求項1に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項3】
前記孤立検出手段による前記孤立状態の検出は、前記対象地図データの前記更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、当該経路が存在しない場合に前記孤立状態が有ることを検出する請求項2に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の追加があった場合に、当該追加された道路を含む区画の中から前記更新必要区画を抽出する請求項1から3のいずれか一項に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項5】
前記抽出手段による前記更新必要区画の抽出は、前記対象地図データの前記更新対象区画と前記追加された道路を含む少なくとも一つの区画とを前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、前記追加された道路を通る前記経路が存在する場合には、前記経路を構成する前記追加された道路を含む区画を更新必要区画として抽出する請求項4に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の地図更新データ供給装置と、ナビゲーション装置とを有して構成され、
前記ナビゲーション装置は、前記対象地図データとしてのナビゲーション用地図データが格納されたナビゲーション用地図データベースと、前記更新対象区画についての更新要求データファイルを生成する更新要求生成手段と、前記地図更新データ供給装置から供給された前記更新データファイルを取得する更新データファイル取得手段と、前記更新データファイルに基づいて、前記ナビゲーション用地図データの更新を行う地図データ更新手段と、を備える地図データ更新システム。
【請求項7】
少なくとも道路ネットワークの情報を含み、複数の区画に分割された対象地図データの各区画についての更新データファイルを供給する地図更新データ供給方法であって、
前記対象地図データと同じく複数の区画に分割された更新用地図データを用い、
前記対象地図データの一又は二以上の更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新することにより、前記対象地図データの前記道路ネットワークの中で、一部の道路が他の道路から孤立した状態となる孤立状態の有無を検出する孤立検出ステップと、
前記孤立状態が有ることが検出された場合に、当該孤立した一部の道路に接続する道路を有する前記更新対象区画以外の前記更新用地図データの区画を、更新必要区画として抽出する抽出ステップと、
前記更新用地図データに基づいて、前記更新対象区画及び前記更新必要区画についての更新データファイルを生成する更新データファイル生成ステップと、
を実行する地図更新データ供給方法。
【請求項8】
前記孤立検出ステップとして、前記更新対象区画について、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の削除があった場合に、前記対象地図データの前記更新対象区画を前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、当該経路が存在しない場合に前記孤立状態が有ることを検出する請求項7に記載の地図更新データ供給方法。
【請求項9】
前記抽出ステップとして、前記対象地図データに対する前記更新用地図データの更新内容に道路の追加があった場合に、前記対象地図データの前記更新対象区画と前記追加された道路を含む少なくとも一つの区画とを前記更新用地図データに基づいて更新した後に相当する状態で、前記削除された道路の一端と他端とを結ぶ経路の探索を行い、前記追加された道路を通る前記経路が存在する場合には、前記経路を構成する前記追加された道路を含む区画を更新必要区画として抽出する請求項7又は8に記載の地図更新データ供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−249798(P2008−249798A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87713(P2007−87713)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】